【実施例】
【0152】
例示
実施された実験および達成された結果を含む以下の例示は本発明における特定の様々な本発明の態様も例示し、例示のためだけに提供され、本発明を限定すると解釈してはならない。
【0153】
セクション1:原薬、その特徴付け、および治験薬製品の調製
標準的な手順に従って、SEQ ID.NO.1に示した予測アミノ酸配列を有する原薬であるヒト胆汁酸活性化リパーゼを、ヒトBSSLをコードするヌクレオチド配列を含む核酸発現系を含有する組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から発現させることによって産生した。簡単に述べると、(Nilsson et al., 1990; Eur J Biochem, 192: 543-550に記載のように)リーダー配列を含む完全長hBSSLをコードする2.3Kb cDNA配列を、pS146(Hansson et al., 1993; J Biol Chem, 268: 26692-26698)から入手し、遺伝子発現用のCMVプロモーター/SV40ポリAシグナルおよび選択/増幅用のdhfr遺伝子を含むpBRベースのプラスミドである発現ベクターpAD-CMV1(Boehringer Ingelheim)にクローニングして、pAD-CMV-BSSLを形成した。次いで、DHFR陰性CHOss細胞(Boehringer Ingelheim)のトランスフェクションと、ジェネティシン(G418)耐性を選択するネオマイシン耐性をコードするプラスミドpBR3127SV/Neo pAのコトランスフェクションのためにpAD-CMV-BSSLを用いて、DHFR陽性BSSL産生CHO細胞を作製した。結果として生じたCHO細胞を、多量のrhBSSLを発現する条件およびスケールで培養した。例えば、マスター細胞バンク(MCB)からの細胞を解凍し、グルタミンおよびグルコースを含まないEx-Cell 302培地(SAFC)を使用し、後でグルタミンおよびグルコースを添加したEx-Cell 302培地を使用して振盪フラスコの中で増やし、15Lおよび100Lバイオリアクターに入れて増殖させた後に、BSSLが流加培養プロセスで構成的に発現および産生される700L製造用バイオリアクターに接種した。培養物をシングルバッチとして収集し、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含む多数の下流工程を介して、成熟rhBSSLポリペプチド(すなわち、リーダー配列を含まない)を細胞、細胞破片、および他の夾雑物から精製した。夾雑ウイルスを低pH処理および乾熱処理工程によって不活化してもよい。rhBSSL原薬(DS)バルクを適切な製剤になるまでダイアフィルター(diafilter)に供し、濃縮した。処方後、凍結乾燥および熱処理のために材料を1〜3つのバッチに分けて、1〜3つのDSバッチを作製した。
【0154】
この哺乳動物細胞発現系においてrhBSSLを産生すると、SEQ ID.NO.1に示した予測アミノ酸配列および
図1.1に模式的に示した構造を有するrhBSSLが産生される。
図1.1には潜在的なグリコシル化の部位も示す。
【0155】
この形態のrhBSSLは、ヒト乳において見られる天然hBSSL(BSSL-MAM)とは異なり、rhBSSL-OVI(トランスジェニックヒツジから産生される)とも異なるグリコシル化を示すように見える。例えば、高pH陰イオン交換クロマトグラフィーとパルスアンペロメトリック検出(HPAEC-PAD)を使用して、本明細書に記載の臨床試験のために産生および使用されたCHO由来rhBSSL(rhBSSL-CHO)の単糖およびシアル酸グリコシル化レベルが求められ、BSSL-MAMより低いが、rhBSSL-OVIより高い総グリコシル化レベルを有することが見出された(表1.1を参照されたい)。これらの全グリコシル化レベルは、それぞれの形態のBSSLの全分子量と相関関係にあった。それぞれの形態のBSSLの全分子量はMALDI-MSによって求められ、rhBSSL-CHOについては約85KDaであったのに対して、BSSL-MAMについては100KDa、rhBSSL-OVIについては78KDaであることが見出された。表1.1に示したように、rhBSSL-CHOの可能性のあるグリコシル化部位におけるグリコシル化(単糖およびシアル酸)のパターンまたはプロファイル、特に、O-グリカンのグリコシル化(単糖およびシアル酸)のパターンまたはプロファイルはrhBSSL-MAMおよびrhBSSL-OVIと比較して異なる(キャピラリー電気泳動とレーザー誘起蛍光検出[CE-LIF]および/またはHPAEC-PADを用いた検出)。
【0156】
(表1.1)rhBSSL-CHO、rhBSSL-OVI、およびhBSSL-MAMの単糖含有量およびシアル酸含有量[モル/(モルBSSL)]
*rhBSSL-OVI材料中のグルコサミンを分析した時に、クロマトグラムに小さなピークが見られた。しかしながら、較正曲線の交点の方が大きく、交点が差し引かれたために、このような少ない量はマイナス値として計算されたので、値を報告しなかった。絶対/未修正の推定値は1.8モルのグルコセアミン(glucoseamine)/モルBSSLであった。
** (絶対/未修正)グルコサミンを含む合計は12モル/モルBSSLであった。
【0157】
rhBSSL-CHOのグリコシル化の程度および分布がBSSL-MAMのグリコシル化の程度および分布ならびにrhBSSL-OVIのグリコシル化の程度および分布と異なるだけでなく、C末端アミノ酸配列(例えば、エンドプロテインGlu-Cペプチドマッピング、および液体クロマトグラフィーとエレクトロスプレーイオン化質量分析[LC-ESI-MS-MS]を用いた配列特定によって決定された)によって、リパーゼ分子の大部分は、(予測)完全長ポリペプチド分子と比較して1アミノ酸(時として、2アミノ酸)短いことが見出された。完全長C末端が配列決定された分子1つにつき、C末端の最後のアミノ酸が切断された分子が約3つ検出された。最後の2アミノ酸が切断された小さな割合のC末端配列が検出された。例えば、(完全に近い長さの)リパーゼ分子のこの集団のうち、約25%が完全長であり、約75%が1アミノ酸短く、1%未満が2アミノ酸短い。
【0158】
rhBSSL-CHOとBSSL-MAMとrhBSSL-OVIとの間で機能特性の違いが観察された。rhBSSL-CHOの比活性は他の形態のBSSLの比活性より高いことが観察された。BSSL-MAMおよびrhBSSL-OVIの比活性は質量ベースでrhBSSL-CHOの比活性の80%しかない。それぞれの試料をHA-HPLCおよびSE-HPLCによって特異的に精製した後に、比活性を求める。比活性は、BSSL基質として4-ニトロフェニルエステル酪酸(PNPB)および4-ニトロフェノール放出の検出を用いて求められる。簡単に述べると、rhBSSLの希釈系列(例えば、20〜160ng活性/mL)を、0.1%BSAを含むPBSで調製する。これらのrhBSSL溶液200μlを、0.1%BSAを含むPBSで溶解した20mMコール酸ナトリウム(胆汁酸活性化剤)を含有する活性化溶液25μlに添加する。これらの溶液を分光光度計に入れて27℃で5分間プレインキュベートする。測定直前に、PBS-Tween中に5mM PNPBを含有する、よく混ぜた基質溶液25μlを添加する。4-ニトロフェノール形成を、400nmでの4-ニトロフェノール吸光度によって検出することができ、90秒間の吸光度増加を測定する。rhBSSL標準品の検量線を用いてBSSL活性量を求める。
【0159】
注射用水に溶解した凍結乾燥原薬から治験薬製品を調製した。溶液を予め濾過し(10μl)、注射用水で最終(活性)濃度まで調節した。生成物を0.22μmフィルターで濾過し、予め滅菌した10mLガラスバイアルに詰めた。バイアルに、滅菌した栓を付け、アルミニウムキャップで密封した。
【0160】
セクション2:rhBSSLを用いた2つの第II相試験からの複合データに関する簡略データ
プロトコル番号:BVT.BSSL-020
EUDRACT番号:2007-002423-33
Clinicaltrials.gov識別子:NCT00658905
在胎齢32週前に生まれた早産児における1週間の治療中に、乳児用調合乳に添加された0.15g/L rhBSSLとプラセボを比較する、前向き無作為化二重盲式クロスオーバー試験
および
プロトコル番号:BVT.BSSL-021
