(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いる成分(A)の(メタ)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体は、アクリル酸アルキルモノマー及び/又はメタクリル酸アルキルモノマーと、酢酸ビニルモノマーとを含む単量体混合物を主成分とし、通常、これらを乳化重合して得られる共重合体であり、通常化粧料に用いられるものであれば、いずれでも使用することができる。
(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良く、炭素数1〜10が好ましく、更に炭素数4〜8のものがより好ましい。
【0012】
成分(A)の(メタ)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃〜10℃、更に−5℃〜5℃であるのが、温水でのクレンジング性の点で好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計によって測定された値を示す。
【0013】
成分(A)は、共重合体として用いることができるほか、重合後の共重合体と水とを含むエマルジョンの形態のものを用いることもできる。
【0014】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、耐水性があり、化粧持続性に優れるとともに、温水でのクレンジング性の両立の点から、全組成中に、固形分として、0.1〜30質量%含有するのが好ましく、更に、5〜25質量%が好ましく、耐水性の向上、化粧持続性の点から、8〜20質量%がより好ましい。
【0015】
本発明で用いる成分(B)のリン酸トリエステルは、前記一般式(1)で表されるものである。
一般式(1)中、R
1 、R
2 及びR
3 で示される炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、これらのうち、刺激の低さ及び良好な使用感から、炭素数2〜4のものが好ましく、エチル基及びn−ブチル基がより好ましく、更にエチル基が好ましい。また、R
1 、R
2 及びR
3 は性能面からは同一でも異なってもよいが、合成の容易さという点では三者が同一のものが好ましい。
【0016】
一般式(1)中、X、Y及びZで示される炭素数2〜3の直鎖又は分岐のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基及びプロピレン基が挙げられるが、なかでもエチレン基が好ましい。また、k、m及びnで示される1〜10の数は、それぞれXO、YO及びZOの平均付加モル数を示し、(XO)
k、(YO)
m及び(ZO)
n の部分は単一でも分布を有していても良い。k、m及びnは1〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、更に2が好ましい。
【0017】
成分(B)としては、一般式(1)において、R
1 、R
2 及びR
3 がそれぞれ炭素数2〜4のアルキル基であり、X、Y及びZがエチレン基であり、k、m及びnがそれぞれ1〜4の数のリン酸トリエステルが好ましい。
【0018】
リン酸トリエステル(1)の具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0020】
中でも成分(B)としては、一般式(1)において、R
1 、R
2 及びR
3 がそれぞれ炭素数2のアルキル基であり、X、Y及びZがエチレン基であり、k、m及びnがそれぞれ2〜3の数のリン酸トリエステルがより好ましい。
【0021】
成分(B)のリン酸トリエステル(1)は、公知の方法に従って、例えば、特開平9−241119号公報に記載されている方法に従って、製造することができる。
【0022】
成分(B)は1種以上を用いることができ、耐水性があり、化粧持続性に優れるとともに、温水でのクレンジング性の両立の点から、全組成中に0.05〜20質量%含有するのが好ましく、更に、0.2〜10質量%が好ましく、耐水性があり、化粧持続性の点から、2〜8質量%がより好ましい。
【0023】
本発明において、成分(A)及び(B)の質量割合は、耐水性があり、化粧持続性に優れるとともに、温水でのクレンジング性の両立の点から、(A)/(B)=1〜50、更に、2〜25であるのが好ましく、1〜10であるのがより好ましい。
【0024】
本発明の睫用化粧料は、更に、(C)フェノキシエタノール又はデヒドロ酢酸ナトリウムを含有することができ、温水でのクレンジング性をより向上させることができる。
成分(C)は、温水でのクレンジング性の点から、全組成中に0.01〜5質量%、更に、0.05〜1質量%含有するのが好ましい。
【0025】
本発明の睫用化粧料は、さらに、化粧料に通常用いられる固体脂(ワックス)を含有するのが好ましい。
固体脂(ワックス)とは、融点が40℃以上で水不溶のものをいう。中でも、融点が60〜110℃のものが好ましく、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、合成ワックス等を用いることができる。具体的には、コメヌカロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、水添ホホバ油等が挙げられ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウが好ましい。
【0026】
固体脂(ワックス)は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜50質量%含有するのが、ボリューム感を出す効果が高いので好ましく、2〜40質量%、更に3〜30質量%含有するのが好ましく、4〜15質量%含有するのがより好ましい。この範囲内とすることにより、クレンジング性と耐水性を維持しつつ、高いボリューム感を得ることができ、使用時にダマが発生せず、仕上がりも良好である。
【0027】
