特許第5801076号(P5801076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 阪神化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5801076-薬剤容器及びその製造方法 図000006
  • 特許5801076-薬剤容器及びその製造方法 図000007
  • 特許5801076-薬剤容器及びその製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5801076
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】薬剤容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20151008BHJP
   B65D 25/14 20060101ALI20151008BHJP
   B65D 23/02 20060101ALI20151008BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   A61J1/00 311
   B65D25/14 Z
   B65D23/02 Z
   B65D83/04 H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-69205(P2011-69205)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2011-224356(P2011-224356A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-75241(P2010-75241)
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391013025
【氏名又は名称】阪神化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124947
【弁理士】
【氏名又は名称】向江 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140969
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宮田 尚司
(72)【発明者】
【氏名】村井 護
(72)【発明者】
【氏名】熊本 幹男
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−110116(JP,U)
【文献】 特開2004−345344(JP,A)
【文献】 実開昭60−013313(JP,U)
【文献】 特開平06−067536(JP,A)
【文献】 特開2003−144527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
B65D 23/02
B65D 25/14
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を成形して得られた容器本体の口部がキャップで密栓され、丸薬が収容された薬剤容器であって、
容器本体の内面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが塗布されてなり、エリプソメータを用いて測定された膜厚4.5〜16.7nmの塗布層が形成されている薬剤容器。
【請求項2】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがポリソルベート20である、請求項1記載の薬剤容器。
【請求項3】
溶剤でポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを希釈して、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度を0.03〜0.67重量%にした希釈液を、ポリエチレンテレフタレート樹脂を成形して得られた容器本体の内面に塗布し、次いで容器本体の内面を乾燥させた後、丸薬を収容させ、その後容器本体の口部をキャップで密栓することを特徴とする薬剤容器の製造方法。
【請求項4】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがポリソルベート20である、請求項3記載の薬剤容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は丸薬を収容する薬剤容器及びその製造方法に関し、特にポリエチレンテレフタレート樹脂を成形して得られる薬剤容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医薬品を球状に成型した丸薬は、ガラス製の小型容器に収容されたものが普及している。しかし、ガラスは衝撃強度が弱いので使用時に落として破損する場合があり、安全性の点で問題がある。このような事情から樹脂製の容器が要望されているが、丸薬を収容した樹脂製の薬剤容器はほとんど普及していない。
【0003】
ここで、丸薬以外の粒状体を被収容物とする樹脂製容器について従来技術を検討すると、例えば、容器内面に帯電防止剤を塗布したり、あるいは容器を構成する樹脂の中に帯電防止剤を分散させたトナー容器が開示されている(特許文献1を参照)。また、帯電防止被膜で容器内面が被覆された半田細粒を収容した容器が開示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−67536号公報
