特許第5801013号(P5801013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5801013
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】入力装置、入力方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20151008BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   G06F3/041 534
   G06F3/044 120
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-516311(P2015-516311)
(86)(22)【出願日】2014年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2014062029
【審査請求日】2015年3月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 大志
【審査官】 ▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−210934(JP,A)
【文献】 特開2013−257904(JP,A)
【文献】 特開2005−011233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルの複数の測定位置のそれぞれにおける接触強度の推移を示す接触強度推移信号を取得する接触強度データ取得手段と、
前記複数の測定位置のうち少なくとも1つにおける接触強度推移信号に対して、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用する周波数フィルタ手段と、
前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号を用いた計算により、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置の座標を生成する指示位置データ生成手段と、
を含む入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置において、
前記指示位置データ生成手段は、前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号に所定の演算式を適用することにより、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置の座標を生成する、入力装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の入力装置において、
前記指示位置データ生成手段は、前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号を用いた計算により、ユーザがタッチパネルに接触させかつ動いている指またはスタイラスの指示位置の座標を生成する、入力装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、
前記周波数フィルタは所定周波数以下の成分を抑圧する、入力装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかにおいて、
前記周波数フィルタは、前記各測定位置について、現在の前記接触強度と、現在より所定時間前の前記接触強度とに基づいて、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧し、前記所定時間は前記指またはスタイラスの前記各測定位置に対する接触時間よりも長い、入力装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかにおいて、
前記指示位置データ生成手段は、前記タッチパネルにはじめの接触があってから所定の除外期間は、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置の座標を出力しない、入力装置。
【請求項7】
タッチパネルの複数の測定位置のそれぞれにおける接触強度の推移を示す接触強度推移信号を取得し、
前記複数の測定位置のうち少なくとも1つにおける接触強度推移信号に対して、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用し、
前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号を用いた計算により、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置の座標を生成する、
ことを特徴とする入力方法。
【請求項8】
タッチパネルの複数の測定位置のそれぞれにおける接触強度の推移を示す接触強度推移信号を取得し、
前記複数の測定位置のうち少なくとも1つにおける接触強度推移信号に対して、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用し、
