(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高不純物濃度のワイドバンドギャップ半導体基板の一方の主面に第1導電型の低不純物濃度のワイドバンドギャップ半導体の耐圧層と該耐圧層より高不純物濃度の第2導電型のワイドバンドギャップ半導体のボディー領域とをこの順に備え、前記ボディー領域の表面層に、選択的領域であってそれぞれオーミック接触が得られる高不純物濃度表面を有する、第2導電型のボディーコンタクト領域と第1導電型のソースコンタクト領域とを有し、該ソースコンタクト領域表面から該ソースコンタクト領域と下層の第一導電型ソース拡張領域と前記ボディー領域とを貫いて前記耐圧層に達するトレンチと、該トレンチの内壁面に設けられた絶縁膜と、該絶縁膜を介して前記ソース拡張領域と前記ボディー領域と前記耐圧層とにそれぞれ対向する位置に埋め込まれるゲート電極と、前記第2導電型のボディーコンタクト領域と第1導電型のソースコンタクト領域の各表面に接触する第1主電極と、前記半導体基板の他方の主面に接触する第2主電極を有するトレンチゲート型半導体装置において、前記トレンチより幅が大きくかつ該トレンチと交差する交差部を有し、該交差部以外がトレンチであって前記トレンチより深さが深い交差トレンチと、前記ゲート電極とは絶縁されるように前記交差トレンチ内に埋め込まれ、該交差トレンチ底部に露出する耐圧層表面とショットキー接触するショットキー電極とを有することを特徴とするトレンチゲート型半導体装置。
前記トレンチが幅広の第一トレンチと、該第一トレンチの側壁面に設けられる第一マスクの膜厚分によって幅狭となって前記第一トレンチ底部に開口する第二トレンチからなり、該第二トレンチは、前記第一トレンチの底部下に設けられている前記ソースコンタクト領域と前記ソース拡張領域と前記ボディー領域とを貫いて、前記耐圧層に達する深さを有し、かつ前記第二トレンチの内壁面に設けられている絶縁膜を介して前記ゲート電極と、前記第二トレンチ内で該ゲート電極の上部を覆う層間絶縁膜とを有することを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲート型半導体装置。
前記トレンチの底部近傍における前記半導体基板の比誘電率と絶縁破壊電界の積である比誘電率絶縁破壊電界積が、前記絶縁膜の比誘電率と常用最大電界との積である比誘電率絶縁破壊電界積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲート型半導体装置。
前記ショットキー電極は、前記交差トレンチ底部に露出する耐圧層表面とショットキー接触する部分のショットキー障壁高さによって前記半導体基板の絶縁破壊電界と同等以上の電界下で得られる、最大許容温度におけるリーク電流密度が10-5A/cm2以下となるように、選定されていることを特徴とする請求項7に記載のトレンチゲート型半導体装置。
前記第1主電極がニッケルを有効成分として含有し、ニッケルを含有する前記第1主電極と、白金または白金シリサイドを主成分とする前記ショットキー電極とが、直接接しないようにバリアメタルを介して接続されていることを特徴とする請求項10に記載のトレンチゲート型半導体装置。
高不純物濃度のワイドバンドギャップ半導体基板の上に、第1導電型のワイドバンドギャップ半導体の耐圧層と第2導電型のワイドバンドギャップ半導体のボディー層と実用的なオーミック接触が得られる高不純物濃度表面を有する第2導電型のワイドバンドギャップ半導体のボディーコンタクト層とをこの順にそれぞれ全面エピタキシャル成長により積層する第一工程と、前記ボディーコンタクト層の表面に、第1開口部を有する第1マスクを形成する第二工程と、前記第1開口部から異方性エッチングにより前記ボディーコンタクト層を貫通して前記ボディー層中に底部を有する第一トレンチを形成する第三a工程と、該第一トレンチ底部にイオン注入もしくはエピタキシャル成長により、少なくとも前記ボディーコンタクト層より深い位置に第1導電型のソースイオン注入領域を形成する第三b工程と、第三b工程後の半導体基板の全面に前記第一トレンチの幅の二分の一未満の厚さを有する第2マスクを堆積し、異方性エッチングにより前記第一トレンチの底部の前記第2マスクに第2開口部を設ける第四工程と、該第2開口部から異方性エッチングにより前記耐圧層に達する第二トレンチを形成する第五工程と、該第二トレンチの内壁面に絶縁膜を形成し、該絶縁膜を介して前記ソースイオン注入領域と前記ボディー領域と前記耐圧層とにそれぞれ対向する位置までゲート電極を埋め込む第六工程とを含み、前記第二トレンチを形成する第五工程の後に、該第二トレンチより幅が大きくかつ該第二トレンチと交差する交差部を有し、該交差部以外がトレンチであって前記第二トレンチより深さが深い交差トレンチを形成する工程と、前記交差トレンチの内表面の少なくとも底部に露出する耐圧層表面とショットキー電極を形成する工程とを含むことを特徴とするトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記交差トレンチを形成する工程の後であって、前記交差トレンチの内表面の少なくとも一部にショットキー電極を形成する工程の前に、前記交差トレンチに第2マスクを埋め込む工程と、該第2マスクを残しつつ前記第1マスクを除去する工程と、前記第二トレンチの内表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を埋め込み該ゲート電極上に層間絶縁膜を埋め込む工程と、前記第2マスクを除去する工程とを含むことを特徴とする請求項14に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記交差トレンチを形成する工程の前に、前記第二トレンチの内表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を埋め込み該ゲート電極上に層間絶縁膜を埋め込む工程を含むことを特徴とする請求項15に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記層間絶縁膜を形成する工程の後であって、前記第二トレンチと前記第一トレンチを埋め戻す工程の前に、前記層間絶縁膜の上に窒化珪素を主成分とするエッチストップ膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項16に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記交差トレンチを形成する工程の後であって、前記交差トレンチの内表面の少なくとも一部にショットキー電極を形成する工程の前に、前記第1マスクを除去する工程と、前記交差トレンチに選択的に第4マスクを埋め込む工程と、前記第二トレンチの内表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を埋め込み、該ゲート電極上の前記第二トレンチに層間絶縁膜を埋め込む工程と、前記第4マスクを除去する工程とを含むことを特徴とする請求項15に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記交差トレンチに選択的に第4マスクを埋め込む工程は、前記第二トレンチに選択的に第5マスクを埋め込む工程と、前記一方の主面上に第4マスクを堆積する工程と、前記第4マスクをエッチバックして、前記交差トレンチ内部にのみ前記第4マスクを残す工程と、前記第5マスクを除去する工程とを含むことを特徴とする請求項18または19に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記第二トレンチに選択的に第5マスクを埋め込む工程は、前記一方の主面に多結晶シリコンを堆積する工程と、前記多結晶シリコンをエッチバックして前記交差トレンチよりも幅の狭い前記第二トレンチ内部に前記多結晶シリコンを残す工程と、前記多結晶シリコンの一部を熱酸化する工程とを含むことを特徴とする請求項22に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記交差トレンチの内表面の形状を平滑化し、表面粗さを低減する工程は、前記交差トレンチを形成後の半導体基板を不活性ガス雰囲気またはシランを含有する不活性ガス雰囲気で1600℃以上1800℃以下の温度範囲の熱処理を加える第一熱処理工程と、水素雰囲気で1400℃以上1500℃以下の熱処理を加える第二熱処理工程の少なくともいずれか一方を有することを特徴とする請求項19に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記半導体基板が4H−炭化珪素半導体を主材料とし、前記ショットキー電極材料が白金シリサイドをショットキー障壁の形成に有効な成分として含み、前記ショットキー電極を形成する工程が、白金を前記半導体基板に堆積する工程と、前記白金をエッチバックすることにより前記交差トレンチに前記白金を埋め込む工程とを含むことを特徴とする請求項14に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記半導体基板が4H−炭化珪素半導体を主材料とし、前記ショットキー電極材料が白金シリサイドをショットキー障壁の形成に有効な成分として含み、前記ショットキー電極を形成する工程が、白金を前記半導体基板に堆積する工程と、前記半導体基板に熱処理を加えて前記堆積された白金の一部を前記半導体基板と反応させることにより白金シリサイドとする工程と、未反応の白金を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項14に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記白金を堆積する工程の後、前記白金シリサイドを形成する熱処理を加える工程の前に、前記白金に接するように、炭化物を生成しやすい金属を堆積する工程を含むことを特徴とする請求項28に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記チタンを堆積した後、前記白金シリサイドを形成する熱処理を加える工程の後、ニッケルを被着させる前に、前記白金シリサイドを前記第一トレンチ底面よりは少なくとも下までエッチバックすることを特徴とする請求項30に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
前記第1主電極と共通であるニッケルを有する電極膜を前記ショットキー障壁の形成に有効な白金シリサイド膜上に積層する際に、バリアメタル膜を介して前記ニッケルを有する電極膜を積層することを特徴とする請求項31に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体(以降SiCともいう)あるいはIII族窒化物半導体(以降、AlGaN等ともいう)を用いて高耐圧パワーデバイスを作製すると、オン抵抗を大幅に低減できる可能性がある。SiCを用いた耐圧1〜1.2kV級のMISFETによって、5mΩcm
2以下のオン抵抗が得られており、これは、同じ耐圧クラスのシリコン半導体(以降Siと略記)製IGBTに比較して、オン抵抗が半分以下である。今後、コスト開発と性能向上が進めば、インバーター部品としてSi製IGBTの大半を置き換える可能性も考えられる。
【0003】
SiCやAlGaN等を用いることでオン抵抗を大幅に低減できるのは、SiCやAlGaN等がSiより高い絶縁破壊電界を有するので、同じ耐圧を実現するために、耐圧層を薄くでき、また、耐圧層のドーピング濃度を高くすることにより抵抗をSiに比べて2桁以上低減することができるからである。しかし、SiCやAlGaN等を用いたMISFETやIGBTなどのボディー領域におけるドーピング量あるいは不純物濃度はSiに比べて高いので、チャネル移動度や(ゲート)閾値電圧に悪影響を及ぼす。ボディー領域のドーピング量あるいは不純物濃度が高すぎると、閾値電圧が不必要に高くなるとともに、チャネル移動度が著しく低下するので、好ましくない。この点から、前述のボディー領域の不純物濃度はSiの場合に比べてあまり高くすることができないという制約を受ける。その結果、耐圧層との不純物濃度差の小さいボディー領域にも、その分、空乏層が延び易くなるという特徴を有している。
【0004】
前述のように、SiCやAlGaN等を用いたMOS型半導体装置においては、耐圧層の抵抗が低減される結果、耐圧層以外の抵抗、すなわち、チャネル抵抗や、いわゆるDMOS型構造の場合には、いわゆるJFET抵抗の比率が相対的に大きくなり、無視できない抵抗成分となる。このJFET抵抗を除去する構造として、いわゆるトレンチゲート構造のMOS型半導体装置が知られている。
【0005】
前記チャネル抵抗を下げる一方法としてはチャネル長を短くする方法がある。しかし、トレンチゲート構造の場合にチャネル長を短くするにはボディー領域の厚さを薄くする必要がある。ボディー領域の厚さを薄くすると、オフ電圧によりボディー領域がすべて空乏化するパンチスルー状態となり易く、SiCやAlGaN等の有する高い絶縁破壊電界から期待される高耐圧特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
チャネル抵抗を下げる別の方法は、単位面積あたりのチャネル密度を増加させるである。一般に、パワーデバイスでは、主電流の流れる活性領域は、この活性領域内に配置されるユニットセルの集合体として構成される。各ユニットセルには必ずチャネルが含まれるので、一ユニットセルを小さくする、すなわち、ユニットセルの繰り返し幅(セルピッチという)を狭くすれば、単位面積あたりのチャネル密度を増加することができる。前記トレンチゲート構造は従来のプレーナーゲート構造よりもチャネル密度を高くし易い構造でもある。
【0007】
また、一般に、半導体デバイスの製造においてはフォトリソグラフィー工程が必須である。製造工程において複数回のフォトリソグラフィー工程が行われる場合に、前工程のフォトパターンに次工程のフォトパターンをマスク合わせするというプロセスが必要となる。一般に、このマスク合わせプロセスの回数が多くなると、マスク合わせ精度の低下が解像度に比べて無視できなくなる。たとえば、ある市販g線ステッパーの場合、解像限界が1μmなのに対して、最大で一回当り0.4〜0.8μmのマスク合わせ誤差を生じる。最大値に範囲があるのは、装置限界は0.4μmであるが、現実には、生産性を考えると0.8μm程度まで許容する必要があるためである。フォトリソグラフィー工程が1回(マスク合わせなし)であれば、セルピッチは最小でたとえば2μmまで小さくすることができるが、フォトリソグラフィー工程が2回(マスク合わせ1回)であると、セルピッチは最小でたとえば3.6〜5.2μmも必要となる。したがって、マスク合わせの回数が増えるほど、最小セルピッチを増大せざるを得なくなる。
【0008】
一方、SiやGaAsなど用に設計された解像度の高い(高性能な)ステッパーあるいは類似装置(ステッパー等という)の場合、通常でマスク合わせ誤差の小さいマスク合わせ機構が組み込まれている。しかし、このような高性能なステッパー等は、短波長の光源を用いているため、焦点深度が浅いことが多い。ところが、SiCは特殊なバルク成長法の関係から、また、AlGaN等は主としてサファイア、SiCあるいはSi基板にヘテロエピタキシャル成長によって形成される関係から、ウエハに大きく不均一な反りが発生し易い。したがって、前述のような高性能なステッパー等の浅い焦点深度では、1ショット内で全面に適切に合焦させる露光ができない事態が生じ易い。その結果、別の技術的な進展により前述したウエハの反りが改善されるまでの当面の間、焦点深度が深い、すなわち、多少の反りがあってもマスク合わせが可能な、ステッパーを用いざるを得ない。したがって、SiCあるいはAlGaNなどではセルピッチを縮小するために、前述のような解像度の高いステッパー等を採用することができないので、マスク合わせ回数の少ない製造プロセスにして、合わせ誤差の累積による精度低下を小さくすることが望ましいのである。
【0009】
Si半導体のように、熱拡散法によって不純物ドーピングを行うことが通常の量産的な製造方法として可能な場合、たとえば、次のような
図32に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法によって、自己整合的にユニットセルの構造を形成することにより、マスクあわせ回数を実質的に減らす方法が既に実際に行われている。
【0010】
Si半導体を用いる場合の前記セルピッチとトレンチ幅の具体例について、後でSiCおよびAlGaN等と比較するために一例をあげると、前記g線ステッパーを用いる場合、トレンチ幅は、たとえば1μm(解像限界に一致する)であるが、製造工程における制約から、セルピッチはたとえば4μmとなる。以下、前記製造工程における制約の詳細については、次に述べるSi製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法の中で説明する。
【0011】
図33の半導体ウエハの要部断面図に示すようにn型Si半導体基板1の一方の主面(おもて面という)に、n型で所定のドーピング量と層厚のエピタキシャル成長層3,5が形成されたSiウエハを用意する。以降、プロセスを経たという限定無しに半導体基板、Si基板、SiC基板または特に基板1、SiC基板1のように基板の後ろに符号1を付す場合はプロセスに投入前のバルク基板を言い、ウエハ、半導体ウエハ、Siウエハ、SiCウエハなどと言う場合はバルク基板の上に機能層、機能領域を堆積形成するプロセスを経た積層基板を言うことにする。次に、エピタキシャル成長層の表面から主電流の流れる活性領域部分にホウ素を熱拡散して、p型であるボディー領域5を形成する。表面にボディー領域5が形成された前記エピタキシャル成長層の、前記ボディー領域の下層部分または残りの部分(ボディー領域5以外のエピタキシャル成長層部分)は、耐圧層3となる。続いて、ウエハ全面に所定の膜厚の酸化膜を形成し、適宜パターニングしてマスク酸化膜101を形成する。ここで、マスク酸化膜101の幅および隣接するマスク酸化膜101との間隔は、望むのであれば、それぞれ用いるステッパーの解像限界まで小さくすることができ、それらの幅および間隔はたとえば1μmである。ただし、本例においては、後の熱拡散の都合上、マスク酸化膜101の幅は少し広く、たとえば3μmとしておく。前記マスク酸化膜の間隔1μmと幅3μmとを併せた4μmが、以降の説明で作り込まれることになるユニットセルのセルピッチとなる。その後、マスク酸化膜101の間隔のウエハ表面からリンをイオン注入し、熱処理することで、ソース領域6を形成する(
図34)。この際、イオン注入したリンが熱拡散するので、
図34に示すように、ソース領域6はマスク酸化膜101の下に回りこむ。その回り込み幅は、たとえば1μmである。また、一般的なイオン注入装置を用いてリンをイオン注入できる深さは、高々0.8μm程度であるが、熱拡散によって、ソース領域6の深さ(pn接合深さ)を、たとえば2μm程度に深くすることができる。
【0012】
次に、同じマスク酸化膜101を用いて、Siウエハを表面から異方性エッチングして、
