特許第5799968号(P5799968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799968
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20151008BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   G06F3/12 350
   G06F3/12 347
   G06F3/12 314
   G06F3/12 379
   B41J21/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-52109(P2013-52109)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-178860(P2014-178860A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 守
【審査官】 野村 和史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−039749(JP,A)
【文献】 特開2012−200934(JP,A)
【文献】 特開平9−218763(JP,A)
【文献】 特表2010−541041(JP,A)
【文献】 特表2011−516967(JP,A)
【文献】 特開平10−289066(JP,A)
【文献】 特開平7−168681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 21/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ページ記述言語で記述された印刷データの各ページを、面付け指定に対応するページの印刷出力順序と関わりなくあらかじめ定められた順序で、複数の解釈装置に分配して割り当てる割り当て装置と、
複数のスプール装置と、
前記割り当て装置から割り当てられた前記印刷データの各ページを解釈して解釈結果データを生成し、生成した解釈結果データを、前記複数のスプール装置のうちの当該解釈装置に対応するスプール装置に記憶させる複数の解釈装置と、
前記印刷データの各ページに対応する前記解釈結果データが前記複数のスプール装置のいずれに記憶されているかを示す参照情報と、面付け指定に対応するページの印刷出力順序を表す出力順序情報と、を取得し、前記各ページの解釈結果データを、前記出力順序情報が表す印刷出力順序で、それぞれ前記参照情報により特定される当該ページの解釈結果を保持する前記スプール装置から取得し、取得した各ページの解釈結果データに基づくページ画像データを前記面付け指定に従って面付けし、印刷装置に供給して印刷させる印刷制御装置と、
を備える印刷システム。
【請求項2】
前記複数のスプール装置が、それぞれ、当該スプール装置に記憶している前記解釈結果データのページについての前記参照情報を保持しており、
前記印刷制御装置は、前記出力順序情報を含む前記印刷データについての出力依頼を受けたときに、当該印刷データに対応する前記参照情報を得ていない場合には、前記複数のスプール装置に対して当該印刷データに対応する前記参照情報を要求して取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記割り当て装置は、前記複数の解釈装置のいずれかから新たなページの割り当ての要求を受けると、その要求を発した前記解釈装置に対して前記印刷データのうちまだいずれの解釈装置にも割り当てていないページを割り当て、
前記複数の解釈装置の各々は、それぞれ、新たなページの割り当てを受けた場合にそのページの解釈処理をあらかじめ定めた時間条件を満たして実行可能であるかどうかを当該解釈装置の処理負荷に基づき判定し、前記時間条件を満たして実行可能であると判断した場合に、前記割り当て装置に対して新たなページの割り当てを要求する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたシステムでは、分配部が、ページ記述言語で記述された文書データの処理を、複数の解釈部にページ単位で分配する。各解釈部は、文書データを解釈し、自身の担当ページについて、担当ページを構成する構成要素を描画する手順を表す描画命令を含む中間データを生成する。基本色(例えばC,M,Y,K)毎に設けられた描画データ生成部は、それぞれ対応する基本色の中間データを各解釈部から取得し、取得した中間データに含まれる描画命令に従って、印刷画像を構成する画素ごと又は走査線毎の描画データ(例えばラスターデータ)を生成する。
【0003】
