(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転席と助手席との間に配設され、上面などに開口部を有する収納部としてのボックス本体及びこの収納部の開口部を開閉する蓋装置としての蓋体であるシャッタを備えた合成樹脂製の収納装置としてのコンソールボックスが知られている。そして、コンソールボックスは、シャッタを開口部に沿って摺動させることにより開口部を開閉するように構成されている。
【0003】
このようなコンソールボックスにおいて、シャッタは、平板状の蓋装置本体としてのシャッタ本体の両側に摺動軸がそれぞれ複数ずつ突設されて構成されており、これら摺動軸が収納部の開口部の両側縁部に沿って設けられたガイド溝部に挿入されることでシャッタが収納部に対して摺動可能となっている。
【0004】
そこで、各摺動軸を、硬質の合成樹脂などにより形成された中心部の周囲を軟質の合成樹脂などにより覆って構成し、ガイド溝部に摺動可能に嵌合させることで、摺動性及び剛性を調整する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、このような構成の場合、特に大型のコンソールボックスでは、摺動軸の数も多くなるため、摺動軸とガイド溝部との摺動抵抗が大きくなり、操作トルクが重くなる。一方で、この操作トルクを軽減するためには、摺動軸とガイド溝部との嵌め合いの間隙を広くするしかなく、このように広くした場合にはシャッタの摺動の際にがたつきによる雑音が発生したり、耐荷重性が低下したりするおそれがある。
【0006】
また、摺動軸を中空状の弾性構造とすることにより、ガイド溝部の湾曲した部分でも摺動軸の弾性作用によりシャッタ全体の摺動性を損なわないようにした構成も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
しかしながら、このような構成の場合、通常10mm以下に設定されることが多いガイド溝部内を摺動する摺動軸に弾性を付加するためには、極めて細い成形型の構造によって全ての摺動軸を中空状としなければならない。そして、そのような微細な型構造の場合、極めて高温かつ高圧の溶融樹脂を繰り返し射出する環境下にあっては耐久性を確保することが容易でなく、頻繁なメンテナンスなどに起因する生産性の低下及び管理費の向上が懸念される。また、成形型の耐久性を向上させようとすると、様々な補強が必要となり、補強のために別途シャフトなどを取り付けることも合わせて製造コストを抑制することが容易でない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の蓋装置及び収納装置の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図9において、10は収納装置としてのコンソールボックスで、このコンソールボックス10は、図示しない車両の内装部材であり、この車両の座席の側方、例えば運転席と助手席との間に位置して配置されるいわゆるセンターコンソールを構成している。なお、以下、前後方向(矢印A及び矢印Bに示す)、上下方向、及び、両側方向などの方向は、車両の直進状態を基準として説明する。
【0022】
そして、このコンソールボックス10は、車体のフロアに固定される収納装置本体としての収納部であるボックス本体11と、このボックス本体11に開閉可能に取り付けられる蓋装置としての蓋体であるシャッタ12とを備えている。
【0023】
ボックス本体11は、コンソール本体とも呼ばれるもので、例えば合成樹脂により形成した部材を組み合わせるなどして形成され、前後方向に細長く、上面に、前後方向に長手状の四角形状である開口部14が形成されているとともに、この開口部14の両側縁部から後部に亘って、シャッタ12を摺動(スライド)可能に保持するレールとしてのガイド溝部15(一方のみ図示)が形成されている。さらに、このボックス本体11の開口部14の前部には、シャッタ12を係止固定可能な受部としての図示しないロック受部が形成されている。
【0024】
