【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げてさらに説明する。
【0074】
(実施例1)
負極活物質として、レーザ回折・散乱法により測定される平均粒径D
50が5μmとなるように調整された、単体ケイ素と二酸化ケイ素を含む粒子混合物(単体ケイ素/二酸化ケイ素=40/60(重量比))を準備した。この粒子混合物85重量部に、バインダー溶液としてのポリアミック酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液50重量部(最終的に得られるポリイミド10重量部に相当)、及び平均粒径D
50が5μmとなるように調整された天然黒鉛粉末5重量部を混合し、さらに溶剤としてのNMPを加えて溶解・分散させることで、負極電極材料のスラリーを作製した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に150×80mmの四角形の形状に塗布し、乾燥炉にて125℃で5分間の乾燥処理を行った後、ロールプレスにて圧縮成形を行い、再び乾燥炉にて300℃で10分間の乾燥処理を行って、負極集電体の両面に負極活物質層を形成した。
【0075】
その際、負極活物質層の重量は、活物質容量(金属リチウムに対して電位0.02Vに達したときの負極の初回充電容量。以下、負極において同様)1.2Ahに相当する重量とした。
【0076】
このようにして負極集電体の両面に負極活物質層を形成したものを1枚作製し、それを160×90mmの四角形の形状に打ち抜いた。
【0077】
さらに、負極集電体の両面に形成された負極活物質層の上に、活物質容量(負極にドープされたリチウムの容量。以下、金属リチウムにおいて同様)0.10Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着して、負極とした。
【0078】
一方、ニッケル酸リチウムからなる正極活物質粒子92重量部に、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン4重量部、及び導電剤としてのカーボン粉末(非晶質炭素粉末)4重量部を混合し、さらに溶剤としてのNMPを加えて溶解・分散させることで、正極電極材料のスラリーを作製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に150×80mmの四角形の形状に塗布し、乾燥炉にて125℃で5分間の乾燥処理を行った後、ロールプレスにて圧縮成型を行うことで、正極集電体の片面に正極活物質層を形成した。
【0079】
その際、正極活物質層の重量は、活物質容量(金属リチウムに対して電位4.3Vに達したときの正極の初回充電容量。以下、正極において同様)1.0Ahに相当する重量とした。
【0080】
このようにして正極集電体の片面に正極活物質層を形成したものを2枚作製し、それを160×90mmの四角形の形状に打ち抜いて、正極とした。
【0081】
次いで、ポリプロピレンの多孔性フィルムからなる170×100mmの四角形の形状のセパレータを用意した。そして、下から、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極の順にこれらを重ね合わせた積層体を得た。
【0082】
次いで、負極集電体に、電極の引き出しのためのニッケルからなる負極端子を、超音波接合によって融着した。
【0083】
次に、負極端子の反対側で2枚の正極集電体を重ね合わせた。次いで、その重ね合わせた部分に電極の引き出しのためのアルミニウムからなる正極端子を、超音波接合によって融着した。こうして、正極端子および負極端子を対向する長辺部分に配置した。
【0084】
得られた積層体の両側から、接着層が積層セル側となるように外装フィルムを重ね合わせた後、外装フィルムの外周部が重なり合っている四辺中三辺を、ヒートシールにより熱融着(封止)させた。その後、電解液を注入し、真空下にて残りの一辺を熱融着させた。ここで、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で3:5:2の割合で混合した溶媒に、LiPF
6を1mol/lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0085】
こうして得られたラミネート型電池では、負極端子及び正極端子の先端が、外装フィルムから互いに反対方向に向いて外部に突出している。このラミネート型電池を7個作製した。
【0086】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、定格である4.2Vまでのフル充電を行った後、2.7Vまでの放電を行った。
【0087】
そのうちの1個のセルについて、外装フィルムを剥がして正極及び負極を取り出した。この正極及び負極におけるリチウム量M
c2及びM
a2を、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)による定量分析を行うことにより求めた。
【0088】
次に、残りの1個について、さらに定格である4.2Vまでのフル充電を行った後、上記と同様にして外装フィルムを剥がして正極及び負極を取り出した。この正極及び負極におけるリチウム量M
c1及びM
a1を、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)による定量分析を行うことにより求めた。
【0089】
負極に挿入されるリチウム量M
aは、充電状態における負極のリチウム量M
a1から放電状態における負極のリチウム量M
a2の差で求められる。すなわち、
M
a=M
a1−M
a2の関係が成り立つ。
【0090】
一方、正極から放出されるリチウム量M
cは、放電状態における正極のリチウム量M
c2から充電状態における正極のリチウム量M
c1の差で求められる。すなわち、
M
c=M
c2−M
c1の関係が成り立つ。
【0091】
また、負極にドープされたリチウム量M
Liは、放電状態における負極のリチウム量M
a2に相当する。すなわち、
M
Li=M
a2の関係が成り立つ。
【0092】
以上の分析により求めた、M
a、M
c及びM
Liを表1に示す。表中のリチウム量は、実施例1のM
cを基準(1)とする原子数の相対比で示している。
【0093】
(初回放電容量、サイクル特性、及びセル厚さ増加率の評価)
得られた5個のラミネート型電池に対し、まず、20℃の定温雰囲気下において、定格である4.2Vまでのフル充電を行った後、2.7Vまでの放電を行ったときの放電容量を測定した。これを初回放電容量(すなわち充放電容量)とした。
【0094】
次いで、45℃の定温雰囲気下において、各ラミネート型電池に対して4.2Vまでの充電と2.7Vまで放電とを1Cレートにより100回繰り返し、その100サイクル後の放電容量を20℃で測定した。なお、1Cレートとは、公称容量(Ah)を1時間で充放電する電流値をいう。そして、初回放電容量に対する100サイクル後の放電容量の割合を計算し、これをサイクル特性とした。
【0095】
さらに、サイクル開始前と100サイクル後のそれぞれにおいて、各ラミネート型電池の厚さを測定し、セル厚さ増加率を計算した。
【0096】
得られた5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性、及びセル厚さ増加率のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0097】
(実施例2)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.2Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.15Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0098】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0099】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0100】
(実施例3)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.4Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.10Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0101】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0102】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0103】
