【実施例】
【0031】
[実験例1]アルギン酸ナトリウムと寒天の比率
次に、本発明に係る米様食品を表1に示すようにアルギン酸ナトリウムと寒天の比率を変化させて作製した。先ず、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI−5:キミカ社製)と寒天(伊那寒天M−13:伊那食品工業社製)の合計が15gになるように計り、これを水1000gに加え、分散後110℃にて10分間オートクレーブを使用して溶解させた。これを70℃に冷却後、直径3mmの穴から、10℃に調整した0.5重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後30分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離し粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品8gと混ぜ合わせ、炊飯器にて実施例1乃至5、比較例1及び2に係る米様食品入り米飯を作製した。
【0032】
【表1】
【0033】
得られた実施例1乃至5、比較例1及び2に係る米様食品入り米飯について、強度、粘り、付着性、つや、形状を測定した。また別に米様食品について溶け出し率と戻り倍率を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
強度は、テクスチャーアナライザー(TAXT−Plus:英弘精機社製、プランジャー(1cm
2円柱状、進入速度30mm/分、測定温度60℃):英弘精機社製)を使用し、粒状物3個をプランジャー測定範囲内に置いて圧縮率90%までにおける最高強度の測定を行った。3回測定を行い、平均値を記載した。
【0035】
付着性は、テクスチャーアナライザー(TAXT−Plus:英弘精機社製、プランジャー(1cm
2円柱状、進入速度30mm/分、測定温度60℃):英弘精機社製)を使用し、粒状物3個をプランジャー測定範囲内に置いて圧縮率90%までにおける最大強度を測定後、プランジャーを引き上げ、米様食品がプランジャーから離れるまでの負の最高強度(g)とした。3回測定を行い、平均値を記載した。
【0036】
粘りは、テクスチャーアナライザー(TAXT−Plus:英弘精機社製、プランジャー(1cm
2円柱状、進入速度30mm/分、測定温度60℃):英弘精機社製)を使用し、粒状物3個をプランジャー測定範囲内に置いて圧縮率90%までにおける最大強度を測定後、プランジャーを引き上げ、米様食品がプランジャーから離れてから強度が0に戻るまでの負の部分の面積値(g・mm)とした。3回測定を行い、平均値を記載した。
【0037】
つや及び形状は、目視にて観察した。
【0038】
溶け出し率は、乾燥状態の米様食品5gを水500gに入れ、加熱して沸騰状態で20分間放置した。その後、メッシュを使用して固形分を分離し、90℃に乾燥して水分値を始めの乾燥状態と同様にして重量を測定した。数1により溶け出し率(%)を測定した。
【0039】
【数1】
【0040】
戻り倍率は、米様食品5gを95℃の湯に10分間浸漬後、メッシュを使用して固形分を分離し、固形分の重量を測定し、数2により戻り倍率を計算した。
【0041】
【数2】
【0042】
さらに得られた実施例1乃至5、比較例1及び2に係る米様食品入り米飯について、パネラー10名により評価を行った。評価方法は、通常の米飯同様である場合:5点、通常の米飯に比べ若干違和感があるが問題なく食することができる場合:3点、通常の米飯に比べ違和感があり食感も劣る場合:1点とし、10名の合計点で示した。結果を表1に示す。
【0043】
[実験例2]アルギン酸ナトリウムの分子量による影響
次に、本発明に係る米様食品を表2に示すようにアルギン酸ナトリウムの分子量を変化させて作製した。先ず、アルギン酸ナトリウム(ULV−10、ULV−30、ULV−50、I−5、I−S:キミカ社製)10gと寒天(カリコリカン:伊那食品工業社製)10gを計り、これを水1000gに加え、分散後沸騰溶解させた。これを直径3mmの穴から、10℃に調整した0.25重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後30分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離し粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品8gと混ぜ合わせ、炊飯器にて実施例6乃至10に係る米様食品入り米飯を作製した。
【0044】
得られた実施例6乃至10に係る米様食品入り米飯について、実験例1と同様に評価を行い、結果を表2に記載した。
なお、アルギン酸ナトリウムの重量平均分子量は粘度法により求めた。
【0045】
【表2】
【0046】
[実験例3]アルギン酸ナトリウムのM/Gの比率
次に、本発明に係る米様食品を表3に示すようにアルギン酸ナトリウムのM/G比を変化させて作製した。先ず、M/G比の異なるように配合したアルギン酸ナトリウム10gと寒天(伊那寒天UM−9:伊那食品工業社製)10gを計り、これを水1000gに加え、分散後沸騰溶解させた。M/G比は既知の方法、即ちフェノール硫酸法(Carbohydrate Research, 32(1974), 217)によって測定した。これを直径3mmの穴から、10℃に調整した0.5重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後30分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離後し粒子状のゲルを回収した。これをフリーズドライ(DF−05H:日本真空技術社製)で乾燥することにより、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品8gと混ぜ合わせ、炊飯器にて実施例11乃至13に係る米様食品入り米飯を作製した。
