(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
比較的規模が大きい電子機器では、機能別にモジュール化されることがある。そのような複数のモジュールから構成される電子機器では、通常、各モジュールがコネクタ及びケーブルを用いて接続される。ここで、例えば衛星通信用の通信機器のように屋外に設置される電子機器では、各モジュール間を接続するコネクタやケーブルを防水仕様にする必要がある。防水仕様のコネクタは、密封用のガスケット等を備えるため、その多くは大型になる。また、屋外に設置される電子機器では、落下物等から保護するために、コネクタやケーブルをカバー等で覆う保護対策が必要な場合もある。したがって、屋外に設置される電子機器は、大型のコネクタやカバー等を設けるために各モジュールの筐体が大型化する傾向にある。そのため、これらの筐体を小さくするにはコネクタやケーブル数を低減しなければならない。
【0003】
このような問題を解決する手段として、コネクタやケーブルを用いた有線接続ではなく、無線技術を利用して各モジュール間を接続する構成が考えられる。そのような技術としては、例えば磁界により非接触で信号を伝送する非接触コネクタ方式が知られている。
【0004】
しかしながら、上記屋外に設置する電子機器が金属製の筐体であると、磁界を利用する非接触コネクタでは、金属から成る筐体の壁面で磁界が遮断されるため、信号を伝送するのに十分な磁束を筐体の壁面を通してやり取りすることができない。そのため、筐体に穴を開ける、または送受信素子を露出させて互いに近接させる等の対策が必要になる。その結果、非接触コネクタ方式であっても、コンタクトどうしを機械的に接触させる上記コネクタと同様に、防水対策や保護対策が必要になってしまう。
【0005】
そこで、金属で覆われていても電磁波による通信を可能にする技術が、例えば特許文献1で提案されている。特許文献1に記載された技術では、金属層を電磁誘導作用による電磁波通信が可能になるまで薄く形成することで、機械的保護性能を確保しつつ電磁波による通信を可能にしている。
【0006】
しかしながら、上記衛星通信用の通信機器のように、比較的大型の電子機器では、十分な強度を確保するために数ミリメートルから数センチメートル程度の厚みを有する金属板を筐体に用いる必要がある。そのため、特許文献1に記載の技術のように薄い金属板で筐体を形成することは困難である。さらに、厚い金属板では、磁界が印加されることで発生する渦電流等による損失も無視できない程度に大きくなり、送受信素子間の距離も比較的大きくなる。したがって、信号の伝送に必要な磁界を発生するための電流も大きくなり、電子機器の消費電力が増大してしまう。
【0007】
また、モジュール間の非接触通信には、電波を利用して信号を送受信する無線タグ等の近距離無線通信を利用することも考えられる。しかしながら、そのような近距離無線通信では、筐体の外部に無線通信用のアンテナを設置する必要があるため、各モジュールの筐体が大型になる。また、電波による信号伝送では、電磁干渉等により通信環境が悪化していることがあるため、信号が誤って伝送される問題や伝送速度が低下する問題も発生する。したがって、そのための対策(誤り訂正の強化、伝送速度の低下防止等)が必要になり、信号を送受信するための処理が複雑になる。また、伝送効率が低下する等の影響もある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明について図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の通信装置を備えた電子機器の一構成例を示すブロック図である。
図1は、屋外に設置される、衛星通信等に用いられるマイクロ波パワーモジュール(MPM:Microwave Power Module)の一構成例を示している。
【0016】
図1に示すように、マイクロ波パワーモジュールは、電源モジュール筐体1及び増幅モジュール筐体2を備え、電源モジュール筐体1と増幅モジュール筐体2とが連結される構成である。
図1に示すようなマイクロ波パワーモジュールは、主として準マイクロ波帯からサブミリ波帯の高周波信号の増幅に利用される。このような電子機器は、インフラストラクチャーとして位置付けられることがあり、故障した場合には迅速な復旧が求められる。
図1に示す構成では、故障が発生した電源モジュール筐体1または増幅モジュール筐体2を交換することで、迅速に復旧させることが可能である。このような迅速性は、特に大規模な自然災害により被害を受けたときなどの緊急時に重要となる。
【0017】
