(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に製パン材料を収容するパンケースと、開口部を介して内部に前記パンケースを収容する本体と、前記パンケース内において底部から上方に突出する回転軸に一体的に取付けられ、当該回転軸周りで回転して前記製パン材料を混練する混練羽根とを備え、
前記製パン材料が水、小麦粉、イーストを含み、少なくとも前記水、前記小麦粉、前記イーストの順で前記パンケース内に投入された前記製パン材料を、前記混練羽根により混練する製パン機であって、
前記製パン材料が、更に、炊飯米を含み、
前記炊飯米が前記小麦粉の投入後であって前記イーストの投入前に前記パンケース内に投入され、前記パンケースの底部から上方に向かって前記水、前記小麦粉、前記炊飯米、前記イーストの順で積層された積層状態で、前記パンケース内に配設された前記混練羽根の上端が、前記積層状態にある前記小麦粉と当該小麦粉の上方に積層された前記炊飯米との境界面よりも上側に位置するように構成されてなる製パン機。
前記パンケース内に、前記水、前記小麦粉のうちの一部、前記炊飯米、前記小麦粉のうちの残りの他部、前記イーストの順で投入され、前記積層状態として、前記パンケースの底部から上方に向かって前記水、前記小麦粉のうちの一部、前記炊飯米、前記小麦粉のうちの残りの他部、前記イーストの順で積層され、前記パンケース内に配設された前記混練羽根の上端が、少なくとも前記水と前記小麦粉のうちの一部との境界面よりも上側に位置するように構成されてなる請求項1に記載の製パン機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の製パン機において、パンケース内に製パン材料を上述の順で投入し、上記積層状態を維持させたまま長時間放置すると、混合液とこの混合液の上側に積層された小麦粉との境界部分には、混合液中の水を吸収し固化した固化層が形成される。しかしながら、パンケース内に配設された混練羽根は、その全体が混合液中に略水没するように配設されているので、混練工程において混練羽根を回転させても混合液中で回転するのみで当該固化層を十分に混練することが困難であった。そのため、当該固化層及びその上側に積層する小麦粉やイースト等が十分に混練されないまま混練工程が終了し、その後、発酵工程及び焼成工程に移行してパンが焼き上げられてしまう場合があった。
【0006】
一方で、近年、炊飯器等で白米等を炊飯した炊飯米の有効活用や食感・食味の向上等を目的として、小麦粉に炊飯米を加えた製パン材料を用いて製パンする製パン機が登場している。このような製パン機では、パンケース内に製パン材料を投入する際には、水及び炊飯米を投入して炊飯米を予め十分にほぐした後、その上側に小麦粉、その他の材料(砂糖、塩、油脂等)、イーストの順で投入して積層させることが行われている。
【0007】
ここで、パンケース内に当該積層状態を維持させたまま長時間放置すると、炊飯米が水を吸収し流動性が高い状態となる。しかしながら、特許文献1に記載の製パン機と同様に従来の製パン機では、パンケース内に配設された混練羽根は、その全体が水及び炊飯米が存在する流動性の高い液中に略水没するように構成されているので、混練工程において混練羽根を回転させても、当該混練羽根は流動性の高い液中で回転するのみで当該炊飯米の上側に積層する小麦粉やイースト等を十分に混練することが困難であった。そのため、炊飯米の上側に積層する小麦粉やイースト等が十分に混練されないまま混練工程が終了し、その後、発酵工程及び焼成工程に移行してパンが焼き上げられてしまう場合があった。
【0008】
このように、小麦粉、炊飯米、イースト等の製パン材料が十分に混練されないまま、混練工程が終了し、発酵工程及び焼成工程に移行すると、所望の焼き上がり状態での製パンを実現することが非常に困難となる。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも水、小麦粉、イーストの順でパンケース内に製パン材料が投入される構成で、且つ、製パン材料として炊飯米を含む場合であっても、混練工程において混練羽根によりこれら製パン材料を十分に混練することができる
