(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高圧電源部は、交流電圧を正負の高圧パルス電圧に変換し、前記正イオン発生部の放電電極に、正の高圧パルス電圧を供給し、前記負イオン発生部の放電電極に、負の高圧パルス電圧を供給する請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘアドライヤー。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る
ヘアドライヤーの実施の形態である美容機器の外観を示す斜視図であり、
図2は、該美容機器の内部構成を示す透視図である。
この美容機器は、内部に空気流路3が形成された略筒形状を有しており、空気流路3の下流側には、空気を吐出する吐出口1が形成され、上流側には空気を吸入する吸入口2が形成されている。空気流路3は、吸入口2より吐出口1に至る流路であり、空気流路3内には、シロッコファン及びシロッコファンを駆動するモータを備えた送風機構4が設けてあり、シロッコファンの吸込み口が吸入口2となっている。
【0018】
送風機構4は、吸入口2より空気を吸入して空気流路3内に導入し、空気流路3の下流側に空気を通流させる。空気流路3の送風機構4より下流側の部分には、空気流路3を流れる空気を加熱する為の加熱部5が設けてある。加熱部5は、絶縁板と絶縁板の外側に巻線されたヒータ線とで構成されている。
また、空気流路3の送風機構4より下流側で且つ加熱部5より上流側の部分からは、二つの分流路3a,3bが分岐している。分流路3a,3bは、空気流路3の側面から外方に連設された筒形状の突出筒体7a,7bの内部に形成され、分流路3a,3bの入口で本体の空気流路3と連通している。
【0019】
二つの分流路3a,3b内には、正イオン、負イオンをそれぞれ発生させるイオン発生部10a,10bが各々設けてあり、イオン発生部10a,10bが発生させた正イオン、負イオンは、個別に風と共に毛髪へ向けて送られる。
空気流路3の吸入口2側には、空気流路3の長手方向と略直角方向に柄21が設けられ、柄21の使用者が握る部分には、操作スイッチ6が設けられている。柄21の内部には、イオン発生部10a,10bを含むイオン発生装置の本体ケース14が収納されている。
【0020】
図3は、イオン発生装置10の外観例を示す斜視図である。
イオン発生装置10は、その回路部を収納する本体ケース14と、イオン発生部10a,10bとを備えている。イオン発生部10a,10bは、略半球形状であり、その半球の平面部には、例えば直径8mm程度の円形状に形成されたイオンの放出孔14a,14bが開口し、半球の頂部は、高圧電線により本体ケース14に接続されている。
放出孔14a,14b内の略中心には、針形状の放電電極11a,11bが、放出孔面を直角方向に貫く態様で配設されている。また、放電電極11a,11bの周囲には、環状の対向電極12a,12bが、放出孔14a,14bに沿って対向配置されている。
【0021】
図4は、イオン発生装置10の構成例を示す回路図である。
このイオン発生装置10は、対向電極12a,12b及び放電電極11a,11bが、本体ケース14内に収納された高圧電源部13に接続されている。
高圧電源部13は、コンセントを通じてAC100V電源15に接続され、コンセントの一方のプラグには、ダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードには、抵抗R1を通じて、コンデンサC1の一方の端子、及び二端子型サイリスタD2のアノードが接続されている。コンセントの他方のプラグには、コンデンサC1の他方の端子が接続され、二端子型サイリスタD2のカソード及びコンセントの他方のプラグ間には、変圧器16の一次側コイルが接続されている。
【0022】
変圧器16の二次側コイルの一方の端子は、イオン発生部10aのダイオードD3のカソードに接続され、ダイオードD3のアノードは、放電電極11aに接続されている。変圧器16の二次側コイルの一方の端子は、また、イオン発生部10bのダイオードD4のアノードに接続され、ダイオードD4のカソードは、放電電極11bに接続されている。
変圧器16の二次側コイルの他方の端子は、対向電極12a,12bに接続されている。
【0023】
