(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5800404
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】加温給食用配膳車およびこれを用いた加温給食方法
(51)【国際特許分類】
A47B 31/02 20060101AFI20151008BHJP
A47B 31/00 20060101ALI20151008BHJP
A47J 39/02 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
A47B31/02 Z
A47B31/02 A
A47B31/02 D
A47B31/00 H
A47J39/02
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-239822(P2014-239822)
(22)【出願日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-233924(P2014-233924)
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】
蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−027517(JP,A)
【文献】
特開2014−040936(JP,A)
【文献】
米国特許第04285391(US,A)
【文献】
米国特許第03982584(US,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02662592(FR,A1)
【文献】
特開2005−328859(JP,A)
【文献】
特開2003−339454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00−31/06
A47J 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトレイ類が多段に配置されるトレイ収容室を有し、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部にカートを収容するカート収容室が形成され、カート収容室内を冷却する冷却手段および同室内を加温する加温手段を有する配膳車本体とを備えており、カート収容室は加温手段からの熱気が噴き出す熱気噴出口と熱気を吸い込む熱気吸入口並びに冷却手段から供給される冷気が噴き出す冷気噴出口と冷気を吸い込む冷気吸入口とカートを出し入れするカート出入口部とカート出入口部を開閉する本体扉を備えており、カートは、配膳車本体内の熱気噴出口および熱気吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部とトレイ類が出し入れされるトレイ出入口部を備えてなり、且つカート内が仕切壁で冷蔵室と温蔵室に区切られずに、一室構成とすることで冷気または熱気がカートのトレイ収容室内を循環するようになされている、加温給食用配膳車。
【請求項2】
配膳車本体の底部にカートが進入するカート進入用開口部が形成され且つ配膳車本体の底部に所要数のキャスターが取り付けられている、請求項2記載の加温給食用配膳車。
【請求項3】
配膳車本体に隣接して冷蔵庫が付設されている、請求項1または請求項2記載の加温給食用配膳車。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載の配膳車を用いた加温給食方法であって、調理済みの食品が入った一または複数の食器が載置されたトレイ類を配膳車本体内のカートのトレイ収容室内に多段に収容した後、加温手段からカートのトレイ収容室内全体に熱気を送入して、各トレイ類上の食器に収容された調理済み食品を加温した後、カートを配膳車本体から出して該カートだけを移動させて配膳を行うことを特徴とする、加温給食方法。
【請求項5】
加温手段による加温を80〜150℃の範囲で行うことを特徴とする、請求項4記載の加温給食方法。
【請求項6】
調理済み食品の加温前に該食品をカート内で冷蔵しておくことを特徴とする、請求項4または請求項5記載の加温給食方法。
【請求項7】
調理済み食品の加温後にカートを配膳車本体から出して該カートだけを移動させて配膳を行うにあたり、別途冷蔵しておいた冷菜類をトレイ類上に追加した後、配膳を行うことを特徴とする、請求項4〜請求項6のうちのいずれか一項記載の加温給食方法。
【請求項8】
