(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記燃料電池コントローラは、さらに、上記燃料電池モジュールから、上記取出可能電流値を越えない範囲内で実際に取り出される実取出電流を検出する取出電流検出手段を備え、この取出電流検出手段によって検出された実取出電流の値と上記取出可能電流値の差に基づいて、上記取出可能電流値を低下させ、無駄な燃料供給を抑制する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
上記燃料電池コントローラは、上記取出可能電流値を低下させた場合には、この取出可能電流値の低下よりも遅れて燃料供給量が減少されるように、上記燃料供給手段を制御する請求項2記載の固体電解質型燃料電池。
上記燃料電池コントローラは、上記取出可能電流値を上昇させる場合には、所定の第1電流上昇変化率で上記取出可能電流値を上昇させる一方、所定の条件に応じて、上記取出可能電流値を上記取出電流検出手段によって検出された実取出電流の値まで急激に低下させるように構成され、上記取出可能電流値を急激に低下させた直後に需要電力が上昇した場合には、上記燃料電池コントローラは、上記第1電流上昇変化率よりも大きな第2電流上昇変化率で上記取出可能電流値を上昇させる請求項3記載の固体電解質型燃料電池。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この
図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0025】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(
図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(
図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0026】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、改質器20の熱を受けて空気を加熱し、改質器20の温度低下を抑制するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0027】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0028】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0029】
次に、
図2及び
図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。
図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、
図3は、
図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び
図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0030】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、これらの蒸発部20aと改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0031】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0032】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0033】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、
図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0034】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0035】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、
図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス室通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、
図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0036】
次に
図4により燃料電池セルユニット16について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0037】
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0038】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0039】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0040】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0041】
次に
図5により燃料電池セルスタック14について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0042】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0043】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(
図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0044】
次に