【特許文献2】特開2003−81380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、樹脂製容器に静電気が発生しやすく、これにより収容した被収容物が容器内面に静電的に付着し、被収容物が取り出しにくくなることを防止するために帯電防止剤が使用されている。しかし、上記従来技術は使用し得る帯電防止剤を特に限定していない。また、本発明者らの検討によれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET樹脂」という)により成形した容器の内面に任意の帯電防止剤を少し多く塗布すると、比較的高湿度条件下に置いたときに、丸薬が容器内面に付着しやすくなり、丸薬が取り出しにくくなることが判明した。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、服用時に丸薬を取り出しやすい薬剤容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、容器の原料樹脂をPET樹脂とした場合、数多くの帯電防止剤のうち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを容器内面に塗布した場合に、丸薬の取り出し性に特に優れた容器となることが分かり、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕 PET樹脂を成形して得られた容器本体の口部がキャップで密栓され、丸薬が収容された薬剤容器であって、
容器本体の内面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが塗布されてなり、エリプソメータを用いて測定された膜厚4.5〜16.7nmの塗布層が形成されている薬剤容器、
〔2〕 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがポリソルベート20である、前記〔1〕記載の薬剤容器、
〔3〕 溶剤でポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを希釈して、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度を0.03〜0.67重量%にした希釈液を、PET樹脂を成形して得られた容器本体の内面に塗布し、次いで容器本体の内面を乾燥させた後、丸薬を収容させ、その後容器本体の口部をキャップで密栓することを特徴とする薬剤容器の製造方法、
〔4〕 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがポリソルベート20である、前記〔3〕記載の薬剤容器の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、容器本体の内面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが膜厚1.5〜20nmの範囲で塗布されているので、服用時に丸薬を取り出しやすい薬剤容器が提供される。このような薬剤容器は、溶剤でポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを希釈して、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度を0.03〜0.8重量%にした希釈液を容器本体の内面に塗布することにより製造される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例を示す薬剤容器のうち、容器本体の概略断面図である。
図2】倒立状態で丸薬が容器内面に静電的に付着した状態を示す説明図である。
図3】正立状態で丸薬が容器内面に静電的に付着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の一実施例を示す薬剤容器のうち、容器本体の概略断面図である。容器本体1は略矩形の四隅がカットされた形状を有する底部2と、底部2の周縁から上方へ延びる胴部3と、胴部3の上端部から周方向内側に延びる肩部4と、肩部4の上方に形成されたねじ口部5とがPET樹脂により一体成形されている。容器本体1の内面には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが塗布された塗布層6が形成されている。
【0012】
容器本体の原料樹脂としては、ガラス瓶状の質感を呈するものとして透明性の高い樹脂が好ましく、本発明では特にPET樹脂が好ましい。なお、容器本体の形状は丸薬を収容し得る形状であれば図1の形態に限定されない。また、容器本体の容量は1〜10mlの範囲のものが通常使用される。
【0013】
容器本体1は、例えば、特開2004−1308号公報に記載された2軸延伸ブロー成形により製造することができるが、本発明の容器本体の製造方法は2軸延伸ブロー成形に限定されず、例えば、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形、射出ブロー成形等の公知のブロー成形、及び射出成形等を採用することができる。
【0014】
塗布層6はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが塗布されてなるものである。帯電防止剤としては界面活性剤が通常用いられるが、PET樹脂を容器本体の原料樹脂とする場合、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を任意に選択するだけでは、丸薬の取り出し性に優れた薬剤容器を製造することはできない。上記の中でも非イオン界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが本発明に特に適している。
【0015】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチチレンオキサイドが付加重合したものをいう。構成脂肪酸の炭素数は8以上が好ましく、12以上がより好ましい。また、ポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜50が好ましく、8〜50がより好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノパルミチン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられ、これらは単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0016】