EUDRACT番号:2007-002434-10
Clinicaltrials.gov識別子:NCT00659243
在胎齢32週前に生まれた早産児における1週間の治療中に、低温殺菌母乳に添加された0.15g/L rhBSSLとプラセボを比較する、前向き無作為化二重盲式クロスオーバー試験
【0161】
略語表
【0162】
1序論
早産児においてrhBSSLを用いた2つの第II相試験、試験BVT.BSSL-020および-021が実施された。両試験の主要目的は、調合乳(試験-020)または低温殺菌母乳(試験-021)に入れて投与された時の、rhBSSLを用いた治療後の早産児における脂肪吸収(脂肪吸収率、CFA)を、プラセボを用いた治療後の早産児における脂肪吸収(脂肪吸収率、CFA)と比較することであった。副次的目的は、乳児用調合乳/低温殺菌母乳に入れて投与された時の、rhBSSLを用いた治療後の早産児における身長および体重を、プラセボを用いた治療後の早産児における身長および体重と比較すること、ならびに乳児用調合乳/低温殺菌母乳に入れて投与された時のrhBSSLの安全性を試験することであった。
【0163】
それぞれの試験における標本サイズの評価は、90%の検出力および5%の有意水準での治療期間の間の推定された10%CFA単位差および15%標準偏差に基づいた。10%のCFA差は発育速度において2g/kg/日の差をもたらすと予測された。しかしながら、どの試験も、それぞれの試験において患者数(32人)が少なく、治療期間(1週間)が短いために、発育の改善を証明するのに十分な検出力を有すると予測されなかった。従って、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、プラセボと比較したrhBSSLを用いた治療後の発育の改善を証明するという主要目的をもつ、2つの試験の予め定義された複合解析を、別の統計解析計画(SAP)に記載した。複合データのSAPを開発および完成した後に、2つの試験のいずれかにおいてデータベースのロックおよび臨床データベースの盲検解除を行った。
【0164】
さらに、SAPに記載されていない、いくつかの事後解析も実施されており、ここに報告する。
【0165】
本報告は、2つの試験からのデザインおよび結果をまとめたものであり、複合解析に焦点を当てているが、多くの場合において試験による結果を示している。本報告は、個々の試験報告に示された情報、複合解析の統計報告、および事後解析の統計報告に基づく。
【0166】
両試験ともICH GCPガイドラインおよびヘルシンキ宣言に則って実施された。両試験とも適切な独立倫理委員会(Independent Ethics Committees)によって認可され、組み入れられた全ての患者の保護者からインフォームドコンセントが得られた。
【0167】
2複合解析の解析目的
2.1主要目的
複合解析の主要目的は、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、プラセボと比較した組換えヒト胆汁酸活性化リパーゼ(rhBSSL)を用いた治療後の発育の改善を証明することであった。
【0168】
2.2副次的目的
副次的目的は以下の通りであった。
・乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、プラセボと比較したrhBSSLを用いた治療後の早産児における脂肪吸収の改善を証明する。
・乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、rhBSSLを用いた治療後の早産児における膝から踵までの長さを、プラセボを用いた治療後の早産児における膝から踵までの長さと比較する。
・乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、早産児におけるrhBSSLの安全性および忍容性を評価する。
【0169】
2.3探索的効力目的
探索的効力目的は、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、プラセボ治療に対するrhBSSL治療後の早産児における、調合乳および母乳の両方に存在する長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)-ドコサヘキサエン酸(DHA)およびアラキドン酸(AA)の吸収を探索することであった。
【0170】
3試験デザイン
2つの試験の試験デザインおよび手順は授乳法以外は同一であった(試験BVT.BSSL-020では調合乳を使用し、試験BVT.BSSL-021では低温殺菌乳を使用した)。従って、2つの試験からのデータの複合は適切である。それぞれの試験は、評価可能な26人の患者を得るために32人の患者を登録する計画を立てた。
【0171】
最初の7日間、患者を、最終濃度0.15g/LのrhBSSLが添加された乳児用調合乳/低温殺菌母乳または滅菌注射用水が「添加された」乳児用調合乳/低温殺菌母乳(プラセボ)に無作為化した。2日間のウォッシュアウト期間後、次の7日間の治療期間、患者を他の治療レジメンに「クロスオーバー」した。CFA評価のために、それぞれの治療期間の最後の3日間(72時間)、糞便試料を収集した。
【0172】
全ての組み入れ基準が満たされ、除外基準がどれも満たされなかった後、患者を登録し、新生児集中治療室においてこれらの試験に無作為化した。020試験に登録する前に他の乳児用調合乳が与えられた乳児は、登録日に、その時に使用していた調合乳から試験調合乳に切り替えられた。Eoprotin以外の乳強化剤が与えられていた021試験の患者については、乳強化剤を中断する。および/または初回投与の少なくとも2日前にEoprotinに切り替えることが必要であった。
【0173】
試験デザインを
図2.1に示した。
【0174】
試験評価計画を以下の表2.1に示した。
【0175】
(表2.1.)試験評価計画
*来診1および来診2は同時に行うことができた。全てのベースライン評価は試験薬物投与前に実施され、CRFに記録された。
**糞便の収集は第1の色素が現れてから、第2の色素が現れるまで続けた。第2のマーカーを含有する糞便は収集しなかった。
***試験用調合乳または乳の摂取は、第2の色素が糞便中に現れるまで続けた。
#通常の看護の中で入手可能な時だけ記録した。試験のために、余分な血液試料もECGも採取しなかった。
##来診17は、第2の追跡色素が現れるまで、必要であれば16日目を過ぎて延長した。
###生命徴候は、第2の追跡色素が現れるまで毎日収集した。
【0176】
4患者の選択
これらの試験ために選択された患者は、在胎齢32週前に生まれ、かつ登録時に妊娠32週間6日(推定年齢)以下であった乳児であった。これらの試験に登録した乳児には、非経口栄養(グルコースを除く)を与えなかった。
【0177】
4.1組み入れ規準
試験に組み入れるために、患者は以下の基準を満たさなければならない。
1.妊娠32週前に生まれ、かつ登録時に妊娠32週6日(推定年齢)以下であった早産児
2.在胎齢に適した早産児(それぞれの実施施設は、その実施施設の発育曲線または手順を使用し、使用された発育曲線または手順のコピーを試験責任者のファイルに保管しなければならない。1箇所の実施施設にいる全ての患者に同じ発育曲線を使用しなければならない)
3.母乳を与えようと考えていない母親をもつ、乳児用調合乳が与えられている早産児
4.経口栄養または経腸栄養(哺乳瓶または経鼻チューブ)が与えられている早産児
【0178】
4.2除外基準
以下が存在すれば、試験への組み入れから患者が排除される:
1.非経口栄養(グルコースを除く)が与えられている乳児
2.
BVT.BSSL-020の場合:乳強化剤(例えば、Enfamil、Nutriprem、Milupa Eoprotin(商標登録))が与えられている乳児
・初回投与の2日前に強化剤の使用が中断されるのであれば、乳強化剤が与えられている他の点で資格のある乳児が登録されることがある。
BVT.BSSL-021の場合:Eoprotin(登録商標)(例えば、Enfamil、Nutriprem)以外の乳強化剤が与えられている乳児
・初回投与の2日前に強化剤の使用が中断されるのであれば、Eoprotin(登録商標)以外の乳強化剤が与えられた他の点で資格のある乳児が登録されることがある。
3.機械的換気を必要とする乳児
4.胎内発育遅延(SGA)児
5.