図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0045】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0046】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0047】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0048】
発電室温度センサ142は、
図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0049】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
【0050】
次に
図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。
図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0051】
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0052】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0053】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0054】
C
mH
n+xO
2 → aCO
2+bCO+cH
2 (1)
【0055】
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0056】
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
【0057】
C
mH
n+xO
2+yH
2O → aCO
2+bCO+cH
2 (2)
C
mH
n+xH
2O → aCO
2+bCO+cH
2 (3)
【0058】
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0059】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
【0060】
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
【0061】
次に、
図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。
図8は、本実施形態により固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
【0062】
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、改質器20の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
【0063】
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
【0064】
次に、
図6を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池1の制御を説明する。
まず、
図6に示すように、本実施形態の固体電解質型燃料電池1は、燃料電池コントローラである制御部110と、インバータコントローラであるインバータ制御部111と、を備えている。
【0065】
制御部110は、第1需要電力検出手段110aを備えており、需要電力検出器206(
図15)から入力される需要電力モニター信号Msに基づいて需要電力を検出している。住宅200(
図15)等の施設で消費されている総需要電力は、商用電源から供給される系統電力及び固体電解質型燃料電池1から供給される電力によって賄われている。需要電力検出器206としてカレントトランスを用いる場合は、需要電力モニター信号Msとしては系統電流(購入電流)がモニタ信号として得られるので、インバータ54から得られる出力端の交流電圧および発電連系出力電力より、系統電力・発電連系電力とあわせて需用電力が得られる。また、それらの情報をインバータ54から間接的に得ることで第1需要電力検出手段110aとすることも出来る。本実施形態においては、制御部110には、総需要電力のうちの系統電力が需要電力モニター信号Msとして入力されているが、制御部により、総需要電力を需要電力モニター信号として使用することもできる。
【0066】
また、制御部110は、需要電力モニター信号Ms等に基づいて、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44等を制御するように構成されている。また、制御部110は、各種センサからの入力信号、及び需要電力モニター信号Msに基づいて、取出可能電流値Iinvを設定し、この値をインバータ制御部111に出力するように構成されている。具体的には、制御部110は、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム等により構成される。
【0067】
インバータ制御部111は、第2需要電力検出手段111aを備えており、需要電力検出器206(
図15)から入力される需要電力モニター信号Msに基づいて需要電力を検出している。需要電力検出器206としてカレントトランスを用いる場合は、需要電力モニター信号Msとしては系統電流(購入電流)がモニタ信号として得られるので、インバータ54で得られる出力端に備えられた電圧検知手段による出力端の交流電圧および出力部での出力電力検知手段による発電連系出力電力より、系統電力・発電連系電力とあわせて需用電力が得られる。また、それらの情報を制御部110へ伝えることも出来る。インバータ制御部111は、需要電力モニター信号Ms、及び制御部110から入力された取出可能電流値Iinvに基づいて、インバータ54を制御し、取出可能電流値Iinvを超えない範囲で燃料電池モジュール2から実取出電流Icを取り出すように構成されている。具体的には、インバータ制御部111は、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム等により構成される。
