特許第5800897号(P5800897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許5800897-可変静電容量センサ及びその作製方法 図000002
  • 特許5800897-可変静電容量センサ及びその作製方法 図000003
  • 特許5800897-可変静電容量センサ及びその作製方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800897
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】可変静電容量センサ及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   G01N27/22 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-515369(P2013-515369)
(86)(22)【出願日】2011年6月2日
(65)【公表番号】特表2013-528817(P2013-528817A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】US2011038844
(87)【国際公開番号】WO2011159480
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年5月30日
(31)【優先権主張番号】61/354,843
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】グリスカ, ステファン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】パラゾット, マイケル シー.
【審査官】 松谷 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/046011(WO,A1)
【文献】 実開昭63−031361(JP,U)
【文献】 特開平02−151753(JP,A)
【文献】 特開平10−293107(JP,A)
【文献】 特開昭61−237044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変静電容量センサであって、
電気的に相互接続された複数の第1の導電性シートを含む第1の導電性電極と、
電気的に相互接続された複数の第2の導電性シートを含む第2の導電性電極と、ここで前記第1の導電性シートが、少なくとも部分的に前記第2の導電性シートと交互配置され、前記第2の導電性電極が、前記第1の導電性電極と電気的に絶縁され、
少なくとも部分的に、前記第1の導電性シートと前記第2の導電性シートとの間に配置され、かつ前記第1の導電性シート及び前記第2の導電性シートと接触するセラミック材料と、
少なくとも部分的に、前記第1の導電性シートと前記第2の導電性シートとの間に配置され、かつ前記第1の導電性シート及び前記第2の導電性シートと接触する微多孔性誘電体材料と、を備える、可変静電容量センサ。
【請求項2】
可変静電容量センサの製造方法であって、
a)セラミックコンデンサを提供する工程であって、前記セラミックコンデンサが、
電気的に相互接続された複数の第1の導電性シートを含む第1の導電性電極と、
電気的に相互接続された複数の第2の導電性シートを含む第2の導電性電極と、ここで前記第1の導電性シートが、少なくとも部分的に前記第2の導電性シートと交互配置され、前記第2の導電性電極が、前記第1の導電性電極と電気的に絶縁され、
少なくとも部分的に、前記第1の導電性シートと前記第2の導電性シートとの間に配置され、かつ前記第1の導電性シート及び前記第2の導電性シートと接触するセラミック材料と、を備える、工程と、
b)前記セラミック材料の少なくとも一部分を微多孔性誘電体材料と置き換える工程であって、前記微多孔性誘電体材料が、少なくとも部分的に、前記第1の導電性シートと前記第2の導電性シートとの間に配置され、かつ前記第1の導電性シート及び前記第2の導電性シートと接触する、工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電容量ベースのセンサを使用した有機蒸気検出、及びセンサの製作のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
