(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼促進剤が、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、硝酸塩、リン酸塩またはこれらの混合物を含む、請求項6記載の巻き紙。
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本明細書は、出願番号60/958,263(2007年7月3日出願)の仮出願に基づき、優先権を請求する。
【0002】
背景技術
タバコ産業には、喫煙物品の着火傾向、すなわち喫煙物品が火のついた喫煙物品と接触する表面に着火する傾向を低減する巻き紙を有するシガレットを製造するという継続した課題がある。燃えているシガレットが可燃性材料と接触することに起因する火災の報告がなされている。同産業には、シガレット、または他の喫煙物品が、接触して、家具、寝具などに用いられる表面および材料に着火する傾向を低減することに、当然の関心がある。
【0003】
したがって、喫煙物品、特にシガレットの望ましい特徴は、それらが自由燃焼状態で、可燃性材料に接して、落下または放置されたときに自己消火することである。
【0004】
タバコ産業では、シガレット巻き紙がシガレットの燻り特性に著しい影響を及ぼすことが長い間認識されてきた。この点において、当技術分野では、シガレットが自己消火する望ましい傾向を実現するために、あるいは言い換えるとシガレットの着火性を低減するために、シガレット巻き紙を変えるかまたは変性する種々の試みがなされてきた。
【0005】
従来技術には、フィルム形成溶液をシガレット紙に付着して、紙通気度(permeability)を低下させ、燃焼速度を制御することが記載されている。これらの材料をシガレットの長さに沿って不連続の領域に付着すると、シガレットは、基材を着火させる傾向の低減を示し、自己消火する傾向があることが示された。
【0006】
米国特許第5,878,753号(Peterson)および米国特許第5,820,998号(Hotalingら)(これらは参照により本明細書に組み入れられる)には、例えば、通気度(permeability)を低減するためにフィルム形成水溶液で処理された喫煙物品巻き紙が記載されている。米国特許第5,878,754号(Peterson)(これも参照により本明細書に組み入れられる)には、通気度を低減するために、非水溶液に溶解した溶剤可溶性ポリマーの非水溶液で処理された喫煙物品巻き紙が記載されている。
【0007】
本明細書は、着火性の低減した喫煙物品用の巻き紙のさらなる改良に関する。特に、本開示は、巻き紙に付着することができる改良された配合物に関する。
【0008】
発明の概要
本開示は、一般には、着火傾向の低減した喫煙物品用の巻き紙および巻き紙の製造方法に関する。例えば、一つの態様では、巻き紙は、紙ウェブから製造できる。例えば、巻き紙は、亜麻繊維、軟材繊維、硬材繊維およびこれらの混合物を含有することができる。巻き紙は、充填剤、例えば炭酸カルシウムおよび/または酸化マグネシウムを、約10〜約40重量%の量で含むこともできる。
【0009】
フィルム形成組成物を巻き紙に特定の位置で付着する。フィルム形成組成物は、巻き紙上に不連続の処理領域を形成する。不連続領域は未処理領域により隔てられる。不連続の処理領域は、巻き紙を組み込んだ喫煙物品の着火傾向を低減するように構成される。例えば、処理領域は、燃えさし(coal)が燃えて処理領域に進んだとき、喫煙物品の燻っている燃えさしへの酸素を低減することにより、着火傾向を低減することができる。
【0010】
本開示の一つの態様では、フィルム形成組成物は、それ自体が多糖であり得るフィルム形成材料と、これもフィルム形成材料と見なしうる多糖、例えばデンプンとの組み合わせを含む。フィルム形成材料とデンプンを組み合わせることが相乗的な結果をもたらすことが、予期せず見出された。特に、フィルム形成材料およびデンプンの両方を含有するフィルム形成組成物は、フィルム形成材料を単独で含有するフィルム形成組成物またはデンプンを単独で含有するフィルム形成組成物に比較して、喫煙物品の着火性を低減するのにより有効であることが見出された。
【0011】
本開示によるデンプンと組み合わせたフィルム形成材料は、具体的な用途に応じて変えることができる。用いることができるフィルム形成材料として、例えば、グアーゴム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース、セルロース誘導体、例えばエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど、アルギン酸塩、およびこれらの混合物が挙げられる。特定の一つの態様では、例えば、組成物の形成においてデンプンをアルギン酸塩と組み合わせることができる。
【0012】
フィルム形成組成物内の、デンプンおよびフィルム形成材料、例えばアルギン酸塩の相対量は、具体的な用途に応じて変えることができる。一つの態様では、例えば、フィルム形成材料は、フィルム形成組成物内に、巻き紙上に付着し乾燥された後、処理領域の約1〜約15重量%の量で存在することができる。一方、デンプンは、処理領域の約1〜約20重量%の量で処理領域に存在することができる。
【0013】
