特許第5800148号(P5800148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800148
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】エンジンリアシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/32 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   F16J15/32 311P
   F16J15/32 311G
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-279433(P2011-279433)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-130229(P2013-130229A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】鎗水 健一
(72)【発明者】
【氏名】西村 智昭
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/006338(WO,A1)
【文献】 実開昭61−165885(JP,U)
【文献】 特公昭48−040624(JP,B1)
【文献】 実開平05−083540(JP,U)
【文献】 特開平08−061143(JP,A)
【文献】 実開平04−017567(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの機外側にエンドプレートが配置されるとともに前記エンドプレートの更に機外側にシャフトに連結されたフライホイールが配置されているエンジンリア部に装着されるエンジンリアシールにおいて、
前記ハウジングの軸孔内周に装着されて前記シャフトの周面に摺動自在に密接するオイルシールと、前記オイルシールの機外側に配置される泥水防止用シールとを有し、
前記泥水防止用シールは、前記シャフトの周面上に取り付けられる取付部と、前記取付部から径方向外方へ向け設けられて前記エンドプレートの機外側端面に摺動自在に密接するシールリップとを一体に有し、
前記シールリップは、前記エンドプレートの機外側端面から遠ざかるのに伴って外径寸法が小さくなる向きの傾斜面状に形成されたリップ端背面部を有し、
さらに前記シールリップは、前記シャフトの低速回転時にリップ端が前記エンドプレートの機外側端面に接触するとともに前記シャフトの高速回転時に遠心力の作用により前記リップ端が前記エンドプレートの機外側端面から離れる構造を有することを特徴とするエンジンリアシール。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンリアシールにおいて、
前記泥水防止用シールは、前記フライホイールとの間の軸方向間隙を3mm以下に設定された前記エンドプレートの内周側にて前記シャフトの周面上に取り付けられることを特徴するエンジンリアシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両用エンジンにおけるクランクシャフトの後端部にてエンジンオイルをシールするとともに泥水の浸入を抑制するために用いられるエンジンリアシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人が先に提案した図5に示すエンジンリアシールは、ハウジング51の軸孔51a内周に装着されてシャフト52の周面に摺動自在に密接するオイルシール53の機外側Bに、磁気エンコーダ55およびハウジング端面51bの組み合わせよりなる非接触式のダストシール54を設けたものであって、ダストシール54およびオイルシール53よりなる二重のシール構造であるために、優れたシール性を発揮することが可能とされている。
【0003】