各ガイド溝部15は、それぞれ中央側すなわち開口部14側に向かって開口する断面略コの字状レールであり、ボックス本体11の上側の開口部14の長辺の全体に亘って上縁部に沿って前後方向に直線状に位置する水平部21と、この水平部21の後部から下方へと滑らかに湾曲する一の湾曲部である上側湾曲部22と、この上側湾曲部22の下端から下方へと連続する下降部23と、この下降部23の下部から前方へと滑らかに湾曲する他の湾曲部である下側湾曲部24とを一体に備え、側面視で「つ」字状となっている。そして、各ガイド溝部15は、水平部21、上側湾曲部22、下降部23及び下側湾曲部24に亘って連続する一方及び他方の壁部25,26を有している。
【0025】
一方、シャッタ12は、リッド部、あるいはリッド体などとも呼ばれ、
図1ないし
図3に示すように、例えばABS樹脂などの硬質でかつ弾性変形可能な部材すなわち合成樹脂により形成されたインナ部材27と、例えばエラストマなどの軟質でかつ弾性変形可能な部材すなわち合成樹脂によりインナ部材27と一体にインサート成形されたアウタ部材28とにより構成された樹脂成形部品(二色成形部品)であり、全体として平板状で主としてシャッタ12の意匠面をなす蓋装置本体としての蓋体本体であるシャッタ本体31と、このシャッタ本体31から突設されガイド溝部15内に挿入されて外部に露出しない複数の挿入軸32と、シャッタ本体31に設けられた係止部としての尾錠部であるロック部33とを有している。そして、このシャッタ12は、平面上に載置した状態で、移動方向である前後方向を長手方向とし、前後方向については柔軟かつ弾性的に変形するとともに、両側方向には剛性を有して変形しない略板状の構造をなしている。
【0026】
インナ部材27は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、最前部に位置する第1芯材部としてのインナフロントセル部35と、このインナフロントセル部35の後部に互いに平行に複数配置された第2芯材部としてのインナリアセル部36とを備えている。
【0027】
インナフロントセル部35は、幅方向に長手状の直方体状に形成された第1芯材部本体としてのインナフロントセル部本体35aと、このインナフロントセル部本体35aの両側から突出する円柱状の支持軸部35bと、インナフロントセル部本体35aに形成されたインナロック部35cとを一体に有している。
【0028】
インナフロントセル部本体35aは、前後方向及び幅方向の寸法に対して厚み寸法が小さい、扁平な形状となっている。
【0029】
また、支持軸部35bは、例えばインナフロントセル部本体35aの両側の前端、後端及びそれらの中間の位置にそれぞれ配置されている。
【0030】
また、インナロック部35cは、中央部にインナ開口部35dを有しており、このインナ開口部35dの両側及び後部を囲んで、インナフロントセル部本体35aから上方にインナ取手部35eが突出して構成されている。
【0031】
また、各インナリアセル部36は、幅方向に長手状の細長い直方体状に形成された第2芯材部本体としてのインナリアセル部本体36aと、このインナリアセル部本体36aの両側から突出する円柱状の軸部36bとを一体に有している。
【0032】
インナリアセル部本体36aは、インナフロントセル部本体35aと略等しい幅寸法及び厚み寸法に形成され、かつ、インナフロントセル部本体35aよりも前後方向の寸法が小さい、拍子木状に形成されている。
【0033】
また、軸部36bは、インナフロントセル部35の支持軸部35bと同様の径寸法及び長さ寸法(突出寸法)に形成されている。
【0034】
一方、アウタ部材28は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、最前部に位置する第1被覆部としてのアウタフロントセル部38と、このアウタフロントセル部38の後部に配置された第2被覆部としての複数のアウタリアセル部39とを備えている。
【0035】
アウタフロントセル部38は、幅方向に長手状の直方体状に形成された第1被覆部本体としてのアウタフロントセル部本体38aと、このアウタフロントセル部本体38aの両側から突出する円筒状の挿通筒部38bと、アウタフロントセル部本体38aに形成されたアウタロック部38cとを一体に有している。
【0036】