本開示の別の態様では、フィルム形成組成物は、特定の充填剤粒子と組み合わせたフィルム形成材料を含有する。充填剤粒子は、例えば、酸化マグネシウム、マイカ、カオリンクレイ、またはこれらの混合物を含むことができる。過去において、当業者は、フィルム形成材料を種々の粒状無機充填剤と組み合わせることを提案している。しかし、本発明者らは、上述の充填剤が、過去において用いられた粒状の無機充填剤に比べて、処理された巻き紙の着火性を低減するのに予期せぬほどさらに有効であることを見出した。
【0014】
上で挙げた充填剤粒子は、フィルム形成組成物(巻き紙に付着する)中に、組成物の約0.25〜約15重量%、例えば組成物の約0.5〜約5重量%の量で含有することができる。充填剤粒子の平均直径は、約0.0001〜約5ミクロン、例えば約0.1〜約3ミクロンでよい。
【0015】
充填剤粒子と組み合わせるフィルム形成材料は、任意の適切なフィルム形成材料、例えばアルギン酸塩でよい。別の態様では、充填剤粒子はデンプンと組み合わせることができる。さらに別の態様では、充填剤粒子は、アルギン酸塩およびデンプンの両方を含有するフィルム形成組成物と組み合わせることができる。
【0016】
単独でまたは充填剤粒子と組み合わせて用いることができる他のフィルム形成材料として、グアーゴム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロースおよびセルロース誘導体、例えばエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0017】
本開示にしたがって製造したフィルム形成組成物を、種々の方法により巻き紙に付着することができる。例えば、フレキソ印刷、ダイレクトグラビア印刷、およびオフセットグラビア印刷を用いて、例えば、組成物を紙に印刷することができる。
【0018】
一つの態様では、フィルム形成組成物により形成された不連続領域は、喫煙物品に沿って縦方向に配置された円周状バンドの形状である。このバンドは、約3mmより広い、例えば約4〜約10mmの幅を有することができる。バンドは、互いに約5〜約50mm、特に約10〜約40mmの距離をおいて配置することができる。
【0019】
巻き紙に付着するフィルム形成組成物の量は、具体的な用途および種々のファクタに依存する。例えば、フィルム形成組成物を、処理領域内の巻き紙の重量に基づいて、約1〜約30乾燥重量%の量で、特に約2〜約20乾燥重量%の量で巻き紙に付着することができる。
【0020】
巻き紙に付着すると、処理領域は、約40コレスタ未満、特に約30コレスタ未満、より特定すると約1〜約30コレスタの通気度を有することができる。巻き紙の初期通気度(initial permeability)は、約20〜約150コレスタまたはそれ以上とすることができる。例えば、一つの態様では、巻き紙の初期通気度は、約60コレスタより高く、例えば約80コレスタより高くてよい。別の態様では、巻き紙の初期通気度は、約60コレスタ未満、例えば約20〜約40コレスタでよい。
【0021】
巻き紙に付着する時に、フィルム形成組成物は、水溶液に含まれることができ、または非水溶液に含まれることができる。非水溶液に含まれる場合、例えばアルコールを含有できる。
【0022】
巻き紙は、具体的な用途に応じて、任意の適切な坪量を有することができる。特定の一つの態様では、例えば、巻き紙は約18〜約60gsmの坪量を有することができる。巻き紙を、実質的に巻き紙の表面領域全体を燃焼促進剤で処理することもできる。例えば、燃焼促進剤を、処理領域を形成する前または後に、巻き紙に付着することができる。燃焼促進剤を巻き紙に、約0.1〜約8乾燥重量%の量で付着することができる。燃焼促進剤は、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、硝酸塩、リン酸塩、またはこれらの混合物でよい。特定の一つの態様では、燃焼促進剤は、クエン酸塩、コハク酸塩、またはこれらの混合物である。
【0023】
以下に、本開示の他の特徴および概念をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
当業者にとってのその最良の形態を含む、本開示の完全かつ利用可能な開示を、添付図面への参照を含めて、本明細書の残りの部分でより具体的に述べる。
【
図1】本開示にしたがって作製した喫煙物品の斜視図である。
【
図3】後に続く実施例で得た結果のグラフ表示である。
【
図4】後に続く実施例で得た結果のグラフ表示である。
【
図5】後に続く実施例で得た結果のグラフ表示である。
【
図6】後に続く実施例で得た結果のグラフ表示である。
【
図7】後に続く実施例で得た結果のグラフ表示である。
【
図8】後に続く実施例で得た結果のグラフ表示である。
【0025】
本明細書および図面における参照符号の繰り返しての使用は、本開示の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図するものである。
【0026】
詳細な説明
ここで、本発明の態様、以下に述べる1つ以上の例を詳細に言及する。それぞれの例は、本発明の説明をのために与えられのであり、本発明の限定のためではない。実際、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明に種々の変更および改変をなし得ることは、当業者に明らかである。例えば、一つの態様の一端として例示または説明された特徴を、別の態様で用いて、さらに他の別の態様を得ることができる。したがって、本発明は、このような変更および改変を包含するものである。
【0027】
本開示を説明するために、本開示の態様および原理をシガレットに関して論ずる。しかし、これは、本開示の説明のためのものにすぎず、本開示をシガレットのみに限定することを意図するものではない。喫煙物品の如何なる様式も、本開示の範囲および趣旨内にある。