特許文献2には、印刷ジョブの解釈実行を複数の演算処理装置に分散して行わせるシステムにおいて、複数の演算処理装置でラスタライズ処理された印刷画素情報の回収を効率化する手法が開示されている。このシステムにおいて、印刷ジョブ分割手段は資源情報を基に印刷ジョブフラグメントを生成する際に、印刷ジョブフラグメントの管理情報を記述したフラグメントタグおよび分割・スケジューリング時の印刷ジョブの管理情報を記述したタグテーブルを生成する。各印刷ジョブフラグメントは各演算処理装置のラスタライズ処理手段で画素情報に変換され、選択された各演算処理装置または印刷装置のページ合成手段でページ単位の画素情報に合成し、これらを印刷装置の印刷ジョブ出力制御手段にて回収してプリンタ装置より印刷ジョブを出力する。印刷ジョブ管理手段は印刷ジョブの許可・終了、各印刷フラグメントの終了、および印刷ジョブ出力制御手段への回収指示などを行う。
【0004】
特許文献3には、上位装置より送られてくる印刷データを受信して印刷処理を行う画像処理装置が開示される。この装置は、受信した前記印刷データを分割して分割印刷データを生成する印刷データ分割手段と、ネットワークに接続するネットワーク接続手段と、分割印刷データのラスタライズ処理を依頼すべく分割印刷データをネットワーク接続手段を介して送信する分割印刷データ送信手段と、送信した分割印刷データのラスタライズ処理が全て終了したことを確認するラスタライズ処理終了確認手段と、前記ラスタライズ処理終了確認手段による確認の後、前記ラスタライズ処理で生成された分割画像データを印刷順序に基づいて取得する分割画像データ取得手段と、分割画像データを保持する分割画像データ保持手段と、前記分割画像データに基づいて、印刷処理を行う印刷手段とを備える。
【0005】
特許文献4に開示される装置では、解析部は、入力されたプリントデータを解析し、その処理に必要なRIP機能を調査し、RIP機能情報としてRIP決定部に通知する。RIP決定部は、RIP機能情報の他、各スプーラの状態を示すスプール情報、並行して動作する各RIP部の状態を示すRIP情報に基づいて、入力されたプリントデータに係るプリントジョブを最も迅速に処理可能なRIP部を決定する。PDL変換部は、必要に応じて、入力されたプリントデータを変換して、決定に係るRIP部のスプーラに登録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−070337号公報
【特許文献2】特開平09−218763号公報
【特許文献3】特開2007−058511号公報
【特許文献4】特開平10−289066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、面付け指定が変更された場合でも、以前の面付け指定での印刷の際に作成された解釈結果データを再利用できる印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ページ記述言語で記述された印刷データの各ページを、面付け指定に対応するページの印刷出力順序と関わりなくあらかじめ定められた順序で、複数の解釈装置に分配して割り当てる割り当て装置と、複数のスプール装置と、前記割り当て装置から割り当てられた前記印刷データの各ページを解釈して解釈結果データを生成し、生成した解釈結果データを、前記複数のスプール装置のうちの当該解釈装置に対応するスプール装置に記憶させる複数の解釈装置と、前記印刷データの各ページに対応する前記解釈結果データが前記複数のスプール装置のいずれに記憶されているかを示す参照情報と、面付け指定に対応するページの印刷出力順序を表す出力順序情報と、を取得し、前記各ページの解釈結果データを、前記出力順序情報が表す印刷出力順序で、それぞれ前記参照情報により特定される当該ページの解釈結果を保持する前記スプール装置から取得し、取得した各ページの解釈結果データに基づくページ画像データを前記面付け指定に従って面付けし、印刷装置に供給して印刷させる印刷制御装置と、を備える印刷システムである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記複数のスプール装置が、それぞれ、当該スプール装置に記憶している前記解釈結果データのページについての前記参照情報を保持しており、前記印刷制御装置は、前記出力順序情報を含む前記印刷データについての出力依頼を受けたときに、当該印刷データに対応する前記参照情報を得ていない場合には、前記複数のスプール装置に対して当該印刷データに対応する前記参照情報を要求して取得する、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷システムである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記割り当て装置は、前記複数の解釈装置のいずれかから新たなページの割り当ての要求を受けると、その要求を発した前記解釈装置に対して前記印刷データのうちまだいずれの解釈装置にも割り当てていないページを割り当て、前記複数の解釈装置の各々は、それぞれ、新たなページの割り当てを受けた場合にそのページの解釈処理をあらかじめ定めた時間条件を満たして実行可能であるかどうかを当該解釈装置の処理負荷に基づき判定し、前記時間条件を満たして実行可能であると判断した場合