【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、以下のような落し込み取手保持装置を発明した。
【0011】
先ず、第1発明は、各種蓋に装着する落し込み取手について、蓋の脚部導入孔から挿入した蓋の内側の落し込み取手の脚部を、保持リング及び、保持リングの下の蓋に固定された耐力板の両方に摺動可能に挿通し、さらに脚部の端末にはストッパー部材を付け、落し込み取手の握持部を引き上げて蓋を開くとき、蓋の内側の脚部が上昇し、脚部に挿通された保持リングも脚部と保持リングとの圧着力(以下、圧着力とする)で上昇し、蓋の内面に保持リングは圧接し、圧着力を超える力で更に握持部を所定の高さまで
引上げて蓋を開き、その後、握持部を手放し、蓋を閉じたとき、保持リングは下降し 耐力板で止まり、
圧着力により握持部が、蓋の表面から所定の高さに保持でき、作業終了時には、圧着力を超える力で握持部を押し下げ、耐力板で止められている保持リング内を脚部が摺動・下降して、握持部を蓋の表面に戻すことができる落し込み取手保持装置である。
【0012】
各種蓋としたのは、蓋には、マンホール、暗渠、水槽、地中筐等の地上、床面に設けられる金属製、グラスファイバー製等の蓋を表現するためである。
落し込み取手とは、前述のように、∩字型であって、脚部は一対であって、取手の握持部の両端の脚部が蓋に設けられた脚部導入孔を貫通し、蓋の内側の脚部の端末にストッパー部材が固定され、使用時には、取手の握持部が引上げられ、蓋の内側の脚部が上昇し、ストッパー部材が蓋の内面に圧接し、更に握持部が引き上げられてストッパー部材とともに蓋が開かれる落し込み取手である。
【0013】
図1に、市販品の落し込み取手の例を示す。
図1は、インターネット上から見出したものである。
図1の(1)図では、落し込み取手2の脚部22には、ねじ山が形成され、ナットとワッシャーによりストッパー部材23が構成されている。
図1の(2)図では、ナットとワッシャー及びプレートによりストッパー部材23が構成されている。
図1の(3)図では、落し込み取手が一体として構成され、落し込み取手2の握持部21が凹部に埋め込まれている。なお、落し込み取手を∩字型と表現したが、
図1の(3)のように、∩字型ではなく、開口部がない環状型でストッパー部材23を構成しているものもある。ただし、本願では保持リングを適宜交換するため、∩字型の落し込み取手の方が作業性がよい。
【0014】
図2は、本願発明の落し込み取手保持装置の未使用時の断面概略図である。また、落し込み取手の握持部や脚部を略して、以下、握持部、脚部とする。
図2の(1)は、握持部21が蓋1の表面101に置かれている未使用時の状態である。蓋1は、蓋が付けられる外周部10に置かれている。 脚部22は、脚部導入孔11を通り、蓋の内側の脚部222は、保持リング4と、その下の蓋に取り付けられた耐力板3の両方を挿通し、最下部にはストッパー部材23が付けられている。保持リング4の底表面402は、 耐力板3の上表面301に置かれている。
図2の(2)は、保持リング4の上表面401、底表面402及び 耐力板3の上表面301、裏表面302を表した図である。
【0015】
保持リング4は、その中心に脚部22が挿通される孔が空けられているが、脚部が容易に挿通される孔径では、圧着力が生じない、また孔径が狭すぎると脚部がその内部を摺動できない。保持リングの孔径は、脚部の径との調整が必要である。 耐力板3に開けられる図示しない脚部の挿通孔の径は、脚部の径より大きくし、圧着力は生じないようにする。同様に、蓋1の脚部導入孔11と脚部との圧着力も生じないようにする。
【0016】
図3は、落し込み取手2の握持部21を所定の高さまで引上げた図である。蓋1は、蓋1が置かれていた外周部10より持ち上げられている。蓋1を押さえながら握持部21を引上げると、蓋の内側の脚部222と保持リング4は上昇し、保持リング4は、蓋の内面102で止まる。保持リング4と蓋の内側の脚部222との圧着力(以下、圧着力とする)が、蓋1の重量より大きい場合には、そのまま握持部を引上げると蓋を開くことができる。
【0017】
