特許第5800987号(P5800987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800987
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】電子写真用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20151008BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20151008BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20151008BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20151008BHJP
   C08L 25/00 20060101ALI20151008BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   G03G9/08 365
   G03G9/08 331
   G03G9/08 325
   C08F210/02
   C08L23/08
   C08L25/00
   C08L67/00
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-507820(P2014-507820)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2013058275
(87)【国際公開番号】WO2013146584
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-74451(P2012-74451)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】川辺 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 正和
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋史
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 紀子
(72)【発明者】
【氏名】瀧 敬一
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−152739(JP,A)
【文献】 特開2007−112863(JP,A)
【文献】 特開2005−220282(JP,A)
【文献】 特開2001−034005(JP,A)
【文献】 特開2003−270843(JP,A)
【文献】 特開2010−100843(JP,A)
【文献】 特開昭62−252406(JP,A)
【文献】 特開2006−138978(JP,A)
【文献】 特開平09−043891(JP,A)
【文献】 特開2005−017784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンから導かれる構成単位(a)を80〜99.5モル%、および、分子中に二重結合を2個以上有する炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)を0.5〜20モル%〔(a)+(b)=100モル%とする。〕含み、下記要件(i)および(ii)を満たすエチレン共重合体を含むことを特徴とする電子写真用トナー。
(i)極限粘度〔η〕が0.01〜0.50dl/gの範囲にある。
(ii)結晶化度が50〜90%の範囲にある。
【請求項2】
前記エチレン共重合体が、さらに下記要件(iii)および(iv)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電子写真用トナー。
(iii)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が50〜100℃の範囲にある。
(iv)GPCで測定した分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にある。
【請求項3】
前記分子中に二重結合を2個以上有する炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)が、下記一般式(V)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電子写真用トナー。
【化1】
〔一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルケニル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は互いに結合して単環、多環または多重結合を形成していてもよい。ただし、uおよびvがともに0のときは、R67〜R70、R75〜R78のうち少なくとも1つが水素原子以外のアルケニル基あるいは多重結合である。〕
【請求項4】
前記分子中に二重結合を2個以上有する炭素数8以上の環状オレフィンがエチリデンノルボルネン(ENB)、またはビニルノルボルネン(VNB)であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の電子写真用トナーが、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂、またはスチレン系重合体を含んでなることを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項6】
バインダー樹脂を含み、バインダー樹脂100質量部に対して、前記エチレン共重合体が0.1〜40質量部の範囲で含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナーに関する。更に詳しくは、特定のエチレン系重合体を含む電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真用トナー、所謂静電トナー(以下、単に「トナー」と呼ぶ場合もある。)は、静電的電子写真において、帯電露光により形成された潜像を現像し可視画像を形成するために用いられる。トナーは樹脂中にカーボンブラック、顔料等の着色剤を分散させてなる帯電微粉末である。トナーは、鉄粉、ガラス粒子等のキャリアと共に用いられる乾式二成分系トナー、イソパラフィン等の有機溶剤を用いて分散系とした湿式トナー、さらには磁性微粉末が分散された乾式一成分系トナーなどに大別される。
【0003】
ところで、トナーにより感光体上に現像されて得られた画像は、紙に転写され、また、感光層を形成された紙に直接現像された画像は、そのまま熱や溶媒蒸気によって定着される。中でも、加熱ローラーによる定着は、接触型の定着法であるため、熱効率が高く、比較的低温の熱源によっても確実に画像を定着することができ、さらに高速複写に適しているなどの長所を有している。
【0004】
近年における複写機やプリンター等の普及に伴い、更なる画像品質向上への要求に加え、特に高速印刷および低エネルギー定着性に優れたトナーが望まれるようになり、トナーの低温定着性の改善が試みられ、トナーの低温定着を目的として、低融点のワックスが用いられている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08‐114942号公報
【特許文献2】特開2010−014949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トナー製造時あるいは印刷時の加熱環境下において、低融点ワックスを含有するトナーバインダー樹脂は、部分的にせよ昇華により拡散する可能性があるし、また、熱分解して、さらなる低分子量化が起こる可能性がある。