しかしながら、オイルシール53の機外側Bに設けられるのが非接触式のシール54であることから、この非接触式のシール54の間隙部54aを通って機外側Bの泥水が浸入することがあり、これに対し、対泥水のシール性(泥水シール性)を一層向上することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−46097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、泥水シール性を一層向上させることができ、しかも回転トルクが増大するのを抑制することもできるエンジンリアシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるエンジンリアシールは、ハウジングの機外側にエンドプレートが配置されるとともに前記エンドプレートの更に機外側にシャフトに連結されたフライホイールが配置されているエンジンリア部に装着されるエンジンリアシールにおいて、前記ハウジングの軸孔内周に装着されて前記シャフトの周面に摺動自在に密接するオイルシールと、前記オイルシールの機外側に配置される泥水防止用シールとを有し、前記泥水防止用シールは、前記シャフトの周面上に取り付けられる取付部と、前記取付部から径方向外方へ向け設けられて前記エンドプレートの機外側端面に摺動自在に密接するシールリップとを一体に有し、前記シールリップは、前記エンドプレートの機外側端面から遠ざかるのに伴って外径寸法が小さくなる向きの傾斜面状に形成されたリップ端背面部を有し、さらに前記シールリップは、前記シャフトの低速回転時にリップ端が前記エンドプレートの機外側端面に接触するとともに前記シャフトの高速回転時に遠心力の作用により前記リップ端が前記エンドプレートの機外側端面から離れる構造を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2によるエンジンリアシールは、上記した請求項1記載のエンジンリアシールにおいて、前記泥水防止用シールは、前記フライホイールとの間の軸方向間隙を3mm以下に設定された前記エンドプレートの内周側にて前記シャフトの周面上に取り付けられることを特徴する。
【0008】
上記構成を備える本発明のエンジンリアシールにおいては、ハウジングの機外側にエンドプレートが配置されるとともにエンドプレートの更に機外側にシャフトに連結されたフライホイールが配置されていると云う状況のもとで、オイルシールに泥水防止用シールが組み合わせされ、この泥水防止用シールが、シャフトの周面上に取り付けられる取付部と、取付部から径方向外方へ向け設けられてエンドプレートの機外側端面に摺動自在に密接するシールリップとを一体に有するものとされ、すなわち接触式シールとされている。接触式シールは、シールリップが相手材(エンドプレート)に接触しているときに間隙を形成しないものであり、よって間隙を形成する非接触式シールと比較して、シール性に優れるものである。
【0009】
また、この泥水防止用シールにおいて、シールリップは、エンドプレートの機外側端面から遠ざかるのに伴って外径寸法が小さくなる向きの傾斜面状に形成されたリップ端背面部を有し、すなわちスクレーパー状に形成されたリップ端背面部を有している。このスクレーパー状のリップ端背面部では図4(A)に示すように、シールリップ33の上方から浸入してきた泥水(矢印d)がリップ端背面部33b上で傾斜面の傾きにしたがってエンドプレート4から遠ざかる方向に流れるため(矢印e)、リップ端33aがエンドプレート4に接触する摺動部からシールリップ33の内側空間へと泥水が浸入しにくくなり、よってシール性が向上する。これに対し、比較例として示す図4(B)ではリップ端背面部33bの傾斜の向きが反対とされ、すなわちリップ端背面部33bがエンドプレート4から遠ざかるのに伴って外径寸法が大きくなる向きの傾斜面状に形成されている。したがってシールリップ33の上方から浸入してきた泥水(矢印d)がリップ端背面33b上に溜まり、またはここから円周方向へ流れることになり、いずれにしてもリップ端33aがエンドプレート4に接触する摺動部からシールリップ33の内側空間へと泥水が浸入する可能性が高いものである。
【0010】
また、上記したように本発明のエンジンリアシールは、泥水防止用シールとして接触式シールを備えるので、シール性は向上しても、摺動トルクの増大による燃費の低下が懸念されるところ、本発明においてシールリップは、シャフトの低速回転時にリップ端がエンドプレートの機外側端面に接触するとともにシャフトの高速回転時に遠心力の作用によりリップ端がエンドプレートの機外側端面から離れる構造とされている。したがって摺動トルクが大きいシャフトの高速回転時に遠心力の作用によってリップ端がエンドプレートの機外側端面から離れるため、摺動トルクが極端に増大するのを抑制することが可能とされている。尚、泥水環境下では自動車等車両は低速走行することが想定され、このときシャフトは低速回転であってリップ端はエンドプレートの機外側端面に接触しているため、泥水シール性が不足する事態は発生しないと考えられる。
【0011】
