(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記副制御器は、前記双方向液圧ポンプを駆動する電動モータの回転数又はトルクを制御して、前記可動テーブルの移動を妨げる力を打ち消すように前記双方向液圧ポンプを制御する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の平面研削盤。
前記副制御器は、前記主制御器による前記双方向液圧ポンプの回転数の制御とは別に、前記可動テーブルの移動を妨げる力を打ち消すように前記双方向液圧ポンプを制御する、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の平面研削盤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る平面研削盤100の側面図であり、
図2は、その上面図である。平面研削盤100は、主に、本体ベッド1、X軸テーブル2、横軸砥石用コラム3、横軸砥石ヘッド4、砥石ヘッド回転用モータ5、砥石ヘッド上下送り用モータ6、砥石ヘッド左右送り用モータ7、テーブル駆動用モータ8、及び制御装置9を含む。
【0012】
本体ベッド1は、可動テーブルとしてのX軸テーブル2をX軸方向に往復移動可能に支持する台座である。具体的には、本体ベッド1は、X軸テーブル2の下面から突出するガイドレールを受け入れるレール溝1AL、1ARをその上面に有する。
【0013】
X軸テーブル2は、本体ベッド1上をX軸方向に摺動可能な可動テーブルであり、その上面で被研削物(ワーク)Wを支持する。
【0014】
横軸砥石用コラム3は、横軸砥石ヘッド4を上下方向(Z軸方向)及び左右方向(Y軸方向)に移動可能に支持する装置である。
【0015】
横軸砥石ヘッド4は、砥石軸40を有する砥石ヘッドである。本実施例では、砥石軸40の先端には、砥石車41が取り付けられる。
【0016】
砥石ヘッド回転用モータ5は、横軸砥石ヘッド4の砥石軸40を回転させるモータであり、例えば、サーボモータが用いられる。
【0017】
砥石ヘッド上下送り用モータ6は、横軸砥石ヘッド4を上下方向(Z軸方向)に移動させるための砥石ヘッド上下移動機構を駆動するモータである。本実施例では、砥石ヘッド上下送り用モータ6は、横軸砥石ヘッド4をZ軸方向に移動させるボールねじ機構におけるボールねじ軸又はボールねじナットを回転させるためのサーボモータである。
【0018】
砥石ヘッド左右送り用モータ7は、横軸砥石ヘッド4を左右方向(Y軸方向)に移動させるための砥石ヘッド左右移動機構を駆動するモータである。本実施例では、砥石ヘッド左右送り用モータ7は、横軸砥石ヘッド4をY軸方向に移動させるボールねじ機構におけるボールねじ軸又はボールねじナットを回転させるためのサーボモータである。
【0019】
なお、上下移動機構及び左右移動機構は、ラックアンドピニオン機構等の他の機構であってもよい。
【0020】
テーブル駆動用モータ8は、X軸テーブル2をX軸方向に移動させるためのテーブル移動機構を駆動するモータである。本実施例では、テーブル駆動用モータ8は、閉回路油圧システムであるテーブル移動機構を構成する双方向油圧ポンプを回転させるためのサーボモータである。
【0021】
制御装置9は、平面研削盤100の動きを制御する装置であり、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータである。
【0022】
具体的には、制御装置9は、テーブル駆動用モータ8を制御してX軸テーブル2上のワークWを所定位置に移動させる。また、制御装置9は、砥石ヘッド上下送り用モータ6及び砥石ヘッド左右送り用モータ7を制御して横軸砥石ヘッド4を所定位置に移動させる。
【0023】
その後、制御装置9は、砥石ヘッド回転用モータ5を制御して横軸砥石ヘッド4の回転を開始させ、且つ、テーブル駆動用モータ8を制御してX軸テーブル2を+X方向に移動させ、砥石車41をワークWに接触させて1回目の研削加工を開始する。