【0007】
したがって、低融点ワックスを含有するトナーは、トナー製造後の保存期間においてはトナー粒子のべたつき、ブロッキングなどの保存性の低下が懸念され、また、印刷時には複写機やプリンター機内の汚染、ダスト(汚染物質)の原因となったり、装置外に放散されることにより作業場の環境を悪化させたりする懸念がある。
【0008】
一方、低融点ワックスに代えて融点の高いワックスを用いることで、揮発物質を低減することは可能であるが、トナー性能としては低温定着性が低下する傾向になる。すなわち高速印刷適性や低エネルギー定着性を著しく損なってしまい、結果として、トナー性能と汚染性低減の両方の要求に応え得ることは困難である。
【0009】
本発明の課題は、保存性に優れ、また、印刷時の耐オフセット性や低温定着性に優れ、複写機やプリンター機内の経時汚染やダストの原因物質の少ない電子写真用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電子写真用トナー中に特定の構造を含み特定の要件を満たすエチレン系重合体を含むことで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]に関する。
[1]エチレンから導かれる構成単位(a)を80〜99.5モル%、および、炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)を0.5〜20モル%〔(a)+(b)=100モル%とする。〕含み、下記要件(i)および(ii)を満たすエチレン共重合体を含むことを特徴とする電子写真用トナー。
(i)極限粘度〔η〕が0.01〜0.50dl/gの範囲にある。
(ii)結晶化度が50〜90%の範囲にある。
[2]前記エチレン共重合体が、さらに下記要件(iii)および(iv)を満たすことを特徴とする、[1]に記載の電子写真用トナー。
(iii)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が50〜100℃の範囲にある。
(iv)GPCで測定した分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にある。
[3]前記炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)が二重結合を2個以上含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の電子写真用トナー。
[4]前記炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)が、下記一般式(V)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【0012】
【化1】
〔一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルケニル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は互いに結合して単環、多環または多重結合を形成していてもよい。ただし、uおよびvがともに0のときは、R67〜R70、R75〜R78のうち少なくとも1つが水素原子以外のアルケニル基あるいは多重結合である。〕
[5]前記炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)がエチリデンノルボルネン(ENB)、またはビニルノルボルネン(VNB)であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の電子写真用トナー。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の電子写真用トナーが、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂、またはスチレン系重合体を含んでなることを特徴とする電子写真用トナー。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保存性に優れ、また、印刷時の耐オフセット性や低温定着性に優れ、複写機やプリンター機内の経時汚染やダストの原因物質の少ない電子写真用トナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<エチレン共重合体>
本発明の電子写真用トナー(以下、単に「トナー」と呼ぶ場合もある。)を構成するエチレン共重合体は、エチレンから導かれる構成単位(a)を80〜99.5モル%、炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)を0.5〜20モル%〔(a)+(b)=100モル%とする。〕含み、(i)極限粘度〔η〕が0.01〜0.50dl/gの範囲、および、(ii)結晶化度が50〜90%の範囲にある共重合体である。
【0015】
本発明に係るエチレン共重合体は、好ましくはエチレンから導かれる構成単位(a)を85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%含み、かつ、好ましくは99モル%以下、さらに好ましくは98.5モル%以下、特に好ましくは98モル%以下であり、好ましくは、炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)を1モル%以上、さらに好ましくは1.5モル%以上、特に好ましくは2モル%以上含み、かつ、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である〔(a)+(b)=100モル%とする。〕。
なお、本明細書において、構成単位の量は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0016】
エチレンから導かれる構成単位(a)および炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)を上記の範囲の割合で含有するエチレン共重合体は、トナーの保存性、印刷時の耐オフセット性、低温定着性を向上させるとともに、トナーから発生する臭気や、経時汚染を低減することができる。
【0017】
一般的に、エチレン重合体は、熱などにより、通常、連鎖構造となっているエチレン構造単位や、必要に応じて用いられるα−オレフィン構造単位部分が切断して分子量の低下を招くと考えられている。また、比較的α-オレフィン構造単位に係る部位が切断され易いと言われている。また、α-オレフィン構造単位が導入されると、高分子鎖としての運動性も高まるので、その面でも切断を受ける可能性も高まるのではないかと推定される。
【0018】
それに対し、本発明に係るエチレン共重合体は、前記のように炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)からなる環状構造を上記の範囲の割合で含有しているので、重合体としての剛直性が増し、運動性は低下し、その結果、熱による分解を受け難くなっていると推測される。さらに、分子中に二重結合を2個以上有する環状オレフィンを用いた場合には、加熱下において一部が架橋する可能性があり、重合体としての剛直性がさらに増すことが期待される。また、特に一般式(V)の様な構造を有する環状オレフィンを用いると、主鎖を構成するC−C結合が切断されても他の環状構造部分により高分子鎖の切断には到らず、分子量低下を抑制できると考えられる。
これらのことから、後述する本発明のトナーは、低融点のエチレン重合体を含みながらも、トナー製造時や印刷時の加熱環境下において、分子量低下が少なく、ブロッキングや臭気等の原因となりうる低分子量の生成が少なくなるため、前述の優れた効果、すなわち、トナーの保存性、印刷時の耐オフセット性、低温定着性を向上させるとともに、トナーから発生する臭気や経時汚染を低減できると考えられる。
