特許第5800181号(P5800181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800181
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】局部洗浄用洗浄ノズル装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   E03D9/08 F
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-111628(P2011-111628)
(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公開番号】特開2012-241396(P2012-241396A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】下山 岳宏
(72)【発明者】
【氏名】笹 靖幸
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196389(JP,A)
【文献】 特開平9−316970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水が供給される給水室とノズルストッパとをもつシリンダと、
前記給水室に供給された洗浄水の水圧をうけて前進し前記ノズルストッパに当接するまで前進可能に設けられ、前記給水室の水圧を受ける受圧部と局部に洗浄水を吹き出す吹出口と前記吹出口および前記給水室を連通可能なノズル室とをもつノズルと、前記ノズルを前記シリンダの前記給水室において後退させる付勢力を発揮させる付勢要素とを具備しており、
記受圧部は、固定部と
前記固定部に保持され前記ノズルよりも可撓性をもつ材料で形成され且つ少なくとも前記ノズルの前進後退方向に弾性変形可能な弾性体と
前記弾性体の前記給水室側に隣設された状態で前記固定部に保持され前記給水室の水圧を受圧する受圧面をもち且つ前記弾性体よりも硬質な材料で形成され且つ前記受圧面の受圧に伴い前記弾性体に向けて変位する硬質体と、前記弾性体と前記硬質体との境界領域に形成され且つ前記給水室の水圧増加に伴い前記弾性体および前記硬質体が互いに圧接することで絞り度を高めて前記給水室から前記ノズル室に流れる単位時間当たりの通水量を制限させる水圧応答式の可変絞り通路とを具備する局部洗浄用洗浄ノズル装置。
【請求項2】
請求項1において、前記硬質体は、前記可変絞り通路を経由せずに前記ノズル室と前記給水室とを連通させる固定絞り通路をもつ局部洗浄用洗浄ノズル装置。
【請求項3】
請求項2において、前記硬質体の前記受圧面を前記給水室に露出させるように前記ノズルの前記固定部からの前記硬質体の脱落を抑えるキャップが前記固定部に設けられており、前記キャップは、前記硬質体との間に前記給水室から前記ノズル室への水流をシールするシール部を有する局部洗浄用洗浄ノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局部を洗浄する温水便座に搭載される洗浄ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、衛生洗浄装置が開示されている。この装置は、先端側外周面に尻洗浄用給水口とビデ洗浄用給水口を有して内部にピストン駆動用の水が供給されるシリンダと、内部に尻洗浄用流路とビデ洗浄用流路とを有し、シリンダ内に進退自在に嵌挿され水によって前進する洗浄ピストンと、洗浄ピストンを復帰させるばねと、尻洗浄用給水口内に進退自在に配設さればねによって復帰方向に付勢された第1の接続栓と、ビデ洗浄用給水口内に進退自在に配設さればねによって復帰方向に付勢された第2の接続栓とを備える。そして、第1の接続栓は、尻洗浄時に洗浄ピストンが尻洗浄位置に移動すると、洗浄水の水圧によって尻洗浄用給水口から突出して尻洗浄用流路に進入することにより、洗浄ピストンを尻洗浄位置に停止させるとともに、尻洗浄用給水口と尻洗浄用流路とを接続させる。第2の接続栓は、ビデ洗浄時に洗浄ピストンがビデ洗浄位置に移動すると洗浄水の水圧によってビデ洗浄用給水口から突出してビデ洗浄用流路に進入することにより、洗浄ピストンをビデ洗浄位置に停止させるとともに、ビデ洗浄用給水口とビデ洗浄用流路とを接続させる。
【0003】
特許文献2には、水量制御装置が開示されている。この装置は、流体を吐出するノズルと、ノズルに連通し水量を電気的に可変する水量可変ユニットと、ノズルから吐出する吐出水量を設定指示する水量調節スイッチと、流体の吐出開始時に水量調節スイッチの指示にかかわらず、まず最大水量より小さくかつ最小水量より大きいあらかじめ定められた固定の吐出水量状態を経由した後に水量調節スイッチで設定された吐出水量状態に水量可変ユニットを制御する所定水量開始制御手段を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-242265号公報