一方の放電電極11aに接続された高圧電源部13は、負の高圧パルス電圧(例えば、周波数60Hz、尖頭電圧約−2kV)を発生させる。他方の放電電極11bに接続された高圧電源部13は、正の高圧パルス電圧(例えば、周波数60Hz、尖頭電圧約2kV)を発生させる。これにより、放電電極11a,11bの先端部と対向電極12a,12bとの間で放電が起こり、プラズマが発生する。生成したプラズマにより、空気中の酸素(O
2)及び水(H
2O)等の分子がエネルギーを受ける。
【0024】
放電電極への印加電圧が正電圧の場合は、空気中の水分子が電離して水素イオン(H
+)が生成する。この水素イオンが空気中の水分子とクラスタリングして(群がって結合して)、H
+(H
2O)m(mは任意の自然数)から成る正イオンが主として発生する。そして、放電電極11bを配した放出孔14bから正イオンが放出される。
【0025】
放電電極への印加電圧が負電圧の場合は、空気中の酸素分子又は水分子が電離して酸素イオンO
2−が生成する。この酸素イオンが空気中の水分子とクラスタリングして、O
2−H
2O)n(nは任意の自然数)から成る負イオンが主として発生する。そして、放電電極11aを配した放出孔14aから負イオンが放出される。
【0026】
本実施の形態1においては、正イオン発生部と負イオン発生部とが、空気流路3及び吹出口1に対して互いに反対の位置になるように配置しているが、正イオン発生部と負イオン発生部とは、それぞれが発生させたイオンが逆極性イオンの引力で結合して消滅することなく、吹出口1から送出される気流に乗って使用者の髪に到達すれば良いので、互いにもっと近寄っていても構わない。
発明者等の確認では、正イオン発生部及び負イオン発生部が、気流の送出方向に直行する方向に約20mm離れていれば、イオンの効果は発揮される。
【0027】
更に、正イオン発生部及び負イオン発生部をもっと近付けて、互いに接する程度に配置したとしても、結合によりイオンの一部が消滅することは避けられないものの、イオン送出量が減少するだけで、効果そのものが失われるわけではない。正イオン発生部及び負イオン発生部は、正イオンと負イオンとが、互いに吹出口1から送出される気流によって運ばれるように配置することが好ましい。
【0028】
以下に、このような構成の美容機器の動作を説明する。
この美容機器は、操作スイッチ6がオンされると、送風機構4及びイオン発生装置10が起動する。この際、送風機構4は、対象物の位置で風速15m/s以下で送風する。
送風機構4は、吸入口2から吸い込んだ空気を吐出口1から送出する。髪を乾燥するときに使用する温風を生成させる「乾燥動作」のときは、加熱部5が稼働する。
また、イオン発生部10a、10bからは、それぞれ負イオン、正イオンがそれぞれ単独で放出される。発生したイオンは、分流路3a、3bを経由して流入した空気により前方へ放出され、吐出口1から送出される気流に乗って使用者の髪に照射される。
【0029】
本実施の形態1の美容機器では、保湿運転動作と乾燥運転動作が選択可能に構成され、保湿運転動作時は、送風機構4及びイオン発生装置10が作動する。また、乾燥運転動作時は、送風機構4及び加熱部5が作動する。
正イオンH
+(H
2O)mと負イオンO
2−(H
2O)nとの結合により発生する水分及び両イオンにクラスタリングしている水分は、一般的に認識される水と異なり、分子レベルの大きさである為、髪の表面組織に関係なく、内部にまで浸透することで、水分量を直接的に増加させるものと考えられる。
【0030】
また、一般的に、放電によるイオン発生装置では、様々な種類のイオンが発生し得るが、毛髪への影響を考えると、窒素酸化物の発生は少ないほうが好ましい。
また、イオン反応により生成し髪に吸着した水、又はイオンにクラスタリングして髪に吸着した水は、加温により分子運動が活性化され、空気中への拡散が起こるので、保湿運転動作時には、加熱部5は起動されない方が好ましい。
また、これとは逆に、乾燥運転の時には、発生した両イオンは単に電荷として作用する為、髪が有する電荷と逆極性のイオンが主に髪に吸着して、帯電を解消する。一般的に、毛髪は正極に帯電し易い為、送出された負イオンが髪に吸着し、正イオンは反発される。
【0031】
以上、記述したように、乾燥運転時には保湿効果は期待されないが、除電効果が得られるので、イオン発生装置10は常に作動できるように構成することが好ましい。