【0024】
テーブル駆動用モータ8によりX軸テーブル2を+X方向の所定位置まで移動させると、すなわち砥石車41によるワークWに対する1回目の研削加工が終了すると、制御装置9は、X軸テーブル2を−X方向に移動させて元の位置に戻す。その際、制御装置9は、砥石ヘッド上下送り用モータ6により横軸砥石ヘッド4を上昇させてもよい。X軸テーブル2を元に戻すときに横軸砥石ヘッド4がワークWと接触しないようにするためである。このとき、制御装置9は、砥石ヘッド回転用モータ5を一旦停止させてもよい。
【0025】
その後、制御装置9は、砥石ヘッド回転用モータ5により横軸砥石ヘッド4を回転させ、砥石ヘッド上下送り用モータ6により横軸砥石ヘッド4を下降させる。そして、制御装置9は、テーブル駆動用モータ8を制御してX軸テーブル2を+X方向に移動させ、砥石車41をワークWに接触させて2回目の研削加工を開始する。
【0026】
上述の動きを繰り返すことによって、制御装置9は、ワークWの研削を実行する。なお、制御装置9は、X軸テーブルを−X方向に移動させる際に砥石車41をワークWに接触させて研削加工を行ってもよい。
【0027】
次に、
図3〜
図5を参照しながら、テーブル移動機構20について説明する。なお、
図3は、
図1及び
図2のそれぞれにおける一点鎖線を含む鉛直面を矢印IIIで示す方向から見た正断面図であり、
図4は、
図2及び
図3のそれぞれにおける二点鎖線を含む鉛直面を矢印IVで示す方向から見た側断面図である。
図5は、テーブル移動機構20の構成例を示す概略図である。なお、
図5では、明瞭化のため、本体ベッド1の図示を省略している。
【0028】
図5に示すように、テーブル移動機構20は、X軸テーブル2をX軸方向に往復移動させる機構であり、主に、シリンダ21、ピストン22、第1軸23F、第2軸23B、及び双方向油圧ポンプ24を含む閉回路油圧システムで構成される。
【0029】
シリンダ21は、X軸テーブル2の下面に固定され、X軸テーブル2と共に本体ベッド1上をX軸方向に移動する。また、シリンダ21は、内部に圧力室21S(
図4参照。)を備え、ピストン22が圧力室21Sの内壁に対して相対的にスライドできるようにピストン22を圧力室21S内に受け入れる。なお、圧力室21Sは、
図4に示すように、ピストン22によって、第1圧力室21SFと第2圧力室21SBに分離される。
【0030】
第1軸23Fは、一端がピストン22の+X側の面に固定され、他端が外部の静止物23Faに固定される円筒部材である。同様に、第2軸23Bは、一端がピストン22の−X側の面に固定され、他端が外部の静止物23Baに固定される円筒部材である。なお、静止物23Fa、23Baは、X軸テーブル2を移動させる場合にシリンダ21、第1軸23F、及び第2軸23Bを静止したまま保持できる物体であればよく、例えば、本体ベッド1であってもよい。
【0031】
ピストン22は、シリンダ21の圧力室21S内で、圧力室21Sの内壁に対して相対移動できるように圧力室21S内に収容される円板部材である。また、ピストン22は、+X側の面が第1軸23Fに接続され、−X側の面が第1軸23Fに接続される。
【0032】
このような構成により、シリンダ21は、X軸テーブル2と共に、本体ベッド1に対して往復移動可能であるのに対し、第1軸23F、第2軸23B、及びピストン22は、本体ベッド1に対して静止するように配置される。
【0033】
X軸テーブル2は、
図3に示すように、その下面から−Z方向に突出する2つのV字型のガイドレール2BL、2BRを備える。また、X軸テーブル2は、静圧軸受機構、動圧軸受機構、若しくはそれらの組み合わせ又はその他の軸受機構を用い、本体ベッド1上をX軸方向に往復移動できるように、本体ベッド1によって支持される。なお、ガイドレール形状は必ずしもV字型である必要はない。
【0034】