製パン機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る製パン機は、内部に製パン材料を収容するパンケースと、開口部を介して内部に前記パンケースを収容する本体と、前記パンケース内において底部から上方に突出する回転軸に一体的に取付けられ、当該回転軸周りで回転して前記製パン材料を混練する混練羽根とを備え、
前記製パン材料が水、小麦粉、イーストを含み、少なくとも前記水、前記小麦粉、前記イーストの順で前記パンケース内に投入された前記製パン材料を、前記混練羽根により混練する製パン機であって、その特徴構成は、
前記製パン材料が、更に、炊飯米を含み、
前記炊飯米が前記小麦粉の投入後であって前記イーストの投入前に前記パンケース内に投入されて、前記パンケースの底部から上方に向かって前記水、前記小麦粉、前記炊飯米、前記イーストの順で積層された積層状態で、前記パンケース内に配設された前記混練羽根の上端が、
前記積層状態にある前記小麦粉と当該小麦粉の上方に積層された前記炊飯米との境界面よりも上側に位置するように構成されてなる点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、基本的に、製パン材料が少なくとも水、小麦粉、炊飯米、イーストの順にパンケース内に投入され、パンケースの底部から上方に向かって水、小麦粉、炊飯米、イーストの順で積層された積層状態となるので、水と炊飯米とが直接接触せず、炊飯米が水を吸収して流動性が高くなることを防止でき、また、水とイーストとが直接接触せず、イーストが混練工程前に発酵を開始することを防止することができる。
また、パンケース内に規定量の製パン材料が上記積層状態で積層されると、パンケース内に配設された混練羽根の上端が、少なくとも水と小麦粉との境界面よりも上側に位置するように構成されているので、水と当該水の上側に積層された小麦粉との境界部分に水を吸収し固化した固化層が形成された場合でも、混練羽根が水の存在する部位のみで空回りすることがなく、しかも、当該固化層を混練羽根の回転に巻き込みながら混練することができ、当該固化層、さらには、その上側に積層する小麦粉、炊飯米、イースト等を十分に混練することができる。これにより、水の上側に浮かんだ状態で積層する小麦粉が水を吸収して固化層を形成した場合でも、混練工程が終了した際に固化層が残存していたり混練が不十分となることを良好に防止でき、混練工程において混練羽根により所望の状態にまで十分な混練を行うことができる。よって、十分に混練された製パン材料(パン生地)を発酵工程及び焼成工程に移行させて、所望の焼き上がり状態で製パンを行うことができる。
さらに、本特徴構成によれば、パンケース内に配設された混練羽根の上端が、積層状態にある小麦粉と当該小麦粉の上方に積層された炊飯米との境界面よりも上側に位置するように構成されているので、製パン材料として炊飯米を含んでいる場合でも、固化層を形成する小麦粉とともに炊飯米を混練羽根の回転に直接且つ確実に巻き込みながら混練することができ、当該固化層、その上側に積層する小麦粉、炊飯米、イースト等を十分且つ確実に混練することができる。
【0012】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記パンケース内に、前記水、前記小麦粉のうちの一部、前記炊飯米、前記小麦粉のうちの残りの他部、前記イーストの順で投入され、前記積層状態として、前記パンケースの底部から上方に向かって前記水、前記小麦粉のうちの一部、前記炊飯米、前記小麦粉のうちの残りの他部、前記イーストの順で積層され、前記パンケース内に配設された前記混練羽根の上端が、少なくとも前記水と前記小麦粉のうちの一部との境界面よりも上側に位置するように構成されてなる点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、パンケース内に規定量の製パン材料が上記積層状態で積層されると、パンケース内に配設された混練羽根の上端が、少なくとも水と小麦粉のうちの一部との境界面よりも上側に位置するように構成されているので、水と当該水の上側に積層された小麦粉のうちの一部との境界部分に水を吸収し固化した固化層が形成された場合でも、混練羽根が水の存在する部位のみで空回りすることがなく、しかも、当該固化層を混練羽根の回転に巻き込みながら混練することができ、当該固化層、さらには、その上側に積層する小麦粉のうちの一部、炊飯米、小麦粉のうちの残りの他部、イースト等を十分に混練することができる。
