【実施例1】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施例1について明する。
図1は、実施例1に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図であり、
図2は、実施例1に係る基板処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
【0033】
本実施例に係る基板処理装置1は、処理液を貯留する処理槽3を備えている。この処理槽3は、処理液を貯留し、起立姿勢とされた複数枚の基板Wを収容可能に構成されている。処理槽3の底部には、二本の噴出管5が付設されている。二本の噴出管5は、複数枚の基板Wが整列されている方向(紙面の奥手前方向)に長軸を有する。各噴出管5には、供給管6の一端側が連通接続されている。供給管6は、フッ化水素酸や、硫酸・過酸化水素水の混合液や、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)などを処理液として供給可能である。この実施例においては、処理液として純水を供給するものとする。
【0034】
処理槽3は、その周囲がチャンバ7で囲われている。チャンバ7は、その上部に開閉自在の上部カバー9を備えている。起立姿勢で複数枚の基板Wを支持するリフタ11は、チャンバ7の上方にあたる「待機位置」と、処理槽3の内部にあたる「処理位置」と、処理槽3の上方であってチャンバ7の内部にあたる「乾燥位置」とにわたって移動可能に構成されている。
【0035】
なお、上述したリフタ11が本発明における「基板支持機構」に相当する。
【0036】
リフタ11は、背板13と、3本の支持部材15とを備えている。背板13は、処理槽3の内壁に沿って延出されている。3本の支持部材15は、背板13の下端部に設けられ、水平方向に延出されている。各支持部材15は、図示しない複数個の溝を形成されており、各溝により基板Wを起立姿勢で当接支持する。
【0037】
リフタ11は、リフタ駆動部17により駆動される。リフタ駆動部17は、昇降駆動部19と、水平揺動駆動部21と、垂直揺動駆動部23とを備えている。
【0038】
昇降駆動部19は、連結部材25と、背板支持部材27と、昇降モータ29と、基台31とを備えている。連結部材25は、背板13を背板支持部材27の上部側面に連結している。背板支持部材27は、鉛直姿勢で配置され、上部が平板状を呈し、その下部が円柱状を呈する。昇降モータ29は、回転軸を縦置きにされた上向き姿勢で配置され、基台31に設けられている。昇降モータ29の回転軸には、ボールネジ30が連結されており、ボールネジ30は背板支持板27の内部に螺合されている。昇降モータ29が駆動されると、背板支持部材27が鉛直方向に移動され、これに伴いリフタ11が昇降する。基台31は、固定台33と、湾曲ガイド35とを備えている。固定台33は、装置の基台(不図示)に固定されている。湾曲ガイド35は、上方に中心を有する円弧の一部からなる。上述した昇降モータ29は、湾曲ガイド35に沿って揺動可能に取り付けられており、垂直揺動駆動部23により湾曲ガイド35に沿って揺動される。
【0039】
水平揺動駆動部21は、水平揺動モータ37と、主動プーリ39と、従動プーリ41と、ベルト43とを備えている。水平揺動モータ37は、回転軸を縦置きにされた上向き姿勢で配置され、昇降モータ29に連結された取付部材45に取り付けられている。主動プーリ39は、水平揺動モータ37の回転軸に取り付けられている。従動プーリ41は、背板支持部材27の下部円柱部の外周面に取り付けられている。また、従動プーリ41は、背板支持部材27の下部円柱部に対しては回動しないように取り付けられ、背板支持部材27の下部円柱部に沿って上下に摺動可能に取り付けられている。したがって、昇降モータ29により背板支持部材27が昇降しても、従動プーリ41は主動プーリ39との位置関係が普遍である。ベルト43は、主動プーリ39と従動プーリ41とに架け渡されている。水平揺動モータ37が駆動されると、主動プーリ39の回転力がベルト43を介して従動プーリ41に伝達され、鉛直方向の回転軸P1廻りに背板支持部材27が揺動される。
【0040】