アウタフロントセル部本体38aは、インナ部材27のインナフロントセル部本体35aの上方全体を覆う部分であり、前後方向及び幅方向の寸法に対して厚み寸法が小さい、扁平な形状となっている。
【0037】
また、挿通筒部38bは、インナ部材27の支持軸部35bが挿通されて突出する部分、換言すればインナ部材27の支持軸部35bの基端側の外周を覆う部分であり、例えばアウタフロントセル部本体38aの両側の前端、後端及びそれらの中間の位置にそれぞれ配置されている。
【0038】
また、アウタロック部38cは、インナ部材27のインナロック部35cの上方全体を覆う部分であり、中央部にインナ開口部35dと連通するアウタ開口部38dを有しており、このアウタ開口部38dの両側及び後部を囲んで、アウタフロントセル部本体38aから上方に、インナ取手部35eを覆うアウタ取手部38eが突出して構成されている。
【0039】
また、各アウタリアセル部39は、幅方向に長手状に形成された第2被覆部本体としての複数のアウタリアセル部本体39aと、これらアウタリアセル部本体39aのそれぞれの両側の前側寄りに形成された開口39bと、アウタリアセル部本体39aのそれぞれの両側の後側寄りに突出する円筒状の挿通部39cとを一体に有している。
【0040】
各アウタリアセル部本体39aは、それぞれインナ部材27の例えば前後2つずつのインナリアセル部本体36aの上方を一体に覆うものであり、短冊状に形成されている。そして、互いに前後に隣接するアウタリアセル部本体39a,39aの上部は、薄板状のヒンジ部39dによって互いに連結されている。また、各アウタリアセル部本体39aの前後方向の中央部、すなわちインナリアセル部本体36a,36a間の上部は、ヒンジ部39dと同様に薄肉状に形成された変形可能部39eとなっている。なお、最前部に位置するアウタリアセル部本体39aは、ヒンジ部39dによってアウタフロントセル部38のアウタフロントセル部本体38aの後側上部と連結されている。また、ヒンジ部39d及び変形可能部39eは、アウタリアセル部本体39aと同じ材質で一体に形成されるものであるが、アウタリアセル部本体39aよりも容易に変形し、ガイド溝部15に沿って柔軟に屈曲変形可能となっている。
【0041】
また、開口39bは、インナ部材27の軸部36bが挿通されてその略全体が突出する部分である。
【0042】
さらに、挿通部39cは、インナ部材27の軸部36bが挿通されて突出する部分、換言すればインナ部材27の軸部36bの基端側の外周を覆う部分であり、挿通筒部38bと略等しい外径寸法に形成されている。
【0043】
そして、シャッタ12は、インナ部材27のインナフロントセル部35のインナフロントセル部本体35a及びインナリアセル部36のインナリアセル部本体36aがアウタ部材28のアウタフロントセル部38のアウタフロントセル部本体38a及びアウタリアセル部39のアウタリアセル部本体39aにより覆われてシャッタ本体31が構成され、インナ部材27の支持軸部35b及び軸部36bとアウタ部材28の挿通筒部38b、開口39b及び挿通部39cとによって挿入軸32が構成され、インナ部材27のインナフロントセル部35のインナロック部35cとアウタ部材28のアウタフロントセル部38のアウタロック部38cとによってロック部33が構成されている。したがって、シャッタ本体31は、インナフロントセル部本体35a及びアウタフロントセル部本体38aにより構成されたフロントセル部41と、2つのインナリアセル部本体36a及び1つのアウタリアセル部本体39aによりそれぞれ構成された複数のリアセル部42とを有し、これらセル部41,42が各ヒンジ部39dによって前後方向に柔軟かつ弾性的に変形可能となっている。また、挿入軸32には、インナ部材27とアウタ部材28とにより構成されフロントセル部41の両側に位置する複数の支持軸43と、インナ部材27とアウタ部材28とにより構成され各リアセル部42の両側に位置する複数の第1の軸44と、インナ部材27により構成され各リアセル部42の両側に位置する複数の第2の軸45とが設定されている。すなわち、リアセル部42のそれぞれの両側には、第2の軸45及び第1の軸44が前後に位置している。換言すれば、1つのリアセル部42につき、挿入軸32が片側2つずつ、計4つ配置されている。