【0068】
制御部110は、燃料電池モジュール2の状態に応じて、そのとき燃料電池モジュール2から取り出すことのできる最大の電流である取出可能電流値Iinvを逐次設定する取出可能電流値設定手段を備えている。インバータ制御部111は、制御部110とは独立してインバータ54を制御し、制御部110から入力された取出可能電流値Iinvを超えない範囲で燃料電池モジュール2から実取出電流Icを取り出し、住宅200(
図15)等の施設に供給する。なお、本実施形態においては、制御部110の制御周期は500[msec]であり、インバータ制御部111の制御周期は1[msec]以下である。このように、制御部110は応答の遅い燃料電池モジュール2を制御するために必要にして十分な制御周期で作動され、インバータ制御部111は急速に変動する需要電力に対応して、インバータ54から電力を取り出すことができるように、短い制御周期で作動される。また、制御部110及びインバータ制御部111の制御は同期されておらず、インバータ制御部111は、制御部110から入力された取出可能電流値Iinv、及び需要電力モニター信号Msに基づいて、制御部110とは独立してインバータ54を制御している。
【0069】
次に、
図9乃至14を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池1の作用を説明する。
図9は、制御部110により取出可能電流値Iinvを設定するための制御テーブルである。
図10及び
図11は、
図9に示す制御テーブルを適用して取出可能電流値Iinvを決定するフローチャートである。
【0070】
図9に示すように、制御部110は、発電室温度Tfc、燃料電池モジュール2から出力される発電電圧Vdc、商用電源から住宅等の施設へ供給されている電力である系統電力Wl、インバータ54から出力される電力である連系電力Winv、取出可能電流値Iinvの現在値、及び燃料供給電流値Ifに基づいて、取出可能電流値Iinvの増加、低下、又は維持を決定する。
発電室温度Tfcは、燃料電池セルユニット16を収容した発電室10内の温度であり、温度検出手段である発電室温度センサ142によって検出され、制御部110に入力される。なお、本明細書においては、発電室温度Tfc等、燃料電池モジュール2の発電能力の指標となる温度を「燃料電池モジュールの温度」ということにする。
【0071】
発電電圧Vdcは、燃料電池モジュール2から出力される出力電圧である。
系統電力Wlは、住宅等の施設に対して商用電源から供給されている電力であり、施設の総需要電力から燃料電池によって供給されている電力を差し引いた電力がこれに相当し、需要電力モニター信号Msに基づいて検出される。
連系電力Winvは、インバータ54から出力される電力である。燃料電池モジュール2からインバータ54に実際に取り出される電力は電力状態検出センサ126によって検出され、この電力から変換された電力がインバータ54から出力される。燃料電池モジュール2から実際に出力される実取出電流Ic[A]は電力状態検出センサ126によって検出された電力に基づいて求められる。従って、電力状態検出センサ126は、取出電流検出手段として機能する。
【0072】
燃料供給電流値Ifは、燃料供給量を求めるための基にする電流値であって、燃料電池モジュール2に供給されている燃料供給量(L/min)によって発電することが可能な電流値に相当する。そのため、燃料供給電流値Ifは、常に必ず取出可能電流値Iinvを下回ることのない様に設定する。
制御部110は、燃料電池モジュール2の現在の状態が、
図9の番号1〜9の何れに該当するかを判定し、
図9の右端欄に示されている取出可能電流値Iinvの変更又は維持を実行する。
【0073】
例えば、
図9の番号1欄に記載されている条件の全てが同時に満足された場合には、番号1欄の右端にあるように、制御部110は、取出可能電流値Iinvを5[mA]低下させるように変更する。上記のように、本実施形態においては、制御部110の制御周期は500[msec]であるので、番号1欄の条件が満たされる状態が連続した場合には、取出可能電流値Iinvは500[msec]毎に5[mA]ずつ低下する。この場合、取出可能電流値Iinvは、10[mA/sec]の電流減少変化率で減少されることになる。
【0074】
同様に、
図9の番号8欄に記載されている条件の全てが同時に満足された場合には、番号8欄の右端にあるように、制御部110は、取出可能電流値Iinvを10[mA]増加させるように変更する。従って、番号8欄の条件が満たされる状態が連続した場合には、取出可能電流値Iinvは、第1電流上昇変化率である20[mA/sec]の変化率で上昇されることになる。
【0075】
また、
図9の番号1〜8欄に記載されている条件が何れも満足されない場合には、番号9欄の条件に該当し、取出可能電流値Iinvの値は変更されずに維持される。
【0076】
次に、
図10及び
図11を参照して、
図9の制御テーブルの条件の判断手順を説明する。なお、
図10及び
図11における符号A〜Dは、処理の移行先を示している。例えば、フローの処理は、
図10の符号「C」から
図11の符号「C」へ移行する。
【0077】
また、以下に説明するように、制御部110は、需要電力が上昇している場合等、取出可能電流値Iinvを増加させるべき状況にあっても、所定の複数の増加規制条件に該当しない場合にのみ、取出可能電流値Iinvを増加させるように構成されている。さらに、増加規制条件は、複数の電流低下条件及び電流維持条件を含んでおり、これらの条件に該当すると、取出可能電流値Iinvは、低下され、又は維持される。また、複数の電流低下条件(
図10のステップS5、S7、S9、S11、S13)は、複数の電流維持条件(
図11のステップS15、S16、S17、S18、S19)よりも先に、優先的に適用される。
【0078】
まず、