垂直揺動駆動部23は、垂直揺動モータ47と、ドライブギヤ49と、湾曲ギヤ51とを備えている。垂直揺動モータ47は、回転軸を横置きにされた水平姿勢で取付部材45に固定されている。ドライブギヤ49は、垂直揺動モータ47の回転軸に取り付けられている。湾曲ギヤ51は、湾曲ガイド35と同じ中心を有する円弧の一部からなり、ドライブギヤ49に噛み合わされて装置の基台(不図示)に固定されている。したがって、垂直揺動モータ47が駆動されると、ドライブギヤ49が湾曲ギア51に沿って移動し、垂直揺動モータ47が水平方向の回転軸P2廻りに揺動される。その結果、昇降モータ29が湾曲ガイド35に沿って移動し、リフタ11が回転軸P2廻りに揺動される。
【0041】
処理槽3の底部には、排出口53が形成されている。この排出口53には、QDR弁55が取り付けられている。このQDR弁55は、処理槽3に貯留している処理液を急速に排水するための弁である。QDR弁55が開放されると、処理槽3内に貯留している処理液がチャンバ7の底部に一旦排出される。チャンバ7の底部には、排液弁57が取り付けられており、排液弁57が開放されると、チャンバ7内に排出された処理液が外部に排出される。また、噴出管5から処理槽3内に供給され、処理槽3の上縁を越えて溢れた処理液は、チャンバ7の底部に一旦貯留され、その後に排液弁57が開放されることにより、外部に排出される。
【0042】
処理槽3の上縁から若干上方に離れ、かつ、処理槽3の側方に離れた位置には、ドライエアを供給するための供給部59が設けられている。また、処理槽3を挟んで供給部59と対向する位置には、ドライエアをチャンバ7の外部へ排出するための排出部61が設けられている。供給部59は、処理槽3に貯留している処理液の液面近傍に開口するように、ドライエアを噴出する供給口63を備えている。排出部61は、ドライエアを排出するための排出口65を処理槽3側に備えている。
【0043】
上述した供給部59と排出部61とが本発明における「供給・排出手段」に相当する。
【0044】
供給部59には、一端側がドライエア供給装置67に連通接続された供給配管69の他端側が連通接続されている。ドライエア供給装置67は、周囲のエアを取り込んで除湿し、所定温度に調整したエアをドライエアとして供給配管69へ供給する。その温度は、常温(25℃)よりも高い所定温度となるように調整される。
【0045】
なお、ドライエアが本発明における「乾燥気体」に相当する。
【0046】
上述した上部カバー9の開閉動作や、リフタ駆動部17によるリフタ11の昇降動作、QDR弁55、排液弁57の開閉動作、ドライエア供給装置67からのドライエアの供給動作は、制御部71により統括的に制御される。制御部71は、CPUやメモリなどで構成されている。
【0047】
次に、上述したリフタ駆動部17による水平揺動について、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、
図3は、水平揺動の動作を説明するための平面図であり、(a)は通常時を、(b)は左揺動を、(c)は右揺動を示す。また、
図4は、揺動時の好ましい角度についての説明図である。
【0048】
制御部71は、リフタ駆動部17の水平揺動駆動部21を操作して、リフタ11を処理位置から乾燥位置に上昇させる際に、水平揺動を行わせる。具体的には、
図3(a)の状態を挟んで
図3(b)の状態と
図3(c)の状態とを繰り返し行わせる。より具体的には、リフタ11に支持された複数枚の基板Wが処理位置から上昇され始めた後、複数枚の基板Wの上縁が処理液から露出し始めた時点で水平揺動を開始させるのが好ましい。但し、複数枚の基板Wの下縁が処理液面から完全に露出するまでに水平揺動を開始すれば、従来例よりも乾燥効率を向上させることができる。
【0049】
また、水平揺動は、複数枚の基板Wの直径と厚みと、各基板Wの支持間隔(ピッチ)に応じて、次のように行うのが好ましい。
図4に示すように、基板Wのピッチをptとし、基板Wの直径をdmとした場合、平面視で、一方の基板Wの端縁と他方の基板Wの反対側の端縁とを結ぶ直線が基板Wとなす角度θを最大値とし、0°からθ°の範囲で水平揺動させるのが好ましい。具体的には、基板Wの直径dm=300mm、厚み1mmであって、各基板wのピッチpt=5mmである場合には、−0.76°〜0°〜0.76°の範囲となる。
【0050】
