(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800551
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】抵抗膜方式タッチパネル
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20151008BHJP
G06F 3/045 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
G06F3/041 450
G06F3/045 G
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-83140(P2011-83140)
(22)【出願日】2011年4月4日
(65)【公開番号】特開2012-221006(P2012-221006A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】古川 正三
(72)【発明者】
【氏名】近藤 幸一
(72)【発明者】
【氏名】関沢 光洋
【審査官】
山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−053738(JP,A)
【文献】
特開2008−015885(JP,A)
【文献】
特開2011−013761(JP,A)
【文献】
特開2012−018446(JP,A)
【文献】
特開2008−158911(JP,A)
【文献】
特開2010−049463(JP,A)
【文献】
特表2004−503028(JP,A)
【文献】
特表2010−537275(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/114367(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0057897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの一面に導電膜を積層した第1電極基板および第2電極基板を、互いに導電膜形成面を対向させると共に、これら第1および第2電極基板を空隙を隔てた状態で互いに外枠部を介して貼り合わせた抵抗膜方式タッチパネルであって、
前記第1電極基板または前記第2電極基板の導電膜形成面側に、導電性インクによる印刷電極部と、該印刷電極部と組み合わせて形成された意匠性印刷部とを含む印刷配線部、を具備し、
前記意匠性印刷部は、厚さ方向において前記印刷電極部と同じ高さに形成され、更に、前記印刷電極部に隣接して形成されていることを特徴とする抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項2】
前記印刷電極部は、前記第1および第2電極基板の導電膜形成面側に、互いに直交方向に指向して形成された、対をなす電極部である、ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項3】
前記印刷電極部は、前記第1または第2電極基板に形成された電位印加用の電極部であり、
前記電極部が形成されていない他方の電極基板側には、電位の検出を行う電位検出手段を接続してなることを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項4】
前記意匠性印刷部は、前記第1電極基板または前記第2電極基板の印刷電極部に併設した擬似電極部を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項5】
前記印刷配線部の導電性インクは、銀含有の導電性インクであることを特徴とする請求項1−4に記載のうち、いずれか1項に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項6】
前記印刷配線部の導電性インクは、カーボン含有の導電性インクであることを特徴とする請求項1−4に記載のうち、いずれか1項に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性印刷によって意匠性が考慮され、表示体の前面板としての機能も有する、抵抗膜方式タッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話機など、様々な電子機器、情報端末機器の入力装置としてタッチパネルが広く用いられるようになっている。
タッチパネルは、パネル表面の所望位置を操作者がペンや指で触れることにより、表示装置に要求される二次元座標データを入力指示するものであり、特に、それ自体透明な構造を有するタッチパネルが、広く利用されている。
このようなタッチパネルには、タッチ位置の検出方式で分類すれば、光学式、超音波式、静電容量式、抵抗膜式等の構成を有するものが知られている。このうち、抵抗膜方式タッチパネルは、ITO(インジウムと錫の酸化物との合金)等の透明導電膜をもつ透明電極基板を上下に対向させ、空隙を介して外枠部分を固定して構成されるものである。
上下透明電極基板の一方には電位分布が印加され、もう一方の透明電極基板が電位検出の役割をなす。
このような上下透明電極基板のうちの上の透明電極基板を押下げることで、上下透明電極基板が接触した箇所の電位を検出することで押下げ位置を導く。上下の透明電極基板のそれぞれ電極面の外枠部分には導電インクによる印刷配線が施され、それら配線を介して透明電極基板に電位分布を印加し、あるいは電位を検出するのである。