に、前記割り当て装置に対して新たなページの割り当てを要求する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷システムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、面付け指定が変更された場合でも、以前の面付け指定での印刷の際に作成された解釈結果データを再利用できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、複数の解釈装置に印刷データの解釈を行わせる時点で、どの印刷制御装置にその解釈結果のデータを渡して処理させるかが決まっていない場合にも、対応することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、処理負荷の大きいページが割り当てられた解釈装置に更に別のページが割り当てられ、その別のページの処理が遅くなるという事象を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のシステムの概要を説明するための図である。
図2】リファレンス情報のデータ構造の一例を示す図である。
図3】実施形態のシステムに含まれる各装置の内部機能構成の一例を示す図である。
図4】実施形態のシステムにおいて、中間データの生成及びスプールと、出力依頼とが分けて行われる場合の処理の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の印刷システムは、フロントエンド装置10、複数の解釈装置20、複数のスプール装置30、バックエンド装置40及び印刷装置50を有する。
【0017】
フロントエンド装置10は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどのクライアント装置からページ記述言語(以下「PDL」と略称)で記述された印刷データ100を受け取る。そして、その印刷データ100をページ単位で複数の解釈装置20に割り当てるという、分配処理を実行する。
【0018】
解釈装置20は、画像を表すPDLデータを解釈し、その解釈結果に基づき、その画像を表す中間データ102を生成する。中間データは、PDLデータと、印刷装置50が取り扱い可能なラスター画像データとの中間のデータである。PDLデータは、一般に、画像を、その画像を構成するオブジェクトごとの描画コマンドの集まりとして表現する。逆に、ラスター画像データは、画像を、各々あらかじめ定められた数の色値の組を有する画素の集まりとして表現する。中間データは、これら両者の中間の粒度のデータであり、PDLのオブジェクトを更に複数に分割したサブオブジェクトの集まりとして画像を表現する。サブオブジェクトの一例は、例えば、PDLのオブジェクト(例えば、文字フォント、グラフィックス図形、画像データ)を、ラスター走査の走査線ごとに区切った区間データであってもよい。この区間データは、オブジェクトが1つの走査線上に占める区間を表すデータであり、例えばその区間の両端の座標の組で表され、その区間内の各画素の画素値を規定する情報を含んでいてもよい。画素値は、例えばC,M,Y,Kなどの各色の印刷エンジンが用いる基本色ごとの濃度値である。また、中間データの別の例としてディスプレイリストもよく知られている。この明細書では、PDLを解釈して中間データを生成する処理のことを「RIP処理」と呼ぶことにする。
【0019】
解釈装置20は、フロントエンド装置10から割り当てられたページの中間データ102を生成し、生成した中間データ102をスプール装置30に保存する。
【0020】
スプール装置30は、解釈装置20が生成した中間データ102をスプールする装置である。
【0021】
1つの例では、1つの解釈装置20に対して1つのスプール装置30が設けられる。また、別の例として、1つのグループを構成する複数の解釈装置20が1つのスプール装置30を共有してもよい。いずれの場合でも、基本的には、1つの解釈装置20に対応するスプール装置30は1つである。
【0022】
また、1つの例では、解釈装置20とスプール装置30との間の接続には、フロントエンド装置10と解釈装置20とバックエンド装置40との間の接続よりも、高速な通信手段を用いる。例えば、フロントエンド装置10と解釈装置20とバックエンド装置40との間はローカルエリアネットワークを介して接続し、解釈装置20とスプール装置30との間はコンピュータの内部バスを介して接続するなどである。
【0023】
バックエンド装置40は、印刷装置50に接続され、印刷装置50を制御して印刷を行わせる装置である。バックエンド装置40は、複数のスプール装置30に分散して保存された1つの印刷ジョブの各ページの中間データを収集し、収集した各ページの中間データから各ページのラスター画像データを生成し、生成したラスター画像データを印刷装置50に転送して用紙に印刷させる。
【0024】