請求項3記載の配膳車を用いた加温給食方法であって、別途冷蔵しておいた冷菜類が、配膳車本体に隣接して付設された冷蔵庫で保管されたものである、請求項7記載の加温給食方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホーム等において、給食の際に使用される加温給食用配膳車およびこれを用いた加温給食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種配膳車としては、多数のトレイを収容する配膳車本体と、配膳車本体を移動させるためのキャスター等の車輪を備え、前記配膳車本体内に、前後方向に伸び、上下方向に列設された多数の仕切壁を有するものが知られている。そして、該配膳車は、前記仕切壁を介して、その一側が温蔵室となされ、同他側が冷蔵室となされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−286347号公報
【特許文献2】特開2007−236861号公報
【特許文献3】特開2006−94902号公報
【特許文献4】特開2005−328962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した配膳車本体内に仕切壁を有する配膳車においては、上下に隣り合う仕切壁間にトレイを差し込む必要があると共に仕切壁をはさんで隣り合う冷蔵室と温蔵室間での断熱並びに空気の遮断を確実に行う必要があり、また冷蔵室と温蔵室の温度
差が大きいことから、温と冷との互いの熱損失の問題を考慮する必要があった。
【0005】
本発明の目的は、前述した従来の配膳車における問題を一挙に解消することができる、加温給食用配膳車およびこれを用いた加温給食方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、内部にトレイ類が多段に配置されるトレイ収容室を有し、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部にカートを収容するカート収容室が形成され、カート収容室内を冷却する冷却手段および同室内を加温する加温手段を有する配膳車本体とを備えており、カート収容室は加温手段からの熱気が噴き出す熱気噴出口と熱気を吸い込む熱気吸入口並びに冷却手段から供給される冷気が噴き出す冷気噴出口と冷気を吸い込む冷気吸入口とカートを出し入れするカート出入口部とカート出入口部を開閉する本体扉を備えており、カートは、配膳車本体内の熱気噴出口および熱気吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部とトレイ類が出し入れされるトレイ出入口部を備えてなり、且つカート内が仕切壁で冷蔵室と温蔵室に区切られずに一室構成とすることで
冷気または熱気がカートのトレイ収容室内を循環するようになされていることを特徴とする加温給食用配膳車である。
【0007】
なお、本発明において、「トレイ類」には、トレイの他、ホテルパンも含まれる。また、本発明の配膳車において、加温手段は、過熱蒸気装置の他、電熱ヒータ等の熱気を供給するものが全て含まれる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の加温給食用配膳車について、配膳車本体の底部に、カートが進入するカート進入用開口部が形成され
且つ配膳車本体の底部に所要数のキャスターが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載の加温給食用配膳車について、配膳車本体に隣接して冷蔵庫が付設されているものである。
【0010】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載の配膳車を用いた加温給食方法であって、調理済みの食品が入った一または複数の食器が載置されたトレイ類を配膳車本体内のカートのトレイ収容室内に多段に収容した後、加温手段からカートのトレイ収容室内全体に熱気を送入して、各トレイ類上の食器に収容された調理済み食品を加温した後、カートを配膳車本体から出して該カートだけを移動させて配膳を行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5記載の本発明は、前記請求項4記載の加温給食方法について、加温手段による加温を80〜150℃の範囲で行うことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の本発明は、前記請求項4または請求項5記載の加温給食方法について、調理済み食品の加温前に該食品をカート内で冷蔵しておくことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の本発明は、前記請求項4〜請求項6のうちのいずれか一項記載の加温給食方法について、調理済み食品の加温後にカートを配膳車本体から出して該カートだけを移動させて配膳を行うにあたり、別途冷蔵しておいた冷菜類をトレイ類上に追加した後、配膳を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の本発明は、前記請求項3記載の配膳車を用いた前記請求項7記載の加温給食方法について、別途冷蔵しておいた冷菜類が、配膳車本体に隣接して付設された冷蔵庫で保管されたものである。