可変静電容量センサは、典型的には、誘電体材料を使用して、平行平板型電極により構成される。典型的には、1つの電極が導電性を有すると同時に、十分多孔性であるため、有機蒸気は、微多孔性誘電体材料に到達することができる。しかしながら、十分な検出信号を達成するためには、一般に、比較的大きい設置面積(areal footprint)を有するセンサを使用する必要があり、このセンサを、例えばプリント基板上に収容しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本開示は、可変静電容量センサの製造方法を提供し、この方法は、
a)セラミックコンデンサを提供する工程であって、セラミックコンデンサが、
電気的に相互接続された第1の導電性シートを含む第1の導電性電極と、
電気的に相互接続された第2の導電性シートを含む第2の導電性電極と、ここで第1の導電性シートが、少なくとも部分的に第2の導電性シートに挟まれ、第2の導電性電極が、第1の導電性電極と電気的に絶縁され、
少なくとも部分的に、第1の導電性シートと第2の導電性シートとの間に配置され、かつ第1の導電性シート及び第2の導電性シートと接触するセラミック材料と、を備える、工程と、
b)セラミック材料の少なくとも一部分を微多孔性誘電体材料で置き換える工程であって、微多孔性誘電体材料が、少なくとも部分的に、第1の導電性シートと第2の導電性シートとの間に配置され、かつ第1の導電性シート及び第2の導電性シートと接触する、工程と、を含む。
【0004】
いくつかの実施形態において、工程b)は、セラミック材料の少なくとも一部分をエッチング除去する工程と、微多孔性誘電体材料を適用して、エッチングにより除去されたセラミック材料の少なくとも一部分を置き換える工程と、を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、実質的に全部のセラミック材料が、微多孔性誘電体材料と置き換えられる。したがって、いくつかの実施形態では、工程b)は、実質的に全部のセラミック材料をエッチング除去する工程と、微多孔性誘電体材料を適用して、エッチングにより除去されたセラミック材料を置き換える工程と、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、微多孔性誘電体材料は、固有微多孔性ポリマー(polymer of intrinsic microporosity)(PIM)を含む。
【0007】
別の態様において、本開示は、可変静電容量センサを提供し、このセンサは、
電気的に相互接続された第1の導電性シートを含む第1の導電性電極と、
電気的に相互接続された第2の導電性シートを含む第2の導電性電極と、ここで第1の導電性シートが、少なくとも部分的に第2の導電性シートに挟まれ、第2の導電性電極が、第1の導電性電極と電気的に絶縁され、
少なくとも部分的に、第1の導電性シートと第2の導電性シートとの間に配置され、かつ第1の導電性シート及び第2の導電性シートと接触する微多孔性誘電体材料と、を備える。
【0008】
いくつかの実施形態では、微多孔性誘電体材料は、固有微多孔性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、可変静電容量センサは、少なくとも部分的に、第1の導電性シートと第2の導電性シートとの間に配置され、かつ第1の導電性シート及び第2の導電性シートと接触するセラミック材料を更に備える。いくつかの実施形態では、可変静電容量センサは、第1の導電性電極及び第2の導電性電極の一部分を覆う封止層を更に備える。
【0009】
有利には、本開示による可変静電容量センサは、高い感度を小さい設置面積と組み合わせ、例えばそれらを、小型感知装置内への組み込みに好適なものとし得る。加えて、本開示による方法は、高感度の可変静電容量センサを、専門の設備を必要とすることなく、比較的低価格で作製することを可能にする。
【0010】
本明細書で使用するとき、
用語「微多孔性」は、材料が有意な規模の、内部の相互接続された間隙体積を有し、平均孔径(例えば、吸着等温線手段によって特徴付けられる)は、約100nm未満であることを意味する。
用語「導電性」は、電気的に伝導性であることを意味する。
【0011】
前述の実施形態は、そのような組み合わせが本発明の教示に鑑みて明かに間違っている場合を除いて、その実施形態の任意の組み合わせで実行されてもよい。本開示の特徴及び利点は、「発明を実施するための形態」、及び添付の「特許請求の範囲」を考慮することで更に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示による可変静電容量センサの作製方法の代表的なプロセスの流れ図。
