(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800581
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】車載画像記録装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
G08G1/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-124978(P2011-124978)
(22)【出願日】2011年6月3日
(65)【公開番号】特開2012-252550(P2012-252550A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】山崎 知之
【審査官】
根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−298853(JP,A)
【文献】
特開2008−186394(JP,A)
【文献】
特開2001−359087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
G07C 5/00− 9/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両に乗車または下車する際の画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段が撮影した画像を記録する記録手段を備えた車載画像記録装置において、
車室内の気圧を計測する気圧計測手段と、
前記気圧計測手段が計測した前記車室内の気圧に基づいて前記車両のドアの開閉を示す信号を生成するドア開閉信号生成手段と、
前記車両の停止を検出する車両停止検出手段と、を備え、
前記ドア開閉信号生成手段が、前記車両停止検出手段が前記車両の停止を検出後に初めて前記気圧計測手段が計測した前記車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合には、前記車両のドアの開を示す信号を生成し、前記車両のドアの開を示す信号を生成後に前記車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合には、前記車両のドアの閉を示す信号を生成する、
ことを特徴とする車載画像記録装置。
【請求項2】
前記ドア開閉信号生成手段が生成したドアの開閉を示す信号に基づいて前記撮影手段が撮影した画像を前記記録手段に記録させる記録制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車載画像記録装置。
【請求項3】
前記ドア開閉信号生成手段が生成したドアの開閉を示す信号を前記撮影手段が撮影した画像に関連付けて前記記録手段に記録する記録制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車載画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に乗車または下車する際の画像を撮影して記録する車載画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前方や車室内などの画像を記録する車載画像記録装置としてのドライブレコーダは、自動車事故発生時の状況を分析する有効な手段として、近年車両に搭載されることが多くなっている。ドライブレコーダは、イグニッションONにて機器が起動し、常時車両運行時に録画(記録)をし続ける常時記録タイプと、加速度センサからの加速度が予め定めた所定の値を超えたら当該加速度が予め定めた所定の値を超えた前後の時間を録画するイベント記録タイプのものがある。
【0003】
また、特許文献1に記載の車両用運行記録評価装置では、イベントとして加速度に限らず、蛇行運転や走行速度の異常および車間距離の異常を検出した際に、カメラで撮影した画像を記録することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−199328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バスやタクシー車両において、乗客の乗車および下車時の画像を撮影して安全確認を行う際に、上述したドライブレコーダを用いて画像を記録することがある。その場合、イベント記録タイプの場合、車両のドアの開閉信号をドライブレコーダに取り込む必要があるため、ドライブレコーダの取り付けが煩雑になり時間がかかってしまうという問題があった。
【0006】
一方、常時記録タイプの場合も全ての記録画像から乗客の乗車および下車時の画像を検索するために非常に手間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、車両に乗車または下車する際の画像を容易に撮影して記録することができる車載画像記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、車両に搭載され、前記車両に乗車または下車する際の画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段が撮影した画像を記録する記録手段を備えた車載画像記録装置において、車室内の気圧を計測する気圧計測手段と、前記気圧計測手段が計測した前記車室内の気圧に基づいて前記車両のドアの開閉を示す信号を生成するドア開閉信号生成手段と、
