【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により、更に詳しく説明する。
(実施例1)
中間膜用粘着シートはアクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマーとして2−イソシアナートエチルメタクリレート:2.0重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン:2.0重量部、金属化合物としてアセチルアセトン亜鉛塩:2.0重量部を溶融攪拌した後、離型フィルム間に厚み0.5mmのシート状に成形して中間膜粘着シートを得た。
【0030】
上記シートを用いて以下に示す方法で透明積層体を作製した。
作製方法は、市販のフロートガラス板(厚さ3mm、幅200mm、長さ300mm)の一方の面に、片面の離型フィルムを剥がした中間膜をニップロールと駆動ゴムロール間で、初めて接触するようにロール間へ搬入させ、線圧力:9.8N/cm、速度:5m/分で貼った後、残りの雛型フィルムを剥がした。
【0031】
次に前記中間膜を貼ったガラス板を中間膜を介して市販のポリカーボネート板(厚さ2mm、幅200mm、長さ300mm、ハードコート処理)を接触させずに向かい合わせ、2枚の板の端部をニップロールと駆動ロール間で、初めて接触するようにニップロール(線圧力:196N/cm、速度0.5m/分)に挟んで積層した後、高圧水銀ランプの紫外線照射装置を用いて積層体のガラス側より160w/cm、5m/分の条件で照射させて透明積層体を得た。
【0032】
中間膜用粘着シートに用いたアクリル酸エステル共重合体の組成は、n−ブチルアクリレート:78.4重量%、2−エチルヘキシルアクリレート:19.6重量%及びアクリル酸:2.0重量%を共重合させたもので、アクリル酸エステル共重合体のGPCで測定した分子量及び分子量分布は、重量平均分子量(MW):2.27×10
6 、重量平均分子量(MW)/数平均分子量(MN):3.6であった。
【0033】
(実施例2)
中間膜用粘着シートはアクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマーとして2−イソシアナートエチルメタクリレート:5.0重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン:2.0重量部、金属化合物としてアセチルアセトン亜鉛塩:2.0重量部を溶融攪拌した後、離型フィルム間に厚み0.5mmのシート状に成形して中間膜粘着シートを得た。
【0034】
こうして得た中間膜用粘着シートを用いて実施例1で作製した方法で透明積層体を得た。
(比較例1)
実施例1と同様の中間膜用粘着シートを用いて、実施例1と同様の条件で積層した後、紫外線硬化させないもので透明積層体とした。
【0035】
(比較例2)
中間膜用粘着シートはアクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマーとして2−イソシアナートエチルメタクリレート:10.0重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン:2.0重量部、金属化合物としてアセチルアセトン亜鉛塩:2.0重量部を溶融攪拌した後、離型フィルム間に厚み0.5mmのシート状に成形して中間膜用粘着シートを得た。
【0036】
こうして得た中間膜用粘着シートを用いて、実施例1で作製した方法で透明積層体を得た。
前記実施例及び比較例で得られた合わせガラスを用いて、下記項目について評価した結果を表1に示す。問題のなかったものは(○)で示している。
【0037】
[耐湿熱性試験]
60℃×90%RHで14日間保持した後、気泡や剥離の発生状態の有無を観察した。
[ヒートサイクル試験]
−20℃に2時間保持後、80℃に2時間保持、昇温、降温にそれぞれ1時間かけるヒートサイクルを1日に4回、14日間繰り返した後、気泡や剥離の発生状態の有無を観察した。
【0038】
【表1】
表1の結果から明らかなように、本発明の中間膜用粘着シートを用いた場合、室温での積層加工が可能で外観上満足できる積層体を得ることができるのに対し、粘弾性特性が本発明の周波数で測定した貯蔵弾性率の範囲外であるシート(比較例)では観察項目のいずれかを満足することができないことが判る。
【0039】
この実施の形態では次の効果を有する。
(1) 中間膜用粘着シート1は紫外線硬化可能な粘着剤層2を少なくとも1層有し、紫外線硬化前の状態で室温において板材の合わせ加工に使用され、その後、紫外線照射により粘着剤層2が硬化される。従って、オートクレーブによる高温・高圧処理を必要とすることなく積層体を形成することができ、かつ実用上の耐久性を確保できる。その結果、加熱を嫌う用途に好適に用いることができる。
【0040】
(2) 紫外線硬化前の粘着剤層2の長時間域の貯蔵弾性率(周波数10
-7Hzでの貯蔵弾性率G'(10
-7Hz) )が特定の範囲にあるため、粘着剤層2が板材の合わせ加工時に厚みの凹凸に馴染んで緩和し、気泡のない合わせ外観を得ることができる。
【0041】
(3) 紫外線硬化後の粘着剤層2の長時間域の貯蔵弾性率が特定の範囲にあるため、実用上の耐久性が付与できる。
(4) 粘着剤層2はα,β不飽和カルボン酸を含有した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とし、前記不飽和カルボン酸と反応する有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマー、光重合開始剤及び金属化合物が添加されている。従って、金属化合物による金属イオン架橋を用いることで、紫外線硬化前の状態の粘着剤層2に所定の粘弾性特性を比較的容易に付与することができる。また、アクリルモノマーをグラフトすることで紫外線硬化性を付与することが可能となる。
【0042】
(5) 粘着剤層2がアクリル系粘着剤であるため、耐候性や透明性が良くなる。
(6) 粘着剤層2は表裏両接着面に離型フィルム3が貼付された構成のため、一方の離型フィルム3を剥がした状態で先ず板材の一方に作業性良く貼付でき、次に他方の離型フィルム3を剥がして板材の他方に作業性良く貼付できる。また、粘着剤を直接板材に塗布して粘着剤層を形成する場合に比較して、所定の厚さに形成するのが容易になる。
【0043】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 中間膜用粘着シート1は粘着剤層2が1層に限らず、例えば、フィルム、シートあるいは織布で形成された芯材の両面に粘着剤層2が形成された構成としてもよい。この場合、芯材として剛性の高い二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いると、特に中間膜用粘着シート1の取扱い性(作業性)が良くなる。
【0044】
○
ガラス板と合成樹脂
板を積層する際、積層される板材は2枚に限らず3枚以上としてもよい。
○ 粘着剤層2を挟持する離型フィルム3を、紫外線の透過を抑制する材質で形成する。この場合、中間膜用粘着シート1を使用する前、即ち離型フィルム3が剥がされる前に粘着剤層2が硬化する虞がなくなる。
【0045】
○ 粘着剤層2に含有される架橋剤として金属化合物以外の架橋剤を使用してもよい。
○ また、
図3(a),(b)に示すように、紫外線硬化可能な粘着剤層2の片面又は両面に、紫外線で硬化しない粘着剤、例えば、アクリル系樹脂をイソシアネート系、エポキシ系、メラミン系等の硬化剤あるいは紫外線で既に硬化済みの比較的硬い粘着剤層21を積層してもよい。
【0046】
このことにより、板材の合わせ加工時に厚みの凹凸が、比較的硬い粘着剤層21を介して紫外線硬化前の粘着剤層2に伝播し、該粘着剤層2が緩和することにより、中間膜用粘着シート1全体として馴染んで、気泡のない合わせ外観を得ることができる。
【0047】
前記実施の形態から把握できる技術的思想(発明)について、以下に記載する。
(1) 前記粘着剤層はフィルム状の芯材の両面に形成されている。この場合、中間膜用粘着シートの取扱い性(作業性)が良くなる。
【0048】
(2) 前記粘着剤層は2枚の離型フィルムに挟持され、離型フィルムは紫外線の透過を抑制するように形成されている。