図2】本開示による代表的な可変静電容量センサの概略斜視図。
図3】本開示による代表的な可変静電容量センサの概略斜視図。 必ずしも当尺に描かれていない上記に特定した図面は、本開示の数個の実施形態を明示しているが、考察に示されるように、他の実施形態も予想される。図の全体にわたって、同様の参照番号を用いて同様の部分を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図1を参照すると、本開示の代表的なプロセスでは、セラミックコンデンサ100がエッチングされて、第1の導電性電極104及び第2の導電性電極106のそれぞれを分離するセラミック材料102の少なくとも一部分を除去することにより、エッチングされたセラミックコンデンサ120を提供する。第1の導電性電極104及び第2の導電性電極106は、それぞれ、第1の導電性シート108及び第2の導電性シート110を含む。エッチングされたセラミック材料が元々占めていた空間の少なくとも一部分を満たすために微多孔性誘電体材料112が使用されることにより、可変静電容量センサ130を形成する。
【0014】
非常に多数の製造業者により、高品質かつ低コストのセラミックコンデンサが製造されている。これらの製造業者は、それらの製品を多数の形状及びサイズで提供し、バルクで購入した場合、価格は、多くの場合、コンデンサ当たり僅かである。代表的な商業的供給源には、Simpsonville,South CarolinaのKemet Corp.、Fountain Inn,South CarolinaのAVX Corporation、Munich,GermanyのEPCOS Inc.、Secaucus,New JerseyのPanasonic Industrial Company、及びLynchburg,VirginiaのITW Paktronが挙げられる。セラミックコンデンサは、例えば封止層としての外側保護被覆を有して又は有さずに得ることができる。
【0015】
第1の導電性電極及び第2の導電性電極は、任意の好適な導電性材料、典型的には導電性金属材料を含み得るが、又は材料を使用してもよい。十分な全体導電性がもたらされる限り(例えば、電極材料は約10−2オーム/メートル未満の一定抵抗率を有し得る)、異なる材料(導電性、及び/又は非導電性)の組み合わせが、異なる層又は混合物として使用され得る。第1の導電性電極及び/又は第2の導電性電極の作製に使用し得る導電性材料の例には、金属、合金、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例には、銅、ニッケル、スズ、タンタル、インジウム−スズ酸化物、金、銀、白金、パラジウム、チタン、及びクロムが挙げられる。一実施形態では、両方の導電性電極が同じ材料を含み、別の実施形態では、第1の導電性電極及び第2の導電性電極が異なる材料を含む。
【0016】
本開示によるいくつかの実施形態では、第1の導電性電極及び第2の導電性電極は、得られたセラミックコンデンサと共に含まれている。本開示による他の実施形態では、導電性電極は、交互サイクルを用いて、反復プロセスにより製作される。1つの代表的なそのようなサイクルでは、PIMの層上に金属層(第1の導電性電極の導電性シートに相当する)が堆積された後、金属層上にPIMの別の層が堆積される。次に、第2の金属層(第2の導電性電極の導電性シートに相当する)が、第1の金属層とずれた位置においてPIM層上に堆積される。次に、第2の金属層上に別のPIM層が堆積され、全プロセスが、所望される回数、反復される。PIM層(lay)は、例えばスクリーン印刷又はグラビア印刷等の任意の好適な印刷方法により堆積されてもよい。金属層は、例えば導電性インクを使用した印刷により、又は蒸着技術により堆積されてもよい。プロセスは、所望される回数、反復される。各導電性電極の導電性シートは一緒に結合されて、完全な導電性電極が形成される。導電性シートの結合は、導電性シートの堆積中に達成されるか、又は導電性シートの露出縁にわたって導電性材料を適用することにより達成されてもよい。ある場合に、金属縁ストリップに導電性シートを融合するのに、加熱が有効であり得る。
【0017】
任意のセラミック材料、典型的には誘電体セラミック材料を使用することができる。例には、チタネート、ジルコネート、他の金属酸化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。通常の成分には、二酸化チタン、チタン酸バリウム、及びチタン酸ストロンチウムが挙げられる。再び図1を参照すると、セラミック材料102は、少なくとも部分的に、第1の導電性電極104及び第2の導電性電極106のそれぞれの導電性シート108、110の間に配置され、かつ第1の導電性電極104及び第2の導電性電極106のそれぞれの導電性シート108、110と接触している。