>30%O
2を必要とする乳児
6.光線療法を受けている乳児(光線療法を完了し、他の点で試験資格のある赤ん坊が登録されることがある)
7.グレードIIIもしくはIVの脳室周囲出血もしくは脳室内出血、髄膜炎または水頭症、グレードIIIもしくはIVの頭蓋内出血、脳室周囲白質軟化症を含む重篤な脳疾患をもつ乳児
8.発育および発達に影響を及ぼす可能性のある重大な異形症または先天性異常
9.血行力学的に重大な動脈管遺残(PDA)をもつ乳児
10.敗血症の臨床エビデンス(少量もしくは多量の白血球数および/または少量の血小板数、ならびに細菌学的に証明された全身感染エビデンスを含む)
11.先天性感染症(例えば、CMV)の記録
12.壊死性腸炎の存在
13.出血性肺事象
14.ヒドロコルチゾン以外のコルチコステロイドを用いた前治療または併用治療
15.試験責任者の意見によって患者が組み入れに不適切になる任意の状態
16.スクリーニング来診の2日以内から追跡調査来診が完了するまで、同時に行われている別の臨床研究に登録していること
【0179】
4.3療法または評価からの対象の除去
試験責任者の意見で医学的に必要であれば、または患者の親もしくは法的な保護者の希望があれば、患者は試験薬物から脱落した。
治療からの脱落の他の理由は以下を含んでもよい。
・試験への不正確な組み入れ
・重大なプロトコル違反
・有害事象
【0180】
5治療
5.1投与された治療
投与された調合乳または乳の量は、毎朝、CRFに記録された時の患者の体重に基づいた。調合乳または低温殺菌母乳の中のrhBSSL濃度は0.15g/Lで一定していた。無作為化計画に応じて、rhBSSLを含む、rhBSSLを含まない調合乳(試験020)または低温殺菌母乳(試験021)を7日間、患者に与えた。患者がプラセボに割り当てられた時に、対応する量の滅菌注射用水(WFI)を、rhBSSLを含まない低温殺菌母乳に添加した。毎朝、投与された調合乳/乳の量をCRFに記録した。
*乳児には約150〜180mLの乳/kg体重/日を与えた。特定の乳児に対するmL/kg単位での授乳量は両期間とも一定であった。
【0181】
5.2治験薬の情報
例示のセクション1(前記)に記載のように、組換えヒトBSSL原薬および治験薬製品(IMP)を調製した。
【0182】
組換えヒトBSSLを、10mLガラスバイアルに入っている冷凍経口溶液として与えた。濃度は15mg/mLであり、充填体積は1.3mLであった。試験薬物は、部外者が近づけない試験センターの場所に冷凍保管(-25℃〜-15℃)しなければならなかった。
【0183】
投与前に、冷凍溶液を解凍し、食品中に最終濃度0.15g/Lとなるように、0.9mLアリコートのrhBSSL溶液を90mLの調合乳(試験020)または低温殺菌母乳(試験021)に移した。プラセボ調合乳/乳を、rhBSSL溶液の代わりに0.9mLの滅菌水を使用して同じように調製した。
【0184】
これらの両試験において2つのIMPロットを使用した。
【0185】
サプリメントとしての強化剤Eoprotin(登録商標)の添加は試験021(母乳)全体を通じてしか許可されなかった。しかしながら、Eoprotin(登録商標)の量は治療期間中に一定でなければならなかった。
【0186】
5.3濃度の選択
低温殺菌乳および調合乳に添加されるrhBSSLの濃度は、母乳に通常存在する0.1〜0.2g/Lのレベルに基づいて選択された。
【0187】
5.4盲検化
無作為化計画は、Biovitrumの委任された者によって安全で施錠された場所において維持され、データベースのロックがなされるまで病院職員にも、試験責任者にも、Biovitrum従業員にも、親にも明らかにされなかった。調合乳または低温殺菌母乳へのrhBSSL/プラセボの添加は、治療の割り付けを知っており、患者の評価に関与しない薬剤師または委任された者によって行われた。
【0188】
5.5前療法および併用療法
試験責任者の自由裁量で、患者の幸福に必要とみなされた他の療法を与えることができた。このような全ての療法をCRFに記録した。非経口栄養(グルコースを除く)、最初の治験薬投与の2日以内から最後の投与の2日後までの乳強化剤(前記の試験021におけるEoprotinを除く)、およびヒドロコルチゾンを除くコルチコステロイドの併用投与が試験中に禁止された。試験中の他の薬物は試験薬物と併用されなかった。患者は、別の臨床研究に同時参加することが許されなかった。
【0189】
早産児は、治療介入を必要とする合併症を経験することが多い。これは、薬物療法が授乳を妨げない限り許容することができた。併用薬物療法によって非経口栄養が必要とされた場合、患者は試験から脱落した。同様に、壊死性腸炎または腹部閉塞などの経腸栄養の吸収に影響を及ぼす合併症が発症した場合は、患者は試験への参加を中断する必要があった。
【0190】
72時間の糞便収集中に、皮膚刺激治療のための軟膏を使用することは禁止された。皮膚を乾燥した状態に保つために、72時間の収集期間中に、おむつを頻繁に交換した。糞便収集の中断につながる、発疹が重篤な患者は試験から脱落した。
【0191】
6複合データに関する解析のための試験評価
6.1それぞれの試験における効力評価
6.1.1体重
患者の体重を、秤を用いてグラム単位で少なくとも+/-5グラムの正確度で毎日記録し、CRFに入力した。可能な限り、毎日、ほぼ同じ時間に体重を測定した。
【0192】
6.1.2試料の収集
試験BVT.BSSL-021では4〜7日目および13〜16日目に、母乳のアリコートを採取した後にrhBSSLまたはプラセボを添加した。
【0193】
CFAを求めるために、脂肪、すなわち、調合乳または乳の摂取に対応する期間にわたり、それぞれの治療期間が終わるまで72時間、糞便の収集を行った。それぞれの実施施設に支給されたおむつを糞便収集に使用した。2つの治療期間中に、カルミン赤色追跡色素をマーカーとして食事(正午ごろ)と一緒に4日目および13日目にそれぞれ与えた。糞便収集は、糞便中に第1のカルミン赤色マーカーが現れるのと同時に開始した。第1のマーカーを含有する糞便を収集し、収集された第1の糞便の日時をCRFに記録した。第1の赤色マーカーを投与して72時間後に、第2のカルミンマーカーを与え、第2のカルミンマーカーが現れるまで糞便収集を続けた。第2のマーカーを含有する糞便を収集しなかったが、第2のマーカーが現れた日時をCRFに記録した。おむつをあてる前、取り外した後に秤量し、重量の差をCRFに記録した。それぞれの収集の時間および収集期間全体の経過期間もCRFに記録した。糞便収集期間中に皮膚刺激治療のための軟膏を使用することは禁止された。皮膚を乾燥した状態に保つために、収集期間中に、おむつを頻繁に交換した。糞便収集の中断につながる、発疹が重篤な患者は試験から脱落した。具体的な収集方法を別の実験マニュアルに示した。該当する場合には、両治療期間の糞便収集期間からの吐瀉物を秤量した。小さな布/リネンを秤量し、各乳児の頭の下に置いた。布/リネンが吐瀉物で汚れた時、布/リネンを取り外し、再秤量した。乳児から吐瀉物を取り除くために追加の布が用いられた場合には、その布も使用前後に秤量した。吐瀉物の重量(総重量-布/リネンの重量)をCRFに記録した。他の全ての食品の損失、例えば、哺乳瓶に残っている調合乳または乳を測定し、授乳ごとに摂取された調合乳の体積の計算において、その量を考慮に入れた。
【0194】
それぞれの収集期間中に使用した全てのおむつおよび紙ナプキンを収集した。これらを密封式バックに入れ、患者IDおよび日時を付け、分析検査室に発送するまで-20℃で保管した。
【0195】
6.1.3試料分析
糞便試料、調合乳(試験020)および乳アリコート(試験021)は中央研究所によって分析された。糞便および食品中にある長鎖多価不飽和脂肪酸DHAおよびAAを含む個々の脂肪酸を、Folch法による抽出後にガスクロマトグラフィー法によって定量した。両試験とも、脂肪酸分離のためにOmegawax 250カラム(Supelco)を使用した。しかしながら、DHAと、母乳にしか存在しないネルボン酸(C24:1)が共溶出するので、試験021からの試料のDHAを定量するために、試験021からのパー・プロトコル解析対象集団の患者からの試料をSP-2380カラム(Supelco)を用いて分析もした。このカラムを用いるとDHAおよびC24:1は良好に分離されるが、調合乳および乳の中にある他の脂肪酸を全て分離するには適していない。従って、試験021(母乳)からのこれらの試料からの個々の脂肪酸を、SP-2380カラム(DHA用)およびOmegawax 250カラム(他の全ての脂肪酸用)を(別々に)使用して分離および分析した。総脂質は個々の脂肪酸の合計として計算した(セクション7.5.1を参照されたい)。同じ分析原理を用いて、試験に使用した調合乳バッチおよび母乳アリコートのそれぞれにある脂質を測定した。