(実施例4)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.4Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.35Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0104】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0105】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0106】
(実施例5)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.6Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.10Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0107】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0108】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0109】
(実施例6)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.6Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.50Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0110】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0111】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0112】
(実施例7)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.8Ahに相当する重量とし、その上に、活物質容量0.15Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0113】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0114】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0115】
(実施例8)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.8Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.70Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0116】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0117】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0118】
(実施例9)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.9Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.20Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0119】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0120】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0121】
(実施例10)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.9Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.80Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0122】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0123】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0124】
(実施例11)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.20Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.18Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。得られたM
a、M
c及びM
Li並びに評価結果を表1に示す。
【0125】
(実施例12)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.85Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.17Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。得られたM
a、M
c及びM
Li並びに評価結果を表1に示す。
【0126】
(実施例13)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.85Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.70Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。得られたM
a、M
c及びM
Li並びに評価結果を表1に示す。
【0127】
(比較例1)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.2Ahに相当する重量とし、その上に金属リチウムの蒸着を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0128】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0129】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0130】
(比較例2)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.1Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.05Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0131】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0132】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0133】
(比較例3)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.2Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.25Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0134】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0135】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0136】
(比較例4)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.4Ahに相当する重量とし、その上に金属リチウムの蒸着を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0137】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0138】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0139】
(比較例5)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.4Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.45Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0140】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0141】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0142】