【0018】
本開示の方法によれば、セラミック材料及び微多孔性誘電体材料のそれぞれが、少なくとも部分的に、第1の導電性電極と第2の導電性電極との間に配置され、かつ第1の導電性電極及び第2の導電性電極と接触するように、セラミック材料の少なくとも一部分が微多孔性誘電体材料で置き換えられる。セラミック材料の除去は、例えば、機械的、レーザー、及び/又は化学的技術により達成され得る。一実施形態において、セラミック材料は、導電性電極材料と比較してセラミックを選択的にエッチングする化学エッチャントを使用してエッチングされる。有用なエッチャントには、場合により有機溶媒と組み合わされる、アルカリ金属水酸化物の水溶液が挙げられる。代表的なエッチャントは、水/エタノール(2:1比)中の5モル濃度の水酸化ナトリウムである。
【0019】
典型的には、エッチングプロセスは、使用されるセラミックコンデンサの構造に応じて、数分間〜数日間を必要とし得る。一般に、エッチングは、セラミック材料の全露出表面で起こる。したがって、セラミック材料の一部分が除去された場合、エッチングされたコンデンサの内部内にセラミック材料が尚存在するであろう。しかしながら、所望により、実質的に全部の、又は全部のセラミック材料をエッチングにより除去することができる。
【0020】
本開示の方法によれば、エッチングにより除去されたセラミック材料の少なくとも一部分は、微多孔性誘電体材料と置き換えられる。微多孔性誘電体材料の機能は、第1の導電性電極と第2の導電性電極とを分離し、また、感知されるべき任意の被分析物(例えば、揮発性有機化合物)用の受容基材を提供することである。典型的には、センサが周囲条件下での使用に意図される場合、水蒸気に比較的低い親和性を有する微多孔性誘電体材料を選択することが望ましい。
【0021】
微多孔性誘電体材料は、一般に、任意の微多孔性誘電体材料であってもよいが、特定の揮発性有機化合物を感知する等のいくつかの用途では、微多孔性誘電体材料の選択によって蒸気吸着及び/又は吸収が向上又は低下し、それ故、センサ感度が向上又は低下し得る。例えば微多孔性誘電体材料は、無機若しくは有機構成要素、又は無機及び有機構成要素の組み合わせであってもよい。
【0022】
典型的には、微多孔性誘電体材料は、実質的に微多孔性誘電体材料全体に延びる相互連絡孔のネットワークを有するであろうが、これは必要条件ではない。そのような孔の配置は、吸収及び/又は吸着のための大きい表面積を提供し、したがって、被分析物の分子(存在する場合)が材料の内部の孔に入り込み、内部に定着することができる。内部の孔の中のこのような被分析物の存在は、材料の誘電特性を変化させることができ、それによって誘電率(又は他の任意の好適な電気的特性)の変化が観察され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、微多孔性誘電体材料は、少なくとも約10パーセント、少なくとも約20パーセント、又は少なくとも約30パーセントの多孔率を有する(例えば、Boynton Beach,FloridaのQuantachrome Instrumentsからの商標名Autosorbで入手可能な器具を使用するもの等の、吸着等温曲線技術によって特徴付けられる)。このような多孔率は、低濃度の有機化学被分析物に対する良好な反応を提供することができる。しかしながら、材料は、第1の導電性電極と、第2の導電性電極との間の短絡又はアーク放電を避けることが困難であるような、高い間隙体積を有するべきではない。それ故、様々な実施形態において、材料は、最大約90パーセント、最大約60パーセント、又は最大約40パーセントの多孔率を有する。
【0024】
微多孔性誘電体材料は、例えば、約50ナノメートル(nm)未満、約20nm未満、又は約10nm未満の平均孔径を有してもよい。同様に、微多孔性誘電体材料は、例えば、約0.3nm超、約0.5nm超、又は約1.0nm超の平均孔径を有してもよい。
【0025】
微多孔性誘電体材料は、例えば、疎水性、親水性、又はそれらの中間であってもよい。微多孔性誘電体材料が疎水性材料である場合、これは材料が著しく増大するか、ないしは別の方法で物理的特性の顕著な変化を呈する程度まで、液体水を吸収することがない。このような疎水性特性は、水の存在に対する感度が比較的低い有機被分析物感知素子を提供するために一般に有用である。しかしながら、微多孔性誘電体材料は、例えば特定の目的のために、比較的極性が大きい部分を含んでもよい。