前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号を用いた計算により、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置の座標を生成する、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置、入力方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年はタブレット端末のように大きなタッチパネルを有する機器が普及しつつある。
【0003】
特許文献1には、静電容量式のタッチパネルにおいて、ある検出点における検出最大値と、その前後の検出点における検出値とを用いて手のひらが触れたか否かを検出し、手のひらが触れた場合に座標データを生成しないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−82765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タブレット端末のように大きな感知領域を有するタッチパネルを用いて文字や図形を入力することが増えつつある。指やスタイラスなどを用いて感知領域に文字や図形を入力しようとすると、手の小指側の端や手首などがタッチパネルの感知領域に接触する場合がある。これらがタッチパネルの感知領域に接触すると、ユーザが指し示す指やスタイラスの位置を検出できない。
【0006】
また、手の小指側の端や手首などの接触と指やスタイラスの接触とを接触面積により区別することは考えられるが、感知領域の端に手首の一部だけが接触するような場合にそれらを区別できない現象が発生する恐れがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、手の小指側の端や手首などがタッチパネルの感知領域に接触するような場合であっても、指やスタイラスなどによりユーザが指し示す位置をより確実に検出できる入力装置、入力方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる入力装置は、タッチパネルの複数の測定位置のそれぞれにおける接触強度の推移を示す接触強度推移信号を取得する接触強度データ取得手段と、前記複数の測定位置のうち少なくとも1つにおける接触強度推移信号に対して、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用する周波数フィルタ手段と、前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号に基づいて、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置のデータを生成する指示位置データ生成手段と、を含む。
【0009】
また、本発明にかかる入力方法では、タッチパネルの複数の測定位置のそれぞれにおける接触強度の推移を示す接触強度推移信号を取得し、前記複数の測定位置のうち少なくとも1つにおける接触強度推移信号に対して、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用し、前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号に基づいて、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置のデータを生成する。
【0010】
また、本発明にかかるプログラムは、タッチパネルの複数の測定位置のそれぞれにおける接触強度の推移を示す接触強度推移信号を取得し、前記複数の測定位置のうち少なくとも1つにおける接触強度推移信号に対して、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用し、前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号に基づいて、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置のデータを生成する、処理をコンピュータに実行させる。
【0011】
本発明によれば、手の小指側の端や手首などがタッチパネルに接触するような場合であっても、指やスタイラスなどによりユーザが指し示す位置を確実に検出することができる。
【0012】
本発明の一態様では、前記周波数フィルタは所定周波数以下の成分を抑圧してよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記周波数フィルタは、前記各測定位置について、現在の前記接触強度と、現在より所定時間前の前記接触強度とに基づいて、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧し、前記所定時間は前記指またはスタイラスの前記各測定位置に対する接触時間よりも長くてもよい。
【0014】
本発明の一態様では、前記指示位置データ生成手段は、前記タッチパネルにはじめの接触があってから所定の除外期間は、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置のデータを出力しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかるタッチパネル入力装置の構成の一例を示す図である。
図2】タッチパネルの感知領域と、感知領域内の複数の測定位置と、感知領域に接触する指および手の側面の位置との一例を示す図である。
図3】測定位置のうち3つについてのデータ信号における接触強度の値の時間推移の一例を示す図である。
図4】フィルタ部に含まれるハイパスフィルタの一例を示す図である。