複数枚の基板Wを水平揺動させて乾燥気体に対して傾斜姿勢となるようにするが、傾斜させ過ぎると乾燥気体が各基板Wが乾燥気体の圧力を受け過ぎてブレる恐れがある。このような状態となると、支持部材15にて基板Wの下縁が摺動してパーティクルが生じたり、基板Wが破損したりする恐れがある。しかし、各基板Wにおける乾燥気体の供給方向への傾斜角度を上記の角度範囲内に抑えることにより、各基板Wの間を十分に乾燥気体が抜けてゆくので、上記の不都合を解消することができる。
【0051】
したがって、制御部71は、水平揺動のために水平揺動駆動部21を操作する際には、上述した角度範囲内に収まるように水平揺動モータ37を操作する。また、制御部71は、上述した水平揺動に加えて、垂直揺動も行わせることが好ましい。具体的には、垂直揺動駆動部23を操作して、側面視において背板13側の揺動軸P2の軸廻りに支持部材15を揺動させる。この垂直揺動は、支持部材15の全体が処理液の液面から完全に露出した時点から開始することが好ましい。
【0052】
次に
図5〜
図8を参照して、上述した装置の動作について説明する。なお、
図5は、浸漬過程を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図6は、供給過程を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図7は、上昇過程及び揺動過程を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図8は、上昇過程における垂直揺動を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【0053】
以下の動作例においては、処理液として純水を用い、処理槽3の純水中で複数枚の基板Wを洗浄処理した後、複数枚の基板Wを乾燥位置にまで引き上げつつ乾燥処理を行う場合を処理例に採って説明する。
【0054】
まず、制御部71は、供給管6を通して噴出管5から処理槽3の内部に純水を供給させる。このとき、処理槽3から溢れた純水は、チャンバ7の底部に排出される。次に、制御部71は、複数枚の基板Wを支持部材15で支持したリフタ11を待機位置から処理位置にまで下降させる。そして、上部カバー9を閉止させた後、処理位置に所定時間だけ維持させることにより、複数枚の基板Wに対して純水による洗浄処理を行わせる(
図5(a)、(b))。なお、この過程が本発明における「浸漬過程」に相当する。
【0055】
次に、制御部71は、噴出管5から純水を処理槽3内に供給させつつ、供給部59からドライエアを供給させる(
図6(a)、(b))。なお、この過程が本発明における「供給過程」に相当する。
【0056】
制御部71は、ドライエアの供給が安定した後、リフタ駆動部17を操作してリフタ11を乾燥位置に向けて上昇させ始める(
図7(a)、(b))。その際、リフタ11に支持されている複数枚の基板Wの上縁が純水の液面から露出した時点から、水平揺動駆動部21を操作して水平揺動を行わせる。なお、この過程が本発明における「上昇過程」及び「揺動過程」に相当する。
【0057】
この水平揺動により、各基板Wがドライエアの供給方向に対して傾斜姿勢を含む姿勢を複数回とることになる。したがって、ドライエアの乾燥寄与度を高くすることができる。
【0058】
また、制御部71は、リフタ駆動部17を操作してリフタ11を上昇させている際に、支持部材15が純水の液面から完全に露出したことを知ることができる。その際には、垂直揺動駆動部23を操作して、側面視でリフタ11がお辞儀をするように水平方向の回転軸P2廻り(
図2参照)に揺動させる。
【0059】
この垂直揺動により、支持部材15へのドライエアの当たり方を変えることができ、純水が溜まりやすい支持部材15も効率的に乾燥させることができる。
【0060】
制御部71は、リフタ11が乾燥位置に移動した時点から所定時間だけ、上述したドライエアの供給と、水平揺動及び垂直揺動を継続させる。その後、噴出管5からの純水の供給を停止させるとともに、供給部59からのドライエアの供給を停止させ、上部カバー9を開放させた後、リフタ駆動部17を操作してリフタ11をチャンバ7の外部の待機位置にまで搬出させて複数枚の基板Wに対する洗浄乾燥処理を終える。
【0061】