【特許文献2】特許第3168817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、省エネルギの観点から温水の使用量を減らすために局部洗浄の水量が抑制される傾向にあるため、少ない局部洗浄の使用水量であってもノズルを確実に且つ迅速に前進させて伸ばし得ることが求められている。
【0006】
また、給水室の水圧に応答する水圧応答式のノズルは、モータ駆動式のノズルとは異なり、シリンダの給水室に供給された給水圧(水量)によってノズルを前進させている。ノズルを前進させている途中では、ノズルにかかる給水室の水圧は小さくなる傾向がある。すなわち、水圧応答式のノズルでは、ノズル前進時において、シリンダの給水室に供給された水量によってノズルを前進させているが、ノズルを前進させている途中に、リターンバネの付勢力に逆らってノズルを前進させることで、給水室の水が満ちる容積が増加するため、更に、シリンダの内周面とノズルの外周面との隙間から水が漏れる傾向があるため、給水室の水圧は小さくなる。このため少ない水量でノズルを確実にかつ迅速に前進させて伸ばすためには、必ずしも充分ではなく、局部洗浄に影響を与えるおそれがある。
【0007】
殊に、マンションやビルのような高層の建築物に設置される局部洗浄装置では、水源である上水道の水圧には限界がある場合がある。このような場合、上水道の水圧が低いため、給水室に供給される水量が比較的小さくなり易い。このような高層の建築物に設置される局部洗浄装置であっても、ノズルを確実に且つ迅速に前進させて伸ばし得ることが求められている。
【0008】
上記した特許文献1では、ノズル前進用の水路と、お尻・ビデ用の水路とを分けることで上記した問題を改善させているが、構造が複雑となり、コスト高および組付性の低下を招く。更に、『洗浄ピストンが洗浄位置に移動すると、洗浄水の水位によって接続栓が洗浄用給水口から突出して洗浄用流路に進入し、洗浄後にバネによって復帰する』ような構造を採用しても、接続栓が復帰せずに洗浄ピストン(ノズル)が収納位置に戻らない不具合が起きるおそれがある。
【0009】
特許文献2では、ノズル前進時には予め設定された水量吐出状態に水量可変ユニットを制御し、その後、洗浄時の所定の水量吐出状態に水量可変ユニットを制御すること、すなわち、使用者が弱洗浄モードを選択して操作した際にも、強洗浄並の水量でノズルを前進させ、洗浄が始まる時間的余裕を考慮して弱洗浄の水量に変化させることで、上記問題を改善している。しかし、使用者が弱洗浄モードを選択して弱で洗浄したい場合においても、初期の洗浄強さが意図した洗浄強さよりも大きくなるため、使用者に不快感を与えるおそれがある。
【0010】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、局部洗浄する場合には、可変絞り通路の絞り作用により給水室からノズル室に供給される水量を絞って相対的に小さな水量で局部を洗浄することができることで、ノズル前進時においては、大きな水量でノズルを確実に且つ迅速に前進させて伸ばすことができる局部洗浄用洗浄ノズル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る様相1の局部洗浄用洗浄ノズル装置は、(i)洗浄水が供給される給水室とノズルストッパとをもつシリンダと、(ii)給水室に供給された洗浄水の水圧をうけて前進しノズルストッパに当接するまで前進可能に設けられ、給水室の水圧を受ける受圧部と局部に洗浄水を吹き出す吹出口と吹出口および給水室を連通可能なノズル室とをもつノズルと、(iii)ノズルをシリンダの給水室において後退させる付勢力を発揮させる付勢要素とを具備しており、(iv)受圧部は、固定部と、固定部に保持されノズルよりも可撓性をもつ材料で形成され且つ少なくともノズルの前進後退方向に弾性変形可能な弾性体と、弾性体の給水室側に隣設された状態で固定部に保持され給水室の水圧を受圧する受圧面をもち且つ弾性体よりも硬質な材料で形成され且つ受圧面の受圧に伴い弾性体に向けて変位する硬質体と、弾性体と硬質体との境界領域に形成さ且つ給水室の水圧増加に伴い弾性体および硬質体が互いに圧接することで絞り度を高めて給水室からノズル室に流れる単位時間当たりの通水量を制限させる水圧応答式の可変絞り通路とを具備する。
【0012】
本様相によれば、水圧で駆動するノズルとされている。このためノズルが前進端に向けて前進するときには、ノズルの前進に伴い給水室において水が満ちる容積が増加する関係上、給水室の水圧は局部洗浄時よりも相対的に低くなる。また、局部洗浄するときには、ノズルが前進端に到達しているため、給水室において水が満ちる容積の増加が抑えられており、給水室の水圧はノズル前進時に比較して相対的に高くなる。
【0013】
本様相によれば、局部洗浄時には、前述したように給水室の水圧が相対的に高くなるため、弾性体および硬質体が互いに圧接して可変絞り通路の絞り度は高まり、可変絞り通路を通過する単位時間あたりの通水量は制限され、結果として相対的に少ない水量で局部洗浄できる。
【0014】