【0026】
微多孔性誘電体材料は、典型的には連続的なマトリックスを含むが、所望により不連続であってもよい。このようなマトリックスは、材料の固体部分が連続的に相互接続されているアセンブリ(例えば、コーティング、層等)として定義される(上記の多孔質の存在、又は下記の任意の添加物の存在とは拘わりなく)。即ち、連続的なマトリックスは、粒子の凝集(例えば、ゼオライト、活性炭、カーボンナノチューブ等)を含むアセンブリから区別可能である。例えば、溶液から堆積される層、又はコーティングは、典型的には連続的なマトリックスを含む(コーティング自体がパターンを有する方法で塗布されるか、及び/又は粒子状の添加物を含むとしても)。粉末の噴霧、分散体(例えば、ラテックス)のコーティング及び乾燥、又はゾル−ゲル混合物のコーティング及び乾燥によって堆積された粒子の集合は、出願人によって定義される連続的なネットワークを含まないことがある。しかしながら、このようなラテックス、ゾル−ゲル等の層が、個別の粒子がもはや認識不可能であるか、又は異なる粒子から得られたアセンブリの領域を認識することが不可能であるように固化され得る場合、このような層は出願人の連続的マトリックスの定義に合致することがある。
【0027】
好適な微多孔性誘電体材料の例には、固有微多孔性ポリマー類(PIMs)が挙げられるが、他の微多孔性誘電体材料を使用することもできる。
【0028】
PIMsは、内部にねじれた構造を生じるための十分な構造的特徴が存在する、非常に剛性があるポリマーとなるモノマーの任意の組み合わせの使用によって配合することができる。様々な実施形態において、PIMsは、剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含む場合があり、この剛性リンカーは、剛体リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように、ねじれ点を有する。
【0029】
多数のPIMsが当技術分野にて既知であり、例えば「Polymers of Intrinsic Microporosity(PIMs):Robust,Solution−Processable,Organic Microporous Materials,」Buddら、Chem.Commun.,2004,pp.230〜231;「Polymers of Intrinsic Microporosity(PIMs)」McKeownら、Chem.Eur.J.,2005,11,No.9,2610〜2620;「Polymers of Intrinsic Microporosity(PIMs):High Free Volume Polymers for Membrane Applications,」Buddら、Macromol.Symp.2006,vol.245〜246,403〜405;「Synthesis,Characterization,and Gas Permeation Properties of a Novel Group of Polymers with Intrinsic Microporosity:PIM−Polyimides」Ghanemら、Macromolecules 2009,42,7881〜7888;McKeownらへの米国特許出願公開第2006/0246273号;及びMcKeownらへの、公開されたPCT出願第2005/012397 A2号に開示されているものが挙げられる。
【0030】
多数のPIMsが一般的な有機溶媒中に可溶であり、したがってコーティング等の従来の堆積プロセスに適する。特定の実施形態では、PIM材料が堆積される(例えば、コーティングされる)か、ないしは別の方法で被分析物応答性誘電体層を含むように形成された後、PIMは、例えば、ビス(ベンゾニトリル)二塩化パラジウム(II)等の好適な架橋剤を使用して架橋され得る。このプロセスは、微多孔性誘電体層を有機溶媒中で不溶性にするか、及び/又は耐久性、摩擦耐性等の特定の物理的特性を向上させことがあり、これは特定の用途において望ましい場合がある。
【0031】
