(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中心位置が属する小領域の単位面積当たりに投入するエネルギが第1の値であり、前記第1の方向と平行な方向に沿って見た場合に、端にある小領域の単位面積当たりに投入するエネルギが第2の値であり、前記第1の値と前記第2の値の差を、前記第1の値の0.3%以上とする請求項1に記載のレーザアニール装置。
前記半導体基板の中心を通り、前記第1の方向と平行な直線に沿ってみたとき、前記半導体基板の中心が属する小領域を、前記半導体基板の20%〜70%とする請求項1または2に記載のレーザアニール装置。
(a)nを3以上の整数とするとき、半導体基板上に第1の方向に沿って見る場合に、n個の小領域を画定し、レーザビームを、前記半導体基板上において前記第1の方向と平行な方向に走査させながら、前記半導体基板の中心位置を基準として、前記第1の方向に相対的に遠い小領域の単位面積当たりに投入するエネルギが、前記中心位置に相対的に近い小領域の単位面積当たりに投入するエネルギよりも小さくなるように、レーザビームを入射させる工程と、
(b)レーザビームの入射位置を、前記第1の方向と交差する第2の方向にずらず工程と、
(c)前記工程(b)の後に前記工程(a)を繰り返す工程と
を有するレーザアニール方法。
前記中心位置が属する小領域の単位面積当たりに投入するエネルギが第1の値であり、前記第1の方向と平行な方向に沿って見た場合に、端にある小領域の単位面積当たりに投入するエネルギが第2の値であり、前記第1の値と前記第2の値の差を、前記第1の値の0.3%以上とする請求項4に記載のレーザアニール方法。
前記半導体基板の中心を通り、前記第1の方向と平行な直線に沿ってみたとき、前記半導体基板の中心が属する小領域を、前記半導体基板の20%〜70%とする請求項4または5に記載のレーザアニール方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
レーザビームのプロファイルをトップハット分布とし、ウエハ面内の投入エネルギを位置によらず一定としてレーザ照射を行った場合でも、ウエハ中央部とウエハ周辺部とではデバイス特性に差があり、たとえば中央部は周辺部に比べてデバイス特性が劣るという点、及び、中央部と周辺部とではデバイス特性に、シート抵抗値に換算して1%弱の差があるという点に関し、本願発明者は、二つの調査を行った。
【0016】
まず、通常のレーザアニールにおけるレーザ強度より強い強度でレーザビームを照射し、デバイスダメージの発生分布を調べた(第1の調査)。一定の強度のレーザビームを半導体ウエハ上にスキャンしたところ、ウエハ周辺部のデバイスは中央部のデバイスに比べ、熱ダメージを受けた。このことからレーザアニール時、シリコンウエハの表側の表面において、周辺部は中央部より温度が高くなっていることがわかった。
【0017】
次に、本願発明者は、レーザアニール後のシート抵抗値のウエハ面内分布、及び、シート抵抗値とウエハ上に照射されるレーザビームのパワー密度との関係を調べた(第2の調査)。
【0018】
図1Aは、シリコンウエハ上におけるレーザビームのスキャン態様を示す概略図である。ホウ素(B)を45keVのエネルギ、1.0E+15/cm
2のドーズ量でイオン注入した、たとえば直径6インチの円形のシリコンウエハをアニール対象として準備し、入射領域がX軸方向に2.5mm、Y軸方向に0.3mmの矩形状となるように整形され、その入射領域においてパワー密度を均一化したレーザパルスを、本図に示す態様でスキャンしながら、シリコンウエハ上に照射した。シリコンウエハの右端(X軸正方向端部)からレーザ照射を開始し、スキャン方向をY軸方向、ステップ方向をX軸負方向として、シリコンウエハにレーザビームを照射した。すなわちレーザビームをスキャン方向に走査し、走査した方向(たとえばY軸正方向)のウエハ端部までレーザビームを照射したら、ステップ方向にビームの入射位置をずらした後、再びレーザビームをスキャン方向(たとえばY軸負方向)に沿って、他方のウエハ端部まで走査し、走査し終えたらステップ方向にビームの入射位置をずらす。これを繰り返して、シリコンウエハ全面にレーザビームを入射させる。なお、X軸方向、Y軸方向へのレーザビームの重複率は、たとえばともに80%である。
【0019】
図1Bは、レーザビーム照射後のシリコンウエハ面内のシート抵抗値分布を示す概略図である。シート抵抗値の変化率の絶対値は、Y軸方向(スキャン方向に平行な方向)に大きくX軸方向(ステップ方向に平行な方向)に小さい。また、シリコンウエハの中心を基準として、Y軸方向に離れるにつれ、シート抵抗値は低くなる。このため、シリコンウエハの中心を基準としたとき、Y軸正方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸正方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も低いシート抵抗値を示し、Y軸負方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸負方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も低いシート抵抗値を示す。
