特許第5801178号(P5801178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5801178
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】光測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20151008BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   G01J1/02 G
   B60L5/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-279764(P2011-279764)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-130460(P2013-130460A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000151036
【氏名又は名称】株式会社電業
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】早坂 高雅
(72)【発明者】
【氏名】清水 政利
(72)【発明者】
【氏名】根津 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優
(72)【発明者】
【氏名】吉原 誠
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−122102(JP,A)
【文献】 特開2010−233391(JP,A)
【文献】 特開2002−264619(JP,A)
【文献】 特開2007−288893(JP,A)
【文献】 特開昭58−003501(JP,A)
【文献】 特開平08−265904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
B60L 5/00−5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられて、光発生源からの光を取り込み、特定波長の光を選択する光選択手段と、
該光選択手段を経由した光を電気信号に変換する光電変換機と、
前記光発生源の映像を取り込む撮影機から供給される画像データを少なくとも前記光電変換機による特定波長の光の検出の前後の所定時間に亘って記録する映像記録部と、
前記車両の位置を測定する位置測定手段と、
を備え、
前記位置測定手段から供給された車両の走行位置を示すデータに基づき、外乱光の影響を受ける所定の区間で前記特定波長の光を非測定とすることを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
前記光選択手段は、光発生源となるパンタグラフと架線との接触部へ向けられて、該接触部で発生するアークを取り込み、かつ該アークの波長の光線を選択して可視光線に変換することを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記光選択手段は、前記アークから所定の波長以上の非紫外線成分を取り除く干渉フィルタと、該干渉フィルタを通過した紫外線を可視光線に変換する蛍光ガラスとを有することを特徴とする請求項2に記載の光測定装置。
【請求項4】
前記アークの検出量の積算値に基づき、前記パンタグラフの摩耗を検出して該パンタグラフの寿命を推定する演算手段が設けられていることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の光測定装置。
【請求項5】
前記光選択手段は、鉄道車両の各部を構成する材料の燃焼により発生する光を取り込み、また、前記撮影機は、前記材料が使用されている車両の所定部位の映像を連続的に撮影することを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記映像記録部は、前記位置測定手段で測定された位置に対応した映像を記録することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンタグラフがトロリ線から離線した時に発生するアーク光によってパンタグラフの離線を検知する光測定装置に関する。特に、装置全体の小型化を図ることができ、かつアーク光の発生状態を視覚的に分析することが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道において、電力は変電所からトロリ線を通じて車両のすり板及びパンタグラフへと送られる。電車が走行している際に、トロリ線とすり板との接触が損なわれる(離線がある)と、その離線箇所でアーク放電が発生する。