(比較例6)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.6Ahに相当する重量とし、その上に金属リチウムの蒸着を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0143】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0144】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0145】
(比較例7)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.6Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.65Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0146】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0147】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0148】
(比較例8)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.8Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.05Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0149】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0150】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を、表1に示す。
【0151】
(比較例9)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.8Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.85Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0152】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0153】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0154】
(比較例10)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.9Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.10Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0155】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0156】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0157】
(比較例11)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量1.9Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.95Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0158】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0159】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0160】
(比較例12)
形成した負極活物質層の重量を活物質容量2.0Ahに相当する重量とし、その上に活物質容量0.50Ahに相当する重量の金属リチウムを蒸着したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0161】
得られたラミネート型電池のうちの2個について、負極に挿入されるリチウム量M
a、正極から放出されるリチウム量M
c及び負極にドープされたリチウム量M
Liを表1に示す。
【0162】
また、得られたラミネート型電池のうちの5個のラミネート型電池における、初回放電容量、サイクル特性及びセル厚さ変化率の評価結果のそれぞれの平均値を表1に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池では、比較例1のラミネート型電池が有する初回放電容量と比較して少なくとも10%以上の容量の増加が可能になる。すなわち、初回放電容量に関しては、比較例1の初回放電容量より10%大きい744mAh以上の優位な効果を得ることができる。
【0165】
45℃100サイクルのサイクル特性に関しては、比較例1のサイクル特性である80%以上の優位な効果を得ることができる。
【0166】
さらに、セル厚さ変化率に関しても、比較例1のセル厚さ増加率程度以下、すなわち10%以下の優位な効果を得ることができる。
【0167】
実施例1〜10で得られたラミネート型電池は、式(1)及び式(2)、あるいはさらに式(3)及び式(4)の条件を満たしているため、このような優位な効果を得ることができる。
【0168】
表1に示した実施例1〜10及び比較例1〜12の評価結果によると、以下のことが分かる。すなわち、リチウムイオン二次電池において、負極の初回充電容量C
aと正極の初回充電容量C
cの比C
a/C
c、あるいは負極に挿入されるリチウム量M
aと正極から放出されるリチウム量M
cの比M
a/M
cを、1.2以上とすることにより、特に初回放電容量を改善することができる。この改善効果は、C
a/C
cあるいはM
a/M
cが大きいほど大きくなる傾向にある。また、C
a/(C
c+C
Li)あるいはM
a/(M
c+M
Li)を1.0より大きく1.6より小さくすることにより、特に45℃100サイクル後のサイクル特性が優れ、同時に初回放電容量の改善もみられる。なお、セル厚さ増加率はいずれも同等であるので、初回放電容量の増加はそのまま電池エネルギー密度の増加につながる。
【0169】
一方、比較例2のようにC
a/C
c及びM
a/M
cが1.2より小さい場合、リチウムのドープによる初回放電容量の増加が小さい。これは、負極にドープさせるリチウムの容量C
Liを大きくできないためである。また、比較例12のようにC
a/C
c及びM
a/M
cが1.9より大きい場合、サイクル特性が低下する傾向がある。これは、負極へのリチウムのドープ量が過剰になり、負極の劣化を招いていると考えられる。
【0170】
さらに、比較例3、5、7、9及び11のようにC
a/(C
c+C
Li)及びM
a/(M
c+M
Li)が1.0以下の場合、サイクル特性が低下する傾向がある。これは、負極上に余剰なリチウムが析出しやすくなるためと考えられる。
【0171】
また、比較例8及び10のようにC
a/(C
c+C
Li)及びM
a/(M
c+M
Li)が1.6以上の場合も同様に、45℃100サイクル後のサイクル特性が低下する傾向がある。これは、放電時の負極劣化が大きくなるためと考えられる。
【0172】
比較例1、4、6、8及び10は負極にドープさせるリチウムの容量C
Liが0もしくは小さいため、リチウムのドープによる初回放電容量の増加も小さい。比較例12はC
a/C
c及びM
a/M
cが1.9より大きく、この場合は、充放電による体積変化(セル厚さの変化)が大きく、またサイクル特性の低下が見られた。
【0173】
図3には、実施例および比較例のリチウム二次電池におけるリチウム量の関係を示し、
図4には、実施例および比較例のリチウム二次電池における容量の関係を示す。
図3において、外側の点線の四角形で示される領域は、式(1)及び式(2)を満たす範囲を示し、内側の点線の四角形で示される領域は好ましい範囲を示す。この範囲において、点線の斜めの直線(M1/M2=1.05あるいはM1/M2=1.10)より上方側の領域がより好ましい。
図4において、外側の点線の四角形で示される領域は、式(3)及び式(4)を満たす範囲を示し、内側の点線の四角形で示される領域は好ましい範囲を示す。この範囲において、点線の斜めの直線(C1/C2=1.05あるいはC1/C2=1.10)より上方側の領域がより好ましい。なお、外側の点線の四角形で示される領域内に比較例のプロット(×)があるが、これらの比較例では負極にリチウムがドープされていない。
【0174】
以上示したように、本実施形態によれば、サイクル特性を損なうことなく、電池の初期特性を高めることができ、エネルギー密度の高い二次電池を得ることができる。
【0175】
以上、実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。