【0020】
図1Cは、シート抵抗値とウエハ上に照射されるレーザビームのパワー密度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は、ウエハ上に照射されるレーザビームのパワー密度を単位「kW/cm
2」で表し、グラフの縦軸は、シート抵抗値を単位「kΩ/□」で表す。本グラフに示す結果を得るための実験においては、ホウ素(B)を40keVのエネルギ、1.0E+13/cm
2のドーズ量でイオン注入したシリコンウエハをアニール対象とした。
【0021】
本図に示す結果から、レーザビームのパワー密度が大きいほどシート抵抗値は低くなることがわかる。すなわちシリコンウエハの温度とシート抵抗値との間には相関関係があり、シリコンウエハの温度が高いほどシート抵抗値は低くなる。
【0022】
図1B及び
図1Cに示す結果から、ウエハ温度の変化率の絶対値は、Y軸方向に大きくX軸方向に小さい、また、シリコンウエハの中心を基準として、Y軸方向に離れるにつれ、ウエハ温度は高くなる、このため、シリコンウエハの中心を基準としたとき、Y軸正方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸正方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も高い温度を示し、Y軸負方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸負方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も高い温度を示す、ということがわかる。これは、デバイスの受けた熱ダメージから得られた、ウエハの周辺部は中央部より温度が高いという第1の調査結果と比較した場合、全体として符合する、より詳細な調査結果である。また、この調査結果によれば、ウエハ中央部とウエハ周辺部とではデバイス特性に差があり、たとえば中央部は周辺部に比べてデバイス特性が劣るという事実を説明可能である。
【0023】
なお、シリコンウエハの温度が高いほどシート抵抗値は低くなるという関係から、デバイス特性の分布の一時評価が、シート抵抗値の分布で可能であることもわかる。
【0024】
本願発明者は、レーザビームのプロファイルをトップハット分布とし、ウエハ面内の投入エネルギを位置によらず一定としてレーザ照射を行った場合でも、たとえば1ショットのレーザパルスの入射領域がシリコンウエハに対して小さいことが一因となって、ウエハ面内に不均一な温度分布及び不純物活性化率の分布が生じ、その分布に対応したデバイス特性の不揃いが発生する、と考えた。
【0025】
図2は、第1の実施例によるレーザアニール装置を示す概略図である。第1の実施例によるレーザアニール装置は、レーザ光源50、アッテネータ51、ビーム整形光学系52、折り返しミラー53、フォーカスレンズ54、ステージ55、及び制御装置56を含む。
【0026】
レーザ光源50は、たとえばNd:YAGレーザ発振器及び非線形光学結晶を含み、Nd:YAGレーザの2倍高調波(波長532nm)であるパルスレーザビームを、繰り返し周波数3kHzで出射する。Nd:YAGレーザに限らず、Nd:YLFレーザ、Nd:YVO
4レーザ等の固体レーザの2倍高調波(緑色の波長領域の光)を用いてもよい。また、たとえば波長800nm〜1000nm、一例として808nmの半導体レーザを使用することもできる。
【0027】
ステージ55はたとえばXYステージであり、アニール対象物である半導体基板(シリコンウエハ60)を保持し、水平面内(X軸方向及びY軸方向)に移動させることができる。
【0028】
シリコンウエハ60は、たとえばIGBT製造の一工程に現れる半導体基板であり、表側の表面にはデバイスパターンが形成され、裏面からボロン(B)等の不純物が添加されている。シリコンウエハ60は、たとえば直径が6インチ〜8インチの円形状、厚さは約100μmである。第1の実施例によるレーザアニール装置を用いて、シリコンウエハ60の裏側表面にレーザビームを照射することにより、添加された不純物を活性化する。
【0029】
アッテネータ51、ビーム整形光学系52、折り返しミラー53、及び、フォーカスレンズ54は、伝搬光学系を構成する。伝搬光学系は、レーザ光源50を出射したレーザビームをステージ55上に保持されたシリコンウエハ60上に伝搬する。アッテネータ51は、入射したレーザビームのエネルギを減衰率可変に減衰して出射する。ビーム整形光学系52、たとえばホモジナイザは、レーザ照射面(シリコンウエハ60の裏側表面)におけるレーザビームの入射領域を矩形状に整形するとともに、入射領域におけるレーザビームの強度分布を均一化する。