【0047】
得られた実施例11乃至13に係る米様食品入り米飯について、実験例1と同様に評価を行い、結果を表3に記載した。
【0048】
【表3】
【0049】
[実験例4]カルシウム濃度と浸漬時間による影響
次に、本発明に係る米様食品を表4に示すようにカルシウム濃度と浸漬時間を変化させて作製した。先ず、アルギン酸ナトリウム(スノーアルギンM)と寒天(カリコリカン:伊那食品工業社製)を1:1で混合させ、合計が15gになるように計り、これを水1000gに加え、分散後沸騰溶解させた。これを直径3mmの穴から、10℃に調整した0.1〜1.0重量%塩化カルシウム2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後10〜30分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離後し、粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品8gと混ぜ合わせ、炊飯器にて、実施例14乃至20に係る米様食品入り米飯を作製した。
【0050】
得られた実施例14乃至20に係る米様食品入り米飯について、実験例1と同様に評価を行い、結果を表4に記載した。
【0051】
【表4】
【0052】
[実験例5]アルギン酸から作製
次に、本発明に係る米様食品を表5に示すようにアルギン酸から作製した。先ず、水にアルギン酸(キミカアシッドG:キミカ社製)、炭酸ナトリウム、寒天(伊那寒天カリコリカン:伊那食品工業社製)を分散し115℃で5分間オートクレーブを使用して溶解した。これを70℃に冷却後、直径3mmの穴から、10℃に調整した0.4重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後60分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離し粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品8gと混ぜ合わせ、炊飯器にて、実施例21に係る米様食品入り米飯を作製した。
【0053】
【表5】
【0054】
得られた実施例21に係る米様食品入り米飯について、実験例1と同様に評価を行い、結果を表6に記載した。
【0055】
【表6】
【0056】
以上のように、アルギン酸を使用してもアルギン酸ナトリウムを使用した場合と同様に良好な米様食品を得ることができた。
【0057】
[実験例6]
次に、本発明に係る米様食品を表7に示す配合にて作製した。先ず、アルギン酸ナトリウム(アルギンI−3:キミカ社製)7gと寒天(伊那寒天UM−11:伊那食品工業社製)7gを計り、これを水1000gに加え、分散後110℃にて10分間オートクレーブを使用して溶解させた。これを70℃に冷却後、直径3mmの穴から、10℃に調整した0.5重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後30分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離し粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品6gと混ぜ合わせ、炊飯器にて、実施例22に係る米様食品入り米飯を作製した。比較としてマンナンヒカリ(大塚食品社製)を米様食品の代わりに使用して同様に炊飯を行った(比較例3)。
【0058】
【表7】
【0059】
得られた実施例22、比較例3に係る米様食品入り米飯及びマンナンヒカリを炊飯したものについて実験例1と同様に評価を行い、結果を表8に記載した。
【0060】
【表8】
【0061】
以上のように実施例22は比較例3に比べ戻りが良く食感も良好であった。また米飯に適度なつやがあった。
【0062】
[実験例7]高融点寒天と通常の寒天比較
次に、本発明に係る米様食品を、表9に示した配合にて高融点寒天と通常の寒天について作製した。先ず、アルギン酸ナトリウム(アルギンI−3:キミカ社製)8gと高融点寒天(伊那寒天カリコリカン:伊那食品工業社製)5gまたは通常の寒天(伊那寒天S−7:伊那食品工業社製)5gを計り、これを水1000gに加え、分散後110℃にて10分間オートクレーブを使用して溶解させた。これを70℃に冷却後、直径3mmの穴から、10℃に調整した0.4重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後60分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離し粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品8gと混ぜ合わせ炊飯器にて、実施例23及び24に係る米様食品入り米飯を作製した。比較として寒天の代わりにカラギナン(イナゲルE−150:伊那食品工業社製)を使用して米様食品を作製し同様に炊飯を行った(比較例4)。
【0063】
【表9】
【0064】
得られた実施例23及び24、比較例4に係る米様食品入り米飯について、実験例1と同様に評価を行い、結果を表10に記載した。
【0065】
【表10】
【0066】
以上のように通常の寒天を使用しても良好な米様食品が得られたが、高融点を使用した方が、溶け出しが少なくさらに良好なものが得られた。また、カラギナンを使用したものは炊飯時に溶け出して形状をとどめなかった。