さて、書籍や冊子などの作成に用いる業務用の印刷システムの場合、大きな用紙に対して断裁・製本を考慮した順序で複数のページを面付けして印刷する。各ページが面付けされる順序(すなわち印刷出力される順序)は、原稿である印刷データ内でのページの順序とは異なる。ここで、従来の印刷システムでは、複数の解釈装置(「RIP」とも呼ばれる。RIPはRaster Image Processorの略)に各ページを並列的に処理させる場合、その上流にある装置が印刷データの各ページの出力順序(すなわち面付けされる順序)を考慮し、印刷順に各ページをそれら解釈装置に分配していた。そして、それら複数の解釈装置によるページの解釈結果(例えばラスター画像データなど)をページの出力順にスプール装置に蓄積し、その出力順にスプール装置から読み出して印刷装置に供給していた。
【0025】
このような従来の仕組みでは、解釈処理の分配や解釈結果のスプール及び読み出しがページ出力順すなわち面付け順に行われているので、何らかの事情で面付け順に変更が生じた場合、新たな面付け順に従って再度解釈処理からやり直す必要がある。
【0026】
これに対し、図1に示した本実施形態のシステムでは、面付け順が変更されても解釈処理のやり直しが不要となる仕組みを採用している。以下、その仕組みについて説明する。
【0027】
(1)図1に示すように、フロントエンド装置10は、ページの出力順序(面付け順)を考慮せず、あらかじめ定めた順序(例えば印刷データ100でのページ順)に従って印刷データ100を下流に出力する。ここで、印刷データ100がページ非独立(前のページについての命令が後のページの描画結果に影響を与えるタイプ)のPDL(例えばPostScript(登録商標))のデータである場合は、印刷データ100全体を各解釈装置20に提供する。逆に印刷データ100がページ独立のPDLのデータである場合には、印刷データ100をページごとに分割して各解釈装置20に割り当てていく。
【0028】
(2)このときフロントエンド装置10は、その順序に従って、各解釈装置20に対して解釈すべきページを割り当てていく。この実施形態では、この割り当ては、解釈装置20からの要求に応じて行う。すなわち、本実施形態では、各解釈装置20がそれぞれ自分自身の処理負荷を監視し、処理負荷から見て新たなページの割り当てを受けても例えばあらかじめ定められた性能基準(例えば、そのページをあらかじめ定められた時間内に処理完了するという基準)を満たすことができると判断できれば、フロントエンド装置10に新たなページを要求する。
【0029】
また、図示例では、フロントエンド装置10は、解釈装置20に対してページを割り当てた場合、リファレンス情報を生成し、生成したリファレンス情報をバックエンド装置40に通知する。
【0030】
図2にリファレンス情報200のデータ構造の一例を示す。図示のように、リファレンス情報200は、ジョブID202、ページ番号204及びスプールID206を含む。
【0031】
ジョブID202は、入力された印刷データ100についての印刷指示、すなわちその指示に従って行う印刷処理(これが「ジョブ」である)に対して一意的に割り当てた識別情報である。フロントエンド装置10は、印刷データ100を含む印刷指示が入力された場合、その印刷指示に対して新たなジョブIDを割り当てる。その後の本システム内でのジョブの管理はそのジョブIDを用いて行われる。
【0032】
ページ番号204は、印刷データ100のページのうち解釈装置20に割り当てたページの番号である。
【0033】
スプールID206は、ページ割当先の解釈装置20に対応するスプール装置30を一意的に識別する識別情報である。解釈装置20に対してスプール装置30が付属している場合(例えば解釈装置20がインストールされたコンピュータ内の記憶装置をスプール装置30として用いる場合)には、スプールID206として、解釈装置20の識別情報を用いてもよい。
【0034】
リファレンス情報200を生成するために、フロントエンド装置10には、解釈装置20とスプール装置30の対応関係の情報があらかじめ登録されている。
【0035】
1つの例では、フロントエンド装置10は、このリファレンス情報200を、ページの割り当て指示に対応づけて、解釈装置20にも通知する。別の例では、リファレンス情報200のうちジョブIDとページ番号の組を、ページの割り当て指示に対応づけて解釈装置20に通知する。
【0036】
なお、システム内に利用可能なバックエンド装置40が複数ある場合、フロントエンド装置10は、各解釈装置20に対して、リファレンス情報200と共に、今回の出力先に指定されたバックエンド装置40の識別情報も指示する。解釈装置20は、その識別情報が示すバックエンド装置40に対してスプール完了通知を送る。
【0037】
(3)解釈装置20は、受け取った印刷データ100を解釈し、その解釈結果に応じて、フロントエンド装置10から割り当てられたページの中間データ102を生成する。
【0038】