このアーク放電は、騒音、トロリ線及びすり板の損耗を引き起こすため、極力、発生が起こらないようにすることが好ましく、そのため、アーク放電が発生する箇所を正確に検出して、発生防止策を講じる必要がある。
【0003】
このアーク放電を検出する技術として、特許文献1及び2に示されるパンタグラフ離線検知装置が提供されている。
これら特許文献1及び2に示されるパンタグラフ離線検知装置は、パンタグラフの近傍に設置された紫外光受光部と、車両の内部に配置されて該紫外線受光部で受光した光の量を測定する光量測定器と、これら紫外光受光部で受光した光を光量測定器に伝送するプラスチック光ファイバと、を有する。
前記紫外光受光部は、アーク光の所定の波長以下の紫外光成分を通過させるフィルタと、該フィルタを通過した紫外光を可視光に変換する蛍光ガラスとを有する。
【0004】
そして、上記パンタグラフの離線検知装置では、前記紫外光受光部にて、前記フィルタにて所定の波長以上の非紫外光成分を取り除くことにより、アーク光に含まれる紫外光を、太陽光に対して高い割合で透過する。その後、前記蛍光ガラスにて前記紫外光を可視光に変換した後、前記プラスチック光ファイバを経由して前記光量測定器に伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐183088号公報
【特許文献2】特開2010‐233391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように構成されたパンタグラフ離線検知装置では、紫外線受光部で受光した紫外線を、プラスチック光ファイバを通じて光量測定器に伝送するようしているので、装置が大型化するという問題があった。
また、上記パンタグラフ離線検知装置では、アークの有無及び発生量を検知することができるが、該アークの発生状態を視覚的に分析することができず、この点において改良が期待されていた。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、光ファイバを使用することなく、紫外線受光部と光量測定器とを一体化することで、装置全体の小型化を図ることができ、さらにアーク光の発生状態を視覚的に分析することが可能な光測定装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、光発生源からの光を取り込み、特定波長の光を選択する光選択手段と、該光選択手段を経由した光を電気信号に変換する光電変換機と、前記光発生源の映像を連続的に撮影する撮影機と、前記撮影機に撮影された映像を、少なくとも、前記光電変換機による光の検出の前後所定時間に亘って記録する映像記録部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光選択手段にて、光発生源からの光を取り込んで特定波長の光を選択した後、光電変換機にて、該光選択手段を経由した光を電気信号に変換する。具体的には、光選択手段にて、光発生源となるパンタグラフと架線との接触部で発生するアークを取り込み、所定の波長以上の非紫外線成分を取り除いた後、紫外線を可視光線に変換し、その後、光電変換機にて、該光選択手段を経由した光を直ちに電気信号に変換する。これにより従来のように光選択手段と光量測定器との間を光ファイバで接続する必要がなくなり、装置全体の小型化を図ることができる。さらに、前記光選択手段、光電変換機、撮影機、および映像記録部を鉄道車両の屋根上に配置することにより、鉄道車両自体への取付に要する工数を少なくすることができる。
【0010】
さらに、光発生源の映像を連続的に撮影する撮影機と、該撮影機に撮影された映像を、光電変換機によるアーク検出の前後所定時間に亘って記録する映像記録部とを設けるようにしたので、アーク検出時に映像記録部に記録された画像を観ることで、光の発生状態を分析することができ、その分析結果に基づき、架線及び軌道の改修を細かく行うことが可能となる。
【0011】
また、アークの検出量の積算値に基づき、パンタグラフの摩耗を検出して該パンタグラフの寿命を推定する演算手段を設けることで、パンタグラフのメンテナンス時期を明確に知ることができる。
【0012】
また、車両の位置を連続的に測定するGPSなどの位置測定手段を備え、該位置測定手段で測定された位置に対応した映像を、前記映像記録部にて記録するようにすれば、記録された画像と、アークが発生した架線及び軌道の位置とを正確に合致させることができ、上述した架線及び軌道の改修を正確に行うことが可能となる。
