特許第5800235号(P5800235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5800235バイオマスからの成型炭化物の製造装置及び製造方法
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  • 特許5800235-バイオマスからの成型炭化物の製造装置及び製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800235
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】バイオマスからの成型炭化物の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20151008BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20151008BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20151008BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20151008BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   C10L5/44ZAB
   C10B53/00 A
   C10B53/02
   B09B3/00 302Z
   C02F11/10 Z
   B09B3/00 301Z
   B09B3/00 303M
   B09B3/00 303Z
   B09B3/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-74049(P2012-74049)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203872(P2013-203872A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 聡
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−242035(JP,A)
【文献】 特開2010−77399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
C10B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを熱分解して炭化物たる固体分と気体分と気体状の液体分とを生成する熱分解装置と、固体分を粉砕する粉砕装置と、気体分と気体状の液体分を冷却して気体分と、木酢液及びタール含有の液体分に分離する気液分離装置と、粉砕された固体分に液体分の少なくとも木酢液を添加して混練することで混練物を形成する混練装置と、混練物を成型して成型物を形成する成型装置と、成型物を焼成して成型炭化物製品を得る焼成装置とを有する成型炭化物製造装置において、
気液分離装置からの液体分を受けて該液体分をタールと木酢液に比重分離する比重分離装置と、タールを燃焼する燃焼装置とを有し、上記比重分離装置が木酢液を混練装置に供給するように該混練装置に接続され、上記燃焼装置がタールの燃焼により得られる熱を焼成のために焼成装置に供給するように該焼成装置に接続されていることを特徴とするバイオマスからの成型炭化物の製造装置。
【請求項2】
比重分離装置と混練装置の間に、比重分離装置からの木酢液を加熱して濃縮木酢液を生成する濃縮装置を有し、濃縮木酢液が混練装置に供給されるようになっていることとする請求項1に記載のバイオマスからの成型炭化物の製造装置。
【請求項3】
濃縮装置は燃焼装置に接続されていて、燃焼装置で得られる熱の一部を熱源として受けるようになっていることとする請求項2に記載のバイオマスからの成型炭化物の製造装置。
【請求項4】
バイオマスを熱分解して炭化物たる固体分と気体分と気体状の液体分とを生成し、固体分を粉砕し、気体分と気体状の液体分を冷却して気体分と、木酢液及びタール含有の液体分に気液分離し、粉砕された固体分に液体分の少なくとも木酢液を添加して混練することで混練物を形成し、混練物を成型して成型物を形成し、成型物を焼成して成型炭化物製品を得ることとする成型炭化物製造方法において、
気液混合体の気液分離により生成された液体分をタールと木酢液に比重分離し、タールを燃焼し、タールの燃焼により得られる熱で焼成を行うことを特徴とするバイオマスからの成型炭化物の製造方法。
【請求項5】
液体分の比重分離により生成された木酢液を加熱して濃縮木酢液を生成し、濃縮木酢液を固体分に添加して混練することとする請求項4に記載のバイオマスからの成型炭化物の製造方法。
【請求項6】