このように局部洗浄時において、可変絞り通路を通過する単位時間あたりの通水量が制限され、相対的に少ない水量で局部洗浄できるため、ノズル前進時において給水室に供給する単位時間当たりの水量を増加させることが可能となり、ひいてはノズルを確実に且つ迅速に前進させて伸ばすことができる。すなわち、ノズルを前進させる前進時においては、局部洗浄時の水量よりも多い水量でノズルを前進端に向けて前進させることができ、確実に且つ迅速にノズルを前進させて伸ばすことができる。
【0015】
(2)本発明に係る様相2の局部洗浄用洗浄ノズル装置によれば、上記様相において、硬質体は、可変絞り通路を経由せずにノズル室と給水室とを連通させる固定絞り通路をもつ。このように固定絞り通路を硬質体に設けることで、可変絞り通路の水圧差による絞り度の変動幅を低減できるため、強弱洗浄の差が成立するような可変絞り通路形状が様相1の場合よりも簡素化できる。
【0016】
(3)本発明に係る様相3の局部洗浄用洗浄ノズル装置によれば、上記様相において、硬質体の受圧面を給水室に露出させるようにノズルの固定部からの硬質体の脱落を抑えるキャップが固定部に設けられており、キャップは、ノズルの移動中では給水室の水圧が低く、上記硬質体の弾性体への圧接度が低いとき、硬質体との間でノズル室内に水が流れないようにシールする。これにより、固定部からの硬質体の脱落がキャップにより抑えられると共に、ノズルの前進時に吹出口より、洗浄水が噴出することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ノズルをノズルストッパに当接させて前進端で停止させて局部洗浄する場合には、可変絞り通路の絞り作用により水量を絞って相対的に小さな水量で局部を洗浄することができる。更に、ノズルを前進させる前進時においては、局部洗浄時の水量よりも多い水量でノズルを前進端に向けて前進させることができ、確実に且つ迅速にノズルを前進させて伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1に係り、ノズルをシリンダの給水室に収容している状態を示す断面図である。
図2】実施形態1に係り、ノズルをシリンダの給水室から前進させている状態を示す断面図である。
図3】実施形態1に係り、ノズルをシリンダの給水室から前進させている途中状態を示す要部の断面図である。
図4】実施形態1に係り、ノズルがストッパに当接してシリンダの給水室の前進端に停止して、洗浄している状態を示す断面図である。
図5】実施形態2に係り、シリンダの固定部に取り付けられている弾性体、硬質体およびキャップを分解して示す斜視図である。
図6】実施形態2に係り、シリンダの固定部に取り付けられている弾性体、硬質体およびキャップを分解して異なる方向から示す斜視図である。
図7】実施形態2に係り、(A)(B)(C)は硬質体を示す図である。
図8】実施形態3に係り、(A)(B)(C)は硬質体を示す図である。
図9】実施形態4に係り、(A)(B)(C)は硬質体を示す図である。
図10】参考形態に係り、ノズルをシリンダの給水室から前進させている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
受圧部は、ノズルの前進時において、ノズルのうち給水室の水圧を受圧するものであり、ノズルの後端部側に設けられていても良いし、ノズルの軸長方向の中間部に設けられていても良い。受圧部は、固定部と、固定部に保持されノズルよりも可撓性をもつ材料で形成され且つ少なくともノズルの前進後退方向に弾性変形可能な弾性体と、弾性体に隣設された状態で固定部に保持され給水室の水圧を受圧する受圧面をもち且つ弾性体よりも硬質な材料で形成された硬質体と、弾性体と硬質体との境界領域に形成された水圧応答式の可変絞り通路とを有する。可変絞り通路は、絞り度が可変であり、且つ、給水室の水圧増加に伴い弾性体および硬質体を互いに圧接させて絞り度を高めて通水量を制限させる。
【0020】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図1図4を参照して説明する。洗浄ノズル装置は温水便座洗浄装置に搭載されるものであり、人体の便局部洗浄用でも、女性局部洗浄用でも良い。図1に示すように、洗浄ノズル装置は、人体の局部を洗浄する水が供給される給水室10をもつシリンダ1と、シリンダ1に保持されたノズル2と、付勢要素として機能するコイルバネで形成されたバネ3とを有する。シリンダ1は、前進するノズル2を停止させ、シールするためのストッパ11(ノズルストッパ)を有する。ノズル2は、シリンダ1の給水室10において矢印F方向に前進可能、矢印R方向に後退可能に設けられている。図1に示すように、給水室10の上流には水量調整バルブ301、温水を溜める貯水タンク302、調圧止水バルブ303、水道管304(水源)が直列に並設されている。水量調整バルブ301の水量は、洗浄処理のモード(例えば強モード、弱モード)に応じて調整される。ノズル2は、ノズル2の先端側に設けられ局部に向けて洗浄水を吹き出す吹出口22と、吹出口22および給水室10を連通可能なノズル室23とをもつ。シリンダ1の先端部とノズル2との間には、コイルバネで形成されたリターン用のバネ3がノズル2に対してほぼ同軸的に設けられている。バネ3は、給水室10においてノズル2の外周側に配置されており、シリンダ1の給水室10に退避させるようにノズル2を後退方向(矢印R方向)に常時付勢する。