また、上記したように本発明のエンジンリアシールは、ハウジングの機外側にエンドプレートが配置されるとともにエンドプレートの更に機外側にシャフトに連結されたフライホイールが配置されると云う状況のもとで使用されるので、エンドプレートおよびフライホイール間に微小な軸方向間隙による非接触式シールを設定することにより泥水シール性を一層向上させることが考えられる。間隙の大きさとしては3mm以下が好適であり、この場合、間隙は狭いので、泥水防止用シールはエンドプレートの内周側にてシャフトの周面上に取り付けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0013】
すなわち本発明のエンジンリアシールにおいては上記したように、ハウジングの機外側にエンドプレートが配置されるとともにエンドプレートの更に機外側にシャフトに連結されたフライホイールが配置されると云う状況のもと、オイルシールに泥水防止用シールが組み合わせされ、この泥水防止用シールが、シャフトの周面上に取り付けられる取付部と、取付部から径方向外方へ向け設けられてエンドプレートの機外側端面に摺動自在に密接するシールリップとを一体に有する接触式シールとされているために、泥水シール性を向上させることができる。
【0014】
また、泥水防止用シールにおいて、リップ端背面部がスクレーパー状に形成され、浸入してきた泥水をリップ摺動部から遠ざかる方向に流すために、泥水シール性を一層向上させることができる。
【0015】
また、摺動トルクが大きいシャフトの高速回転時に遠心力の作用によってリップ端がエンドプレートの機外側端面から離れるために、摺動トルクが極端に増大するのを抑制することができる。
【0016】
また、泥水防止用シールが、フライホイールとの間の軸方向間隙を3mm以下に設定されたエンドプレートの内周側にてシャフトの周面上に取り付けられる場合には、オイルシールおよび泥水防止用シールに加えて、エンドプレートおよびフライホイール間に非接触式の第3シールが設定されるために、泥水シール性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係るエンジンリアシールの半裁断面図
図2】同シールに用いられるオイルシールの単品状態を示す要部断面図
図3】本発明の他の実施例に係るエンジンリアシールの要部断面図
図4】(A)は本発明に係るスクレーパー構造の説明図、(B)は比較例の説明図
図5】従来例に係るエンジンリアシールの半裁断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)対泥水のシール性について、従来の仕様は、オイルシールのダストリップを強化することで対応してきたが、エンジンが水没するなどの苛酷な環境では、ダストリップのみでは摩耗の進行とともに、しめしろがなくなり、いずれ隙間になってくる。隙間になった場合は、即泥水浸入が起こるため、泥水の浸入によりエンジン自体の不具合が起こる。
(2)上記不都合を解消するため、本発明では、シールの大気側のスペースを利用して、泥水用のシールを追加する。泥水シールは、しめしろを小さく設定し、エンドプレートの端面に軽く接触する程度にする。リップ先端形状は、スクレーパー状とし、泥水の流れに対して、オイルシール部に来にくくなる形状とする。
軸回転が低回転の場合は、しめしろを有し、高回転になった場合には隙間が発生して、トルクへの影響を極力小さくする。泥水環境下で走行する場合は、低回転域と考えられる。エンドプレートとフライホイール(リングギヤ)の間でラビリンス構造をとり、泥水が来にくい構造とする。
(3)本発明による効果として、シール部に上方から泥水が来た場合は、リップ背面の斜面により、水は下方へ流れ、オイルシール側へは来ない。また、下方から来た場合でも低回転であれば、しめしろを有するため、対象シールで密封できる。回転数が上昇すると、遠心力により、リップはしめしろを失うため、トルクへの悪影響は最低限に抑えられる。また、エンドプレートとフライホイールによるラビリンスのため、高回転では、シール部へ泥水は来にくくなるため、対象シールのしめしろがなくても問題ない。しめしろを最低限にすることにより、摩耗の進行は遅く長期の密封が期待できる。
【実施例】
【0019】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係るエンジンリアシール(密封装置)1の半裁断面を示している。図2は、同エンジンリアシール1に用いられるオイルシール11の単品状態を示している。図1に示すように当該実施例に係るエンジンリアシール1は、自動車等車両用エンジンにおけるクランクシャフト2の後端部にて機内側(密封流体側)Aのエンジンオイルをシールするとともに機外側(大気側)Bの泥水の浸入を抑制するために用いられるものであって、当該エンジンリアシール1が装着されるエンジンリア部(クランクシャフト後端部)の状況(構造)としては、ハウジング(エンジンハウジング)3の機外側Bにエンドプレート4が配置されるとともに、エンドプレート4の更に機外側Bに、シャフト2に連結されたフライホイール5が配置されている。尚、リップ17,33の自由状態を示すため、エンドプレート4は仮想線となっている。