従って、「乾燥運転」モードを設けて、送風機構4、加熱部5及びイオン発生装置を作動させ、「保湿運転」モードを設けて送風機構4及びイオン発生装置10のみを作動させるように構成しておくと、使用者への利便性が向上する。
【0032】
また、自動運転では無く、全て使用者が選択可能にしておくこともあり得る。送風機構4の風量を「強」、「弱」、「停止」と選択可能にし、イオン発生装置10の「運転」、「停止」、加熱部5の「運転」、「停止」が選択可能に構成されるのが好ましい。一般的には、操作スイッチ6を多回路スイッチとするか、機能手段毎にオン/オフするスイッチを別途設けることとするが、周知事項なので詳細は省略する。
【0033】
(実施の形態2)
毛髪の帯電は、季節や髪質により変化する為、実施の形態1に加えて、イオン発生装置10は、使用者によりイオン発生量を変化させることが可能な構成となっているのが好ましい。
また、同様に、送風機構4の送風量を変更可能な構成とする方が、使用者への利便性が増すが、この場合にも、送風量が多くてもイオン濃度が保てるように、イオン発生装置10のイオン発生量を増量することが好ましい。
【0034】
一般的に、イオン発生装置10のイオン発生量は、放電電極11a,11bに印加する電圧を変化させなくても、イオン発生部10a,10bを通過する風量が増加することにより、自然に増加する。しかし、必ずしも期待されるイオン濃度になるとは限らないので、放電電極11a,11bに印加するパルスを変更可能に構成しておくのが好ましい。
【0035】
図7は、本発明に係る
ヘアドライヤーの実施の形態2である美容機器のイオン発生装置の構成例を示す回路図である。
このイオン発生装置10cは、
図4に示すイオン発生装置10の構成に、コンピュータ制御で導通するスイッチング素子を外部に追加した例である。
【0036】
このスイッチング素子は、NPN型トランジスタTRであり、ベースが抵抗R3を通じてマイクロコンピュータ(マイコン)の出力端子に接続され、コレクタが抵抗R2を通じて、フォトカプラ17の発光ダイオードD5のカソードに接続されている。トランジスタTRのベース―エミッタ間に抵抗R4が接続され、エミッタには、12Vのバッテリ19のマイナス極が接続されている。バッテリ19のプラス極は、発光ダイオードD5のアノードに接続されている。
フォトカプラ17の受光側(出力側)は、フォト双方向ダイオードTであり、フォト双方向ダイオードTは、AC100V電源の他方の端子、及びコンデンサC1の他方の端子間に接続されている。
【0037】
スイッチング素子TRをイオン発生装置10cの本体回路内に取込むことも可能である。スイッチング素子TRをイオン発生装置10c本体に収納して、イオン発生装置10cに供給される電源を、マイクロコンピュータにより任意のタイミングでオン/オフすることにより、イオン発生部10a,10bに印加されるパルスの個数を変更できる。
一般に、パルスの個数が多くなると、イオン発生量は増加し、パルスの個数が減少すると、イオン発生量が減少する。使用者の利便性向上の為に、美容機器の本体にイオン増量及び減量を画一で指定する手段、つまり、「増量/減量」切替スイッチ、「増量」ボタン、「減量」ボタン等を設けておくのが一般的である。
【0038】
(実施の形態3)
図8は、本発明に係る
ヘアドライヤーの実施の形態3である業務用ヘアドライヤーの概略構成を示す説明図である。
業務用ヘアドライヤーとは、
図8Bに示すように、使用者の頭部をすっぽりと覆うように被る、ヘアサロン等で使用される大型の髪乾燥機である。
【0039】
図8Aに示す業務用ヘアドライヤー20は、ドーム筐体201の上部に、空気を吸い込む為の複数の開口207が円形状に配値形成され、ドーム筐体201内の上部に送風機202と加熱装置203とが設けられている。また、送風機202及び加熱装置203との間を仕切る穴開き円盤形状の仕切り板205が、使用者の頭部を入れる空間206を形成する。各開口207には、吸い込まれる空気を加湿する為の、保水機能を有するスポンジ等を備えた加湿部208が付設されている。
仕切り板205の下面には、複数のイオン発生装置204が配置されている。ここで使用するイオン発生装置204は、正イオン発生部と負イオン発生部とを備え、高圧回路を内蔵するユニット型である。