図35のSiウエハの要部断面図に示すように、耐圧層3に到達する深さのトレンチ10を形成する。その後、
図36のSiウエハの要部断面図に示すように、トレンチ10の内壁面にゲート絶縁膜11を形成する。続いて、高ドープ(高ドーピング量または高不純物濃度)の多結晶シリコンをウエハ全面に成膜して、ゲートパッド付近(図示せず)を保護した後、エッチバックすることにより、トレンチ10の内部に所要の高さまでゲート電極12を埋め込む。この結果、トレンチ内部のゲート電極12はゲート絶縁膜11を介してソース領域6とボディー領域5と耐圧層3とに対向することになる。
【0013】
同様に、適宜ドープしたSiO
2膜をウエハ全面に成膜して、適宜エッチバックすることにより、トレンチ10内部の前記ゲート電極12上に層間絶縁膜21を埋め込む。
図36に示すように、ゲート電極12の上端は、ソース領域6の下端と上端の間になければならない。また、層間絶縁膜21は、堆積法により形成するため、熱酸化膜よりも耐圧が低く、所定のゲート耐圧を得るために、ある程度の厚さが必要である。また、エッチバックの際の作製余裕(寸法的な余裕)も必要である。この作製余裕は、ゲート電極12と同様に、もっぱらソース領域6の厚さによって与えられる。このような事情から、ソース領域6の厚さとして、前述のように2μm程度の厚みが必要となる。
【0014】
最後に、ウエハのおもて面と裏面について、それぞれ不要な堆積物等を除去した上で、それぞれ所定のソース電極23とドレイン電極22、およびゲートパッド電極(図示せず)を形成すると、
図32に示すSi製のトレンチゲート型MOSFETが完成する。
【0015】
前記
図32〜
図36を参照して説明した従来のSi製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法の中で重要なことは、ユニットセル部を形成するためのフォトリソグラフィー工程は、マスク酸化膜101をパターニングするための1回だけで済むことである。ポリシリコン層やSiO
2膜をエッチバックする工程においては、ゲートパッド等を形成するためにフォトリソグラフィー工程を要するが、ユニットセル部には位置を合わせるべきパターンがなく自己整合するので、パターン合わせ誤差に関係なくセルピッチ値を決めることができるのである。以上、説明したように、ユニットセル部を自己整合的に形成することは、ユニットセル部を形成するに必要なフォトリソグラフィー工程の回数を減らして形成できることを意味するので、同時にパターンあわせ誤差が少なくなることを意味する。このようにSiではイオン注入法と熱拡散法とを併せた不純物ドーピングが可能であるので、ユニットセル部を自己整合的に形成することにより、パターン合わせ誤差を考慮する必要の無い製造方法とすることができ、セルピッチを小さくすることが容易にできるのである。
【0016】
しかしながら、SiCやAlGaN等のワイドバンドギャップ半導体の場合には、ドナーやアクセプタとなる不純物の拡散係数が著しく小さいため、熱拡散法は非現実的であり、熱拡散法を生産ラインで採用することは通常は困難であるので、Siと同様の製造方法により、ユニットセルを自己整合的に形成することはできない。つまり、SiCやAlGaN等の場合には、選択的、または局所的な不純物ドーピングのためには、熱拡散法ではなく、イオン注入法を用いて、所定の不純物プロファイルを形成する必要がある。しかし、イオン注入法では横方向への不純物の拡散がほとんどないため、前記
図34と
図35で説明したSiウエハのようにソース領域6とトレンチ10を全く同一のマスクで(つまりパターン合わせ無しに)自己整合的に行うことはできない。また、一般的なイオン注入装置を用いてイオン注入を行う場合には、ソース領域のイオン注入深さは、高々1μm以下である。そのため、ゲート電極12と層間絶縁膜21をエッチバックする際の作製余裕が足りないことが多い。したがって、SiC製トレンチゲート型MOSFETの場合には、従来、たとえば次のようなユニットセル構造およびその製造方法によらざるを得なかったのである。
【0017】
図37は、従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETにおけるユニットセル部の要部断面図を示す。主要な構造は前記
図32に示したSi製トレンチゲート型MOSFETと同様であるから、同様の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図37において、前記
図32と異なる特徴的な点は、層間絶縁膜21がトレンチ10の外にはみ出していることである。ソース電極23は、層間絶縁膜21に設けたコンタクトホール20を充填してSiCウエハ表面にオーミック接触している。また、
図37では、
図32でボディー領域5がSiウエハ表面に露出する部分の表面層に相当する領域に、高ドープの第2導電型ボディーコンタクト領域7が設けられている。同様に、
図37では、
図32のソース領域6に相当する領域が、ソース領域6の表面層にあたる高ドープの第1導電型ソースコンタクト領域6aと、ソース領域6の下層部にあたる第1導電型ソース拡張領域6bとに分けられる構成となっている。前記ボディーコンタクト領域7の表面と前記ソースコンタクト領域6aの表面は共通にソース電極23と前述のようにオーミック接触している。
【0018】
SiC製トレンチゲート型MOSFETにおけるトレンチ幅とセルピッチは、
図37と
図32では寸法的に正確な図面ではないので、同じ寸法になっているが、実際に同じg線ステッパーを用いて製造するには、前述したSiの場合のセルピッチ4μmと比べると、少なくとも前記
図32より25%増の5μmにしなければならない。生産性を考えると、さらに前記
図32より175%以上増の11μmに、トレンチ10の間隔を広げて設計する必要がある。
【0019】
前記
図37に示す従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を、順を追って以下説明する。
図38のSiウエハの要部断面図に示すように、n型SiC基板1の一方の主面(おもて面という)に、エピタキシャル成長により全面に、n型である所定のドーピング濃度と膜厚を有する耐圧層3と、p型である所定のドーピング濃度と膜厚を有するボディー層5をこの順に成膜する。
【0020】
次に、Si等の製造工程と同様に、フォトリソグラフィー工程において位置合わせを行うためのマーカー(図示せず)を形成する。続いて、たとえばSiO
2膜を堆積し、Siと同様の技術によって、これを所定の開口部を有するようにパターニングして、オーミック接触が得られる表面不純物濃度のボディーコンタクト領域用の選択的イオン注入を行うマスクとする(図示せず)。この工程には、フォトリソグラフィー工程が必要である。続いて、ウエハをたとえば500℃に加熱した上で、表面から0.4μm程度の深さまで、アルミニウムをイオン注入する。イオン注入深さは、1価のアルミニウムを用いて一般的な400keVイオン注入装置で安定的に実現できる加速エネルギーによって概ね決まっている。次に、不活性ガス(少量のSiH
4等を添加してもよい)中で所定の温度・時間で熱処理(活性化アニールという)を行って、イオン注入したアルミニウムを電気的に活性化させるとともに、注入損傷を回復する。ボディーコンタクト領域7の活性化アニールが終了した状態でのウエハの要部断面図を
図38に示す。
【0021】
次に、同様の方法によって、ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bのためのイオン注入と活性化アニールを行う。ソースコンタクト領域6aには、オーミック接触が得られる程度の高ドープ濃度とすることが可能なリンの1価イオンを用いて、表面から0.35μm程度まで注入する。ソース拡張領域6bには、たとえば1〜2価の窒素イオンを用いて、0.8μm程度まで注入する。なお、ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bには、同一のマスクを用いることができ、活性化アニールも同時に行って差し支えない。ただし、前記ボディーコンタクト領域7との位置関係は、フォトリソグラフィーの位置合わせによって決まるので、最大の変位を生じた場合でも、平面視にてボディーコンタクト領域7が隣接配置されるソースコンタクト領域6a内に完全に含まれて、無くなってしまうことのないように、適切に設計しなければならない。たとえば前記g線ステッパーを用いる場合、ボディーコンタクト領域7の幅として、0.8〜1.6μm以上必要であり、パターン変換誤差を考えると1〜2μm以上とするのが安全である。ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bの活性化アニールが終了した状態でのウエハの要部断面図を
図39に示す。これ以降、前記ボディー層5はソース拡張領域下の同層となる。
【0022】
その後、Siと同様に、たとえばSiO
2膜からなる適切な開口部を有するエッチングマスク(図示せず)を用いて、
図40のウエハの要部断面図に示すように、トレンチ10を形成する。このエッチングマスクに適切な開口部を設けるために、フォトリソグラフィー工程を必要とする。トレンチ10の幅は、ゲート絶縁膜11とゲート電極12とを形成できる範囲内で、望む限り小さくしても差し支えない。トレンチ10は、終端部を除き、平面視にて、ソースコンタクト領域6aの内部になければならない。また、後に形成するコンタクトホール20の端部は、平面視にて、トレンチ10とボディーコンタクト領域7の間になければならない。したがって、ボディーコンタクト領域7の端部とコンタクトホール20の端部、ならびにコンタクトホール20の端部とトレンチ10の端部は、たとえば前記g線ステッパーを用いる場合、それぞれ、0.8〜1.6μm以上離す必要があり、パターン変換誤差を考えると1〜2μm以上離すのが安全である。以上により、セルピッチは、少なくとも5〜9μm以上必要であり、パターン変換誤差を考えると6〜11μm以上とするのが安全である。トレンチ10形成まで終了した状態のウエハの要部断面図を
図40に示す。トレンチ10を形成した後、トレンチ10により分断されたボディー層5をボディー領域5とする。このように従来のSiCデバイスの製造方法では、自己整合的なプロセスではないので、自己整合プロセスで作成できるSiデバイスの製造方法におけるセルピッチ4μmに対して、6〜11μmの大きなセルピッチを必要とする。
【0023】
続いて、トレンチ10の内壁面にゲート絶縁膜11を形成した後、Siと同様に、高ドープのポリシリコン層を堆積させ、続いてエッチバックして、ゲート電極12をトレンチ10内の所要の高さに埋め込む。その後、層間絶縁膜21をウエハ全面に堆積するが、Siの場合と異なり、ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bを併せた深さが0.8μmしかないので、エッチバックを行うことはできない。その代わりに、ウエハ表面上の層間絶縁膜21にボディーコンタクト領域7表面とソースコンタクト領域6a表面を露出させるようにコンタクトホール20を形成する。この際、フォトリソグラフィーを必要とする。コンタクトホール20形成まで終了した状態のウエハの要部断面図を
図41に示す。
【0024】
次に、たとえばニッケルとチタンを順にスパッタ成膜し、前記コンタクトホール20で、前記ボディーコンタクト領域7表面とソースコンタクト領域6a表面とにオーミック接触させる。ウエハのおもて面をレジスト等で保護し、裏面の不要な堆積物等を除去した後、裏面にたとえばニッケルとチタンを順にスパッタ成膜する。ウエハのおもて面のレジストを除去した後、熱処理を行って、ドレイン電極22およびソース電極23とSiCとのオーミック接触を得る。この後は、Siと同様に、アルミニウム等を適宜成膜してパターニングすることにより、ソース電極23の残りの部分および図示しないゲートパッド電極を形成する。ドレイン電極22の残りの部分もSiと同様に所定の金属を成膜すると、前記
図37の従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETが完成する。
【0025】
さらに、SiCやAlGaN等のワイドバンドギャップ半導体を用いたMOS型半導体装置の場合には、絶縁破壊電界が大きいため、そのままではトレンチ底部(
図37ではトレンチ10の底部)の絶縁膜に過大な電界が印加され、破壊する問題が指摘されている。これは、トレンチ底において、電界強度ではなく、電束密度が保存されなければならないことに起因する。比誘電率と絶縁破壊電界の積(比誘電率絶縁破壊電界積という。ただし、SiO
2等アモルファス状の絶縁物にあっては、絶縁破壊電界として、常用最大電界を用いる)が、トレンチ底の絶縁膜よりも半導体のほうが大きい場合には、絶縁膜のほうが先に破壊することになる。たとえば、絶縁膜としてよく用いられるSiO
2の比誘電率絶縁破壊電界積は、10〜12MV/cm程度であるのに対して、SiCにおける比誘電率絶縁破壊電界積は、ポリタイプや方位にもよるが、15〜25MV/cmにも達する。AlGaN等の比誘電率絶縁破壊電界積は、さらに高いと考えられている。したがって、SiCやAlGaN等のワイドバンドギャップ半導体を用いると、
図37の構造のままでは、トレンチ底の絶縁膜が破壊するのは避けられないという問題が生じる。
【0026】
以上説明したSiC製トレンチゲート型MOSFET以外の、他のSiC半導体装置の製造方法の公知技術として、次のものが開示されている。p型多結晶シリコン層および浅いn型多結晶シリコン層上に堆積したハードマスクを選択的にエッチングした残部分をマスクにして、前記p型多結晶シリコン層中にn型不純物をイオン注入してn型多結晶シリコン層を形成する。次に側壁の材料となる膜を等方的に堆積して異方性エッチングを行い、前記ハードマスクの側面に側壁を形成し、ハードマスクおよび側壁をマスクとして前記n型多結晶シリコン層をエッチングすることにより、自己整合的にn型多結晶シリコン層の幅を充分に狭くする方法が知られている(特許文献1)。
【0027】
セルフアラインにより素子分離領域を形成することに関する記載がある(特許文献2)。多段リセス溝の形成を自己整合的に歩留まり良く製造することに関する記述がある(特許文献3、4)。第一のマスクを使ってウエットエッチングすることにより、2段溝構造を形成するリセス構造に関する記述がある(特許文献5)。自己整合型二重酸化物UMOSFETに関する記載がある(特許文献6)。
【0028】
また、ゲートトレンチ以外に、ゲートトレンチよりも深い別のトレンチを設け、この別のトレンチの内面にショットキー接触を設けて、ゲートトレンチ底部の絶縁膜にかかる過大な電界を保護し耐圧低下を防ぐ構成が知られている(特許文献7)。
【0029】
さらにまた、基板にフィールドストッピング層、ドリフト層、電流広がり層、ボディー領域およびソースコンタクト層が順次積層されたウエハに、フィールドストッピング層または基板に達するトレンチを形成する。そのトレンチの上半部には、ゲート電極を設ける。トレンチの、ゲート電極よりも深い部分には、基板の半導体材料の絶縁破壊電界と同等か、またはそれ以上の値の絶縁破壊電界の常用値を有する絶縁物を埋め込む半導体装置が開示されている(特許文献8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
しかしながら、SiC製トレンチゲート型MOSFETの場合には、高ドープのn型領域もp型領域も選択的なイオン注入によって作製することができるものの、高ドープにするための高ドーズイオン注入に時間がかかる問題がある。また、特にp型領域表面に対しては、良好なオーミック接触を得る際に必要な、さらに高ドーズのイオン注入を行うと、高い頻度で結晶欠陥を生じ、これによって耐圧歩留まりが低下するという問題が発生する。
【0032】
これらの問題を避けるためには、高ドープp型領域をエピタキシャル成長によって形成できることが好ましいが、部分的な領域形成にはSiCの選択エピタキシャル成長を必要とする。しかし、SiCの選択エピタキシャル成長法は未だ研究途上であって、現状ではデバイス製造に適用するほどには実用化されていないので、採用は困難である。さらにまた、AlGaN等の場合には、p型の高ドーズイオン注入をすること自体が極めて困難である。p型領域表面に対して良好なオーミック接触を形成する他の方法として、たとえば組成の異なる混晶を接触させて量子井戸を形成するという方法が知られているが、この方法を適用するためにはエピタキシャル成長によらなければならない。なお、AlGaN等の場合には、SiO
2膜をマスクとして選択エピタキシャル成長を行うことができることが知られている。
【0033】
本発明は、前述した点に鑑みてなされたものである。本発明の第1の課題は、熱拡散法による不純物ドーピングが量産的な製造方法としては未だ確立されていないワイドバンドギャップ半導体を用いた場合でも、従来のものよりセルピッチを縮小することが可能なトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法を提供することである。本発明の第2の課題は、前記第1の課題を満たすとともに、少なくとも一方の導電型に対して選択的なエピタキシャル成長を採用せずに、良好なオーミック接触が得られるトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【0034】
たとえば本発明の実施例1〜7に例示するようなデバイス構造および製造方法とすることにより、前記第1および第2の課題を解決することができる。
しかし、本発明の第1および第2の課題を解決するために、たとえば実施例4あるいは実施例5のような様態をとると、トレンチの幅がたとえば0.6μmと狭くなり、セルピッチがたとえば2μmまで縮小された結果として、新たな問題を生じる。
【0035】
すなわち、絶縁膜に過大な電界が印加され、破壊する問題に対する対策として、従来から知られている方法は、トレンチ底部にp型埋め込み領域を設けるものである。このp型埋め込み領域を前記
図37に示す従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETの構造に適用すると、たとえば
図67に示すように、トレンチ10の底部にp型埋め込み領域8を設けることになる。単にp型埋め込み領域8を設けるだけでは、p型埋め込み領域8から耐圧層3に伸びる空乏層のため、JFET効果と同様の抵抗が発生する。従来のようにセルピッチが10μm以上と広かった場合は、p型埋め込み領域8とボディー領域5の間で耐圧層3が狭搾されることが主要な問題であったので、
図67にも示すように、耐圧層3よりも高ドープのn型である電流広がり層4を設けて、電流流路をトレンチから遠ざけることで、JFET抵抗を、完全になくすことはできないにせよ、緩和することはできた。
【0036】
しかし、
図67の場合には、トレンチ10の間隔は、たとえば1.4μmしかないので、トレンチ10の間で耐圧層3が狭搾されることも問題となる。
たとえば耐圧1.2kV設計の場合、耐圧層3のドーピング濃度は1×10
16cm
