【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するために、本発明の船舶の気体保持装置は、船舶と、この船舶の船底に設けた前記船底に沿って気泡を噴出する気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、この送気手段を駆動する駆動装置とを備え、少なくとも前記気体噴出口以降の前記船底の略端部に複数の端板を前記船底の長手方向に配設し、複数の前記端板は各々が平断面でほぼ対称形であり、少なくともその後端部において流線型を有しかつ後部平断面が外側へ開く形状を有する構成してもよい。
【0017】
ここで、送気手段とは気泡発生に有効な量の送気量が確保できる、ブロワーやタービン駆動のコンプレッサー、船舶に予め装備されている空気圧供給源、機関の排気ガスを加圧したもの等を言い、特に吐出側圧力が変動しても、その送気量の変動が少ないものが好ましい。
【0018】
また、駆動装置とは、電動機、液体燃料やガス燃料により駆動されるエンジン等の他、船舶の機関からの排気を利用して回転力を得るタービン、また油圧や空気圧で駆動される油圧モータや空気圧モータ等を言う。
【0019】
また、端板とは、鉄、鋼及びスチールを含む金属素材や杉やヒノキを含む木材、FRP等の素材から形成される板状の材料をいい、硬性を有し、水分等の影響による錆を誘発しにくいものが好ましい。防錆のために、該素材の表面を塗装することもより好ましい。また該端板の配設方法は、接合部材をネジ、釘、及び接着剤を含む接合方法により船底に接合・配設させる方法を含むが、該船底に係る船舶本体と該端板がその形状において嵌め込まれていること及び/或いは噛み合せていること、あるいは溶接により接合されていることにより配設させる方法が好ましい。配設の際には、該接合部材を補強的に用いることで配設強度を向上させるようにしてもよい。
【0020】
上記のような構成によれば、駆動装置より駆動された送気手段により、気体噴出口から気体が噴出されるところ、該気体噴出口を基準として船尾方向に複数の端板が船底の略端部に長手方向に配設されていることにより、噴出された気泡は水中において船底に保持されて流れることが可能である。
【0021】
また、本装置は、上記構成に加え船舶の気体保持装置は、該端板を複数対、該船舶の船底の平面形状に合わせて対称的に配設し、前部端板の長さを後部端板の長さよりも短くするように構成してもよい。
【0022】
上記のような構成によれば、船舶の平面形状に合わせて略対称に端板が複数対配設されるので、該端板(の集合体)が該船舶の進行を妨げる抵抗体となることを実質的に回避することが可能となる。
【0023】
またこのとき、該前部端板の長さを後部端板の長さよりも短くするように構成することもでき、この構成をとる場合には、該端板(の集合体)を船底の平面形状に近似させることになるため、気泡の保持効果を一層高めることが可能となる。
【0024】
また、本装置は、上記構成に加え、該端板はその断面が該船底側を底辺とした略三角形もしくは二次関数曲線を含む曲線を用いた形で規定される形状を有するように構成してもよい。
【0025】
ここで、略三角形とは、直角三角形、二等辺三角形及び正三角形に限定されることなく、一定の角度及び辺の長さを有する三角形であれば、全てが含まれる。また、二次関数曲線とは、二次関数の基本方程式(y=αx
2+βx+γ)に係る二次曲線であり、所定の変数α、β、γであれば、全てが含まれる。また、任意の曲線を組み合わせて略三角形を構成してもよい。
【0026】
上記のような構成によれば、該端板は断面視により船底側を底辺とした略三角形もしくは二次関数曲線等の曲線を用いた形に係る形状を有することになり、この断面形状によって端板(の集合体)が該船舶の進行を妨げる抵抗を実質的に回避する効果が一層促進されるため、噴出された気泡は水中において船底に保持されて流れることが可能となる。
【0027】
また、上記構成に加え、本発明に係る船舶の気体保持装置は、該端板はその前端部が流線型を有するように構成してもよい。
【0028】
ここで、流線型とは、船舶の進行における水の抵抗を最小限とするため曲線を有する形状であり、たとえば、空気抵抗による進行の妨げを回避するために自動車、列車及び飛行機等の先頭部で採用される形状が含まれるが、これらの形状に限定されることはない。