【0030】
レーザ光源50を出射したパルスレーザビームは、アッテネータ51により所定の減衰率でエネルギを減衰された後、ビーム整形光学系52、折り返しミラー53、フォーカスレンズ54を経由して、シリコンウエハ60上に伝搬される。シリコンウエハ60上におけるレーザビームの入射領域は、たとえばX軸方向に2.5mm、Y軸方向に0.3mmの矩形状である。
【0031】
第1の実施例によるレーザアニール装置は、また、制御装置56を含む。制御装置56は、レーザ光源50に電流信号を与えることで、レーザ光源50からのレーザビームの出射を制御する。与える電流の大きさで出射するレーザビームのエネルギも制御することができる。また、アッテネータ51の減衰率を変化させることが可能である。また、ステージ55の動作を制御する。ステージ55に保持されたシリコンウエハ60を、X軸方向、Y軸方向へ移動させ、シリコンウエハ60上におけるレーザビームの入射位置を制御することができる。
【0032】
シリコンウエハ60上におけるレーザビームのスキャン態様は
図1Aに示す通りである。制御装置56でステージ55を制御し、レーザビームを照射しながら、シリコンウエハ60の裏側表面における矩形状ビーム断面の短軸方向(Y軸方向)にシリコンウエハ60を移動させることにより、ビーム断面の長軸方向(X軸方向)の長さを幅とする帯状の領域をアニールすることができる。シリコンウエハ60を、ビーム断面の長軸方向にずらして帯状の領域をアニールする処理を繰り返すことにより、シリコンウエハ60の全面をアニールする。長軸方向、短軸方向へのレーザビームの重複率は、たとえばともに80%である。なお、ずらす方向はビーム断面の短軸方向と交差する方向であればよい。
【0033】
第1の実施例によるレーザアニール装置においては、制御装置56がシリコンウエハ60上に、位置によって異なるパルスエネルギ密度でレーザビームを入射させる。具体的には、シリコンウエハ60のレーザ照射面に、Y軸方向(レーザビームの走査方向)に沿って、3つ以上、一例として3つのエリアを画定し、同一エリア内では等しいパルスエネルギ密度でレーザビームを照射し、少なくとも2以上のエリアでパルスエネルギ密度を異ならせる。
【0034】
図3A〜
図3Eは、シリコンウエハ60上におけるエリアの画定態様を示す概略的な平面図である。
図3A〜
図3Eには、シリコンウエハ60上のレーザ照射領域を3つのエリア41〜43に分割する例を示した。
【0035】
図3Aには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、(シリコンウエハ60の中心を通り、Y軸に平行な直線に沿ってみたとき、)シリコンウエハ60のY軸正方向側の40%の領域がエリア41に属し、シリコンウエハ60の中心を含む20%の領域がエリア42に属し、シリコンウエハ60のY軸負方向側の40%の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を定める例を示した。制御装置56は、エリア42には、相対的に高い2J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームが照射され、エリア41及び43には、相対的に低い1.9J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームが照射されるように、レーザ光源50またはアッテネータ51を制御する。
【0036】
たとえば制御装置56は、エリア42にレーザビームを入射させるときには、レーザ光源50に相対的に大きな電流信号を与え、出射されるレーザビームのパルスエネルギを相対的に大きくする。また、エリア41、43にレーザビームを入射させるときには、レーザ光源50に相対的に小さな電流信号を与え、出射されるレーザビームのパルスエネルギを相対的に小さくする。あるいは、エリア42にレーザビームを入射させるときには、アッテネータ51の減衰率を小さくし、エリア41、43にレーザビームを入射させるときには、アッテネータ51の減衰率を大きくしてもよい。
【0037】
第1の実施例によるレーザアニール装置を用いて、レーザアニール時に温度が相対的に高くなるシリコンウエハ60上の周辺領域(エリア41、43)については、相対的に小さいパルスエネルギ密度でレーザビームを照射して、単位面積当たりに照射されるレーザビームのエネルギ(単位面積当たりの投入エネルギ)を相対的に小さくする。また、レーザアニール時に温度が相対的に低くなるシリコンウエハ60上の中央領域(エリア42)については、相対的に大きいパルスエネルギ密度でレーザビームを照射して、単位面積当たりの投入エネルギを相対的に大きくする。このようにレーザアニールを行うことで、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率及びデバイス特性の均一度を高めることができる。