また、X軸テーブル2のX軸方向の往復移動は、テーブル駆動用モータ8によって駆動される双方向油圧ポンプ24によって制御される。具体的には、
図4及び
図5に示すように、X軸テーブル2を矢印ARで示す方向(−X方向)に移動させる場合、双方向油圧ポンプ24の第2ポート24Bが吐出する作動油は、点線で示すように、第2軸23Bを通ってシリンダ21の第2圧力室21SBに流入する。一方で、シリンダ21の第1圧力室21SF内の作動油は、第1軸23Fを通って双方向油圧ポンプ24の第1ポート24Fに至る。その結果、第2圧力室21SBの体積が増大し、第1圧力室21SFの体積が減少して、X軸テーブル2は、−X方向に移動させられる。
【0035】
図示は省略するが、X軸テーブル2を+X方向に移動させる場合には、双方向油圧ポンプ24の第1ポート24Fが吐出する作動油は、第1軸23Fを通ってシリンダ21の第1圧力室21SFに流入する。一方で、シリンダ21の第2圧力室21SB内の作動油は、第2軸23Bを通って双方向油圧ポンプ24の第2ポート24Bに至る。その結果、第1圧力室21SFの体積が増大し、第2圧力室21SBの体積が減少して、X軸テーブル2は、+X方向に移動させられる。
【0036】
双方向油圧ポンプ24は、
図5に示すように、テーブル駆動用モータ8によって回転駆動され、テーブル駆動用モータ8の回転方向及び回転数に応じた流量の作動油を第1ポート24F又は第2ポート24Bから吐出する。
【0037】
テーブル駆動用モータ8は、モータドライバ8Aが供給する電流に応じて駆動される。モータドライバ8Aは、制御装置9の主制御器9Aからのモータ回転数指令又はトルク指令と副制御器としての推力補償器9Bからのモータ回転数指令又はトルク指令とに応じてテーブル駆動用モータ8に電流を供給する。例えば、モータドライバ8Aは、主制御器9Aからのモータ回転数指令と推力補償器9Bからのモータ回転数指令とに応じてテーブル駆動用モータ8に電流を供給してもよく、主制御器9Aからのトルク指令と推力補償器9Bからのトルク指令とに応じてテーブル駆動用モータ8に電流を供給してもよい。或いは、モータドライバ8Aは、主制御器9Aからのモータ回転数指令と推力補償器9Bからのトルク指令とに応じてテーブル駆動用モータ8に電流を供給してもよく、主制御器9Aからのトルク指令と推力補償器9Bからのモータ回転数指令とに応じてテーブル駆動用モータ8に電流を供給してもよい。
【0038】
主制御器9Aは、X軸テーブル2を移動させるための力をシリンダ21が得るようにモータドライバ8Aに対してモータ回転数指令又はトルク指令を出力する。具体的には、主制御器9Aは、例えば、X軸テーブル2の慣性力と同じ大きさを持つ所望の移動方向を向く力をシリンダ21が得るようにモータドライバ8Aに対してモータ回転数指令又はトルク指令を出力する。なお、X軸テーブル2の慣性力と同じ大きさを持つ所望の移動方向を向く力は、X軸テーブル2(ワークWを含む。)の質量にX軸テーブル2の加速度を乗算して得られる力である。
【0039】
また、主制御器9Aは、双方向油圧ポンプ24の回転数を制御する。例えば、主制御器9Aは、制御装置9からの各種指令値と各種センサからの各種センサ出力とに基づいてモータ回転数指令又はトルク指令を生成する。具体的には、各種指令値は、操作者の入力等に応じて制御装置9が生成する指令値であり、テーブル位置指令、テーブル速度指令、テーブル加速度指令、テーブル駆動用モータ回転数指令(モータ速度指令)等の値を含む。また、各種センサ出力は、変位センサ30、第1シリンダ圧センサ31F、第2シリンダ圧センサ31B、回転数センサ32等の出力を含む。
【0040】
変位センサ30は、X軸テーブル2の変位を検出する変位センサであり、例えば、X軸テーブル2の所定の基準位置に対する直線変位を検出し、検出結果を制御装置9に対して出力する。本実施例では、変位センサ30として例えばリニアスケールが用いられる。
【0041】