【0044】
ここで、各支持軸43は、アウタ部材28の挿通筒部38b及びこの挿通筒部38bから突出するインナ部材27の支持軸部35bによって構成されており、挿通筒部38bの外周がガイド溝部15の一方及び他方の壁部25,26間に摺接する状態、換言すれば、挿通筒部38bの外周が一方及び他方の壁部25,26間に挟持された構成となっている。また、各第1の軸44は、アウタ部材28の挿通部39c及びこの挿通部39cから突出するインナ部材27の軸部36bによって構成されており、挿通部39cの外周がガイド溝部15の一方及び他方の壁部25,26間に摺接する状態、換言すれば、挿通部39cの外周が一方及び他方の壁部25,26間に挟持された構成となっている(
図4)。
【0045】
このため、各支持軸43及び各第1の軸44は、シャッタ12がボックス本体11に対して摺動中及び静止中のいずれの状態でもガイド溝部15に接触し、シャッタ本体31をガイド溝部15に常時支持している。そして、これら各支持軸43及び各第1の軸44のガイド溝部15に接触する部分である基端側の外周部分は、ガイド溝部15に対して接触しない中心部分(軸部35b,36b)、換言すれば第2の軸45よりも軟質の部材で形成されている。
【0046】
また、各第2の軸45は、アウタ部材28の開口39bから突出するインナ部材27の軸部36bによって構成されており、本実施の形態では、各第1の軸44よりも細く(径寸法が小さく)形成され、その外周がガイド溝部15の特に水平部21の一方及び他方の壁部25,26に対して所定の間隙(クリアランス)Cを介して離間された位置となっている。すなわち、各第2の軸45は、シャッタ12がボックス本体11に対して摺動中及び静止中のいずれの状態でもガイド溝部15に対しては接触せず(
図5)、シャッタ12に対して荷重Fが加わったときにシャッタ本体31の弾性変形により一方の壁部25と接触してシャッタ本体31をガイド溝部15に支持するように構成されている(
図7)。したがって、第2の軸45は、シャッタ12のシャッタ本体31の摺動時及び静止時、第1の軸44よりもガイド溝部15への接触面積が小さく、本実施の形態では接触面積が実質的に0となっている。なお、間隙Cは、シャッタ12がボックス本体11に対して摺動したときに雑音が発生しないように設定され、例えば本実施の形態では0.8mm程度となっている。さらに、各第2の軸45とガイド溝部15の一方の壁部25との水平方向の重なり寸法、すなわちラップ代は、所定の荷重、例えば50kg程度の荷重Fが加わった際に各第2の軸45に変形が生じたときでもガイド溝部15から脱落しないように設定され、例えば本実施の形態では5.5mmm程度となっている。
【0047】
そして、各第1の軸44と各第2の軸45とは、本実施の形態では、前後方向に沿って1つずつ交互に配置、すなわち、互いに1つ置きに配置されている。換言すれば、インナ部材27の軸部36bに対して、アウタ部材28の挿通部39cが1本置きに形成されている。すなわち、各第1の軸44は、第2の軸45を形成する軸部36bの基端側を、1本置きにこの軸部36bを構成する部材(インナ部材27を構成する部材)よりも軟質の部材(アウタ部材28を構成する部材)により覆うことで形成されている。なお、挿入軸32中の第1の軸44の割合が高いほど(第2の軸45の割合が低いほど)シャッタ12の摺動抵抗が高くなり、操作トルクが相対的に高まって操作性が相対的に低下する一方で、ガイド溝部15の形状への追従性が相対的に高まるので、挿入軸32中の第1の軸44と第2の軸45との割合は、それらのバランスを考慮して設定することが好ましい。
【0048】