前記車両の停止を検出する車両停止検出手段と、を備え、前記ドア開閉信号生成手段が、前記車両停止検出手段が前記車両の停止を検出後に初めて前記気圧計測手段が計測した前記車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合には、前記車両のドアの開を示す信号を生成し、前記車両のドアの開を示す信号を生成後に前記車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合には、前記車両のドアの閉を示す信号を生成する、ことを特徴とする車載画像記録装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ドア開閉信号生成手段が生成したドアの開閉を示す信号に基づいて前記撮影手段が撮影した画像を前記記録手段に記録させる記録制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ドア開閉信号生成手段が生成したドアの開閉を示す信号を前記撮影手段が撮影した画像に関連付けて前記記録手段に記録する記録制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、ドア開閉信号生成手段が、車室内の気圧を計測する気圧計測手段が計測した車室内の気圧に基づいて車両のドアの開閉を示す信号を生成するので、ドアの開閉を示す信号を車両が取り込む必要が無く車載画像記録装置を容易に設置することができる。
また、ドア開閉信号生成手段が、車両停止検出手段が車両の停止を検出後に初めて気圧計測手段が計測した車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合には、車両のドアの開を示す信号を生成し、車両のドアの開を示す信号を生成後に車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合には、車両のドアの閉を示す信号を生成するので、気圧が予め定めた所定の値以上変化したことを検出することで、車両のドアの開閉を判断することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、記録制御手段が、ドア開閉信号生成手段が生成したドアの開閉を示す信号に基づいて撮影手段が撮影した画像を記録手段に記録させるので、車室内の気圧の変化に基づいて、車両のドアを開閉したか否かを判断して、車両のドア開閉をトリガとして乗客等の乗降時の画像を記録手段に記録することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、記録制御手段が、ドア開閉信号生成手段が生成したドアの開閉を示す信号を撮影手段が撮影した画像に関連付けて記録手段に記録するので、常時記録タイプにおいて、ドアを開閉した場所を検索し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるドライブレコーダの要部ブロック図である。
【
図2】
図1に示されたドライブレコーダの動作を示したフローチャートである。
【
図4】バスの車内にカメラを取り付ける場合の例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる車載画像記録装置としてのドライブレコーダ1の要部ブロック図である。
図1に示すように、ドライブレコーダ1は、カメラ2と、インターフェース(I/F)3と、Gセンサ4と、I/F5と、速度センサ6と、速度I/F7と、CPU8と、メモリーカード9と、SDRAM10と、気圧センサ11と、を備えている。
【0018】
撮影手段としてのカメラ2は、例えば車室内の天井に設置されており、ドアから乗降する乗員の画像(動画像)を撮影することが可能となっている。カメラ2は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、赤外線カメラ等の各種カメラを用いることができる。カメラ2で撮影された画像信号はI/F3によって変換、圧縮処理等が行われ、CPU8に入力される。
【0019】
Gセンサ4は、3軸(X、Y、Z)方向の加速度・傾き・衝撃等を検出する3軸加速度センサで形成される。Gセンサ4は、検出した加速度を示す3軸方向の各加速度信号をI/F5を介してCPU8に入力される。
【0020】
速度センサ6は、例えば、車軸等と共に回動して磁石の回転に応じて車速パルス信号を出力する素子であり、車速パルス信号の周期から速度を算出することができる。速度センサ6から出力された車速パルス信号はI/F7を介してCPU8に入力される。
【0021】
ドア開閉信号生成手段、記録制御手段、車両停止検出手段としてのCPU8は、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置であり、CPU8のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROMや、各種のデータを格納するとともにCPU8の処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAMなどを内蔵する。
【0022】
CPU8は、内蔵するROMに格納されたプログラムによって、気圧センサ11で測定された車室内の気圧に基づいて、ドア開信号およびドア閉信号(ドア開閉信号)を生成し、それらの信号をトリガとして、SDRAM10に格納されている画像情報をメモリーカード9に記録する。
【0023】
記録手段としてのメモリーカード9は、不揮発性の半導体メモリとその半導体メモリの書き込みや読み出しの制御を行う回路等を有するカード状の記録媒体と、当該記録媒体が着脱自在に構成され、CPU8との間で書き込み情報や読み出し情報の入出力が行われるI/F部と、を備え、CPU8によってSDRAM10から読み出された画像情報が記録媒体に書き込まれる。
【0024】
SDRAM10は、CPU8に接続され、カメラ2によって撮影した画像情報が予め定められた所望の範囲にわたって時系列的に記憶される一時格納エリアとするためのシンクロナスDRAMである。
【0025】
気圧計測手段としての気圧センサ11は、車室内の気圧を測定するセンサであり、車両のドアの近傍に取り付けられ、所定間隔(例えば、0.5秒)で気圧を測定してCPU8に出力する。気圧センサ11は、例えば、シリコン等でできたチャンバーがコンデンサを形成し、気圧による電極間の距離の変化を静電容量の変化として検出する周知の静電容量式のセンサなどで構成すればよい。