特に、炊飯米の上方に小麦粉のうちの残りの他部が積層されているので、比較的水分を多く含む炊飯米が空気に直接接触し難い積層状態とすることができ、炊飯米が乾燥することを良好に防止することができる。
【0014】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記回転軸の回転駆動を制御する制御部を備え、
前記制御部が、前記製パン材料が前記パンケース内に積層された前記積層状態において、タイマー予約による設定に応じた前記回転軸の駆動開始時間に前記回転軸の回転駆動を開始させて、前記混練羽根による前記製パン材料の混練工程を開始させる点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、製パン材料がパンケース内に積層された前記積層状態において、回転軸の回転駆動を制御する制御部がタイマー予約による設定に応じた回転軸の駆動開始時間に回転軸の回転駆動を開始させて、混練羽根による製パン材料の混練工程を開始させるので、混練工程が開始されるまでの間に、水の上側に浮かんだ状態で積層する小麦粉がより多くの水を吸収してより厚みのある固化層を形成する虞のある状況であるが、このような状況であっても、上述の通り、混練羽根が水の存在する部位のみで空回りすることがなく、しかも、当該固化層を混練羽根の回転に巻き込みながら混練することができ、当該固化層、さらには、その上側に積層する小麦粉、炊飯米、イースト等を十分に混練することができる。なお、駆動開始時間は、タイマー予約の設定がされた後の任意の長さの時間が経過した時点或いは任意の時刻とすることができるが、例えば、使用者によるタイマー予約の設定がされた後、数時間から十数時間程度経過した時点又は時刻とすると、前日に製パン材料をパンケース内に投入し、その後、翌朝に製パンが完了するように構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1及び
図2に示すように、製パン機は、上方が開口部4にて開口したケーシングCを内部に備えた本体1、開口部4を介してケーシングCの内部に収容されて着脱自在に装着されるパンケース2、ケーシングCの開口部4を閉塞可能で開閉自在な蓋体3、ケーシングCと蓋体3とにより形成される加熱室5内を温度調整する電熱ヒータ6、電熱ヒータ6の運転を制御する制御部7等を備えて構成されている。
【0022】
図2に示すように、本体1は、平面視において、前後方向に若干長尺の概ね長方形状で、上部が開口した有底箱状に形成されている。その本体1内における前後方向及び左右方向の略中央位置には、四隅が丸みを帯びた概ね正方形状で、上部が開口した有底箱状のケーシングCが設けられている。そして、本体1内は概ね、ケーシングC内に形成される加熱室5と、ケーシングCの前側(
図2の左側)に形成される制御部収容室8と、それら加熱室5及び制御部収容室8の下方の伝動部収容室9との三区画に仕切られている。
【0023】
ケーシングCは、平面視で、矩形板状で中央部分に円形開口部(図示せず)を有する底板部材C1と、四隅が丸みを帯びた概ね正方形状で角筒状に形成され、底板部材C1の外周縁部に固定された周壁部材C2とを備えて構成されている。底板部材C1の下部には、本体1の底部に固定された縦断正面視で概略逆U字形状の土台部材10が配設され、底板部材C1と土台部材10とは、スペーサ部材11により間隔を開けた状態でビス(図示せず)により固定されている(
図2参照)。従って、有底箱状のケーシングCと、後述する縦断側面視及び縦断正面視で上方に膨出する概略逆U字形状の蓋体3とにより区画形成された内部空間が加熱室5として形成され、この加熱室5内にパンケース2が収容されることとなる。
【0024】
図2及び
図3に示すように、パンケース2は、平面視において四隅が丸みを帯び前後方向に若干長尺の概ね長方形状で、上部が開口した有底箱状に形成され、パンケース2の底部の下方側には、パンケース2を載置支持するパンケース台12が一体的に取り付けられている。パンケース2は、パンケース台12が底板部材C1及びスペーサ部材11に形成された円形開口部に嵌合した状態で、ケーシングC内(加熱室5内)に装着される。
【0025】