-3程度になるので、片側階段接合を仮定すると、ゼロバイアス(オン状態でチャネル・ソース領域での電圧降下が0V)でも、耐圧層3側に空乏層が約0.57μm伸びることになる。したがって、トレンチ10に挟まれた空間は、両側から合計で約1.14μm狭搾されることになり、残りは約0.26μm(トレンチ10の間隔の1/7弱)しかないことになる。この狭搾によるオン抵抗は、深さ方向に1μmあたり約0.6mΩcm
2と見積もられ、耐圧層3自身の抵抗(約1mΩcm
2)と比べても、無視できない値である。
【0037】
また、SiCの場合、p型埋め込み領域8を形成するためには、イオン注入による必要があるが、トレンチ10の側壁面にアクセプタが注入されると、閾値電圧が上昇するとともに、チャネル移動度が低下するので、イオン注入の際に、トレンチ10の側壁を適切に保護しなければならない。しかし、トレンチ10の幅は、たとえば0.6μmしかないから、側壁を保護するのは簡単ではない。
【0038】
さらにまた、AlGaN等にあっては、トレンチ10の底部にp型領域をイオン注入で形成するのは極めて困難である。しかも、この場合にはトレンチ10の少なくとも側壁面にn型領域が露出するようにしなければならないため、選択成長も困難である。したがって、AlGaN等にあっては、このような形態をとることは極めて難しい。
【0039】
類似の方法として、前記特許文献7に開示されているように、前記トレンチ(ゲートトレンチという)よりも深い別のトレンチを設け、その内部にショットキー接触を設ける方法もある。ただし、前記別のトレンチは、前記ゲートトレンチに対して自己整合的に形成する方法が従来知られていないので、各セルにショットキー接触を設けようとすると、セルピッチが広がってしまう難点がある。また、仮に自己整合的に形成することができたとしても、ショットキー接触から伸びる空乏層のため、前述と同様に電流流路が狭搾されるので、セルピッチを詰めようとして前記ゲートトレンチと前記別のトレンチの間隔をあまり狭くすると、前記と同様にオン抵抗が増大する危険性がある。
【0040】
別の対策方法として、前記特許文献8に開示した方法がある。この方法を前記
図37に示すSiC製トレンチゲート型MOSFETに適用すると、たとえば
図68に示すように、トレンチ10をドレイン側の高ドープ層(
図68ではフィールドストッピング層2)まで届く深さとして、トレンチ10の下部には埋め込み絶縁物15を埋め込むことになる。この構造によれば、トレンチ10がフィールドストッピング層2に届いていれば、電磁気学的法則により、比誘電率に関係なく、埋め込み絶縁物15には耐圧層3と同程度の電界しか印加されないので、破壊しないで済む。
【0041】
この方法は、トレンチ10をフィールドストッピング層2に届く深さにエッチングできて、さらにトレンチ10の下部に絶縁物を適切に埋め込む技術が確立できれば、有力である。これは、従来のようにトレンチ幅が広ければ、実現可能であったが、セルピッチとトレンチ幅が縮小すると、極めて困難となる。
【0042】
たとえば耐圧1.2kVの場合、製造誤差を考えると、耐圧層3の厚さは10μm程度になる。ボディー領域5とソース拡張領域6b、ソースコンタクト領域6aを合わせると2.5μm程度必要であるから、製造誤差も合わせて、トレンチ10の深さは表面から15μm程度は必要である。従来は、トレンチ幅が2μm程度だったので、アスペクト比は7.5程度となり、実現可能である。しかし、
図68の例には、前記のように、トレンチ10の幅は、たとえば0.6μmしかないから、トレンチ10のアスペクト比は25にも達する。アスペクト比が従来の3倍以上もあるため、実現には相当な時間を要すると思われる。また、埋め込み絶縁物15を設けるにあたっても、高いアスペクト比は障害になる。たとえばBPSGをLPCVDで堆積する場合はもちろんのこと、たとえば、前記特許文献8の記載のように、高濃度にリンをドープした多結晶シリコンを薄く堆積して酸化し尽くすような場合でも、多結晶シリコンが均一に堆積しない、あるいは、上方だけ先に酸化が進行して下方が多結晶シリコンのまま残ってしまう、などの問題を解決するのに時間を要するのは避けられない。
【0043】
前記特許文献7の記載によるトレンチ底部絶縁膜への過大電界からの保護の作用は、第1には、オフ時の最大電界を前記底部絶縁膜ではなく、ショットキー電極付近に生じさせることにより絶縁膜破壊を防ぐ構成である。第2には、オフ時に隣接するショットキー電極から伸びる空乏層によって耐圧層がピンチオフする構成とすることにより、ゲートトレンチに過剰な電気力線が到達しないようにするものである。
【0044】
前記第1の作用のみによってゲートトレンチを保護することは可能であるが、SiCのように絶縁破壊電界が大きい半導体を用いた場合、ショットキー障壁高さが低すぎると、半導体がアバランシェ破壊に至る前に、ショットキー障壁のトンネル電流が過剰となり、それによって耐圧が決まる(あるいは、耐圧が著しく低下する)という問題がある。
【0045】
また、前記第1の作用では、トンネル電流のうち、熱電界放出によるものは、温度上昇とともに増加するので、耐圧の温度特性が負となる危険性があり、パワーデバイスに用いるには好ましくないという問題もある。ショットキー障壁が十分高ければ、この問題はなくなるが、その状態でゲートトレンチ底部の絶縁膜破壊を有効に保護するためには、たとえばゲートトレンチ付近にショットキー障壁の付近よりも低ドープで厚い耐圧層が必要になる。すると、オン時には、この耐圧層の抵抗が無視できず、オン抵抗が増大する問題が発生する。
【0046】
前記第2の作用を利用すれば、第1の作用よりも厚さの小さい耐圧層と高いショットキー障壁高さで高耐圧を実現できるが、ショットキー接触から伸びる空乏層のため、たとえば前記
図67に示したゲートトレンチ底に耐圧層とは逆導電型の埋め込み領域を設けた場合と同様に、オン状態において電流流路が狭搾されオン抵抗が増大する可能性がある。ただし、ショットキー接触は、pn接合よりも拡散電位が小さいため、オン状態における空乏層の伸びがpn接合よりも小さくなるので、オン抵抗の増大を抑制することができる。
【0047】
そこで、本発明の第3の課題は、前記第2の課題を満たすとともに、トレンチ底の絶縁膜に過大な電界が印加されないトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法を提供することである。
たとえば本発明の実施例8〜10に例示するようなデバイス構造および製造方法とする ことにより、前記第3の課題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0048】
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば、高不純物濃度のワイドバンドギャップ半導体基板の一方の主面に第1導電型の低不純物濃度のワイドバンドギャップ半導体の耐圧層と該耐圧層より高不純物濃度の第2導電型のワイドバンドギャップ半導体のボディー領域とをこの順に備え、前記ボディー領域の表面層に、選択的領域であってそれぞれオーミック接触が得られる高不純物濃度表面を有する、第2導電型のボディーコンタクト領域と第1導電型のソースコンタクト領域とを有し、該ソースコンタクト領域表面から該ソースコンタクト領域と下層の第一導電型ソース拡張領域と前記ボディー領域とを貫いて前記耐圧層に達するトレンチと、該トレンチの内壁面に設けられた絶縁膜と、該絶縁膜を介して前記ソース拡張領域と前記ボディー領域と前記耐圧層とにそれぞれ対向する位置に埋め込まれるゲート電極と、前記第2導電型のボディーコンタクト領域と第1導電型のソースコンタクト領域の各表面に接触する第1主電極と、前記半導体基板の他方の主面に接触する第2主電極を有するトレンチゲート型半導体装置において、
前記トレンチより幅が大きくかつ該トレンチと交差する交差部を有し、該交差部以外
がトレンチであって前記トレンチより深さが深い交差トレンチと、前記ゲート電極とは絶縁されるように前記交差トレンチ内に埋め込まれ、該交差トレンチ底部に露出する耐圧層表面とショットキー接触するショットキー電極とを有するトレンチゲート型半導体装置とすることにより本発明の目的は達成される。
【0049】
特許請求の範囲の請求項
2記載の発明によれば、前記トレンチが幅広の第一トレンチと、該第一トレンチの側壁面に設けられる第一マスクの膜厚分によって幅狭となって前記第一トレンチ底部に開口する第二トレンチからなり、該第二トレンチは、前記第一トレンチの底部下に設けられている前記ソースコンタクト領域と前記ソース拡張領域と前記ボディー領域とを貫いて、前記耐圧層に達する深さを有し、かつ前記第二トレンチの内壁面に設けられている絶縁膜を介して前記ゲート電極と、前記第二トレンチ内で該ゲート電極の上部を覆う層間絶縁膜とを有する請求項
1に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0050】
特許請求の範囲の請求項
3記載の発明によれば、前記ショットキー電極は、前記第1主電極と電気的に短絡されている請求項
1に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
特許請求の範囲の請求項
4記載の発明によれば、前記トレンチの底部近傍における前記半導体基板の比誘電率と絶縁破壊電界の積である比誘電率絶縁破壊電界積が、前記絶縁膜の比誘電率と常用最大電界との積である比誘電率絶縁破壊電界積よりも大きい請求項
1に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0051】
特許請求の範囲の請求項
5記載の発明によれば、前記絶縁膜が二酸化珪素を主成分とするものであって、前記半導体基板の比誘電率絶縁破壊電界積が12MV/cm以上である請求項
4に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0052】
特許請求の範囲の請求項
6記載の発明によれば、前記半導体基板が炭化珪素を主たる半導体材料とし、前記絶縁膜の比誘電率絶縁破壊電界積が25MV/cm以下である請求項
4または
5に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0053】
特許請求の範囲の請求項
7記載の発明によれば、前記炭化珪素半導体の結晶型が4H型である請求項
6に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
特許請求の範囲の請求項
8記載の発明によれば、前記ショットキー電極は、前記交差トレンチ底部に露出する耐圧層表面とショットキー接触する部分のショットキー障壁高さによって前記半導体基板の絶縁破壊電界と同等以上の電界下で得られる、最大許容温度におけるリーク電流密度が10
-5A/cm
2以下となるように、選定されている請求項
7に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0054】
特許請求の範囲の請求項
9記載の発明によれば、前記ショットキー障壁高さが1.85eV以上である請求項
8に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
特許請求の範囲の請求項
10記載の発明によれば、前記ショットキー障壁をなす金属が、白金または白金シリサイドを主成分とする請求項
9に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0055】
特許請求の範囲の請求項
11記載の発明によれば、前記第1主電極がニッケルを有効成分として含有し、ニッケルを含有する前記第1主電極と、白金または白金シリサイドを主成分とする前記ショットキー電極とが、直接接しないようにバリアメタルを介して接続されている請求項
10に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0056】
特許請求の範囲の請求項
12記載の発明によれば、前記半導体基板の一方の主面が、概ね4H−炭化珪素半導体の(000−1)c面である請求項
11に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
【0057】
特許請求の範囲の請求項13記載の発明によれば、前記トレンチの幅
が0.9μm〜2μmであることを特徴とする請求項12に記載のトレンチゲート型半導体装置とする。
特許請求の範囲の請求項14記載の発明によれば、高不純物濃度のワイドバンドギャップ半導体基板の上に、第1導電型のワイドバンドギャップ半導体の耐圧層と第2導電型のワイドバンドギャップ半導体のボディー層と実用的なオーミック接触が得られる高不純物濃度表面を有する第2導電型のワイドバンドギャップ半導体のボディーコンタクト層とをこの順にそれぞれ全面エピタキシャル成長により積層する第一工程と、前記ボディーコンタクト層の表面に、第1開口部を有する第1マスクを形成する第二工程と、前記第1開口部から異方性エッチングにより前記ボディーコンタクト層を貫通して前記ボディー層中に底部を有する第一トレンチを形成する第三a工程と、該第一トレンチ底部にイオン注入もしくはエピタキシャル成長により、少なくとも前記ボディーコンタクト層より深い位置に第1導電型のソースイオン注入領域を形成する第三b工程と、第三b工程後の半導体基板の全面に前記第一トレンチの幅の二分の一未満の厚さを有する第2マスクを堆積し、異方性エッチングにより前記第一トレンチの底部の前記第2マスクに第2開口部を設ける第四工程と、該第2開口部から異方性エッチングにより前記耐圧層に達する第二トレンチを形成する第五工程と、該第二トレンチの内壁面に絶縁膜を形成し、該絶縁膜を介して前記ソースイオン注入領域と前記ボディー領域と前記耐圧層とにそれぞれ対向する位置までゲート電極を埋め込む第六工程とを含み、前記第二トレンチを形成する第五工程の後に、
該第二トレンチより幅が大きくかつ該第二トレンチと交差する交差部を有し、該交差部以外がトレンチであって前記第二トレンチより深さが深い交差トレンチを形成する工程と、前記交差トレンチの内表面の少なくとも
底部に露出する耐圧層表面とショットキー電極を形成する工程とを含むトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0058】
特許請求の範囲の請求項
15記載の発明によれば、前記交差トレンチを形成する工程の後であって、前記交差トレンチの内表面の少なくとも一部にショットキー電極を形成する工程の前に、前記交差トレンチに第2マスクを埋め込む工程と、該第2マスクを残しつつ前記第1マスクを除去する工程と、前記第二トレンチの内表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を埋め込み該ゲート電極上に層間絶縁膜を埋め込む工程と、前記第2マスクを除去する工程とを含む請求項
14に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0059】
特許請求の範囲の請求項
16記載の発明によれば、前記交差トレンチを形成する工程の前に、前記第二トレンチの内表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を埋め込み該ゲート電極上に層間絶縁膜を埋め込む工程を含む請求項
15に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0060】
特許請求の範囲の請求項
17記載の発明によれば、前記層間絶縁膜を形成する工程の後であって、前記第二トレンチと前記第一トレンチを埋め戻す工程の前に、前記層間絶縁膜の上に窒化珪素を主成分とするエッチストップ膜を形成する工程を含む請求項
16に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0061】
特許請求の範囲の請求項
18記載の発明によれば、前記交差トレンチを形成する工程の後であって、前記交差トレンチの内表面の少なくとも一部にショットキー電極を形成する工程の前に、前記第1マスクを除去する工程と、前記交差トレンチに選択的に第4マスクを埋め込む工程と、前記第二トレンチの内表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を埋め込み、該ゲート電極上の前記第二トレンチに層間絶縁膜を埋め込む工程と、前記第4マスクを除去する工程とを含む請求項
15に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0062】
特許請求の範囲の請求項
19記載の発明によれば、前記第1マスクを除去する工程の後に、前記交差トレンチの形状を平滑化し、あるいは前記交差トレンチの内表面の表面粗さを低減する工程を含む請求項
15に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0063】
特許請求の範囲の請求項
20記載の発明によれば、前記交差トレンチに選択的に第4マスクを埋め込む工程は、前記第二トレンチに選択的に第5マスクを埋め込む工程と、前記一方の主面上に第4マスクを堆積する工程と、前記第4マスクをエッチバックして、前記交差トレンチ内部にのみ前記第4マスクを残す工程と、前記第5マスクを除去する工程とを含む請求項
18または
19に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0064】
特許請求の範囲の請求項
21記載の発明によれば、第1マスクが二酸化珪素を主成分とし、前記第2マスクまたは第4マスクが窒化珪素を主成分とする請求項
15または
18に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0065】
特許請求の範囲の請求項
22記載の発明によれば、前記第5マスクが二酸化珪素を主成分とする請求項
20に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
特許請求の範囲の請求項
23記載の発明によれば、前記第二トレンチに選択的に第5マスクを埋め込む工程は、前記一方の主面に多結晶シリコンを堆積する工程と、前記多結晶シリコンをエッチバックして前記交差トレンチよりも幅の狭い前記第二トレンチ内部に前記多結晶シリコンを残す工程と、前記多結晶シリコンの一部を熱酸化する工程とを含む請求項
22に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0066】
特許請求の範囲の請求項
24記載の発明によれば、前記一方の主面に多結晶シリコンを堆積する工程の前に、前記第二トレンチの内表面にスクリーン酸化膜を設ける工程を含む請求項
23に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0067】
特許請求の範囲の請求項
25記載の発明によれば、前記交差トレンチの内表面の形状を平滑化し、表面粗さを低減する工程は、前記交差トレンチを形成後の半導体基板を不活性ガス雰囲気またはシランを含有する不活性ガス雰囲気で1600℃以上1800℃以下の温度範囲の熱処理を加える第一熱処理工程と、水素雰囲気で1400℃以上1500℃以下の熱処理を加える第二熱処理工程の少なくともいずれか一方を有する請求項