【0019】
本発明に係るエチレン共重合体は、(i)極限粘度〔η〕が0.01〜0.50dl/gの範囲にある。本発明に係るエチレン共重合体は、好ましくは、極限粘度〔η〕が0.02dl/g以上、より好ましくは0.03dl/g以上、特に好ましくは0.04dl/g以上であり、かつ、好ましくは0.20dl/g以下、より好ましくは0.15dl/g以下、特に好ましくは0.10dl/g以下である。
【0020】
極限粘度[η]が上記下限値以上のエチレン共重合体は、得られるトナーの耐オフセット性に優れ、上記上限値以下のエチレン共重合体は、得られるトナーの定着性が優れる。
【0021】
本発明に係るエチレン共重合体は、(ii)結晶化度が50〜90%の範囲にある。本発明に係るエチレン共重合体は、好ましくは、結晶化度が60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは75%以上であり、かつ、90%以下、好ましくは88%以下、より好ましくは87%以下、特に好ましくは86%以下である。
【0022】
結晶化度が上記下限値以上のエチレン共重合体は、得られるトナーの耐オフセット性に優れる。
【0023】
本発明に係るエチレン共重合体は、上記要件(i)、(ii)に加え、さらに下記要件
(iii)および(iv)を満たす共重合体であることが好ましい。
【0024】
(iii)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が50〜100℃の範囲にある。
【0025】
本発明に係るエチレン共重合体は、より好ましくは、融点(Tm)が60℃以上、さらに好ましくは65℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、かつ、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは88℃、特に好ましくは86℃以下であることが望ましい。
【0026】
融点が上記範囲内にあるエチレン共重合体を用いた場合は、より、耐熱性と離型性に優れるトナーを得ることができる。
【0027】
(iv)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にある。
【0028】
本発明に係るエチレン共重合体は、より好ましくはMw/Mnが3.0以下、さらに好ましくは2.0以下であることが望ましい。
【0029】
分子量分布が上記範囲にあるエチレン共重合体は、エチレン共重合体自身のベタツキがより低減されることが期待され、得られるトナーの保存性、現像耐久性を高める上でより好ましい場合がある。
【0030】
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、GPCにより測定される、ポリエチレン換算値である。ここで、GPCによる測定は、温度:140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼンの条件下で行う。
【0031】
本発明に係るエチレン共重合体は、エチレンから導かれる構成単位(a)および炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)の他に、さらに、炭素数8以上の環状オレフィンを除く炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位(c)を含んでいてもよい。
【0032】
本発明に係るエチレン共重合体が、上記構成単位(c)を含む場合は、0.01〜15モル%含む。下限は、さらに好ましくは0.05モル%、特に好ましくは0.1モル%、上限は、さらに好ましくは8モル%、特に好ましくは5モル%である〔(a)+(b)+(c)=100モル%とする。〕。
【0033】
構成単位(c)を上記の範囲の割合で含有するエチレン共重合体は、耐熱性と離型性のバランスに優れるトナーを得ることができる。
【0034】
なお、本発明に係るエチレン共重合体の上記構成単位(a)、上記構成単位(b)および上記構成単位(c)などは、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0035】
《炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)》
本発明に係るエチレン共重合体を構成する炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)は、炭素数8以上の環状オレフィンを共重合することにより導かれる。
【0036】
本発明に係る炭素数8以上の環状オレフィンとしては、分子中に二重結合を少なくとも1個有する環状オレフィンが好適に用いられる。
【0037】
分子中に二重結合を1個有する環状オレフィンとしては、具体的には、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは8〜15のものが挙げられる。
【0038】
素数8以上の環状オレフィンとしては、分子中に二重結合を2個以上有することがより好ましい。
【0039】
分子中に二重結合を少なくとも2個有する炭素数8以上の環状オレフィン(環状ポリエン)としては、後述する一般式(V)で表される繰り返し単位を導く環状オレフィンであることが好ましい。具体的には、後述する化学式で表される環状非共役ジエンや、ジシクロペンタジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは8〜10のものが挙げられる。
【0040】
以上のうち、エチリデンノルボルネン(ENB)、またはビニルノルボルネン(VNB)であることが環状オレフィンとしての耐熱性やトナーの保存性において優れるという点において、特に好ましい。その中でも、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの非共役ポリエンが好ましく、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが特に好ましい。
【0041】
また、本発明では環状オレフィンに芳香族ビニル化合物も含む。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、およびα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレンなどが挙げられる。
【0042】
上記環状オレフィンは、1種類であってもよく、2種類以上の組み合わせで用いることもできる。
【0043】
炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位(b)は、下記一般式(V)で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0044】
【化2】
〔一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルケニル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は互いに結合して単環、多環または多重結合を形成していてもよい。ただし、uおよびvがともに0のときは、R67〜R70、R75〜R78のうち少なくとも1つが水素原子以外のアルケニル基あるいは多重結合である。〕
上記一般式(V)で表される繰り返し単位の原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式で表される環状非共役ジエンを挙げることができる。

【0045】
【化3】
【0046】
【化4】
《炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位(c)》