【0021】
図3図4に示すように、ノズル2は、筒形状をなすノズル本体20と、ノズル本体20の後端側に形成された受圧部として機能できるピストン24とをもつ。ピストン24は、給水室10の水圧を受圧する径大筒形状とされている。図3図4に示すように、ピストン24は、ノズル本体20と同軸的な筒部240と、筒部240から外径方向に延設されたリング状の段部241と、ノズル本体20と同軸的に延設された固定孔242をもつ筒形状の固定部243とをもつ。筒部240、段部241および固定部243は同軸的に設けられている。図3図4に示すように、ピストン24は、固定部243の固定孔242内に保持された弾性体4と、弾性体4に隣設された状態で固定部243の固定孔242内に保持された硬質体5と、弾性体4と硬質体5との境界領域に形成された水圧応答式の絞り率を示す可変絞り通路6とを有する。弾性体4は中央孔4cを有しており、ノズル2よりも可撓性をもつ材料(例えばゴムまたは可撓性樹脂)でリング状に形成されている。弾性体4の可撓性度は、可変絞り通路6の通路断面積を確保できるように適宜選択できる。硬質体5は、弾性体4よりも硬質な材料(例えば硬質樹脂、金属、セラミックス)でリング状に形成されている。硬質体5は、後述する固定絞り通路56をもつ円盤部50と、円盤部50の外周を規定する硬質リング部51と、硬質リング部51に連設されノズル2の前進方向(矢印F方向)に突出する複数の絞り突起52とをもつ。絞り突起52は、硬質体5の周方向において間隔を隔てて形成されているため、弾性体4への食い込み性を確保し、絞り度の可変性を確保している。但し、絞り突起52の前面52xは鋭角状ではなく平坦状とされているため、弾性体4への過剰の食い込みは抑えられ、ひいては可変絞り通路6の絞り度が過剰に高くなることは抑えられている。
【0022】
弾性体4は、ノズル2の前進後退方向(矢印F,R方向)に弾性変形可能である。硬質体5の円盤部50の背面57には、給水室10の水圧を受圧する受圧面58が形成されている。絞り突起52は矢印F方向に移動して弾性体4に食い込むことができる。給水室10に供給される単位時間当たりの水量が増加して給水室10の水圧が増加するに伴い、硬質体5の絞り突起52が弾性体4に食い込んで圧接して可変絞り通路6の絞り度を高め、可変絞り通路6の通路断面積を狭くさせ、可変絞り通路6を通過する単位時間あたりの水の通水量を制限させる。給水室10に供給される単位時間当たりの水量が低下して給水室10の水圧が低い場合には、硬質体5の絞り突起52の弾性体4への食い込み度が低くなるため、可変絞り通路6の絞り度が低くなり、可変絞り通路6の通路断面積を確保できる。このように水圧応答式の可変絞り通路6は、弾性体4と硬質体5の絞り突起52とで形成されており、給水室10の水圧に応じて絞り度は可変である。
【0023】
図3および図4に示すように、硬質体5の受圧面58の中央域には、固定絞り通路56が貫通されている。固定絞り通路56は可変絞り通路6とは独立に設けられており、ノズル室23と給水室10とを連通させており、且つ、給水室10からノズル室23に向かう水の単位時間当たり水量を絞る。このように硬質体5は固定絞り通路56をもつ。このため、ノズル2の矢印F方向への前進を確実にすべく、給水室10への単位時間あたりの給水量が相対的に多い場合において、給水室10からノズル室23に向かう水の水量を固定絞り通路56により確実に絞ることができ、したがって、ノズル2を洗浄位置に向けて矢印F方向へ確実に前進させつつも、洗浄位置へ到達後に洗浄モードとなった際に、局部の洗浄感が過剰に強くなることが抑制される。図3に示すように、固定部243に保持されている硬質体5の受圧面58は、給水室10に対面して露出されている。このため給水室10に水が供給されると、硬質体5の受圧面58が受圧した受圧力により、硬質体5を介してノズル2は矢印F方向に前進できる。
【0024】
図3図4に示すように、キャップ7が固定部243の固定孔242に設けられている。固定部243および固定孔242は、給水室10の水圧を受け易いようにノズル2の後端部に位置する。キャップ7は、ノズル2の固定部243のリング段状の係合部245に圧入されたり溶着されたり接着剤等で固着されているため、キャップ7は固定部243に対してそれ以上矢印F方向に移動しない。キャップ7は、硬質体5の受圧面58を給水室10に露出させるようにノズル2の固定部243からの硬質体5の脱落を抑える。キャップ7は、係合部245に係合するリング部70と、リング部70を繋ぐ腕部71と、腕部71に隣接する通水孔72と、腕部71に連設された中央域に位置するシール突起73(シール部、当接部)とをもつ。図3および図4に示すように、通水孔72は、硬質体5の円盤部50の受圧面58および給水室10に対面する。キャップ7は、弾性体4よりも硬質な材料(例えば硬質樹脂、金属、セラミックス)や弾性体4と同様な材料(例えば、ゴム等)で形成されている。