(4)解釈装置20は、生成した中間データ102を、そのページの割り当て指示と対応づけてフロントエンド装置10から受け取ったリファレンス情報200(別の例では、ジョブIDとページ番号の組)に対応づけて、当該解釈装置20に対応するスプール装置30に保存する。
【0039】
スプール装置30は、ページの中間データ102が保存されると、その中間データ102に対応するリファレンス情報200(別の例では、ジョブIDとページ番号の組)を含む、スプール完了通知をバックエンド装置40に送る。バックエンド装置40は、そのスプール完了通知により、どのジョブのどのページの中間データが作成済みであるかを認識する。このように、各解釈装置20がリファレンス情報200等を含んだスプール完了通知をバックエンド装置40に送る構成の場合、フロントエンド装置10からバックエンド装置40にリファレンス情報を送る必要は必ずしもない。
【0040】
以上に説明した流れで、印刷データ100の各ページがいずれかの解釈装置20に分配される。そして、複数の解釈装置20がそれぞれ異なるページを処理することで、印刷データ100の解釈処理が並列実行される。
【0041】
(5)各解釈装置20へのページの割り当ての開始後のいずれかの時点で、フロントエンド装置10は、バックエンド装置40に対して、当該印刷データ100のジョブについての出力依頼を送る。この出力依頼には、ジョブIDと出力順序情報が含まれる。出力順序情報は、印刷対象の用紙(製本分野でいうところの「折り」)に対するページの面付けを考慮したときの、印刷データ100の各ページの印刷装置50への出力順序を特定する情報である。この出力順序は、クライアント装置から印刷データ100と対応づけて入力される面付けの指定情報に基づいて決まる。
【0042】
バックエンド装置40に送られる出力順序情報は、例えば、印刷データ100におけるページの番号を、印刷装置50への出力順序に従って並べたものである。また、別の例では、面付け指定情報(及びページの出力順序を決定するのに必要な他の情報)をバックエンド装置40に送り、バックエンド装置40がその情報からページの出力順序を求める。
【0043】
フロントエンド装置10がバックエンド装置40に出力依頼を送るタイミングは特に限定されない。ある例では、各解釈装置20へのページの割り当ての開始と同時に出力依頼を送る。別の例では、解釈装置20へのページの割り当てがある程度進んだ時点(例えばページ割り当て開始からあらかじめ定めた時間が経過した時点や、あらかじめ定めたページ数(場合によっては印刷データ100の全ページ)の割り当てが済んだ時点)で出力依頼を送る。
【0044】
(6)出力依頼を受けたバックエンド装置40は、その出力順序情報が示す出力順序での先頭ページから順に、各ページの中間データ102を、その中間データ102を保持するスプール装置30から取得する。印刷データ100の各ページの中間データ102がどのスプール装置30に保持されているかは、フロントエンド装置10又は各スプール装置30から通知されたリファレンス情報200から特定する。ここで、スプール装置30からスプール完了通知が到来していないページについては、そのページの中間データはまだスプールされていないので、バックエンド装置40はその中間データの取得を試みず、スプール完了通知が到来するのを待つ。
【0045】
(7)バックエンド装置40は、出力順序の順に取得した各ページの中間データを、取得した順にラスタライズする。「ラスタライズ」とは、ラスター画像データへと変換する処理のことである。
【0046】
(8)バックエンド装置40は、ラスタライズにより得られた各ページのラスター画像データを面付けし、印刷装置50に供給する。印刷装置50は、面付けされたページ群のラスター画像データを用紙に対して印刷する。
【0047】
以上、図1を参照して、本実施形態のシステムの概要を説明した。次に、図3を参照して、フロントエンド装置10、解釈装置20、及びバックエンド装置40の細部について説明する。
【0048】
図3に示すように、フロントエンド装置10はジョブ管理部12、ジョブ出力部14及びコマンド配信部16を有する。
【0049】
ジョブ管理部12は、クライアント装置から印刷データ100及びこの印刷データ100についての印刷指示を受け取ると、その印刷指示に対応するジョブIDを生成し、その印刷指示の実行順序の管理などの、いわゆるジョブ管理を実行する。ジョブの実行順序が到来すると、ジョブ管理部12がジョブ出力部14に当該ジョブの出力を指示すると共に、各解釈装置20(図3には代表して1つのみを示す)及びバックエンド装置40に対して、そのジョブIDを含んだ処理開始指示を送る。ジョブ出力の指示を受けたジョブ出力部14は、そのジョブの印刷データ100内のページの順に、印刷データ100の各ページをコマンド配信部16に出力していく(S1)。
【0050】