19に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0068】
特許請求の範囲の請求項
26記載の発明によれば、前記半導体基板が炭化珪素を主たる半導体材料とする請求項
25に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
特許請求の範囲の請求項
27記載の発明によれば、前記半導体基板が4H−炭化珪素半導体を主材料とし、前記ショットキー電極材料が白金シリサイドをショットキー障壁の形成に有効な成分として含み、前記ショットキー電極を形成する工程が、白金を堆積する工程と、前記白金をエッチバックすることにより前記交差トレンチに前記白金を埋め込む工程とを含む請求項
14に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0069】
特許請求の範囲の請求項
28記載の発明によれば、前記半導体基板が4H−炭化珪素半導体を主材料とし、前記ショットキー電極材料が白金シリサイドをショットキー障壁の形成に有効な成分として含み、前記ショットキー電極を形成する工程が、白金を堆積する工程と、熱処理を加えて前記堆積された白金の一部を前記半導体基板と反応させることにより白金シリサイドとする工程と、未反応の白金を除去する工程とを含む請求項
14に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0070】
特許請求の範囲の請求項
29記載の発明によれば、前記白金を堆積する工程の後、前記白金シリサイドを形成する熱処理を加える工程の前に、前記白金に接するように、炭化物を生成しやすい金属を堆積する工程を含む請求項
28に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0071】
特許請求の範囲の請求項
30記載の発明によれば、前記炭化物を生成しやすい金属は、元素周期表に示される4族、5族、6族のいずれかの金属である請求項
29に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0072】
特許請求の範囲の請求項
31記載の発明によれば、前記炭化物を生成しやすい金属がチタンである請求項
30に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
特許請求の範囲の請求項
32記載の発明によれば、前記チタンを堆積した後、前記白金シリサイドを形成する熱処理を加える工程の後、ニッケルを被着させる前に、前記白金シリサイドを前記第一トレンチ底面よりは少なくとも下までエッチバックする請求項
30に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【0073】
特許請求の範囲の請求項
33記載の発明によれば、前記第1主電極と共通であるニッケルを有する電極膜を前記ショットキー障壁の形成に有効な白金シリサイド膜上に積層する際に、バリアメタル膜を介して前記ニッケルを有する電極膜を積層する請求項
31に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法とする。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、熱拡散法による不純物ドーピングが量産的には未だ確立されていない半導体材料を用いたトレンチゲート型半導体装置においても、従来のものよりセルピッチを縮小することが可能な半導体装
置を提供することができる。さらに、前述に併せて、少なくとも一方の導電型に対して、選択的なエピタキシャル成長を採用せずに、良好なオーミック接触が得られるトレンチゲート型半導体装
置を提供することができる。さらにまた、前述に併せて、トレンチ底の絶縁膜に過大な電界が印加されないトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】本発明の実施例1にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その1)。
【
図2】本発明の実施例1にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その2)。
【
図3】本発明の実施例1にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その3)。
【
図4】本発明の実施例1にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その4)。
【
図5】本発明の実施例2にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その1)。
【
図6】本発明の実施例2にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その2)。
【
図7】本発明の実施例2にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その3)。
【
図8】本発明の実施例2にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その4)。
【
図9】本発明の実施例2にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その5)。
【
図10】本発明の実施例2にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その6)。
【
図11】本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その1)。
【
図12】本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その2)。
【
図13】本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その3)。
【
図14】本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その4)。
【
図15】本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その5)。
【
図16】本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その6)。
【
図17】本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を示す半導体ウエハの断面図である(その7)。
【
図18】本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのユニットセル部の要部断面図である(その1)。
【
図19】本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その2)。
【
図20】本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その3)。
【
図21】本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その4)。
【
図22】本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その5)。
【
図23】本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その6)。
【
図24】本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その7)。
【
図25】本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのユニットセル部の要部断面図である(その1)。
【
図26】本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その2)。
【
図27】本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その3)。
【
図28】本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その4)。
【
図29】本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その5)。
【
図30】本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その6)。
【
図31】本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その7)。
【
図32】従来のSi製トレンチゲート型MOSFETのユニットセル部の要部断面図である。
【
図33】前記
図32に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その1)。
【
図34】前記
図32に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その2)。
【
図35】前記
図32に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その3)。
【
図36】前記
図32に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その4)。
【
図37】従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その5)。
【
図38】前記
図37に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その1)。
【
図39】前記
図37に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その2)。
【
図40】前記
図37に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その3)。
【
図41】前記
図37に示す従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示す要部断面図である(その4)。
【
図42】本発明の実施例6にかかるSiCウエハ上のレジストパターンとSiO
2膜マスクの断面写真を模した図である。
【
図43】本発明の実施例6にかかるSiCウエハ上のSiO
2膜マスクの断面写真を模した図である。
【
図44】本発明の実施例6にかかるSiCウエハ上にSiO
2膜を再堆積させた後のSiO
2膜マスクの断面写真を模した図である。
【
図45】本発明の実施例6にかかるSiCウエハ上にSiO
2膜を再堆積させた後のSiO
2膜の再エッチング後のSiO
2膜マスクの断面写真を模した図である。
【
図46】従来のSiCウエハ上のSiO
2膜マスクの断面写真を模した図である。
【
図47】本発明の実施例6にかかるSiO
2膜マスクを用いてエッチングしたSiCウエハの断面写真を模した図である。
【
図48】本発明の実施例7にかかるSiO
2膜マスクを用いてエッチングしたSiCウエハの断面写真を模した図である。
【
図49】本発明の実施例7にかかるSiO
2膜マスクを用いて2段エッチングしたSiCウエハの断面写真を模した図である。
【
図50】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのユニットセル部の要部断面図である(その1)。
【
図51】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その2)。
【
図52】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その3)。
【
図53】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その4)。
【
図54】本発明の実施例9にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その1)。
【
図55】本発明の実施例9にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その2)。
【
図56】本発明の実施例9にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その3)。
【
図57】本発明の実施例9にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を示すユニットセル部の要部断面図である(その4)。
【
図58】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す平面図(その1)である。
【
図59】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す拡大断面図(その2)である。
【
図60】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す平面図(その3)である。
【
図61】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す拡大断面図(その4)である。
【
図62】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す拡大断面図(その5)である。
【
図63】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す平面図(その6)である。
【
図64】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す拡大断面図(その7)である。
【
図65】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す平面図(その8)である。
【
図66】本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す拡大断面図(その9)である。
【
図67】前記
図37に示す従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETの構造にp型埋め込み領域を適用したユニットセル部の要部断面図である。
【
図68】前記
図37に示す従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETの構造に、ドレイン側の高ドープ層に届く深さのトレンチとしたユニットセル部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、本発明のトレンチゲート型絶縁ゲート電界効果トランジスタについて、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
【0077】
図1〜
図4は本発明の実施例1にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を説明するための半導体ウエハの要部断面図である。
図5〜
図10は本発明の実施例2にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を説明するための半導体ウエハの要部断面図である。
図11〜
図17は本発明の実施例3にかかるトレンチゲート型半導体装置の製造方法を説明するための半導体ウエハの要部断面図である。
図18〜
図24は本発明の実施例4にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法を説明するためのユニットセル部の要部断面図である(その1〜その7)。
図25〜
図31は本発明の実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法を説明するためのユニットセル部の要部断面図である(その1〜その7)。
図42〜
図47は
図46を除いて本発明の実施例6にかかる製造方法を説明するための断面写真を模した図である。
図48〜
図49は本発明の実施例7にかかる製造方法を説明するための断面写真を模した図である。なお、
図42〜
図49において、外枠は写真の端縁である。
図50〜
図53は本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法を説明するためのユニットセル部の要部断面図である。
図54〜
図57は本発明の実施例9にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法を説明するためのユニットセル部の要部断面図である。
図58、
図60、
図63及び
図65は本発明の実施例8にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのゲートトレンチと交差トレンチの交差部分の製造方法を示す平面図である。
図59、
図61、
図62及び
図64は、この製造方法を示す拡大断面図である。
【実施例1】
【0078】
図1に示すように、n型SiC基板1の一方の主面(おもて面という)に、エピタキシャル成長により全面に、n型である所定のドーピング濃度と膜厚を有する耐圧層3と、p型である所定のドーピング濃度と膜厚を有するボディー層をこの順に成膜する。このボディー層の表面に、たとえば、SiO
2膜からなる所定の第1マスクを成膜する。フォトリソグラフィーを用いて、これをパターニングすることで、所定の第1開口部を有する第1マスク106aを形成する。第1マスクとしてはSiO
2膜が好ましいが、他の材料を用いることもできる。ここで、原則的にはボディー領域と言う場合はウエハ表面に選択的に形成される領域を言い、ボディー層と言う場合はウエハ表面に全面に形成される状態を言うものとする。ただし、以下の説明では部分的な断面図では図面からは層か領域かを読み取れない場合があるので、あまり、厳密に層か領域かを区別して記載していないことがある。
図1におけるボディー領域5は、プロセスへの投入当初はボディー層として形成されるが、半導体装置として完成させた状態ではボディー領域5になるので、
図1では最初からボディー領域5とされているので、前述の実施例1の記載中のボディー層は
図1のボディー領域5と同義である。なお、ボディー領域5が前記第1開口部に露出する表面に、スクリーン酸化膜等の保護膜を形成してもよい。
【0079】
次に、第1マスク106aを用いて第1開口部からソース領域を形成するためのイオン注入を行い、ソースイオン注入領域6−1を形成する。この段階の断面図を
図2に示す。なお、この後の工程でソースイオン注入領域6−1が変質するおそれがある場合は、第1マスク106aがその機能を失わない範囲で、先に熱処理を行ってもよい。この熱処理工程は、それ自身が活性化アニール工程であってもよい。たとえば、第1マスク106aがSiO
2膜からなる場合は、SiO