【0040】
図9は、イオン発生装置204の外観例を示す斜視図である。
このイオン発生装置204は、複数個が、仕切り板205(
図8)中央の開口部を中心にして、円形状に配置され、空間206(
図8)に十分な量のイオンを供給する。
このイオン発生装置204は、正イオン発生部204aと負イオン発生部204bとを備え、正イオン発生部204a及び負イオン発生部204bにそれぞれ対向するように、穴開き板金で形成された誘導電極204cが設けられている。正イオン発生部204a及び負イオン発生部204bは、それぞれ針状の放電電極であり、誘導電極204cとの間に高電圧が印加されることで、イオンが発生する。
【0041】
業務用ヘアドライヤー20においても、必要とされる機能は、実施の形態1,2の各場合と特に変わりはなく、空気を加熱して髪を乾燥させる「温風乾燥モード」と、空気を加熱しないで髪を乾燥させる「冷風乾燥モード」を備えている。
実施の形態1,2の各場合と同様に、「温風乾燥モード」では髪の帯電を除去することで髪をまとめ易くする効果が期待される。
従って、「温風乾燥モード」においても、送風機202、加熱装置203及びイオン発生装置204が作動する。
【0042】
また、「冷風乾燥モード」では、髪に水分を供給して髪質を改善する効果が期待され、送風機202及びイオン発生装置204が作動する。
また、季節や髪質によっても異なる乾燥条件を調節する為に、実施の形態1,2の各場合と同様に、イオンの量を変更するイオン量調節手段を設けるのが好ましい。
何れの運転モードにおいても、ドーム筐体201の上部に配値された複数の開口207から空気が吸い込まれて、仕切り板205とドーム筐体201内壁との間隙から空間206に送風される。
また、一般に、業務用のヘアドライヤーでは、乾燥時間を制御する為に、タイマ装置(図示せず)が設けられると共に、加熱の度合いを制御する為の温度設定装置(図示せず)が設けられるが、周知事項であり説明は省略する。
【0043】
(検証1)
以下に、イオン発生部10a,10bが生成させた正イオン、負イオンを含む空気と含まない空気とによる毛髪の水分量の変化を実験したので、その結果を説明する。
【0044】
(実験方法)
ダメージ毛髪(人毛)サンプルの作製
15cm、2gの黒い毛髪束を,ポリオキシエチレン(POE)ラウリル硫酸ナトリウム1%水溶液に,30〜35℃で1分間浸漬させた。
流水にて水洗後、タオルで水分を拭き取った後,ドライヤーにて乾燥させた。
4.5%過酸化水素水及び2.5%アンモニア水の1:1混合液に、毛髪を20分間浸漬させ、流水にて水洗後、タオルで水分を拭き取った後、ドライヤーにて乾燥させた。
【0045】
イオン照射
室温20±2℃、湿度50±5%の部屋で、毛髪サンプルに異なる濃度のイオンを照射した。
水分量の測定
イオン照射後の毛髪サンプルを2g計り取り、65℃で40分間加熱した。このとき減少した重量を全て水分量と見做し、ここで減少した水分を一次蒸散水とした。
更に、180℃で30分間加熱し、重量を測定した。ここで減少した水分量を二次蒸散水とした。
得られた値より、毛髪の乾燥重量(180℃で30分間加熱後の毛髪重量)に対する二次蒸散水分量(二次蒸散水分率)を求めた。
【0046】
(実験1)
毛髪サンプルに照射されるイオン濃度が、正負各々100,000個/cm
3になるように、イオン発生素子とイオン拡散させるファンとからなるイオン発生装置から50cmの位置に、ダメージ処理を施した毛髪サンプルを設置し8時間照射した。サンプル位置での風速は0.05m/sであり、無風と同等である為、自然放置を対照とした。
【0047】
この様にして、毛髪サンプルの水分量の変化を計測した結果を
図5に示す。
図5に示すグラフは、正負イオンを含有する空気を当てた毛髪と、イオンを含まない空気中で自然放置した毛髪との水分量の経時変化を表している。
このグラフによると、正負イオンを照射した毛髪は、イオン照射前と比較して、115.1%の水分量となり、逆に、風のみを照射した毛髪は、68.2%の水分量となった。イオンを照射した毛髪は、イオンを照射しないものに比べて、水分量が増加する結果が得られた。
【0048】
(実験2)
毛髪サンプルに照射されるイオン濃度が、正負各々3,000,000個/cm