図10のステップS1は、取出可能電流値Iinvと実取出電流値Icとの間で非常に大きな偏差が生まれたかどうかを判断するステップであって、両者の間に1000[mA]よりも大きいような偏差が生まれたか否かが判断される。取出可能電流値Iinvと実取出電流値Icとの差が短い制御周期の中で1000[mA]よりも大きいような偏差が初めて生まれるような場合というのは、インバータ54が、総需要電力の急激な低下、もしくは何らかの理由によって実取出電力Icを急激に低下させたことによって偏差が生じた状況であるとしてステップS2に進む。
【0079】
ステップS2においては、系統電力Wlが50[W]よりも少ないか否かが判断される。系統電力Wlが50[W]よりも少ない場合というのは、系統電力Wlがこれ以上減少すると、インバータ54からの出力電力が、商用電源に流れ込む「逆潮流(系統電力W1がマイナスになる状態)」が発生する可能性が高くなる状態である。よってS2の判定とS1の判定によって総重要電力のとても大きな落ち込みによって逆潮流が生じることを防止するために、インバータ54が実取出電流値Icを急激に下げた状態であると判断できる。なお、S2で系統電力W1の値を50Wに設定しているのは逆潮流が万が一にも発生することがないように50W分のマージンを設けているものである。
【0080】
次にS1、S2の双方でYESと判断された場合、即ち、とても大きな総重要電力の落ち込みに伴うインバータ54による逆潮流防止制御が行われた場合は、ステップS3において、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を実取出電流Icの値まで急激に低下させる(
図9の番号6に対応)。ステップS3の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。インバータ54は取出可能電流値Iinvの値を超えない範囲で実取出電流値Icを取り出すので、取出可能電流値Iinvを低下させて取出可能電流値linv=実取出電流値Icとすることにより、インバータ54は現在の取出電流値Icより取出電流を勝手に増やすような対応が規制される。これは、総需要電力の急激な低下があったような場合は、その後すぐに総需要電力が急激に回復する(増える)ような状況が起こる可能性が高いが、1000[mA]を超えるような大きな偏差量がある中で、インバータ54が回復した総需要電力に応えるべく電力取出を急激に行なってしまうと、制御オーバーシュート等によって需要電力や取出可能電流値linvを誤って超えるような電力取出をインバータ54が行ってしまうことを未然に防止できるようにした工夫である。言い換えると1000[mA]以下のような小さな偏差では取出可能電流値linvを実取出電流値Icにするような制御を行っていないため、インバータ54は実取出電流値Icより高い所にある取出可能電流値linvまでの間で自由に電力取出を迅速に行えるように許容したものである。これはこのような小さな偏差であればオーバーシュートによる過剰な電力取出等の問題を生じないため、総重要電力の回復に速やかに追従できるように配慮した更なる工夫である。
【0081】
一方、ステップS1とS2の判定でとても大きな総重要電力低下に伴う逆潮流が起こるような状況ではないと判断された場合には、ステップS4に進む。ステップS4においては、取出可能電流値Iinvが1[A]よりも大きいか否かが判断される。取出可能電流値Iinvが1[A]よりも大きい場合には、ステップS5に進み、発電電圧Vdcが95[V]よりも低いか否かが判断される。発電電圧Vdcが95[V]よりも低い場合には、ステップS6に進む。
【0082】
ステップS6においては、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を10[mA]低下させる(
図9の番号4に対応)。ステップS6の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
図10のフローチャートが実行されるごとにステップS6の処理が連続して実行された場合には、取出可能電流値Iinvは、20[mA/sec]の電流減少変化率で減少されることになる。発電電圧Vdcが95[V]よりも低い場合には、燃料電池モジュール2からインバータ54に電力が取り出される際に燃料電池モジュールの劣化等により、電圧降下が生じていると考えられるため、取出可能電流値Iinvを低下させることにより、インバータ54に取り出される電流を抑制して、燃料電池モジュール2にかかる負担を軽減する。
【0083】
一方、ステップS5において、発電電圧Vdcが95[V]以上の場合には、ステップS7に進む。ステップS7においては、連系電力Winvが710[W]を超えているか否かが判断される。連系電力Winvが710[W]を超えている場合にはステップS8に進み、ステップS8においては、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を5[mA]低下させる(
図9の番号5に対応)。即ち、連系電力Winvが710[W]を超えている場合には、燃料電池モジュール2からの出力電力が定格電力を超えているので、燃料電池モジュール2から取り出す電流を低下させて定格電力を超えないようにする。ステップS8の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
図10のフローチャートが実行されるごとにステップS8の処理が連続して実行された場合には、取出可能電流値Iinvは、10[mA/sec]の電流減少変化率で減少されることになる。
このように、制御部110は、複数の電流低下条件のうち該当した電流低下条件により、取出可能電流値Iinvを減少させる変化率が異なるように、取出可能電流値Iinvを変化させる。
【0084】
一方、ステップS7において、連系電力Winvが710[W]以下の場合には、ステップS9に進む。ステップS9においては、発電室温度Tfcが850[℃]を超えているか否かが判断される。発電室温度Tfcが850[℃]を超えている場合にはステップS10に進み、ステップS10においては、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を5[mA]低下させる(