タールの燃焼で得られる熱の一部を木酢液の加熱のための熱源として用いることとする請求項5に記載のバイオマスからの成型炭化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを炭化した炭化物から成型炭化物を得る成型炭化物の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止対策として、バイオマスエネルギーの有効利用に注目が集まっている。化石資源ではない、再生可能な、生物由来の有機性資源をバイオマスと呼ぶ。バイオマスは太陽エネルギーを使い、水と二酸化炭素から生物が生成するものなので、持続的に再生可能な資源である。バイオマスは有機物であるため、燃焼させると二酸化炭素が排出される。しかし、これに含まれる炭素は、そのバイオマスが成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素に由来するので、バイオマスを使用しても、この成長過程をも含めて全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないと考えてよいとされる。この性質をカーボンニュートラルと呼ぶ。
【0003】
特に、バイオマスの中でも植物由来のバイオマスは、植物の成長過程で光合成により二酸化炭素から変換された炭素資源を有効利用できるため、資源のライフサイクルの観点からすると大気中の二酸化炭素の増加につながらない。植物由来のバイオマスは林業系(木屑、製材廃棄物、間伐材、製紙廃棄物等)、農業系(稲わら、麦わら、サトウキビ糠、米糠、草木、アブラヤシ採油残渣等)、廃棄物系(生ごみ、庭木、建築廃材、下水汚泥等)等に分類される。
【0004】
近年、バイオマスを熱分解してガス燃料や炭化物を製造することが開発検討されている。バイオマスから製造された炭化物を燃料や製鉄用コークスの代替品として用いることにより、二酸化炭素排出量を削減する効果が期待されている。
【0005】
バイオマスから製造された炭化物を利用する場合、所望の形状に成型した成型炭化物に加工して利用されることが多い。バイオマスを熱分解して生成した炭化物を粉砕した粉状炭化物に粘結材を混合し成型し乾燥または焼成して成型炭化物を製造する。この粘結材として澱粉等が使用されるが、より低価格でバイオマスから成型炭化物を製造することが要望され、特許文献1には、セルロースを含む有機物を炭化する際に副生する木酢液を含む液体生成物を粘結材として用いる技術が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載の成型炭化物の製造方法は、次の1)〜4)のプロセスを経ることとしている。
【0007】
1)セルロースを含む有機物を炭化物製造装置にて炭化し、生成した炭化物は混合装置に、気体状の液体(木酢液類)と気体は木酢液類製造装置に送られる。
【0008】
2)気体状の木酢液類と気体は木酢液製造装置で冷却されて液体成分が凝縮されることで気液分離され、液体成分としての木酢液類が混合装置に送られる。なお、液体成分は木酢液(水溶液)とタール(油状成分)である。
【0009】
3)炭化物は液体成分としての木酢液類と混合装置で混合され、得られる混合物が続いて成型装置で成型され、成型物が焼成装置に送られる。
【0010】
4)焼成装置では、不活性雰囲気下で50〜200℃の温度域で30分以上かけて成型物を焼成させる。これによって、木酢液類中の酢酸、アルコール類、フェノール類、タール分等が反応し、強固な粘結性を発現し、十分な強度をもつ成型炭を製品として得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−97436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1では、焼成装置における成型物の焼成のための熱源は外部から、例えば、別途設けられた燃料燃焼装置から得なければならない。したがって、別途、燃料そして燃焼装置を要する分だけ、コストが嵩むという問題がある。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑み、燃料や燃焼装置を別途必要とせずに成型物を焼成可能な、バイオマスからの炭化成型物の製造装置そして製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、上述の課題は、バイオマスからの炭化成型物の製造装置そして製造方法に関し、次のような構成により解決される。
【0015】
<製造装置>
本発明に係るバイオマスからの成型炭化物の製造装置は、バイオマスを熱分解して炭化物たる固体分と気体分と気体状の液体分とを生成する熱分解装置と、固体分を粉砕する粉砕装置と、気体分と気体状の液体分を冷却して気体分と、木酢液及びタール含有の液体分に分離する気液分離装置と、粉砕された固体分に液体分の少なくとも木酢液を添加して混練することで混練物を形成する混練装置と、混練物を成型して成型物を形成する成型装置と、成型物を焼成して成型炭化物製品を得る焼成装置とを有している。
【0016】