【0028】
本開示は、着火傾向制御特性が改良された喫煙物品および喫煙物品用巻き紙に関する。「着火傾向」は、燃えているシガレットが可燃性基材上に落下または放置された場合に、可燃性基材を着火する喫煙物品またはシガレットの傾向の尺度である。シガレットの着火傾向に対する試験は、NIST(米国立標準技術研究所、National Institute of Standards and Technology)により確立されており、一般に「モックアップ着火試験(Mock-Up Ignition Test)」と呼ばれる。この試験は、燻っているシガレットを可燃性試験ファブリック上に置き、そしてシガレットが、試験ファブリックに着火するか、試験ファブリックをそのファブリックの標準的なチャーライン(char line)を超えて燃焼させるか、ファブリックに着火することなくその全長が燃焼するか、または試験ファブリックに着火するかもしくはその全長が燃焼する前に自己消火するかのいずれかの傾向を記録することを含んでいる。
【0029】
着火傾向に対する別の試験は、「シガレット消火試験(Cigarette Extinction Test)」と呼ばれる。シガレット消火試験はASTM Test No. E2187-04である。シガレット消火試験では、火のついたシガレットを、1層または複数層の濾紙の上に置く。シガレットが自己消火すれば、そのシガレットは試験に合格する。しかし、シガレットが濾紙上でその端まで全て燃えた場合は、そのシガレットは不合格である。本発明にしたがって製造した喫煙物品を、これらの試験の一方または両方に合格するようにデザインすることができる。
【0030】
着火傾向の低下した喫煙物品シガレットを通常は、上述の試験に加えて、「フリーエア自己消火(free air self-extinguishment)」(FASE)も試験した。フリーエア消火試験の間、喫煙物品を、フリーエア中で、吹かさずにかつ隣接面に置かずに燃えさせておく。一部の用途では、フリーエア中で燃えているままにした時に自己消火しなくとも、喫煙物品がモックアップ着火試験またはシガレット消火試験に合格するのが望ましい。したがって、FASE率がより低いのが好ましい。特に有利なのは、本開示の原理にしたがって作製した喫煙物品は、低減された着火性を有することを意図された多数先行製品に比較して、より低いFASE率を有していても、隣接面に置いた時に自己消火するように構成することができる。
【0031】
一般に、着火傾向の低減された喫煙物品は、本開示にしたがって、不連続領域で巻き紙にフィルム形成組成物を付着することにより製造する。一つの態様では、フィルム形成組成物は、多糖と組み合わせたフィルム形成材料を含有する。フィルム形成材料は、例えば、アルギン酸塩、グアーゴム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース、セルロース誘導体、またはこれらの混合物を含む。多糖として、例えば、デンプンを含むことができる。デンプンは、天然デンプンまたは化工デンプンであることができる。本発明者らは、多糖およびフィルム形成材料を組み合わせる場合に、種々の相乗的利点および利益が得られることを見出した。
【0032】
過去において、本明細書の譲受人は、着火性の低減した喫煙物品に関する種々の特許を得ている。例えば、巻き紙上に処理された不連続領域を形成するフィルム形成組成物で処理された巻き紙が、米国特許第5,878,753号、第5,878,754号、第6,568,403号、第6,779,530号および第6,725,867号(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている。上述の特許には、処理された不連続領域の形成に用いることができる種々の異なったフィルム形成材料が開示されている。特に、上述の特許には、アルギン酸塩の使用が開示されており、そしてデンプンの使用が開示されている。しかし、本発明者らは、デンプンと、フィルム形成材料、例えばアルギン酸塩とを一緒に組み合わせた時に、種々の予期せぬ利益および利点が得られることを見出した。
【0033】
例えば、デンプンとアルギン酸塩のレオロジーは異なるが、この二つの成分のレオロジーは、相補的であることを見出した。デンプンおよびアルギン酸塩を組み合わせた時、例えば、得られる溶液は改良された印刷適性を有する。
【0034】
フィルム形成材料、例えばアルギン酸塩およびデンプンの組み合わせは、巻き紙上に、巻き紙を組み込んだ喫煙物品の着火性を低減する処理領域を形成する溶液の能力の種々の効率改善も与える。デンプンだけまたはアルギン酸塩だけを含有する類似の溶液に比べて、特に、重量ベースで、アルギン酸塩およびデンプン溶液は通常、巻き紙の通気度および拡散能(diffusion capacity)を低下させることがより有効である
【0035】
本開示による組成物に、任意のフィルム形成材料を用いることができるが、一つの態様では、フィルム形成材料は、アルギン酸塩を含む。一般に、アルギン酸塩は、褐藻類褐色海藻(Phaeophyceae brown seaweeds)中に、不溶性の混合カルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩として存在する酸性の多糖またはゴムの誘導体である。一般的に言えば、これらの誘導体は、D−マンヌロン酸およびL−グルロン酸の種々の割合で構成される高分子量多糖のカルシウム、ナトリウム、カリウム、および/またはマグネシウム塩である。アルギン酸の例となる塩または誘導体として、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、および/またはこれらの混合物を含む。