図9の番号2に対応)。即ち、発電室温度Tfcが850[℃]を超えている場合には、燃料電池モジュール2の適正な作動温度を超えているため、取出可能電流値Iinvの値を低下させて、温度の低下を待つ。ステップS10の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
図10のフローチャートが実行されるごとにステップS10の処理が連続して実行された場合には、取出可能電流値Iinvは、10[mA/sec]の電流減少変化率で減少されることになる。
【0085】
一方、ステップS9において、発電室温度Tfcが850[℃]以下の場合には、ステップS11に進む。ステップS11においては、発電室温度Tfcが550[℃]よりも低いか否かが判断される。発電室温度Tfcが550[℃]よりも低い場合にはステップS12に進み、ステップS12においては、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を5[mA]低下させる(
図9の番号3に対応)。即ち、発電室温度Tfcが550[℃]よりも低い場合には、燃料電池モジュール2が適正な発電を行うことができる温度を下回っているため、取出可能電流値Iinvの値を低下させる。これにより、発電に消費される燃料を減少させ、燃料を燃料電池セルユニット16の加熱に振り向け、温度を上昇させる。ステップS12の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
図10のフローチャートが実行されるごとにステップS12の処理が連続して実行された場合には、取出可能電流値Iinvは、10[mA/sec]の電流減少変化率で減少されることになる。
【0086】
一方、ステップS11において、発電室温度Tfcが550[℃]以上の場合には、ステップS13に進む。ステップS13においては、取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差が400[mA]を超え、且つ取出可能電流値Iinvが1[A]を超えているか否かが判断される。取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差が400[mA]を超え、且つ取出可能電流値Iinvが1[A]を超えている場合には、ステップS14に進み、ステップS14においては、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を5[mA]低下させる(
図9の番号1に対応)。即ち、取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差が400[mA]を超えている場合には、取り出し可能な電流である取出可能電流値Iinvに対して、燃料電池モジュール2から実際に取り出されている実取出電流Icが少なすぎ、燃料が無駄に供給されるので、取出可能電流値Iinvの値を低下させて燃料の浪費を抑制する。ステップS14の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
図10のフローチャートが実行されるごとにステップS14の処理が連続して実行された場合には、取出可能電流値Iinvは、10[mA/sec]の電流減少変化率で減少されることになる。
【0087】
このように、制御部110は、複数の電流低下条件(
図10のステップS5、S7、S9、S11、S13)のうち1つでも該当した場合においては、需要電力が上昇している状況においても取出可能電流値Iinvを減少させる(ステップS6、S8、S10、S12、S14)。
【0088】
一方、ステップS4において、取出可能電流値Iinvが1[A]以下の場合、及びステップS13において、取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差が400[mA]以下の場合には、
図11のステップS15に進む。
ステップS15においては、取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差が300[mA]以下であるか否かが判断され、ステップS16においては、発電電圧Vdcが100[V]以上であるか否かが判断され、ステップS17においては、連系電力Winvが690[W]以下であるか否かが判断され、ステップS18においては、発電室温度Tfcが600[℃]以上であるか否かが判断され、ステップS19においては、系統電力Wlが40[W]を超えているか否かが判断される。これらの条件が全て満足された場合にはステップS20に進み、これらのうちの1つでも満足されない条件がある場合(
図9の番号9に対応)には、ステップS21進む。ステップS21においては、取出可能電流値Iinvの値は変更されずに従前の値に維持され、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
【0089】
このように、本実施形態の固体電解質型燃料電池1においては、需要電力が上昇している状況においても、所定の条件が満たされない場合には、取出可能電流値Iinvが一定に維持される(
図11のステップS21)。また、発電室温度Tfcに着目すると、発電室温度Tfcが上限の閾値である850[℃]を超えている場合には、取出可能電流値Iinvは低下され(
図10のステップS9、S10)、発電室温度Tfcが下限の閾値である600[℃]よりも低いと、取出可能電流値Iinvは維持される(
図11のステップS18、S21)。また、発電室温度Tfcが更に低く、550[℃]よりも低いと、取出可能電流値Iinvは低下される(
図10のステップS11、S12)。
【0090】
一方、ステップS20以下の処理では、取出可能電流値Iinvの値は上昇される。制御部110は、複数の電流維持条件(
図11のステップS15、S16、S17、S18、S19)の何れにも該当しない場合にのみ、取出可能電流値Iinvを増加させる(
図11のステップS22、S23)。
【0091】