【0038】
図3B、
図3C、
図3Dには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、それぞれシリコンウエハ60のY軸正方向側の33%、25%、15%の領域がエリア41に属し、シリコンウエハ60の中心を含む33%、50%、70%の領域がエリア42に属し、シリコンウエハ60のY軸負方向側の33%、25%、15%の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を定める例を示した。このようにエリア41〜43を画定し、エリア42には相対的に大きいパルスエネルギ密度でレーザビームを照射し、エリア41、43には相対的に小さいパルスエネルギ密度でレーザビームを照射しても、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率の均一度を高めることができる。
【0039】
図3A〜
図3Dに示すように、エリア42は、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心を含む20%〜70%の領域がエリア42に属するように画定されればよい。
【0040】
図3Eには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60のY軸正方向側の15%の領域がエリア41に属し、シリコンウエハ60の中心を含む60%の領域がエリア42に属し、シリコンウエハ60のY軸負方向側の25%の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を定める例を示した。このようにエリア41とエリア43に属するシリコンウエハ60の割合は、等しくなくてもよい。ただし実施例のように、シリコンウエハ60を、エリア41〜43の3つの領域に分割する場合、シリコンウエハ60のY軸正方向側の15%以上の領域がエリア41に属し、かつ、シリコンウエハ60のY軸負方向側の15%以上の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を画定する。
【0041】
第1の実施例においては、エリア41、43には、1.9J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射し、エリア42には、2・0J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射した。ここで照射するレーザビームのパルスエネルギ密度、結果的にはシリコンウエハ60の単位面積当たりに投入するエネルギについて考察する。
【0042】
先に述べたように、シリコンウエハ60上の位置によって投入するエネルギに差を設けずにアニールを行った場合、中央部と周辺部とではデバイス特性に、シート抵抗値に換算して1%弱の差があるということがわかっている。このことからエリア41、43とエリア42とに照射するレーザビームのパルスエネルギ密度は、たとえばエリア42に照射するレーザビームのパルスエネルギ密度を基準としたとき、エリア41、43に照射するレーザビームのパルスエネルギ密度を、その1%以上小さくすれば、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率の均一度を高めることができるであろう。また、0.3%以上小さくすることによっても、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率の均一度向上の効果は得られるであろう。
【0043】
シリコンウエハ60面内(シリコンウエハ60のレーザ照射領域)を、3を超える数のエリアに分割することもできる。
図4A〜
図4Cは、エリア44〜48の画定態様について示す概略的な平面図である。
【0044】
図4A及び
図4Bに示すように、シリコンウエハ60面内を、5つの領域に分割することも可能である。
【0045】
図4Aには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の最もY軸正方向側(Y軸正方向側の端部)の5%の領域がエリア44に属し、それに隣接する10%の領域がエリア45に属し、シリコンウエハ60の中心を含む70%の領域がエリア46に属し、Y軸負方向側でそれと隣接する10%の領域がエリア47に属し、シリコンウエハ60の最もY軸負方向側(Y軸負方向側の端部)の5%の領域がエリア48に属するように、エリア44〜48の境界線を定める例を示した。
【0046】