【0026】
次に、上述した構成のドライブレコーダ1の動作を
図2のフローチャートを参照して説明する。
図2に示したフローチャートはCPU8で実行される。
【0027】
まず、ステップS1において、速度信号停止判定を行い、停止の場合はステップS2に進み、走行の場合は本ステップで待機する。速度信号停止判定とは、車両が停止状態にあるか否かを判定することであり、速度センサ6が出力する車速パルス信号から車両が停止状態にあると判断された場合は、ステップS2以降に進む。
【0028】
次に、ステップS2において、気圧センサ11が測定した気圧データを取得してステップS3に進む。
【0029】
次に、ステップS3において、車両ドア開判定を行い車両ドアが開いていると判断された場合はステップS4に進み、車両ドアが閉じていると判断された場合はステップS2に戻る。
【0030】
車両ドアの開判定にはステップS2で取得した気圧データに基づいて行う。本出願人が車室内のドアの開閉と気圧の変化の関係を調査したところ、
図3に示すグラフのような結果となった。
図3のグラフは、縦軸に時間、横軸に気圧値を示したものである。
図3のグラフに示すように、ドアの開閉時には気圧が大きく変動することが明らかとなった。したがって、所定間隔で測定している気圧の値が前後の測定値で所定の値以上の変化を検出することでドアの開判定を行い、ドア開信号を生成することができる。
【0031】
つまり、ステップS3では、車両の停止を検出後に、初めて気圧センサ11が計測した車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合にはドア開信号を生成している。
【0032】
次に、ステップS4において、画像記録処理を行ってステップS5に進む。本ステップでは、ステップS3で生成されたドア開信号をトリガとしてカメラ2が撮影した画像情報をSDRAM10から読み出してメモリーカード9に記録する。
【0033】
次に、ステップS5において、気圧センサ11が測定した気圧データを取得してステップS6に進む。
【0034】
次に、ステップS6において、車両ドア閉判定を行い車両ドアが閉じていると判断された場合は画像記録処理を終了し、車両ドアが開いている(ステップS3以降まだ閉じていない)と判断された場合はステップS5に戻る。車両ドアの閉判定にはステップS3と同様にステップS5で取得した気圧データに基づいて行う。
【0035】
つまり、ステップS6では、ドア開信号を生成後に車室内の気圧が予め定めた所定の値以上変化した場合にはドア閉信号を生成している。
【0036】
なお、ステップS3でドア開信号を生成するための気圧の変化量である所定の値と、ステップS6でドア閉信号を生成するための気圧の変化量である所定の値とは、勿論互いに異なる値であってもよい。
【0037】
上述したフローチャートでは、ドアが開の場合に画像の記録を開始し、ドアが閉の場合に画像の記録を終了していたが、ドアが開になってから所定期間を自動的に記録するようにしてもよいし、ドアが閉になる前の所定期間を自動的に記録するようにしてもよい。つまり、ドア開信号、ドア閉信号のいずれか一方のみで画像情報の記録を行ってもよい。
【0038】
また、気圧センサ11から所定間隔(例えば、0.5秒)で測定している気圧の値が前後の測定値で所定の値以上の変化を検出することでドアの開閉判定を行っているが、複数の気圧値を平均化して平均気圧値を求め、隣接する平均気圧値間の変化が所定の値以上の変化を検出することでドアの開閉判定を行ってもよい。例えば、気圧センサ11で0.1秒間隔で測定し、車両停車時にはそれを0.5秒毎(5回測定分)に平均化した平均気圧値を求め、前回の平均気圧値との差が所定の値以上変化した場合はドアの開閉判定とする。このようにすることで、突発的な気圧変化による誤動作を防止して、精度良くドアの開閉判定を行うことができる。
【0039】
また、画像情報をSDRAM10から読み出してメモリーカード9に記録せずに直接カメラ2が撮影した画像情報をメモリーカード9に記録するようにしてもよい。
【0040】
以上の実施形態によれば、ドライブレコーダ1において、気圧センサ11を備えて、CPU8が、車両停車後に所定間隔で測定した前後の気圧の変化が予め定めた所定の値以上であった場合は、ドア開信号を生成して、当該ドア開信号が生成された後の画像情報をSDRAM10から読み出してメモリーカード9に記録し、ドア開信号生成後に所定間隔で測定した前後の気圧の変化が予め定めた所定の値以上であった場合は、ドア閉信号を生成してメモリーカード9への画像情報の記録を停止するので、車室内の気圧の変化に基づいて、車両のドアを開閉したか否かを判断でき、乗客等の乗降時の画像をメモリーカード9に記録することができる。また、ドアの開閉を示す信号を車両が取り込む必要が無くドライブレコーダ1を容易に設置することができる。
【0041】
また、気圧センサ11が、車両のドアの近傍に取り付けられているので、窓が開いていることによる影響を少なくして、高確率でドアの開閉を検出することができる。
【0042】
なお、上述した実施形態では、イベント記録タイプのドライブレコーダで説明したが、常時記録タイプであっても、常時画像を記録しているメモリーカード等にドア開信号およびドア閉信号をフラグ等として記録し、当該フラグとフラグ発生時の画像とを関連付けておくことで、ドア開閉時の画像の検索が容易になる。
【0043】
また、バスに設置する場合は乗車、下車扉(前ドアまたは後ドア)付近にカメラ2を設置して、乗車、下車を撮影する場合がある。
図4にカメラ2の設置位置を示したバスの平面図を示す。この場合は、カメラ2の中やカメラ2付近に気圧センサ11を設けるとよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ドライブレコーダ(車載画像記録装置)
2 カメラ(撮影手段)
8 CPU(ドア開閉信号生成手段、記録制御手段、車両停止検出手段)
9 メモリーカード(記録手段)
11 気圧センサ(気圧計測手段)