【0036】
本開示では、任意の適切な誘導体を含む、任意の適切なアルギン酸塩を用いることができる。フィルム形成組成物に含有されるアルギン酸塩は、例えば、比較的高い分子量を有することも、比較的低い分子量を有することもできる。例えば、一つの態様では、アルギン酸塩は、3重量%水溶液中に含有される場合、25℃で約500cP未満の粘度を有することができる。
【0037】
一つの態様では、例えば、KELGIN LBアルギン酸塩(ISP Corporation)を用いることができる。KELGIN LBアルギン酸塩は、低粘度で、純粋なアルギン酸ナトリウムである。
【0038】
本開示にしたがってアルギン酸塩と組み合わせた多糖は、具体的な用途に応じて変えることもできる。デンプンを使用する場合、デンプンは、例えば、変性されていてもよく、未変性でもよく、そして種々の植物から得ることができる。一つの態様では、例えば、酸化したコーンスターチを、アルギン酸塩と組み合わせることができる。市販されている酸化したコーンスターチの一例は、National Starch and Chemical Company(Bridgewater, NJ.)から市販されているFLOKOTE 64である。
【0039】
本開示にしたがってフィルム形成組成物に配合し巻き紙に付着する場合、フィルム形成材料および多糖は、水または任意の適切な適切な溶剤と組み合わせることができる。例えば、一つの態様では、フィルム形成組成物は、水性分散液または水溶液を含むことができる。あるいはまた、フィルム形成組成物は、巻き紙に付着する前に、非水溶液または分散液を含むことができる。例えば、アルコールを含有し、フィルム形成材料および多糖と組み合わせることができる。
【0040】
フィルム形成組成物内に含まれるフィルム形成材料および多糖の量は、種々のファクタに左右され得る。水溶液または分散液を配合する場合、例えば、フィルム形成材料、例えばアルギン酸塩は、フィルム形成組成物中に、溶液の約1〜約15重量%、例えば溶液の約1〜約10重量%の量で存在することができる。例えば、一つの態様では、アルギン酸塩は、溶液の約1〜約10重量%の量で存在することができる。一方、デンプンは、溶液の約3〜約25重量%、例えば溶液の約3〜約20重量%の量で存在することができる。例えば、一つの態様では、デンプンは、フィルム形成組成物中に溶液の約3〜約15重量%の量で存在することができる。
【0041】
上記百分率は、単に例示であることを理解するべきである。フィルム形成組成物を、フィルム形成材料および多糖を含有する巻き紙上に印刷する場合、組成物中にはフィルム形成材料および多糖を、組成物を印刷プロセスに適するようにするレオロジー特性を組成物が有するのに十分な量で含有することができる。例えば、フィルム形成材料および多糖の相対量は、組成物の粘度が約1500cps未満であるように、組成物中に含むことができる。
【0042】
明らかではないが、フィルム形成材料および多糖を一緒に組み合わせた場合に、両方の成分が、紙の表面上に、隣接面に放置された喫煙物品の消火によく適しているフィルムを形成すると考えられる。明らかではないが、このフィルム形成材料は巻き紙上へのフィルム形成により適しており、一方、多糖はより低い粘度を保持し、処理領域の特性を改良すると考えられる。一つの態様では、いったん巻き紙に付着し乾燥すれば、処理領域は、フィルム形成材料よりも多量の多糖を含有することができる。しかし、他の態様では、多糖およびフィルム形成材料を、等量で含有してもよく、フィルム形成材料をより多量に含有してもよい。一般に、例えば、処理領域は、多糖を処理領域の約1〜約20乾燥重量%含有することができ、一方、フィルム形成材料を処理領域の約1〜約15乾燥重量%の量で含有する。
【0043】
本開示の別の態様では、巻き紙に付着するフィルム形成組成物は、充填剤粒子と組み合わせたフィルム形成材料を含有する。特に、本発明者らは、特定の充填剤粒子が、巻き紙の着火性の改良において、過去に提案されている充填剤粒子と比較して予期せざる利点を与えることを見出した。特に、本開示のこの態様では、フィルム形成組成物は、酸化マグネシウム粒子、カオリンクレイ粒子、マイカ粒子、またはこれらの混合物を含有することができる。
【0044】
これまで、例えば米国特許第6,725,867号では、当業者は、粒状充填剤を、シガレット巻き紙上に処理領域を形成するのに用いる組成物に組み合わせることを提案している。この‘867特許では、例えば、粒状充填剤は、チョーク、クレイ、炭酸カルシウムまたは酸化チタンとして記載されている。しかし、本発明者らは、上記粒子が、以下の例に示すように、‘867特許に記載された充填剤と比較して、予期せざる優れた結果を示すことを見出した。
【0045】
酸化マグネシウム、マイカまたはカオリンクレイは、フィルム形成組成物中に、例えば、約15重量%未満、例えば約0.25〜約15重量%、特に約0.5〜約5重量%の量で存在することができる。多数の用途において、例えば粒子を組成物の約1〜約3重量%の量で含むことができる。
【0046】
充填剤粒子の寸法は、具体的な用途で用いる具体的な材料に応じて変えることができる。一般に、充填剤粒子の平均直径は約5ミクロン未満である。例えば、粒子の平均寸法は、約0.0001〜約5ミクロン、例えば約0.1〜約3ミクロンでよい。粒子の形状も変えることができる。例えば、一つの態様では、プレート状の形状を有するカオリンクレイ粒子を用いることができる。