入手容易なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート類が挙げられ、例えば、ポリソルベート20(別名:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、Tween20)、ポリソルベート40(別名:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、Tween40)、ポリソルベート60(別名:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、Tween60)、ポリソルベート65(別名:ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、Tween65)、ポリソルベート80(別名:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、Tween80)等が挙げられる。上記の中では、丸薬の取り出し性に特に優れる点で、ポリソルベート20が特に好ましい。
【0017】
また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの親水親油バランス(HLB)は特に限定されず、通常は10〜17であり、好ましくは14.5〜17である。
【0018】
塗布層6の膜厚は、好ましくは1.5〜20nm、より好ましくは3〜18nm、特に好ましくは4〜17nmである。塗布層6の膜厚が1.5nm未満では、服用時に容器を振った時、丸薬が容器内で浮遊性を示し、丸薬を取り出しにくくなり好ましくない。一方、塗布層6の膜厚が20nmを超えると、丸薬が容器内で付着性を示し、丸薬を取り出しにくくなり好ましくない。ここで、本明細書において「膜厚」は、エリプソメータ(偏光解析装置)を用いて、解析により決定された値をいう。
【0019】
塗布層6は、溶剤でポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを希釈した希釈液を、容器本体1の内面に塗布し、次いで容器本体1の内面を乾燥させることにより形成される。溶剤としては例えば、水、アルコール類(例えば、エタノール等)、またはこれらの混合液等が挙げられる。塗布層6の膜厚は、上記希釈液中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度を振ることにより、適宜調整することができる。すなわち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度を大きくするほど、塗布層6の膜厚を厚くすることができる。希釈液中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度は、好ましくは0.03〜0.8重量%、より好ましくは0.05〜0.75重量%、特に好ましくは0.065〜0.65重量%である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度が0.03重量%未満では、服用時に容器を振った時、丸薬が容器内で浮遊性を示し、丸薬を取り出しにくくなり好ましくない。一方、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度が0.8重量%を超えると、丸薬が容器内で付着性を示し、丸薬を取り出しにくくなり好ましくない。
【0020】
このように、塗布層6は、容器本体に収容された丸薬が浮遊性および付着性をともに有しない性質を備えている。このことは、上記製法によって、かかる性質を発揮するように、好適な厚みでポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが塗布されていることを意味する。
【0021】
「浮遊性」とは、容器から丸薬を取り出すにあたり、容器を正立状態で複数回振った後で反転させたときに、丸薬が容器本体の底部若しくは胴部に静電的に付着するか、またはその後すぐに倒立状態から正立状態に戻した時に丸薬が容器本体の肩部若しくは胴部に静電的に付着する性質をいう。浮遊性の判定は以下の試験法による。すなわち、丸薬を5粒程入れ、キャップにて密栓された本発明に係る容器を検体とし、この検体をJIS Z 0701で規定されるA形シリカゲルを入れたガラス瓶の中に入れ、6ヶ月間密封した場合において、開封した検体を正立状態で上下に100回振り、次いで反転させ倒立状態に置いた後、すぐに正立状態に置く。倒立状態で丸薬が容器本体の底部若しくは胴部に付着した場合(図2を参照)、またはその後すぐに正立状態に戻した時に丸薬が容器本体の肩部若しくは胴部に付着した場合(図3を参照)、浮遊性を有すると判断する。一方、倒立状態で丸薬が容器本体の底部若しくは胴部に付着せず、かつその後すぐに正立状態に戻した時に丸薬が容器本体の肩部若しくは胴部に付着しなかった場合、浮遊性を有しないと判断する。
【0022】
「付着性」とは、容器から丸薬を取り出すにあたり、正立状態にある容器を反転させたときに、丸薬が容器の底部に付着する性質をいう。付着性の判定は以下の試験法による。すなわち、丸薬を5粒程入れ、キャップにて密栓された本発明に係る容器を検体とし、この検体を40℃、75%RHの環境下に正立状態で6ヶ月間静置した場合において、40℃、75%RHの環境下から取出した後、検体を反転させ倒立状態に置く。丸薬が容器本体の底部に付着したままの場合、付着性を有すると判断し、丸薬が容器本体の底部から落下した場合、付着性を有しないと判断する。
【0023】
本発明者らの検討によれば、浮遊性と付着性をともに有しない、丸薬の取り出し性に優れた塗布層は、上記界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いたときにのみ製造することができる。また、本発明において塗布層は実質的にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのみが塗布されていればよく、丸薬の取り出し性に優れる限り、それ以外の微量の界面活性剤が塗布されていてもよい。
【0024】
容器本体の内面に上記希釈液を塗布する方法は特に限定されず、例えば、希釈液中に容器本体を浸漬する、ノズル等を用いて希釈液を容器本体の内面に噴射、噴霧等する方法が挙げられる。
【0025】
塗布された希釈液の乾燥方法は特に限定されず、例えば、熱風ないし常温の圧縮空気を容器本体の内部に当てる等の方法を採用し得る。