【0003】
抵抗膜方式タッチパネルには、上下基板にそれぞれ二本の平行配線を配設して片方でX方向の電位分布を、もう片方でY方向の電位分布を交互に形成し、それぞれが電位分布印加と検出の役割を交互に行って位置検出を行う方式と、下部基板のみにXおよびY方向の電位分布を交互に形成し、上部基板のみに常に検出の役割をさせる方式とがある。
一般に前者が「4線式」、後者が「5線式」と称して区別されている。
【0004】
ところで、タッチパネルを用いた電子機器においては、近年はデザイン性も重要視されており、様々な試みがなされている。
例えば、特許文献1では、タッチパネルを筺体の表面に露出する際、筺体とタッチパネルとの段差が出てしまい、デザイン性が損なわれることから、フィルム部材を、入力パネルの主面とカバー部材との境界部の段差に倣うように接着することで、段差を緩和させて、段差に起因するデザイン性の低下を防止するとしている。
【0005】
また、
図4に示す抵抗膜方式タッチパネル1では、第1、第2電極基板2a、2bに、X方向、Y方向に、それぞれ一対の印刷配線3a、3bおよび4a、4bを配設し、さらに上部透明電極基板11b上に意匠性の印刷を施したカバーフィルム5を貼り合わせて、表示体の前面板としての機能を併せ持たせたものが製品化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−257494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1による手法では、段差が完全に解消されるわけではなく、またフィルム部材を、操作面である入力パネルの主面上に接着することから、操作面である入力パネルの主面への押圧操作抵抗、負荷が増すことは避けられず、操作性が低下する懸念がある。
また、後者の抵抗膜方式タッチパネル1では、意匠印刷を施したカバーフィルム5が追加されるために部材点数が増加する。しかも、そのカバーフィルム5は、押下げ時に撓ませるべき上部透明電極基板11b側に貼り合わせられるために、剛性が高くなって、必要操作力が増し、その結果操作性が低下するという問題がある。
本発明は、以上のような課題を改善するために提案されたものであって、意匠性が考慮され、表示パネルとしての機能を有するタッチパネルにおいて、部材点数を削減でき、しかも必要操作力が増すのを抑制して操作性の維持確保が可能な抵抗膜方式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1にかかる発明では、それぞれの一面に導電膜を積層した第1電極基板および第2電極基板を、互いに導電膜形成面を対向させると共に、これら第1および第2電極基板を空隙を隔てた状態で互いに外枠部を介して貼り合わせた抵抗膜方式タッチパネルであって、第1電極基板または第2電極基板の導電膜形成面側に、導電性インクによる印刷電極部と、該印刷電極部と組み合わせて形成された意匠性印刷部とを含む印刷配線部
を具備し、意匠性印刷部は、厚さ方向において印刷電極部と同じ高さに形成され、更に、印刷電極部に隣接して形成されていることを特徴とする。
【0009】
これにより、印刷配線部により、電極基板自体に接触点検出機能の他に意匠性をもたらすことができる。このため、意匠印刷を施したカバーフィルムは不要であり、部材点数が削減され、しかも、電極基板の操作面での剛性が高くなることもないため、必要操作力が増すようなことはない。
なお、この印刷電極部と意匠性印刷部とを組み合わせるとは、印刷電極部と意匠性印刷部とが、第1電極基板または第2電極基板において、一体不可分の意匠を構成し、統一化された意匠性をもたらすことができる組み合わせを意味することとする。
【0010】
また、請求項2にかかる発明では、印刷電極部は、第1および第2電極基板の導電膜形成面側に、互いに直交方向に指向して形成された、対をなす電極部である、ことを特徴とする。
【0011】
これにより、電極基板における印刷電極部に対し、意匠印刷を付加するようにしたので、好ましい意匠性がもたらされる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明では、印刷電極部は、第1または第2電極基板に形成された電位印加用の電極部であり、電極部が形成されていない他方の電極基板側には、電位の検出を行う電位検出手段を接続してなることを特徴とする。
【0013】
これにより、電位印加用の電極部に意匠印刷を組み合わせればこれら電極部を配設した電極基板に統一された好ましい意匠性がもたらされる。このような5線式の電極基板側への配線は、給電点として機能するための一点でよいことから、意匠印刷の中のロゴ文字などに代用させることが可能である。
【0014】
また、請求項4にかかる発明では、意匠性印刷部は、第1電極基板または第2電極基板の印刷電極部に併設した擬似電極部を含む、ことを特徴とする。
【0015】
これにより、第1または第2電極基板の印刷電極部に意匠性印刷としての擬似電極部を組み合わせれば、一層、統一化された意匠性をもたらすことができる。
【0016】
また、請求項5にかかる発明では、印刷配線部の導電性インクは、銀含有の導電性インクであることを特徴とする。
【0017】
これにより、銀材料の銀色を意匠デザインの一部として構成することができる。
【0018】
さらに請求項6にかかる発明では、印刷配線部の導電性インクは、カーボン含有の導電性インクであることを特徴とする。