【0067】
[実験例8]多糖類併用
次に、本発明に係る米様食品を表11及び12に示すように多糖類を変化させて作製した。先ず、アルギン酸ナトリウム(アルギンI−3:キミカ社製)7gと高融点寒天(伊那寒天カリコリカン)5g、または多糖類1gを計り、これを水1000gに加え、分散後110℃にて10分間オートクレーブを使用して溶解させた。これを70℃に冷却後、直径3mmの穴から、10℃に調整した0.5重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後40分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離し粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品8gと混ぜ合わせ炊飯器にて、実施例25乃至30に係る米様食品入り米飯を作製した。
【0068】
【表11】
【0069】
【表12】
【0070】
得られた実施例25乃至30に係る米様食品入り米飯について、実験例1と同様に評価を行い、結果を表13に記載した。
【0071】
【表13】
【0072】
以上のように多糖類を添加することにより、強度的には低いが粘りのある米様食品を得ることができた。
【0073】
[実験例9]
実施例22で作製した米様食品入り米飯と比較例3で作製したマンナンヒカリ入り米飯を使用して、通常作られるようにしてピラフ、寿司飯、雑炊、焼き飯を作製した。結果を表14に記載した。
【0074】
【表14】
【0075】
以上のように実施例22で作製した米様食品は、実際に調理に応用しても通常のピラフ、寿司飯、雑炊、焼き飯と大差なかった。
【0076】
[実験例10]
次に、本発明に係る米様食品を表15に示す配合にて作製した。先ず、アルギン酸ナトリウム(アルギンI−3:キミカ社製)7gと寒天(伊那寒天EM−15:伊那食品工業社製)7gを計り、これを水1000gに加え、分散後110℃にて10分間オートクレーブを使用して溶解させた。これを70℃に冷却後、直径3mmの穴から、10℃に調整した0.5重量%乳酸カルシウム液2000mLに滴下した。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。滴下後30分間放置したゲルをメッシュに取り、カルシウム溶液を分離し粒子状のゲルを回収した。これを−10℃で24時間冷凍後、室温にて解凍し、分離した固形物をさらに布中で絞り脱水した。これを90℃で送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze:ISUZU社製)することによって、水分値10%の米様食品を得た。米75gを水で洗浄後、得られた米様食品6gと混ぜ合わせ炊飯器にて、実施例31に係る米様食品入り米飯を作製した。
【0077】
【表15】
【0078】
比較として表16に示した配合、製法にて米様食品を作製し同様に炊飯を行った。ただし米様食品は24g使用した。先ず、粉末を水400gに分散、30分撹拌後1時間放置しさらに60℃で30分保持した。この糊状物を3.5mm直径の穴を通して適宜切断しながら長さ約8mmの円柱状成形物を作製した。これを塩化カルシウム0.2重量%、水酸化カルシウム0.3重量%の80℃の溶液に15分間浸漬した。これを水洗しpH3のクエン酸溶液に1時間浸漬して中和し比較例5に係る米様食品を得た。
【0079】
【表16】
【0080】
得られた実施例31に係る米様食品入り米飯及び比較例5に係る米様食品を炊飯したものについて実験例1と同様に評価を行い、結果を表17に記載した。
【0081】
【表17】
【0082】
以上のように実施例31は比較例5に比べ、戻りが良く食感も良好であった。また米飯に適度なつやがあった。
【0083】
[実験例11]
実験例6の実施例22と同様な配合量、溶解方法にてアルギン酸ナトリウムと寒天を含む溶液を得た。これをステンレスバットに高さ3mmになるように流し込み、10℃に冷却してゲル化させた。このゲルを縦約3mm×横約3mmに切断し、10℃に調整した0.5重量%乳酸カルシウム2000mLに30分間浸漬した。このゲルをメッシュに取りカルシウムを分離後、実験例6と同様にして乾燥して水分値10%の米様食品を得た(実施例32)後、同様に炊飯して実施例22と比較し、表18に記載した。
【0084】
【表18】
【0085】
以上のように寒天をゲル化させた後、カルシウム溶液に浸漬した場合においても、寒天を含むアルギン酸溶液を寒天の凝固点以下のカルシウム溶液に浸漬した場合と同様な物性の米様食品が得られた。
【0086】
[実験例12]
実験例6の実施例22と同様な配合量、溶解方法にてアルギン酸ナトリウムと寒天を含む溶液を得た。これを70℃に冷却後、直径3mmの穴から、50℃に調整した0.5重量%乳酸カルシウム液2000mLへ徐々に注入し麺状の固形物を得た。乳酸カルシウム液は、循環して常に一定温度になるように冷却した。注入後30分間放置した麺状のゲルをメッシュに取り回収した。これを10℃で4時間冷却し寒天成分をゲルさせた後(寒天の凝固点は約35℃)、約3mmに切断し3mm角の成形物を得た。これを実験例6の実施例22と同様に冷凍・解凍、乾燥して水分値10%の米様食品を得た(実施例33)後、同様に炊飯して実施例22と比較し、表19に記載した。
【0087】
【表19】
【0088】
以上のように寒天を含むアルギン酸溶液において、アルギン酸を寒天溶液の凝固点以上の温度のカルシウム溶液に浸漬してゲル化させた後、寒天溶液の凝固点以下に冷却して寒天をゲル化させた場合においても、寒天を含むアルギン酸溶液を寒天の凝固点以下のカルシウム溶液に浸漬した場合とほぼ同様な物性の米様食品が得られた。