【0025】
ノズル2の前進時には、図3に示すように、給水室10の水量が増加することでノズル2をR方向へ付勢するバネ3の付勢力よりも大きな力が硬質体5の受圧面58にかかるため、ノズル2が前進する。この時、硬質体5は、前進時において弾性体4の弾性力により矢印R方向(ノズル2の後退方向)に付勢される符勢力が受圧面58に加わる力よりも大きくなるように設定することで、キャップ7のリング部70に密接した状態を保つことができる。これにより弾性体4の弾性力により硬質体5は矢印R方向に適度に付勢されてキャップ7のリング部70の軸端面70cに密接し、硬質体5の背面57とキャップ7の軸端面70cとの境界域は、シールされてシール形状をなす簡易シール部75を形成している。簡易シール部75がシール機能を果たすとき、給水室10の水は簡易シール部75を実質的に通過できない。この場合、図3から理解できるように、弾性体4の弾性力により硬質体5は矢印R方向に付勢されているため、固定絞り通路56の入口56eはキャップ7のシール突起73の軸端面73cに対面してシールされている。また、図4に示すようにストッパ11によってノズル2が停止するまで、給水室10に供給された水は、給水室10の容積を増加させると共に、ピストン24の固定部243とシリンダ1との間に生じる隙間から漏れ出すことが可能である。このため、給水室10内の圧力は、受圧面58をF方向へ押さない程度(受圧面58を押すことができる最小の力以下)に保たれる。これにより、簡易シール部75は、受圧面58に対して過度な力が加わらないためシール性を損なうことがなく、給水室10の水が固定絞り通路56からノズル室23に進入することを抑制することができる。従って、ノズル2が前進するときには、図3から理解できるように、簡易シール部75から可変絞り通路6を介してノズル室23に進入する水量は制限される。同様に、固定絞り通路56を介してノズル室23に進入する水量は制限される。
【0026】
次に、局部の洗浄が開始されるときについて説明を加える。図3はノズル2の前進途中を示す。図4は局部洗浄時を示す。洗浄水の水量は水量調整バルブ301(図1参照)により調整されている。水量調整バルブ301を介して水が給水室10に供給される。すると、図3から理解できるように、給水室10の水圧を硬質体5の受圧面58および固定部234が受圧するため、給水室10において水が満ちる容積が増加する方向に、バネ3の付勢力に抗しつつ、ノズル2は洗浄位置に向けて矢印F方向に前進する。このようにノズル2が前進しているとき、図3から理解できるように、弾性体4の弾性力により、硬質体5は、矢印R方向に付勢されてキャップ7のリング部70の軸端面70cに密接し、硬質体5の背面57とキャップ7のリング部70の軸端面70cとの境界域はシールされ、リング状の簡易シール部75を形成している。更に、弾性体4の弾性力により硬質体5は矢印R方向に付勢されているため、固定絞り通路56の入口56eは、キャップ7の絞り突起52に密接してシールされている。また、給水室10に供給された水は、ピストン24の固定部243とシリンダ1との間に生じる隙間から漏れ出すことが可能である。従って、前述したように、ノズル2が矢印F方向に前進するときには、給水室10に供給される水は、可変絞り通路6からノズル2のノズル室23に進入することが抑制されている。ひいてはノズル2の吹出口22から水が吹き出されることが抑制されている。更に、給水室10に供給された水は、固定絞り通路56からノズル室23に進入することが抑制されている。このようにノズル2を矢印F方向に前進させるときには、給水室10からノズル室23ひいては吹出口22に進入する水量は、簡易シール部75のシール作用により効果的に制限される。このため給水室10の水を、ノズル2を矢印F方向に前進させる前進駆動力として効率良く使用できる。この意味でノズル2を確実に且つ迅速に前進させることができる。更に、ノズル2を給水室10に退避させる退避性を高めるべく、バネ3の矢印R方向への付勢力を高めても特段の支障がない。また、ノズル2の移動中に吹出口22から水が吹き出ないため、使用者の背中等の局部以外を漏らすことがない。
【0027】
上述したようにノズル2の矢印F方向への前進が進行すると、図4に示すように、ノズル2の固定部243の円錐状のシール面243cはシリンダ1の円錐状のストッパ11に当接するため、ノズル2のそれ以上の前進が停止される。ストッパ11では簡易シール部13が形成される。この結果、給水室10に供給された水の水圧が硬質体5の受圧面58および固定部243等に効率よく受圧される。このため、硬質体5が矢印F方向(ノズル2の前進方向)に弾性体4に向けて前進し、硬質体5の絞り突起52が弾性体4に圧接しつつ食い込む。この結果、図4に示すように、キャップ7のリング部70の軸端面70cから硬質体5が離間し、第1微小隙間76fを形成し、簡易シール部75のシールを解除させる。これにより給水室10に供給された水は、解除された簡易シール部75と可変絞り通路6とを介して矢印A1方向(図4参照)に流れてノズル室23に進入する。更に、図4に示すように、硬質体5が矢印F方向に移動するため、固定絞り通路56の入口56eがキャップ7のシール突起73から離間し、キャップ7と硬質体5との間に第2微小隙間76sを形成する。このため、給水室10の水は、第2微小隙間76sを介して固定絞り通路56に矢印A2方向(図4参照)に流れてノズル室23に進入することができる。ノズル室23に進入した水は、吹出口22から局部(便局部または女性局部)に向けて吹き出され、人体の局部を洗浄させる。