このように5つの領域に分割するとき、たとえばエリア44及び48には、1.9J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームが照射され、エリア45及び47には、1.95J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームが照射され、エリア46には、2.0J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームが照射されるように、制御装置56は、ステージ55によるシリコンウエハ60の移動と、レーザ光源50から出射されるレーザビームのパルスエネルギの増減またはアッテネータ51の減衰率の変化とを同期させる制御を行う。
【0047】
図4Bには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60のそれぞれ20%の領域がエリア44〜48に属するように、エリア44〜48の境界線を定める例を示した。各エリア44〜48に照射するレーザビームのパルスエネルギ密度は、たとえば
図4Aに示す境界線画定態様の場合と等しい。
【0048】
図4Aには、シリコンウエハ60の中心を含む70%の領域がエリア46に属する例を示し、
図4Bには、シリコンウエハ60の中心を含む20%の領域がエリア46に属する例を示した。シリコンウエハ60を、3を超える数の領域に分割する場合も、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心を含む領域を、シリコンウエハ60全体の20%〜70%とする。
【0049】
また、シリコンウエハ60を、3を超える数の領域に分割する場合、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心位置を基準として、Y軸方向側に離れているエリアに照射するレーザビームのパルスエネルギ密度を、中心位置を含む、または中心位置に近いエリアに照射するレーザビームのパルスエネルギ密度以下とする。更に、nが3の場合と同様に、シリコンウエハ60の中心が属するエリア46に照射するレーザビームのパルスエネルギ密度と、最もY軸正方向側(Y軸正方向側の端部)のエリア44に照射するレーザビームのパルスエネルギ密度との差を、エリア46に照射するレーザビームのパルスエネルギ密度を基準として、その0.3%以上とする。1%以上としてもよい。エリア46と、最もY軸負方向側(Y軸負方向側の端部)のエリア48とのパルスエネルギ密度の差についても同様である。
【0050】
図4Cには、シリコンウエハ60を、4つの領域に分割する例を示した。本図に示す例においては、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の最もY軸正方向側(Y軸正方向側の端部)の15%の領域がエリア44に属し、それに隣接する35%の領域がエリア45に属し、更にそれにY軸負方向側で隣接する35%の領域がエリア46に属し、シリコンウエハ60の最もY軸負方向側(Y軸負方向側の端部)の15%の領域がエリア47に属するように、エリア44〜47の境界線を定める例を示した。
【0051】
シリコンウエハ60の中心位置Cは、エリア45とエリア46の境界線上にあるが、このような場合は、中心位置Cは、エリア45、エリア46の双方に属するものと考える。
【0052】
図4Cに示すように、シリコンウエハ60上に、エリア44〜47の4つの領域を画定するとき、たとえばエリア45及び46には、2.0J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射し、エリア44及び47には、1.9J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射する。
【0053】
シリコンウエハ60を、たとえば偶数の領域に分割し、シリコンウエハ60の中心位置Cが二つの領域の境界線上にある(中心位置Cはその二つの領域に属する)場合も、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心を含む領域(
図4Cにおいてはエリア45及び46)の合計を、20%〜70%とする。
【0054】
また、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心位置を基準として、Y軸方向側に離れているエリアに照射するレーザビームのパルスエネルギ密度を、中心位置を含む、または中心位置に近いエリアに照射するレーザビームのパルスエネルギ密度以下とする。更に、シリコンウエハ60の中心が属するエリア45、46と、最もY軸方向側(Y軸方向側の端部)のエリア44、47とのパルスエネルギ密度の差を、エリア45、46に照射するレーザビームのパルスエネルギ密度の0.3%以上とする。1%以上としてもよい。
【0055】
分割エリア数を多くし、各エリアに照射するレーザビームのパルスエネルギ密度を調整することで、シリコンウエハ60の温度を細かく制御し、より均一度を高めることができる。