【0026】
本発明に係る薬剤容器は、内面に塗布層が形成された容器本体に丸薬7を収容させ、その後容器本体の口部をキャップで密栓することにより製造される。丸薬は、医薬品を球状に造粒したものであり、丸剤とも称されるものである。丸薬の種類は特に限定されないが、丸薬の粒径は1.0〜3.0mmの範囲のものが通常使用される。
【0027】
キャップは容器本体の口部に密栓できるものであれば、形状は特に限定されない。例えば、図1のように雄ねじが形成されたねじ口部5に密栓させる場合は内面に雌ねじが形成されたキャップ8を用いて螺合させればよい。また、口部にねじを設けない場合は、はめ込み式のキャップを用いることができる。また、容器本体とキャップ以外に、必要に応じて容器本体の口部に嵌合する中栓を用いることもできる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。また、本実施例において「重量%」は「%」と略記した。
【0029】
1.検体の作製
PET樹脂製で、2軸延伸ブロー成形により製造された図1に示す形状の容器本体を使用した。容器本体の胴部は高さ20mm、肉厚2.0〜3.0mm、底部の肉厚1.0〜2.0mm、口部の内径5.0mm、内容量2.0ml程度のものである。
上記容器本体を倒立状態に保持し、噴霧用ノズルの先端を容器本体の内部に挿入し、下記の帯電防止剤を含む希釈液を噴射した後、常温の圧縮空気を容器本体の内部に当てて塗布層を形成させた。次いで容器本体に丸薬として「救心」(登録商標)を5粒入れ、低密度ポリエチレン製の中栓で容器本体の口部の開口部を密栓し、内面に雌ねじが形成されたポリプロピレン製のキャップを使用し、5kgf・cmのトルクで容器本体の口部を密栓した。
【0030】
(希釈液)
以下に示す3種類の界面活性剤をそれぞれエタノールで表1〜表3に示す濃度に希釈した希釈液を調製した。
・「デノン330」:丸菱油化工業(株)製、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、HLB:16.7
・「エマゾールL-10V」:花王(株)製、ソルビタンモノラウレート、HLB:8.6
・「デノン1895」:丸菱油化工業(株)製、陰イオン界面活性剤
【0031】
2.評価方法
(浮遊性)
作製した上記検体をJIS Z 0701で規定されるA形シリカゲルを入れたガラス瓶の中に入れて6ヶ月間密封し、開封した検体を正立状態で上下に100回振り、次いで反転させ倒立状態に置いた後、すぐに正立状態に置いた。倒立状態で丸薬が容器本体の底部若しくは胴部に付着した場合、またはその後すぐに正立状態に戻した時に丸薬が容器本体の肩部若しくは胴部に付着した場合、浮遊性を有する(評価:×)と評価した。一方、倒立状態で丸薬が容器本体の底部若しくは胴部に付着せず、かつその後すぐに正立状態に戻した時に丸薬が容器本体の肩部若しくは胴部に付着しなかった場合、浮遊性を有しない(評価:○)と評価した。なお、検体が浮遊性を有すると評価された場合、上記の操作を終えた正立状態の検体の胴部を指で数回弾き、丸薬が下方に落ちたときは、条件付きで浮遊性を有しない(評価:△)と評価した。検体数は各濃度条件でN=10とした。表1〜表3に結果を示す。
【0032】
(付着性)
作製した上記検体を40℃、75%RHの環境下に正立状態で6ヶ月間静置し、40℃、75%RHの環境下から取出した後、検体を反転させ倒立状態に置いた。丸薬が容器本体の底部に付着したままの場合、付着性を有する(評価:×)と評価し、丸薬が容器本体の底部から落下した場合、付着性を有しない(評価:○)と評価した。なお、検体が付着性を有すると評価された場合、倒立状態で検体の胴部を指で数回弾き、丸薬が下方に落ちたときは、条件付きで付着性を有しない(評価:△)と評価した。検体数は各濃度条件でN=10とした。表1〜表3に結果を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表1より、0.03〜0.67%の希釈液を用いて作製された検体は、浮遊性と付着性をともに有しないことが分かった。一方、表2と表3では浮遊性と付着性のいずれか一方を有しない検体はあったが、上記性質をともに有しない検体はなかった。以上の結果から、上記3種類の帯電防止剤の中では「デノン330」(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を用いた場合にのみ、濃度範囲を調整して、浮遊性と付着性をともに有しない塗布層を製造できることが分かった。
【0037】
3.膜厚の測定
上記「1.検体の作製(希釈液)」に記載の界面活性剤「デノン330」をエタノールで希釈して、0.067%、0.1%、0.67%の希釈液を調製した。そして、上記「1.検体の作製」で記載したのと同じ方法で容器本体の内部に塗布層を形成させた。次に、容器本体の胴部をカットして膜厚測定用のサンプルとした。膜厚測定にあたっては、自動エリプソメータ(MARY−102FM,ファイブラボ(株)製)を用い、He−Ne レーザ(波長632.8nm)を光源として、上記塗布層表面での光の入反射光の偏光状態の変化を測定し、解析により決定された膜厚データを得た。膜厚の測定箇所は容器本体の胴部の中心部、該中心部から水平方向右側に1mmの箇所、及び該中心部から鉛直方向上側に1mmの、計3箇所とした。そして、各サンプルについて得られた3つの膜厚の平均を当該サンプルの膜厚とした。表4に結果を示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表4より、横軸に希釈液の濃度をとり、縦軸に膜厚をとり、得られたプロットから最適な近似曲線として対数近似曲線を選択し、対数近似式を得た。表1及び得られた対数近似式から、表1において実際に浮遊性と付着性をともに有しない希釈液濃度0.03〜0.67%に対応する膜厚は、1.7〜16.9nmと計算された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、丸薬の取り出し性に優れた薬剤容器として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 容器本体
2 底部
3 胴部
4 肩部
5 ねじ口部
6 塗布層
7 丸薬
8 キャップ
図1
図2
図3