第1シリンダ圧センサ31Fは、シリンダ21における第1圧力室21SFの圧力を検出するセンサであり、例えば、第1軸23Fと双方向油圧ポンプ24の第1ポート24Fとを接続する管路内の作動油の圧力を検出し、検出結果を制御装置9に対して出力する。
【0042】
同様に、第2シリンダ圧センサ31Bは、シリンダ21における第2圧力室21SBの圧力を検出するセンサであり、例えば、第2軸23Bと双方向油圧ポンプ24の第2ポート24Bとを接続する管路内の作動油の圧力を検出し、検出結果を制御装置9に対して出力する。
【0043】
なお、第1シリンダ圧センサ31F、第2シリンダ圧センサ31Bは、第1圧力室21SF、第2圧力室21SBに取り付けられてもよく、第1軸23F、第2軸23Bに取り付けられてもよい。
【0044】
回転数センサ32は、テーブル駆動用モータ8の回転を検出するセンサであり、例えば、テーブル駆動用モータ8の回転方向及び回転角度を検出し、検出結果を制御装置9に対して出力する。本実施例では、回転角センサ32として例えばレゾルバが用いられる。
【0045】
推力補償器9Bは、X軸テーブル2を移動させるための推力のうち、X軸テーブル2の移動を妨げる力によって相殺される力を補償する機能要素である。
【0046】
具体的には、推力補償器9Bは、X軸テーブル2の移動を妨げる力のうちX軸テーブル2の慣性力を除く力である移動抗力を打ち消すための力(以下、「予荷重力」とする。)をシリンダ21が得るようにモータドライバ8Aに対してモータ回転数指令又はトルク指令を出力する。より具体的には、推力補償器9Bは、例えば、X軸テーブル2の最大静止摩擦力の大きさを持つ、所望の移動方向を向く予荷重力をシリンダ21が得るようにモータドライバ8Aに対してモータ回転数指令又はトルク指令を出力する。なお、移動抗力は、例えば、摩擦力の他に、平面研削盤100による研削反力等を含む。
【0047】
また、推力補償器9Bは、制御装置9からの各種指令値と各種センサからの各種センサ出力とに基づいてモータ回転数指令又はトルク指令を生成する。具体的には、各種指令値は、操作者の入力等に応じて制御装置9が生成する指令値であり、少なくとも補償指令の値を含む。また、各種センサ出力は、変位センサ30、第1シリンダ圧センサ31F、第2シリンダ圧センサ31B、回転数センサ32、トルク検出器(図示せず。)等の出力を含む。
【0048】
補償指令の値は、補償値決定部としての制御装置9が決定する値であり、例えば、予荷重力を表す値である。
【0049】
具体的には、制御装置9は、移動抗力である摩擦力を計測するセンサを備える場合には、そのセンサの出力に基づいて補償指令の値を決定する。また、制御装置9は、X軸テーブル2の位置、速度、シリンダ21の圧力室間の差圧等と、摩擦力に対する補償指令の値とを関連付ける参照テーブルや関数を予め用意しておいてもよい。この場合、制御装置9は、テーブル速度指令、又は、各種センサ出力に基づいて取得するテーブル位置若しくはテーブル速度等から、参照テーブルや関数を用いて補償指令の値を決定する。その結果、制御装置9は、より早期に予荷重力を発生させることができ、X軸テーブル2の動き出しを滑らかにすることができる。
【0050】
また、制御装置9は、移動抗力である研削反力を計測するセンサを備える場合には、そのセンサの出力に基づいて補償指令の値を決定してもよい。また、制御装置9は、研削深さ、砥石軸40の回転速度等の研削条件と、研削反力に対する補償指令の値とを関連付ける参照テーブルや関数を予め用意しておいてもよい。この場合、制御装置9は、現在の研削条件から、参照テーブルや関数を用いて補償指令の値を決定する。その結果、制御装置9は、より早期に予荷重力を発生させることができ、X軸テーブル2の動き出しを滑らかにすることができる。
【0051】
図6は、補償指令の値と摩擦力との間の関係を示す図である。
図6は、横軸にX軸テーブル2の移動速度(テーブル速度)を配し、縦軸に摩擦力を配する。
【0052】
図6に示すように、X軸テーブル2の摩擦力は、テーブル速度が0の場合に最大静止摩擦力にあり、テーブル速度が所定速度V