図5】測定位置のうち3つについてフィルタされたデータ信号における接触強度の値の時間推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。出現する構成要素のうち同一機能を有するものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかるタッチパネル入力装置の構成の一例を示す図である。タッチパネル入力装置は、静電容量方式のタッチパネルであるタッチパネル部1と、ホスト部2とを含む。タッチパネル部1は、縦方向に並ぶ走査電極10と、横方向に並ぶ検出電極12と、走査電極10と検出電極12とが交差する箇所にある各測定部Cの接触強度を示す信号を検出する接触強度検出部21と、フィルタ部22と、座標算出部23とを含む。タッチパネル部1は静電容量方式のタッチパネルである。ホスト部2は、プロセッサ31と、記憶部32と、通信部33と、表示部34とを含む。タッチパネル入力装置は、具体的には、タブレット端末や、電子書籍リーダなどである。
【0018】
複数の走査電極10は、それぞれ図1の左右方向に延びており、その端は配線によって接触強度検出部21に接続されている。複数の検出電極12は、それぞれ図1の上下方向に延びており、その端は配線によって接触強度検出部21に接続されている。複数の測定部Cは、走査電極10と検出電極12とが交差する位置に存在する。ここで、接触強度は近接や接触の度合いのことである。複数の測定部Cはm行n列のマトリクスとなっている。図4ではi番目の行、j番目の列の測定部CをCijと記載している。測定部Cはタッチパネルの感知領域14内に存在する。以下では、測定部Cijのそれぞれの位置を、測定位置Pijと記載する。
【0019】
接触強度検出部21は、複数の走査電極10に順にパルス信号を供給することをフレーム期間ごとに繰り返す走査回路、パルスが供給される際の相互キャパシタンス変化に応じた接触強度の信号を取得し、その接触強度の信号をデータ信号にAD変換する信号取得回路を有する。走査回路が1つの走査電極10にパルスを印加すると、信号取得回路がその走査電極10と複数の検出電極12とが交差する位置にある複数の測定部Cについて接触強度を示すデータ信号を出力する。走査回路が全ての走査電極10を1回ずつ走査すると、信号取得回路は全ての測定部Cについてそのフレーム期間における接触強度を示すデータ信号を出力する。ここで、1フレーム期間は接触強度のサンプリング周期に相当する。また、接触強度検出部21は複数のフレーム期間について走査やデータ信号の取得をすることにより、複数の測定部Cに対応する測定位置Pにおける接触強度の時間推移を示すデータ信号を出力する。複数のフレーム期間について出力されるデータ信号は、複数の測定位置Pのそれぞれにおける接触強度の推移を示している。
【0020】
図2は、タッチパネルの感知領域14と、感知領域14内の複数の測定位置Pと、感知領域14に接触する指および手の側面の位置との一例を示す図である。タッチパネルの感知領域14には、マトリクス状に測定位置Pが並んでいる。図2に示す位置Aはある時間t1におけるスタイラスに接触する位置であり、位置Bは時間t1から一定期間経過した時間t2における、スタイラスに接触する位置である。図2に示す接触領域Hはタッチパネルの感知領域14に接触する手の小指側の端の領域である。
【0021】
図3は、図2の複数の測定位置Pのうち3つの測定位置P42、P43、P66における接触強度の値の時間推移の一例を示す図である。図3に示す3つのグラフの横軸は時間であり、縦軸は接触強度である。図3は、サンプリング周期が20分の1秒である場合のグラフである。静電容量式タッチパネルでは、指やスタイラスが測定位置Pで接触していなくても、ある程度近接していれば接触強度が測定される。そのため、スタイラスが位置Aにあっても、測定位置P42でスタイラスに影響された接触強度の値が検出される。またスタイラスが位置Bに動くにつれて、測定位置P42で検出される接触強度の値が極大をとり、再び接触強度の値が小さくなるように変化する。
【0022】
また、測定位置P43については、時間t1では接触強度の値はほとんどスタイラスに影響されていないが、時間t2になると極大値をとっている。ここで、測定位置P66については、手の小指側の端が接触する時間t0から接触強度が増加しているが、時間t1からt2では測定位置P66における接触強度の値は高止まりとなる。スタイラスが動いている間のほとんどでは手の小指側の端がほぼ同じ位置で接触するからである。それは、タッチパネルを操作するユーザが、通常、スタイラスや指を動かす場合、手の小指側の端や手首を極力動かさないことに起因する。ここでは接触領域Hに接触しているものが手の小指側の端としているが、手首や手のひらの手首側の部分が接触していても図3と同様となる。また位置AやBに接触するものはスタイラスでなく、指である場合でも図3に示すのと同様の接触強度の時間推移となる。
【0023】
フィルタ部22は、各測定位置Pにおける接触強度の時間推移を示すデータ信号に対して、指またはスタイラス以外のユーザの身体の接触により生じるデータ信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用する。周波数フィルタは、入力信号のうち指またはスタイラス以外の接触に主に相当する周波数より低いある周波数以下の成分を抑圧し、抑圧された信号を出力するフィルタであり、例えばハイパスフィルタである。
【0024】