【0029】
このような構成によれば、端板はその前後端部においてその前端部及び/もしくは後端部が流線型を有することから水の抵抗を最小限化するので、噴出された空気に係る水中での気泡は船底に保持されて流れるものである。
【0030】
また、本発明の船舶の気体保持装置は、この船舶の船底に設けた前記船底に沿って気泡を噴出する気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、この送気手段を駆動する駆動装置と、少なくとも前記気体噴出口以降の前記船底に凹部が長手方向に形成されることを特徴として構成してもよい。
【0031】
ここで、凹部は、船舶の船底自体を凹部に係る形状に屈曲・形成・取り付け或いは切削したものをいう。船底に凹部に係る形状部材を、上記端板の配設方法と同様、ネジ、釘、及び接着剤を含む接合部材、あるいは溶接により船底に配設させるようにしてもよい。
【0032】
上記の構成によれば、駆動装置より駆動された送気手段により、気体噴出口から気体が噴出されるところ、該気体噴出口を基準として船尾方向に該船底に凹部が長手方向に形成されていることにより、噴出された空気に係る水中での気泡は、該船底の該凹部の終端に至るまで保持されて流れる効果が一層促進される。
【0033】
また、本発明の船舶の気体保持装置は、この船舶の船底に設けた前記船底に沿って気泡を噴出する気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、この送気手段を駆動する駆動装置とを備え、少なくとも前記気体噴出口以降の前記船舶の前記船底に係る長手方向に底辺の断面幅が高さに対して1以上の凹凸断面を形成するように構成してもよい。
【0034】
ここで、凹凸断面とは、断面視で任意の角度で折り曲げられた直線もしくは曲線が連接される形状をいい、凹部と凸部の数や総面積及び凹部と凸部との勾配は限定されない。
【0035】
上記の構成によれば、駆動装置より駆動された送気手段により、気体噴出口から気体が噴出されるところ、該気体噴出口を基準として船舶の進行方向とは逆の方向に、長手方向に底辺の断面幅が高さに対して1以上の凹凸断面を形成されるので、噴出された空気に係る水中での気泡は、その抵抗により凹部に付随し、該船底の該凹凸断面の終端に至るまで保持されて流れることが可能となる。
【0036】
また、上記構成に加え、本発明に係る船舶の気体保持装置は、該凹凸断面は略三角形状が横に連なる形状とし、該略三角形の高さは気泡に十分覆われる高さ(たとえば10mm以下)以下に形成されるように構成してもよい。
【0037】
ここで、略三角形とは、上記同様、直角三角形、二等辺三角形及び正三角形に限定されることなく、所定の角度及び辺の長さを有する三角形であれば、全てが含まれる。また、任意の曲線を用いて略三角形を形成してもよい。
【0038】
上記の構成によれば、凹凸断面は略三角形状が横に連なる形状となり、該略三角形の高さが気泡に十分覆われる高さ以下に形成されることで、気泡は実際上その抵抗により該略三角形に係る凹部に付随し、船底の凹凸断面の終端に至るまで気泡が保持されて流れることが可能となる。
【0039】
また、本発明の船舶の気体保持装置は、この船舶の船底に設けた該船底に沿って気泡を噴出する気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、この送気手段を駆動する駆動装置と、少なくとも該気体噴出口以降の前記船底の略端部に設けた複数の端板とを備え、該端板は船舶の安定化手段を兼ねるように適合されることを特徴として構成してもよい。
【0040】
ここで、船舶の安定化手段とは、ビルジキール、フィンスタビライザー、アンチローリング
タンク等、航行中での大波、横波、横風、暴風、突風、台風、暴雨及び雷雨を含む自然現象若しくは他の船舶、流氷、流木及び魚類を含む衝突物体に対し、該船舶の横揺れや横転を抑制するための装置、機械、器具を含む概念であり、これには船舶の船体及び船底に付設するもの及び所定のアルゴリズムを有する自動制御に係るものも含まれる。
【0041】
上記のように構成されることで、駆動装置によって駆動された送気手段により、気体噴出口から気体が噴出されるところ、気体噴出口を基準として船舶の進行方向とは逆の方向に、略端部に設けた複数の端板が船舶の安定化手段を兼ねているため、自然現象及び衝突物体による船舶の横揺れ及び横転を抑制する効果が一層働き、噴出された気泡は水中において、船底の終端に至るまで保持されて流れることが可能となる。