図4は、落し込み取手の握持部を手放したときの断面概略図である。蓋1は、蓋が付けられる外周部10に置かれているが、握持部21は、所定の高さに保持される。握持部21を手放すと、握持部21は落下するが、保持リング4は、 耐力板3の上表面301で止まり、握持部21は、蓋1より所定の高さに保持することができる。
図4の状態では、握持部21を握りやすくなり、蓋1の開閉が容易に行なうことができる。作業が終了すれば、握持部21を、圧着力を越える力で下方に向け押し下げていく。保持リング4は耐力板3に止められているため、脚部22は保持リング4の内部を摺動・下降し、握持部21は、蓋1の表面101に置き戻され、
図2の(1)の状態となる。
【0018】
第1発明では、保持リング4と蓋1の内側の脚部222との圧着力が蓋の重量を上回り圧着力で蓋が開く場合である。この場合、ストッパー部材23は、蓋1が重く、保持リング4内を脚部22が摺動した場合、脚部22から蓋1が抜け落ちないための安全用として機能する。マンホール、暗渠等の蓋は金属製で重量があり、圧着力だけでは、蓋を持ち上げることができない。そこで、 耐力板3は、保持リング4の落下を止めるだけでなく、ストッパー部材23と 耐力板3の裏表面302と押圧力により、重量のある蓋を開けることができるようにしたのが第2発明である。
【0019】
すなわち、第2発明は、保持リングと蓋の内側の脚部との圧着力だけでは、蓋を持ち上げることができない場合において、落し込み取手の握持部を引き上げて蓋を開くとき、蓋の内側の脚部が上昇し、脚部に付けられた保持リングも上昇し、蓋の内面に止まり、更に、脚部が上昇し、耐力板の底表面がストッパー部材により押圧され、圧着力及びストッパー部材の耐力板への押圧力(以下、押圧力とする)により、蓋が持ち上げられて開き、握持部を手放し蓋を閉じたときは、保持リングが、耐力板の上表面に止まり、握持部が、蓋の表面から所定の高さに保持でき、作業終了時には、圧着力を超える力で握持部を押し下げ、耐力板で止められている保持リング内を、脚部は摺動・下降し、握持部を蓋の表面に戻すことができる第1発明の落し込み取手保持装置である。
【0020】
第2発明の落し込み取手保持装置の構造は第1発明のそれと同じである。しかし、蓋が重く、保持リングと蓋の内側の脚部との圧着力だけでは、蓋が開けられない場合が、第2発明の落し込み取手保持装置である。脚部に付けられた保持リングは、脚部と共に上昇し、蓋の内面に圧接する。更に、握持部を引上げていくと、蓋の重みにより、脚部は、蓋の裏面に圧接された保持リング内を摺動し、脚部は上昇し、脚部の下部に付けられたストッパー部材が 耐力板の底表面を押圧する。そして、保持リングと蓋の内側の脚部との圧着力及びストッパー部材の耐力板底表面への押圧力により蓋が持ち上げられる。握持部を手放し、蓋を閉じたときでも、保持リングが、耐力板の上表面に止まり、握持部は、蓋の表面から所定の高さに保持されることになる。作業終了時には、握持部を押し下げていくと、保持リングは耐力板の上表面で止められ、更に握持部を押し下げていくと、蓋の内側の脚部は保持リング内を滑りながら下降し、握持部を蓋の表面に戻すことができる。
【0021】
耐力板は、第1発明では、保持リングの落下を防ぎ、握持部を下降させるときに、保持リングを止めて、保持リング内を蓋の内側の脚部が摺動・下降させる機能であるが、第2発明では、それだけではなく、蓋を押し上げる力も働く。そのため、 耐力板は、蓋の重量に負けない強度が必要である。 耐力板は、蓋に強く固定されていることが必要である。 耐力板は蓋に固定されるが、固定方法として蓋が金属であれば蓋と溶接することもできれば、ビス止め、溶着等各種の方法が考えられる。
【0022】
また 耐力板に開けられる蓋の内側にある脚部の挿通孔は、脚部との圧着力はなく、上下に移動する脚部の軌道を一定にする機能も備えている。さらに、後述するが、保持リングは適宜交換するため、 耐力板の高さは、保持リングの高さより 高いことが必要である。
【0023】
図5は、脚部と保持リングの圧着力及びストッパー部材での押圧により蓋を持ち上げた断面概略図であり、
図6は、
図5の状態から、蓋が付けられる外周部に蓋を置いたときの断面概略図である。