増幅モジュール筐体2は、RF制御モジュール5、進行波管6及び導波管7を備え、外部から入力される高周波信号(入力信号)を、例えば100ワットから1キロワット程度の大きな電力の高周波信号に増幅して出力する。
【0018】
RF制御モジュール5は、入力信号の位相特性や振幅特性を平坦化して進行波管6に出力する。RF制御モジュール5には、増幅モジュール筐体2から出力される高周波信号のモニター機能等も備えている。
【0019】
進行波管6は、RF制御モジュール5から供給された高周波信号を所要の電力まで増幅する。進行波管6で増幅された高周波信号は、導波管7を介して外部へ出力される。
【0020】
電源モジュール筐体1は、電源制御モジュール8及び電源モジュール9を備え、増幅モジュール筐体2に所要の電力を供給する。
【0021】
電源モジュール9は、不図示のコネクタ及びケーブルを介して外部から電力(交流または直流)が供給され、所定の直流電圧を生成して増幅モジュール筐体2が備える進行波管6やRF制御モジュール5に供給する。
【0022】
電源制御モジュール8は、電源モジュール9から増幅モジュール筐体2に供給する電圧値やその供給・停止を制御する。
【0023】
電源モジュール筐体1と増幅モジュール筐体2とは、コネクタ44、電源ケーブル10及びコネクタ46を介して接続される。コネクタ44、電源ケーブル10及びコネクタ46は、主として電源モジュール9から増幅モジュール筐体2に電源電圧を供給するために用いられる。電源モジュール筐体1と増幅モジュール筐体2を接続するコネクタ44及び46、並びに電源ケーブル10には、例えば防水・保護用のカバー45が装着されている。
【0024】
また、
図1に示すように、電源モジュール筐体1及び増幅モジュール筐体2には、非接触で信号を伝送する送受信素子3,4が、筐体内壁面の互いに対向する位置にそれぞれ取り付けられている。送受信素子3,4は、一方の送受信素子で発生している磁界を他方の送受信素子で検出することで信号の伝送が可能な磁界結合型の素子である。
図1は、送受信素子3,4をそれぞれ2つ備えることで、信号の伝送系統を2つ備えた例を示している。伝送系統は、2つに限らず、1系統でもよく、3系統以上であってもよい。
【0025】
送受信素子3はRF制御モジュール5と接続され、送受信素子4は電源制御モジュール8と接続されているため、RF制御モジュール5と電源制御モジュール8とは送受信素子3,4を介して互いに信号の送受信が可能である。
【0026】
RF制御モジュール5は、例えば進行波管6の動作状態(電圧、電流、温度等)や進行波管6による増幅後の信号品質(出力電力、位相等)を監視し、その監視結果を、送受信素子3,4を介して電源制御モジュール8に通知する。
【0027】
電源制御モジュール9は、RF制御モジュール5の監視結果に基づき、RF制御モジュール5や電源モジュール9を制御することで、例えば入力信号の位相や振幅を調整したり、進行波管6の起動シーケンスや停止シーケンス等を変更したりする。
【0028】
図2は、第1の実施の形態の通信装置の構成例を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、第1の実施の形態の通信装置は、送受信素子3,4が、金属板から成る筐体15を挟んで対向する位置に配置された構成である。送受信素子3,4は、例えばソレノイドコイル13とソレノイドコイル13内に挿入される強磁性体12とを備えている。このような構成では、ソレノイドコイル13に信号電流が流れると、該信号電流に対応した磁界(磁束)を発生する。また、対向する送受信素子で磁界が発生すると、電磁誘導によりソレノイドコイル13に該磁界に応じた誘導電流が流れる。そのため、互いに信号を送受信する通信装置として動作する。
【0030】
筐体15には、通常、軽量化のためにアルミニウム等の常磁性体が用いられる。そのため、例えば送受信素子3で発生した磁束14は、その強磁性体12の一方の端部から出射されて筐体15を透過し、送受信素子4の強磁性体12の一方の端部へ入射する。送受信素子4の強磁性体12の一方の端部から入射された磁束は、他方の端部から出射されて筐体15を透過し、送受信素子3の強磁性体12の他方の端部へ入射する。送受信素子4で磁束が発生した場合も同様である。すなわち、
図2に示すように送受信素子3,4を対向して配置することで、2つの送受信素子3,4を、効率よく磁界結合することが可能である。なお、
図2では、強磁性体12の端部で磁界を結合させるために、送受信素子3,4の各強磁性体12が平行になるように配置されている。なお、
図2の矢印は送受信素子3,4内を透過する磁束線の様子を示している。
【0031】
送受信素子3,4は、
図1に示した増幅モジュール筐体2と電源モジュール筐体1とを所定の位置で連結したとき、互いに対向するように各々の筐体に取り付ければよい。