【0047】
上述したように、一つの態様では、充填剤粒子は、酸化マグネシウム粒子を含む。理由は分からないが、他の多くの充填剤粒子に比べて、酸化マグネシウム粒子は優れた結果を与える。特に、酸化マグネシウム粒子は、処理された巻き紙を含有する喫煙物品の着火性を効率よく低減する能力を有する。
【0048】
一般に、任意の適切な酸化マグネシウム粒子を、フィルム形成組成物に用いることができる。酸化マグネシウム粒子は、例えば、多数の商業的供給源から市販されている。例えば、一つの態様では、Additek S.A.S.から、Magnesiun Oxide Super Leger Type 04の名称で市販されている酸化マグネシウム粒子を用いることができる。本開示での使用によく適した酸化マグネシウム粒子はまた、Scora S.A.から、Light Magnesiun Oxide "I"名称で入手できる。このLight Magnesiun Oxide "I"粒子は、例えば、98重量%より多くの酸化マグネシウムが、約0.15〜約0.2g/ccの嵩密度を有し、粒子の約98%が325メッシュのふるいを通過するような粒子サイズを有する。
【0049】
別の態様では、フィルム形成組成物内に含有される充填剤粒子は、マイカを含むことができる。マイカは、火成岩および変成岩によく見られるアルミニウムまたはカリウムの含水ケイ酸塩からなる鉱物群を含む。マイカは典型的には、極めて完全なバサルヘキ開(basal cleavage)を有する層状ケイ酸塩鉱物群に存在する。したがって、フィルム形成組成物に組み込む場合、マイカ粒子は典型的にはプレート状の形状である。マイカは高い絶縁耐力を有し、したがって熱耐性がある。
【0050】
マイカ粒子は、多数の供給源から市販されている。例えば、本開示での使用によく適したマイカ粒子を、Kaolins de Ploemeurから商品名MAICA MU M2/1で入手できる。MAICA MU M2/1は、例えば、粒子の約50%より多くが寸法約5ミクロン未満であるような粒子サイズを有する。
【0051】
本開示の別の態様では、フィルム形成組成物は、カオリンクレイ粒子を含有することができる。カオリンクレイは一般に、堆積物、土壌、熱水鉱床および堆積岩に存在する含水ケイ酸アルミニウム鉱物である。カオリンクレイ粒子は、層状のケイ酸塩鉱物として典型的に見られるような、プレート状の形状を有することができる。カオリンクレイ粒子は典型的には、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含有する。
【0052】
カオリンクレイ粒子は、多数の商業的供給源から市販されている。例えば、カオリンクレイ粒子は、Kaolins de Ploemeurから商品名7ASP20で入手できる。7ASP20カオリンクレイは、例えば、粒子の89%より多くが寸法5ミクロン未満、かつ粒子の約64%より多くが寸法約1ミクロン未満であるような粒子サイズを有する。
【0053】
上述した充填剤粒子は、フィルム形成組成物に含有される場合、任意の適切なフィルム形成材料と組み合わせることができる。例えば、一つの態様では、充填剤粒子を、上述したアルギン酸塩およびデンプンと組み合わせることができる。しかし、他の態様では、充填剤粒子を、アルギン酸塩単独またはデンプン単独と組み合わせることができる。
【0054】
充填剤粒子とと組み合わせることができる他のフィルム形成材料として、グアーゴム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース、セルロース誘導体、例えばエチルセルロース、メチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、これらの混合物、などが挙げられる。
【0055】
巻き紙に付着するに先立って、充填剤粒子を含有するフィルム形成組成物は、水性であることができる。あるいはまた、フィルム形成組成物は、非水性溶剤、例えばアルコールを含有することができる。
【0056】
アルギン酸塩およびデンプンを含有するフィルム形成組成物並びに/または充填剤粒子を含有するフィルム形成組成物を含む、本開示にしたがって製造したフィルム形成組成物を、巻き紙に不連続領域において付着して巻き紙上に処理領域を形成することができる。
【0057】
組成物を巻き紙に付着する方法は、変化させることができる。例えば、組成物を巻き紙上に、スプレー塗布、ブラシ塗布または印刷することができる。処理領域を形成するために、組成物を、シングルパスまたはマルチプルパス操作で付着することができる。例えば、着火傾向が低減された紙の上の領域を形成するために、組成物を巻き紙に連続的工程で付着することができる。一般に、マルチプルパスプロセスの間、約2〜約8パスの間に組成物を付着することにより、処理領域を形成することができる。
【0058】
本開示を記載し説明する助けとするために、一つの態様を
図1および2に一般的に図示する。着火性が改良された喫煙物品(シガレット)、全体10は、巻き紙14内にタバコカラム12を含む。物品10は、フィルター26を含むことができる。巻き紙14は、任意の様式の市販シガレット巻き紙を含むことができる。
【0059】
一般に、巻き紙は、例えば、亜麻、軟材または硬材から得られるセルロース繊維から製造することができる。紙の特性を要求通りに変えるために、セルロース繊維の種々の混合物を用いることができる。繊維を精製する度合いも変えることができる。
【0060】