2膜の成膜条件や熱処理雰囲気にもよるが、たとえば1350℃までの温度で熱処理を行うことができる。一方、たとえば高ドーズイオン注入を行ったSiCの領域が、この後にたとえばSiO
2膜を成膜する際の酸化性雰囲気によって変質しないためには、たとえば不活性ガス中で、たとえば1250℃以上の熱処理を行えば充分である。熱処理を行う際に、表面荒れあるいは表面の組成変化が問題となるのであれば、熱処理に先立って、第1マスク106aに対して選択的に除去できるキャップ材料を成膜しておけばよい。たとえば、第1マスク106aがSiO
2膜を主成分とする場合で、半導体材料がSiCである場合には、たとえば、公知の窒化珪素やグラファイト状カーボンが利用できる。窒化珪素は、AlGaN等の半導体ウエハに対しても有効である。窒化珪素は熱リン酸によって簡単に、SiO
2膜に対して選択的に除去できる。また、半導体材料がSiCである場合には、グラファイト状カーボンはたとえば800〜900℃の酸素雰囲気によって除去でき、SiO
2膜に影響がないだけでなく、たとえば前記のように適切に熱処理されていれば、SiCの熱酸化もほとんど進行しない。
【0080】
続いて、第1マスク106aを残したまま、たとえばSiO
2膜からなる所定の第2マスク材料をウエハの全面に成膜して、そのまま全面を異方性エッチングすると、
図3に示すように、第1マスク106aの上面と側面に、トレンチ10を形成するための第2マスク110を残して第1開口部の底部に第2開口部を形成することができる。明らかに、第2マスク110の第2開口部の幅は、第1マスク106aの第1開口部の幅よりも第2マスク110の膜厚の2倍分狭くなっている。第1開口部の側面に第2マスクがエッチングされずに、実質的に元の膜厚のまま残っているからである。そして、第2マスク110は、第1マスク106aに対してフォトリソグラフィー工程無しに自己整合的に形成されている。前記第2マスク材料を成膜する厚さを変えることで、一般的に、第2マスク110の開口部の幅を狭くするように制御可能である。したがって、第2マスクの膜厚を第1開口部の二分の一以上にすると第2開口部の幅は無くなる。
【0081】
その後、第2マスク110を用いて第2開口部から異方性エッチングを行うと、ソースイオン注入領域6−1に対して自己整合的に、トレンチ10が形成される。この状態を
図4に示す。この後、必要に応じて、第2マスク110と第1マスク106aを除去する。そして、必要に応じて活性化アニールを行い、ソースイオン注入領域6−1をソース領域6とする。その後、トレンチ10内にゲート絶縁膜を介してゲート電極を所要の高さまで埋め込み、さらに層間絶縁膜を形成し、所要のソース電極を形成するとトレンチゲート型半導体装置が完成する。
【0082】
以上説明したトレンチゲート型半導体装置の製造方法によれば、熱拡散によらないでも、ソース領域6とトレンチ10を自己整合的に形成できるので、セルピッチを縮小することができる。また、副次的効果として、トレンチ10の幅は、第1マスク106aの開口幅よりも小さいので、用いるステッパー等の解像限界よりも幅の狭いトレンチ10を形成することができる。たとえば、従来の技術で述べたg線ステッパーを用いる場合、第1マスク106aの開口幅をたとえば解像限界(たとえば1μm)まで狭くしたとして、第1マスク106aの開口部の側壁面上に成膜される第2マスク110の厚さ(側方への長さをいう)を0.2μmにしたとすると、トレンチ10の幅は(サイドエッチングを無視すれば)0.6μmとなる。このようにトレンチ10の幅を狭くできると、トレンチ10内に埋め込む導電性物質(たとえば、従来の技術におけるゲート電極12等)をエッチバックにより形成する際に、そのエッチバックの際の作製余裕を大きくすることができる。以上説明した製造方法は、さらに、たとえば次のように、種々の変形が可能である。
【実施例2】
【0083】
ボディーコンタクト領域7を形成するために、まず、選択的でないすなわち、全面エピタキシャル成長が不可避あるいは有効な方法である場合、
図5に示すように、ボディー領域5の上に全面に、ボディーコンタクト層7−1を成膜する。ボディーコンタクト層7−1は、良好なオーミック接触を得るために、所定のドーピング濃度を有するようにエピタキシャル成長の際に同時ドーピングされていてもよいし、また、所定の量子井戸構造を形成するように混晶組成が成長方向に制御されていてもよいし、この両者の特徴を具備するものであってもよい。
図5の状態からソース領域6とボディーコンタクト領域7とトレンチ10とを自己整合的に形成することができることを中心に説明する。
【0084】
まず、
図6に示すように、所定の第1開口部を有する第1マスク106aを形成する。次に、第1マスク106aをマスクとして異方性エッチングを行い、第1マスク106aの開口部下のボディーコンタクト層7−1と、ボディー領域5の一部を除去する。ボディーコンタクト層7−1の残部は、ボディーコンタクト領域7となる。この段階の断面図を
図7に示す。なお、次工程となるイオン注入工程の前に前記エッチング底部に露出するボディー領域5の表面にスクリーン酸化膜等の保護膜を施してもよいのは、前記実施例1の製造方法と同様である。
【0085】
続いて、再び第1マスク106aを通して、第1開口部からソース領域6を形成するためのイオン注入を行い、ソースイオン注入領域6−1を形成する。この段階の断面図を
図8に示す。なお、この後の工程でソースイオン注入領域6−1が変質するおそれがある場合は、熱処理あるいは活性化アニールを行ってもよいのは、前記実施例1の製造方法と同様であり、熱処理温度や必要に応じて設けるキャップ材料についても、前記実施例1の製造方法と特段に変える理由はなく、同様でよい。また、イオン注入を行う代わりに、選択エピタキシャル成長を行ってもよい。
【0086】
その後は、前記実施例1の製造方法と同様に、第2マスク110を形成し(
図9)、第2マスクをマスクとしてさらに異方性エッチングを行うことにより、トレンチ10を自己整合的に形成する(
図10)。その後、第2マスク110と第1マスク106aを除去する。そして、必要に応じて活性化アニールを行って、ソースイオン注入領域6−1をソース領域6とする。この実施例2の製造方法によれば、熱拡散によらないでも、ソース領域6とトレンチ10に加えて、ボディーコンタクト領域7をも、自己整合的に形成できるので、セルピッチを縮小することができる。また、副次的効果として、用いるステッパー等の解像限界よりも幅の狭いトレンチ10を形成することができるのは前記実施例1の製造方法と同様である。
【実施例3】
【0087】
前記実施例1の製造方法ならびに前記実施例2の製造方法によれば、用いるステッパー等の解像限界よりも幅の狭いトレンチ10を形成することができるので、トレンチ10内に埋め込む、たとえば、ゲート電極等をエッチバックにより形成する際に、そのエッチバックの際の作製余裕を大きくすることができる。しかし、それでもなお、熱拡散法による不純物ドーピングの温度が通常の生産工程では実用的とは言えない半導体材料を用いる場合の第2の問題点として、ソース領域6の深さがイオン注入装置によって制限されるため、前記エッチバックの際の作製余裕が依然として不足するという問題を生ずることがある。この実施例3の製造方法は、そのような場合に対する変形である。
【0088】
まず、ボディー領域5の上に、必要に応じてボディーコンタクト層7−1を成膜する。この成膜は必須の工程ではないが、以下では、ボディーコンタクト層7−1を成膜したものとして説明を続ける。前記実施例2の製造方法と同様に、所定の第1開口部を有する第1マスク106aを形成した後、これをマスクとして第1開口部から異方性エッチングを行って、第1マスク106aの第1開口部内のボディーコンタクト層7−1と、ボディー領域5の一部を除去して、第一トレンチ10aを形成する。ボディーコンタクト層7−1の残部はボディーコンタクト領域7となる。この段階の断面図を
図11に示す。
【0089】
続いて、再び第1マスク106aを通して、第一トレンチ10a底部からソース領域6を形成するためのイオン注入を行い、ソースイオン注入領域6−1を形成する。この段階の断面図を
図12に示す。必要に応じて熱処理を行ってもよい等は、前記実施例1の製造方法ならびに前記実施例2の製造方法と同様である。続いて、第1マスク106aを残したまま、たとえばSiO
2膜からなる所定の第2マスク材料をウエハの全面に成膜して、そのまま全面を異方性エッチングすると、
図13に示すように、第1マスク106aの上面と側面に、第2マスク106bが形成される。この第2マスク106bをマスクとして異方性エッチングを行うと、
図14に示すように、第一トレンチ10aに対して自己整合的に、第三トレンチ10bが形成される。ここで、第三トレンチ10bの底面は、ソースイオン注入領域6−1よりも上方にあるようにする。次に、ソース領域6を延長するために、第1マスク106aと第2マスク106bを通して、第三トレンチ10bの底部から再びイオン注入を行い、ソース延長イオン注入領域6c−1を形成する。ここで、ソース延長イオン注入領域6c−1の底面は、ソースイオン注入領域6−1の底面よりも下方にすることができる。この段階の断面図を
図15に示す。なお、必要に応じて熱処理を行ってもよい等は、ソースイオン注入領域6−1と同様である。
【0090】
続いて、第1マスク106aと第2マスクを残したまま、さらにたとえば、SiO
2膜からなる所定の第3マスク材料をウエハの全面に成膜し、この第3マスクに対して全面を異方性エッチングすると、
図16に示すように、第2マスク106bの上面と側面に第3マスク106cが残り、第三トレンチ10bの底部に第三開口部が形成される。この第3マスク106cをマスクとして異方性エッチングを行うと、
図17に示すように、第三トレンチ10bに対して自己整合的に、第二トレンチ10cが形成される。その後、第3マスク106cと第2マスク106bと第1マスク106aを除去する。そして、必要に応じて活性化アニールを行って、ソースイオン注入領域6−1とソース延長イオン注入領域6c−1をまとめて、ソース領域6とする。この実施例3の製造方法によれば、ソース領域6、第一トレンチ10a、第三トレンチ10b、第二トレンチ10c、ならびに必要に応じてボディーコンタクト領域7が、それぞれ互いに自己整合的に形成される。そして、ソース領域6の上面と底面の距離は、イオン注入装置によって決まる最大注入深さよりも大きくすることができるから、トレンチ10内に埋め込むゲート電極などをエッチバックにより形成する際に、そのエッチバックの際の作製余裕を大きくすることができる。あるいは、異なる2種類またはそれ以上の埋め込むゲート電極などに対して、エッチバックの際の作製余裕を大きくするようにできる。なお、これでも前記エッチバックの際の作製余裕が足りない場合は、第3マスク106cを形成する前に、第2マスク106b、第三トレンチ10b、ならびにソース延長イオン注入領域6c−1を形成したのと同様の工程を、必要な回数繰り返せばよい。
【実施例4】
【0091】
実施例4として、
図18にユニットセル部の要部断面図を示すSiC製トレンチゲート型MOSFETを説明する。高ドープ(高不純物濃度)のn型SiC基板1の上に、n型である耐圧層3、p型であるボディー領域5、高ドープp型であるボディーコンタクト領域7が順に積層されている。ウエハ表面からボディーコンタクト領域7を貫いて、ボディー領域5に達する第一トレンチ10aが形成される。第一トレンチ10aの底面に露出するボディー領域5の表面には、高ドープn型であるソースコンタクト領域6aが形成されている。ソースコンタクト領域6aの直下には、ソース拡張領域6bが形成されている。第一トレンチ10aの底面から、ソースコンタクト領域6a、ソース拡張領域6b、ボディー領域5の残部を貫いて、前記耐圧層3に達する第二トレンチ10cが、第一トレンチ10aに対してフォトリソグラフィー工程無しに自己整合的に形成されている。自己整合にするための製法については後述する。第二トレンチ10cの内部には、ゲート絶縁膜11を介して、少なくともソース拡張領域6bと耐圧層3の一部、ならびにボディー領域5に対向する高さにまでゲート電極12が埋め込まれる。ゲート電極12の上部の第二トレンチ10c内には、さらに層間絶縁膜21が埋め込まれる。この層間絶縁膜21によって、ゲート電極12とソース電極23とが電気的に絶縁される。ソース電極23は、第一トレンチ10a凹部内の上部で、ソースコンタクト領域6a表面とオーミック接触を形成するとともに、ボディーコンタクト領域7の表面をも覆って、オーミック接触を形成している。基板1のもう一方の主面(裏面という)には、ドレイン電極22がオーミック接触している。
【0092】
なお、
図18では、ドレイン電極22およびソース電極23は1種類の材料からなるように描いてあるが、従来の技術で説明したように、実際にはSiCウエハ表面と接触する部分は、たとえばSiCウエハ表面側から順にニッケル、チタン、アルミニウムといったような積層膜である。各構成要素の厚さ・幅・ドーピング量または濃度等は、耐圧等の所望の特性と、必要な製造誤差に応じて適宜決定すべきものである。たとえば1.2kV耐圧の場合、耐圧層3はドーピング濃度がたとえば1×10
16cm
-3で膜厚がたとえば10μm、ボディー領域5はドーピング濃度がたとえば2×10
17cm
-3で膜厚(ソース拡張領域6bと耐圧層3にはさまれた厚さをいい、チャネル長に一致する)がたとえば1.5μmとなる。ボディーコンタクト領域7の表面は、ニッケルに対してオーミック接触を得るためには、アルミニウムの場合、最低でも実効的に(ドナーとの補償等の結果残る電気的に活性なアクセプタ濃度をいう)2×10
19cm
-3以上が好ましい。ただし、実用的には2×10
19cm
-3より多少低くてもオン抵抗に大きく影響しなければ使用可能である。
【0093】
しかし、実際にはエピタキシャル成長可能な範囲で、致命的なほど表面荒れを起こさない限りは、高ければ高いほどよい。ボディーコンタクト領域7の厚さは、エピタキシャル成長によって制御可能であって、この後の製造工程で不用意になくなってしまう危険性のない程度に厚い膜厚であれば、薄くても差し支えないので、たとえば0.5μmとする。ソースコンタクト領域6aはリンをたとえば2×10
20cm
-3のボックスプロファイルとなるようにドープするが、一般的なイオン注入装置での1価のリンイオンの最大加速エネルギーはたとえば350keV程度であるので、深さはたとえば0.35μm程度である。下層に位置するソース拡張領域6bは、リンよりも質量の小さい窒素を用いるほうが、同じ加速エネルギーでも、多少なりとも深くまでイオン注入できるが、リン等他の元素を用いることを排除するものではない。2価の窒素イオンを用いて700keVに加速すると、注入深さは0.8μm程度にできる。ドープ量は、不純物濃度が高すぎると高い頻度で結晶欠陥を生じて、耐圧歩留まりが低下することになりかねないので、たとえば5×10
18cm
-3とする。
【0094】
この場合、イオン注入の際に形成されるテールにより、ソース拡張領域6bのソースコンタクト領域6a表面(底面ではない)からの深さは、0.9μm弱になる。トレンチの幅等は、用いるステッパー等の性能に大きく左右されるが、従来の技術との比較のため、従来の技術で述べたg線ステッパーを用いる場合を例にとって説明を続ける。この場合、第一トレンチ10aの幅はたとえば1μmであり、第一トレンチ10aの中心線の間隔(セルピッチに一致する)はたとえば2μmである。第二トレンチ10cの幅はたとえば0.6μmであり、この場合、第二トレンチ10cにはさまれた耐圧層3の幅は、1.4μmとなる。基板1の面方位については、高い耐圧を得るためには、絶縁破壊電界の大きい六方晶炭化珪素の(0001)si面あるいは(000−1)c面が好ましい。
【0095】
なお、これらの面で良好なエピタキシャル成長層を得るために、実際には数度のオフ角を設けた半導体基板が市販されているので、ここにいう(0001)si面あるいは(000−1)c面は、これらのオフ角を含むとして解されるべきものであり、ほぼ(0001)si面あるいはほぼ(000−1)c面との表現も用いている。トレンチ側壁面上での高いチャネル移動度と同時に、大きな製造余裕を得るためには、(000−1)c面を用い、トレンチのウエハ表面における延伸方向を<11−20>方向(可能であれば、オフ角方向)に向けるのがよい。
【0096】
従来はユニットセルのセルピッチが大きかったので、耐圧層3とボディー領域5との間に、電流広がり層と称するn型層を設けていた。しかし、実施例4では第二トレンチ10cの間隔が狭いので、もはや電流広がり層によって耐圧層3の広い範囲に電流の流路を広げても耐圧層3の電気抵抗を低減する効果が実質的に得られないので、形成しなくてもよい。
【0097】
さらに詳しく説明すると、前述のように第二トレンチ10cにはさまれた耐圧層3の幅は、たとえば1.4μmであるので、電流が45度則で広がるとすると、ボディー領域5と耐圧層3の界面からたとえばわずか0.7μmであり、電流の流路は耐圧層3の全域に広がるのに対し、耐圧層3の厚さは、たとえば10μmもあるからである。
【0098】
さらに、耐圧層3のドーピング濃度には、たとえば10%程度の製造誤差があるので、耐圧層3の電気抵抗には10%程度の製造誤差を含んでいる。このことに対して、電流広がり層による抵抗の低減量は、最大限見積もっても7%(10μmのうちの0.7μm)以下であるので、(実際にはもっと小さい)、そもそも製造誤差の範囲内となっているからである。一方、電流広がり層は比較的高ドープであるので、所望の耐圧を維持するために許容される製造誤差の範囲が狭い。以上の理由により、実施例4では電流広がり層を省いてある。
【0099】
しかし、エッジターミネーションを施すために必要であるなど、特段の理由がある場合には、電流広がり層に類似した比較的高ドープのn型層を設けることを排除するものではない。同様に、基板1と耐圧層3との間に、フィールドストッピング層と称するn型層を設けてもよい。なお、n型とp型を入れ替えた構造も可能であるが、Siと同様、SiCでも電子のほうが正孔よりも移動度が大きいので、主要なキャリアが電子であることが好まれ、したがって、前述の導電型の構成となるのが好ましい。
【0100】
前記
図18に示すトレンチゲート型MOSFETの製造方法を、
図19〜
図22を参照して順を追って説明する。まず、
図19に示すように、基板1の上に、耐圧層3、ボディー層5a、ボディーコンタクト層7−1を、順にエピタキシャル成長により成膜する。耐圧層3のドーピング濃度と膜厚は、たとえば、前述のとおりドーピング濃度がたとえば1×10
16cm
-3で膜厚がたとえば10μmである。ボディー層5aの膜厚は、たとえば2.7μmである。
【0101】
次に、
図20に示すように、プラズマCVD(LPCVDでもよい、以下同じ)によりSiO
2膜を、たとえば厚さ2.5μm、ウエハの全面に成膜した後、パターニングして、第1マスク106aを形成する。この第1マスク106aの開口幅は、たとえば1μmであり、マスク残存部の幅も、たとえば1μmである。続いて、第1マスク106aを用いてSiCを異方性エッチングして、ボディーコンタクト層7−1を貫いてボディー層5aに達する第一トレンチ10aを形成する。ボディーコンタクト層7−1の残部は、ボディーコンタクト領域7となる。この段階の要部断面図を