【0032】
図2に示す送受信素子3,4は、電源モジュール筐体1及び増幅モジュール筐体2から外部に露出させる必要がないため、破損等を考慮した保護対策が不要である。特に、屋外に設置する電子機器に用いた場合は、コネクタ等の防水対策も不要になる。
【0033】
したがって、本実施形態によれば、筐体間の非接触による信号伝送に有用な通信装置が得られる。
【0034】
なお、
図2では、筐体15間が離れている(ギャップがある)例を示しているが、筐体15どうしは接触していてもよい。また、
図2では、送受信素子3,4として、ソレノイドコイル13及び強磁性体12を備えた構成例を示しているが、送受信素子3,4には、信号電流に応じて磁界を発生すると共に、発生している磁界を検出できれば、ソレノイドコイル13以外の素子を用いてもよい。高感度で磁界を検出できる素子を使用すれば、磁界の発生に要する電力を低減できる。
【0035】
例えば、信号の伝送方向が一方向でよければ、一方の送受信素子に信号電流に応じて磁界を発生する素子を用い、他方の送受信素子に磁界を検出する素子を用いればよい。磁界を検出する素子としては、ループ素子、巨大磁気抵抗効果を使った素子、磁気インピーダンス効果を使った素子等がある。
【0036】
さらに、
図1では、それぞれが独立した電源モジュール筐体1と増幅モジュール筐体2間で、
図2に示した送受信素子3,4を用いて信号を送受信する例を示しているが、
図2に示した送受信素子3,4は、例えば筐体内部の金属板で仕切られた部位とその外部とで信号を送受信する場合にも適用可能である。例えば、電磁シールドケースで覆われた回路とその外部の回路間で信号を送受信する場合が考えられる。一般に、電磁シールドケースは、シールド効果を保つために、開口を設けないことが好ましい。電磁シールドケースで覆われた回路とその外部の回路間の信号通信に、本実施形態で示した送受信素子3,4を用いれば、開口を無くすことが(または縮小することが)できる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態で示した送受信素子3,4では、強磁性体12が棒状であるため(
図2参照)、一方の送受信素子で発生した磁束が強磁性体12の端部から拡散して出射し、その一部が対向して配置された他方の送受信素子に入射されない。この他方の送受信素子に入射されない磁束は、信号伝送に利用されないため、信号伝送に要する電力の損失を招く。第2の実施の形態では、このような損失を低減するための送受信素子の構成例を示す。
【0037】
図3は、第2の実施の形態の通信装置の構成例を示す模式図である。
【0038】
図3に示すように、第2の実施の形態の通信装置は、送受信素子3a,4aの強磁性体16が略コの字状に形成され、送受信素子3aが備える強磁性体16の端部と、送受信素子4aが備える強磁性体16の端部とが互いに対向するように配置された構成である。
【0039】
このような構成では、一方の送受信素子で発生した磁束14aが、強磁性体16の形状に応じて誘導され、その端部から他方の送受信素子の強磁性体16の端部へ向けて出射される。また、強磁性体16の端部どうしの距離も短縮するため、送信側から受信側へ入射されない磁束量が低減する。そのため、信号伝送に要する電力損失が低減し、伝送効率を向上させることができる。
【0040】
送受信素子としてソレノイドコイル及び強磁性体16を用いた構成では、主として強磁性体16の両端で、2つの送受信素子が磁界結合する。そのため、本実施形態のように強磁性体16の形状を工夫することで、磁束の流れを制御することが可能であり、信号伝送に利用されない磁束量を低減できる。
【0041】
図4は、第2の実施の形態の通信装置の変形例を示す模式図である。
図4は、
図3に示した送受信素子3aが備える強磁性体16の端部と、送受信素子4aが備える強磁性体16の端部との間に、樹脂等の非磁性材料17が埋設された様子を示している。
【0042】
一般に、樹脂等の非磁性体材料17は、入射した磁束の強度を低下させる作用が少ないことが知られている。そのため、
図4に示すように、送受信素子の強磁性体16端部で挟まれる筐体15の部位を、樹脂等の非磁性材料17に置き換えれば、筐体15に磁束が入射することで生じる損失を低減することが可能であり、送受信素子3a,4a間の磁界による結合力を強めることができる。
【0043】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の通信装置よりも、信号伝送に利用されない磁束量を低減することが可能であるため、伝送効率を向上させることができる。
(第3の実施の形態)