本発明に係る炭素数8以上の環状オレフィンを除く炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位(c)は、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを共重合することにより導かれる。
【0047】
本発明に係る炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば直鎖状または分岐状のα−オレフィンなどが挙げられる。
【0048】
具体的には、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数3〜20、好ましくは炭素原子数3〜10の直鎖状のα−オレフィン;例えば3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、好ましくは炭素原子数3〜10のα−オレフィン、より好ましくは炭素原子数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくはプロピレンが挙げられる。
【0049】
上記直鎖又は分岐の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは、1種類であってもよく、2種類以上の組み合わせで用いることもできる。
【0050】
<エチレン共重合体の製造方法>
本発明に係るエチレン共重合体は、種々公知の製造方法、例えば、エチレンと炭素数8以上の環状オレフィン、必要に応じて炭素数8以上の環状オレフィンを除く炭素原子数3〜20のα−オレフィンをチーグラー/ナッタ触媒、メタロセン系触媒により重合して製造し得る。
【0051】
本発明に係るエチレン共重合体は、エチレンなどを直接重合して得られるものであってもよく、また高分子量のエチレン共重合体を熱分解して得られるものであってもよい。
【0052】
これら触媒の中でも、メタロセン系触媒が好ましい。メタロセン系触媒としては、たとえば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒が好適に用いられる(特開2005−171146号公報)。
【0053】
エチレン共重合体の極限粘度[η]は、重合時の重合温度を上げるか、水素濃度を上げると小さくなる傾向となり、上記範囲内に制御できる。
【0054】
炭素数8以上の環状オレフィンから誘導される単位の含有量は、重合時に炭素数8以上の環状オレフィンの配合量を調整するほか、触媒種や重合温度などにより制御できる。
【0055】
例えば、後述の重合例に記載のメタロセン触媒によりエチレン共重合体を製造する場合には、構成単位(b)の導入量を増やすことにより、1000炭素あたりの環状構造数を増やすことができる。また、重合温度は通常10〜200℃の範囲であるが、上述した好適範囲の環状オレフィンから誘導される単位の含有量を有するエチレン系重合体を製造する観点からは、重合温度は、好ましくは60〜180℃の範囲、より好ましくは75〜170℃の範囲である。
【0056】
エチレン共重合体の結晶化度は、エチレン共重合体のエチレンから導かれる構成単位(a)の含有量を制御することにより、上記範囲内に制御できる。
【0057】
エチレン共重合体の融点は以下のようにすれば上記範囲に制御できる。すなわち、構成単位(b)の含有量を多くすることで、融点を下げることができ、また、触媒種や重合温度などによって制御することもできる。
【0058】
エチレン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、触媒種や重合温度などにより上記範囲に制御できる。一般に、エチレン共重合体の重合にはチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒が用いられるが、好適範囲のMw/Mnにするためには、メタロセン触媒を用いるのが好ましい。
【0059】
本発明に係るエチレン共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、銅害防止剤、充填剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
【0060】
また、本発明に係るエチレン共重合体は、トナー用添加剤として用いる以外にも、塗料用添加剤や、艶出し剤、ポリオレフィンやエンジニアリングプラスチックに代表される各種熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂用の流動性向上剤、樹脂強度改良剤、樹脂相容化剤、樹脂潤滑剤、樹脂硬度・融点調整剤、樹脂成形用離型剤、ゴム用加工助剤、ゴム用酸化防止剤、紙質向上剤、印刷インキ用の耐磨耗剤やレベリング剤に代表される各種添加剤、熱転写インキ用添加剤、繊維加工助剤、ホットメルト接着剤用添加剤、電気絶縁剤、天然ワックスの配合剤、ポリオレフィンフィルムの防曇剤、顔料分散剤、顔料マスターバッチ用の分散剤、成形加工助剤、ペーパーコーティング、エマルション成分、フロアーポリッシュ用添加剤、繊維仕上剤、塩ビ用滑剤、アスファルト用添加剤、発泡ポリスチレン用造核剤、ロストワックス用添加剤、ろうそくの一成分、電気ケーブルコンパウンド用添加剤、空気酸化、酸変性、シリコーン変性、アミノ化、エステル化に代表される各種反応の中間原料等種々の用途に用いることができる。
【0061】
<電子写真用トナー>
本発明のトナーは、上記エチレン共重合体を含んでなる。
【0062】
本発明のトナーは、上記エチレン共重合体の他に、トナー用バインダー樹脂、及び、公知の着色剤を含み、さらに必要に応じて帯電制御剤、離型剤、顔料分散剤等を含む。
【0063】
《トナー用バインダー樹脂》
本発明に係るトナー用バインダー樹脂としては、種々公知のバインダー樹脂を使用し得る。具体的には、例えば、スチレン系重合体、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、および脂肪族・芳香族ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、テルペン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の樹脂があげられる。
【0064】
これらのトナー用バインダー樹脂は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。上記トナー用バインダー樹脂の中では、100℃前後の適度の軟化点を有し、良好な定着性を示す点で、ポリエステル樹脂、またはスチレン系重合体が好ましく、特にスチレン系重合体が好ましい。
【0065】
上記スチレン系重合体としては、例えばスチレン系単量体のみからなる単独重合体または共重合体、あるいはスチレン系単量体と他のビニル系単量体との共重合体などがあげられる。スチレン系単量体としては、スチレン、p−クロルスチレン、ビニルナフタレン等があげられる。
【0066】
上記他のビニル系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸やメタクリル酸等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等のニトリル類またはアミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジプピル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル、イタコン酸ジアミル等のイタコン酸エステル類;その他、マレイン酸エステル類およびフマール酸エステル類等を用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0067】
なお、これらのビニル単量体の中ではα−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類が好ましい。