図20に示す。
【0102】
その後、
図21に示すように、同じ第1マスク106aを通して、ウエハをたとえば500℃に保った上で、1〜2価の窒素イオンを注入して、ソース拡張領域6bと同様のドーピング濃度プロファイルを有するソース拡張イオン注入領域6b−1を形成する。同様に、ウエハをたとえば500℃に保った上で、1価のリンイオンを注入して、ソースコンタクト領域6aと同様のドーピング濃度プロファイルを有するソースコンタクトイオン注入領域6a−1を形成する。なお、ソースコンタクトイオン注入領域6a−1とソース拡張イオン注入領域6b−1のイオン注入順序は、逆でも差し支えない。
【0103】
次に、ソースコンタクトイオン注入領域6a−1とソース拡張イオン注入領域6b−1が変質しないように、必要に応じて、不活性ガス中で熱処理を行う。また、熱処理温度が1350℃以下であれば、SiO
2膜が自発的に激しく分解あるいは蒸発することはないが、不活性ガスとして、少なくとも窒素あるいはアルゴンを選択する場合には、第1マスク106aに対して選択的に除去できる、何らかのキャップを施しておいたほうが無難である。キャップ材料としては、たとえば、窒化珪素やグラファイト状カーボンを用いるのが、耐熱性があり、窒素あるいはアルゴン雰囲気で安定であり、なおかつSiO
2膜に対して選択的に除去できるので、好ましい。
【0104】
熱処理温度の下限は、この後の工程でソースコンタクトイオン注入領域6a−1とソース拡張イオン注入領域6b−1が変質しない程度に設定する必要があるが、たとえば1250℃以上あれば、充分である。以上より、熱処理温度は、たとえば1300℃とする。熱処理後、キャップ材料は除去するが、第1マスク106aは残しておかなければならない。窒化珪素は熱リン酸で選択的に除去でき、グラファイト状カーボンの場合はたとえば800〜900℃の酸素雰囲気中で処理すれば除去できる。この段階のウエハの要部断面図を
図21に示す。
【0105】
続いて、再びプラズマCVDによりSiO
2膜を、ウエハの全面に成膜する。この際の膜厚は、第1マスク106aの開口部の側壁面上に成膜される第2マスク110cの厚さ(側方への長さをいう)が所定の厚さ、たとえば0.2μmとなるように選ぶ必要がある。その後、第一トレンチ10aの底部が露出するまで、ウエハの全面でSiO
2膜を異方性エッチングして、第2マスク110cを形成する。この段階のウエハの要部断面図を
図22に示す。
【0106】
なお、第1マスク106aの上面に成膜されたSiO
2膜は異方性エッチングによりほぼ消滅してしまうので、
図22は第1マスク106aの開口部の側壁面にのみ第2マスク110cが形成されたような図となっている。異方性エッチングの製造条件によっては、第1マスク106aの上面に第2マスク110cが残ることがある。また、前記異方性エッチングの工程で第1マスク106aの一部もエッチングされて除去されることもあり得る。いずれにしても、第1マスク106aと第1マスク106aの上面に残る第2マスク110c(もしあれば)とを合わせて、この後の工程に充分耐えられるものであれば、別段差し支えない。
【0107】
次に、第2マスク110cと第1マスク106aを用いてSiCを異方性エッチングして、ソースコンタクトイオン注入領域6a−1とソース拡張イオン注入領域6b−1とボディー層5aを貫いて、耐圧層3に達する第二トレンチ10cを形成する。第二トレンチの幅は0.6μmである。第二トレンチの幅は第2マスク110cの厚さにより制御できる。第2マスクの厚さを第一トレンチ幅の2分の一以上にすると第二トレンチ幅が無くなるので、第2マスクの厚さは第一トレンチ幅の2分の一未満にする必要がある。第二トレンチ10cに挟まれたボディー層5aの残部は、ボディー領域5となる。この段階のウエハの要部断面図を
図23に示す。ここで、前記第一トレンチ10aの底部に幅狭の第二トレンチ10cをフォトリソグラフィー工程を経ずに形成できることが前記自己整合の意味である。自己整合によれば、第二トレンチ10cをマスク合わせ無しに形成できるので、マスクあわせの際に付随するマスクあわせ誤差が無くなり、その分セルピッチを小さくできるのである。
【0108】
次に、第2マスク110cと第1マスク106aを除去する。たとえば、ウエハはフッ酸に浸せばよい。その後、たとえば不活性ガス雰囲気中(少量のSiH
4等を加えてもよい)で、たとえば1700℃にて活性化アニールを行って、ソースコンタクトイオン注入領域6a−1とソース拡張イオン注入領域6b−1を、それぞれソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bとする。その後、必要に応じて、荒れたトレンチ内壁面の平坦化処理を行う。また、必要に応じて、犠牲酸化処理を行ってもよい。
【0109】
その後、第二トレンチ10cの内壁面にゲート絶縁膜11を形成する。この際、熱酸化だけで所要の膜厚を得ようとすると、ソースコンタクト領域6aが減失する惧れがあるため、あまり好ましくない。したがって、LPCVD等の方法でSiO
2膜を堆積した後、追酸化アニール等により改質してゲート絶縁膜11とするのが好ましい。続いて、従来のSi製トレンチゲート型MOSFET等と同様に、高ドープの多結晶シリコンをウエハの全面に成膜して、ゲートパッド付近(図示せず)を保護した後、エッチバックすることにより、第二トレンチ10cの内部にゲート電極12を埋め込む。同様に、適宜ドープしたSiO
2膜をウエハの全面に成膜して、適宜エッチバックすることにより、第二トレンチ10cの内部に層間絶縁膜21を埋め込む。第二トレンチの幅は、たとえば0.6μmであるので、層間絶縁膜21があまり厚すぎなければ、何とかゲート電極12と層間絶縁膜21の両方を第二トレンチ10cに埋め込むだけの製造余裕がある。この段階のウエハの要部断面図を
図24に示す。
【0110】
以下の工程では、従来のSiCのトレンチゲート型MOSFETと同様に、たとえばニッケルとチタンを順にスパッタ成膜してパターニングする。ただし、パターニングの際に、ユニットセル部には合わせるべきパターンはなく、ユニットセル部の全面にニッケルとチタン(あるいはこれらとSiCとの反応生成物)が残っていてもよい。熱処理、アルミニウム等の成膜とパターニングならびに裏面工程も、従来のSiCのトレンチゲート型MOSFETと同様である。
【0111】
以上により、前記
図18に示すSiC製トレンチゲート型MOSFETが完成する。完成したSiC製トレンチゲート型MOSFETのオン抵抗は、たとえば3.5mΩcm
2程度であった。相互コンダクタンスから見積もられるチャネル抵抗は、たとえば0.5mΩcm
2程度であり、全体のオン抵抗の14%程度の比率である。従来のSiC製のトレンチゲート型MOSFETと比べると、チャネル抵抗の全オン抵抗に対する比率はたとえば約1桁低減している。これは、実施例4のSiC製トレンチゲート型MOSFETによれば、セルピッチがたとえば2μmであり、従来のセルピッチ16〜18μmに比べて大幅に縮小し、チャネル密度が高くなったためと考えられる。
【0112】
さらに実施例4では、熱拡散法が実用的な生産方法とは言えない半導体材料を用いたトレンチゲート型半導体装置において、ボディーコンタクト領域7を、全面エピタキシャル成長で成膜したにもかかわらず、ユニットセル部を、マスク合わせ工程無しに自己整合的に形成することができるので、セルピッチを大幅に縮小することができる。その結果、高チャネル密度を達成でき、チャネル抵抗を低減でき、オン抵抗を低減できるのである。
【実施例5】
【0113】
何らかの理由で層間絶縁膜21の厚さを大きくしなければならない等のため、実施例4のSiC製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法では、ゲート電極12と層間絶縁膜21の両方を第二トレンチ10cに埋め込むだけの製造余裕が足りないことがある。この実施例5では、そのような場合であっても、前記製造余裕が得られるようなSiC製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法の一例について説明する。
【0114】
実施例5にかかるSiC製トレンチゲート型MOSFETのユニットセル部の要部断面図を
図25に示す。
図25の多くの構成要素は、前述した実施例4の
図18と同様であるから、同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。実施例4との大きな違いは、第一トレンチ10aに対して自己整合的に、新たに第三トレンチ10bが形成され、さらに第三トレンチ10bに対して自己整合的に、第二トレンチ10cが形成されていることと、第三トレンチ10bの底面には、少なくともソース拡張領域6bと接続するn型のソース延長領域6cが新たに設けられていることである。
【0115】
ソース延長領域6cの厚さ(深さ)は、たとえば1〜2価の窒素イオンを注入することにより、たとえば0.9μmとすることができる。したがって、ソース延長領域6cの底面からソースコンタクト領域6aの上面(第一トレンチ10aの底面)までの厚さは、第三トレンチ10bの底面位置の製造余裕にもよるが、たとえば1.5μm程度とすることができる。したがって、ゲート電極12の上面がソース延長領域6cの上面と底面の間にあるようにエッチバックし、層間絶縁膜21の上面がソースコンタクト領域6aの上面とソース拡張領域6bの底面の間にあるようにエッチバックしたとしても、層間絶縁膜21の厚さを、たとえば0.8μm程度にすることができる(それぞれちょうど中央を狙うと0.6μm程度しか残らないが、中央から0.1μm下と上を狙うようにすれば、0.8μmになる)。したがって、実施例4の場合よりも、層間絶縁膜21を第二トレンチ内部に埋め込むための製造余裕が大きい利点がある。
【0116】
図25のSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を、
図26〜
図31を参照して順を追って説明する。ただし、実施例4の
図18と同様の工程については、重複説明を避けるため略記するにとどめ、実施例4との違いを中心に説明する。まず、前記
図19と同様に、基板1の上に、耐圧層3、ボディー層5b、ボディーコンタクト層7−1を、順に全面エピタキシャル成長により成膜する。ここで、ボディー層5bの厚さは、新たにソース延長領域6cを設けるために、実施例4のボディー層5aよりも大きくする必要があり、たとえば3.3μmとする。
【0117】
次に、前記
図20、
図21と同様に、SiO
2膜をSiCウエハの全面に成膜後、パターニングして、第1開口部を有する第1マスク106aを形成する。続いて、第1マスク106aを用いて第1開口部からSiCウエハ表面を異方性エッチングして、第一トレンチ10aを形成する。次に、同じ第1マスク106aを通して、前記第一トレンチ10aの底部から、たとえば窒素とリンをイオン注入して、ソース拡張イオン注入領域6b−1とソースコンタクトイオン注入領域6a−1を形成する。必要に応じて、実施例4と同様の熱処理を行う。ここまでの工程が終了した状態のウエハの要部断面図を
図26に示す。
図26は、ボディー層5bの厚さを除いて、前記
図21と同様である。
【0118】
次に、第1マスク106aを残したまま、再びプラズマCVDによりSiO
2膜をウエハの全面に成膜する。この際の膜厚は、第1マスク106aの第1開口部の側壁面上に成膜される第2マスク106bの厚さ(側方への長さをいう)が所定の厚さ、たとえば0.1μmとなるように選ぶ必要がある。
【0119】
その後、第一トレンチ10aの底部が露出するまで、ウエハの全面でSiO
2膜を異方性エッチングして、第2開口部を有する第2マスク106bを形成する。この状態でのウエハの要部断面図を
図27に示す。
図27では、第1マスク106aの第1開口部の側壁面にのみ第2マスク106bが形成されたような例となっているが、必ずしもこのとおりでなくてもよいのは、実施例4における第2マスク110cと同様である。
【0120】
続いて、第1マスク106aと第2マスク106bを用いて、第一トレンチ10aの底部の第2開口部からSiCウエハ表面を異方性エッチングして、第三トレンチ10bを形成する。第三トレンチの幅は0.8μmである。第三トレンチ10bの底面は、ソース拡張イオン注入領域6b−1の底面よりは、上方にあるようにする。たとえば、第三トレンチ10bの深さを0.6μm、すなわち第三トレンチ10b底面が第一トレンチ10aの底面よりも0.6μm下方にあるようにすると、第三トレンチ10bの底面はソース拡張イオン注入領域6b−1の底面よりも、たとえば0.3μm上方にあるようにできる(ソース拡張イオン注入領域6b−1の膜厚が0.9μmの場合)。この段階のウエハの要部断面図を、
図28に示す。
【0121】
次に、第1マスク106aと第2マスク106bを通して、ウエハをたとえば500℃に保った上で、たとえば窒素をイオン注入した後、ソースコンタクトイオン注入領域6a−1ならびにソース拡張イオン注入領域6b−1を形成したのと同様に、必要に応じて熱処理を行って、ソース延長イオン領域6c−1を形成する。この段階のウエハの要部断面図を
図29に示す。
【0122】
続いて、第1マスク106aと第2マスク106bを残したまま、再びプラズマCVDによりSiO
2膜を、ウエハの全面に成膜する。この際の膜厚は、第2マスク106bの開口部の側壁面上に成膜される第3マスク106cの厚さ(側方への長さをいう)が所定の厚さ、たとえば0.1μmとなるように選ぶ必要がある。その後、第三トレンチ10bの底部が露出するまで、ウエハの全面でSiO
2膜を異方性エッチングして、第3開口部を有する第3マスク106cを形成する。この状態でのウエハの要部断面図を
図30に示す。
図30では、第2マスク106bの開口部の側壁面にのみ第3マスク106cが形成されたような例となっているが、必ずしもこのとおりでなくてもよいのは、第2マスク106bと同様である。
【0123】
次に、第3マスク106cと第2マスク106bと第1マスク106aを用いて、第三トレンチ10bの底部の第3開口部からSiCウエハ表面を異方性エッチングして、ソース延長イオン注入領域6c−1とボディー層5bを貫いて、耐圧層3に達する第二トレンチ10cを形成する。第二トレンチ幅は0.6μmである。ボディー層5bの残部は、ボディー領域5となる。この段階のウエハの要部断面図を
図31に示す。この後は、ゲート電極12と層間絶縁膜21をそれぞれエッチバックする際の上端位置を、ソース延長領域6cの底面とソースコンタクト領域6aの上面の間に設定するほかは、実施例4と同様である。完成したMOSFETのオン抵抗は、概ね実施例4と同等であった。
【0124】
このように、実施例5によれば、熱拡散が実用的ではない半導体材料を用い、さらにボディーコンタクト領域7を選択的にではなく、全面でエピタキシャル成長で成膜したにもかかわらず、ユニットセル部を自己整合させることができるだけでなく、ソース領域を実効的に厚くすることができるので、セルピッチを大幅に縮小することができる。その結果、チャネル抵抗の低減に役立つだけでなく、実施例4に比べてゲート電極12および層間絶縁膜21をエッチバックする際の作製余裕が大きいメリットも得られる。
【0125】
なお、以上説明した実施例は、あくまで例示であり、本発明の適用範囲は、前記実施例1〜実施例5に限定されない。また、前記実施例1〜実施例5ではもっぱらトレンチゲート型MOSFETを採り上げて説明したが、トレンチIGBT等、他のトレンチゲート構造を有する半導体装置に適用することを排除するものではなく、それらの半導体装置へ本発明を適用する際に必要な変形を加えることは当業者にとって容易といえるレベルにすぎない。
【実施例6】
【0126】
実施例6では、前述したトレンチゲート型MOSFETの製造方法について、特にトレンチ幅を微細化すなわち、セルピッチを小さくする部分の製造方法について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0127】
SiCウエハ(またはSiCエピタキシャル膜付ウエハ)をよく洗浄した後、ウエハ上にラジカルシャワーCVD法によりSiO
2膜を膜厚2.5μmで成膜する。成膜ガスはSiH
4+O
2+Arで50Paの圧力でVHF電力500W、ウエハ加熱温度を400℃とする。SiO
2膜の成膜後のウエハを洗浄後、コーターでレジストをSiO
2膜上に塗布する。ステッパー装置で1μm幅のトレンチパターンが形成されたレチクルを用いて露光、続いて現像を行う。100℃−1分間べークと、更に123℃で15分追加ベークをする。このときのレジストの膜厚は約2.5μmであり、レジストの断面形状は約50度のテーパー形状になる。次にSiO
2膜をドライエッチングし、
図42のようにSiCウエハ上にテーパー形状の開口側壁面を有するSiO
2膜マスクを作製した。SiO
2膜のエッチング条件はCHF
3/Ar=1:1混合ガスを用いて、3Paの圧力でRFパワー75Wである。前述のようにレジストに約50度のテーパーがついているため、SiO
2膜の断面形状は約80度のテーパー形状になる。エッチング後にアッシングを行い、レジストを剥離する。CHF
3/O
2=1:25混合ガスを用いて、150Paの圧力でRFパワー150Wの条件でアッシングする。アッシング後レジストを剥離液に浸し、完全にレジストを除去する。
【0128】
イソプロピルアルコールに浸した後、水洗乾燥後、ウエハに2度目のSiO
2膜堆積を行う。SiO
2膜がパターニングされたウエハ上全面にラジカルシャワーCVD法により2度目のSiO
2膜を膜厚2μmで成膜する。成膜ガスはSiH
4+O
2+Arで50Paの圧力でVHF電力500W、ウエハ加熱温度400℃で行う。
図43にSiO
2膜ドライエッチングでSiO
2膜が80°の角度でパターニングされたウエハを示し、
図44に2度目のSiO
2膜を堆積した状態の図を示す。
図44から、2度目のSiO
2膜堆積を行うと、パターン幅は劇的に狭くできることがわかる。SiO
2膜パターンの上部エッジ部は成膜によりSiO
2膜が張り出してきてしまうため、2μmで塞がる寸前となり、2.5μm堆積すると完全に塞がる。この張り出しがあるため最初のSiO
2膜パターニングは80°の角度にテーパーをつけておく必要がある。垂直だとパターンエッジの塞がりが更に薄い膜厚で起こってしまい充分パターン幅が狭くできなくなるためである。2度目のSiO
2膜の堆積後、堆積した膜厚分を2度目のドライエッチングを行い、パターン底部分に堆積したSiO
2膜をSiC表面が完全に露出するまで除去する。エッチング条件はCHF
3/Ar=1:1混合ガスを用いて、3Paの圧力でRFパワー75Wの条件でエッチングする。
図45に2度目のSiO
2膜エッチング後の断面図を示す。パターン底に堆積しているSiO
2膜がエッチングされて狭い幅のSiO
2膜パターンが形成できる。最初の
図43の状態ではSiO
2膜パターン幅は1.9μmあったが、
図45のSiO
2膜再堆積と再エッチングの工程を行うとパターン幅は0.4μmまで狭めることができる。
【0129】
以上説明したように実施例6の方法によれば、解像度およびマスクあわせ精度が低く、微細加工能力が劣る露光装置を使っても、この露光装置の能力以上の微細なパターン幅のSiO