即ち、取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差が300[mA]を超えている場合(ステップS15)には、取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差が比較的大きいため、取出可能電流値Iinvを上昇させるべきではない。また、発電電圧Vdcが100[V]よりも低い場合(ステップS16)には、取出可能電流値Iinvを上昇させて、燃料電池モジュール2から取り出され得る電流を増加させるべきではない。さらに、連系電力Winvが690[W]を超えている場合(ステップS17)には、燃料電池モジュール2からの出力電力は既にほぼ定格出力電力に到達しているため、燃料電池モジュール2から取り出され得る電流を増加させるべきではない。
【0092】
さらに、発電室温度Tfcが600[℃]よりも低い場合(ステップS18)には、燃料電池モジュール2が十分に発電を行うことができる温度に達していないため、取出可能電流値Iinvの値を上昇させ、燃料電池モジュール2から取り出され得る電流を増加させて、燃料電池セルユニット16に負担をかけるべきではない。また、系統電力Wlが40[W]以下の場合(ステップS19)には、「逆潮流」が発生しやすい状況にあるため、燃料電池モジュール2から取り出され得る電流を増加させるべきではない。
【0093】
ステップS15乃至ステップS19の条件が全て満足された場合には、ステップS20に進む。ステップS20においては、燃料供給電流値Ifと実取出電流Icの差が1000[mA]以上か否かが判断される。燃料供給電流値Ifに対応した燃料供給量を求めて、燃料電池モジュール2に供給して発電運転している。そのため、換言すれば、その燃料により燃料電池モジュール2が発電可能な電流値を換算した値である。例えば、燃料供給電流値If=5[A]に相当する燃料供給量[L/min]が供給されている場合には、燃料電池モジュール2は、潜在的に5[A]の電流を安全に安定して出力する能力がある。従って、燃料供給電流値Ifと実取出電流Icの差が1000[mA]である場合には、実際に発電している実取出電流Icよりも1[A]分多い電流を出力することができる分量の燃料が燃料電池モジュール2に供給されていることになる。
【0094】
ステップS20において、燃料供給電流値Ifと実取出電流Icの差が1000[mA]以上である場合にはステップS22進み、1000[mA]よりも少ない場合にはステップS23進む。ステップS22においては、多くの余分な燃料が燃料電池モジュール2に供給されている状態であるため、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を100[mA]増加させ(
図9の番号7に対応)、取出可能電流値Iinvを急速に上昇させる。ステップS22の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
図11のフローチャートが実行されるごとにステップS22の処理が連続して実行された場合には、取出可能電流値Iinvは、第2電流上昇変化率である200[mA/sec]の変化率で上昇されることになる。
【0095】
一方、ステップS23においては、取出可能電流値Iinvを上昇させる状況にあるが、多くの余分な燃料が燃料電池モジュール2に供給されている状態ではないので、制御部110は、インバータ制御部111に指示する取出可能電流値Iinvの値を10[mA]増加させ(
図9の番号8に対応)、取出可能電流値Iinvを緩やかに上昇させる。ステップS23の処理の終了により、
図10及び
図11のフローチャートの1回の処理が終了する。
図11のフローチャートが実行されるごとにステップS23の処理が連続して実行された場合には、取出可能電流値Iinvは、第1電流上昇変化率である20[mA/sec]の変化率で上昇されることになる。
【0096】
次に、
図12乃至
図14を参照して、本実施形態による固体電解質型燃料電池の作用の一例を説明する。
図12は、上段に電力のグラフを示し、下段に電流のグラフを示している。
【0097】
まず、
図12上段に細い実線で示すように、住宅200等の施設の総需要電力が細かく変動しながら緩やかに増加している場合には、これに対応して、取出可能電流値Iinvも緩やかに上昇される(
図12の時刻t0〜t1)。この間には、
図11のフローチャートのステップS23が繰り返し実行され、取出可能電流値Iinvは、20[mA/sec]の第1電流上昇変化率で上昇される。インバータ制御部111は、制御部110から取出可能電流値Iinvが入力されると、制御部110の制御とは独立してインバータ54を制御し、取出可能電流値Iinvを超えない範囲の実取出電流Icを燃料電池モジュール2から取り出す。また、
図12の時刻t0〜t1においては、総需要電力は、常に取出可能電流値Iinvに対応した電力を上回っているため、実取出電流Icは取り出すことができる上限値である取出可能電流値Iinvに一致し、連系電力Winvも実取出電流Icと共に上昇している。このような状態においては、インバータ制御部111は、制御部110から独立してインバータ54を制御しているにも関わらず、実取出電流Icは、実質的に制御部110の支配下におかれる。なお、燃料供給電流値Ifは、取出可能電流値Iinvよりも若干先行して上昇される。また、総需要電力と連系電力Winvの差の不足分の電力は、系統電力Wlによって賄われる。
【0098】
次に、
図12の時刻t1において、総需要電力が急激に減少すると、インバータ制御部111は、この減少に応答してインバータ54を制御し、燃料電池モジュール2から取り出す実取出電流Ic(連系電力Winv)を減少させる。制御部110は、前記したオーバーシュートによる過剰な電力取出が行われないように取出可能電流値Iinvを、取出電流値Icと同じ値まで減少させる(