パンケース2の底部には、パンケース側従動軸13(回転軸の一例)が、上下方向の軸心X回りで回転自在に支持された状態で設けられ、パンケース側従動軸13におけるパンケース2の底部から下方側に突出した突出部には、従動側連結具14が固定されている。パンケース側従動軸13におけるパンケース2内の底部から上方側に突出した部分には、混練羽根15が一体的に且つ着脱自在に装着される。混練羽根15は、パンケース側従動軸13に挿通された状態で当該パンケース側従動軸13と一体的に回転可能に支持される円筒状基部15aと、平面視で円筒状基部15aの外周面の一箇所から径方向外方に延びる板状の羽根体15bを備えている。そして、この羽根体15bの上部は、側面視で、概略への字状に形成されており、混練羽根15がパンケース側従動軸13に挿通された状態では、この羽根体15bの上端15cは、円筒状基部15aの上端よりも上側に突出するように形成されている。そして、混練羽根15は、パンケース2内において、パンケース側従動軸13(軸心X)周りで当該パンケース側従動軸13とともに一体的に回転するように構成されている。
【0026】
図2に示すように、本体1内のケーシングCの下部に形成された伝動部収容室9には土台部材10が配設され、当該土台部材10には電動モータ30とパンケース側従動軸13とを伝動連結する伝動部20が設けられている。
伝動部20は、土台部材10から上方及び下方に突出して回転自在に軸支された土台側従動軸21と、土台側従動軸21の上端に固定され当該土台側従動軸21と一体的に回転自在なプーリ22と、プーリ22の上面から上方側に一体的に突出形成されてパンケース2の従動側連結具14に係合自在な一対の突出部23,23と、電動モータ30の駆動軸30a及びプーリ22にわたって巻回されたタイミングベルト24とを備えて構成されている。これにより、パンケース2がケーシングC内に装着されたときに、電動モータ30が回転すると、一対の突出部23,23が従動側連結具14に係合して突出部23,23及び従動側連結具14が一体的に回転し、パンケース側従動軸13が回転駆動されるように構成されている。
【0027】
図1及び
図2に示すように、制御部収容室8は、ケーシングCの周壁部材C2の前方側に、遮熱板(図示せず)を介した状態で形成されている。制御部収容室8内の下方側には、電熱ヒータ6や電動モータ30等の作動を制御して、製パン機の運転を制御する制御部7が配設され、上方側には、使用者が製パン機の運転状態等を操作可能な操作部31及び運転状態等を表示する表示部32が配設されている。図示しないが、制御部7は、公知の情報処理手段であるCPUやメモリ等を備えて構成され、また、電源から供給される電力を適切に各機器に供給可能に構成されており、少なくとも、制御部7が、パンケース2内に配設された混練羽根15によりパンケース2内に収容された製パン材料を混練する混練工程と、混練された製パン材料を発酵する発酵工程と、発酵した製パン材料を焼き上げる焼成工程とを、順次自動的に実行し、製パンする構成とされている。
【0028】
図1に示すように、操作部31には、製パン機の運転開始及び停止(タイマー予約の開始及び停止を含む)を指令する運転キー31Aのほかに、指定された焼き上がり時刻で製パンを完了するようにタイマー予約するタイマー予約キー31B、時刻合わせキー31C、取消キー31D、焼き上げコースを選択するコース選択キー31E等が設けられている。また、表示部32には、液晶パネルが配設され、操作部31により指令された内容や、現在の製パン機の運転状態(例えば、タイマー予約された際の焼き上がり時刻)等を表示可能に構成されている。
【0029】
図1及び
図2に示すように、蓋体3は、ケーシングCの開口部4の後縁部に、ヒンジ構造によりケーシングCの左右方向(
図2の紙面表裏方向)に沿った軸心周りに揺動自在に設けられて、その揺動によりケーシングCの開口部4を開閉自在に構成されている。また、蓋体3は、上部に配設される外蓋3Aと、下部に配設される内蓋としての遮熱板3Bと、外蓋3Aと遮熱板3Bとの間に配設され、少なくとも可視光を透過して外部から加熱室5内を視認可能な耐熱板ガラス3Cからなる確認窓とを備える。
【0030】