【0196】
6.1.4膝から踵までの長さ
患者の脚の長さを膝から踵まで、これらの部位に提供された膝高計(knemometer)を用いて測定した。膝から踵までの長さをミリメートル単位でCRFに記録した。可能な限り、毎日、ほぼ同じ時間に、同じ人間によって長さを測定した。測定を3回行い、平均値をCRFに入力した。
【0197】
6.2安全性評価:有害事象
それぞれの試験における有害事象(AE)報告期間は治験薬の初回投与時(1日目)から開始し、追跡調査来診(試験薬物摂取量を最後に投与して1週間±3日後)に終了した。有害事象報告期間中に患者において生じた全てのAEは、事象が薬物療法/製品に関連するとみなされたかどうかに関係なく報告された。さらに、AE報告期間後に発生し、治験製品に関連する可能性が低い、治験製品に関連する可能性が高い、または治験製品に確実に関連すると試験責任者が評価した既知の不都合な事象もAEとして報告された。
【0198】
7統計法
7.1解析集団
・安全性解析対象集団:無作為化治験薬(rhBSSLまたはプラセボ)が少なくとも1回投与された全ての無作為化患者。安全性変数の解析は、安全性解析対象集団を用いて実施された。
・最大の解析対象集団(FAS):無作為化治験薬が少なくとも1回投与され、両治療期間においてベースラインおよび少なくとも1回のベースライン後の体重評価を受けた、全ての無作為化患者。
・パー・プロトコル解析対象集団(PP):妥当なコンプライアンスを有し、他の重大なプロトコル違反のない、FASに組み入れられた全ての患者。
【0199】
それぞれの試験の中でPP解析対象集団の資格のある患者の評価を、それぞれの試験のデータベースのロックおよび盲検解除の前に実施した。FASおよびPPの両方について、複合データセットは個々の試験と正確に同じ患者を組み入れた。
【0200】
7.2複合解析の統計目的
7.2.1主要効力目的および仮説
2つの試験からの複合データに対する解析の主要目的は、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、プラセボと比較したrhBSSLを用いた治療後の発育の改善を証明することであった。
【0201】
発育速度に関して治療間に差はないという帰無仮説を立てた。対立仮説は、以下:rhBSSLは、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時にプラセボと比較して発育速度を改善する、であった。
【0202】
7.2.2副次的効力目的
2つの試験からの複合データに対する解析の副次的効力目的は以下の通りであった。
・乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、プラセボと比較したrhBSSLを用いた治療後の早産児における脂肪吸収の改善を証明する。
・乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、rhBSSLを用いた治療後の早産児における膝から踵までの長さを、プラセボを用いた治療後の早産児における膝から踵までの長さと比較する。
【0203】
CFAに関して治療間に差はないという帰無仮説を立てた。対立仮説は、以下:rhBSSLは、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時にプラセボと比較して脂肪吸収を改善する、であった。
【0204】
膝から踵までの長さに関して統計仮説検定は実施されなかった。
【0205】
7.2.3探索的効力目的
2つの研究からの複合データに関する解析の探索的効力目的は、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の、プラセボ治療に対するrhBSSL治療後の早産児における、DHAおよびAAの吸収を探索することであった。
【0206】
7.2.4安全性目的
2つの試験からの複合データに対する解析の安全性目的は、乳児用調合乳または低温殺菌母乳に入れて投与された時の早産児におけるrhBSSLの安全性および忍容性を評価することであった。
【0207】
7.3患者の内訳
患者の内訳は治療シークエンス(treatment sequence)によってまとめられ、両試験において無作為化された全ての患者に基づいた。要約表には、無作為化された患者の数、それぞれの試験を完了した患者の数(%)、それぞれの試験から中断した患者の数(%)、および中断のそれぞれの理由の患者の数(%)が含まれた。要約表はまた、安全性、FAS、およびPP解析対象集団に組み入れられた患者の数(%)、ならびにそれぞれの治療期間を完了した患者の数(%)も報告した。
【0208】
7.4患者の人口統計学的特性およびベースライン特性
人口統計学的特性には、治験薬の初回投与時の実際の年齢および推定在胎齢、出生時の在胎齢、性別、人種、ならびに民族が含まれた。ベースライン特性には膝から踵までの長さおよび体重が含まれた。人口統計学的特性およびベースライン特性について2つの概要表を示した。最初の表は治療シークエンスによる複合データの要約を示し、第2の表は、試験による人口統計学的特性およびベースライン特性の要約を示す。連続変数を、患者の数、平均、標準偏差(SD)、中央値、最小値、および最大値によってまとめた。カテゴリカル変数を、それぞれのカテゴリーにおける患者の数およびパーセントによってまとめた。
【0209】
7.5効力解析
これらの2つの試験において収集された全ての効力データを、それぞれの試験および複合解析について記述統計学を用いてまとめた。序論で述べたように効力目的に従って個々の試験の効力解析を行った(これらの解析の結果は本報告に示さない)。
【0210】
2つの試験からの複合データに対する解析の主要解析は、0.05のα有意水準を用いた両側検定に基づいた。ステップワイズ逐次検定法(stepwise sequential testing procedure)を用いて、0.05の多重有意水準(multiple level of significance)を確実にした。
・第1段階:0.05のα有意水準を用いて、発育速度に関して治療間に差はないという帰無仮説を検定した。帰無仮説が棄却されたら、逐次検定法の第2段階を行った。
・第2段階:0.05のα有意水準を用いて、CFAに関して治療間に差はないという帰無仮説を検定した。帰無仮説が棄却されたら、CFAに関して確認主張(confirmatory claim)も行った。
【0211】
この多重比較法は多重有意水準が5%以下になることを確認する。
【0212】
主要効力解析および副次的効力解析および探索的解析は、それぞれの治療の点推定値および推定値の周囲にある95%信頼区間ならびに対応する95%信頼区間に付随する治療間の差の推定値を報告する。前述の発育速度およびCFA以外の変数について仮説検定は実施されなかった。
【0213】
連続変数を、n、平均、SD、中央値、最小値、および最大値を用いてまとめた。カテゴリカル変数を、それぞれのカテゴリーにおける患者の数およびパーセントを用いてまとめた。
【0214】
期間中の発育速度の計算時に最終評価が得られなければ、発育速度は最後の入手可能な評価において計算され、最終日に繰り越された。他のやり方で、欠測データの補定(imputation)は実施されなかった。
【0215】
7.5.1解析のための効力変数
主要効力変数は以下であった。
・
発育速度(g/kg/日):発育速度を、第1の期間については、(第1の期間における最終評価時の体重-1日目の体重)を[1日目および(第1の期間における最終評価の日-1)の体重]で割ったものと定義し、第2の期間については、(第2の期間における最終評価時の体重-10日目の体重)を[10日目および(第2の期間における最終評価の日-10)の体重]で割ったものと定義した。