ほとんどの用途では、巻き紙は充填剤を含有することになる。充填剤は、例えば、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、または任意の他の適切な材料であってよい。巻き紙に添加する充填剤の合計配合量は、約10〜約40重量%でよい。
【0061】
本開示にしたがって製造した喫煙物品用の巻き紙の通気度は、一般に約10〜約200コレスタ単位でよい。いくつかの用途では、通気度は、約15〜約55コレスタ単位でよい。しかし、本開示の一つの態様では、巻き紙の初期通気度は比較的高い。例えば、一つの態様では、巻き紙の通気度は、約60〜約110コレスタ単位であることができる。種々の態様では、例えば巻き紙の初期通気度は、約70コレスタ単位より高く、約80コレスタ単位より高く、約90コレスタ単位より高く、または約100コレスタ単位より高くすることができる。
【0062】
他の態様では、巻き紙の初期通気度は、約60コレスタ単位未満、例えば約50コレスタ単位未満、例えば約20〜約40コレスタ単位であることができる。
【0063】
シガレット巻き紙の坪量は通常、約18〜約60gsm、より特定すると約15〜約40gsmである。本開示による巻き紙はこれらの範囲のいずれかの中で製造することができる。
【0064】
一つの態様では、巻き紙を燃焼促進剤で処理してもよい。燃焼促進剤は、例えば、巻き紙の実質的に表面領域全体に、特に処理領域の間に間隔をおいた未処理領域を含む処理領域が位置する巻き紙の表面領域に付着することができる。燃焼促進剤は、燃焼速度を上げる任意の適切な物質を含むことができる。燃焼促進剤の例は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびこれらの混合物を含む。一つの態様では、燃焼促進剤はカルボン酸の塩を含むことができる。具体例には、例えば、燃焼促進剤として、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、硝酸塩、リン酸塩、およびこれらの混合物を含むことができる。1つの特定の用途では、例えば、燃焼促進剤として、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸スクシネート、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0065】
燃焼促進剤は、巻き紙の表面領域に、約0.3〜8乾燥重量%を超える、例えば約0.3〜約2.5乾燥重量%の量で比較的均一に付着することができる。フィルム形成組成物を用いて処理領域を巻き紙上に形成する前または後に、燃焼促進剤を巻き紙に付着することができる。
【0066】
燃焼促進剤は、種々の理由で巻き紙に付着することができる。例えば、燃焼促進剤は、特に巻き紙上の未処理領域において、巻き紙の燃焼特性をさらに制御するように、付着することができる。燃焼促進剤は、アッシュコンディショナー(ash conditioner)としても働くことができる。
【0067】
紙ウェブ14は、タバコカラム12に巻き付けたとき、外周表面16を画定する。外周表面16の不連続領域18を、本発明にしたがって製造したフィルム形成組成物、例えば燃焼促進剤とブレンドしたアルギン酸塩組成物で処理する。処理領域18は巻き紙14の内面に配置することができることも理解するべきである。言い換えると、処理領域18がタバコに隣接するように、巻き紙14をタバコカラム12の周りに巻くことができる。
【0068】
図1および2に示す態様において、処理領域18は、横方向の円周バンド24として定められる。バンド24は、シガレット10の長さに沿って縦方向に互いに離れて間隔をおいて配置される。バンド24は、
図2において影で示されている。しかし、
図1に示すように、形成済みのシガレットでは、処理領域は本質的に目に見えないことを理解するべきである。言い換えると、喫煙者は、巻き紙14が不連続領域18において処理されている、如何なる外見上のしるしも識別することができない。この点において、処理領域18は、本質的に未処理領域28と同じ平滑で平坦なテクスチャーを有する。
【0069】
バンド24の幅および間隔は、多数の変数、例えば巻き紙14の初期通気度、タバコカラム12の密度などに依存する。バンド24は、燃えさしを消火するのに十分な長さまたは期間にわたって、酸素が燃えている燃えさしに制限されるような幅を持つのが好ましい。言い換えると、バンド24が狭すぎると、燃えている燃えさしは自己消火する前にバンド24の端から端まで燃えるであろう。ほとんどの用途で、3mmの最小バンド幅が望ましい。例えば、バンド幅は、約4〜約10mmであることができる。
【0070】
バンド24の間の間隔も多くの変数のファクタである。間隔は、燃えさしが処理領域18まで燃え続ける前に、基材に着火するのに十分な長さの時間にわたってシガレットが燃焼するほど広くてはいけない。バンド24の間の間隔はまた、燃えている燃えさしの熱慣性、または燃えさしが自己消火することなく処理バンド24の端から端まで燃える能力に影響を与える。試験されたシガレットにおいて、出願人らは、バンド間隔5〜50mm、特に約10〜40mmが適切であることを見出した。しかし、バンド間隔は、任意の数の変数で決定される任意の適切な幅でよいことを理解するべきである。ほとんどの用途で、喫煙物品は、上述の間隔を用いる1〜約3のバンド含有することができる。
【0071】