TH以下の場合、テーブル速度が増加するにつれて減少し、テーブル速度が所定速度V
THを上回ると、テーブル速度が増加するにつれて増加する。
【0053】
制御装置9は、例えば、この摩擦力の推移に沿うように、テーブル速度の増加に応じて補償指令の値を変化させる。また、制御装置9は、テーブル速度の変化にかかわらず、最大静止摩擦力以下の一定値(例えば、最大静止摩擦力の90%)を補償指令の値として採用してもよい。
【0054】
また、制御装置9は、テーブル速度が所定速度V
THを上回る場合には、補償指令の値をゼロにしてもよい。テーブル速度が比較的低く、主制御器9Aによる制御が比較的安定しない場合に限り、推力補償器9Bによる追加的な制御を実行するためである。また、テーブル速度が比較的高く、主制御器9Aによる制御が安定する場合の制御内容を単純化するためである。
【0055】
図7は、平面研削盤100がX軸テーブル2を移動させる際の制御の流れを示す図である。
図7に示すように、主制御器9Aは、テーブル位置指令、テーブル速度指令、テーブル加速度指令、モータ速度指令の少なくとも1つを含む各種指令値を制御装置9から取得する。また、推力補償器9Bは、少なくとも補償指令を含む各種指令値を制御装置9から取得する。
【0056】
そして、主制御器9A及び推力補償器9Bは、必要に応じて各種センサ出力を取得する。主制御器9Aが取得する各種センサ出力は、変位センサ30が出力するテーブル位置信号、シリンダ圧センサ31F、31Bが出力するシリンダ圧信号、回転角センサ32が出力するモータ回転角度信号の少なくとも1つを含む。例えば、主制御器9Aは、テーブル位置指令に基づいてX軸テーブル2の移動を制御する場合には、変位センサ30が出力するテーブル位置信号を取得する。また、主制御器9Aは、モータ速度指令に基づいてX軸テーブル2の移動を制御する場合には、回転数センサ32が出力するモータ回転角度信号を取得する。また、推力補償器9Bは、例えば、予荷重力のフィードバック制御を行う場合には、第1シリンダ圧センサ31Fが出力する第1シリンダ圧信号、及び、第2シリンダ圧センサ31Bが出力する第2シリンダ圧信号を取得する。この場合、推力補償器9Bは、シリンダ21の圧力室間の差圧に基づいてテーブル移動機構20が現に発生させている推力を監視しながら、モータドライバ8Aに対して出力するモータ回転数指令又はトルク指令の値を決定する。なお、推力補償器9Bは、センサ出力を取得しない場合もある。
【0057】
その後、主制御器9A及び推力補償器9Bは、それぞれ、取得した各種指令値及び各種センサ出力に基づいてモータ回転数指令又はトルク指令を生成し、生成したモータ回転数指令又はトルク指令をモータドライバ8Aに対して出力する。
【0058】
その後、モータドライバ8Aは、主制御器9A及び推力補償器9Bからのモータ回転数指令又はトルク指令に応じてテーブル駆動用モータ8に対して電流を供給する。
【0059】
ここで、テーブル移動機構20を構成する閉回路油圧システムにおける、双方向油圧ポンプ24が吐出する作動油の流量QからX軸テーブル2のテーブル速度vまでの伝達関数v/Qについて説明する。
【0060】
X軸テーブル2の中心とピストン22の中心とが同じ鉛直線上にある場合、伝達関数v/Qは、以下の式(1)で表される。
【0061】
【数1】
ここで、sはラプラス演算子を表し、A
cylはピストン22の受圧面積を表し、V
cylは圧力室21Sの容積を表し、MはX軸テーブル2の質量を表し、BはX軸テーブル2の粘性摩擦係数を表し、K
oilは作動油の体積弾性係数を表す。
【0062】
流量Qは、テーブル駆動用モータ8のモータ回転数ω
mに比例するので、単位回転数当たりの押し退け容積をW
Pとおけば、モータ回転数ω
mからテーブル速度vまでの伝達関数は、以下の式(2)で表される。
【0063】
【数2】
ここで、ω
n、ζ
nは、それぞれ、X軸テーブル2の固有振動数、減衰係数であり、以下の式(3)、(4)で表される。