【0068】
スチレン系重合体の合成方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法ならびに乳化重合法等の公知の重合方法により製造することができる。
【0069】
《エチレン共重合体の含有量》
本発明のトナー中には、トナー用バインダー樹脂100質量部に対して、前記エチレン共重合体が0.1〜40質量部の範囲で含まれることが一般的である。好ましいエチレン共重合体の下限値は0.5質量部、より好ましくは1.0質量部、更に好ましくは1.5質量部、特に好ましくは2.0質量部である。好ましい上限値は35質量部、より好ましくは20質量部、更に好ましくは10質量部、特に好ましくは6質量部である。
【0070】
エチレン共重合体が上記の下限値を下回るとトナーの耐オフセット性や保存安定性が不十分になることがある。一方、その上限値を越えると定着性や特に印字後の経時的な定着安定性が不十分となり、即ち紙面から文字部が剥がれ易くなり、情報保存の用をなさなくなることがある。
【0071】
《着色剤》
本発明のトナーに含まれる着色剤としては、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、マグネタイト等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエローG、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、モリブデンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレン、ブリリアントオレンジGK、ベンガラ、ブリリアントカーミン6B、フリザリンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ファストバイオレットB、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、酸化チタン、亜鉛華等の公知の有機顔料が挙げられる。着色剤の含有量は、通常トナー用バインダー樹脂100質量部に対して5〜250質量部である。
【0072】
《その他の成分》
本発明のトナーには、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲に於いて、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアミド、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族石油樹脂、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス〔本発明のエチレン系重合体を除く〕、セラミックワックス、ライスワックス、シュガーワックス、ウルシロウ、密鑞、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類、脂肪酸アミドワックス、塩ビ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、クロマン−インデン樹脂、メラミン樹脂等の従来公知の離型剤を一部添加使用してもよい。その量は通常トナー用バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部である。
【0073】
なお、上記ポリオレフィンワックス〔本発明のエチレン系重合体を除く〕を構成する単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、その他全てのオレフィンモノマーを挙げることができる。これらモノマーより得られるポリオレフィンワックスとしては、単一のモノマーより得られる、ホモポリマー型のものであってもよいし、2種以上のモノマーより得られる、コポリマー型のものであってもよい。また、上記ポリオレフィンワックスは未変性ポリオレフィンワックスまたはオレフィン成分に対して変性成分がブロック化またはグラフト化された変性ポリオレフィンワックスの何れであってもよい。変性ポリオレフィンワックスにおける変性成分としては、スチレン、メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン等の芳香族モノマーや、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のモノカルボン酸エステルモノマー、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸、ナジック酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水グルタコン酸、無水ナジック酸等の無水物等を挙げることができる。
【0074】
また、帯電制御剤としては、ニグロシン、4級アンモニウム塩や含金属アゾ染料をはじめとする公知の荷電調整剤を適宜選択して使用でき、使用量はトナー用バインダー樹脂100質量部に対し、通常用いられる0.1〜10質量部である。
【0075】
<電子写真用トナーの製造方法>
本発明のトナーは、前記各成分を、従来公知のいかなる方法、例えば、接触分散、溶融分散、溶液分散等を採用することにより製造することができる。
【0076】
例えば、トナー用バインダー樹脂、前記エチレン共重合体、着色剤、荷電調整剤および離型剤等をボールミル、ヘンシェルミキサーなどの混合機により予めプレミックスした後、熱ロールニーダー、1軸あるいは2軸混練機などの熱混練機を用い加熱溶融状態で混練し、冷却後ハンマーミルなどの微粉砕機を用いて微粉砕し、更に空気式分級器により分級し、通常は直径が8〜20μmの範囲の粒子を集めてトナーとする。
【0077】
分散剤中に樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液と、分散剤中に着色剤粒子を分散させた着色剤分散液と、分散剤中にエチレン共重合体粒子を分散させてなる離型剤粒子分散液等とを混合する混合工程と、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成する凝集工程と、該凝集粒子を加熱することによって融合する融合工程とを含む方法により製造することもできる。
【0078】
重合性単量体、着色剤、エチレン共重合体、荷電制御剤等からなる組成物を重合させる工程を含む方法により製造することもできる。
【0079】
上記熱混錬機で混練させる場合の加熱溶融条件は、トナー用バインダー樹脂の融点等の物性によって異なる。例えばスチレンアクリル系樹脂などの極性基含有ビニル重合体の場合、2軸混錬機吐出部の樹脂温度は190℃未満で、滞留時間180秒未満であることが好ましい。また、冷却方法はスチールベルトクーラー等を使用して急冷することが好ましい。
【0080】
上記の混練を行う方法としては、予め前記エチレン共重合体の含有率が高い条件で、前記エチレン共重合体をトナー用バインダー樹脂と混練したマスターバッチを作成しておき、これを更にトナー用バインダー樹脂や着色剤などの他の成分と混練する方法もある。トナー用バインダー樹脂と前記エチレン共重合体両成分が比較的混ざり難い組み合わせである場合にこの方法は効果的である。
【0081】
上記のマスターバッチを作成する際は、トナー用バインダー樹脂100質量部に対して前記エチレン系重合体を5〜900質量部、好ましくは、5〜300質量部、より好ましくは5〜100質量部、特に好ましくは5〜50質量部含有させる。
【0082】
<電子写真用トナーの特性>
本発明のトナーは、前記エチレン系重合体を含有することにより、保存性、耐オフセット性と印刷の定着性、耐ブロッキング性、現像耐久性および低温印刷性に優れる理由については、明らかではないが、発明者らは以下のように推定している。
【0083】