【発明の効果】
【0015】
配膳車本体とこれに収容されるカートで構成された本発明に係る加温給食用配膳車によれば、配膳車本体にカートを収容した状態での加温後において、カートを配膳車本体から出して、該カートだけを移動して配膳を行うことができ、また配膳後においてもカートだけを配膳車本体内に戻せば良く、したがって配膳車本体を移動させる必要がないため、配膳作業を容易且つ効率的に行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る加温給食用配膳車は、そのカートのトレイ収容室が、仕切壁で冷蔵室と温蔵室に区切られずに一室構成なされているため、トレイ収容室の構造が簡略される上、上下に隣り合う仕切壁間にトレイを差し込む必要がなく、しかも仕切壁をはさんで隣り合う冷蔵室と温蔵室間での断熱並びに空気の遮断を確実に行うための技術的手段も不要となり、更に冷蔵室と温蔵室との温度差による温と冷との互いの熱損失の問題を考慮する必要もない等、種々の実用的利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る配膳車の斜視図であって、配膳車本体内にカートを収容した状態を示す。
【
図2】同実施形態に係る配膳車の斜視図であって、配膳車本体からカートを取り出した状態を示す。
【
図4】配膳車に冷蔵庫を隣接した実施形態を示す斜視図である。
【
図5】カートを収容した状態の配膳車本体の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0019】
先ず、
図1〜
図3および
図5に示すように、本発明の加温給食用配膳車の構造について説明すると、加温給食用配膳車1は、内部にトレイTが多段に配置されるトレイ収容室40を有し、底部に取り付けられたキャスター16で移動自在なカート3と、内部にカート3を収容するカート収容室4が形成され、カート収容室4内のカート3に冷気を送入する冷気設備5および過熱蒸気を送入する過熱蒸気装置6を有する配膳車本体2とを備えており、カート収容室4は過熱蒸気装置6から供給される過熱蒸気が噴き出す過熱蒸気噴出口19と過熱蒸気を吸い込む過熱蒸気吸入口21並びに冷気設備5から供給される冷気が噴き出す冷気噴出口22および冷気を吸い込む冷気吸入口23とカート3を出し入れするカート出入口部10とカート出入口部10を開閉する本体扉13を備えており、カート3は、配膳車本体2内の過熱蒸気噴出口19および過熱蒸気吸入口21並びに冷気噴出口22および冷気吸入口23のそれぞれと連通する連通開口部3eとトレイTが出し入れされるトレイ出入口部3fを備えてなり、且つカート3内のトレイ収容室40が仕切壁で冷蔵室と温蔵室に区切られずに一室構成なされているものである。
【0020】
配膳車本体2のカート収容室4は、上壁7と左右壁9・11と後壁12と前側に形成された前記カート出入口部10を備え、カート出入口部10の左側縁には前記本体扉13が取り付けられている。またカート収容室4の底部の外面四隅にはキャスター14と脚体30がそれぞれ取り付けられており、更に底部にはカート3が進入するカート進入用開口部17が形成されている。
【0021】
本実施形態に係る加温給食用配膳車1は、要するに、その配膳車本体2のカート収容室4内に、トレイTを多段に配置したカート3が収容され、カート出入口部10の本体扉13を閉めて、冷却設備5および過熱蒸気装置6により、カート3内の各トレイT上に載せられた食品を冷蔵したり、加温したりするものである。
【0022】
図3および
図5に示すように、カート3のトレイ収容室40は、より詳細には上下壁3a・3bと、左右壁3c・3dと、配膳車本体2の冷却設備5からの冷気および過熱蒸気装置6からの過熱蒸気が流入する前記連通開口部3eと、トレイTが出し入れされる前記トレイ出入口部3fと、トレイ出入口部3fおよび連通開口部3eを開閉する左右一対のカート扉14A・14Bを備えている。そして、左右壁3c・3dには、互いに同じ高さ位置にトレイTの縁部を受ける略逆L字状のトレイ受け部材55が固定されている。また、カート3は、前述した通り、その全体が配膳車本体2内に収容されて過熱蒸気供給・冷気供給が行われるものであるため、当該カート3は外気と遮断されることとなる。したがって、カート3の上下壁3a・3b、左右壁3c・3dおよびカート扉14A・14B自体には、高い断熱性が要求されず、軽薄化することができ、図示した通り、前記各部材3a・3b並びに14A・14Bが薄い板厚の簡易パネルで構成されている。
【0023】
そして、カート3のカート扉14A・14Bをそれぞれ左右壁3c・3dの外側に回動させることで、前記連通開口部3eとトレイ出入口部3fが開閉されるようになされている。