【0028】
このように局部洗浄時において、可変絞り通路6を通過する単位時間あたりの通水量が制限され、相対的に少ない水量で局部洗浄できる本実施形態によれば、ノズル2の前進時において給水室10に供給する単位時間当たりの水量を増加させることが可能となり、ひいてはノズル2を確実に且つ迅速に前進させて伸ばすことができる。すなわち、ノズル2を前進させる前進時においては、局部洗浄時の水量よりも多い水量でノズル2を前進端に向けて前進させることができ、確実に且つ迅速にノズルを前進させて伸ばすことができる。
【0029】
また本実施形態によれば、局部洗浄時には、図4に示すようにノズル2の固定部243のシール面243cがシリンダ1のストッパ11に当接し、ノズル2が前進端で停止されているため、給水室10において水の満ちる容積が増加せず、給水室10の水圧が相対的に高くなる。この結果、硬質体5が水圧により矢印F方向に前進し、硬質体5の絞り突起52が弾性体4に食い込むため、弾性体4および硬質体5の圧接度が高くなり、水圧応答式の可変絞り通路6の絞り度が高くなり、可変絞り通路6の通路断面積が相対的に狭くなる。このため、給水室10の水圧が相対的に高いときであっても、給水室10から可変絞り通路6を介してノズル室23を経て吹出口22に向かう水の水量の過剰増加が抑制される。このように、給水室10の水圧が相対的に高い場合(例えば強洗浄時)や給水室10の水圧が相対的に低い場合(例えば、弱洗浄時)であっても、水圧応答式の可変絞り通路6の絞りによって、ノズル室23内に流れ込む水の水量が制限される。
【0030】
上記本実施形態によれば、ノズル2を前進させる際の給水室10への給水量を可変絞り通路6を設けない場合と比較して多く設定できるため、前進駆動力を増加させることが可能である。更に、ノズル2の前進が停止した後に洗浄モードへ移行する際には、可変絞り通路6の絞りによってノズル室23内に流れ込む水の水量が絞られるため、局部の洗浄感(洗浄の水圧)が過剰に強くなることが抑制される。
【0031】
更に本実施形態によれば、硬質体5が、ノズル室23と給水室10とを連通させ且つ給水室10からノズル室23に向かう水の水量を絞る固定絞り通路56を可変絞り通路6のほかに設けることで、給水室10の水圧差による可変絞り通路6の絞り量の幅を低減できるため、強弱洗浄の差が成立するような可変絞り通路6の形状を簡素化できる利点が得られる。
【0032】
本実施形態によれば、図3図4に示すように、硬質体5の受圧面58を給水室10に露出させるようにノズル2の固定部243からの硬質体5の脱落を抑えるキャップ7がノズル2の固定部243に設けられている。固定部243からの硬質体5の脱落がキャップ7により抑えられる。硬質体5の受圧面58は給水室10に露出されているため、硬質体5の受圧面58は給水室10の水圧を効果的に受圧できる。従って受圧面58が受圧した受圧力により、ノズル2は矢印F方向へ効率良く前進できる。
【0033】
本実施形態によれば、前述したようにキャップ7は、固定絞り通路56の閉鎖度を調整するシール部としてのシール突起73(図3図4参照)をもつ。ここで、ノズル2の前進時には、図3に示すように、シール突起73は、固定絞り通路56の入口56eの閉鎖度を相対的に高くする(閉鎖度100%を含む)。このため、ノズル2の前進途中において、給水室10の水が固定絞り通路5からノズル室10に流出することが抑制される。このため給水室10の水圧を硬質体5の受圧面58に効果的に作用させてノズル2を効率よく前進させ得る利点が得られる。これに対して、局部洗浄時には、図4に示すように、高い水圧を受圧した硬質体5が前進方向(矢印F方向)に移動するため、硬質体5と弾性体4との間に微小隙間76f,76sが形成されて微小隙間76f,76sに通水可能となる。更に、図4に示すように、シール突起73は、固定絞り通路56の入口56eの閉鎖度を相対的に低下させる。このため、給水室10の水が可変絞り通路6のほかに固定絞り通路56からもノズル室10に良好に流入する。
【0034】
加えて本実施形態によれば、給水室10は、ノズル3を前進駆動するための水路と、吹出口22に水を供給させる局部洗浄のための水路とを兼用するため、シリンダ1およびノズル2における水路構造の簡素化を図り得る。更にノズル3は給水室10の水圧で駆動する方式であるため、ノズル3を前進させるモータを廃止できる。なお、ノズル2の前進時における給水室10の水圧の如何等によって、ノズル2の前進時においても硬質体5の背面57とキャップ7の軸端面70cとの間に微小隙間が形成されていても良い。この場合においても、硬質体5の突起52は、ノズル前進時よりも局部洗浄時に可変絞り通路6の通路断面積を小さく絞るため、ノズル2の前進時よりも相対的に少ない水量で局部洗浄できる。