図2に示すように、電熱ヒータ6は、長尺状で屈曲したいわゆるシーズヒータで構成され、ケーシングCの底板部材C1の上面において周壁部材C2の内壁に沿うように配設されている。すなわち、加熱室5内の下部に(パンケース2の下部において、パンケース2の側壁面を外周側から所定間隔を空けて囲繞する形態で)配設されて、加熱室5内、特に、加熱室5内の下部、パンケース2の下部及び側部を加熱できるように構成されている。なお、電熱ヒータ6は、加熱室5内を加熱して、パンケース2内の製パン材料を良好に加熱可能であれば、加熱室5内の適宜位置に配設することができる。
【0031】
次に、本願に係る製パン機及びその製パン機への材料投入方法の特徴的構成について説明する。
【0032】
まず、本願では、製パン材料としては、少なくとも水、強力粉(小麦粉の一例)、白米を炊飯した白ご飯(炊飯米の一例)、ドライイースト(イースト(酵母菌)の一例)を用いる。本実施形態では、これらに加えて、バター(油脂の一例)、塩及び砂糖(調味料等の一例)を加えたものを用いる。
なお、本願では、炊飯米とは、白米、玄米、もち米、雑穀等、或いはそれらの混合物を、水分を吸収させつつ加熱して適度にα化(糊化)させるように炊飯したものをいい、例えば、白米が炊飯されたもの(いわゆる白ご飯)、玄米が炊飯されたもの、白米に稗等の雑穀を混ぜ込んで炊飯されたもの、白米及びもち米、更には、小豆を混ぜ込んで炊飯されたもの等を例示することができる。
【0033】
次に、
図3に示すように、制御部7が混練工程を実行する前には、使用者が蓋体3を開き、ケーシングCの開口部4を介して取り外したパンケース2内に混練羽根15を装着した後、パンケース2内に、少なくとも水、強力粉のうちの半量である第1強力粉(小麦粉のうちの一部)、白ご飯、強力粉のうちの残りの半量である第2強力粉(小麦粉のうちの残りの他部)、塩、砂糖、バターの順で投入し、最後に、ドライイーストを中央部に投入する。すなわち、白ご飯が第1強力粉の投入後であってドライイーストの投入前にパンケース2内に投入されて、パンケース2内における各製パン材料は、底部から上方に向かって水、第1強力粉、白ご飯、第2強力粉、塩、砂糖、バター、更に、ドライイーストの順で積層された積層状態となる。この積層状態では、水の上側に浮かんだ状態で積層する第1強力粉の上側には白ご飯が積層され、この白ご飯の上側には第2強力粉が積層されている。なお、パンケース2内に投入される各製パン材料は、後述するように、それぞれ予め規定量が定められている。また、
図3では、水、第1強力粉、白ご飯、第2強力粉、塩、砂糖、バターの各層は、積層状態の概略イメージを示すために略水平な境界面を備えるように図示されているが、実際には、水平ではなく、凹凸状の面部分や傾斜した面部分が複数形成された境界面となっている。
【0034】
このようにパンケース2内の製パン材料が上記積層状態となると、パンケース2内に配設された混練羽根15の羽根体15bの上端15cが、第1強力粉と白ご飯との境界面よりも上側に位置するように構成されている。
すなわち、本実施形態では、一斤分のパンを焼き上げるために、規定量の製パン材料としてそれぞれ、水を140ml(5℃程度)、白ご飯を150g(20℃程度)、強力粉を250g(第1強力粉125g、第2強力粉125g)、砂糖を16g、塩を5g、バターを15g、ドライイーストを3gとしてパンケース2内に投入すると、混練羽根15の羽根体15bの上端15cが第1強力粉と白ご飯との境界面よりも上側に位置するように、これら各製パン材料の投入量、パンケース2内の底部の容積、及び混練羽根15の羽根体15bの上端15cがパンケース2の底部から突出する突出高さ等が適切に設定されている。
【0035】
そして、このパンケース2内の製パン材料が上記積層状態を維持したまま、使用者がパンケース2をケーシングC内に装着し蓋体3を閉じた後、コース選択キー31Eを操作してご飯パンを焼き上げるコースに設定し、さらに、タイマー予約キー31B及び時刻合わせキー31Cを操作して焼き上がり時刻を設定して(タイマー予約して)、運転キー31Aを操作する。