かかる成型炭化物製造装置において、本発明では、気液分離装置からの液体分を受けて該液体分をタールと木酢液に比重分離する比重分離装置と、タールを燃焼する燃焼装置とを有し、上記比重分離装置が木酢液を混練装置に供給するように該混練装置に接続され、上記燃焼装置がタールの燃焼により得られる熱を焼成のために焼成装置に供給するように該焼成装置に接続されていることを特徴としている。
【0017】
本発明において、比重分離装置と混練装置の間に、比重分離装置からの木酢液を加熱して濃縮木酢液を生成する濃縮装置を有し、濃縮木酢液が混練装置に供給されるようになっていることとするのが好ましい。
【0018】
本発明において、濃縮装置は燃焼装置に接続されていて、燃焼装置で得られる熱の一部を熱源として受けるようになっていることが好ましい。
【0019】
<製造方法>
本発明に係るバイオマスからの成型炭化物の製造方法は、バイオマスを熱分解して炭化物たる固体分と気体分と気体状の液体分とを生成し、固体分を粉砕し、気体分と気体状の液体分を冷却して気体分と、木酢液及びタール含有の液体分に気液分離し、粉砕された固体分に液体分の少なくとも木酢液を添加して混練することで混練物を形成し、混練物を成型して成型物を形成し、成型物を焼成して成型炭化物製品を得ることとしている。
【0020】
かかる成型炭化物製造方法において、本発明では、気体分と気体状の液体分の気液分離により生成された液体分をタールと木酢液に比重分離し、タールを燃焼し、タールの燃焼により得られる熱で焼成を行うことを特徴としている。
【0021】
本発明において、液体分の比重分離により生成された木酢液を加熱して濃縮木酢液を生成し、濃縮木酢液を固体分に添加して混練することが好ましい。
【0022】
また、本発明において、タールの燃焼で得られる熱の一部を木酢液の加熱のための熱源として用いることが好ましい。
【0023】
このような本発明の製造装置そして製造方法によれば、バイオマスからの炭化物の成型物を焼成するのに要する熱源を、バイオマスの熱分解より得られるタールを燃焼することで賄うことができるので、外部からの燃料等を不要とする。
【0024】
また、本発明は、混練物の混練に濃縮木酢液を用いることとすれば、それだけ濃密な混練物を得ることができ、焼成での必要熱量そして焼成時間が低減される。さらに、成型炭化物の強度を高めることができる。
【0025】
また、本発明で、木酢液の濃縮にタールの燃焼で得られる熱の一部を用いることとするならば、木酢液の濃縮においても外部からの燃料等を必要としなくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、バイオマスからの炭化物の成型物を焼成するのに要する熱源を、バイオマスの熱分解により得られるタールの燃焼による熱で賄うことができるので、焼成のために外部からの燃料を用いることがなくなり、それだけ製造コストが低減され、また装置も簡単小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面の図1にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
【0029】
図1において、符号1は、バイオマスの投入を受けこのバイオマスを無酸素又は低酸素雰囲気中で加熱することにより該バイオマスを熱分解(炭化)させ、熱分解により炭化物たる固体分と、気体と気体状の液体分(木酢液+タール)とを生成させる熱分解装置である。
【0030】
熱分解装置自体は、黒炭窯、白炭窯、平窯および充填移動層式炭化炉等の各種炭化装置が知られているが、本実施形態では、いずれの種の炭化装置であってもよく、さらには、レトルト炉、スクリュー炉、ロータリー炉および流動炉等の各種乾留装置であってもよい。
【0031】
上記熱分解装置1で、バイオマスから炭化物を製造する際に副生する液体分に含まれる木酢液類は、酢酸類、アルコール類、フェノール類等の各種成分が挙げられる。この木酢液類は後述の成型装置及び焼成装置で炭化物を成型及び焼成する際の粘結剤として利用される。
【0032】
上記熱分解装置1には、該熱分解装置1で生成された固体分を受けてこれを粉砕する粉砕装置2と、熱分解装置1で生成された気体と気体状の液体分を受けて気液分離して気体分と、木酢液及びタールを含有する液体分を生成する気液分離装置3とがそれぞれ接続されている。該気液分離装置3には、該気液分離装置3から液体分を受けてこれを比重分離してタールと木酢液を生成する比重分離装置4が接続されている。該比重分離装置4には、好ましい形態として、木酢液を受けてこれを加熱することで濃縮する濃縮装置5が接続されている。
【0033】
上記粉砕装置2と濃縮装置5は、混練装置6に接続されていて、粉砕後の固体分と濃縮木酢液をそれぞれ該混練装置6に供給し、これらをここで混練するようになっている。
【0034】
この混練装置6には、成型装置7、焼成装置8が順次接続されている。一方、上記比重分離装置4には、該比重分離装置4からタールを受けてこれを燃焼する燃焼装置9が接続されており、該燃焼装置9は、タールの燃焼により発生する熱を焼成装置8に、そしてその熱の一部を濃縮装置5へ供給するように、焼成装置8そして濃縮装置5にそれぞれ接続されている。