【0021】
当該エンジンリアシール1は、ハウジング3の軸孔3a内周に装着されてシャフト2の周面に摺動自在に密接するオイルシール11と、このオイルシール11の機外側Bに配置される泥水防止用シール31とを有している。泥水防止用シール31は、シャフト2の周面上に取り付けられる取付部32と、この取付部32から径方向外方へ向け設けられてエンドプレート4の機外側端面4aに摺動自在に密接するシールリップ33とを一体に有している。シールリップ33は、リップ端33aを有し、またエンドプレート4の機外側端面4aから遠ざかるのに伴って外径寸法が徐々に小さくなる向きの傾斜面状に形成されたリップ端背面部33bを有している。さらにシールリップ33は、シャフト2の低速回転時にリップ端33aがエンドプレート4の機外側端面4aに接触するとともにシャフト2の高速回転時に遠心力の作用によりリップ端33aがエンドプレート4の機外側端面4aから離れる接離可能な構造を有している。
【0022】
各部ないし各部品の詳細は、以下のとおりとされている。
【0023】
オイルシール11は、所定のゴム状弾性体(耐熱性に優れるFKMなど)によって環状に成形され、その構成要素として、ハウジング3の軸孔3a内周面に取り付けられる取付部12と、取付部12の機外側端部から径方向内方へ向けて設けられたフランジ部13と、フランジ部13の内周端部に設けられたシール部14とを一体に有し、シール部14に、機内側Aを向きシャフト2の周面に摺動自在に密接するシールリップ(第1ラジアルリップ)15と、機外側Bを向きシャフト2の周面に摺動自在に密接する第1ダストリップ(第2ラジアルリップ)16と、同じく機外側Bを向きエンドプレート4の機内側端面4bに摺動自在に密接する第2ダストリップ(サイドリップ)17が一体に設けられている。取付部12およびフランジ部13には断面略L字形の金属環18が埋設されている。シールリップ15にはガータスプリング19が嵌着されている。また図2に示すように、シールリップ15の内周面であって機外側斜面にはネジシールを構成するための突起20が設けられており、第1ダストリップ(第2ラジアルリップ)16の内周面には当該リップ16の接触姿勢を制御するための突起21が設けられている。
【0024】
図1の説明に戻って、泥水防止用シール31は、所定のゴム状弾性体(耐熱性に優れるFKM、または対泥水性に優れるHNBRなど)によって環状に成形され、その構成要素として、シャフト2の周面上に取り付けられる取付部32と、取付部32の機外側端部から径方向外方へ向け設けられてエンドプレート4の機外側端面4aに摺動自在に密接するシールリップ33とを一体に有している。取付部32には金属環34が埋設されている。
【0025】
シールリップ33は、その基端部よりも先端部のほうが機内側Aに位置するよう斜め外方へ向けて成形され、その先端部であるリップ端33aをもってエンドプレート4の機外側端面4aに摺動自在に密接する。
【0026】
またシールリップ33は、機内側端面33c、機外側端面33dおよび先端面33eよりなる3面を有している。このうち機内側端面33cはその基端部よりも先端部のほうが機内側Aに位置するよう斜め外方へ向け設けられて傾斜面をなしている。機外側端面33dはこれもその基端部よりも先端部のほうが機内側Aに位置するよう斜め外方へ向け設けられて傾斜面をなしている。先端面33eは機内側端面33cの先端部から機外側端面33dの先端部へかけて外径寸法が徐々に小さくなる向きの傾斜面をなしている。上記リップ端33aは機内側端面33cおよび先端面33eが交差する部位によって形成されている。上記リップ端背面部33bは先端面33eによって形成されている。
【0027】
また、このシールリップ33は上記したように、シャフト2の低速回転時にリップ端33aがエンドプレート4の機外側端面4aに接触するとともに、シャフト2の高速回転時に遠心力の作用によりリップ端33aが矢印f方向に揺動してエンドプレート4の機外側端面4aから離れるものである。
【0028】
また、シールリップ33を含む泥水防止用シール31は、フライホイール5との間の軸方向間隙cを3mm以下(0<c≦3mm)に設定されたエンドプレート4の内周側にてシャフト2の周面上に取り付けられるものである。