3 になるように、イオン発生素子とイオン拡散させるファンとからなるイオン発生装置から10cmの位置に、ダメージ処理を施した毛髪サンプルを設置し8時間照射した。サンプル位置での風速は2.9m/sであった為、同じファンを用いて送風のみ行ったものを対照とした。
【0049】
この様にして、毛髪サンプルの水分量の変化を計測した結果を
図6に示す。
図6に示すグラフは、正負イオンを含有する空気を当てた毛髪と、イオンを含まない空気のみを当てた毛髪との水分量の経時変化を表している。
このグラフによると、正負イオンを照射した毛髪は、イオン照射前と比較して約113.2%の水分量となり、逆に、風のみを照射した毛髪は、88.3%の水分量となった。イオンを照射した毛髪は、イオンを照射しないものに比べて水分量が増加する結果が得られた。
【0050】
(実験3)
毛髪サンプルに照射されるイオン濃度が、正負各々2,000,000個/cm
3になるように、イオン発生素子とイオン拡散させるファンとからなるイオン発生装置から15cmの位置に、ダメージ処理を施した毛髪サンプルを設置し20分間照射した。サンプル位置での風速は8.4m/sであった為、同じファンを用いて送風のみ行ったものを対照とした。
【0051】
この様にして、毛髪サンプルの水分量の変化を計測した結果を
図10に示す。
図10に示すグラフは、正負イオンを含有する空気を当てた毛髪と、イオンを含まない空気のみを当てた毛髪との水分量を表している。
このグラフによると、正負イオンを照射した毛髪は、イオンを含まない空気のみを当てた毛髪と比較して約110.4%の水分量となった。イオンを照射した毛髪は、イオンを照射しないものに比べて水分量が増加する結果が得られた。
これにより、毛髪の場合、風速が強くても保湿できることが証明された。
【0052】
(検証2)
以下に、イオン発生部10a,10bが生成させた正イオン、負イオンを含む空気と含まない空気とによるダメージ毛発生量の比較実験をしたので、その結果を説明する。
【0053】
(実験方法)
<ダメージ毛髪(人毛)サンプルの作製>
約60cm、5gの黒い毛髪束を,ポリオキシエチレン(POE)ラウリル硫酸ナトリウム1%水溶液に、30〜35℃で1分間浸漬させた。
流水にて水洗後、タオルで水分を拭き取った後,ドライヤーにて乾燥させた。
4.5%過酸化水素水及び2.5%アンモニア水の1:1混合液に、毛髪を20分間浸漬させ、流水にて水洗後、タオルで水分を拭き取った後、ドライヤーにて乾燥させた。
【0054】
<イオン照射>
室温20±2℃、湿度50±5%の部屋で、毛髪サンプルに照射されるイオン濃度が、正負各々3,000,000個/cm
3 になるように、イオン発生素子とイオンを拡散させるファンとからなるイオン発生装置から15cmの位置に、ダメージ処理を施した毛髪サンプルを設置した。毛髪サンプルに1分当たり100回の速さでブラッシングしながら15分間イオンを温風(約125℃)で照射した。サンプル位置での風速は14m/s〜15m/sであった為、同じファンを用いて送風のみ行ったものを対照とした。
<ダメージ毛発生量の評価>
処理を行った毛束を観察し、発生した枝毛および切れ毛を計数した。
【0055】
この様にして、毛髪サンプルに発生したダメージ毛髪を計数した結果を
図11に示す。
図11に示すグラフは、正負イオンを含有する空気を当てた毛髪と、イオンを含まない空気のみを当てた毛髪との発生した枝毛および切れ毛の数を表している。
このグラフによると、正負イオンを照射した毛髪は、イオンを含まない空気のみを当てた毛髪と比較して、枝毛・切れ毛の数が約1/2となった。イオンを照射した毛髪は、イオンを照射しないものに比べて、ダメージが抑制される結果が得られた。
以上の結果は、本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減方法が毛髪に水分を与え、毛髪の強度を向上させることに加え、正負両イオンを発生させるた為、負に帯電するブラシ、正に帯電するブラシ両者を除電することができ、ブラッシング時の摩擦を低減できた結果である。
【0056】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減方法は、電圧を印加されることにより電極間で放電して水分子と結合した正イオンを発生させる正イオン発生手段と、電圧を印加されることにより電極間で放電して水分子と結合した負イオンを発生させる負イオン発生手段とを用意し、前記正イオン発生手段及び負イオン発生手段がそれぞれ発生させた正イオン及び負イオンを、毛髪に照射することにより該毛髪を加湿し、該毛髪に発生する損傷を軽減する。