【0035】
このような本実施形態装置を構成する諸装置についてさらに説明する。
【0036】
<粉砕装置>
成型装置における成型加工性や充填密度および成型物の均一性等を考慮すると、粉砕後の固体分が混練装置に供給される前に、粉砕装置の破砕機、分級篩等(不図示)による粉砕、微粒化、分級操作等によって固体分の粒度を調整することが望ましい。調整に際して好ましい平均拉子径としては0.5〜1000μm程度であり、さらに好ましくは1〜500μm程度である。平均粒子径が0.5μmより小さい場合、取り扱いが困難となるばかりでなく、粉塵爆発等の危険性も増大し、1000μmよりも大きい場合、成型性に問題を引き起こしやすくなる。
【0037】
<混練装置>
混練装置としては、攪拌装置、ボールミル、ニーダー、エクストルーダ一等の従来公知の装置による混練方法を、混合物の性状に合わせて選択することが可能である。さらに、製造する成型炭化物の物性をより向上させる目的で、この混練装置において、各種バインダー成分、溶剤類、増粘剤といった成分や、シリカ、アルミナ、酸化チタン及びゼオライト等の無機成分を添加することとしてもよい。
【0038】
<成型装置>
成型装置としては、鋳込成型機、押出成型機、射出成型機及び成型プレス等既知の装置を単独ないしは複数組み合わせたものが使用される。目的とする成型炭化物の形状や物性あるいは生産性に合わせて各種成型装置、すなわち各種成型方法を選択することが可能である。
【0039】
本実施形態では、成型装置における成型は常温で行う。
【0040】
<焼成装置>
炭化物と木酢液類を混練し成型した成型物を焼成装置で焼成することにより、強度に優れた成型炭化物を得ることが可能である。この焼成装置における焼成プロセスは、50〜200℃程度で進行する反応プロセスである。50〜200℃の温度域で焼成させることによって木酢液類中の各種化合物の反応を促進させ、より強固な粘結性を発現させることができる。焼成装置における焼成プロセスは酸化燃焼を防止するため、無酸素又は低酸素雰囲気下で実施される。
【0041】
<燃焼装置>
燃焼装置は、バーナ燃焼器等でタールを燃焼して、高温の燃焼ガス(燃焼熱)を焼成装置と濃縮装置の熱源として供給する。熱供給する際に、燃焼ガスを焼成装置と濃縮装置に供給し熱源として用いてもよいし、燃焼ガスと熱媒体とを熱交換し熱媒体を焼成装置と濃縮装置に供給するようにしてもよい。
【0042】
<濃縮装置>
濃縮装置は、無酸素又は低酸素雰囲気で木酢液類を100℃以上に加熱し、水を蒸発させ濃縮する。蒸発させた水は凝縮させ排水する。
【0043】
このように構成される本実施形態によると、次の手順でバイオマスから成型炭化物を得る。
【0044】
先ず、バイオマスが熱分解装置1で熱分解され、炭化物たる固形分と気体と気体状の液体分とが生成される。固体分は粉砕装置2で粉砕された後、混練装置6へもたらされる。一方、気体と気体状の液体分は、気液分離装置3にもたらされ、例えば冷却されることで気体状の液体分を凝縮させ、気体分(ガス)と液体分に分離されてそれぞれ抽出される。該液体分は木酢液とタールとを含んでいる。
【0045】
この液体分は比重分離装置4にもたらされ、比重差のもとに、木酢液とタールに分離される。木酢液は濃縮装置5へ、そしてタールは燃焼装置9へそれぞれもたらされる。木酢液は濃縮装置5で加熱されて水分の蒸発等によって濃縮される。
【0046】
上記粉砕装置2で粉砕された固体分と濃縮装置5で濃縮された木酢液は混練装置6にもたらされ、ここで混練され混練物となる。混練物は成型装置7にもたらされて所定の形状に成型され、成型物は焼成装置8にもたされる。
【0047】
上記焼成装置8は燃焼装置9からタールの燃焼による燃焼熱を受けており、この熱により上記成型物を焼成する。燃焼装置9で発生される燃焼熱は、焼成装置8に供給される一方で、その一部が濃縮装置5にも供給され、木酢液を加熱して水分を蒸発させて濃縮するのに供する。かくして、成型物が焼成装置8で焼成され、製品としての成型炭化物を得る。
【0048】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。本実施形態では、各工程を以下の(A)〜(E)のごとく行い、成型炭化物(ペレット)の強度測定を(F)のごとく行った。また、本実施例での熱収支についても確認を行った。
【0049】
<成型炭化物の製造>
(A)バイオマスの炭化
熱分解装置(炭化炉)にてバイオマスを酸素の遮断雰囲気中で、4.1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温し、炭化した。炭化物が34.1質量%、気液分離後の液体分が42.2質量%だけ得られた。
【0050】
(B)液体分からの木酢液の分離
熱分解装置で得られた液体分を冷暗所にて一週間静置して、液体分である木酢液とタールを比重分離したところ、木酢液が70質量%、タールが30質量%だけ得られた。