図10のステップS3)。一方、制御部110は、時刻t1において、燃料供給電流値Ifの値は低下させずに従前の値に維持する。これは、燃料供給量(燃料供給電流値If)を取出可能電流値Iinvと共に急激に減少させてしまうと、燃料電池モジュール2の急激な温度低下を招き、燃料電池モジュール2の動作が不安定になるだけでなく、急激に需要電力が低下した場合はすぐに需要が増える可能性が高いため、これへの追従を早くしたいが燃料電池モジュール2の温度を低下させた場合は回復させるのに長時間を要してしまうため、これへの追従性を高めるために燃料供給電流値Ifは低下させていない。このため、取出可能電流値Iinvが急激に減少された場合には、燃料供給電流値Ifは、それよりも遅れて減少される。取出可能電流値Iinvが減少された直後における、燃料供給電流値Ifが維持されている状態においては、燃料電池モジュール2は、取り出され得る取出可能電流値Iinvに対して、燃料供給量に余裕のある状態となる。
【0099】
図12の時刻t1〜t2においては、総需要電力は低下したままであるので、制御部110は、取出可能電流値Iinvの値を一定に維持し(
図11のステップS21)、また、燃料供給電流値Ifの値も燃料が余剰な状態で一定に維持される。
次いで、時刻t2において、総需要電力が再び上昇すると、制御部110は、燃料供給電流値Ifが一定に維持されており、燃料電池モジュール2への燃料供給量に余裕のある状態であるため、取出可能電流値Iinvの値を、通常の変化率(第1電流上昇変化率)よりも大きい200[mA/sec]の第2電流上昇変化率で急速に上昇させる(
図11のステップS22)。これによって、総需要に対する負荷追従性を高めている。すなわち、制御部110から出力される取出可能電流値Iinvの値が上昇されると、インバータ制御部111は、この上昇されている取出可能電流値Iinvの範囲内で、燃料電池モジュール2から実取出電流Icを取り出す。取出可能電流値Iinvの値を急速に上昇させることにより、燃料供給電流値Ifに見合った多くの電力を燃料電池モジュール2から取り出すことができ、系統電力Wlの使用量を抑制することができる。
【0100】
なお、本実施形態においては、第2電流上昇変化率である200[mA/sec]の大きな電流上昇変化率、及び第1電流上昇変化率である20[mA/sec]の通常の電流上昇変化率により取出可能電流値Iinvが上昇される。ここで、電流上昇変化率が通常の第1電流上昇変化率のみである場合には、取出可能電流値Iinvは、
図12に二点鎖線で示すように、時刻t2から緩やかに上昇する。このため、電流上昇変化率が急速に上昇されない場合には、燃料供給量が同じであるにも関わらず、
図12に斜線を施した領域分だけ実取出電流Icが減少し、燃料が無駄に消費されることになる。反対に言えば、本技術における需要予測制御の採用によって固体酸化物型燃料電池の大きな課題である温度変化が遅いという問題を解決して速やかに負荷への追従性を高めることができる。
なお、本実施例では燃料供給電流値Ifをそのままの状態で維持しているが、燃料供給電流値Ifと取出可能電流値Iinvがあまりにも大きな偏差になっている場合は、総需要電力の再復帰を考慮しても余剰燃料となる量が多くなり過ぎるのはやはり無駄であるため、あまり大きな偏差量にならない程度で留めた上で燃料供給電流値Ifを維持することは更に望ましい対応であると言える。
【0101】
図12の時刻t3において、燃料供給電流値Ifと実取出電流Icの差が小さくなると、制御部110は、電流上昇変化率を第1電流上昇変化率である20[mA/sec]に変更し、取出可能電流値Iinvの上昇を緩やかにする(
図11のステップS23)。これは、燃料供給量(燃料供給電流値If)の余裕が少ない状態で取出可能電流値Iinvを急激に上昇させると、制御部110とは独立してインバータ54を制御するインバータ制御部111との動作のずれにより、燃料枯れが発生するのを防止するためである。
【0102】
次いで、取出可能電流値Iinvの値が上昇し、
図12の時刻t4において、燃料供給電流値Ifに近づくと、取出可能電流値Iinvに対して所定の余裕量が確保されるように、燃料供給電流値Ifの値も取出可能電流値Iinvと共に上昇される。
【0103】
次に、
図13を参照して、本実施形態による固体電解質型燃料電池の他の作用例を説明する。
図12に示した作用例では、時刻t1において総需要電力が低下した後、燃料供給電流値Ifの値が維持されている間に総需要電力が上昇に転じている。これに対し、
図13に示す例では、総需要電力が低下した後、これが上昇に転じるまでの時間が長くなっている。燃料供給電流値Ifを大きな値に維持する時間が長くなると供給した燃料が無駄になるので、燃料供給電流値Ifは所定の燃料低下待機時間twが経過すると減少される。
【0104】
図13の時刻t11において、総需要電力が急激に低下した後、時刻t13まで総需要電力は低下したままである。本実施形態においては、制御部110は、総需要電力が急激に低下し、取出可能電流値Iinvを実取出電流Icまで低下させた場合には、その後、燃料低下待機時間twである15[sec]間、燃料供給電流値Ifを一定に維持するように構成されている。
【0105】
図13に示す例では、時刻t11において総需要電力が急激に低下した後、燃料低下待機時間twが経過した時刻t12においても、総需要電力は低下したままであるので、制御部110は、時刻t12から燃料供給電流値If(燃料供給量)を所定の減少変化率で低下させる。この減少変化率は、燃料電池モジュール2が適正な作動を維持できる値に選択されている。なお、
図13に示す例では、燃料低下待機時間twが経過後、燃料供給電流値Ifを低下させているが、取出可能電流値Iinvと燃料供給電流値Ifの差が所定量未満である場合には、燃料低下待機時間twが経過しても燃料供給電流値Ifは低下されずに維持される。これにより、燃料供給電流値Ifの微少変動が、燃料電池モジュール2の運転に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0106】
次いで、
図13の時刻t13において総需要電力が上昇すると、制御部110は、取出可能電流値Iinv及び燃料供給電流値Ifを上昇させる。ただし、この際の取出可能電流値Iinvの上昇は、取出可能電流値Iinvが急激に減少された直後ではなく、燃料供給電流値Ifの値も減少されているので、取出可能電流値Iinvの電流上昇変化率は、通常の値である第1電流上昇変化率の20[mA/sec]に設定される。即ち、