【0216】
副次的効力変数は、以下:
・それぞれの治療期間の最後の3日(72時間)の間、追跡マーカー間に収集された食物試料および糞便試料において測定された
CFA
であった。
【0217】
CFAを、[食物中の脂肪(g/期間)の-糞便中の脂肪(g/期間)]/[食物中の脂肪(g/期間)]
*100として計算した。
【0218】
食物中の脂肪を、([食物(mL)-吐瀉物(mL)]
* [食物中の脂肪含有率(g/100mL)]/100として計算した。この式は、以下:(a)吐瀉物中の脂肪含有率は食物中の脂肪含有率と同じである;(b)吐瀉物の密度は食物の密度と同じである、という仮定に基づいた。
【0219】
食物(調合乳または低温殺菌母乳)の脂肪含有率を、糞便解析と同じ方法を用いて決定し、同じ検査室によって実施した。食物(mL)および吐瀉物(mL)を、第1の追跡摂取時または第1の追跡摂取後および第2の追跡摂取前に記録された食物または吐瀉物の総量として計算した。吐瀉物をCRFにグラム単位で記録した。従って、吐瀉物(mL)を吐瀉物(g)/密度として記録した。
【0220】
2つの試験間の糞便中の脂肪(g/期間)および食物中の脂肪含有率(g/100mL)の計算には違いが1つあった。この違いは、以下に記載のように、乳および調合乳の中の異なる脂肪酸含有率に関する。
【0221】
BVT.BSSL-020:
それぞれの脂肪酸が検査室によってmg単位で示されたので、糞便中の脂肪(g/期間)を、以下の脂肪酸:C12:0、C14:0、C16:0、C18:0、C18:1、C18:2n-6、C18:3n-3、C20:4n-6、およびC22:6n-3の合計を1000で割ったものとして計算した。
【0222】
食物中のそれぞれの脂肪酸をg/100mLの単位で示した。食物中の脂肪含有率(g/100mL)を糞便と同じ脂肪酸の合計として計算した。
【0223】
BVT.BSSL-021:
それぞれの脂肪酸が検査室によってmg単位で示されたので、糞便中の脂肪(g/期間)を、以下の脂肪酸:C12:0、C14:0、C16:0、C16:1、C18:0、C18:1、C18:2n-6、C18:3n-3、C18:3n-6、C20:1、C20:2n-3、C20:3n-6、C20:4n-6、C22:6n-3、およびC24:1の合計を1000で割ったものとして計算した。
【0224】
食物中のそれぞれの脂肪酸をg/100mLの単位で示した。食物中の脂肪含有率(g/100mL)を糞便と同じ脂肪酸の合計として計算した。
【0225】
複合解析:
CFAデータの複合統計解析には、2つの個々の試験のそれぞれからの、それぞれの乳児/治療期間について計算された全CFA値が用いられた。
・
長さの変化(mm):長さの変化を、第1の期間における1日目〜7日目および第2の期間における10日目〜16日目の膝から踵までの長さの変化と定義した。
【0226】
探索的効力変数は、以下:
・
DHAおよびAAの吸収:
それぞれの治療期間の最後の3日間(72時間)に収集された糞便試料において測定されたDHA(C22:6 n-3)およびAA(C20:4 n-6)の吸収率
【0227】
DHA吸収率およびAA吸収率は、CFA計算に使用したものと同じアプローチを用いたが、それぞれ、DHAおよびAAの試料中の個々の(C22:6 n-3)の量および (C20:4 n-6)の量だけを用いて計算した。
【0228】
7.5.2効力解析法
主要効力解析および副次的効力解析は、2つの試験からの複合データのFASに基づいた。補助的な効力解析は、2つの試験からの複合データのPP解析対象集団に基づいた。さらに、それぞれの効力変数を、FAS解析対象集団およびPP解析対象集団に対する試験によって解析した。
【0229】
主要効力アウトカムである発育速度を、分散分析(ANOVA)によって、因子として治療、レジメン(低温殺菌母乳または乳児用調合乳)、期間、シークエンス、ならびにレジメンおよびシークエンスの中で入れ子にされた患者を用いて解析した。全ての主効果を、ANOVAモデルからの残差平均平方に対して検定した。
【0230】
シャピロ-ウィルク検定を用いて、複合データに基づく発育速度分布の正規性仮定(normality assumption)を検定した。正規性仮定に従わなければ、順位値(ranked value)をANOVAに使用した。
【0231】
副次的効力アウトカムである、それぞれの治療期間の最後の3日間からのCFAを、発育速度と同じように分散分析(ANOVA)によって、因子として治療、レジメン(低温殺菌母乳または乳児用調合乳)、期間、シークエンス、ならびにレジメンおよびシークエンスの中で入れ子にされた患者を用いて解析した。
【0232】
治療による食物中の総脂肪量および糞便中の総脂肪量の記述統計学を示した。
【0233】
別の副次的効力アウトカムである膝から踵までの長さの変化を、共分散分析(ANCOVA)によって、因子として治療、レジメン、期間、シークエンス、ならびにレジメンおよびシークエンスの中で入れ子にされた患者を用いて、共変量(covariate)としてベースライン値を用いて解析した。
【0234】
7.6安全性解析:有害事象
全ての有害事象(AE)解析は、両試験からの複合データの安全性解析対象集団に基づく。記述統計学を用いて結果を示した。仮説検定は実施しなかった。
【0235】
いずれかの試験の間に報告された全てのAEを器官別大分類(SOC)および優先使用語(PT)によって分類するために、MedDRA用語集バージョン10.0が用いられた。全ての要約表には、治療下で発現した有害事象(TEAE)のある患者の数が含まれた。それぞれの個々の試験においてTEAEの評価がなされた。TEAEは、試験薬物の開始時または開始後に発症し、かつ試験薬物の最後の投与後14日以内(重大なAEの場合は30日以内)に発症したAE、または試験薬物開始時に進行中であり、重篤度が増大したか、もしくは治療期間中に試験薬物との関連が密接になったAEと定義された。全てのTEAE、治療に関連するTEAE(確実、可能性が高い、および可能性が低い)、SAE、ならびに試験薬物の脱落につながるTEAEを、MedDRA SOC、PT、および治療によってまとめた。発生率(患者の割合)およびそれぞれのTEAEの数をまとめた。さらに、TEAEを、最大重篤度(軽度、中程度、または重度)によってまとめた。TEAEを全てまとめたものを治療シークエンスによって示し、(1)BSSLのみ;(2)プラセボのみ;(3)BSSLおよびプラセボ;ならびに(4)治療なしに割り振られた、それぞれの治療シークエンスのTEAE患者の合計および数(%)によって示した。
【0236】
7.7統計解析計画における解析に対する変更
2種類のLCPUFA、DHAおよびAAの吸収に対するrhBSSLの予想外の統計的に有意な効果のために(セクション8.4.3を参照されたい)、測定された全ての脂肪酸の合計のCFAに対する統計的に有意な効果がないのにもかかわらず(セクション8.4.2を参照されたい)、それぞれの個々の脂肪酸(FA)の吸収率の事後解析、ならびに全ての飽和FA(鎖の長さに関係せず、二重結合を有さない全てのFA)の合計、全ての不飽和FA(鎖の長さに関係せず、少なくとも1つの二重結合を有する全てのFA)、全ての多価不飽和FA(PUFA、鎖の長さに関係せず、少なくとも2つの二重結合を有する全てのFA)の合計、および全てのLCPUFA(少なくとも20個の炭素原子の鎖の長さを有する全てのPUFA)の合計の吸収率の解析を行った。計算は全脂肪のCFAと同じであった。これらの解析をSAPに定義しなかった。多重比較の補正はなされておらず、p値は記述的としかみなされない。
【0237】
8結果
8.1患者の内訳
治療シークエンスによる2つの試験における患者の内訳をまとめたものを表2.2に示した。試験による患者の内訳も収集し、まとめた(本報告には示していない)。
【0238】
(表2.2)患者の内訳
a安全性解析対象集団は、無作為化治験薬が少なくとも1回投与された全ての患者を含む。
b最大の解析対象集団は、無作為化治験薬が少なくとも1回投与され、両治療期間においてベースラインおよび少なくとも1回のベースライン後の体重評価を受けた全ての無作為化患者を含む。