【0013】
また、前記光選択手段にて、鉄道車両の各部を構成する材料の燃焼により発生する光を取り込み、また、前記撮影機にて、該材料が使用されている車両の所定部位の映像を連続的に撮影することで、例えば、鉄道車両にて火災が発生し易い、台車の軸受付近等の箇所を常時監視することが可能となり、車両の高い安全管理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る光測定装置の全体構成を示す図である。
図2】車体上部に設置した光選択手段及び撮像機の配置を示す斜視図である。
図3】光検出手段を示す分解斜視図である。
図4】光選択手段の構造を示す断面図である。
図5】離線により生じるアーク光のスペクトル分布、及び太陽光のスペクトル分布を示すグラフである。
図6】紫外線の波長に対するフィルタの透過率を示すグラフである。
図7】光測定装置のデータ処理装置を示すブロック図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る光測定装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
本発明の第1実施形態について、図1図7を参照して説明する。
図1図3は、本発明の実施形態に係る光測定装置を説明する図であり、図1は装置全体の構成を示す図、図2は車体上部に設置した光選択手段及び撮像機の配置を示す斜視図、図3は光検出手段を示す図、図4は光選択手段の構造を示す断面図である。
【0016】
図1及び図2において、符号1で示される光測定装置は、車両Vの上面のパンタグラフPの近傍に設置されて該パンタグラフPのすり板Sとトロリ線Lとの離線で発生したアーク光を取り込む光選択手段10と、該光選択手段10に近接配置され該光選択手段10を経由した光を電気信号に変換する光電センサ(光電変換機)11と、パンタグラフPの近傍に設けられてパンタグラフPのすり板Sとトロリ線Lとの離線で発生した光を撮影する撮影機12と、前記光電センサ11及び撮影機12から出力される信号を取り込み処理するデータ処理装置13と、から構成されている。
【0017】
ここで、前記光電センサ11及び撮影機12から出力される信号のデータ処理装置13への取り込みは、信号ケーブル14・15を通じて行われる。また、光選択手段10と光電センサ(光電変換機)11とによって、光検出手段16が構成されており、いずれもが図2に示されるように、車両Vの上部に設置された取付部2に固定されている。
【0018】
光選択手段10は、図3及び図4に示されるように、円筒ケース20と、該円筒ケース20に収容されて、非紫外光を除去するとともに特定の波長域の紫外光を選択して透過させる干渉フィルタ21と蛍光ガラス22とを有するもので、受光側の干渉フィルタ21が、光発生源となるパンタグラフPのすり板Sと架線Lとの接触部へ向けられている。
干渉フィルタ21は円筒ケース20の光入射側に位置し、蛍光ガラス22は円筒ケース20の光出射側に位置するものであり、これら干渉フィルタ21及び蛍光ガラス22を挟むように両端部には、保護用の石英ガラス23がそれぞれ配置されている。
【0019】
また、該石英ガラス23と、円筒ケース20の端部に形成された突起部20Aとの間には、これら石英ガラス23と、干渉フィルタ21及び蛍光ガラス22とを密着させかつ保護するとともに、外部からの水分浸入を防止するOリング24が設けられている。
また、光電センサ11は、光選択手段10の光出射側の近接位置に配置されるものであって、該光選択手段10を経由した光を光量に応じた電気信号に変換する。
【0020】
光選択手段10の構成について詳細に説明する。
干渉フィルタ21は、太陽光を遮断しつつ、所定の波長よりも短波長側の紫外光成分のみを通過させるためのものである。波長はパンタグラフPの摺板の材質によって決められるが、本例では、水銀灯より短波長となる200〜230nmの紫外光を選択して通過させるものを選択して使用する。
なお、干渉フィルタ21により200〜230nmの波長帯の紫外線を選択するのは、この波長帯が離線アークに多く含まれるからであり、また、外乱の原因となる太陽光、及び離線アーク以外の紫外線(蛍光灯、水銀灯、信号灯からの紫外線)の影響を排除する目的がある。特に、信号灯にはLED照明が使用され、構内照明には水銀灯が使用され、また、トンネル内の照明には蛍光灯が使用されているが、これらの内、紫外線の放射が多いのは水銀灯であり、253.7nmや365nmの紫外線を含んでいるためである。
【0021】