落し込み取手2の握持部21を引上げていくと、脚部22、保持リング4は上昇する。保持リング4は、蓋の内面102に圧接されるが、更に握持部を引上げていくと、脚部22は保持リング4内を摺動し、ストッパー部材23が、 耐力板3の裏表面302に押圧され、更に握持部21を引上げると、蓋1は、蓋1が付けられる外周部10から持ち上がる。蓋1が持ち上げられた状態が
図5である。
次に、蓋1を蓋の外周部10に置くと、蓋1の重さは蓋の外周部10にかかるが、保持リング4は、 耐力板3の上表面401に止められ、握持部21は蓋より所定の高さに保持することができる。作業が終了したときには、圧着力を超える力で握持部21を押し下げていき、前述と同様に握持部21が蓋1の表面101に置かれることとなる。
ストッパー部材23は、脚部22の下部に、ねじ山を付け、ナット、ワッシャー及びゆるみ止めで構成するのもよく、蓋の重量に耐える構造であればその構成は問わない。
【0024】
続いて、第3発明は、保持リングに、弾性ゴムを用いた第1発明又は第2発明のいずれかの落し込み取手保持装置である。
【0025】
本装置は、脚部22と保持リング4との圧着力も必要とする。しかし、圧着力が高すぎると、脚部22が保持リング4内を摺動させることが難しくなる。一方、圧着力が低い場合には、保持リング4が 耐力板3にて止められても、脚部22は下方に摺動してしまい、握持部21を蓋の表面から所定に高さに保持することができない。
【0026】
こうした機能を有する材料として、弾性ゴムがある。弾性ゴムとは、天然ゴムや合成ゴムのような有機高分子を主成分とする一連の弾性限界が高く弾性率の低い材料をいう。さらに、ゴムは、脚部が挿通することにより圧着力がより生じやすいためである。
【0027】
続いて、第4発明は、適宜保持リングを交換することができる第1発明から第3発明のいずれかの落し込み取手保持装置である。
【0028】
保持リング4は、脚部22が挿通され、握持部21の引上げ、押し下げに伴い、脚部22がその内部で摺動される。又、握持部21の引上げ、押し下げに伴い蓋1の内面102に圧接され、 耐力板3に止められ、各種の力が掛かり、変形されやすい。また、蓋1の重量によっては、圧着力を変えるためにも保持リングの材質を変える必要がある。
そこで、保持リングは、適宜交換しようとするものである。適宜としたのは、保持リングの変形、脚部との圧着力などによる材質の交換等、その時に応じて交換することにしたものである。
【0029】
図7の(1)、(2)、(3)は、保持リング4の交換するときの図である。(1)にて、脚部22からストッパー部材23を外し、(2)にて、握持部21を引き上げ、脚部22の下部を蓋1の内面102に圧接させ、更に握持部21を引上げれば保持リング4を脚部22から外すことができる。(3)にて、新しい保持リング4を 耐力板3の上表面302に脚部22と保持リング4に開けられた図示しないが孔との位置合わせをしながら握持部21を押し下げれば、新しい保持リング4に交換することができる。さらに、握持部21を押し下げてストッパー部材を再度固定する。尚、
図7では片方の脚部22しか図示していないが、脚部22は、
図2等のように一対である。
【0030】
続いて、第5発明は、保持リングの上表面及び/又は底表面に、補強フランジ又は補強連結プレートを付けた第1発明から第4発明のいずれかの落し込み取手保持装置である。
【0031】
落し込み取手2の付いた蓋1を持ち上げるには、先ず、握持部21を引き上げるが、保持リング4は蓋1の内面102に止められ、さらに 蓋の重量により、耐力板3の上表面301から押圧される。また、作業終了時には、握持部21を押し下げ、保持リング4内を脚部が摺動・下降し、耐力板3に押圧される。この押圧力は、蓋1の重量より大きく、保持リング4の上表面401、裏表面402には、この押圧力がかかり、変形しやすくなる。そこで、単位面積当たりの押圧力を軽減するため、保持リングの上表面401及び/又は底表面402に、保持リングの上表面401、底表面402より面積の広い、補強フランジ41又は補強連結プレート42を付け、保持リング4を保護するものである。
上表面401及び/又は底表面402とは、上表面401と底表面402の両方に、又は、上表面401か底表面402のいずれかの面という意味である。