PIMsは、他の材料とブレンドされてもよい。例えば、PIMは、それ自体が被分析物応答性誘導体材料ではない材料とブレンドされてもよい。被分析物反応に寄与しないものの、このような材料は他の理由のために有用であり得る。例えば、このような材料は、優れた機械特性等を有する、PIM含有層の形成を可能にすることがある。PIMsは、他の材料と共に一般的な溶媒に溶解して、均質な溶液を形成してもよく、これは、キャスティングされて、PIM及び他のポリマー(1つ又は複数)の両方を含む被分析物応答性誘導体ブレンド層を形成してもよい。PIMsはまた、被分析物応答性誘電体材料である材料(例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、超架橋ポリマーネットワーク等)とブレンドされてもよい。このような材料は、PIMs材料を含む溶液中に懸濁された不溶性材料を含み得る。そのような溶液/懸濁液のコーティング及び乾燥は、複合微多孔性誘電体材料を提供し得る。
【0032】
他の有用な微多孔性誘電体材料の例には、例えば、PCT公開第2009/046011 A2号(Davidら)に記載されているような、プラズマ蒸着微多孔性誘電体層が挙げられる。
【0033】
理論に束縛されるものではないが、本開示による可変静電容量センサは、検出されるべき物質(即ち、被分析物)が微多孔性誘電体層中に吸収及び/又は吸着されることによりその誘電率を変化させ、それによって可変静電容量センサの静電容量を変化させることにより機能する。
【0034】
いくつかの実施形態では、幾分かのセラミック材料が、除去/エッチング工程後に、導電性電極の間に残留する。そのような場合、可変静電容量センサは、典型的には隣り合った配置で導電性電極の間に配置されたセラミック材料と微多孔性誘電体材料の両方を有して製造されるであろう。
【0035】
以下図2を参照すると、本開示による代表的な可変静電容量センサ230は、セラミックコンデンサからセラミックの一部分を置き換えることにより調製され得る。したがって、可変静電容量センサ230は、それぞれ第1の導電性シート208及び第2の導電性シート210を含む、第1の導電性電極204及び第2の導電性電極206を備える。セラミック材料202及び微多孔性誘電体材料212は、第1の電極と第2の電極のそれぞれの間に配置され、かつ第1の電極及び第2の電極のそれぞれと接触している。
【0036】
以下図3を参照すると、本開示による代表的な可変静電容量センサ330は、セラミックコンデンサからセラミックを完全に置き換えることにより調製され得る。したがって、可変静電容量センサ330は、それぞれ第1の導電性シート308及び第2の導電性シート310を含む、第1の導電性電極304及び第2の導電性電極306を備える。微多孔性誘電体材料312は、第1の電極と第2の電極のそれぞれの間に配置され、かつ第1の電極及び第2の電極のそれぞれと接触している。任意の封止層314は、第1の導電性電極304及び第2の導電性電極306の一部分を覆っている。
【0037】
場合により、本開示による可変静電容量センサは、そのセンサに付着されたリードを有してもよく、又は可変静電容量センサはリードを有さずに、例えばセンサを回路基板上の接点間に固定することにより使用されてもよい。同様に、本開示による可変静電容量センサは、そのセンサの表面の少なくとも一部分上に保護カバー材料を有して、例えば微多孔性誘電体材料を汚染又は損傷から保護してもよい。しかしながら、被覆材料を備えても尚、可変静電容量センサを適切に機能させるために、意図される被分析物が微多孔性誘電体材料に接近することを可能にする必要がある。被覆材料の例には、不織布及び多孔質膜が挙げられる。
【0038】
本開示に従って調製された可変静電容量センサは、電子感知装置内での使用に好適である。概して、このことは、可変静電容量センサを、可変静電容量センサの静電容量を測定できる監視回路構成に電気的に接続することを含む。
【0039】
以下の非限定的な実施例によって本開示の目的及び利点を更に例示するが、これら実施例で引用される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0040】
特に記載がない限り、実施例及びこれ以降の明細書における部、割合、比率等はいずれも重量基準である。
【0041】
PIM1の調製
モノマー、5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン及びテトラフルオロテレフタロニトリルから、BuddらによりAdvanced Material,2004,Vol.16,No.5,pp.456〜459に報告されている手順に概ね従ってPIM材料(PIM1)を調製した。100.00グラムの5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダンを、59.219gのテトラフルオロテレフタロニトリル、243.6gの炭酸カリウム、及び2543.6gのN,N−ジメチルホルムアミドと組み合わせ、混合物を68℃で72時間反応させた。重合混合物を水中に注ぎ、沈殿を真空濾過により単離した。得られたポリマーをテトラヒドロフランに2回溶解し、エタノールから沈殿させ、室温で風乾した。光散乱検出を用いるゲル透過クロマトグラフィー分析によって決定して、およそ40,800の数平均分子量を有する黄色固体生成物が得られた。