フィルタ部22は測定部Cの数と同じ数のハイパスフィルタを有し、ハイパスフィルタと測定部Cとは1対1に対応している。各ハイパスフィルタには対応する測定部Cについて測定された接触強度の時間推移を示すデータ信号が入力される。ハイパスフィルタは、そのフィルタが適用された接触強度の時間推移を示すデータ信号(以下では「フィルタされたデータ信号」と記述する)を出力する。
【0025】
図4は、フィルタ部22に含まれるハイパスフィルタの一例を示す図である。本実施形態ではハイパスフィルタはデジタルフィルタであり、図4に示すデジタルフィルタはFIRフィルタと呼ばれる。ハイパスフィルタの信号入力INには、データ信号のうち、フレーム期間ごとにそのフレーム期間について対応する測定部Cについて測定された接触強度の値が入力される。また、ハイパスフィルタは、フレーム期間が経過するごとに、信号出力OUTにハイパスフィルタが適用されたデータ信号のうちそのフレーム期間における接触強度の値を出力する。ハイパスフィルタは、基準となる周波数より高い周波数から低い周波数にかけて、徐々に成分を抑圧する程度が大きくなるものであってもよいし、基準となる周波数以下の成分を全て、ノイズ信号より小さく(例えば0に)するように抑圧してもよい。
【0026】
ハイパスフィルタは複数段のタップ45を含み、各タップ45は1つの遅延ブロック41と1つの乗算器42と1つの加算器43とを含む。遅延ブロック41は1フレーム期間の間、接触強度の値を保持(記憶)するメモリ(記憶部)であり、遅延ブロック41はフレーム期間が経過すると次段のタップ45に含まれる遅延ブロック41や乗算器42にその値を出力する。タップ45に属する乗算器42は、遅延ブロック41から入力される値に予め設定された定数値を掛けて加算器43に向けて出力する。ここで、ハイパスフィルタはタップ45に属さない乗算器42を1つ含む。その乗算器42は、信号入力INに入力された値に定数値を掛けて、掛けられた値を第1段のタップ45に含まれる加算器43に向けて出力する。第1段を除くタップ45に含まれる加算器43は、前段のタップ45に属する加算器43の出力値と、乗算器42からの値とを加算し、加算された値を次の段のタップ45に含まれる加算器43に出力する。第1段のタップ45に含まれる加算器43は、前段のタップ45に含まれる乗算器42の代わりにタップ45に属さない乗算器42の出力と同じ段の乗算器42の出力とを加算し、加算された値を第2段のタップ45に向けて出力する。
【0027】
ハイパスフィルタに含まれるタップ45の数や乗算器42が乗算する定数については、予め定められた閾値の周波数より低い周波数成分が抑圧されるように設定されている。ハイパスフィルタは、少なくとも、現在の接触強度(の値)と現在より一定時間前の接触強度(の値)とを用いて手の小指側の端や手首などとの接触により生じる接触強度の周波数成分を抑圧する。この一定時間は、指やスタイラスの接触により測定位置Pのそれぞれについてノイズで無い接触強度の値が検出される時間(接触時間)より長い必要がある。さらにいえば、例えば、タブレット端末などに用いられるタッチパネルでは、指やスタイラスがある電極に近づいてから離れるまでの時間が0.2〜0.3秒程度であると考えられるので、その倍の周期(例えば0.5〜0.6秒)に相当する接触強度の値を少なくとも遅延ブロック41のメモリに記憶するようにタップ45の数を決定する。図4に示すハイパスフィルタでは、その周期におけるフレーム期間の数(サンプリング回数)である10の倍程度の段数があることが望ましい。なお、図3に示すものと異なるデジタルのハイパスフィルタでも、指やスタイラスがある電極に近づいてから離れるまでの時間の倍に相当する周期より長い期間においてサンプリングされた接触強度の値を記憶する記憶部を設ける必要がある。
【0028】
図5は、図2の複数の測定位置Pのうち3つの測定位置P42、P43、P66におけるフィルタされたデータ信号における接触強度の値の時間推移の一例を示す図である。ハイパスフィルタによりスタイラスや指などで文字や図形を描くことによる測定位置P42,P43のフィルタされたデータ信号はフィルタされる前のデータ信号に対してほとんど抑圧されていない。一方、手の小指側の端が接触する測定位置P66のフィルタされたデータ信号は特に時間t1以降において抑圧される。フィルタされたデータ信号は手の小指側の端や手首などが接触していない場合のフィルタ前のデータ信号に似ている。これにより、フィルタ部22は手の小指側の端は手首などの接触による影響を抑えることができる。ただし、測定位置P66の時間t0で手の小指側の端の接触が始まってから一定の期間は、フィルタ部22で接触強度の値をフィルタできず、接触を示す接触強度の値が出力されてしまう。この現象に対応する方法については後述する。
【0029】
座標算出部23は、フィルタされたデータ信号に基づいて、タッチパネル部1の感知領域14に対するユーザの指示位置のデータを生成する。例えば、座標算出部23は、例えばあるフレーム期間についてフィルタ部22が出力した各測定位置Pにおける接触強度のフィルタされた値の重心の位置を、そのフレーム期間についてのユーザの指示位置として求める。そして座標算出部23はその指示位置をホスト部2に含まれるプロセッサ31等に向けて出力する。重心の位置をユーザの指示位置とする手法はタッチパネルの座標計算手法として一般的なものであり、座標算出部23はデータ信号から指示位置を算出する他の座標計算手法によってフィルタされたデータ信号から指示位置を求めてもよい。
【0030】