2膜マスクを形成することができることが分かる。
【0130】
次にSiO
2膜マスクを用いてSiCウエハをドライエッチングする。ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)エッチング装置を用いて、エッチング条件として、ICPパワー540W、バイアス9W、エッチングガスはSF
6/O
2/Ar=8.3/2.2/43sccmで、圧力2.5Paでエッチングする。前記
図43に示した実施例6にかかるマスク微細化方法を用いない場合、従来のSiO
2膜マスクを用いたSiCウエハエッチング後の断面図を
図46に示し、実施例6でSiO
2膜マスク幅を0.4μmまで微細化したマスクを用いてSiCウエハエッチングした断面図を
図47に示す。
図46の従来のマスク幅ではSiCウエハのエッチング断面形状はトレンチ深さ3.2μmでトレンチ幅は2.3μmであるが、
図47の実施例6の方法を用いた場合は、トレンチ深さ3.2μmでトレンチ幅は0.9μmまで狭めることができる。
【実施例7】
【0131】
SiCウエハ(またはSiCエピタキシャル膜付ウエハ)をよく洗浄した後、前記実施例6と同様にレジストをSiO
2膜上に塗布する。その後、ステッパー装置で2μm幅のトレンチパターンが形成されたレチクルを用いて露光および現像を行う。次に実施例6と同様にレジストの断面形状が約50度のテーパー形状になるようにウエハをベークする。次に、実施例6と同様にSiO
2膜をドライエッチングしてSiO
2膜マスクを作製する。さらに、実施例6と同様のエッチング条件でエッチングし、約80度のテーパー断面形状とする。エッチング後にアッシングを行い、レジストを剥離する。CHF
3/O
2=1:25混合ガスを用いて、150Paの圧力でRFパワー150Wの条件でアッシングした。アッシング後レジストを剥離液に浸し、完全にレジストを除去した。イソプロピルアルコールに浸した後、水洗して乾燥した後、1度目のSiCウエハのドライエッチングを行う。このドライエッチングではSiO
2膜マスクを用いて、エッチング装置にICPエッチング装置を用いた。エッチング条件はICPパワー540W、バイアス9W、エッチングガスはSF
6/O
2/Ar=8.3/2.2/43sccmで、圧力2.5Paでエッチングした。
図48にエッチングしたSiCウエハの断面図を示す。トレンチ深さ3.6μmでトレンチ幅は3.8μmである。次にこの1段目のトレンチを形成したウエハ全面に2度目のSiO
2膜堆積を行う。ラジカルシャワーCVD法により2度目のSiO
2膜を4.5μm成膜する。成膜ガスはSiH
4+O
2+Arで50Paの圧力でVHF電力500W、ウエハ加熱温度400℃で行った。2度目のSiO
2膜堆積を行うと、1段目のトレンチ側壁とトレンチ底にSiO
2膜が堆積される。2度目のSiO
2膜の堆積後、堆積した膜厚分を2度目のSiO
2膜エッチングを行い、パターン底部分に堆積したSiO
2膜をSiCウエハ表面が完全に露出するまで除去する。エッチング条件はCHF
3/Ar=1:1混合ガスを用いて、3Paの圧力でRFパワー75Wの条件でエッチングした。トレンチ底に堆積しているSiO
2膜がエッチングされて狭い幅のSiO
2膜パターンが1段目のトレンチ底に形成される。
【0132】
以上説明した実施例7のように微細加工能力が劣る露光装置を使ってもある程度微細なパターン幅のSiO
2膜マスクを形成することができることが分かる。次に2度目のSiCウエハのドライエッチングを行う。エッチング装置にはICPエッチング装置を用いて、エッチング条件はICPパワー540W、バイアス9W、エッチングガスはSF
6/O
2/Ar=8.3/2.2/43sccmで、圧力2.5Paでエッチングした。2回目のSiCウエハのエッチング後にフッ酸でSiO
2膜を除去したものを
図49の断面図に示す。この実施例7に記載の製造方法を用いた場合は、2段のトレンチ形状で2段目が1段目より細いトレンチを形成できる。2段目のトレンチ深さ3.2μmでトレンチ幅は1.1μmまで狭めることができる。このような2段トレンチにすることで原理上セルピッチを通常の1段トレンチより狭くする設計が可能となる。
【0133】
以上説明した実施例6、7によれば、2度のSiO
2膜堆積の工程と2度のSiO
2膜エッチングの工程を行ってからSiCウエハをエッチングすることで、パターン合わせ精度や解像度が低く、微細なレジスト露光ができない露光装置を用いても、その装置能力以上に微細なSiO
2膜マスクパターンを形成することができ、そのSiO
2膜マスクでSiCウエハをドライエッチングするとトレンチ幅は0.9μmまで微細化できる。またこの方法でSiCウエハのエッチングも2段階すると2段になったトレンチを形成でき、2段目は1.1μmの幅のトレンチを形成できる。
【0134】
さらに、以上の実施例1〜7では、本発明にかかるSiC製トレンチゲートMOSFETについて説明したが、本発明はSiC基板だけでなく、窒化ガリウム、窒化アルミニウムあるいは窒化ガリウムと窒化アルミニウムの混晶を主成分とする半導体基板を用いたトレンチゲート型半導体装置にも適用できる。
【実施例8】
【0135】
本実施例8にかかる発明は、前記ゲート電極が埋設されるゲートトレンチ以外に、ゲートトレンチ底部の絶縁膜を過大な電界による破壊を防ぐために、ゲートトレンチよりも深い別のトレンチを設ける構成を有することを特徴とする。この別のトレンチを、これ以降、前記ゲートトレンチと区別するために、交差トレンチと言うことにする。以下、この交差トレンチ構造について説明する。この交差トレンチは平面視では前記ゲートトレンチに交差する方向に延伸させる。このような構成の交差トレンチを設けるメリットは、交差トレンチのピッチはゲートトレンチのピッチと独立に設計できるので、交差トレンチ底部に設けるショットキー電極のショットキー障壁高さを適宜選択することができることである。さらに前記ゲートトレンチと交差トレンチとを有する構成は、併せて、オン抵抗を著しく増大させることなく、有効にゲートトレンチを過大な電界による破壊から保護することができることである。
【0136】
ゲートトレンチと交差トレンチを交差させる構造とする場合、特に交差部分の構造が問題になり易いので、この点について特に詳細に説明する。第1の問題は、ゲートトレンチ内に埋め込まれたゲート電極は、交差トレンチで分断されることなく、すべてのセル間で何らかの形で相互に導電的に接続されていなければならないことである。最も簡単には、ゲート電極を、ゲートトレンチと交差トレンチとの交差部分も含めて、ゲートトレンチ内に連続的に埋め込むことである。
【0137】
第2の問題は、前記交差部分の深さがゲートトレンチのそのほかの部分よりも著しく深くなっていると、その部分の絶縁膜は、交差トレンチによって保護されないので、交差トレンチを設けなかった場合と同様に、過大な電界によって破壊する危険性を有することである。したがって、ゲートトレンチの深さは変えずに、交差トレンチは、ゲートトレンチとの交差部ではゲートトレンチと同じ深さとし、交差部以外の少なくとも一部を選択的に深くする構成としなければならない。
【0138】
第3の問題は、交差トレンチに設けられるショットキー電極は、MOSFETではソース電極(第1主電極)と導電的に接続され、ゲート電極とは適切に絶縁されていなければならないことである。この第3の問題は、簡単なようで難しい。トレンチ内で前記ゲート電極と前記ショットキー電極の間を絶縁できるのは、たとえばSiO
2膜のようなものに限られるが、温度の観点から熱酸化SiO
2膜を形成できないので、CVD堆積SiO
2膜を用いることになる。熱酸化SiO
2膜に比べてCVD堆積SiO
2膜は高電界に耐える絶縁性能が大幅に劣っているため、通常は、たとえば数百nmといった厚いSiO
2が用いられる。しかし、前述の実施例1〜7で説明したゲートトレンチの構成では、ゲートトレンチの内部間隔がたとえば2μm程度しかないので、数百nmといった厚いSiO
2をゲートトレンチ内面に設けると、ゲート電極とショットキー電極自体の厚さが極端に薄くなる。この場合、ゲート電極の内部抵抗を増大させるので、好ましくない。
【0139】
また、仮にトレンチ内でCVD堆積SiO
2膜によってゲート電極とショットキー電極を絶縁することができたとしても、ゲート電極とショットキー電極が対向している部分にはMOSチャネルが形成されないので、ゲートトレンチの単位長さあたりの電流駆動能力(したがってデバイスの単位面積あたりの電流駆動能力)が低下する問題がある。
【0140】
そこで、実施例8では、ゲートトレンチと交差トレンチを自己整合的に有効に絶縁分離する構造ならびにその製造方法を開示する。端的には、ゲートトレンチを前記実施例4の
図18と同様に二重トレンチ構造として、この二重トレンチを形成した後に、当該二重トレンチをSiO
2膜等のマスク材料で埋め戻し、これをパターニングして、交差トレンチを形成するためのマスクとして用い、再度交差トレンチを窒化珪素膜等のマスク材料で埋め戻してゲートトレンチを形成するためのマスクとして用いる製造方法とする。
【0141】
このような製造方法とすることにより、内側のゲートトレンチと交差トレンチとは、自己整合的に絶縁分離される。この場合、交差トレンチはゲートトレンチによって寸断されるため、もはや内側のゲートトレンチとは実際には交差していないが、説明の都合上、以下でも交差トレンチと呼ぶことにする。なお、交差トレンチが二重トレンチとなっており、ゲートトレンチが単一のトレンチであってもよいが、ゲートトレンチの内表面形状を改善するために高温処理を行って、ゲートトレンチを二重トレンチとするほうが、プロセスの自由度が高いので好ましい。
【0142】
本実施例8にかかる交差トレンチを自己整合的に形成するための具体的な製造方法を以下に説明する。
図58に第一トレンチと第三トレンチの拡大平面図、この
図58のx−x断面図を
図59(a)に、y−y断面図を
図59(b)にそれぞれ示す。
【0143】
まず、ゲートトレンチとして、第一トレンチ10aと、第一トレンチ10aの内部に自己整合的に形成される第三トレンチ10bとを形成する。この際に用いるマスクは除去しておいてよい。ゲートトレンチ10b(第三トレンチ)の内表面形状を改善するために、水素雰囲気での高温処理を行うのであれば、この段階で済ませておくこともできる。
【0144】
次に、
図60のウエハの拡大平面図、この
図60のx−x断面図を
図61(a)、y−y断面図を
図61(b)、z−z断面図を
図62にそれぞれ示すように、適切なマスク材料、たとえばSiO
2膜をウエハ全面に成膜する。SiO
2膜の膜厚が充分であれば、第三トレンチ10bと第一トレンチ10aは、簡単に埋め込むことができる。続いて、フォトリソグラフィーにより、第一トレンチ10aならびに第三トレンチ10bの延在方向と直交(必ずしも直交でなく、交差していればよいが、直交しているとして説明を続ける)する開口部を有するレジストマスクを形成し、これを用いて、ボディーコンタクト領域7の表面が露出するように前記SiO
2膜をパターニングして、第1マスク110pを形成する。
【0145】
ここで特記すべきことは、第一トレンチ10aにはSiO
2膜が埋められているから、
図62に示すように(ただし、SiO
2膜をパターニングする際に、通常はオーバーエッチングを行うので、ボディーコンタクト領域7と第1マスク110pとが
図62のように面一になっているとは限らない)、第1マスク110pの開口部が第一トレンチ10aと交差する部分は、SiCではなく、SiO
2膜が露出していることである。
【0146】
続いて、
図63のウエハの平面図、
図63のx−x断面図を
図64(a)、y−y断面図を
図64(b)にそれぞれ示すように、第1マスク110pを用いてSiC表面を異方性エッチングして、交差トレンチ10pを形成する。第1マスク110pの開口部が第一トレンチ10aと交差する部分は、SiO
2膜が露出しているので、あまりエッチングされずにSiO
2膜が残り、ボディーコンタクト領域7が露出していた部分のみがエッチングされて、交差トレンチ10pとなる。結果的に、交差トレンチ10pは、第一トレンチ10aとは接続することになる。第三トレンチ10bは、平面視にて完全に第一トレンチ10aの内部にあるから、交差トレンチ10pとは物理的に分離される。
【0147】
図63では、第1マスク110pのために、直感的に分かりにくいので、第1マスク110pを仮に除去した場合のウエハの平面図を
図65、
図65のz−z断面を
図66に示す。
図65および
図66で明らかなように、交差トレンチ10pは、第一トレンチ10aおよび第三トレンチ10bよりも後から形成したにもかかわらず、これらのトレンチにより分断されており、そして、少なくとも第三トレンチ10bとは物理的に分離されている。
【0148】
以上のようにして、少なくとも第三トレンチ10bとは物理的に分離された交差トレンチ10pが形成される。交差トレンチ10pを形成するために、新たにマスクが必要となるが、第一トレンチ10aならびに第三トレンチ10bに対して位置合わせをする必要はない。この意味で、交差トレンチ10pは、第一トレンチ10aと第三トレンチ10bに対して自己整合的に形成されている。
【0149】
なお、SiO
2膜を成膜して第三トレンチ10bと第一トレンチ10aを埋めた際に、第一トレンチ10aおよび/または第三トレンチ10b内部に鬆(埋設物内部に入っている空隙)が残ることがあるが、SiO
2膜エッチングにより前記鬆が露出したとしても、交差トレンチ10pをエッチングする際のマスクとして充分作用すれば、特に問題はない。
【0150】
また、交差トレンチ10pの幅(
図65では図面縦方向の長さをいう)が広すぎるのであれば、第1マスク110pをパターニングした後、SiCをエッチングする前に再びSiO
2膜を堆積し、全面でエッチングすることにより、第1マスク110pの開口部の幅よりも狭い開口部を有するマスクとすることで、交差トレンチ10pの幅を狭くすることも可能である。
【0151】
さらに、前記
図60〜
図66では、第三トレンチ10bの中心線の間隔(ピッチ)と、交差トレンチ10pのピッチとが、同じになっているが、必ずしもこのようにする必要はなく、所望の性能を達成するように、それぞれのピッチを独立に設計することができる。
【0152】
ただし、第三トレンチ10bにゲート電極を埋め込み、交差トレンチ10pにソース電極と導電的に接続されるショットキー電極を埋め込んで、当該ゲート電極とソース電極を絶縁するためには、以下の実施例に示すように、さらに工夫が必要となる。
【0153】
以下、実施例8では、本発明にかかる交差トレンチを自己整合的に形成する方法を、ショットキー接触を有するトレンチゲート型半導体装置へ適用する場合の一例について説明する。なお、実施例8では、具体的な半導体装置としてトレンチゲート型MOSFETを採り上げるが、トレンチIGBT等、他のトレンチゲート構造を有する半導体装置に適用することを排除するものではなく、それらへ適用する際の変形は当業者にとって難しいことではない。
【0154】
実施例8は、前記実施例4の
図18に示すトレンチゲート型MOSFETへの適用例である。構成要素の多くは前記
図18と同様であるから、同一の構成要素には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。交差トレンチ10pは、たとえば前記
図18の第一トレンチ10aおよび第三トレンチ10bに直交し(斜交することを排除するものではない)、前記
図18の紙面左右平行方向に延在するとする。交差トレンチ10pの存在しない断面(前記
図65のx−x断面に相当する)を
図50(a)に示すが、これは前記
図18の左側半分と同図である。
【0155】
図50(a)の紙面と左右平行方向に、交差トレンチ10pの中心線で切った断面(
図65のz−z断面に相当する)を
図50(b)に示す。交差トレンチ10pは第一トレンチ10aと接しており、第三トレンチ10bとは完全に分離している。交差トレンチ10pは、第三トレンチ10bよりも深く、その内部には、ショットキー電極24が埋め込まれる。ショットキー電極24は、交差トレンチ10pあるいは第一トレンチ10aの中で、ソース電極23に導電接触している。なお、以下の
図51〜
図57においても、各(a)、(b)はそれぞれ
図50の(a)、(b)と同様の箇所で切断した断面図である。
【0156】
図50では、ショットキー電極24は1種類の材料からなるように描いてあるが、必ずしもこのとおりではなく、複数の材料からなっていてもよい。ショットキー電極24のうち、交差トレンチ10pの底部で耐圧層3とショットキー接触を形成する部分(ショットキー接触部24a、
図50には図示せず)は、n型SiCに対しては、たとえば白金その他白金族元素のような、ショットキー障壁高さの大きな材料を用いるのが好ましい。ショットキー障壁高さの最低値は、構造に起因して生じる最大電界と、用いる最高温度(この場合、たとえば短絡時のような異常事態でも動作保証すべき温度として選定すべきである)と、許容するリーク電流とによって決まるが、たとえば、4H−SiCに対して、最大電界3MV/cm、最高温度225℃(175℃でも結果はほとんど同じであるが)で、リーク電流密度10
-5A/cm
2以下を求めるのであれば、ショットキー障壁高さとして1.85eV程度以上は必要であり、従来多く用いられてきたニッケル(ショットキー障壁高さ1.6〜1.9eV)ではわずかに足りないことが多い。また、SiCにニッケルのような金属を直接接触させて熱処理を行うと、シリサイドを生成し、このショットキー障壁高さは元の金属よりも低くなることが多い。したがって、たとえば白金(ショットキー障壁高さ1.9〜2.1eV)を用いるのが好ましいのである。白金の場合は、シリサイドを形成しても、ショットキー障壁高さはあまり低下しない。
【0157】
明らかに、SiCに対して好ましいショットキー障壁高さを有する金属材料は限られている。少しでもショットキー障壁高さを高くするためには、主面として(0001)si面よりも(000−1)c面を用いるのが有効である。ただし、これらの面上に良好なエピタキシャル成長層を得るためには、現状で4〜8度のオフ角が必要であるので、このようなオフ角を有する基板が市販されている。この意味で、概ね(000−1)c面を用いることになる。
【0158】
なお、前記のように、最大電界としてたとえば3MV/cmを選ぶと、これは4H−SiCの絶縁破壊電界よりも高いので、ショットキー障壁を用いても、pn接合だけの場合に比べて、耐圧が著しく低下することにはならない。
【0159】
このようにショットキー電極24を設けると、耐圧層3とボディー領域5からなるpnダイオードよりもオン電圧の小さいショットキーダイオードとなるので、誘導性負荷のスイッチング時にpn接合が不必要にオン状態となって、この際の逆方向回復に起因する損失が増加するのを抑制したり、回生制動時の損失を低減したりする効果も得られる。しかし、ショットキー障壁の高い金属を用いているので、ショットキーダイオードとしては本質的にオン電圧が高く、損失が大きいため、前述のような回生制動時の損失を低減する目的には、オン電圧の小さいショットキーダイオードを並列接続しておいたほうが効果的である。