すると、制御部7は、運転キー31Aが操作された後、タイマー予約により設定された焼き上がり時刻から逆算して混練工程を開始すべき駆動開始時刻(タイマー予約による設定に応じたパンケース側従動軸13の回転駆動を開始させる駆動開始時間の一例)を導出し、当該駆動開始時刻となるまで待機し、当該駆動開始時刻になると、電動モータ30を作動させパンケース側従動軸13の回転駆動を開始させて、混練羽根15による製パン材料の混練工程を開始させ、その後、順次、発酵工程及び焼成工程を実行して、設定された焼き上がり時刻に製パンを完了させる。本実施形態では、駆動開始時刻は、運転キー31Aが操作された後、タイマー予約により設定された焼き上がり時刻から逆算した混練工程を開始すべき時刻である。なお、運転キー31Aが操作された後、駆動開始時刻となるまでの時間の長さは、製パンが完了する前日に製パン材料をパンケース2内に投入し、その後、翌朝に製パンが完了するように、数時間から十数時間程度の長さの時間とすることができ、本実施形態では、10時間となっていた。
【0036】
この場合、パンケース2内の製パン材料は、上記積層状態を維持し、混練工程が開始される駆動開始時刻となるまでの間に、水の上側に浮かんだ状態で積層する第1強力粉が多くの水分を吸収して、水と第1強力粉との境界部分に比較的厚みの厚い固化層が形成されることとなる。なお、上述に記載した規定量(所定の体積比や質量比)の製パン材料を用いて、上記パンケース2内の製パン材料を上記積層状態とした場合には、パンケース2内に製パン材料を投入した初期から混練工程が開始される(駆動開始時刻となる)までの間(例えば、10時間、或いは、22時間経過した場合)でも、当該固化層は若干下方に移動する傾向はあるものの、水と第1強力粉との境界部分には固化層を形成した状態で積層状態が維持されたままとなることが確認されている。
【0037】
従って、制御部7は、混練工程を開始すべき駆動開始時刻になり、混練羽根15の羽根体15bの上端15cが、水と第1強力粉との境界部分に形成された固化層よりも上側で、しかも、第1強力粉と白ご飯との境界面よりも上側に位置する状態で、当該混練羽根15を設定された回転速度で回転させることで、混練羽根15が水の存在する部位のみで空回りすることがなく、しかも、固化層を形成する第1強力粉とともに白ご飯を混練羽根15の回転に直接且つ確実に巻き込みながら混練することができ、当該固化層、その上側に積層する第1強力粉、白ご飯、第2強力粉、ドライイースト等を十分且つ確実に混練することができる。また、基本的に、上記積層状態では、水と白ご飯とが直接接触せず、白ご飯が水を吸収して流動性が高くなることを防止でき、また、水とドライイーストとが直接接触せず、ドライイーストが混練工程前に発酵を開始することを防止することができる。
加えて、白ご飯の上方に第2強力粉が積層されているので、比較的水分を多く含む白ご飯が空気に直接接触しないように積層することができ、白ご飯が乾燥することを良好に防止することができる。
【0038】
そして、制御部7は、混練工程において十分且つ確実に混練されたパンケース2内の製パン材料(パン生地)を、電熱ヒータ6を加熱作動させて発酵させる発酵工程を実行し、さらに、電熱ヒータ6を加熱作動させて焼き上げる焼成工程を順次自動的に実行する。
よって、少なくとも水、小麦粉、ドライイーストの順でパンケース2内に製パン材料が投入される構成で、且つ、製パン材料として白ご飯(炊飯米)を含む場合であっても、混練工程において混練羽根15によりこれら製パン材料を十分に混練することができ、その後の発酵工程及び焼成工程を経て、所望の焼き上がり状態での製パンを実現することができる。
【0039】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態では、パンケース2内に、水、第1強力粉、白ご飯、第2強力粉、塩、砂糖、バター、ドライイーストの順で積層させて積層状態とする際、混練羽根15の羽根体15bの上端15cが第1強力粉と白ご飯との境界面よりも若干上側に位置するように、製パン材料の規定量(体積比や質量比)、パンケース2内の底部の容積、及び混練羽根15の羽根体15bの上端15cがパンケース2の底部から突出する突出高さ等を適切に設定したが、製パン材料を確実且つ十分に混練することができる構成であれば、混練羽根15の羽根体15bの上端15cが、水と第1強力粉との境界面よりも若干上側に位置するように適宜設定することもできる。
【0040】
(B)上記実施形態では、強力粉のうち第1強力粉を水の上側に積層させ、第2強力粉を、第1強力粉の上側に積層された白ご飯の上側に積層させたが、白ご飯の乾燥が防止できる或いは乾燥を考慮しなくてよいのであれば、第2強力粉と第1強力粉とを分けることなく両者をまとめて、水の上側に直接積層させる構成としてもよい。また、第1強力粉及び第2強力粉をそれぞれ、強力粉の全量の半量で構成する場合に限らず、適宜体積比及び質量比を変更してもよい。