ジョブの処理開始指示を受けた解釈装置20のジョブ管理部23は、その指示に対応するジョブIDを含んだキュー(待ち行列)を生成し、そのキューを用いてそのジョブの実行を管理する。ジョブ管理部23は、コマンド受信部21に対して、そのジョブについてのフロントエンド装置10へのページ要求処理の開始を指示する。この指示を受けたコマンド受信部21は、解釈装置20の手持ちの未処理ページ数(すなわち割り当てられたがまだ処理が終わっていないページ数)及びRIP処理部25の現在の処理負荷などを監視し、その監視結果に基づき新たなページの割り当てを受けるかどうかを判定する。ここで、RIP処理部25は、PDLデータの解釈及び中間データの生成を行う手段である。その判定では、例えば、手持ちの未処理ページ数と、RIP処理部25の現在の処理速度から、仮に新たにページの割り当てを受けた場合に、そのページがあらかじめ定めた時間内に処理完了できるかどうかを判定し、完了できると判定した場合に、新たなページの割り当てを受けると判定する(S2)。
【0051】
従来の一般的なページの分配方式では、ページを分配する装置は、分配先の装置のバッファメモリに空きがあれば、その分配先装置の負荷に関わりなく、ページを分配していた。しかし、この方式では、分配先装置に処理負荷の高いページ(例えば多くの複雑なオブジェクトを含んでいるなど)が割り当てられている中で、更にバッファが空いているからといって新たなページを割り当てるとすると、その新たなページの処理が完了するのが大幅に遅くなる。このような遅れが律速となり、並列処理による高速化のメリットが低減される場合もあり得る。これに対し、この例のように、解釈装置20が自らの処理負荷に応じて新たなページを要求するかどうかを決定すれば、処理負荷が高いページを処理している解釈装置20は新たなページを要求しないので、そのような新たなページの処理遅れは生じにくい。
【0052】
このような判定に応じて解釈装置20からページ割り当て要求が到来すると、コマンド配信部16は、その解釈装置20に対して、印刷データ100のうちの未割り当ての先頭ページについての解釈処理を指示するコマンドを配信する(S2)。印刷データ100がページ非独立のPDLデータの場合、最初のページ割り当ての前にその印刷データ100が各解釈装置20に送信されている。ページ独立のPDLデータの場合には、例えば、割り当てるページのPDLデータがこのとき解釈装置20に送られる。また、コマンド配信部16は、バックエンド装置40に対して、リファレンス情報200を通知する(S2)。
【0053】
解釈装置20のコマンド受信部21は、フロントエンド装置10から受信したページの処理指示をジョブ管理部23に転送する(S3)。この処理指示には、リファレンス情報200と同様の情報(ジョブIDとページ番号の組)が含まれる。ジョブ管理部23は、受け取った情報を、そのジョブIDに対応するキューの末尾に追加する。
【0054】
解釈装置20のジョブ管理部23は、転送されたページの処理指示に応じて、RIP処理部25にそのページの解釈処理を指示する(S4)。ここで、ジョブ管理部23は、RIP処理部25が指示された1ページの中間データの処理を終えるごとに、先入れ先出し順でキューの先頭のページの処理をRIP処理部25に指示する。
【0055】
なお、このRIP処理部25によるページの解釈及び中間データ生成の処理と、コマンド受信部21によるページ要求の制御とは、同時並行で実行される。すなわち、RIP処理部25はジョブ管理部23から指示されるページを順に処理し、これと並行してコマンド受信部21がRIP処理部25の処理負荷などから次のページを要求するかどうかを判定し、判定結果に応じて要求を行う。
【0056】
RIP処理部25がページの中間データを生成し終わると、ジョブ管理部23がスプール管理部27に対してその中間データとそのページについてのリファレンス情報200とを渡し、スプール装置30への登録を指示する(S5)。スプール管理部27は、その指示に応じて、その中間データとリファレンス情報200とを対応づけて、スプール装置30に保存する。スプール装置30への保存を終えると、スプール管理部27は、データ配信部29に対して、そのページについてのリファレンス情報200をバックエンド装置40に通知するよう依頼する(S6)。この依頼に応じ、データ配信部29が、リファレンス情報200を含んだスプール完了通知をバックエンド装置40に送る(S7)。
【0057】
フロントエンド装置10からジョブの処理開始指示を受けると、バックエンド装置40のジョブ管理部43が、その指示に含まれるジョブIDに対応づけてジョブの管理情報を生成し、その後のフロントエンド装置10及び各解釈装置20から通知を待ち受ける。
【0058】
フロントエンド装置10からページごとのリファレンス情報200が到来すると(S2)、コマンド受信部41がそのリファレンス情報200を受け取り、ジョブ管理部43に転送する。ジョブ管理部43は、そのリファレンス情報200をジョブ管理情報に組み込む。
【0059】
また、各解釈装置20から各ページについてのスプール完了通知(リファレンス情報200を含む)が到来すると(S7)、コマンド受信部41がその通知を受け取り、ジョブ管理部43に転送する(S8)。ジョブ管理部43は、その通知に含まれるリファレンス情報200のジョブID及びページ番号を確認し、そのジョブIDに対応するジョブ管理情報に含まれるそのページ番号に対応するリファレンス情報200に対して、そのページがスプール完了済みであることを示すフラグを立てる。