【0056】
図5Aは、第2の実施例によるレーザアニール装置を示す概略図である。第2の実施例によるレーザアニール装置は、たとえばNd:YAGレーザの2倍高調波を、繰り返し周波数3kHzで出射するレーザ光源89、シリコンウエハ60a〜60fを保持するステージ95、及び、レーザ光源89を出射したレーザビームをステージ95上に保持されたシリコンウエハ60a〜60f上に伝搬する伝搬光学系を含む。
【0057】
ステージ95は、ベース70、θステージ72、チャックプレート73、及び、駆動機構71を含む。θステージ72はベース70上に、また、チャックプレート73はθステージ72上に、それぞれたとえば水平面(XY平面)に平行に配置される。駆動機構71は、たとえばモータ及びベアリングを含み、θステージ72及びその上に固定的に配置されたチャックプレート73を、Z軸に平行な回転軸lの周囲に回転させる。回転方向は、たとえばθステージ72をZ軸正方向から見たとき、反時計回りである。チャックプレート73は、シリコンウエハ60a〜60fを吸着して保持することができる。シリコンウエハ60a〜60fは、第1の実施例におけるシリコンウエハ60と同様のアニール対象物である。
【0058】
第1の実施例によるレーザアニール装置と同様に、伝搬光学系は、アッテネータ90、ビーム整形光学系91、折り返しミラー92、及びフォーカスレンズ93を備える。ビーム整形光学系91、折り返しミラー92、及びフォーカスレンズ93は、鏡筒94の内部に固定的に配置されている。
【0059】
第2の実施例によるレーザアニール装置は、更に、支柱85、ベース86、Yステージ88、ガイド87a、87b、及び、駆動機構87cを含む。
【0060】
ベース86は、支柱85によって一定高さに支持される。ベース86上に、Y軸方向に沿って移動可能にYステージ88が保持される。Yステージ88には、たとえばモータ、ボールスクリュー、及びベアリングを含む駆動機構87cが設けられている。また、ベース86とYステージ88との間には、ガイド87a、87bが設置されている。Yステージ88は、駆動機構87cにより、ガイド87a、87bに沿ってY軸方向に移動可能である。
【0061】
Yステージ88上に、レーザ光源89及び伝搬光学系が配置されている。なお、鏡筒94がYステージ88とともに移動可能であればよく、レーザ光源89及びアッテネータ90は、Yステージ88上に配置されなくてもよい。
【0062】
図5Bに、チャックプレート73の平面図を示す。チャックプレート73は、Z軸正方向から見たとき、たとえば円形状である。円の中心は、θステージ72の回転軸l上にある。チャックプレート73上には、円形のシリコンウエハを載置する位置(ウエハ載置位置73a〜73f)が画定されている。ウエハ載置位置73a〜73fはたとえば円形であり、各載置位置73a〜73fにシリコンウエハ60a〜60fが載置される。各載置位置73a〜73fの中心位置(シリコンウエハ60a〜60fの中心位置)は、チャックプレート73の中心から等距離にあり、各載置位置73a〜73fの中心を結ぶと正六角形が形成される。
【0063】
レーザ光源89を出射したパルスレーザビームは、アッテネータ90、ビーム整形光学系91、折り返しミラー92、フォーカスレンズ93を経由して、ウエハ載置位置73a〜73fに載置され、θステージ72によって回転軸lの周囲に回転されているシリコンウエハ60a〜60f上に伝搬される。シリコンウエハ60a〜60f上におけるレーザビームの入射領域は、たとえば回転半径方向に2.5mm、回転円周方向に0.3mmの矩形状である。
【0064】
第2の実施例によるレーザアニール装置は、また、制御装置96を含む。制御装置96は、第1の実施例における制御装置56と同様に、レーザ光源89からのパルスレーザビームの出射タイミング、出射されるレーザビームのパルスエネルギ、及び、アッテネータ90の減衰率を制御する。更に、θステージ72による、シリコンウエハ60a〜60fの回転方向への移動、及び、Yステージ88による鏡筒94の移動を制御する。
【0065】
制御装置96は、θステージ72でシリコンウエハ60a〜60fを、回転軸lの周囲に回転させることで、シリコンウエハ60a〜60f上におけるレーザビームの入射位置を回転方向と平行な方向(回転方向と反対方向)に移動させる。
【0066】
図6は、シリコンウエハ60a〜60f上におけるレーザビームのスキャン態様を示す概略図である。レーザビームは、たとえばまずチャックプレート73の中心から最も遠い位置のシリコンウエハ60a〜60fの端部領域に照射される。本図にはレーザアニール開始時のレーザビームの入射領域にLの符号を付して示した。θステージ72で、シリコンウエハ60a〜60fを保持したチャックプレート73を回転軸lの周囲に1回転することにより、シリコンウエハ60a〜60fの各々の、チャックプレート73の中心から最も遠い端部について、ビーム断面の長軸方向(回転半径方向)の長さを幅とする帯状の領域を、回転円周方向に沿ってアニールすることができる。レーザパルスの重複率は、たとえば回転円周方向に80%である。