なお、上記実施形態では、小麦粉として強力粉を例にして説明したが、上述のように、水と小麦粉との境界部分に固化層が形成されて混練が適切に行われない可能性がある場合には、強力粉以外の小麦粉を使用した際でも、混練工程における十分な混練を期待することができる。
【0041】
(C)上記実施形態では、パンケース2内に、白ご飯或いは第2強力粉を投入した後に、塩、砂糖、バターを投入する構成としたが、少なくとも、水、強力粉、白ご飯の順で投入される構成であれば、投入順序は適宜変更しても構わない。例えば、水、バター、強力粉、塩及び砂糖、白ご飯、イーストの順で投入したり、水、強力粉、バター、塩及び砂糖、白ご飯、イーストの順で投入する構成とすることもできる。
【0042】
(D)また、上記製パン材料以外の材料、例えば、スキムミルク等の乳製品、ナッツ類、ドライフルーツ等を、使用者が手動で、或いは、蓋体3の下部に設けた自動投入機構(図示せず)を利用して、パンケース2内に適宜タイミングで投入する構成としてもよい。さらに、パンケース2内に製パン材料を投入する際、イースト以外の製パン材料を投入した直後に、イーストを投入する構成としてもよいし、自動投入機構を利用して混練工程の開始直前或いは混練工程の開始直後にイーストを自動的に投入する構成としてもよい。
【0043】
(E)上記実施形態では、使用者がタイマー予約キー31Bを操作してタイマー予約により焼き上がり時刻を設定し、制御部7が、この焼き上がり時刻から逆算してパンケース側従動軸13の回転駆動を開始させる(混練工程を開始する)駆動開始時間としての駆動開始時刻を導出し、当該駆動開始時刻になるとパンケース側従動軸13の回転駆動を開始させる(混練工程を開始する)構成としたが、制御部7は、タイマー予約による設定に応じて、その他の駆動開始時間を導出し、その駆動開始時間にパンケース側従動軸13の回転駆動を開始させることもできる。
例えば、使用者がタイマー予約キー31Bを操作してタイマー予約により焼き上がりまでの経過時間を設定すると、制御部7が、焼き上がりまでの経過時間から逆算して駆動開始時間としての駆動開始時刻を導出し、駆動開始時刻になると、パンケース側従動軸13の回転駆動を開始させる(混練工程を開始する)構成とすることもできる。同様に、制御部7が、この焼き上がりまでの経過時間から逆算して駆動開始時間としての駆動開始時点を導出し、さらに、駆動開始時点となるまでの時間を導出して、当該時間が経過すると駆動開始時点になったものとして、パンケース側従動軸13の回転駆動を開始させる(混練工程を開始する)構成とすることもできる。
また、例えば、使用者がタイマー予約キー31Bを操作してタイマー予約により駆動開始時刻を設定すると、制御部7が、駆動開始時刻になるとパンケース側従動軸13の回転駆動を開始させる(混練工程を開始する)構成としてもよく、或いは、使用者がタイマー予約キー31Bを操作してタイマー予約により駆動開始までの経過時間を設定すると、制御部7が、当該経過時間が経過すると駆動開始時点になったものとして、パンケース側従動軸13の回転駆動を開始させる(混練工程を開始する)構成としてもよい。
【0044】
(F)上記実施形態では、タイマー予約により、制御部7が混練工程を駆動開始時間に開始する構成について説明したが、タイマー予約されず、製パン材料がパンケース2内に投入された後、適宜タイミングで混練工程を開始する場合でも、本願の発明を適用して混練羽根15により製パン材料の十分且つ確実な混練を実現することができる。
【0045】
(G)上記実施形態では、パンケース2内に少なくとも炊飯米が含まれる際には、水、小麦粉、炊飯米、イーストの順で投入し積層構造を形成して、コース選択キー31Eを操作してご飯パンを焼き上げるコースに設定して、混練工程、発酵工程及び焼成工程を実行する構成としたが、本願の製パン機では、これに加えて、炊飯米が含まれない製パン材料(少なくとも水、小麦粉、イーストが含まれる)を使用する際には、コース選択キー31Eを操作して小麦粉パンを焼き上げるコースに設定し、混練工程、発酵工程及び焼成工程を実行する機能を併せ持つことも可能である。