処理領域18は、シガレット10の製造に対して改良された着火性を与えることが公知である範囲内の通気度を有する。シガレット10の燃えさしが処理領域18まで燃焼すると、燃えている燃えさしに利用できる酸素は、処理領域における巻き紙14の低下した通気度のために、実質的に低減する。酸素のこの低減により、好ましくは、シガレットは、基材と接触するとき、処理領域18において自己消火するようになる。通気度は、例えば、40ml/min/cm
2(コレスタ)未満、特に30ml/min/cm
2未満、通常5〜25ml/min/cm
2の範囲内であることができる。
【0072】
低減された着火性を示すために用いることができる巻き紙の別の特性は、拡散能である、一般に、本開示による処理領域18は、約0.4cm/s未満のように約0.5cm/s未満の拡散能を有することができる。例えば、拡散能は、約0〜約0.3cm/sであることができる。
【0073】
例えば巻き紙の拡散能は、例えば、SODIM Instrumentation Companyから販売されている二酸化炭素拡散能試験装置を用いて測定することができる。
【0074】
上で記載した拡散能の範囲は、特に、フィルム形成材料および多糖の組み合わせから製造された処理領域の特性決定に適用できる。本開示の他の態様では、例えばフィルム形成材料を充填剤粒子と組み合わせる場合、拡散能は、上述したよりも高い可能性がある。特に、フィルム形成組成物内に含有される場合、本開示の充填剤粒子は、この粒子が難燃剤であるので、紙の着火性を低減し得る。したがって、いくつかの態様では、処理領域は、0.5cm/sよりも高い拡散能を有することができる。
【0075】
紙に加える組成物の量は、用いる組成物の種類および望まれる結果を含む種々のファクタに依存することになる。ほとんどの用途では、バンドを形成し乾燥した後で、フィルム形成組成物をバンド範囲内の紙の乾燥重量の約1〜約30%、特にバンド範囲内の紙の乾燥重量の約2〜約20%の量で紙に加えることができる。常にそうとは限らないが、一般に、紙に付着する組成物の量は通常、紙の通気度が高いほど、多くなる。例えば、約30コレスタ単位未満の通気度を有する巻き紙に対して、組成物を約1〜約20重量%の量で紙に付着することができる。他方では、通気度が約60コレスタ単位より高い巻き紙に対して、組成物を約3〜約30重量%の量で紙に付着することができる。
【0076】
上述したように、組成物を巻き紙上に、スプレー塗布、ブラシ塗布、または印刷することができる。一般に、本発明では、任意の適切な印刷プロセスを用いることができる。出願人らは、適切な印刷技術にはグラビア印刷、またはフレキソ印刷が含まれることを見出した。
【0077】
本開示は、次の実施例を参照してよりよく理解されるであろう。
【0078】
実施例1
充填剤と組み合わせたセルロース繊維を含有する種々の巻き紙を製造した。この実施例では、充填剤は、2ミクロンの中粒子サイズの炭酸カルシウムを含む。炭酸カルシウム粒子を巻き紙中に30重量%の量で存在させた。巻き紙は、坪量27gsm、ベース通気度53コレスタを有する。
【0079】
種々のフィルム形成組成物を配合し、巻き紙上に印刷した。特に、次のフィルム形成組成物を配合した。
【0080】
1.アルギン酸塩1.5重量%を含有する水性組成物。
2.デンプン10重量%を含有する水性組成物。
3.デンプン11.5重量%を含有する水性組成物。
4.アルギン酸塩8重量%を含有する水性組成物。
5.アルギン酸塩11.5重量%を含有する水性組成物。
6.アルギン酸塩1.5重量%およびデンプン10重量%を含有する水性組成物。
【0081】
この実施例では、用いたアルギン酸塩は、International Specialty Produceから入手したKELGIN LB である。用いたデンプンは、National Starch and Chemical Companyから入手した商品名FLOKOTE 64で販売されている酸化デンプンである。
【0082】
上述の組成物を巻き紙に付着し、乾燥した後、処理領域内の通気度を測定し、未処理の巻き紙と比べた。結果を
図3に示す。図から分かるように、アルギン酸塩とデンプンとの組み合わせは、他の組成物に比較して、巻き紙の通気度の低減により有効である。いずれの場合も、同じ量の組成物を巻き紙に付着した。
【0083】
実施例2
この実施例では、アルギン酸ナトリウムおよび酸化デンプンの両方を含有する種々のフィルム形成組成物を配合した。具体的には、実施例1で記載したのと同じアルギン酸塩およびデンプンを用いた。
【0084】
1セットの試験では、フィルム形成組成物を、実施例1で記載した通気度53コレスタの巻き紙に付着した。第2セットの試験では、フィルム形成組成物を、ベース通気度80コレスタの巻き紙に付着した。
【0085】
具体的には、次のフィルム形成組成物を配合した。
【0086】
【表1】
【0087】
上のフィルム形成組成物を、実施例1で記載したのと同じプロセスを用いて、巻き紙に付着した。次の結果を得た。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
次に、試料番号3を含有する53コレスタのベース紙、および試料番号1を含有する80コレスタのベース紙を、タバコ充填剤のカラムに巻き付けた。得られた喫煙物品をASTM Test No. E2187-04およびFASE Testにしたがって試験した。次の結果を得た。
【0091】
【表4】
【0092】
上から分かるように、両方の喫煙物品は、隣接面に置いた場合、自己消火に極めて有効であった。具体的な利点のうち、両方の喫煙物品は、自由燃焼状態で放置された場合に、喫煙物品が自己消火する傾向の低いことを示す、低いFASE率も有した。
【0093】
実施例3