【0051】
(C)木酢液の濃縮
木酢液を濃縮装置にて窒素雰囲気下、100℃以上で加熱して濃縮した。加熱時間を調整することで、表1に示す試料1、2のような濃縮木酢液を得た。残存率は濃縮率に相当する。
【0052】
【表1】
【0053】
(D)成型
乾燥した炭化物1gに対してバインダ(粘結材)として用いる試料1、2の濃縮した木酢液を0.2gの比率で25〜26℃大気中で混練装置により混練し、同じく25〜26℃大気中、280MPaにて直径20mmの成型装置(ダイス)にて成型し、直径20mm、高さ3.5〜3.7mmの円柱型の成型物(ペレット)を成型した。
【0054】
(E)焼成
成型物を昇温した焼成装置(マッフル炉)中で焼成した。温度条件は、150〜160℃、190〜200℃の2条件、焼成時間は5分とした。
【0055】
(F)強度測定
焼成した成型炭化物(ペレット)を木炭硬度計で硬度を測定し表2に示す結果を得た。
【0056】
【表2】
【0057】
上記の工程により、所望の硬度を有する成型炭化物を製造することができた。特に、
残存率が23.1質量%になるまで濃縮した木酢液を炭化物に混練して成型し、190〜200℃で焼成することにより、高い強度をもつ十分な品質の成型炭化物を製造することができることを確認した。
【0058】
<熱収支>
次に、本実施例における木酢液の濃縮と成型物の焼成に要する必要熱量と、生成されるタールを燃焼して得られる燃焼熱量について、熱収支を確認した。
【0059】
(i)必要熱量
・濃縮工程に要する熱量
25℃から100℃までの水の顕熱は314kJ/kg、そして100℃での水の蒸発潜熱は2.26MJ/kgである。
【0060】
一方、木酢液はその大半が水であるが、木酢液1kgを、例えば、表1の試料2のような残存率(濃縮率)が23.1質量%となるまで加熱するのに要する熱量は、1.74MJ/kg(木酢液)である。
【0061】
バイオマスから得られる液体分は42.2質量%(上記(A)参照)で、そのうち70%が木酢液であった(上記(B)参照)ので、バイオマス1kgから得られる木酢液は0.295kgとなる。したがって、木酢液の大半が水であるとして、バイオマス1kgから得られる木酢液を23.1質量%まで濃縮するのに要する熱量は、514kJとなる。
【0062】
・焼成工程に要する熱量
25℃から100℃までの水の顕熱は314kJ/kg、そして100℃での水の蒸発潜熱は2.26MJ/kgである。
【0063】
蒸発した水蒸気を200℃まで昇温するのに要する熱量は193kJ/kgである。炭化物の比熱容量を0.84kJ/kg・Kとすると、焼成温度が200℃(上記(E)参照)の場合、炭化物を200℃まで昇温するのに要する熱量は147kJ/kgである。
【0064】
1kgの炭化物と0.2kgの濃縮木酢液を混練し、そして成型し(上記(D)参照)、200℃で焼成する過程に要する熱量は700kJとなる。
【0065】
バイオマス1kgから生成する炭化物は0.341kgである(上記(A)参照)ので、バイオマス1kgから生成する炭化物の焼成に要する熱量は239(=700×0.341)kJとなる。
【0066】
以上から、バイオマス1kgから得られた木酢液を濃縮する工程と、成型した炭化物を焼成する工程で要する熱量は、753(=514+239)kJとなる。
【0067】
(ii)燃焼熱量
バイオマスの炭化により得られたタールの元素分析の結果の一例を次の表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
タールの含水率を30質量%として、表3の元素比率分析値からタールの燃焼熱(低位発熱量)を計算すると、タールの燃焼熱は14.6MJ/kgとなる。バイオマス1kgから得られたタールは0.127kgであり、このタールを燃焼して得られる燃焼熱量は1.85MJとなる。
【0070】
(iii)熱収支
バイオマス1kgから生成する炭化物が0.341kgであり、炭化物0.341kgの成型に必要な量の木酢液の濃縮及び成型物の焼成に要する熱量は753kJである。バイオマス1kgから生成するタールが0.127kgであり、タール0.127kgの燃焼熱が1.85MJであるので、タール燃焼で生成する熱量で十分に木酢液の濃縮及び成型物の焼成に要する熱量をまかなうことができる。さらに、バイオマス1kgあたり、1.10MJの燃焼熱が余分にあることになる。
【0071】
このように、木酢液とタールを分離し、木酢液を粉状炭化物に混合して炭化物を成型し、タールを燃焼させて得る燃焼熱を木酢液濃縮と成型炭化物焼成の熱源とすることができる。
【0072】
さらに、余剰のタール燃焼熱を、他のプロセスに使用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1 熱分解装置
2 粉砕装置
3 気液分離装置
4 比重分離装置
5 濃縮装置
6 混練装置
7 成型装置
8 焼成装置
9 燃焼装置
図1