【0042】
(実施例1)
a)市販用の22−nF(22−ナノファラッド)セラミックコンデンサ(Kemet Electronics Corporation,Greenville,South Carolinaからの部材番号C340C223J2G5CA)を、低速ダイヤモンド鋸を使用して、リード線に実質的に直交する方向にてリード線付近で2つに切った(静電容量0.488nFを得た)。コンデンサは、35マイクロメートルのピッチを有し、かつセラミック層により分離される24の互いにかみ合う金属フィンガを有した。リード線が取り付けられた部分を、以下の手順にて使用した。上記で調製した比較的な静電容量センサが使用可能であることを示すための対照工程として、センサを150℃で1時間焼いた後、試験チャンバ内に配置し、数個のレベルの相対湿度に暴露した。センサは、湿度に対する高い応答を示し、80パーセント相対湿度において0.25のΔC/C(即ち、静電容量の、初期値からの変化を初期値で除算)値を達成した。別個の実験において、センサは、試験チャンバ内に導入されたアセトン蒸気に暴露された際、実質的に非応答であった(即ち、ΔC/Cは、本質的にゼロであった)。次に、センサを150℃で1時間焼き、試験チャンバ内に配置した。少なくとも4000ppmまでの濃度を有するアセトン蒸気に暴露した所、静電容量の変化は見られなかった((即ち、ΔC/Cは、本質的にゼロであった)。
【0043】
b)a)で作製した静電容量センサを、5Mの水酸化ナトリウムの水/エタノール(2:1比)溶液に6日間浸漬した。浸漬後、センサを蒸溜水中で注意深く洗浄し、乾燥して、任意の残留物を除去した。少量のセラミックが除去され、殆どのセラミックが尚存在することが観察された。エッチングがセラミックセンサにどのように影響したかを決定するために、水酸化ナトリウム溶液中の浸漬前及び浸漬後のベースライン静電容量を比較した。静電容量は、488から367pFへ変化した。この変化がセンサに対する損傷だけでなく、セラミック材料の意図的な除去であることを示すために、センサを用いてもう1つの湿度試験を行った。150℃の炉内で1時間後、センサを試験チャンバ内に配置し、数個のパーセントレベルの相対湿度に暴露した。エッチングされた静電容量センサは、湿度に対して高い応答を示し、80パーセント相対湿度において6.6のΔC/C(即ち、静電容量の、初期値からの変化を初期値で除算)値を達成した。明らかに、エッチングされたコンデンサは、エッチングされていないコンデンサと比較して湿度に対して遙かに高感度であった。少なくとも4000ppmまでの濃度を有するアセトン蒸気に対する暴露は、静電容量における変化を示さなかった((即ち、ΔC/Cは、本質的にゼロであった)。
【0044】
c)PIM1の4パーセント溶液。構成成分をバイアル内で混合し、これをローラーミル上に一晩配置して材料を完全に溶解させた後、1マイクロメートル孔径のフィルタを通して濾過することにより、クロロベンゼン中の溶液を調製した。b)で調製したエッチングされた静電容量センサのエッチング表面上に、小画筆を使用してPIM1溶液を直接適用した後、100℃の炉内で1時間乾燥した。この手順を2回反復した。得られた可変静電容量センサを、アセトン蒸気に対する応答に関して試験した。センサを150℃で1時間焼いた後、試験チャンバ内に配置し、アセトン蒸気に暴露した。4000ppmのアセトン蒸気濃度において、静電容量センサは0.0012のΔC/Cを示し、50ppm以下のアセトンレベルで観察された静電容量との検出可能な差異を有した。明らかに、本発明者らは、単にセラミック層の一部分を、この実施例のPIMのような吸収微多孔性材料で置き換えることにより、アセトンに対する可変静電容量センサの感度を増大させることができた。
【0045】
本明細書に引用した全ての特許及び刊行物は、その全文を参照することにより本明細書に組み込むこととする。本明細書に記載される全ての実施例は、特に指示しない限り非限定的であるとみなすべきである。当業者は、本開示の様々な修正及び変更を、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく行うことができ、また、本開示は、上記で説明した例示的な実施形態に過度に限定して理解すべきではない。
図1
図2
図3