本発明に係る前記エチレン共重合体は極性基を持たないため吸湿し難く、表面張力が低い上にバインダー樹脂中に適度に分散することから、優れた耐ブロッキング性、現像耐久性、耐オフセット性の効果を与えると考えられる。
【0084】
また、分子量分布が狭い前記エチレン共重合体を用いた場合、前述のとおり、前記エチレン共重合体自身のベタツキがより低減されることが期待され、トナーの耐ブロッキング性、現像耐久性、耐オフセット性を高める上でより好ましい場合がある。
また、本発明に係るエチレン共系重合体は前述の通り熱安定性に優れているので、トナー製造時や印刷時の加熱環境下でも熱分解しにくい。従って得られるトナーは保存安定性に優れ、かつ、プリンター機内の汚染やダストを高レベルに防止できることが期待される。
【0085】
さらに、本発明に係るエチレン共重合体は、含まれる環状オレフィンが特定の構造にあることで、環状オレフィンの含有量が比較的少なくとも高い熱安定性が期待できることから、高い結晶性と高い熱安定性を両立し、得られるトナーにおいて各種特性のバランスが高度に優れるものと推察される。
【0086】
<電子写真用トナーの用途>
本発明のトナーの用途は特に限定されないが、キャリアと混合して二成分または一.五成分現像剤としても用いることができるし、トナー中に磁性粉を含有させた、キャリアを用いない磁性一成分現像剤、もしくはキャリアや磁性粉を使用しない一成分現像剤、あるいはマイクロトーニング現像剤としても用いることができる。本発明のトナーが二成分または一.五成分現像剤として用いられる場合、キャリアとしては、従来公知のキャリアがいずれも使用できる。
【0087】
使用することができるキャリアとしては、例えば鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のような磁性粉体やガラスビーズ等、あるいはこれらの表面を樹脂などで処理したものが挙げられる。
【0088】
キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、フッ素含有樹脂、シリコン含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂など、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【実施例】
【0089】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0090】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の測定方法により求めた。
【0091】
<エチレン共重合体の物性測定方法>
(1)構成単位の含有量の測定方法
エチレン共重合体の環状オレフィンからの構成単位の含有量は、13C−NMRによる不飽和部分の炭素のピーク面積と全炭素のピーク面積とを比較することにより得た。
【0092】
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。ピークのアサインと定量は、常法により決定した。
【0093】
(2)極限粘度[η]の測定方法
エチレン共重合体約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この、デカリン溶媒5mlを追加する希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(Eq-6)に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求めた。
【0094】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) -------- (Eq-6)
(3)結晶化度の測定方法
測定サンプルをホットプレス180℃×5minの後、コールドプレス水冷×5minすることにより、1mm厚のプレスシートを作製した。得られたプレスシートについて、回転試料台を有するX線回折装置(リガク製RINT2500)を用い、50kV−300mAの条件で、透過法にてX線プロファイルを測定した。得られたX線プロファイルより、結晶部分と非結晶部分とを分離して、結晶化度を求めた。
【0095】
(4)融点(Tm)の測定方法
エチレン共重合体の融点は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、DSC−20(セイコー電子工業社製)によって測定した。試料約10mgをアルミパンに封じ、−20℃から200℃まで10℃/分で昇温し、得られたカーブの吸熱ピークを融点として求めた。この昇温測定の前に、一旦、試料(共重合体)を200℃程度まで昇温し、5分間保持した後、20℃/分で−20℃まで降温する操作を行い、試料(共重合体)の熱履歴を統一した。
【0096】
(5)分子量分布(Mw/Mn)の測定方法
エチレン共重合体の数平均分子量Mn、および重量平均分子量Mwは、GPC測定から求めた。測定は以下の条件で行った。また、数平均分子量Mn、および重量平均分子量Mwは、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、下記の換算法に基づいて求めた。
【0097】
装置:ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤:o−ジクロロベンゼン
カラム:TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速:1.0 ml/分
試料:0.15mg/mL、o−ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
分子量換算:PE換算/汎用較正法
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark−Houwink粘度式の係数を用いた。
【0098】
ポリスチレン(PS)の係数 : KPS=1.38×10−4, aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数 : KPE=5.06×10−4, aPE=0.70。
【0099】
(6)5%減量温度の測定
トナーバインダー中のエチレン共重合体の耐熱性を把握するために5%減量温度を測定した。エチレン共重合体10mgを量り取り、熱重量測定装置(TG−DTA320、SII社製)により測定される、重量が5%減少したときの温度である。ここで、TGAによる測定は、空気雰囲気下:200mL/分、昇温速度:20℃/分、温度範囲:30℃〜700℃の条件下で行った。
【0100】
<トナーバインダーあるいはトナーの物性測定方法>
(1)酸価
本実施例における酸価は、以下の通り算出した。キシレン:n―ブタノール=1:1質量比の混合溶媒に精秤した試料を溶解した。予め標定されたN/10水酸化カリウムのアルコール(特級水酸化カリウム7gにイオン交換水5gを添加し、1級エチルアルコールで1L(リットル)とし、N/10塩酸と1%フェノールフタレイン溶液にて力価=Fを標定したもので滴定し、その中和量から次式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(N/10 KOH滴定量(ml)×F×5.61)/(試料(g)×0.01)
(2)ピーク分子量
本実施例におけるピーク分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めたもので、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。また、本実施例におけるピークとは、ショルダーピークも含む。測定条件は下記の通りである。サンプル溶液は、測定直前にフィルターによってTHFに不溶な成分を除去した。
【0101】
GPC装置; SHODEX GPC SYSTEM-21 (Showa Denko K.K.)