cパー・プロトコル解析対象集団は、妥当なコンプライアンスを有し、他の重大なプロトコル違反のない、FASの中の患者を含む。
d期間完了とは、治療期間において治験薬が7日間投与された患者と定義した。
【0239】
両試験全体にわたって合計65人の患者を無作為化した:BVT.BSSL-020では33人の患者、BVT.BSSL-021では32人の患者。合計63人の患者は、無作為化治験薬が少なくとも1回投与され、安全性解析対象集団に組み入れられた:BVT.BSSL-020では33人の患者、BVT.BSSL-021では30人の患者。FASは、安全性解析対象集団内にあり、かつ両治療期間中にベースラインおよび少なくとも1回のベースライン後の体重評価を受けた合計60人の患者を組み入れた:BVT.BSSL-020では33人の患者、BVT.BSSL-021では27人の患者。合計46人の患者をPP解析対象集団に組み入れた:BVT.BSSL-020では26人の患者、BVT.BSSL-021では20人の患者。不完全または不正確な糞便収集のためにPP解析対象集団に組み入れられなかった14人の患者がいた。
【0240】
安全性解析対象集団の63人の患者のうち、31人の患者をrhBSSL/プラセボ治療シークエンスに無作為化し、32人の患者をプラセボ/rhBSSLに無作為化した。合計61人の患者が期間1を完了し、合計59人の患者が期間2を完了した。4人の患者を除く全員が試験を完了した。これらの4人の患者はAEにより中断した。
【0241】
8.2人口統計学的特性およびベースライン特性
治療シークエンスによる2つの試験における複合データの人口統計学的特性およびベースライン特性を以下の表2.3に示した。試験による人口統計学的特性およびベースライン特性も収集し、まとめた(本報告には示していない)。
【0242】
(表2.3) 人口統計学的特性およびベースライン特性
a初回投与日の齢
b膝高計を用いて測定した
【0243】
複合解析において、rhBSSL/プラセボに無作為化された患者の初回投与日の平均年齢(4.14週間)は、プラセボ/rhBSSLに無作為化された患者の平均年齢(3.60週間)と比較して高かった。他の人口統計学的特性およびベースライン特性は治療シークエンス間で同等であった。
【0244】
2つの試験間の初回投与日の平均年齢の差も注目に値した。BVT.BSSL-020における患者の平均年齢(3.39週)はBVT.BSSL-021における平均年齢(4.39週)と比較して低かった。BVT.BSSL-020における出生時の平均在胎齢(29.18週)はBVT.BSSL-021(28.13週)より約1週間長かった。しかしながら、初回投与日の在胎齢は2つの試験において類似していた。民族の違いも2つの試験間で観察された。BVT.BSSL-020におけるヒスパニック患者またはラティーノ患者のパーセント(63.6%)はBVT.BSSL-021(16.7%)と比較して高かった。他の人口統計学的特性およびベースライン特性は試験間で同等であった。
【0245】
8.3治療コンプライアンス
試験BVT.BSSL-020における治療コンプライアンスを以下の表2.4にまとめ、試験BVT.BSSL-021については表2.5にまとめた。
【0246】
(表2.4)治療試験BVT.BSSL.020による治療コンプライアンス
【0247】
(表2.5)治療試験BVT.BSSL.021による治療コンプライアンス
【0248】
8.4効力解析
8.4.1主要効力変数
複合解析における主要効力変数は発育速度であった。FAS解析対象集団およびPP解析対象集団における2つの臨床研究の複合解析に基づく発育速度の複合結果を表2.6に示した。FAS解析対象集団およびPP解析対象集団に基づく試験による発育速度解析結果を、それぞれ、表2.7aおよび表2.7bに示した。
【0249】
(表2.6)FAS解析対象集団およびPP解析対象集団における発育速度(g/kg/日)の解析
【0250】
FAS解析対象集団およびPP解析対象集団において、2つの臨床研究の複合結果は、プラセボ治療と比較してrhBSSL治療中に有意な発育速度の増大を示した。FASでは、発育速度LS平均は、rhBSSLでは16.86g/kg/日、プラセボでは13.93g/kg/日であった。rhBSSLとプラセボとの発育速度の差は統計的に有意であった。LS平均差(rhBSSL-プラセボ)は2.93g/kg/日(p<0.001)であった。PP解析対象集団において、2.08g/kg/日のLS平均差(rhBSSL-プラセボ)も統計的に有意であった(p=0.019)。
【0251】
以下の表2.7aは、FAS解析対象集団における2つの臨床研究それぞれの発育速度結果を示す。表2.7bはPP解析対象集団の発育速度結果を示す。
【0252】
(表2.7a)FAS解析対象集団における試験による発育速度(g/kg/日)の解析
【0253】
プラセボと比較したrhBSSL治療中の発育速度の改善は、試験BVT.BSSL-021より試験BVT.BSSL-020において顕著であった。FASに基づいて、BVT.BSSL-020試験では、LS平均差(rhBSSL-プラセボ)は3.74g/kg/日(p=0.001)であったのに対して、BVT.BSSL-021試験では1.95g/kg/日(p=0.119)であった。試験による類似結果がPP解析対象集団において観察された(表2.7bを参照されたい)。
【0254】
表2.7aからの別の観察は、調合乳が与えられた患者の体重が、低温殺菌母乳が与えられた患者より急速に増加したことであった。FASにおいて、rhBSSL治療中の平均発育速度はBVT.BSSL-020では18.06g/kg/日、BVT.BSSL-021では15.54g/kg/日であり、プラセボ治療中では、それぞれの試験において14.29g/kg/日および13.63g/kg/日であった。類似結果がPP解析対象集団において観察された(表2.7bを参照されたい)。
【0255】
シャピロ-ウィルク検定を用いて、複合データに基づく発育速度分布の正規性仮定を検定した。正規性の検定はFASにおいて有意であった(p値<0.001)。このことから、正規性仮定に従わなかったことが分かる(PP解析対象集団について類似結果が見られた)。従って、順位値を用いた発育速度の解析も行った。この感度分析の結果は、結果として生じた<0.001のp値を用いた主要解析と一致した。このことは、プラセボと比較してrhBSSL治療中に発育が有意に改善したことを証明している。
【0256】
(表2.7b)PP解析対象集団における試験による発育速度(g/kg/日)の解析
【0257】
8.4.2副次的効力変数
副次的効力変数は、それぞれの治療期間の開始から終了までのCFAおよび膝から踵までの長さの変化であった。
【0258】
CFA
PP解析対象集団の患者しか、CFAの決定に必須の完全/正確な糞便収集が行われなかった。従って、本報告における提示は、FAS解析対象集団およびPP解析対象集団を対象とした2つの臨床研究の複合解析のCFA結果を示した以下の表2.8aを除いて、PP解析対象集団のデータに限定される。PP解析対象集団に基づく試験によるCFA解析結果を表2.8bに示した。
【0259】
(表2.8a)FAS解析対象集団およびPP解析対象集団におけるCFA(%)の解析
*試験020において1人の患者が糞便収集期間前に脱落した。
【0260】
FAS解析対象集団およびPP解析対象集団において、2つの臨床研究の複合結果は、プラセボと比較してrhBSSLにおけるCFAの数値増加を示した。PP解析対象集団において、LS平均CFAはrhBSSL治療中は69.1%、プラセボについては65.5%であった。LS平均差(rhBSSL-プラセボ)は3.56%(p=0.069)であった。
【0261】
BVT.BSSL-021におけるプラセボと比較したrhBSSL治療中のCFAの改善はBVT.BSSL-020と比較して大きかった。PPにおいて、LS平均差(rhBSSL-プラセボ)はBVT.BSSL-021では4.86%(p=0.073)、BVT.BSSL-020では2.08%(p=0.462)であった。試験による類似結果がFAS解析対象集団において観察された(表2.8bを参照されたい)。
【0262】