【0067】
なお、回転に伴って、レーザビーム入射領域Lの位置に、シリコンウエハ60a〜60f以外のチャックプレート73上の位置が配置されるときには、制御装置96は、レーザ光源89に印加する信号を停止し、レーザ光源89からのレーザビームの出射を停止させる。
【0068】
制御装置96は、θステージ72でシリコンウエハ60a〜60fを、回転軸lの周囲に1回転させた後、Yステージ88をY軸正方向(ビーム断面の長軸方向)に、たとえば0.5mm移動させる。鏡筒94がY軸正方向に0.5mm移動し、レーザビーム入射領域LもY軸正方向に0.5mm移動する。レーザビームを照射しながら、シリコンウエハ60a〜60fを回転軸lの周囲に1回転させた後、レーザビーム入射領域Lを回転半径の内側方向に移動させる処理を繰り返すことにより、シリコンウエハ60a〜60fの各々の全面をアニールする。
【0069】
第2の実施例においても、第1の実施例と同様に、シリコンウエハ60a〜60fの各々のレーザ照射面に画定された3以上のエリアについて、同一エリア内では等しいパルスエネルギ密度でレーザビームを照射し、少なくとも2以上のエリアでパルスエネルギ密度を異ならせる。
【0070】
図6においては、シリコンウエハ60a〜60fの各々上に、エリア77〜79が画定される例を示した。エリア77〜79は、それぞれ、θステージ72及びチャックプレート73の回転方向と平行な方向に直交する一方向、本図に示す例では、チャックプレート73の中心と、ウエハ載置位置73a〜73fの中心を結ぶ直線の延在方向(回転半径方向)と直交する方向に沿って画定されている。すなわち、シリコンウエハ60a〜60fの各々上におけるエリア77〜79の境界線は、チャックプレート73の中心と、シリコンウエハ60a〜60fの各々の中心を結ぶ直線と平行に画定されている。ウエハ載置位置73a〜73fの中心位置(シリコンウエハ60a〜60fの中心位置)は、回転方向と平行な方向に直交する一方向と直交する方向に関して端のエリア77、79には属さず、中央のエリアであるエリア78に属する。なお、シリコンウエハ60a〜60fは、回転方向と平行な方向に沿って見た場合に、3つの領域(エリア77〜79)に分けられるような態様で境界線が画定されている。本図に示すエリア77〜79の画定態様は、そのようなエリア画定態様の一例である。
【0071】
第2の実施例においても、第1の実施例と同様に、エリア77、79には、1.9J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射し、エリア78には、2.0J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射する。
【0072】
第2の実施例によるレーザアニール装置を用いても、シリコンウエハ60a〜60f面内における不純物の活性化率及びデバイス特性の均一度を高めることができる。なお、エリア間におけるパルスエネルギ密度の差や、エリアの分割数、エリアの境界線画定位置等については、第1の実施例の場合と同様である。
【0073】
図7は、エリア77〜79の他の画定態様を示す概略的な平面図である。
図6に示す例においては、θステージ72及びチャックプレート73の回転方向と平行な方向に直交する一方向と直交する方向に沿ってエリア77〜79を画定したが、
図7に示す例においては、回転方向と平行な方向に沿って、エリア77〜79が画定される。
【0074】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0075】
たとえば、実施例においては、パルスレーザビームを用いて、シリコンウエハに添加された不純物を活性化させるレーザアニールを行ったが、連続波のレーザビームを使用することもできる。
【0076】
また、実施例においては、Nd:YAGレーザの2倍高調波を、繰り返し周波数3kHzで出射し、走査方向、ステップ方向ともに80%の重複率でシリコンウエハに入射させた。シリコンウエハの中心位置を含むエリアには、2.0J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射した。波長808nmの半導体レーザを用い、繰り返し周波数を1kHz、重複率を50%としてもよい。たとえば、シリコンウエハの中心位置を含むエリアには、4.0J/cm
2のパルスエネルギ密度でレーザビームを照射する。なお、固体レーザの2倍高調波を用いる場合も、半導体レーザを用いる場合も、重複率は、走査方向、ステップ方向ともに50%以上あればよい。
【0077】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。