上述したように本実施例によると、リフタ11を処理位置に移動させて処理槽3に貯留している純水による処理を複数枚の基板Wに対して行わせた後、供給部59からドライエアを供給させつつ、リフタ11を乾燥位置に移動させる。その際には、水平揺動駆動部21を作動させて、供給部59によるドライエアの供給方向に対して各基板Wが斜めの姿勢となるようにリフタ11を複数回揺動させる。したがって、ドライエアが各基板Wの面に対して斜めに供給される状態が生じるので、ドライエアの乾燥寄与度を高くできる。
【0062】
また、支持部材15が純水から露出した後、垂直揺動も行わせているので、支持部材15へのドライエアの当たり方を変えることができ、純水が溜まりやすい支持部材15も効率的に乾燥させることができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0064】
(1)上述した実施例1では、水平揺動に加え垂直揺動も行っているが、水平揺動だけとしてもよい。これにより、垂直揺動駆動部23が不要となり、構成を簡易化できてコストを抑制することができる。
【0065】
(2)上述した実施例1では、支持部材15が純水の液面から完全に露出した時点から垂直揺動を開始しているが、一部が液面から露出した時点で垂直揺動を開始するようにしてもよい。
【0066】
(3)上述した実施例1では、水平揺動駆動部21と垂直揺動駆動部23とを背板支持板27の下部に配置しているが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、水平揺動駆動部21と垂直揺動駆動部23とを背板支持板27の上部に備えるようにしてもよい。また、水平揺動及び垂直揺動の機構は、上述した構成に限定されるものではない。
【実施例3】
【0073】
次に、図面を参照して本発明の実施例3について説明する。
図11は、実施例3に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。また、
図12は、供給方向を変える機構を説明するための平面図である。なお、上述した実施例1と同様の構成については同符号を付すことで詳細な説明については省略する。
【0074】
リフタ駆動部17Bは、リフタ11を昇降する機能を備えているだけであり、上述した実施例1のような水平揺動と垂直揺動の機能を備えていない点において相違する。
【0075】
供給部59Bは、複数枚の方向板91を供給口63内に固定された状態で備えている。複数枚の方向板91は、全てほぼ平行に配置されている。供給部59Bは、供給配管69側に蛇腹部93を形成されている。したがって、供給部59Bは、その供給口63を基板Wの整列方向に揺動可能となっている。その揺動は、供給方向駆動部95が供給部59Bの供給口63を
図12に示すように移動させることによって行われる。供給方向駆動部95は、制御部71によって操作される。
【0076】
なお、上述した供給方向駆動部95が本発明における「供給方向可変手段」及び「供給口揺動機構」に相当する。
【0077】
本実施例装置では、制御部71がリフタ11を乾燥位置へ引き上げさせる際に、各基板Wの上縁が純水の液面から露出した時点で、供給方向駆動部95を操作し、供給部59Bの供給口63を移動させてドライエアの供給方向を各基板Wの整列方向に揺動させる。したがって、ドライエアが各基板Wの面に対して斜めになるような状態が複数回形成されるので、ドライエアの乾燥寄与度を高くできる。
【0078】
また、本実施例によると、供給部59Bの供給口63を供給方向駆動部95で基板Wの整列方向に揺動させるので、ドライエアの方向を変える負荷を実施例1に比較して軽減することができる。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0080】
(1)上述した各実施例1〜3では、純水を処理液として用いているが、本発明は処理液が純水に限定されるものではない。例えば、IPA(イソプロピルアルコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)などを処理液として用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0081】
(2)上述した各実施例1〜3では、処理槽3が単槽で構成されているが、本発明は、内槽と、内槽から溢れた処理液を回収する外槽との複槽で構成されていてもよい。