フランジとは、円筒形あるいは部材からはみ出すように出っ張った部分の総称をいうが、ここでは保持リング4の上表面、底表面の面積より広く、押圧力に耐える材料でできたものをいい、補強フランジ41とする。又、補強連結プレート42とは、保持リング4の上表面401、底表面402の面積より広く、2つの挿通孔を開け、一対の脚部22を挿通し、一対の脚部を1枚のプレートで連結したプレートである。
【0032】
図8の(1)において、保持リング4の上表面401、底表面402に補強フランジ41が付けられているが、
図8の(2)に示すように、一対の脚部に連結する補強連結プレート42としてもよい。
図8の(2)においては、 耐力板3は、その左右が開口部となり、補強連結プレート42が一対の脚部22を連結している。
【0033】
続いて、第6発明は、耐力板の裏表面を押圧するストッパー部材の上部に、ストッパー部材用の、補強フランジ又は補強連結プレートを付けた第1発明から第5発明のいずれかの落し込み取手保持装置である。
【0034】
ストッパー部材23にも蓋の重量等の力が掛けられる。そこで、 耐力板3の裏表面302に押圧するストッパー部材23の上部にストッパー部材用の補強フランジ231又は補強連結プレート232を付けるものである。フランジ、補強連結プレートは、保持リングのそれと同じである。
なお、
図9の(1)に、ストッパー部材23の補強フランジ231が示され、同(2)に、補強連結プレート232を示す。
【0035】
続いて、第7発明は、第1発明から第6発明のいずれかの落し込み取手保持装置を蓋に直接装着することができる落し込み取手保持装置セットである。
【0036】
第1発明から第6発明の落し込み取手保持装置は、蓋に耐力板3を付け、蓋に脚部導入孔11を開け、落し込み取手を挿入し、保持リング4やストッパー部材23等の各部品を装着して組み立てるものである。この組立方法では、手間がかかるため、各部品が予め組み込まれた落し込み取手保持装置セットとして作製し、蓋やドアに直接組み込まれることが望ましい。これらの部品等が組み込まれたものを落し込み取手保持装置セットとする。
直接装着することができるとしたのは、各部品を蓋に装着して落し込み取手とするのではなく、落し込み取手保持装置セットを使用すれば、直接蓋に装着できることを表現したものである。
【0037】
図10は、落し込み取手保持装置セット5の断面概略図である。取付盤51に 耐力板3が固定されている。取付盤51に脚部が挿通する脚部挿通孔55を開け、落し込み取手2の脚部22を通し、続けて、保持リングの補強フランジ42、保持リング4、保持リングの補強フランジ42を通し、図示しない 耐力板3の脚部挿入孔を通した後、脚部最下部にストッパー部材23の補強フランジ231とストッパー部材23が固定されている。
蓋に装着するための接合孔52を開け、固定金具56を用い、落し込み取手保持装置セット5を蓋に装着するものである。
【0038】
続いて、第8発明は、落し込み取手の握持部が取付盤の表面と同じ又は表面より突出しないようにした第7発明の落し込み取手保持装置セットである。
【0039】
落し込み取手の握持部が、取付盤より突出している、すなわち蓋の表面より突出していると、握持部が破損したり、握持部に躓き、思わぬ怪我を起こすことになる。そこで、落し込み取手の握持部を取付盤の表面と同じ高さとするか、それ以下の高さにして、こうした事態を防ぐものである。握持部が突出しないようにするため、取付盤に凹状の溝を掘りそこに握持部を収納するようにする。この溝の付いた落し込み取手保持装置セットを、溝付落し込み取手保持装置セットとする。
【0040】
図11に溝付落し込み取手保持装置セット5の平面概略図を示す。取付盤51には、凹状に溝53が掘られ、左右には脚部挿通孔55が開けられ、握持部21が収納される。また、溝53には握持部21を握持し易くするため、取付盤の握持用孔54がやや深く掘られている。
【0041】
図12に溝付落し込み取手保持装置セットが蓋に装着された断面概略図を示す。蓋1と取付盤51は、接合孔52を通し、 蓋と取付盤との固定金具56により装着されている。他は
図11と同じである。
【0042】
落し込み取手保持装置、落し込み取手保持装置セット及び溝付落し込み取手保持装置セットは、落し込み取手保持装置としての機能があれば足り、上記の部品、装着方法及び図面に記載に限定するものではない。