【0060】
また、フロントエンド装置10から出力順序情報を含んだ出力依頼が到来すると(S9)、コマンド受信部41がその依頼を受け取り、ジョブ管理部43に転送する(S10)。出力依頼を受け取ったジョブ管理部43は、その依頼に含まれるジョブIDに対応するジョブの実行を開始する。
【0061】
ジョブの実行を開始したジョブ管理部43は、出力順序情報が示す順序に従って、先頭のページから順にラスタライズ処理部45にラスタライズを依頼する(S11)。このとき、ジョブ管理部43は、ラスタライズ処理部45の処理状況を監視し、この監視結果に基づき、ラスタライズ処理部45が新たなページのラスタライズを行うことが可能かどうかを判定し、可能と判定した場合に新たなページのラスタライズの依頼を行う。
【0062】
ジョブ管理部43からのラスタライズ依頼に応じ、ラスタライズ処理部45は、そのページの中間データの転送をデータ取得部47に依頼する(S12)。
【0063】
データ取得部47は、依頼されたページの中間データがどのスプール装置30に保持されているかを、ジョブ管理部43が持つジョブ管理情報内の当該ページのリファレンス情報200から特定し、そのスプール装置30にそのページの中間データを要求する(S13)。なお、この例では、解釈装置20とスプール装置30とが一対一に対応しており、解釈装置20のスプール管理部27がスプール装置30を管理する構成となっているので、ページの中間データの要求は解釈装置20に送られる。ページの中間データを要求された解釈装置20のデータ配信部29は、スプール管理部27にそのページの中間データを要求する。スプール管理部27は、スプール装置30からそのページの中間データを取り出し、データ配信部29に渡す。データ配信部29は、その中間データを、要求元のバックエンド装置40のデータ取得部47に返す。
【0064】
データ取得部47は、取得した中間データをラスタライズ処理部45に渡す。ラスタライズ処理部45は、その中間データをラスタライズすることで、ページのラスター画像データを生成し、生成したラスター画像データをジョブ管理部43に渡す(S14)。ジョブ管理部43は、受け取ったラスター画像データをエンジン制御部49に渡す(S15)。エンジン制御部49は、そのラスター画像データを印刷装置50に送信し、印刷を実行させる。
【0065】
以上、本実施形態のシステムの動作の一例を説明した。次に、図4を参照して、本実施形態のシステムの別の動作モードについて説明する。
【0066】
図1に示した動作モードでは、フロントエンド装置10又は各スプール装置30からバックエンド装置40に対して各ページのリファレンス情報が送られていた。これに対し、図4の動作モードでは、フロントエンド装置10又は各スプール装置30からバックエンド装置40に対してリファレンス情報が提供されていない状況を考える。このような状況は、例えば、一度あるバックエンド装置40及び印刷装置50を出力先に指定してジョブを実行した後、スプール装置30群に保存されているそのジョブのスプールデータ(中間データ)を、出力先を替えて再度印刷出力する場合に起こりえる。すなわち、このような場合、新たに出力先に指定されたバックエンド装置40及び印刷装置50は、その時点では、そのジョブの各ページのリファレンス情報を有していない。また、同じ状況は、ユーザが出力先を指定せずに、印刷データ100の解釈及びスプールのみの実行を指定した場合にも起こりえる。例えば、膨大な量の印刷データ100の解釈及びスプール処理を無人の夜間に自動実行させておき、翌日ユーザが印刷システムを監視できる営業時間内にスプールしたジョブの印刷出力を行う場合がその一例である。この場合も、出力依頼を受けた時点では、バックエンド装置40は当該ジョブの各ページのリファレンス情報を持っていない。
【0067】
図4の例の(1)〜(4)のステップは、フロントエンド装置10から今回の出力先であるバックエンド装置40に対してリファレンス情報が送られないことを除いては、図1に示した同じ番号のステップと同様である。この(1)〜(4)のステップの繰り返しで、印刷データ100の全ページの中間データが、各スプール装置30に分散して蓄積される。
【0068】
(5)このあと、ユーザがフロントエンド装置10に対して、出力対象のジョブID、出力先のバックエンド装置40及び印刷装置50の指定、及び面付け指定情報を入力して印刷を指示すると、フロントエンド装置10は、そのジョブIDと、面付け指定情報に応じた出力順序情報とを含んだ出力依頼を、指定されたバックエンド装置40に送る。
【0069】
(6)出力依頼を受けたバックエンド装置40は、このシステムに含まれる全てのスプール装置30に対して、そのジョブIDに対応する各ページのリファレンス情報200の提供を依頼する。
【0070】