【0057】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減方法は、前記正イオンは、H+ (H2 O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンは、O2−(H2 O)n(nは任意の自然数)である。
【0058】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減方法は、前記正イオン発生手段及び負イオン発生手段がそれぞれ発生させた正イオン及び負イオンを含めて送風する送風機構を用意し、該送風機構が送風するようにしている。
【0059】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減装置は、電圧を印加されることにより電極間で放電して水分子と結合した正イオンを発生させる正イオン発生手段と、電圧を印加されることにより電極間で放電して水分子と結合した負イオンを発生させる負イオン発生手段とを備え、前記正イオン発生手段及び負イオン発生手段がそれぞれ発生させた正イオン及び負イオンを毛髪に照射するように構成することができる。
【0060】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減方法並びに毛髪の加湿及び損傷軽減装置では、正イオン発生手段が、電圧を印加されることにより電極間で放電して水分子と結合した正イオンを発生させ、負イオン発生手段が、電圧を印加されることにより電極間で放電して水分子と結合した負イオンを発生させる。正イオン発生手段及び負イオン発生手段がそれぞれ発生させた正イオン及び負イオンを毛髪に照射する。
【0061】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減装置は、前記正イオンは、H+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンは、O2−(H2O)n(nは任意の自然数)である。
【0062】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減装置は、前記正イオン発生手段及び負イオン発生手段は、発生させる正イオンの量及び負イオンの量をそれぞれ変更可能に構成することができる。
【0063】
この毛髪の加湿及び損傷軽減装置では、正イオン発生手段及び負イオン発生手段は、発生させる正イオンの量及び負イオンの量をそれぞれ変更可能にしてある。
【0064】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減装置は、前記正イオン発生手段及び負イオン発生手段がそれぞれ発生させた正イオン及び負イオンを含めて送風する送風機構を更に備える。
【0065】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減方法並びに毛髪の加湿及び損傷軽減装置では、送風機構が、正イオン発生手段及び負イオン発生手段がそれぞれ発生させた正イオン及び負イオンを含めて送風する。
【0066】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減装置は、前記送風機構は、風速15m/s以下で送風するように構成する。
【0067】
この毛髪の加湿及び損傷軽減装置では、送風機構は、風速15m/s以下で送風する。
【0068】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減装置は、前記送風機構が送る風を加温する加温手段を更に備える。
【0069】
この毛髪の加湿及び損傷軽減装置では、加温手段が、送風機構が送る風を加温する。
【0070】
本発明に係る毛髪の加湿及び損傷軽減方法並びに毛髪の加湿及び損傷軽減装置は、ハンドドライヤー及び美容院等で使用する業務用髪乾燥機等に適用することにより、薬剤及びスチーム等を使用することなく、安全に簡単に毛髪の保湿ケアを行うとともにブラッシング時の傷害を軽減することが可能となる。