【0019】
これにより、カーボン材料の黒色を意匠デザインの一部として構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、意匠性の確保は勿論、部材点数を削減でき、しかも必要操作力が増すのを防止して操作性の維持確保が可能な抵抗膜方式タッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明にかかる抵抗膜方式タッチパネルの一実施形態を示す模式的な分解斜視説明図である。
【
図2】
図1に示す抵抗膜方式タッチパネルの模式的な平面説明図である。
【
図3】
図1に示す抵抗膜方式タッチパネルの断面説明図である。
【
図4】従来の抵抗膜方式タッチパネルの一例を示す模式的な分解斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる抵抗膜方式タッチパネルについて、一実施形態を挙げ、添付図に基づいて、詳細に説明する。
図1、
図2に抵抗膜方式タッチパネル10を示す。
この抵抗膜方式タッチパネル10は、第1、第2電極基板11a、11bを空隙を介して互いに対向させると共に、これら第1、第2電極基板11a、11bの外枠部を固定して構成されている。
第1、第2電極基板11a、11bは、本実施形態では、それぞれ下部、上部透明電極基板11a、11bによって構成し、以降、下部、上部透明電極基板11a、11bとして説明していく。
【0023】
下部透明電極基板11aは、例えば方形状のガラス基板に、図中、X方向に対向する二辺に沿って、印刷によって帯パターン状に形成された薄膜透明電極12a、12bが設けられている。なお、下部透明電極基板11aは、ガラス基板の他に、光透過率が高く、成形精度に優れ、硬質である樹脂材料が好適である。樹脂材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)他、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。
【0024】
上部透明電極基板11bは、下部透明電極基板11aと同等の面積のカバーフィルム13(例えばポリエチレンテレフタレートPET)に、ITO(インジウムと錫の酸化物との合金)等の透明導電膜14を真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、印刷法等で成膜したもので構成される(
図3参照)。
そして、上記上部透明電極基板11bには、下部透明電極基板11aに印刷法によって薄膜透明電極12a、12bが形成された上面に対向する下面側に、後述する電極と共に、意匠性印刷を施してなる、印刷配線部15を形成している。
なお、薄膜透明電極12a、12bは、銀含有の導電性インク材料や、カーボン含有の導電性インク材料を用いて形成することができる。
【0025】
上記上部透明電極基板11bにおける印刷配線部15は、対向する下部透明電極基板11aの薄膜透明電極12a、12bが形成される二辺と直交する二辺に沿って(図中Y方向に)、印刷によって帯パターン状に形成された薄膜透明電極16a、16bと(
図2参照)、薄膜透明電極16a、16bを四方から取り囲むように、上部透明電極基板11bの四辺に沿って、意匠印刷を施した意匠性印刷部17とを具備する。さらに、薄膜透明電極16a、16bのうちの所定箇所に、検出信号を取り出す導電パターン18が形成されている。
なお、意匠性印刷部17は、上部透明電極基板11bに、薄膜透明電極16a、16bに直交するように印刷によって形成された、電極ではない、帯状パターンの擬似電極部19を含む。
また、薄膜透明電極16a、16bは、薄膜透明電極12a、12b同様、銀含有の導電性インク材料や、カーボン含有の導電性インク材料を用いて形成することができる。
また、擬似電極部19は、薄膜透明電極16a、16bの形成材料に合わせて印刷する。例えば、薄膜透明電極16a、16bに銀含有の導電性インク材料を用いた場合は、擬似電極部19を銀色に印刷して形成し、一方、薄膜透明電極16a、16bにカーボン含有の導電性インク材料を用いた場合は、擬似電極部19を黒色に印刷して形成して、意匠の統一化を図る。
【0026】
意匠性印刷部17は勿論、任意な色、模様、又はこれらの組合せで構成することができる。
さらには、適所に例えば商品名、メーカ名を示すロゴを付すことができる(
図2参照)。
【0027】
以上のように、本実施形態の抵抗膜方式タッチパネル10によれば、抵抗膜方式タッチパネル10に加えて、意匠印刷を施したカバー部材は不要となり、部材点数を減らすことができる。しかも、そのカバー部材が不要であるために、押下げ時に撓ませるべき上部基板側にカバー部材を貼り合わせることによって剛性が高くなり、必要操作力が増して操作性が低下するという問題もない。
また、上部透明電極基板11bにおける印刷配線部15において、薄膜透明電極12a、12bおよび薄膜透明電極16a、16bに使用される導電性インク材料に合わせて、擬似電極部19を印刷により形成したり、意匠印刷を付加するようにしたので、統一された好ましい意匠性がもたらされる。
【符号の説明】
【0028】
10 抵抗膜方式タッチパネル
11a 下部透明電極基板
11b 上部透明電極基板
12a、12b 薄膜透明電極
13 カバーフィルム
14 透明導電膜
15 印刷配線部
16a、16b 薄膜透明電極
17 意匠性印刷部
18 導電パターン
19 擬似電極部