また、ロック部33は、乗員などによりシャッタ12を開閉操作する際の操作部であり、インナ開口部35d及びアウタ開口部38dの連通により形成されたロック開口部51と、インナロック部35cのインナ取手部35e及びこのインナ取手部35eを覆うアウタロック部38cのアウタ取手部38eにより構成されてロック開口部51の両側及び後側の周囲に位置する取手部52とを備えている。そして、ロック開口部51には、インナ部材27及びアウタ部材28とは別体で形成された係合部材としてのロックボタン53が進退可能に取り付けられている。このロックボタン53は、下部の前端側がロック受部に係合することによりシャッタ12をボックス本体11に対して開口部14を閉塞した位置で係止保持するものであり、付勢手段としてのコイルスプリングあるいはトーションスプリングなどの図示しない弾性体によりロック受部との係合を維持する方向に向けて付勢されている。
【0049】
そして、コンソールボックス10は、シャッタ12の両側の挿入軸32をボックス本体11の両側のガイド溝部15に挿入することで、シャッタ12がボックス本体11に移動可能に組み合わされて構成される。
【0050】
図9に示すように、コンソールボックス10は、シャッタ12が開口部14を完全に閉塞した位置、すなわち全閉位置でロックボタン53がロック受部と係合し、ボックス本体11に対して摺動しないように固定されている。この状態で、シャッタ12の後端部はガイド溝部15の上側湾曲部22に沿って下方へと湾曲している。
【0051】
そして、乗員などがロックボタン53を取手部52側へと押し込むようにロックボタン53と取手部52とを掴むことにより、弾性体の付勢に抗してロックボタン53が回動することで、ロックボタン53とロック受部との係合が外れ、シャッタ12がボックス本体11に対して前後方向に摺動可能となる。
【0052】
この乗員などが取手部52を掴んで前後方向へと外力を加えることでシャッタ12を摺動させる。後方へと摺動したシャッタ12は、後部が上側湾曲部22及び下降部23と順次送られ、開口部14を完全に開いた位置、すなわち全開位置で、シャッタ12の後端部は下側湾曲部24に沿って前方へと湾曲して巻き込まれる。
【0053】
そして、シャッタ12の摺動の際には、
図4及び
図8(a)に示すように、各支持軸43及び各第1の軸44がガイド溝部15の一方及び他方の壁部25,26に接触してシャッタ本体31をガイド溝部15に支持することにより接触抵抗(摺動抵抗)を生じさせる。一方で、
図5及び
図8(a)に示すように、各第2の軸45はガイド溝部15の水平部21の一方及び他方の壁部25,26に対して接触せず、接触抵抗(摺動抵抗)が生じない。したがって、各支持軸43及び各第1の軸44とガイド溝部15の一方及び他方の壁部25,26との接触抵抗によりシャッタ12の操作トルクが設定され、この操作トルクでシャッタ12が前後方向に摺動する。
【0054】
また、シャッタ12のガイド溝部15の上側湾曲部22に沿って湾曲している部分においても、第2の軸45はガイド溝部15の壁部25,26に対して接触しないように離間されている(
図8(b))。
【0055】
さらに、例えば乗員が誤って手や肘などをシャッタ12の上部についてしまった場合など、シャッタ12に対して下方向への荷重Fが加わったときには、
図6及び
図7に示すように、シャッタ12のシャッタ本体31が荷重Fの作用点付近を最下部として下方へと撓む。このとき、第1の軸44は、ガイド溝部15の一方及び他方の壁部25,26に接触した状態を維持するとともに、第2の軸45はシャッタ本体31の撓みにより先端側が上方へと傾斜して一方の壁部25に接触することにより突支棒の役割を果たし、シャッタ本体31をガイド溝部15に支持することで、シャッタ12が開口部14内(ボックス本体11内)へと脱落することが防止される。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、シャッタ12を摺動させるときには、第1の軸44の基端側の外周がガイド溝部15に常時接触してシャッタ本体31をガイド溝部15に常時支持し、第2の軸45はガイド溝部15に接触しないので、第1の軸44によって主として摺動抵抗が設定されるため、特に大型のコンソールボックス10など、挿入軸32の総数が多い場合であっても、摺動抵抗が抑制されて操作トルクが軽くなるなど、良好な操作感(操作フィーリング)を得ることができ、操作性を確保できるとともに、シャッタ本体31に対して荷重Fが加わった際には第1の軸44だけでなく、シャッタ本体31の変形により第2の軸45もガイド溝部15に接触する、すなわち第2の軸45のガイド溝部15への接触面積が増加するので、荷重Fを第1の軸44及び第2の軸45の双方によって支持でき、耐荷重性を確保できる。