一方、離線アークに含まれる紫外線は、図5に示される「離線により生じるアーク光のスペクトル分布(◇は新幹線のすり板を使用した場合、△は在来線のすり板を使用した場合を示す)、及び太陽光のスペクトル分布(□で示す)」を参照して分かるように、いずれのすり板を使用しても、200〜230nmの波長帯にピークがあり、このようなスペクトルの分布状況に基づき、前述の干渉フィルタ21により、200〜230nmの波長帯の紫外線を選択するものである。すなわち、紫外線を選別するための本例の干渉フィルタ21では、図6に示すように、紫外線の波長に対する干渉フィルタ21の透過を200〜230nmの波長帯とする。該干渉フィルタ21では、さらに、ピークが半分になる半値幅(206〜226nm)の波長帯にて紫外線の透過を行わせるようにし、離線により生じるアーク光の紫外線のみを確実に抽出するようにしても良い。
【0022】
また、蛍光ガラス22は、干渉フィルタ21を通過した紫外光領域の光を、光電センサ11にて検知可能な可視光に変換するためのものである。そして、該光電センサ11で検知された可視光はアーク検出データを示す電気信号となって、信号ケーブル14を通じてデータ処理装置13に供給される。
このような蛍光ガラス22は、ガラス中に蛍光活性イオンとなる希土類イオンを多量に含有させたものである。例えば、希土類イオンが三価テルビウムの場合、波長が200〜390nmの紫外光で励起すると緑色の蛍光(波長540nm)を発し、3価ユウロピウムの場合、波長が200〜420nmの紫外光で励起すると赤色の蛍光(波長610nm)を発し、2価ユウロピウムの場合は波長が200〜400nmの紫外光で励起すると青色の蛍光(波長410nm)を発する(「蛍光ガラスの開発」沢登成人(株式会社住田光学ガラス)、マテリアルインテグレーション VOL.17、No.3(2004))。
【0023】
また、撮影機12は、図1及び図2に示されるように、光選択手段10と並列するようにパンタグラフPの近傍に設けられ、かつ光発生源となるパンタグラフPのすり板Sと架線Lとの接触部を撮影するように配置されている。そして、この撮影機12で撮影された画像は、画像データとして信号ケーブル15を経由してデータ処理装置13に供給される。
また、車両Vの上面には、車両Vの位置を連続的に測定するGPSなどの位置測定手段30が設けられている。そして、この位置測定手段30で検出された車両Vの位置データは、信号ケーブル31を通じて同様に、データ処理装置13に供給される。
【0024】
次に、図7を参照してデータ処理装置13について説明する。
このデータ処理装置13は、光検出手段16の光電センサ11で検出されたアーク検出データ、撮像機12で撮像された画像データ、及び位置測定手段30で検出された位置データがそれぞれ入力されるものであって、以下の(1)及び(3)の処理を行う。
【0025】
光電センサ11からアーク検出データが出力された場合に、該アーク検出データの検出時点の前後一定時間(例えば、前後10秒程度)における撮像機12からの画像データを記録する。なお、撮像機12ではパンタグラフPの常時撮影が行われており、データ処理装置13にて、撮像機12からの画像データは、継続的に取り込まれて記憶された後、古い画像データから順次上書きされることで、常に一定時間分の画像が、一時記憶されている。このため、光電センサ11からアーク検出データが出力された場合に、該アーク検出データの検出時点から過去に遡って、撮像機12の画像データを読み出して記録することが可能となる。そして、光電センサ11からアーク検出データ、及び該アーク検出データの検出時点の前後一定時間における撮像機12の画像データは、データ処理装置13内のデータ記憶手段13Aに共に記憶される。なおデータ記憶手段13Aの記憶容量により全部の画像データを記憶するようにしても良い。
【0026】
(2)位置測定手段30で検出された位置データはデータ処理装置13に常時取り込まれており、上記(1)のアーク検出データの検出時点の位置データを、上記撮像機12の画像データとともに、データ処理装置13内のデータ記憶手段13Aに記憶する。すなわち、アーク光が検出されたときに撮影された画像データに、位置データを対応させることで、架線Lのアーク発生地点を特定する。
【0027】
(3)光電センサ11から出力されたアーク検出データに基づき、アークの検出量の積算値を計算する。この積算値は、データ記憶手段13Aに記憶するとともに車両Vの走行距離に応じて更新し、予め設定しておいた設定値と比較することで、パンタグラフPの摩耗を判定して、該パンタグラフPの寿命を推定可能としている。
【0028】