【0160】
ショットキー接触部24a以外でも、耐圧層3と接触する部分は、多かれ少なかれリークの少ないショットキー接触となっている必要がある。第三トレンチ10bの底部と同様に、ショットキー接触部24aにより電界が緩和される恩恵を受けるので、ショットキー障壁高さはショットキー接触部24aほど高い必要はなく、設計にもよるが、たとえば1.2eV程度(これは、たとえば熱処理したチタンによって実現される)で充分である。さらに、ボディー領域5との接触部は、必ずしもリークの少ないショットキー接触である必要はない。ただし、本実施例8によれば、交差トレンチ10pの側壁面は、上端付近を除いて白金シリサイドで覆われることになるので、耐圧層3に対してもボディー領域5に対しても、ショットキー接触になる。
【0161】
耐圧層3のドーピング濃度と膜厚は、所望の耐圧等の特性によって決定すべきものであるが、たとえば、耐圧1.2kVの場合、製造誤差を見込んで、それぞれ1×10
16cm
-3と15μmである。実際の耐圧は、基板1と耐圧層3の界面から、交差トレンチ10pの底部までの距離によってほぼ決まり、その距離は12μmである。
【0162】
交差トレンチ10pの幅と間隔は、ショットキー電極24のショットキー障壁高さと、耐圧層3のドーピング濃度によって適宜決定する必要があるが、幅がたとえば1μm、間隔(交差トレンチ10pの中心線の間隔をいう)がたとえば4μmである。なお、ゲート電極12および層間絶縁膜21をエッチバックする余裕が足りないときは、前記実施例5の
図25と同様に、3段以上のトレンチを用いてもよい。
【0163】
以上説明した、前記
図50に示す実施例8のトレンチゲート型MOSFETの製造方法を、順を追って説明する。前記
図18に示す前記実施例4のトレンチゲート型MOSFETの製造方法と同様であるところについては説明を省略または簡略にする。まず、たとえば4H−SiCからなる基板1の一方の主面(おもて面という)上に、耐圧層3、ボディー層、ボディーコンタクト層を、順にエピタキシャル成長により全面に成膜した後、エッチング、イオン注入、活性化アニール等を行って、ボディー領域5、ボディーコンタクト領域7、第一トレンチ10a、ソースコンタクト領域6a、ソースコンタクト領域6b、第三トレンチ10bを形成する。第三トレンチ10bの内表面形状を改善するために水素雰囲気で高温熱処理を行う場合には、これも済ませておく。
【0164】
次に、たとえばSiO
2膜からなる第1マスク材料を、たとえばプラズマCVDにより成膜する(熱CVD等でもよい。以下、特記しない限り同様)。膜厚が充分あれば、第三トレンチ10bと第一トレンチ10aは、第1マスク材料により埋められる。第一トレンチ10aの幅がたとえば1μmであれば、たとえば1μm以上も成膜すれば、簡単に第一トレンチ10aを埋めることができる。このような方法では、しばしばトレンチ内に鬆(図示せず)が残るが、多少鬆が残っていても、以下の工程と干渉しなければ、特に問題はない。続いて、前記第1マスク材料をパターニングして、第一トレンチ10aと直交する方向に延在する所定の開口部を有する第1マスク110pを形成する。
【0165】
この状態のウエハ要部断面構造を
図51に示す。注目すべきことは、第1マスク110pの開口部で、平面視にて第一トレンチ10aと交差する部分は、SiCではなく、SiO
2膜が露出していることである。前記のように、仮にトレンチ内に鬆があったとしても、第一トレンチ10a内に、第一トレンチ10aの外部よりも厚いSiO
2膜が存在している限り、この後の工程には影響がない。
【0166】
次に、第1マスク110pをマスクとして、第一トレンチ10aおよび第三トレンチ10bと同様にSiCを異方性エッチングして、交差トレンチ10pを形成する。ここで、第一トレンチ10aに交差する部分は、SiO
2膜が埋まっているので、SiCはエッチングされず、したがって、第三トレンチ10bおよび(サイドエッチング等の副次的効果を無視すれば)第一トレンチ10aの形状は変化しない。また、第三トレンチ10bは、平面視にて、第一トレンチ10aの完全に内部にあるから、交差トレンチ10pとは接触していない。この状態の要部断面構造を
図52に示す。
【0167】
続いて、第1マスク110pを残したまま、第1マスク110pに対して選択的にエッチングすることも残すこともでき、さらに層間絶縁膜21に対しても選択的に除去できる材料、たとえば窒化珪素をウエハの全面に堆積し、適宜エッチバックして、交差トレンチ10pの内部にのみ交差トレンチ保護物111pを埋め込む。交差トレンチ保護物111pの上端位置は、ゲート電極12や層間絶縁膜21と違って、それほど厳密でなくてもよいが、たとえば第一トレンチ10aの底部付近に合わせるのが無難である。なお、第1マスク110pと同様に、多少鬆が残っても差し支えない。
【0168】
次に、交差トレンチ保護物111pをマスクにして、第1マスク110pを選択的に除去する。このとき、ドライエッチングを用いてもよいが、ドライエッチングを用いると、MOSチャネルを形成すべき第三トレンチ10bの側壁面に好ましくない影響を与える可能性に留意する必要がある。少なくとも第三トレンチ10bの側壁面に触れる工程では、たとえば希フッ酸に浸すような処理を行うのが無難である。
【0169】
以下、ゲート絶縁膜11を形成し、ゲート電極12と層間絶縁膜21を第三トレンチ10bに埋め込む。ここで、交差トレンチ保護物111pが窒化珪素であると、ゲート絶縁膜11を形成する際の、たとえば1300℃といった高温の処理にも耐える。この状態のウエハの要部断面構造を
図53に示す。
【0170】
次に、交差トレンチ保護物111pを除去する。前記交差トレンチ保護物111pが窒化珪素であると、熱リン酸に浸すこともできるが、フッ素系・塩素系混合プラズマ等によるドライエッチングを行ってもよい。ドライエッチングを行う場合には、不要な堆積物を生じることもあるので、酸素プラズマ等によるクリーニングを行っておくのが無難である。
【0171】
続いて、白金(他の金属を排除するものではない)をウエハ全面に成膜し、たとえば塩素系プラズマでエッチバックして、交差トレンチ10p内に白金を埋め込む。この際、白金の残る上面の位置は、第一トレンチ10aの底面よりも下になるようにするのが無難である(図示せず)。その後、熱処理(白金の場合には830℃以下)を行って、交差トレンチ10p側壁面と白金を反応させて界面に白金とシリコンとのシリサイド(PtSi)を形成する。次に、ウエハを熱王水に浸し、前記シリサイドを残して未反応の白金をすべて除去する。白金の場合には、PtとPtSiの間に、融点が約830℃まで低下する共晶が存在するため、この工程を入れておいたほうが無難である。
【0172】
次に、たとえばタングステン(他の金属を排除するものではない)をウエハ全面に成膜し、適宜エッチバックして、空の交差トレンチ10pに再びタングステンをバリアメタルとして埋め込む。白金とニッケルは全率固溶体を形成するので、この後積層させるニッケルを直接接触させないためにバリアメタルを必要とする。なお、前記バリアメタルはSiCとショットキー接触を構成するわけではないが、
図50では、交差トレンチ10p内に埋め込んだ金属(前記バリアメタルを含む)を総称して、ショットキー電極24と称している。
【0173】
この後は、たとえばニッケル・チタンをウエハのおもて面に成膜してパターニングして第1主電極とショットキー電極の上層金属膜とし、次に裏面の堆積物を除去して、たとえばニッケル・チタンを裏面全面に第2主電極として成膜する。第1主電極はMOSFETではソース電極となり、第2主電極はドレイン電極となる。その後、熱処理を行って、ソースコンタクト領域6a表面とボディーコンタクト領域7表面および半導体基板1の裏面とオーミック接触を得る。この熱処理の温度は、PtSiとSiの間に、融点が約970℃まで低下する共晶が存在するため、970℃以下とすることが好ましいが、良好なオーミック接触を得るためには熱処理温度をある程度高くする必要があり、したがって、熱処理温度はたとえば950℃とする。
【0174】
その後、図示しないゲートパッドに接続するコンタクトホールを層間絶縁膜21に設け、おもて面にたとえばアルミニウムを堆積してパターニングすることにより、ソース電極およびゲート電極をデバイス上部に引き出す。
【0175】
以上により、
図50に示すトレンチゲート型MOSFETが完成する。作製したデバイスは、ゲートが絶縁破壊することなく、また、ショットキー接触部のリーク電流が著しく増大することなく、設計耐圧である1.2kVを達成した。
【0176】
以上のように、本発明によれば、ゲート電極を埋め込んだトレンチと、ショットキー電極を埋め込んだトレンチとを、自己整合的に分離されるように形成することができ、しかも、前記ゲート電極を埋め込んだトレンチの間隔と、前記ショットキー電極を埋め込んだトレンチの間隔を独立に制御することができるから、オン抵抗を著しく増大させることなく、前記ゲート電極を埋め込んだトレンチの底部に過大な電界が印加されないようにすることができる。
【実施例9】
【0177】
前述の実施例8にかかる製造方法では、ショットキー電極24として、白金その他白金族元素とバリアメタルを個別にエッチバックする必要があり、また、交差トレンチ10pを埋めるために、高価な白金族元素を比較的厚く堆積する必要がある。そこで、本実施例9では、ショットキー電極24となる電極金属をそれほど厚く堆積する必要がない製造方法について説明する。
【0178】
本実施例9のウエハの要部断面構造を
図54に示すが、この
図54は概ね前記実施例8の前記
図50と同様である。ショットキー電極24の製造方法の違いに起因して、ショットキー電極24の詳細構造が異なるが、
図54でも前記実施例8の
図50でも、これらの図面ではショットキー電極24の詳細構造を省略しているため、その違いは明確ではない。
【0179】
本実施例9の製造方法を、以下に順を追って説明する。まず、第三トレンチ10bを形成し、必要に応じて、この第三トレンチ10bの内表面形状を改善するために水素雰囲気で高温熱処理を行うところまでは、前記実施例8と同様である。次に、ゲート絶縁膜11を形成し、ゲート電極12と層間絶縁膜21を第三トレンチ10bに埋め込む。続いて、層間絶縁膜21と、このあとで形成する第1マスク110pのいずれに対しても、選択的に除去することも残すこともできる材料、たとえば窒化珪素からなるエッチストップ膜110qをおもて面の全面に成膜する。
【0180】
その後、前記実施例8と同様に、たとえばSiO
2膜からなる第1マスク材料を成膜し、パターニングして、第1マスク110pを形成する。第1マスク110pの開口部に露出したエッチストップ膜110qは、第1マスク110pをマスクとして除去する。この状態のウエハの要部断面構造を
図55に示す(エッチストップ膜110qのうち、第一トレンチ10aの側壁面に成膜された分は無視してある)が、第1マスク110pの下にエッチストップ膜110qが成膜されていることと、第三トレンチ10b内にゲート絶縁膜11とゲート電極12と層間絶縁膜21が埋め込まれているほかは、前記実施例8の前記
図51と同様である。
【0181】
次に、前記実施例8と同様に、第1マスク110pをマスクとしてSiCを異方性エッチングして、交差トレンチ10pを形成する。この状態のウエハの要部断面構造を
図56に示すが、第1マスク110pの下にエッチストップ膜110qが成膜されていることと、第三トレンチ10b内にゲート絶縁膜11とゲート電極12と層間絶縁膜21が埋め込まれているほかは、前記実施例8の前記
図52と同様である。
【0182】
続いて、たとえば白金とチタンを連続してスパッタ成膜する。交差トレンチ10pのうち、少なくとも耐圧層3が露出した側壁には、充分な膜厚の白金を成膜する必要があるので、交差トレンチ10pの底面には白金が、より厚く成膜されることになる。側壁での白金の膜厚は、たとえば20〜100nm程度とする。チタンは、白金との原子数の比がたとえばほぼ1:1となるように成膜するが、製造誤差が避けられない場合は、チタンが白金よりも少なくならないように設計比率を選ぶ。
【0183】
その後、熱処理(白金を用いている場合は830℃以下)を行って、SiCと白金・チタンとを合金化させると、主としてPtSiとTiCが生成する。そこで、第1マスク110pの上および交差トレンチ10pの側面に残った未反応のチタンはアンモニア・過酸化水素水混合溶液で除去し、未反応の白金は熱王水で除去する。熱王水で処理する際に、処理条件と組成(チタンの反応生成物の組成をいう)によってはチタンの反応生成物が溶解する場合もあるが、特に差し支えない。なお、チタンの代わりに、炭化物を生成しやすい他の金属(たとえばタングステン等、元素の周期表の4族〜6族の金属)を用いてもよい。
【0184】
次に、タングステン(他の金属を排除するものではない)をウエハ全面に成膜し、適宜エッチバックして、タングステンを交差トレンチ10pに埋め込む。白金(他の白金族元素も同様)が後で成膜するニッケルと接触すると、混合してショットキー障壁高さが低下する危険性がある。したがって、このエッチバックの際に、少なくとも白金(あるいはSiCとの反応生成物)も、ある程度、たとえば第一トレンチ10aの底面よりも下まで、タングステンとともにエッチバックする(別々にエッチバックすることを排除するものではない)のが無難である。
【0185】
その後、第1マスク110pに対して、選択的に除去することも残すこともできる材料、たとえば窒化珪素からなる交差トレンチ保護物111pを交差トレンチ10pの上部に埋め込む(第一トレンチ10aの底面より上にはみ出していてもよい)。この状態のウエハの要部断面構造を
図57に示す。
【0186】
続いて、第1マスク110pを除去する。希フッ酸に浸してもよいし、ドライエッチングしてもよい。次に、交差トレンチ保護物111pを残しつつ、エッチストップ膜110qを除去する。エッチストップ膜110qと交差トレンチ保護物111pが同じ材質であっても、エッチストップ膜110qに比べて交差トレンチ保護物111pが充分厚くなるように、白金とタングステンの両方をエッチバックしておけば、問題はない。
【0187】
この後、前記実施例8と同様に、ウエハのおもて面と裏面にたとえばニッケル・チタンを成膜して熱処理することにより、ソースコンタクト領域6a・ボディーコンタクト領域7および基板1とオーミック接触を得る。次に、未反応のチタンとニッケルを除去する。たとえば、チタンはアンモニア・過酸化水素水混合溶液で除去でき、ニッケルはリン酸・硝酸・酢酸の混合溶液や硫酸・過酸化水素混合溶液で除去できる。交差トレンチ保護物111pを除去した後(交差トレンチ保護物111pが窒化珪素の場合、ニッケルを除去する際にリン酸を使うと、一部溶解するかもしれないが、差し支えない)、図示しないゲートパッドに接続するコンタクトホールを層間絶縁膜21に設け、おもて面にたとえばアルミニウムを堆積してパターニングすることにより、ソース電極およびゲート電極をデバイス上部に引き出す。
【0188】
以上により、
図54に示すトレンチゲート型MOSFETが完成する。作製したデバイスは、ゲートが絶縁破壊することなく、また、ショットキー接触部のリーク電流が著しく増大することなく、設計耐圧である1.2kVを達成した。
【0189】
以上のように、本実施例9によれば、前記実施例8の利点に加えて、高価な白金族元素を実施例8のように厚く堆積しなくてもよいという利点がある。
【実施例10】
【0190】
交差トレンチ10pの底面および側壁面は、ショットキー電極24が形成され、電界が印加されるので、ちょっとした凹凸によっても、電界集中が生じてリーク電流が流れるといった、信頼性の問題を生ずることがある。本実施例10は、そのような場合の対策である。
【0191】
本実施例10のウエハの要部断面構造は、前記実施例8の
図50と同様である。ただし、本実施例10の製造方法を適用するためには、交差トレンチ10pの幅は、第三トレンチ10bよりも充分に大きいことが必要である。
【0192】
本実施例10の製造方法を、以下に順を追って説明する。まず、第三トレンチ10bと交差トレンチ10pを形成するところまでは、前記実施例8と同様である。この状態のウエハの要部断面構造は、前記実施例8の
図52と同様である。
【0193】
次に、第1マスク110pを除去する。その後、ゲートトレンチ(第三トレンチ)10bの内表面形状を改善するために、水素雰囲気での高温処理を施すと、第三トレンチ10bと交差トレンチ10pの両方の内表面が平滑化される。
【0194】
次に、膜厚100nm程度のスクリーン酸化膜を成膜(熱酸化でも、堆積膜でもよい)した後、高濃度にリンをドープしたポリシリコン(さらにホウ素を含んでいてもよい)を堆積して、第三トレンチ10bを埋める。ただし、第一トレンチ10aと交差トレンチ10pが完全に埋まってしまわないような堆積膜厚とする。なるべくなら、通常のゲートポリシリコンとは逆に、ポリシリコンの粒径が大きくなるような堆積条件を選ぶのがよい(一般的には、温度を低めにすることになる)。その後、等方性エッチバックを行うと、第一トレンチ10aと交差トレンチ10p内のポリシリコンは完全にエッチングされ、第三トレンチ10b内は、下半分程度にポリシリコンが残るが、粒径が大きい場合には、中心線付近が過剰にエッチングされて、線状の窪みができる。
【0195】
そこで、1000℃程度で熱酸化すると、ポリシリコンはPSGまたはBPSG(Phospho Silicate GlassまたはBoro Phospho Silicate Glass)となって、リフローしながら体積が増加するので、第三トレンチ10b内が埋められる。なお、ポリシリコンをすべて酸化する必要は必ずしもなく、あとで交差トレンチ保護物111pを交差トレンチに埋め込む際に、第三トレンチ10b内に埋め込み物が残ればよい。前記のように線状の窪みがあるほうが、酸化時間は短くてすむ。一方、スクリーン酸化膜があるので、SiCの熱酸化はほとんど進行しない。
【0196】
交差トレンチ10p内のスクリーン酸化膜(と第三トレンチ10bから溢れたPSG)が除去できる程度に、ウエットエッチングを行う。その後、たとえば窒化珪素を全面に成膜してエッチバックすることにより、交差トレンチ10p内に交差トレンチ保護物111pを埋め込む。このとき、第三トレンチ10b内は、PSG(と未酸化のポリシリコン)が埋まったままである。
【0197】
続いて、第三トレンチ10b内に残ったPSG(と未酸化のポリシリコン)を除去する。次に、前記実施例8と同様に、ゲート酸化膜11を形成し、ゲート電極12と層間絶縁膜21を第三トレンチ10bに埋め込む。この状態の要部断面構造は、前記実施例8の
図53と同様である。この後の工程は、前記実施例8と同様である。
【0198】
作製したトレンチゲート型MOSFETは、ゲートが絶縁破壊することなく、また、ショットキー接触部のリーク電流が著しく増大することなく、設計耐圧である1.2kVを達成した。前記実施例8に比べて、リークによる耐圧不良を起こすものが少なくなった。
【0199】
以上説明したように、実施例10によれば、前記実施例8の利点に加えて、交差トレンチ10pにも高温処理を施して、内表面形状を改善することができるから、ショットキー電極24の信頼性が向上する。