【0057】
すなわち、シャッタ12の摺動抵抗を抑制するためにはガイド溝部15に挿入される挿入軸32の個数を低減すればよいものの、単に挿入軸32の個数を低減した場合には、シャッタ本体31に対して荷重Fが加わったときの耐荷重性も低減してしまう。そこで、本実施の形態では、シャッタ本体31をガイド溝部15に常時支持して摺動抵抗を設定する第1の軸44の他に、シャッタ12の摺動の際にはガイド溝部15と非接触で抵抗とならないとともに、シャッタ本体31に荷重Fが加わった際にシャッタ本体31をガイド溝部15に支持する第2の軸45を挿入軸32に設定することにより、操作性と耐荷重性とを両立することができる。
【0058】
また、一般に、シャッタ12の操作感とがたつきとは、互いに相反する関係であり、操作感を向上するために第1の軸44とガイド溝部15の水平部21の一方及び他方の壁部25,26との間隙Cを大きくすると、それに伴いがたつきが発生する。そこで、本実施の形態では、シャッタ12の操作感を決定する摺動抵抗を、第1の軸44とガイド溝部15の水平部21の一方及び他方の壁部25,26との間隙Cを大きくするのではなく、挿入軸32中の第1の軸44の割合を低減することによって低減させたことにより、シャッタ12の良好な操作感を得つつ、シャッタ12の摺動時に、挿入軸32とガイド溝部15とのがたつきに起因する雑音などが発生しにくい、高品位なコンソールボックス10を提供できる。
【0059】
しかも、第1の軸44と第2の軸45とを作り分けるだけの簡単な構造で実現でき、例えばシャッタ12を成形するための成形型に微細な構造などを施す必要がなく、製造コストを抑制できる。
【0060】
具体的に、第2の軸45を構成するインナ部材27の軸部36bの基端側の周囲を、インナ部材27よりも軟質のアウタ部材28の挿通部39cにより覆うことで第1の軸44を形成することにより、第1の軸44と第2の軸45との作り分けがより容易になり、製造コストをより抑制できる。すなわち、インナ部材27に大きな設計変更を施すことなく、アウタ部材28の挿通部39cと開口39bとの個数を調整するだけで、第1の軸44と第2の軸45との個数が異なる複数種類のシャッタ12を容易に作り分けることができる。
【0061】
また、第2の軸45を第1の軸44よりも細く形成し、シャッタ本体31に対して荷重Fが加わった際のこのシャッタ本体31の変形により第2の軸45のガイド溝部15への接触面積が増加するように構成することにより、シャッタ本体31に荷重Fが加わった際にシャッタ本体31をガイド溝部15に支持する第2の軸45を容易に構成できる。
【0062】
さらに、第1の軸44と第2の軸45とをシャッタ12の移動方向すなわち摺動方向に沿って1つずつ交互に有することにより、シャッタ12の摺動抵抗を低減しつつ、ガイド溝部15の形状に対しての追従性を高めることができる。
【0063】
また、シャッタ12を合成樹脂製のインナ部材27と、このインナ部材27よりも軟質の合成樹脂製でインナ部材27を覆うアウタ部材28により成形することで、シャッタ12の剛性及び柔軟性を確保しつつ、デザインをアウタ部材28によって設定できるので、デザインの自由度が向上する。
【0064】
そして、このようなシャッタ12を備えることで、操作性及び耐荷重性を確保しつつ製造コストを抑制したコンソールボックス10を提供できる。
【0065】
なお、上記の第1の実施の形態において、例えば直線状にのみ摺動するシャッタ12や、各湾曲部22,24などの湾曲の半径寸法がより大きい(曲率がより小さい)シャッタ12などの場合には、挿通部39cの個数を低減して第1の軸44を2つ置き、あるいは3つ置き(
図10に示す第2の実施の形態)などとすることで、摺動抵抗をより低下させて操作感をより軽くし、操作性をより向上することも可能である。すなわち、ガイド溝部15の湾曲している部分の半径寸法などに応じて、挿入軸32中の第1の軸44(第2の軸45)の割合を変えることにより、様々な半径寸法の湾曲に対応できる。
【0066】