この実施例では、種々の充填剤粒子をアルギン酸ナトリウムフィルム形成組成物に加え、巻き紙に付着した。具体的には、カオリンクレイ粒子および酸化マグネシウム粒子を含有するフィルム形成組成物を製造した。次にこれらの配合物を、粒子を含有しないフィルム形成組成物、並びに炭酸カルシウム粒子およびタルク粒子を含有するフィルム形成組成物と比べた。
【0094】
具体的には、次の充填剤粒子を、9.5重量%のアルギン酸ナトリウムを含有する水溶液に加えた。この実施例において用いたアルギン酸ナトリウムは、International Specialty Productsから入手したKELGIN LBアルギン酸ナトリウムであった。
【0095】
【表5】
【0096】
上のフィルム形成組成物を上記実施例2で記載したのと同じ巻き紙に付着した。具体的には、フィルム形成組成物を、ベース通気度53コレスタの巻き紙およびベース通気度80コレスタの巻き紙上に印刷した。次に、フィルム形成組成物が紙の上で乾燥した後に、処理領域内の通気度を測定した。結果を
図4に示す。
【0097】
図4に示すように、カオリンクレイ粒子および酸化マグネシウム粒子は、充填剤粒子を含有しないフィルム形成組成物よりも、そして形成組成物タルクまたは炭酸カルシウムを含有するフィルムに比較して、巻き紙の通気度が、かなり大きな程度まで、予期せず低減した。
【0098】
実施例4
この実施例では、アルギン酸ナトリウム溶液に、同じ充填剤粒子を種々の量加えて、試験した。
【0099】
具体的には、カオリンクレイ粒子および酸化マグネシウム粒子を、9.5重量%アルギン酸ナトリウム組成物に加えた。用いたアルギン酸ナトリウムは、KELGIN LBアルギン酸ナトリウム(International Specialty Produceから入手)である。次のフィルム形成組成物を配合した。
【0100】
【表6】
【0101】
次に、上のフィルム形成組成物を、前述の実施例で記載した80コレスタの巻き紙に付着した。次に種々の試験を、組成物および巻き紙に対して行った。さらに、一部の巻き紙を喫煙物品にして、試験した。その結果を
図5〜8に示す。
【0102】
図5は、例えば、カオリンクレイ粒子を含有する試料番号1〜4について、処理領域内の通気度を示す。これらのフィルム形成組成物の粘度も試験し、グラフに載せた。図から分かるように、カオリンクレイ粒子の量が増えるにつれて、処理領域の通気度は低下する。
【0103】
図6を参照すると、フィルム形成組成物中の酸化マグネシウムの量の、処理領域の通気度への影響が分かる。図に示すように、酸化マグネシウムの量が増えるにつれて、処理領域の通気度は低下している。
図6において、フィルム形成組成物中の酸化マグネシウムの量は0から4%まで変化する。
【0104】
次に、種々の量の酸化マグネシウムを含有する巻き紙を用いて、ASTM Test No. E2187-04およびFASE Testにしたがって試験するシガレットを作製した。ASTM Testは、処理領域が、隣接面上に放置して置いたままにした時にシガレットを消火する能力を測定する。数が大きい方が一般に好ましい。一方、FASE Testは、自由に燃えたままにした時に、シガレットが自己消火するかどうかを評価する。通常、FASE結果は低い方が好ましいが、必須または重大ではない。多数の用途に対して、例えば、ASTM試験結果はFASE結果よりも重要である可能性がある。
【0105】
これらの試験の結果を
図7に示す。図から分かるように、酸化マグネシウムがフィルム形成組成物内に存在すると、ASTMランキングが良くなる。しかし、フィルム形成組成物内の酸化マグネシウムの量を増やすと、FASEランキングが上がる傾向がある。図から分かるように、酸化マグネシウム粒子が、9.5重量%のアルギン酸塩を含有するフィルム形成組成物中に含まれる場合、酸化マグネシウムが約3重量%未満の量で含まれる時に、より良いFASE結果が達成された。
【0106】
図8参照すると、充填剤粒子を含有しないアルギン酸塩組成物、5重量%の酸化マグネシウム粒子を含有するアルギン酸塩組成物、および10重量%の酸化マグネシウムを含有するアルギン酸塩組成物について、さらにFASEおよびASTMの結果を示す。図から分かるように、9.5%のアルギン酸塩を含有する制御配合物は、ASTM Testに不合格である。処理領域の通気度が高すぎると考えられる。
【0107】
実施例5
この実施例では、酸化マグネシウム粒子を酸化デンプン溶液に加え、ベース通気度60コレスタの巻き紙に付着した。
【0108】
具体的には、3重量%の酸化マグネシウム粒子を22重量%デンプン組成物に加えた。用いたデンプンは、National Starch and Chemical Companyから入手した商品名FLOKOTE 64で販売されている酸化デンプンである。
【0109】
次に溶液を、紙ウェブにバンド内で付着し、乾燥し、通気度を試験した。得られたバンド通気度は6コレスタであった。
【0110】
次に、処理した紙を、タバコ充填剤のカラムに巻き付けた。得られた喫煙物品をASTM Test No. E2187-04およびFASE Testにしたがって試験した。次の結果を得た。
【0111】
【表7】
【0112】
上から分かるように、この喫煙物品は、隣接面に置いた場合、自己消火に極めて有効だった。
【0113】
本発明を、その具体的な態様について詳細に説明したが、当業者は、前述の理解を得れば、これらの態様の代替、改変、および均等物を容易に思いつき得ることが明らかである。したがって、本発明の範囲は、請求項の範囲およびそのあらゆる均等物として評価される。