【0035】
(実施形態2)
図5図7は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。図5および図6に示すように、弾性体4は中央孔4cをもつリング状をなす。硬質体5は、中央域に固定絞り通路56をもつ円盤部50と、円盤部50の外周を規定する硬質リング部51と、硬質リング部51に連設されノズル2の前進方向(矢印F方向)に突出する複数の絞り突起52と、硬質リング部51に連設され径外方向(矢印D方向)に突出する複数の周突起54と、隣設する絞り突起52間に形成された第1通路55fと、隣設する周突起54間に形成された第2通路55sとをもつ。周突起54および絞り突起52は、一部重複しつつ、周方向(矢印S方向)において互い違いに形成されている。絞り突起52は硬質体5の周方向において断続的に形成されているため、可撓性な弾性体4に当たり、食い込むことができる。図5および図6に示すように、キャップ7は、リング部70と、リング部70を繋ぐ腕部71と、硬質体5の円盤部50に対面する通水孔72と、腕部71に連設された中央域に位置するシール突起73とをもつ。シール突起73は硬質体5の固定絞り通路56に対面してこれを閉鎖可能である。通水孔72は硬質体5の受圧面58に対面する。絞り突起52の前面52xは(図5参照)平坦面であるため、絞り突起52が弾性体4に過剰に食い込むことが抑制される。従って、可変絞り通路6の絞り度が過剰に高くなることが抑制される。
【0036】
(実施形態3)
図8(A)〜(C)は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。図8(A)〜(C)に示すように、硬質体5Cは、固定絞り通路56をもつ円盤部50と、円盤部50の外周を規定する硬質リング部51と、硬質リング部51に連設されノズル2の前進方向(矢印F方向)に突出する複数の主絞り突起52mと、硬質リング部51に連設され径外方向(矢印D方向)に突出する複数の周突起54と、隣設する主絞り突起52m間に形成された第1通路55fと、隣設する周突起54間に形成された第2通路55sとをもつ。主絞り突起52mの平坦な前面52xには、副絞り突起52sが前進方向(矢印F方向)に突設されている。副絞り突起52sは弾性体4との接触面積が小さいため、前記した弾性体4への食い込み性を高めことができる。しかし主絞り突起52mの前面52x(図8(C)参照)は平坦であり、弾性体4との接触面積が副絞り突起52sよりも大きいため、弾性体4に対して副絞り突起52sよりも食い込みにくい。従って可変絞り通路6の絞り度が過剰に高くなることが抑制される。
【0037】
図8(C)に示すように、硬質体5Cの周方向(矢印S方向)において周突起54の側面には面取面59aが形成されている。更に、周突起54のうち弾性体に対面するように面取面59bが形成されている。面取面59bは、第1通路55fに指向しつつ、径外方向(矢印D方向)に向かうにつれて矢印R方向(弾性体から離間する方向)に向けて後退するように傾斜されている。面取面59a,59bにより第1通路55fへの流水性が高められており、硬質体5C付近における水の滞留が抑制される。
【0038】
(実施形態4)
図9(A)〜(C)は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1,2,3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。図9(A)〜(C)に示すように、硬質体5Dは、固定絞り通路56をもつ円盤部50と、円盤部50の外周を規定する硬質リング部51と、硬質リング部51に連設されノズル2の前進方向(矢印F方向)に突出する複数の絞り突起52Dと、硬質リング部51に連設され径外方向(矢印D方向)に突出すると共に周方向(矢印S方向)に間隔を隔てて並設された複数の周突起54と、隣設する主絞り突起52間に形成された第1通路55fと、隣設する周突起54間に形成された第2通路55sとをもつ。硬質リング部51の平坦な前面には複数の絞り突起52Dが前進方向(矢印F方向)に突設されている。絞り突起52Dは周方向(矢印S方向)に間隔を隔てて並設されており、硬質体5Dは絞り突起52Dを除いて、硬質材料(例えば硬質樹脂、金属、セラミックス)で形成されている。
【0039】
絞り突起52Dは、弾性変形し易いように、硬質リング部51および円盤部50よりも可撓性をもつ材料(例えばゴム、可撓性樹脂)で形成されている。このように絞り突起52Dは弾性材料で形成されているため、高い圧縮変形性をもつ。図9(C)に示すように、周方向(矢印S方向)において周突起54の側面には面取面59aが形成されている。更に、周突起54のうち弾性体に対面するように面取面59bが形成されている。面取面59bは、径外方向(矢印D方向)に向かうにつれて矢印R方向に向けて後退するように傾斜されている。面取面59a,59bにより第1通路55fへの流水性が高められており、硬質体5D付近における水の滞留が抑制される。