【0042】
また、上記構成に加え船舶の気体保持装置は、該端板の安定化機能への寄与分、該安定化手段の性能を変えて構成してもよい。
【0043】
上記のように構成されることで、安定化手段を別途設ける必要をなくし、もしくは安定化手段の性能、機能、装備を最小化することができるので、船舶の経済効率化を推進することができる。
【0044】
また、上記構成に加え船舶の気体保持装置は、該端板の兼ねる安定化手段はビルジキールとし、ビルジキール高さよりも端板高さを小さく設定して構成してもよい。
【0045】
ここで、ビルジキールとは、一般的には船底の両舷端部に、船首から船底へ、あるいは船側
と船底のつなぎ目部に長手方向に伸びる細い板のことで、横揺れ防止などのために取り付けられている部品のことを示す。
【0046】
上記のように構成されることで、ビルジキールの装備を節制することが可能となり、また端板の高さがビルジキール高さよりも小さいため、船舶にかかる潮流の抵抗を減らすことができる。
【0047】
また、本発明の船舶の気体保持装置は、この船舶の船底に設けた該船底に沿って気泡を噴出する気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、この送気手段を駆動する駆動装置とを備え、該船底の該気体噴出口の後方に噴出した気泡を引き付ける段差を設けたことを特徴として構成してもよい。
【0048】
ここで、段差とは、気体噴出口の船底後方で気泡が船底から離れ拡散し出す箇所に設けた
翼状の隆起部や船尾方向に係る船底が階段状にて形成される構造をいい、その流体的作用により、拡散しかけた気泡を再び船底に引き寄せる効果を有するものをいう。
【0049】
上記の構成によれば、駆動装置より駆動された送気手段により、気体噴出口から噴出された気泡が、かかる段差に係る流体的作用により船底表面に付随し、該船底の段差の終端に至るまで保持されて流れることが可能となる。
【0050】
また、本発明の請求項1に対応した船舶の気体保持装置は、この船舶の船底に設けた前記船底に沿って
流す気泡を噴出する気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、この送気手段を駆動する駆動装置と、前記船舶の船尾に設けたプロペラ手段と、前記船底の少なくとも前記気体噴出口の後方であって前記船底の船尾部よりも前方
の前記気泡が拡散する手前の位置に設けた
水吸込口から前記船底の水
を吸引する
ポンプ手段
であって、
前記水が吸引されることにより前記気泡が拡散する前に前記船底に引き付けられ再び前記船底に付随させて流されることを可能にするポンプ手段とを具備
することを特徴として構成される。
【0051】
ここで、気泡
水吸引手段とは、水中に存在する気泡を吸引する機能を有する装置、機械、器具を意味する概念であり、たとえばブロワーやポンプ、空気圧縮機等を用いて気泡や気泡混じりの水を吸引する構造も含まれる。
【0052】
上記の構成によれば、駆動装置より駆動された送気手段により、気体噴出口から噴出された気泡が船底から離れ拡散し出すところで気泡
水吸引手段によって吸引することが可能となり、該気泡の水中での拡散が回避されることが可能となる。
【0053】
また、上記構成に加え船舶の気体保持装置は、前記気泡
水吸引手段で吸引した気泡が再び船底から噴出されて構成してもよい。
【0054】
上記の構成によれば、船底から離れ拡散し出すところで気泡
水吸引手段にて気泡
の一部が
水とともに吸い込まれることが可能となり、この吸い込まれた気泡を再吐出することで、さらに有効に船体全体に亘って摩擦抵抗の低減が可能となる。
【発明の効果】
【0055】
上記構成によれば、気体噴出口から気体が噴出されるところ、該気体噴出口を基準として船尾方向に複数の端板が船底の略端部に長手方向に配設されていることにより、噴出された気泡が水中において船底全体に亘って船底に沿って流れることが可能となり、有効に摩擦抵抗の低減が図れる。また端板の作用で、波や流れ等の外乱により船舶が傾いても、気泡が水圧の低い方へ拡散することが防止でき、安定して摩擦抵抗の低減が図れる。
【0056】