一般に、磁界結合型の送受信素子では、送信側の素子と受信側の素子とが離れていると、その間隔が数ミリメートル程度であっても、端部から出射された磁束が拡散して受信側の素子に到達しない磁束量が増大する。また、筐体が金属である場合、該筐体に磁束が入射することで発生する渦電流も、送受信素子間の磁界による結合力を弱める原因となる。渦電流とは、入射された磁束を打ち消す向きの磁束を発生するように、金属表面に流れる電流である。そのため、送信側の送受信素子へより大きな電力を供給しなければならない。
【0044】
筐体15にアルミニウム等の非磁性金属を用いている場合、アルミニウムの比透磁率はほぼ「1」であるため、
図4に示した樹脂等の非磁性材料17を埋め込んだ部位では、その内側と外側とで透磁率が大きく変化することはない。そのため、送受信素子3a,4aの端部から出射される磁束は、非磁性材料によって集束されることなく、拡散する傾向にある。したがって、一方の送受信素子の端部から出射された磁束を集束させて、他方の送受信素子へ到達するように誘導できれば、伝送効率を向上させることができる。
【0045】
そこで、第3の実施の形態では、
図5に示すように、筐体15の、送受信素子3aが備える強磁性体16の端部と、送受信素子4aが備える強磁性体16の端部との間の部位に、強磁性体18を埋設する。
図5は、第3の実施の形態の通信装置の構成例を示す模式図である。
【0046】
一般に、強磁性体18は磁束を集束する性質があることが知られている。そのため、
図5に示すような構成では、一方の送受信素子の端部から出射された磁束14aが筐体15に設けられた強磁性体18で集束し、他方の送受信素子へ到達する。
【0047】
第3の実施の形態によれば、筐体15に磁束線を誘導する部位(強磁性体18)を備えることで、信号の伝送に利用されない磁束量を第2の実施の形態よりもさらに低減できる。
【0048】
また、本実施形態のように、筐体15に磁束線を誘導する部位(強磁性体18)を備えることで、送受信素子3a,4aが備える強磁性体16と筐体15が備える強磁性体18とにより閉磁路構造に近い磁気回路を形成できる。そのため、筐体15に入射する磁束量が低減し、筐体15に渦電流が流れることによる損失(渦電流損)も低減できる。したがって、通信装置による信号の伝送効率をより向上させることができる。
(第4の実施の形態)
図6は、第4の実施の形態の通信装置の構成例を示す模式図である。
【0049】
図6に示すように、第4の実施の形態では、送受信素子3aの強磁性体16の端部と、送受信素子4aの強磁性体16の端部との間の部位に、磁束収束部21を埋設する。
【0050】
磁束収束部21は、一方の送受信素子から出射された磁束を渦電流に変換し、該渦電流を筐体の他方の送受信素子側へ誘導し、さらに誘導された電流により他方の送受信素子側の筐体表面に磁束を形成することで、2つの送受信素子間を磁界結合する。
【0051】
図7aに示すように、磁束収束部21は、例えば幅の広い略C字状の円板24で形成され、
図6に示した筐体19,20にそれぞれ埋設される。磁束収束部21は、筐体19,20と同様にアルミニウム等の金属で形成され、筐体19,20との隙間は樹脂25が充填されて防水性が確保されつつ、筐体19,20に固定される。
図7aは、
図6に示した磁束収束部21をA方向から見て拡大した様子を示している。
【0052】
図6に示すように、筐体19と筐体20とが接触している場合、それぞれが備える磁束収束部21も接触することで電気的に導通する。但し、筐体19及び筐体20に固定された磁束収束部21どうしが導通していなくても同様の効果は得られる。磁束収束部21は、円板である必要はなく、楕円形や長方形等の板でもよい。
図7aは、送受信素子3a,4aの強磁性体16の断面形状が円状であるため、磁束収束部21にも略C字状の円板を用いた例を示している。磁束収束部21の外形は、送受信素子の強磁性体16の断面形状に合わせて決定すればよい。
【0053】
このような構成において、
図6に示す一方の送受信素子で磁束14aが発生すると、発生した磁束14aは強磁性体16の端部から磁束収束部21に入射される。このとき、金属である磁束収束部21の表面には、電磁誘導によりC字の形状に沿って渦電流29が流れる。磁束収束部21は、幅の広いC字状であるため、幅方向(半径方向)によって流れる電流の大きさ向きが異なる。具体的には、円周の外側よりも内側で電流密度が高くなる。筐体19と筐体20とが導通している場合、筐体19、20が備える磁束収束部21は一つの閉回路を形成するため、上記渦電流29は他方の送受信素子側の磁束収束部21の表面31にも到達する。
【0054】
他方の送受信素子側の磁束収束部21の表面31では、