ここで、座標算出部23は、タッチパネル部1の感知領域に対してユーザのはじめての接触があってから所定の除外期間において、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置のデータを出力しなくてもよい。具体的には、前のフレーム期間でユーザが感知領域のどこにも接触していないことを示す信号(この信号はフィルタされたデータ信号であってもよい)が出力され、現在のフレーム期間で測定位置Pのいずれかについて接触があることを示す信号(フィルタされたデータ信号であってよい)が出力された場合に、そのタイミングから除外期間の間、座標算出部23はホスト部2に向けてユーザの指示位置を示すデータを出力しない。これにより、図5のフィルタ部22が手の小指側の端や手首等が感知領域に接触した際にフィルタ部22によるフィルタが十分に働かなかったために、ユーザが指し示していない位置の座標がホスト部2の処理で用いられることを防ぐことができる。この除外期間は、フィルタ部22の特性に応じて定めればよい。例えば、この除外期間は、手の小指側の端や手首等が感知領域に接触してすぐのタイミングでフィルタ部22が接触があったことを示す接触強度の値を出力する期間以上に設定すればよい。例えば、フィルタ部22が0.5秒の周期の周波数成分を抑圧するのであれば、除外期間は0.5秒またはそれ以上にすればよい。
【0031】
なお、周波数フィルタはハイパスフィルタでなくてもよい。各測定位置Pにおける接触強度を示す接触強度推移信号のうち、ある周波数以下の成分を抑圧するような周波数特性を有するフィルタであればよい。この抑圧される周波数の成分は、スタイラスや指を用いて字や図形を書く際に測定部Cについてほとんど含まれず、手の小指側の端や手首が感知領域14に接触する場合に主に含まれる周波数の成分である。
【0032】
ホスト部2に含まれるプロセッサ31、記憶部32、通信部33、表示部34は、記憶部32に格納されたプログラムを実行することで、タッチパネル部1から入力されるユーザの指示位置に応じて表示部34の表示出力デバイス等に画像を出力する機能を実現する。以下ではホスト部2について簡単に説明する。
【0033】
プロセッサ31は記憶部32に格納されたプログラムを実行し、通信部33、表示部34を制御する。上記プログラムは、インターネット等を介して提供されるものであってもよいし、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。
【0034】
記憶部32は、RAMやフラッシュメモリ等のメモリ素子やハードディスクドライブ等によって構成されている。記憶部32は、上記プログラムを格納する。また、記憶部32は、各部から入力される情報や演算結果を格納する。
【0035】
通信部33は、他の装置と通信する機能を実現するものであり、例えば無線LANの集積回路やアンテナなどにより構成されている。通信部33は、プロセッサ31の制御に基づいて、他の装置から受信した情報をプロセッサ31や記憶部32に入力し、他の装置に情報を送信する。
【0036】
表示部34は、表示出力デバイスやその表示出力デバイスをコントロールするビデオコントローラなどにより構成される。表示部34は、プロセッサ31の制御に基づいて、表示出力デバイスに表示データを出力する。なお、表示出力デバイスはタッチパネル入力装置の外に接続されるものであってもよい。
【0037】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、他の方法によって実現されてもよい。例えば、これまでの説明ではフィルタ部22や座標算出部23が集積回路などのハードウェアにより実現されるものとして記載しているが、フィルタ部22や座標算出部23の機能は、プロセッサ31が記憶部32に格納されるプログラムを実行することで実現されてもよい。例えばそのプログラムを実行するプロセッサ31が接触強度検出部21からのデータ信号が示す接触強度の値を取得し、その値を処理し、記憶部32にユーザの指示位置の値を格納することでフィルタ部22や座標算出部23の処理が実現されてもよい。また、このプログラムはインターネット等を介して提供されてもよいし、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
【0038】
また、本発明はタブレット端末や、電子書籍リーダ以外のものに適用されてもよい。例えば、タッチパネル入力装置が、パーソナルコンピュータなどに接続される外付けのタッチパネルであってもよいし、ホスト部2を含まず部品として供給されるタッチパネルであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 タッチパネル部、2 ホスト部、10 走査電極、12 検出電極、14 感知領域、21 接触強度検出部、22 フィルタ部、23 座標算出部、31 プロセッサ、32 記憶部、33 通信部、34 表示部、41 遅延ブロック、42 乗算器、43 加算器、45タップ、C 測定部、P 測定位置、A,B 位置、H 接触領域。
【要約】
手の小指側の端や手首などがタッチパネルに接触するような場合であっても、指やスタイラスなどによりユーザが指し示す位置を検出すること。
入力装置は、タッチパネルの複数の測定位置のそれぞれにおける接触強度の推移を示す接触強度推移信号を取得し、前記複数の測定位置のうち少なくとも1つにおける接触強度推移信号に対して、指またはスタイラス以外の接触により生じる前記接触強度推移信号の周波数成分を抑圧する周波数フィルタを適用し、前記周波数フィルタが適用された前記各測定位置における接触強度推移信号に基づいて、前記タッチパネルに対するユーザの指示位置のデータを生成する。
図1
図2
図3
図4
図5