また、上記の各実施の形態において、例えばシャッタ12の重量が大きい場合などには、例えばヒンジ部39dの長さ、あるいはヒンジ部39dを構成するアウタ部材28の材質をより軟らかくすることなどにより、シャッタ12のガイド溝部15の上側湾曲部22に沿って湾曲している部分を、上側湾曲部22の湾曲よりも僅かに後方に膨らんだ状態で湾曲させることで、この湾曲した部分に位置する第2の軸45をガイド溝部15の一方の壁部25に接触させて(
図11に示す第3の実施の形態)、これらの第2の軸45と一方の壁部25との接触抵抗によってシャッタ12の自重を支持し、このシャッタ12が自重によってガイド溝部15の下降部23に沿って後方下側へと落下することを防止するように構成してもよい。この場合でも、第2の軸45は、シャッタ12のシャッタ本体31の摺動時及び静止時、第1の軸44よりもガイド溝部15への接触面積が小さいため、シャッタ12の摺動抵抗が必要以上に大きくなることはない。
【0067】
さらに、上記の各実施の形態では、第1の軸44と第2の軸45との太さを変えることによって、第1の軸44がガイド溝部15に常時接触してシャッタ本体31をガイド溝部15に常時支持し、第2の軸45をシャッタ本体31に荷重Fが加わった際にシャッタ本体31をガイド溝部15に支持するように構成したが、例えば第1の軸44と第2の軸45との太さ(軸径)はガイド溝部15の一方及び他方の壁部25,26間の距離よりも小さくかつ互いにほぼ等しい所定値として、挿入軸32の突設位置を、例えば一方の壁部25寄り(側面視の上側)、他方の壁部26寄り(側面視の下側)、及び、それらの中間位置などとして、他方の壁部26寄りの挿入軸32を他方の壁部26に常時接触してシャッタ本体31をガイド溝部15に常時支持する第1の軸44とし、一方の壁部25寄りの挿入軸32、及び、一方の壁部25寄りの挿入軸32と他方の壁部26寄りの挿入軸32との中間に位置する挿入軸32を、荷重Fによるシャッタ本体31の変形時にシャッタ本体31をガイド溝部15に支持する第2の軸45としても、同様の作用効果を奏することができる(
図12に示す第4の実施の形態)。本実施の形態では、例えば第1の軸44を2つずつ隣接させ、一方の壁部25寄りの第2の軸45を2つずつ隣接させ、かつ、これらの中間に位置する第2の軸45を1つずつとしているが、これに限定されるものではない。そして、この場合、一方の壁部25寄りに位置する第2の軸45は、例えばシャッタ12(シャッタ本体31)の自重が下方に向けて加わることでガイド溝部15の一方の壁部25に対して表面的にのみ接触して接触抵抗が殆ど生じない構成としてシャッタ12の操作感を向上してもよいし、上記の第3の実施の形態の第2の軸45のように上側湾曲部22などでシャッタ12の自重を支持し、このシャッタ12が自重によってガイド溝部15の下降部23に沿って後方下側へと落下することを防止するように構成してもよい。
【0068】
さらに、上記の各実施の形態において、シャッタ12はインナ部材27とアウタ部材28との二色成形としたが、必ずしも二色成形としなくてもよい。
【0069】
そして、上記の各実施の形態において、挿入軸32は、1つのリアセル部42につき片側2つずつ以外でも、例えば1つのリアセル部42につき片側1つとしてもよいし、1つのリアセル部42につき片側3つ以上としてもよい。
【0070】
さらに、上記の各実施の形態において、図示しないが、第1の軸44及び第2の軸45は、断面円形状でなくてもよく、例えば断面四角形状、あるいは多角形状などでもよい。
【0071】
また、上記の各実施の形態において、挿入軸32中の第1の軸44(第2の軸45)の割合は、コンソールボックス10(ガイド溝部15)の大きさや形状などに応じて任意に設定できる。すなわち、第1の軸44と第2の軸45とを交互に配置する場合、第1の軸44を連続して配置する個数と第2の軸45を連続して配置する個数とは同一でも異なっていてもよく、それらを連続して配置する個数は、全体に亘って必ずしも一定でなくてもよい。
【0072】
さらに、上記の各実施の形態では、自動車の運転席と助手席との間に配置されるコンソールボックス10について説明したが、この構成に限らず、任意の収納装置に対して適用可能である。