図7bに示すようにC字の形状に沿って電流30が流れ、該電流30により磁界が発生する。このとき発生する磁界の強度は、上述したようにC字の内側の電流密度が高いため、中央部付近にピークを有する、
図7cの分布Aで示すようになる。
【0055】
すなわち、
図7aに示した磁束収束部21は、
図5に示した強磁性体18と同様に、送受信素子の強磁性体端部から出射された磁束を集束させる作用がある。このような略C字状の導体により磁束を集束できることは、例えば、非特許文献1(前田哲彦、山田外史、岩原政吉、「磁束収束作用を用いた渦電流探傷プローブ」、日本AEM学会誌、Vol.9、No.1、27〜32頁、2001年3月10日)にも記載されている。本願発明によれば、磁束収束素子を用いて金属製の筐体壁面間で通信するための送受信素子の具体的な構成や構造が提供される。
【0056】
なお、
図7cに示す磁界分布Aは、磁束収束部21で発生する磁界の概略の形状を示しており、正確な磁界強度を示すものではない。筐体19,20に、磁束収束部21のような磁束を集める手段が無い場合、
図7cの磁界分布Bで示すように、送受信素子3a,4aの端部から出射された磁束は拡散する。
【0057】
図8aおよび
図8bは、
図7aに示した磁束収束部21の変形例である。
【0058】
図8aは、筐体19,20に、円形の貫通孔32,33と、直線上の貫通孔34とを設けることで、
図7aに示した磁束集束部21と同様の機能を、筐体19,20に形成した例である。各貫通孔には樹脂が充填され、防水性が確保されている。このように複数の貫通孔により磁束収束部21を形成すると、筐体19,20の強度を保つことが可能であり、また磁束集束部21を簡易に作成できる。
【0059】
図8bは、筐体19,20に、半円状の貫通孔35と、円形の貫通孔36と、直線状の貫通孔37とを設けることで、
図7aに示した磁束集束部21と同様の機能を、筐体19,20に形成した例である。各貫通孔には樹脂が充填され、防水性が確保されている。このような構成では、C字状の金属板とその外部の金属板とが3箇所で接続されているため、筐体19,20の強度を保つことが可能であり、また貫通孔の数も少なくて済むため、磁束集束部21をより簡易に作成できる。
【0060】
第4の実施の形態によれば、筐体19,20に磁束を集める磁束集束部21を備えることで、第3の実施の形態と同様に、信号の伝送に利用されない磁束量を低減できる。したがって、通信装置による信号の伝送効率をより向上させることができる。
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態は、2つの送受信素子41,42間に配置される筐体38,39が比較的厚い金属板である場合の構成例である。
【0061】
図9は、第5の実施の形態の通信装置の構成例を示す模式図である。
【0062】
図9に示すように、第5の実施の形態では、筐体38,39にそれぞれ凹部40を設け、強磁性体43の端部が凹部40内に位置するように送受信素子41,42を配置する。
図9に示す第5の実施の形態の構成は、第2の実施の形態〜第5の実施の形態で示した通信装置と組み合わせることも可能である。
【0063】
第5の実施の形態によれば、筐体38,39が比較的厚い金属板であっても、送受信素子41、42を、それぞれの強磁性体43の端部を接近させて配置できる。そのため、一方の送受信素子から出射された磁束が他方の送受信素子に到達しないことによる伝送損失を低減できる。
【0064】
なお、上述した第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、送受信素子3,4を信号伝送に用いる例を示したが、送受信素子3,4は近接センサとして用いることも可能である。
【0065】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態で示した送受信素子3,4は、互いに接近したときにのみ正常に信号を送受信することができる。例えば、
図1に示した電源モジュール筐体1を交換する場合、交換後の電源モジュール筐体1が増幅モジュール筐体2と正しく連結されているか否かを確認する必要がある。増幅モジュール筐体2が備える進行波管6には、大きな電力が供給されるため、2つの筐体が不完全に連結されていると破損する可能性がある。
【0066】
そこで、送受信素子3,4を用いて電源制御モジュール8とRF制御モジュール5間の信号伝送が成功すれば、電源モジュール筐体1と増幅モジュール筐体2とが、正しい位置で設置されていることが確認できる。よって、進行波管6に対する電力供給の開始準備が整っているか否かを、電源制御モジュール8で判定できる。