(表2.8b)PP解析対象集団における試験によるCFA(%)の解析
【0263】
表2.9aは、複合解析(PP解析対象集団)における試験による、食物追跡マーカー間に摂取された食物中の総脂肪量、および糞便中の追跡マーカー間に収集された糞便試料からの糞便中の総脂肪量を示す。複合解析のための治療によるデータを表2.9bに示した。
【0264】
(表2.9a)PP解析対象集団における試験による食物中の総脂肪量および糞便中の総脂肪量
【0265】
調合乳が与えられた患者は、低温殺菌母乳が与えられた患者より多くの脂肪を食物から摂取した。PPにおいて、rhBSSL治療(72時間収集期間)中に摂取された食物中の総脂肪量の平均はBVT.BSSL-020において29.12g、BVT.BSSL-021において19.00gであり、プラセボ治療中では、それぞれの試験において28.50gおよび20.51gであった。調合乳が与えられた患者はまた、低温殺菌母乳が与えられた患者より多くの脂肪を糞便中に排泄した。rhBSSL治療中に糞便中に排泄された総脂肪量の平均はBVT.BSSL-020では8.53g、BVT.BSSL-021では6.16gであり、プラセボ中にはそれぞれの試験において8.97gおよび7.56gであった。
【0266】
表2.9bは、PP解析対象集団における複合結果について、72時間収集間隔中の食物中の総脂肪量および糞便中の総脂肪量をまとめたものである。脂肪の摂取および脂肪の排泄は2つの治療について同等であった。PPにおける2つの試験からの複合データにおいて、rhBSSL治療中に摂取された食物中の脂肪量の平均は24.72gであり、プラセボ中に摂取された平均量は25.03gであった。糞便中に排泄された脂肪の量は、それぞれ、7.50gおよび8.36gであった。
【0267】
(表2.9b)PP解析対象集団における食物中の総脂肪量および糞便中の総脂肪量、複合データ
【0268】
異なる試験間での摂取された乳児用調合乳または母乳の平均体積間の差、またはrhBSSLを用いた治療期間の間もしくはプラセボを用いた治療期間の間での摂取された体積間の差はほとんどなかった。
【0269】
発育速度と脂肪吸収との相関関係
図2.2は、2つの試験からのPP解析対象集団からのデータの複合解析における発育速度の差(rhBSSL-プラセボ)対CFAの差(rhBSSL-プラセボ)を示す。
【0270】
このグラフにおいて見られるように、発育速度に対するrhBSSLの効果と脂肪吸収(CFA)に対するrhBSSLの効果との間には統計的に有意な相関関係は無かった(p値0.177)。
【0271】
膝から踵までの長さの変化の変化
FAS解析およびPP解析における2つの試験からの複合解析のために膝から踵までの長さの変化の結果を収集し、まとめた(本報告には示していない)。
【0272】
FAS解析対象集団またはPP解析対象集団において、両試験からの複合データにおける、または試験による、膝から踵までの長さの変化の測定値の平均に関して治療間で注目に値する差は観察されなかった。
【0273】
8.4.3探索的効力変数
全脂肪のCFAの提示と全く同じように、本報告における探索的効力変数の提示は、FAS解析対象集団およびPP解析対象集団の両方の結果を示した以下の表2.10.および表2.11を除きPP解析対象集団のデータに限定される。
【0274】
探索的効力変数は、調合乳および母乳の両方に存在する2種類の長鎖多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6 n-3)およびアラキドン酸(AA、C20:4、n-6)の吸収率であった。
【0275】
DHA:
FAS解析対象集団およびPP解析対象集団における2つの試験からの複合解析のためのDHA結果を表2.10に示した。PP解析対象集団における試験によるDHAの結果を収集し、表2.13および表2.14の該当するセルの中にまとめた。
【0276】
(表2.10)FAS解析対象集団およびPP解析対象集団におけるDHA吸収率(%)の解析
【0277】
AA:
FAS解析対象集団およびPP解析対象集団における2つの研究からの複合解析のためのAAの結果を表2.11に示した。PP解析対象集団における試験によるAAの結果を収集し、表2.13および表2.14の該当するセルの中にまとめた。
【0278】
(表2.11)FAS解析対象集団およびPP解析対象集団におけるAA吸収率(%)の解析
【0279】
2つの研究からの複合結果におけるDHA吸収率およびAA吸収率は、プラセボよりrhBSSLの方が極めて高かった。PPにおいて、DHA吸収率のLS平均はrhBSSL治療中に79.83%であったのに対して、プラセボについては74.03%であった。LS平均差(rhBSSL-プラセボ)は5.80%(p=0.013)であった。AA吸収率のLS平均はrhBSSLでは77.36%であったのに対して、プラセボでは68.73%であった。LS平均差(rhBSSL-プラセボ)は8.63%(p=0.001)であった。類似結果がFAS解析対象集団における2つの試験の複合解析から観察された。それぞれの試験においても、rhBSSLの場合、プラセボと比較して極めて高いDHA吸収率およびAA吸収率が観察された(表2.13および表2.14の該当するセルを参照されたい)。
【0280】
8.4.4事後解析
個々のFA:
調合乳および低温殺菌乳の両方に存在するそれぞれのFAの吸収率の結果を収集し、まとめた(C20:4[AA]およびC22:6[DHA]についてのデータを前記のセクション8.4.3に提示した)。結果を以下の表2.12にまとめた。対応する結果を試験によって提示し、以下の表2.13(試験020)および表2.14(試験021)にまとめた。表2.14は、乳にしか存在しないFAに関するデータも含み、従って、複合解析に入れられなかった。
【0281】
(表2.12)調合乳および低温殺菌母乳の両方に存在する個々の脂肪酸のCFA、複合解析。パー・プロトコル解析対象集団
*P<0.05
【0282】
(表2.13)個々の脂肪酸のCFA、試験BVT.BSSL-020(乳児用調合乳)。パー・プロトコル解析対象集団
【0283】
(表2.14)個々の脂肪酸のCFA、試験BVT.BSSL-021(低温殺菌母乳)。パー・プロトコル解析対象集団
*P<0.05
§試験中にモニタリングされたC20:3種は、C20:3 n-6およびC20:3 n-3、一般名ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA;C20:3 n-6)およびエイコサトリエン酸(ETA;C20:3 n-3)であった。これらの2種類の脂肪酸を別々に十分に定量できなかったので、セル「C20:3 n-6」の中のこれらの結果は両種の合計である。これらの2つの間でC20:3 n-6(DGLA)が最も豊富である。
【0284】
FAのグループ:
表2.12〜2.14を検証することによって、脂肪吸収に対するrhBSSLの効果は2種類の飽和FAであるC16:0およびC18:0の場合は特に低く、全体的に見て、この効果は鎖の長さおよび不飽和の程度と共に増加するように見えることが分かる。従って、全ての飽和FAの合計および全ての不飽和FAの合計の脂肪吸収率の解析をそれぞれ行い、全ての多価不飽和FAの合計の解析ならびに全てのLCPUFA(DHAおよびAAだけでない)の合計の解析も行った。複合解析の結果および試験による結果を収集し、以下の表2.15〜2.18にまとめた。
【0285】
(表2.15)全ての飽和
*脂肪酸の合計の吸収率(%)、パー・プロトコル解析対象集団
*FA、鎖の長さに関係せず、二重結合を有さない
【0286】
(表2.16)全ての不飽和
*脂肪酸の合計の吸収率(%)、パー・プロトコル解析対象集団
*FA、鎖の長さに依存せず、少なくとも1つの二重結合を有する
【0287】
(表2.17)全ての多価不飽和
*脂肪酸の合計の吸収率(%)、パー・プロトコル解析対象集団
*FA、鎖の長さに関係せず、少なくとも2つの二重結合を有する
【0288】
(表2.18)全てのLCPUFA
*の合計の吸収率(%)、パー・プロトコル解析対象集団
*少なくとも20個の炭素原子および少なくとも2つの二重結合を有するFA
【0289】