【0024】
図1〜
図3に示すように、配膳車本体2のカート収容室4の後壁12において、その左寄り部分には上下方向に前述した多数の過熱蒸気噴出口19が列設され、また最下部の過熱蒸気噴出口19から内方に外形が円形の前述した過熱蒸気吸込口21が形成されており、また前記過熱蒸気吸込口21の上方には多数の冷気噴出口22と多数の冷気吸入口23とが上下方向にそれぞれ列設されている。
【0025】
また、
図4は、前述した配膳車1における配膳車本体2に隣接して冷蔵庫71を付設した実施形態であって、冷蔵庫71は、上部71a内に冷却設備を有し、本体72のトレイ収容室73の両側壁74には左右同じ高さ位置に前後方向に伸びるトレイ受け部材55が固定され、そして、左右一対のトレイ受け部材55上のトレイに冷菜類として、ポテトサラダやプリンP、フルーツF等が多数載置されて冷蔵保存される。
【0026】
次に、本実施形態に係る加温給食用配膳車1を用いた加温給食方法について説明すると、
図1〜
図3および
図5に示すように、前記トレイT上には、例えば御飯を食べるための飯椀51と味噌汁を飲むための汁椀52と野菜類を食べるための皿53と肉類を食べるための小皿54が載置され、飯椀51には米飯Rが入れられ、汁椀52には豆腐TB等が入った味噌汁BEが入れられ、皿53にはブロッコリーBRやジャガイモP等の野菜が盛られ、小皿54にはハンバーグHBが載せられている。
【0027】
そして、前記トレイを前記配膳車本体2内のカート3内部のトレイ受け部材55上に載せた後、過熱蒸気供給装置6からカート3内全体に過熱蒸気を供給して、各トレイ上の食器に収容された前記食品を加温(再加熱)した後、カート3を配膳車本体2から出して該カート3だけを移動させて配膳を行うのである。
【0028】
また、前記過熱蒸気による加温は、80〜150℃の範囲で行う。また、前記過熱蒸気による調理済み食品の加温前に該食品をカート3内で冷蔵しておくことで、加温までの品質を維持する。
【0029】
そして、前記調理済み食品が載ったトレイTを多段に収容したカート3を配膳車本体1の本体扉13を開けて引き出し、各部屋の配膳位置まで移動させて配膳を行う。また、配膳にあたっては、配膳車1に隣接する冷蔵庫71から前記冷菜類としてのポテトサラダやプリンP、フルーツF等をトレイT上に追加して配膳するようにしても良い。更に、このような冷菜類の追加は、前述した配膳車1に隣接する冷蔵庫71を設けずに、別の場所に設置した通常の冷蔵庫から取り出して行うようにしても良い。
【0030】
図6は、本発明の他の実施形態に係るカート63であって、前述した実施形態の調理給食用配膳車1では、配膳車本体1内のカート3は、そのトレイ収容室40の上下方向にトレイTを一枚ずつ多段に収容する構成であったが、本実施形態では、トレイTを左右二枚収容する構造としたものである。
【0031】
すなわち、本実施形態のカート63は、左右壁64・65にトレイ受け部材55が固定され、またカート63内の左右方向中央部分における前端部と後端部に、互いに対向する支柱67が立設され、これら支柱67の両側にそれぞれトレイ受け部材55が前後方向に支持され、左右壁64・65のトレイ受け部材55と支柱67のトレイ受け部材55が互いに同じ高さ位置に設定されることで、トレイTが支持される構成となされている。また、このようなカート63が収容されるように、前記配膳車本体2を大きくすることは勿論である。そのため、本実施形態によれば、前記実施形態の二倍のトレイを収容することができ、その結果、二倍の配膳を実施することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る加温給食用配膳車および加温給食方法によれば、低コストで効率的に、しかも美味しい給食が実現されるため、老人ホームや病院等の施設において幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0033】
1 カート収容型配膳車
2 配膳車本体
3 カート
4 カート収容室
5 冷却設備
6 過熱蒸気装置
12 カート出入口
13 本体扉
14A・14B カート扉
19 過熱蒸気噴出口
21 過熱蒸気吸入口
22 冷気噴出口
23 冷気吸入口
40 トレイ収容室
【要約】
【課題】 経済的且つ効率的であって、しかも美味な給食を提供することができるようにする。
【解決手段】 内部にトレイ類が多段に配置され、底部に取り付けられたキャスター16で移動自在なカート3と、内部にカート3を収容するカート収容室40が形成され、カート収容室40内のカート3に冷気を送入する冷気手段5および過熱蒸気等を送入する加温手段6を有する配膳車本体2とを備えており、カート3内が仕切壁で冷蔵室と温蔵室に区切られずに、一室構成なされている。
【選択図】
図1