図13の時刻t13においては、
図11のステップS20の条件が満足されず、ステップS23が実行される。
なお、本実施形態では燃料供給電流値Ifを15秒後に低下させて余剰な燃料の維持を中止するように構成しているが、総重要電力が更に低下していくような場合は総重要電力が回復して上昇してくる可能性が低いため燃料供給電流値Ifを維持させる時間の15秒を待たずに燃料供給電流値Ifを速やかに低下させるようにすることは更に望ましい対応と言える。
【0107】
次に、
図14を参照して、本実施形態による固体電解質型燃料電池の他の作用例を説明する。
図14に示す作用例では、総需要電力が急激に低下した後、上昇することなく再び総需要電力が急激に低下している。このような場合においては、最初の急激な低下から燃料低下待機時間twが経過していなくても、すぐに総需要電力が上昇に転じる確率が低いと考えられるため、制御部110は、燃料供給電流値Ifを低下させる。
【0108】
図14に示す例では、時刻t21において総需要電力が急激に低下した後、燃料低下待機時間twである15[sec]が経過する前の時刻t22において、総需要電力は再び急激に低下している。このように燃料供給電流値Ifと取出可能電流値Iinvの差が拡大した場合には、制御部110は、総需要電力の最初の急激な低下から燃料低下待機時間twが経過する前であっても、時刻t22から燃料供給電流値If(燃料供給量)を所定の減少変化率で低下させる。次いで、
図14の時刻t23において総需要電力が上昇すると、制御部110は、取出可能電流値Iinv及び燃料供給電流値Ifを上昇させる。
【0109】
本発明の実施形態の固体電解質型燃料電池1によれば、高速に制御する必要のない燃料電池モジュール2、及び高速な制御が必要なインバータ54を、効率的且つ簡便に制御することができる。
【0110】
即ち、一般に、インバータ54は、急激に変化する需要電力に応じて必要な電流を燃料電池モジュール2から取り出すことができるように、高い応答性で制御される必要がある。一方、燃料電池モジュール2に供給する燃料供給量は、急激に変化させると、燃料電池モジュール2による発電が不安定になったり、燃料電池モジュールが急激な温度低下を起こして、温度が回復するまで十分な発電が行えなくなることがあるので、応答性の高い制御を行うことができない。このように応答性の異なる制御を単一のコントローラによって制御すると、制御アルゴリズムが複雑になるが、本実施形態の固体電解質型燃料電池1によれば、制御部110とインバータ制御部111が独立しており、夫々が燃料流量調整ユニット38及びインバータ54を制御するので、制御が複雑になることがない。また、インバータ制御部111は、第2需要電力検出手段111aにより検出された需要電力、及び制御部110から入力された取出可能電流値Iinvに基づいて、制御部110から独立してインバータ54を制御することができる。このため、燃料電池モジュール2等の仕様変更には、制御部110の制御のみの変更で対応することができ、インバータ54の仕様変更には、インバータ制御部111の制御のみの変更で対応することができる。これにより、制御部110及びインバータ制御部111の汎用性を高くすることができる。
【0111】
また、本実施形態においては、取出可能電流値Iinvを越えない範囲において燃料電池モジュール2から電流が取り出される。燃料電池モジュール2には、取出可能電流値Iinvに対応した燃料が供給されるので、燃料電池モジュール2から実際に取り出される実取出電流Icが取出可能電流値Iinvよりも大幅に少ない場合には、無駄な燃料が供給されることになる。本実施形態においては、取出可能電流値Iinvと実取出電流Icの差に基づいて取出可能電流値Iinvが低下される(
図10のステップS1、S3、ステップS13、S14)ので、無駄な燃料供給が抑制されると共に、実取出電流Icと取出可能電流値Iinvにある程度の差を許容しておく(
図10のステップS13における400mA)ことによって、燃料電池モジュール2による発電を、実取出電流Icの増加に迅速に対応させることができる。
【0112】
さらに、本実施形態においては、制御部110とインバータ制御部111が独立して制御を行うと共に、インバータ制御部111は、取出可能電流値を越えない範囲において燃料電池モジュール2から自由に電流を取り出すことができる。このため、制御部110の制御とインバータ制御部111の制御に僅かでもずれが生じると、燃料電池モジュール2に供給されている燃料に対して過剰な実取出電流Icを燃料電池モジュール2から取り出してしまう虞がある。本実施形態によれば、取出可能電流値Iinvの低下よりも遅れて燃料供給電流値Ifが減少される(
図13の時刻t11〜t13、
図14の時刻t21〜t22)ように、燃料流量調整ユニット38が制御されるので、制御部110の制御とインバータ制御部111の制御にずれが生じた場合にも、過剰な実取出電流Icの取り出しにより燃料電池モジュール2が損傷されるのを防止することができる。
【0113】
また、本実施形態によれば、取出可能電流値Iinvを、所定の条件に応じて第1需要電力検出手段110aによって検出された実取出電流Icまで急激に低下させるので、総需要電力が再び上昇に転じた場合には、インバータ54が、制御部110とは独立して制御されているにも関わらず、燃料電池モジュール2から取り出される実取出電流Icは、実質的に取出可能電流値Iinvに追従し(
図12の時刻t2〜t4、
図13の時刻t13〜、
図14の時刻t23〜)、制御部110によって支配される。さらに、取出可能電流値Iinvを急激に低下させた場合には、遅れて低下される燃料供給量が過剰な状態(
図12の時刻t1〜t2)となるが、急激な低下の直後に需要電力が上昇した場合(
図12の時刻t2)には、大きな変化率で取出可能電流値を上昇させる(
図12の時刻t2〜t3)ので、燃料電池モジュール2に無理をさせることなく、急速に実取出電流Icを上昇させることができる。