表2.15〜2.18に示した解析は、p値が、複合解析における飽和FA のLS平均差2.25%(p=0.236)から、不飽和FAのグループ全体の4.22% (p=0.034)、さらには多価不飽和FAの5.82% (p=0.005)およびLCPUFAの7.33% (p=0.002) まで減少するので、脂肪吸収に対するrhBSSLの効果が不飽和の程度と共に同時に増加するという本発明のこれらの局面を裏付ける。
【0290】
8.5安全性解析:有害事象
8.5.1曝露の程度
治療曝露を治療時の日数としてまとめたものを以下の表2.19に示した。
【0291】
(表2.19)治療曝露の程度-安全性解析対象集団
[1]治療時の日数=治療期間の最後の日-治療期間の最初の日+1
【0292】
治療曝露の程度は治療間で同等であった。患者の98.4%は7日間のrhBSSL治療を受け、患者の96.8%は7日間のプラセボ治療を受けた。1人の患者が、第2の期間中の3日間のプラセボ治療後にBVT.BSSL-020から中断した。BVT.BSSL-021における3(3)人の患者が第1の治療期間中に中断した:2人の患者が、それぞれ、6日間および7日間のプラセボ治療後に中断し、1人の患者が3日間のrhBSSL治療後に中断した。
【0293】
rhBSSLへの曝露をまとめたものを以下の表2.20に示した。
【0294】
(表2.20)rhBSSLへの曝露の程度-安全性解析対象集団
[1]rhBSSLの総量(g)=0.15g/L
* (rhBSSL治療期間中に摂取された食物の総量(L)-rhBSSL治療期間中の吐瀉物の総量(L))。吐瀉物を1日目、2日目、3日目、10日目、11日目、および12日目に収集しなかった。
注:食物中のrhBSSL濃度はプロトコルに従って0.15g/Lである。
【0295】
複合解析結果において、摂取されたrhBSSLの平均(SD)量は0.27g(0.052g)であった。
【0296】
8.5.2有害事象の概要
TEAEの全発生率を以下の表2.21に示した。
【0297】
(表2.21)治療下で発現した有害事象の全体的な概要-安全性解析対象集団
関連するとは、確実に試験薬に関連する、試験薬に関連する可能性が高い、または試験薬に関連する可能性があることを含む。
【0298】
これらの2つの試験において、63人の患者のうち45人(71.4%)が、合計134件の治療下で発現した有害事象(TEAE)を経験した。治療間で、TEAE患者の割合において観察された注目に値する差はなかった。TEAE患者の割合は試験管で同等であった。BVT.BSSL-020において23人(69.7%)の患者がAEを経験し、BVT.BSSL-021において22人(73.3%)がAEを経験した。しかしながら、BVT.BSSL.021におけるTEAEの総数(81事象)は、BVT.BSSL.020(53事象)と比較して多かった(試験による表形式データは本報告には示していない)。
【0299】
2つの試験全体にわたって、2人(3.2%)の患者がプラセボ治療中に1つの重大なTEAEを報告した。4人(6.3%)の患者が、試験からの中断につながる1つのTEAEを報告し(rhBSSL治療中に1人の患者およびプラセボ治療中に3人の患者)、8人(12.7%)の患者が、治療に関連するとみなされた少なくとも1つのTEAEを報告し(rhBSSL治療中に5人の患者、プラセボ治療中に4人の患者。これらの患者のうち1人に、両期間中に関連するTEAEがあった)、1人の患者がプラセボ治療中に死亡した。
【0300】
8.5.3有害事象の表示
最も一般的に報告されたTEAE(患者の>=4%において報告された)をまとめたものを以下の表2.22に示した。報告された全てのTEAEをまとめたものを収集し、まとめた(本報告には示していない)。
【0301】
(表2.22)最も一般的に報告された治療下で発現した有害事象-安全性解析対象集団
注:この表は、患者の>=4%において報告されたAEを含む。患者が特定の優先使用語について2回以上カウントされた場合、その優先使用語について1回カウントされる。
【0302】
2つの試験の複合結果における最も一般的なTEAEは、21人(33.3%)の患者によって報告された、おむつかぶれであった。この事象の発生率は治療間で同等であった。最も一般的に報告された他のTEAEは、8人(12.7%)の患者における貧血、6人(9.5%)の患者における心雑音、それぞれ5人(7.9%)の患者によって報告された徐脈および低カリウム血症、ならびにそれぞれ3人(4.8%)の患者によって報告された新生児貧血、血小板血症、および尿路感染であった。プラセボのみで報告された血小板血症を除いて、最も一般的なTEAEが全て両治療において報告された。さらに、BVT.BSSL-020のみで報告された尿路感染およびBVS.BSSL-021のみで報告された低カリウム血症を除いて、最も一般的なTEAEが全て両試験において報告された。
【0303】
9結論
複合解析の結果は、以下の結論を裏付ける個々の試験の結果と一致する。
・rhBSSLは、プラセボと比較して、低温殺菌母乳または乳児用調合乳が与えられた早産児において発育を有意に改善する。
・プラセボと比較して、rhBSSL治療後、脂肪吸収の数値改善はあるが、有意な改善はない。
・プラセボと比較して、1週間のrhBSSL治療後、膝から踵までの長さの変化に関して差は観察されなかった。
・乳児用調合乳または低温殺菌母乳に添加されたrhBSSLの忍容性は高かった。
・プラセボと比較して、rhBSSL治療中に安全性プロファイルの明らかな差は観察されなかった。
・調合乳が与えられた患者は、低温殺菌母乳が与えられた患者より多くの脂肪を摂取し、体重が増加した。
・rhBSSLはDHAおよびAAの吸収を有意に改善する。
・rhBSSLは不飽和脂肪酸、特に、LCPUFAの吸収を有意に改善する。
・脂肪吸収に対するrhBSSLの効果は、脂肪酸の鎖の長さおよび不飽和の程度と共に増加する。
【0304】
証拠物件A
乳児用調合乳の提案された組成要件-ESPGHANにより推奨された標準(Koletzko et al 2005から改訂した):
*非加水分解牛乳タンパク質とタンパク質を基本とする調合乳のタンパク質含有率の決定は、1.8〜2.0g/100kcalの真のタンパク質含有率の測定に基づかなければならない([総N-NPN]x6.25)
†タンパク質含有率が2.25g/100kcal未満の加水分解乳タンパク質を基本とする調合乳を臨床試験しなければならない。
‡スクロース(サッカロース)およびフルクトースは乳児用調合乳に添加してはならない。
§1mg RE(レチノール当量)=1mgオールトランスレチノール=3.33IUビタミンA。レチノール含有率はプリフォームドレチノールとして示されるものとする。これに対して、カロテノイド含有率はビタミンA活性の計算および表示に含めない。
&1mg a-TE(a-トコフェロール当量)=1mg d-a-トコフェロール。
{ビタミンE含有率を少なくともPUFA 1g当たり0.5mg a-TEとする。調合乳中の脂肪酸二重結合数に最小ビタミンE含有率を合わせるために以下の当量係数を使用する:0.5mg a-TE/g リノール酸(18:2n-6);0.75mg a-TE/g a-リノレン酸(18:3n-3);1.0 mg a-TE/gアラキドン酸(20:4n-6);1.25mg a-TE/gエイコサペンタエン酸(20:5n-3);1.5mg a-TE/gドコサヘキサエン酸(22:6n-3)。
#ナイアシンはプリフォームドナイアシンを指す。
**乳児に鉄欠乏リスクがある集団では、最小レベル0.3mg/100kcalを超える鉄含有率が適切な場合があり、これは国の水準で推奨される。
NS、特定せず。
【0305】
証拠物件B
任意成分の提案されたレベル-ESPGHANにより推奨された標準(Koletzko et al 2005から改訂した):
*ドコサヘキサエン酸(22:6n-3)を乳児用調合乳に添加する場合は、アラキドン酸(20:4n-6)含有率がDHAと少なくとも同濃度に達していなければならない。エイコサペンタエン酸(20:5n-3)含有率はドコサヘキサエン酸含有率を超えてはならない。
【0306】
配列表
【0307】
開始コドンおよび停止コドン(の下)にそれぞれ「
***」および「
§§§」の印を付けた。リーダー配列に下線を引いた。