なお、上記データ処理装置13では、操作手段13B及び表示手段13Cが設けられており、操作手段13Bからの指示に基づき、データ処理装置13内のデータ記憶手段13Aに記憶されたアーク検出データ、画像データ及び位置データが読み出され、かつ表示手段13Cが表示される。
【0029】
そして、以上のように構成された光測定装置1では、光選択手段10で受光された紫外線が、該光選択手段10内の干渉フィルタ21により離線アークに多く含まれる200〜230nmの波長帯の紫外線のみが選択される。その後、干渉フィルタ21を通過した200〜230nmの波長帯の紫外光成分は、該干渉フィルタ21の後側に位置する蛍光ガラス22で可視光に変換された後、光電センサ11に検出される。すなわち、本実施形態に示されるパンタグラフPの離線検知方式では、水銀灯より短波長の紫外光(200〜230nmの波長帯の紫外光)を選択して測定することにより、パンタグラフPの離線を検知するようにしたので、路線上に最も設置が多い水銀灯又はその他の蛍光灯、信号灯といった各種外乱光からの紫外線の影響を排除して、トロリ線Lとすり板Sとの離線により発生するアーク光中の紫外光のみを確実に検出することができる。その結果、検出精度の高いパンタグラフPの離線検知が可能となる。
【0030】
さらに、上記光測定装置1では、光電センサ11にて、光選択手段10から出力される可視光を電気信号に変換する。具体的には、光選択手段10にて、光発生源となるパンタグラフPとトロリ線Lとの接触部で発生するアーク光を取り込み、所定の波長以上の非紫外線成分を取り除いた後、紫外線を可視光線に変換し、その後、光電センサ11にて、該光選択手段10を経由した光を電気信号に変換する。これにより従来のように光選択手段10と光量測定器との間を光ファイバで接続する必要がなくなり、装置全体の小型化を図ることができる。
【0031】
以上詳細に説明したように第1実施形態に示される光測定装置1では、光選択手段10の近接位置に配置された光電センサ11にて、該光選択手段10から出力された可視光を電気信号に変換するようにしたので、従来のように光選択手段10と光量測定器との間を光ファイバで接続する必要がなくなり、装置全体の小型化を図ることができる。
さらに、光発生源の映像を連続的に撮影する撮影機12と、該撮影機12に撮影された映像を、光電センサ11によるアーク検出の前後所定時間に亘ってデータ記憶手段13Aに記録するデータ処理手段13とを設けるようにしたので、アーク検出時にデータ記憶手段13Aに記録された画像を観ることで、光の発生状態を視覚的に分析することができ、その分析結果に基づき、架線L及び軌道の改修を細かく行うことが可能となる。
【0032】
また、アークの検出量の積算値に基づき、パンタグラフPの摩耗を検出して該パンタグラフPの寿命を推定するデータ処理手段13を設けることで、パンタグラフPのメンテナンス時期を明確に知ることができる。
また、車両Vの位置を連続的に測定するGPSなどの位置測定手段30を備え、該位置測定手段30で測定された位置に対応した映像を、データ処理手段13のデータ記憶手段13Aにて記録するようにすれば、記録された画像と、アークが発生した架線L及び軌道の箇所とを正確に合致させることができ、上述した架線L及び軌道の改修を正確に行うことが可能となる。
【0033】
なお、上記実施形態では、パンタグラフPのすり板Sとトロリ線Lとの離線で発生したアークを光検出手段16で検出するようにしたが、その他に該光検出手段16にて、車両Vの各部を構成する材料の燃焼により発生する光を取り込み、また、撮影機12にて、該材料が使用されている車両Vの所定部位の映像を連続的に撮影しても良い。
例えば、本発明に係る光測定装置1の光検出手段16及び撮影機12を、車両Vにて火災が発生し易い、台車の軸受付近等の箇所に向けて配置し、当該箇所を常時監視することで、車両Vの高い安全管理を行うことが可能となる。
【0034】
また、車両Vの走行位置を示す現在位置データは、GPSなどの位置測定手段30で計測される他、速度発電機から車輪の回転数に応じて出力されるパルスを計測することで、算出しても良い。これ以外には、速度を積分したり、路線に沿って設けられた目標となる地上子を検出又はカウントして距離を積算しても得ても良い。
【0035】
[実施形態2]
本発明の第2実施形態について、図8を参照して説明する。
第2実施形態で示される光測定装置1が、第1実施形態と異なるのは、離線アーク以外の紫外線(蛍光灯、水銀灯、信号灯からの紫外線)の影響を完全に排除するために、離線アーク以外の紫外線の影響がある位置での紫外線受光を停止するようにした点であり、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。
【0036】