【0029】
上記構成を備えるエンジンリアシール1においては、ハウジング3の機外側Bにエンドプレート4が配置されるとともにエンドプレート4の更に機外側Bにシャフト2に連結されたフライホイール5が配置されていると云う状況のもとで、オイルシール11の機外側Bに泥水防止用シール31が組み合わせされ、この泥水防止用シール31が、シャフト2の周面上に取り付けられる取付部32と、取付部32から径方向外方へ向け設けられてエンドプレート4の機外側端面4aに摺動自在に密接するシールリップ33とを一体に有するものとされ、すなわち接触式シールとされている。接触式シールは、シールリップ33が相手材(エンドプレート4)に接触しているときに間隙を形成しないものであり、よって間隙を形成する非接触式シールと比較して、シール性に優れるものである。したがって本発明実施例によれば、泥水シール性を向上させることができる。
【0030】
また、泥水防止用シール31において、シールリップ33は、エンドプレート4の機外側端面4aから遠ざかるのに伴って外径寸法が徐々に小さくなる向きの傾斜面状に形成されたリップ端背面部33bを有し、すなわちスクレーパー状に形成されたリップ端背面部33bを有している。スクレーパー状のリップ端背面部33bでは図4(A)に示したように、シールリップ33の上方から浸入してきた泥水(矢印d)がリップ端背面部33b上で傾斜面の傾きにしたがってエンドプレート4から遠ざかる方向に流れるため(矢印e)、リップ端33aがエンドプレート4に接触する摺動部からシールリップ33の内側空間へと泥水が浸入しにくくなり、よってシール性が向上する。これに対し、比較例として示した図4(B)ではリップ端背面部33bの傾斜の向きが反対とされ、すなわちリップ端背面部33bがエンドプレート4の機外側端面4aから遠ざかるのに伴って外径寸法が徐々に大きくなる向きの傾斜面状に形成されている。したがってシールリップ33の上方から浸入してきた泥水(矢印d)がリップ端背面部33b上に溜まり、またはここから円周方向へ流れ、いずれにしてもリップ端33aがエンドプレート4に接触する摺動部からシールリップ33の内側空間へと泥水が浸入する可能性が高いものである。したがって本発明実施例によれば、泥水シール性を向上させることができる。
【0031】
また、上記泥水防止用シール31において、シールリップ33は、シャフト2の低速回転時にリップ端33aがエンドプレート4の機外側端面4aに接触するとともにシャフト2の高速回転時に遠心力の作用によりリップ端33aがエンドプレート4の機外側端面4aから離れる構造とされている。したがって摺動トルクが大きいシャフト2の高速回転時に遠心力の作用によってリップ端33aがエンドプレート4の機外側端面4aから離れるため、摺動トルクが極端に増大するのを抑制することができる。
【0032】
また、上記泥水防止用シール31は、フライホイール5との間の軸方向間隙cを3mm以下に設定されたエンドプレート4の内周側にてシャフト2の周面上に取り付けられるものとされている。したがってオイルシール11および泥水防止用シール31に更に加えて、エンドプレート4およびフライホイール5間に非接触式の第3シールが設定されるために、泥水シール性を一層向上させることができる。
【0033】
尚、上記実施例において、泥水防止用シール31は、取付部32の機外側端部にシールリップ33を一体成形したが、設置スペースの都合などによっては図3に示すように、取付部32の機内側端部にシールリップ33を一体成形するようにしても良い。また上記実施例において、泥水防止用シール31は、シャフト2に対し金属環34によって金属嵌合されるが、図3に示すように金属環34の内周面にシールリップ33と一体のゴム部35を被着することによりシャフト2に対しゴム嵌合するようにしても良い。また図3のオイルシール11では、第1ダストリップ(第2ラジアルリップ)16が複数(2つ)設けられている。
【符号の説明】
【0034】
1 エンジンリアシール
2 シャフト
3 ハウジング
3a 軸孔
4 エンドプレート
4a,33d 機外側端面
4b,33c 機内側端面
5 フライホイール
11 オイルシール
12,32 取付部
13 フランジ部
14 シール部
15,33 シールリップ
16,17 ダストリップ
18,34 金属環
19 ガータスプリング
20,21 突起
31 泥水防止用シール
33a リップ端
33b リップ端背面部
33e 先端面
35 ゴム部
c 軸方向間隙
A 機内側
B 機外側
図1
図2
図3
図4
図5