また、上記構成によれば、船底の平面形状に合わせて略対称に端板が複数対配設されるので、該端板(の集合体)が該船舶の進行を妨げる抵抗体となることを実質的に回避することが可能となる。また、船底の前部の平面形状に合わせて、船首部近傍の最前面まで気体噴出口を配設することが可能となり、摩擦抵抗の低減が船底全体に亘って図れる。
【0057】
また、上記構成によれば、該端板(の集合体)を船底の平面形状に近似させることになるため、気泡の保持効果を一層高めることが可能となる。
【0058】
また、上記構成によれば、端板は断面視により船底側を底辺とした略三角形もしくは二次関数曲線等の曲線を用いた形で規定される構成としているため、この断面形状によって平板を用いた場合に比較して、水との接触面積が低減でき、端板を設置することによる摩擦抵抗が低減できる。これにより、端板(の集合体)が該船舶の進行を妨げる抵抗を実質的に回避する効果が一層促進され、噴出された空気に係る水中での気泡は、有効に船底に沿って保持されて流れる。
【0059】
また、上記構成によれば、端板はその前後端部においてその前端部及び/もしくは後端部が流線型を有することから水の抵抗を最小限化するので、端板を設置することによる摩擦抵抗がさらに低減でき、噴出された空気に係る水中での気泡は、有効に船底に沿って保持されて流れる。
【0060】
また、上記構成によれば、該気体噴出口を基準として船尾方向に該船底に凹部が長手方向に形成されていることにより、噴出された空気に係る水中での気泡は、該船底の該凹部の終端に至るまで有効に船底に沿って保持されて流れる効果が一層促進される。また凹部の作用で、波や流れ等の外乱により船舶が傾いても、気泡が水圧の低い方へ拡散することが防止でき、安定して摩擦抵抗の低減が図れる。
【0061】
また、上記構成によれば、該気体噴出口を基準として長手方向に底辺の断面幅が高さに対して1以上の凹凸断面が形成されるので、噴出された空気に係る水中での気泡は、その抵抗により凹部に付随し、該船底の該凹凸断面の終端に至るまで保持されて流れることが可能となる。
【0062】
また、上記構成によれば、凹凸断面は略三角形状が横に連なる形状となり、該略三角形の高さが気泡に十分覆われる高さ以下に形成されることで、気泡は実際上その差圧により該略三角形に係る凹部に付随し、船底の凹凸断面の終端に至るまで気泡が保持されて流れることが可能となる。また、略三角形状が横に連なる形のため、略三角形状の頂点が多数存在し、ドック入り時の台座の上に乗せることが容易にでき、作業が改善できる。
【0063】
また、上記構成によれば、気体噴出口を基準として船尾方向に、船底の略端部に設けた複数の端板が船舶の安定化手段を兼ねているため、自然現象及び衝突物体による船舶の横揺れ及び横転を抑制する効果が一層働き、噴出された気泡は水中において、船底の終端に至るまで保持されて流れることが可能となる。また安定化手段を兼ねた複数の端板の作用で、波や流れ等の外乱があっても船舶が傾きにくく、また多少傾いても端板の作用で、気泡が水圧の低い方へ拡散することが防止でき、安定して摩擦抵抗の低減が図れる。
【0064】
また、上記構成によれば、安定化手段を別途設ける必要をなくし、もしくは安定化手段の性能、機能、装備を最小化することができるので、船舶の経済効率化を推進することができる。
【0065】
また、上記構成によれば、ビルジキールの装備を節制することが可能となり、また端板の高さがビルジキール高さよりも小さいために船舶にかかる潮流の抵抗を減らすことができる。
【0066】
また、上記構成によれば、駆動装置より駆動された送気手段により、気体噴出口から噴出された気泡が、気泡を引き付ける段差の流体的作用により船底表面に付随し、該船底の全体に亘り保持されて流れることが可能となり、摩擦抵抗の低減効果を増すことができる。
【0067】
また、上記構成によれば、気体噴出口から噴出された気泡が船底から離れ拡散し出すところで気泡
水吸引手段によって吸引することが可能となり、該気泡の水中での拡散が回避されることが可能となる。
【0068】
また、本発明によれば、気泡
水吸引手段にて気泡
の一部が
水とともに吸い込まれ、船底から離れ拡散し出すところで気泡
水吸引手段にて気泡が吸い込まれることが可能となり、この吸い込まれた気泡を再吐出することで、さらに有効に船体全体に亘って摩擦抵抗が低減されることが可能となる。