具体的には、図8に示すように、符号40で示すデータ照合手段を設け、このデータ照合手段40において、車両Vの走行位置を示す現在位置データと、予め記憶しておいた外乱光の影響を受ける位置を示す基準位置データとを照合し、その照合結果に基づき、前述のデータ処理手段13に対して、外乱光の影響を受ける地点にて、光検出手段16の光選択手段10からの出力光を、光電センサ11にて非測定とする制御信号を出力する。
【0037】
なお、前記予め記憶しておいた外乱光の影響を受ける位置を示す基準位置データは、路線上の照明設置位置に対応している。また、車両Vの走行位置を示す現在位置データは、GPSなどの位置測定手段30で計測される他、速度発電機41から車輪の回転数に応じて出力されるパルスを計測することで、算出しても良い。これ以外には、速度を積分したり、路線に沿って設けられた目標となる地上子を検出又はカウントして距離を積算しても得ることができる。
【0038】
また、この第2実施形態では、光検出手段16の光選択手段10に、200〜230nmの波長帯の紫外線を選択する干渉フィルタ21を設けたが、この干渉フィルタ21は、ピークが半分になる半値幅(206〜226nm)の波長帯の紫外線を選択するものであっても良い。
そして、ここで光選択手段10に、200〜230nm又は206〜226nmの波長帯の紫外線を選択する干渉フィルタ21を設けた場合には、最も設置数の多い水銀灯を始めとする外乱光の影響を確実に排除することができ、より精度の高いパンタグラフ離線検知を行うことができる。
【0039】
以上詳細に説明したように第2実施形態に示される光測定装置1でも、第1実施形態と同様、光検出手段16の光選択手段10の近接位置に配置された光電センサ11にて、該光選択手段10から出力された可視光を電気信号に変換するようにしたので、従来のように光選択手段10と光量測定器との間を光ファイバで接続する必要がなくなり、装置全体の小型化を図ることができる。
また、第2実施形態では、車両Vの走行位置を示すデータに基づき、外乱光の影響を受ける地点にて、光選択手段10からの出力光を光電センサ11にて非測定とし、かつ外乱光の影響を受けない地点でのみパンタグラフの離線検知を行うことにより、水銀灯又はその他の蛍光灯、信号灯といった各種外乱光からの紫外線の影響を排除して、トロリ線Lとすり板Sとの離線により発生するアーク光中の紫外光のみを確実に検出することができる。その結果、検出精度の高いパンタグラフの離線検知が可能となる効果が得られる。
【0040】
また、第2実施形態では、データ照合手段40により、車両Vの走行位置を示すデータに基づき、外乱光の影響を受ける地点にて紫外線を非測定とする方式とともに、光選択手段10に、200〜230nm又は206〜226nmの波長帯の紫外線を選択する干渉フィルタ21を選択的に設けることで、最も設置数の多い水銀灯を始めとする外乱光の影響をより確実に排除することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0042】
上記第1、第2実施形態では、光電センサと撮影機とが取得したデータを車内のデータ処理手段へ供給し、必要に応じて、データ処理手段に接続された操作手段を操作することにより表示手段に表示させるようにしたが、リアルタイムでデータを表示する必要がない場合には、データ処理手段を光電センサや撮影機とともに屋根上に設けても良い。すなわち、データ記憶手段を備えたデータ処理手段を光電センサと撮影機とともに屋根上に設け、光電センサと撮影機とが取得したデータをインタフェース手段を介してデータ処理手段に供給して、データ記憶手段に記憶させ、記憶されたアーク検出データと画像データとを必要に応じて読み出すようにしても良い。この構成により、第1、第2実施例で必要とされていた屋根上の光電センサと撮影機とをデータ処理手段に接続する信号ケーブル14、15を省略して、装置の構成を簡略にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、パンタグラフがトロリ線から離線した時に発生するアーク光によってパンタグラフの離線を検知する光測定装置に関する。特に、装置全体の小型化を図ることができ、かつアーク光の発生状態を視覚的に分析することが可能な技術に関する。
【符号の説明】
【0044】
1 光測定装置
10 光選択手段
11 光電センサ(光電変換機)
12 撮影機
13 データ処理装置(映像記録部)(演算手段)
21 干渉フィルタ
22 蛍光ガラス
30 位置測定手段
P パンタグラフ
S すり板
L 架線
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8