本発明の睫用化粧料は、さらに、化粧料に通常用いられる成分、例えば、ポリメチルメタクリレートパウダー、ナイロンパウダー、シリカ等の球状粉体;白色顔料、有機顔料、無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、雲母チタン等の顔料粉体;ベントナイト、タルク、カオリン等の粉体や、ロングラッシュ効果を高めるため、繊維を含有することができる。
各種粉体は、シリコーン、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アミノ酸、アルキルシラン、アクリルシリコーン、フッ素化合物等により表面処理したもの、あるいは有機又は無機マイクロカプセル中に内包したもの等を用いることができる。
粉体は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜10質量%含有するのが好ましい。
【0028】
また、本発明の睫用化粧料は、種々の界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明の睫用化粧料は、水溶性溶剤、皮膜剤、無機塩、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、色素、香料、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤等を含有することができる。
水溶性溶剤としては、炭素数1〜4の低級アルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸エステル類などが挙げられる。
皮膜剤としては、水溶性高分子、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、デンプン等が挙げられる。
【0030】
本発明の睫用化粧料は、水及び又は水系溶剤を連続相とする水中油型の乳化分散型の製剤とするのが、安定性、使用性、及び化粧持続性の点で好ましい。
【0031】
本発明の睫用化粧料は、通常の方法に従い、各成分を均一に混合し、攪拌することにより製造することができる。
【0032】
本発明の睫用化粧料は、マスカラ、マスカラ下地、マスカラトップコート等とすることができる。
【0033】
本発明の睫用化粧料は、マスカラに通常用いられる塗布具、例えば繊維を針金でねじったブラシや、コーム形状、コイル形状等の塗布具、樹脂を用いてブラシ形状に成形した樹脂成形ブラシなどを用いて適用することができる。このような塗布具を使用することで、均一に塗布することができるので、耐水性があり、化粧持続性に優れるとともに、温水でのクレンジング性をより向上させることができる。なお、クレンジング性とは、温水による睫用化粧料の洗浄性又は洗浄しやすさを言う。
【実施例】
【0034】
実施例1〜8、比較例1〜2
表1に示す組成のマスカラ(水中油型)を製造し、クレンジング性、耐水性及び化粧持ちを評価した。結果を表1に併せて示す。なお、ワックス分散物は、表2に示す組成のものを用いた。
【0035】
(製造方法)
表2に示す組成のワックス分散物中の油相成分を95℃で攪拌溶融する。次に、あらかじめ85℃にて均一溶解させた水相成分中に、この油相成分を添加し、室温まで攪拌冷却して、ワックス分散物を製造する。さらに、表1に示す組成の成分(A)、(B)、(C)、その他成分、ワックス分散物を室温で均一に混合し、脱気することにより、マスカラを製造した。
【0036】
(評価方法)
(1)クレンジング性(40℃水)
睫に塗布した睫用化粧料が、40℃のお湯で落とした時のクレンジング性能を確認する目的で、マスカラの取れ評価を行った。
すなわち、表1に示す組成のマスカラを、大きさ5mm×10mm、厚み50μmになるように、コーターを用いてプラスチックシートに塗布し、マスカラの皮膜を形成させた。
次に、マスカラ皮膜が形成されたプラスチックシートを、前記皮膜と反対面を40℃に設定したプレート上に接するように設置し、プラスチックシートの前記皮膜の上に40℃の温水0.1mLを滴下し、人の人差し指で、毎秒1往復で軽く擦り、皮膜が剥がれるまでの回数を測定した。表1に示す「クレンジング性(40℃水)」の評価は、N=5の平均回数である。
【0037】
(2)耐水性(20℃水):
睫に塗布した睫用化粧料が、20℃の水で容易に落とせない(耐水性)を有することを確認する目的で、マスカラの取れ評価を行った。
すなわち、表1に示す組成のマスカラを、大きさ5mm×10mm、厚み50μmになるように、コーターを用いてプラスチックシートに塗布し、マスカラの皮膜を形成させた。
次に、皮膜が形成されたプラスチックシートを、前記皮膜と反対面を20℃に設定したプレート上に接するように設置し、プラスチックシートの前記皮膜の上に20℃の水0.1mLを滴下し、人の人差し指で、毎秒1往復で軽く擦り、皮膜が剥がれるまでの回数を測定した。表1に示す「耐水性(20℃水)」の評価は、N=5の平均回数である。
【0038】
(3)化粧持ち:
専門評価者10名により、マスカラを実際に上睫に塗布し、6時間経過後の状態を目視観察し、化粧持ちが良い(カスが落ちにくい)と評価した人数により判定した。
【0039】
【表1】
【0040】
※1;大同化成社、ビニゾール2140L
【0041】
【表2】
【0042】
※2;ミツバ貿易社、精製キャンデリラワックスSR−2
※3;セラリカNODA社、脱臭精製カルナウバワックスNo.1
※4;クローダジャパン社、BEES WAX−S
※5;香栄興業社、極度水添ホホバ油
※6;日本合成化学社、ゴーセノールEG−05
【0043】
実施例9
以下に示す組成のマスカラを、実施例1〜8と同様にして製造した。
得られたマスカラは、耐水性に優れるとともに、温水で素早く落とすことができ、クレンジング性も良好であった。また、化粧持ちにも優れていた。
【0044】
(組成)
アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン
(Tg=0℃、固形分46%)※1 35.0(質量%)
(C
2H
5O(CH
2CH
2O)
3)
3PO 4.0
ワックス分散物(表2) 残量
合計 100.0