DETECTOR; SHODEX RI SE-31 (Showa Denko K.K.)
COLUMN; SHODEX GPC KF-807Lを3本とGPC KF-800Dを1本(Showa Denko K.K.)
溶 媒; THF
流 速; 1.2ml/min.
サンプル濃度;0.002g-resin/ml-THF
注入量;100μL
トナーの分子量を測定する際には、トナー10質量%をTHF90質量%に十分溶解させた後、シムゴンタルク50質量部、チタン(CR−95)50質量部を添加し、遠心分離を行い、得られた上澄み液を所定の濃度に調整し測定した。
【0102】
<トナーの評価方法>
(1)低温定着性
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した。その後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ローラー定着装置を用いて、熱ローラーの定着速度を190mm/秒とし、130℃の温度で定着させた。得られた定着画像を砂消しゴム(株式会社トンボ鉛筆製)により、1.0kgfの荷重をかけ、6回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。摩擦後の画像濃度÷摩擦前の画像濃度×100をその温度での変化率とした。130℃での変化率の平均値を定着率として算出した。なお、ここに用いた熱ローラー定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものであった。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃、相対湿度55%)とした。
(評価基準)
◎ ; 42% ≦ 定着率
○ ; 39% ≦ 定着率 < 42%
△ ; 35% ≦ 定着率 < 39%
× ; 定着率 < 35%
(2)低温オフセット性
上記最低定着温度の測定に準じて行った。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した後、トナー像を転写して上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行った。その後、非画像部分にトナー汚れが生ずるか否かを観察した。前記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を150℃より順次降下させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた設定温度をもってオフセット発生温度とし、低温側のオフセット発生温度を低温オフセット性とした。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
◎ ; オフセット発生温度 < 130℃
○ ; 130℃ ≦ オフセット発生温度 < 135℃
△ ; 135℃ ≦ オフセット発生温度 < 140℃
× ; 140℃ ≦ オフセット発生温度
(3)高温オフセット性
上記最低定着温度の測定に準じて行った。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した後、トナー像を転写して上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行った。その後、非画像部分にトナー汚れが生ずるか否かを観察した。前記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を190℃より順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた設定温度をもってオフセット発生温度とした。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
◎ ; 220℃ ≦ オフセット発生温度
○ ; 210℃ ≦ オフセット発生温度 < 220℃
△ ; 200℃ ≦ オフセット発生温度 < 210℃
× ; オフセット発生温度 < 200℃
(4)保存性
温度50℃、相対湿度60%の環境条件下に24時間放置したトナー5gを150メッシュのふるいにのせ、パウダーテスター(細川粉体工学研究所)の加減抵抗機の目盛りを3にして、1分間振動を加えた。振動後の150メッシュのふるいの上に残った質量を測定し、残存質量比を求めた。
(評価基準)
◎ ; 残存質量比 < 45%
○ ; 45% ≦ 残存質量比 < 65%
△ ; 65% ≦ 残存質量比 < 75%
× ; 75% ≦ 残存質量比
(5)臭気
トナーから発生する臭気を以下基準に従って評価した。
トナー1gを18mlの試験管に採取し、150℃に昇温したアルミブロックヒーターDRY THRMOUNIT T−543(大洋科学工業)に30分間静置した。ニオイセンサーXP−329(新コスモス電機)のセンサー部を試験管口に近付け、1分間後の安定した数値を測定値とした。なお、臭気センサー指示値は、ニオイセンサーによる大気中の値(基準値)と上述測定値の差(増加分)である。
【0103】
◎: 臭気センサー指示値 < 145
○: 145 ≦ 臭気センサー指示値 < 155
△: 155 ≦ 臭気センサー指示値 < 170
×: 170 ≦ 臭気センサー指示値
<トナーバインダーの製造例>
[低分子量ビニル樹脂(L−1)の製造例]
[製造例L−1]
混合キシレン100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、スチレン93質量部、アクリル酸n−ブチル6質量部、メタクリル酸1質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温 98℃に保ち、更にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、更にt− ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、ピーク分子量4600、酸価6.5mgKOH/gを有する低分子量ビニル樹脂L−1の重合液を得た。
【0104】
[高分子量ビニル樹脂(H−1)の製造例]
[製造例H−1]