(7)各スプール装置30(解釈装置20がスプール装置30を管理する場合は解釈装置20)は、その依頼に応じて、自分が保持しているそのジョブIDに対応する各ページのリファレンス情報200をバックエンド装置40に送信する。
【0071】
(8)リファレンス情報200を受け取ったバックエンド装置40は、それらリファレンス情報200を参照して、出力順序情報が示す出力順序での先頭ページから順に、各ページの中間データ102を、その中間データ102を保持するスプール装置30から取得する。
【0072】
(9)バックエンド装置40は、取得したページをその取得順にラスタライズする。
【0073】
(10)バックエンド装置40は、ラスタライズ結果のラスター画像データを面付けして印刷装置50に供給する。印刷装置50は、それら面付けされたラスター画像データを用紙に印刷する。
【0074】
このように、リファレンス情報200を受け取っていないバックエンド装置40は、各スプール装置30からリファレンス情報200を取得することで、フロントエンド装置10から出力依頼を受けたジョブの各ページの中間データがどのスプール装置30にあるかを把握する。
【0075】
以上、実施形態の印刷システムについて説明した。以上に説明した実施形態では、バックエンド装置40が、面付け設定に応じて決まる出力順序情報に従って順にページの中間データをスプール装置30群から取得して面付けしていくので、スプール装置30群に保持された各ページの中間データは、面付け設定を変えてもそのまま再利用し得る。
【0076】
また、最初に出力した印刷装置50とは別の印刷装置50で同じ印刷データを印刷する場合、印刷装置50の変更に応じて面付けの設定が変わってしまう場合がある。そのような場合でも、それら両印刷装置50の間の色特性などの差が中間データのラスタライズ及びそのラスタライズ結果に対する色補正等の補正処理で吸収可能であれば、スプール装置30群に保持された各ページの中間データは、後の印刷装置50での印刷でもそのまま再利用し得る。
【0077】
図1、3、4に示した印刷システムのハードウエアへの実装の仕方にはある程度の自由度がある。
【0078】
本実施形態の印刷システムが有する4種類の要素、すなわちフロントエンド装置10、解釈装置20、スプール装置30、バックエンド装置40は、それぞれ、コンピュータにそれら各要素が備える機能を表すプログラムを実行させることにより実現される。この場合、物理的に1つのコンピュータにそれら4種類のうちの1つの要素の機能を持たせるようにしてもよいし、物理的に1つのコンピュータに複数種類の要素の機能を持たせるようにしてもよい。例えば高速化を目指したシステム構成では、フロントエンド装置10、各解釈装置20、バックエンド装置40は、それぞれ別々のマシン上に実装される。ハードウエアコスト低減を目指し、フロントエンド装置10、解釈装置20、スプール装置30、バックエンド装置40を物理的に1つのマシン上に実装することも考えられる。このように、システム構成にはある程度のスケーラビリティの確保が可能である。
【0079】
ここで、コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、CPU等のマイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリメモリ(ROM)等のメモリ(一次記憶装置)、二次記憶装置(ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなど)、各種I/O(入出力)インタフェース、ローカルエリアネットワークなどのネットワークとの接続のための制御を行うネットワークインタフェース等が、例えばバスを介して接続された回路構成を有する。また、そのバスに対し、例えばI/Oインタフェース経由で、CDやDVDなどの可搬型ディスク記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのメモリリーダライタ、などが接続されてもよい。上に例示した各機能モジュールの処理内容が記述されたプログラムがCDやDVD等の記録媒体を経由して、又はネットワーク等の通信手段経由で、二次記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。二次記憶装置に記憶されたプログラムがRAMに読み出されCPU等のマイクロプロセッサにより実行されることにより、上に例示した機能モジュール群が実現される。
【符号の説明】
【0080】
10 フロントエンド装置、12 ジョブ管理部、14 ジョブ出力部、16 コマンド配信部、20 解釈装置、21 コマンド受信部、23 ジョブ管理部、25 RIP処理部、27 スプール管理部、29 データ配信部、30 スプール装置、40 バックエンド装置、41 コマンド受信部、43 ジョブ管理部、45 ラスタライズ処理部、
47 データ取得部、49 エンジン制御部、50 印刷装置、100 印刷データ、
102 中間データ、200 リファレンス情報。
図1
図2
図3
図4