【0040】
(参考形態)
図10はノズル2が前進している参考形態を示す。本参考形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。但し弾性体を廃止している。硬質体としては、弾性材料で形成された可撓性の絞り突起52Dをもつ硬質体5D(図9参照)が使用されている。絞り突起52Dは、弾性変形し易いように、硬質樹脂や金属等で形成された硬質リング部51および円盤部50よりも可撓性な弾性材料(例えばゴム、可撓性樹脂、多孔質体)で形成されており、前述したように絞り度を可変にできる可変絞り通路6を形成できる。
【0041】
このような参考形態では図10に示すように弾性体4を廃止している。給水室10に給水されると、ノズル2が矢印F方向に移動してノズルストッパに当接して停止する。この場合、局部洗浄時では、給水室10の水圧が高くなるため、これを受圧した硬質体5Eが矢印F方向に移動して可撓性の絞り突起52Dがノズル2の固定部243の当接面249(絞り突起52Dよりも硬質)に圧接される。これにより可撓性をもつ絞り突起52Dが圧潰されるように弾性変形する。この結果、局部洗浄時において、可変絞り通路6の通路断面積を狭くさせて可変絞り通路6の絞り率を高め、単位時間あたりの通水量を制限させる。これに対して、ノズル前進時では、給水室10の給水圧があまり高くならないため、硬質体5Eの受圧面58が水圧を受圧する受圧力は小さく、硬質体5Eは矢印F方向にあまり変位しない。この場合、可撓性の絞り突起52Dの圧潰度は低く、可変絞り通路6の通路断面積が確保され、可変絞り通路6の絞り率は低い。このような本参考形態においても、基本的には請求項1の本発明と共通する作用効果が得られる。この場合、次のように技術的思想の付記項1が得られる。
【0042】
(付記項1)(i)洗浄水が供給される給水室とノズルストッパとをもつシリンダと、(ii)給水室に供給された洗浄水の水圧に基づいてノズルストッパに当接するまで前進可能に設けられ、局部に洗浄水を吹き出す吹出口と吹出口および給水室を連通可能なノズル室とをもつノズルと、(iii)ノズルをシリンダの給水室において後退させる付勢力を発揮させる付勢要素とを具備しており、(iv)ノズルのうち給水室の水圧を受圧する受圧部は、当接面をもつ固定部と、固定部に保持され給水室の水圧を受圧する受圧面と可撓性な弾性材料で形成された絞り突起とをもち、受圧面の受圧に伴い当接面に向けて変位する硬質体と、当接面と硬質体との境界領域に形成され絞り度が可変であり且つ給水室の水圧増加に伴い当接面および硬質体の絞り突起が圧接して絞り度を高めて単位時間当たりの通水量を制限させる水圧応答式の可変絞り通路とを具備する局部洗浄用洗浄ノズル装置。
【0043】
この場合、給水室の水圧が高い方が、可変絞り通路の絞り率が高く、可変絞り通路の通路断面積が小さくなる。このため、局部洗浄する場合には、可変絞り通路の絞り作用により給水室の水量を絞って相対的に小さな水量で局部を洗浄することができる。更に、ノズル前進時においては、大きな水量でノズルを確実に且つ迅速に前進させて伸ばすことができる。
【0044】
(その他)
上記した実施形態1に係る図3では、ノズル2の前進時において、硬質体5の背面57がキャップ7の軸端面70cに接触している状態として図示されているが、これに限らず、硬質体5の突起52は、給水室10の水圧の如何等によっては、ノズル2の前進時においても硬質体5の背面57とキャップ7の軸端面70cとの間に微小隙間が形成されていても良い。硬質体5には固定絞り通路56が形成されているが、固定絞り通路56は形成されていなくても良い。実施形態1では、ノズル2が後退する方向(矢印R方向)において、弾性体4、硬質体5、キャップ7が順に並設されているが、これに限らず、硬質体5の脱落を抑える機能を果たすキャップ7に相当する部位をノズル2の固定部243に一体的に設ければ、キャップ7を廃止させることもできる。例えば、硬質体5の脱落を抑える機能を果たすキャップに相当する部位をノズル2の固定部243に設けることにしても良い。バネ3はコイルバネとされているが、これに限定されるものではない。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0045】
1はシリンダ、10は給水室、11はストッパ、2はノズル(ノズル)、20はノズル本体、22は吹出口、23はノズル室、24はピストン(受圧部)、243は固定部、3はバネ(付勢要素)、4は弾性体、5は硬質体、50は円盤部、52は絞り突起、55fは第1通路、55sは第2通路、56は固定絞り通路、57は背面、58は受圧面、6は可変絞り通路、7はキャップ、70はリング部、71は腕部、72は通水孔、73はシール突起(シール部)、75は簡易シール部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10