スチレン74質量部、アクリル酸n−ブチル23.5質量部、メタクリル酸2.5質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を8時間行った。ついで、混合キシレン50質量部を加え、テトラエチレングリコールジアクリレート0.2質量部を加えた後、110℃に昇温した。予め混合溶解しておいた1、1−ビス(t- ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの0.35質量部、混合キシレン60質量部を110℃に保ちながら9時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続し、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.21質量部を加え2時間反応を継続し、更に1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを0.52質量部を加え2時間反応を継続して重合を完結し、ピーク分子量300000、酸価16.3mgKOH/gを有する高分子量ビニル樹脂H−1の重合液を得た。
【0105】
[バインダー樹脂(C−1)の製造例]
[製造例C−1]
高分子量ビニル樹脂(H−1)50質量部と低分子量ビニル樹脂(L−1)50質量部となるように各重合液を混合した後、これを190℃、1.33kPaのベッセル(容器)中にフラッシュして溶剤等を留去して、第一ピークの分子量4600、第二ピークの分子量300000、酸価11.4mgKOH/gを有するバインダー樹脂C−1を得た。
【0106】
<エチレン共重合体の重合例>
[合成例1]
0.95Lの撹拌機付連続式重合器を用いて重合を行った。なお、このオートクレーブは満液式である。単位時間当たり、ヘキサン:1060g、水素:8NL、エチレン:100NL、5−エチリデン−2−ノルボルネンを15.4g、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル:0.0004g、N,N‐ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロジフェニル)ボレート:0.0026g、トリイソブチルアルミニウム:0.0185gを連続的に供給し、温度は150℃、圧力は3.6MPa、撹拌回転数は800rpmに保持した。重合溶液を連続的に1時間排出した。得られた重合溶液にメタノールを加えることにより重合を停止した。ポリマー溶液を取り出し、ポリマー溶液を窒素流通下で乾燥させ、重合体70gを得た。
【0107】
ついで、薄膜蒸留装置(神鋼環境ソリューション社製、2−03型、伝熱面積0.03m2)を用い、温度190℃、圧力0.08Torr、上述重合体の供給速度2.9g/minの条件で、低分子量成分を除去した56gの留分〔エチレン共重合体(E−1)〕を得た。物性測定結果を表1に示す。
【0108】
[合成例2]
合成例1において、薄膜蒸留の温度を240℃、重合体の供給速度を2.7g/minとした以外は、合成例1と同様の方法で、低分子量成分を除去した48gの留分〔エチレン共重合体(E−2)〕を得た。物性測定結果を表1に示す。
【0109】
[合成例3]
合成例1と同様の方法で重合を行い、窒素流通下での乾燥と薄膜蒸留は行わずに、得られたポリマー溶液をアセトンに入れ撹拌し、混合溶液を真空ろ過して得られた固体部(重合体)を乾燥させ、エチレン共重合体(E−3)65gを得た。物性測定結果を表1に示す。
【0110】
[合成例4]
合成例1の重合において、単位時間当たりのヘキサンを1010g、水素を6NL、5−エチリデン−2−ノルボルネンを81.4gに変更した以外は合成例1と同様に重合、停止反応を行った。重合体115gを得た。
【0111】
ついで、薄膜蒸留装置(神鋼環境ソリューション社製、2−03型、伝熱面積0.03m2)を用い、温度:300℃、圧力:0.10Torr、上述重合体の供給速度:2.8g/minの条件で、低分子量成分を除去した83gの留分〔エチレン共重合体(E−4)〕を得た。物性測定結果を表1に示す。
【0112】
[合成例5]
充分に窒素置換した内容積1.0Lのガラス製フラスコに、トルエン:0.6Lと2−ノルボルネン:10.0gを装入し、攪拌速度800rpmで攪拌しながら、系内を85℃まで昇温した。その後、エチレンを120L/h、水素を24L/hで流通させた。続いて、トリイソブチルアルミニウムを0.6ミリモル添加し、さらにビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルを0.025ミリモル、N,N‐ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロジフェニル)ボレートを0.05ミリモル添加して重合を開始した。エチレンを連続的に供給しながら、常圧下85℃、攪拌速度800rpmで攪拌しながら30分間重合を行った。少量のイソブチルアルコールを系内に添加し重合を停止させた後、得られた重合溶液を大量のアセトン中に注ぐことによりポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過により回収し、80℃減圧下で一晩乾燥させた。その結果、6.0gのエチレン共重合体(E−5)を得た。物性測定結果を表1に示す。
【0113】
<トナーの製造例>
[実施例1]
100質量部のバインダー樹脂C−1に対し、カーボンブラック(MA100;三菱化成製)6質量部、合成例1で得られたエチレン共重合体2.5質量部、荷電調整剤(T−77;保土ヶ谷化学工業社製)0.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、2軸混練機(PCM−30型、池貝機械製)にて 2軸混錬機吐出部樹脂温度120℃、滞留時間30秒で混練させた。ついで冷却・粉砕・分級してトナーを得た。得られたトナーの評価結果を表1に示す。
【0114】
[実施例2〜4]
実施例1で用いたエチレン共重合体に替えて、合成例2〜4で得られたエチレン共重合体を用いる以外は、実施例1と同様に行いトナーを得た。得られたトナーの評価結果を表1に示す。
【0115】
[比較例1]
実施例1で用いたエチレン共重合体に替えて、炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位を有さない、商品名:ハイワックス110P(三井化学社製、エチレン:93.6モル%、プロピレン:6.4モル%)を用いる以外は、実施例1と同様に行いトナーを得た。得られたトナーの評価結果を表1に示す。
【0116】
[比較例2]
実施例1で用いたエチレン共重合体に替えて、炭素数8以上の環状オレフィンから導かれる構成単位を有さない、商品名:ハイワックスNP105(三井化学社製、プロピレン:97.3モル%、エチレン:2.7モル%)を用いる以外は、実施例1と同様に行いトナーを得た。得られたトナーの評価結果を表1に示す。
【0117】
[比較例3]
実施例1で用いたエチレン共重合体に替えて、合成例5で得られたエチレン共重合体を用いる以外は、実施例1と同様に行いトナーを得た。得られたトナーの評価結果を表1に示す。
【0118】
【表1】