【0065】
【数4】
また、K
HSTは、閉回路油圧システムによるゲインであり、以下の式(5)で表される。
【0066】
【数5】
なお、固有振動数ω
nは、ζ
n=0の場合に、X軸テーブル2の加減速時に生じるX軸テーブル2の固有振動数を意味する。また、減衰係数ζ
nは、X軸テーブル2の振動の減衰性を表す係数であり、ζ
n<1の場合にあっては、値が1に近いほど振動が短時間で減衰することを表す。
【0067】
また、X軸テーブル2の速度及び加速度のフィードバックを行う場合、速度指令v
dirからテーブル速度vまでの伝達関数は、上述の式(2)に基づき、以下の式(6)で表される。
【0068】
【数6】
ここで、ω
c、ζ
cは、それぞれ、X軸テーブル2の速度及び加速度のフィードバックが行われる場合のX軸テーブル2の制御固有振動数、制御減衰係数であり、以下の式(7)、(8)で表される。
【0070】
【数8】
なお、K
v、K
aは、それぞれ、速度フィードバックゲイン、加速度フィードバックゲインであり、以下の式(9)、(10)で表される。
【0072】
【数10】
上述の関係は、所望の制御減衰係数ζ
cの値に応じて加速度フィードバックゲインK
aを決定できること、すなわち、加速度フィードバックゲインK
aを調節することによって所望の制御減衰係数ζ
cの値を実現できることを意味する。なお、制御減衰係数ζ
cの値は、例えば、0.7(=1/√2)〜1.0の間の値が選択されることが望ましい。
【0073】
次に、
図8を参照しながら、主制御器9Aの構成例について説明する。
【0074】
図8の構成例では、主制御器9Aは、テーブル位置指令及びテーブル速度指令とテーブル位置信号とを取得し、モータドライバ8Aに対してモータ回転数指令又はトルク指令を出力する。
【0075】
具体的には、主制御器9Aは、先ず、比例制御則により、制御装置9からのテーブル位置指令が表す値から、変位センサ30からのテーブル位置信号が表す値PLを減算し、所定のゲインK
pを乗算して第1制御値V1を導き出す。なお、主制御器9Aは、比例制御則の代わりに比例積分制御則を用いてもよい。具体的には、主制御器9Aは、テーブル位置指令が表す値から値PLを減算した値と、その減算した値の積分値を所定の時定数で除算した値とを加算した上で、所定のゲインKpを乗算して第1制御値V1を導き出してもよい。
【0076】
その後、主制御器9Aは、制御装置9からのテーブル速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
vffを乗算した速度フィードフォワード値VFFと第1制御値V1とを加算する。そして、主制御器9Aは、加算後の値(V1+VFF)から、テーブル位置信号を疑似微分して得られるテーブル速度信号が表す値に速度フィードバックゲインK
vを乗算した速度フィードバック値VFBを減算して、第2制御値V2を導き出す。
【0077】
さらにその後、主制御器9Aは、第2制御値V2から、テーブル速度信号を疑似微分して得られる、すなわち、テーブル位置信号を二階疑似微分して得られるテーブル加速度信号が表す値に加速度フィードバックゲインK
aを乗算した加速度フィードバック値AFBを減算して、モータ回転数指令又はトルク指令を導き出す。
【0078】
なお、主制御器9Aは、制御装置9からのテーブル加速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
affを乗算した加速度フィードフォワード値AFF(図示せず。)と第2制御値V2とを加算した上で加速度フィードバック値AFBを減算してモータ回転数指令又はトルク指令を導き出してもよい。また、主制御器9Aは、速度フィードバック値VFBの算出、及び、第一制御値V1と速度フィードフォワード値VFFの合計値からの速度フィードバック値VFBの減算を省略してもよい。
【0079】
このように、
図8に示す主制御器9Aは、式(6)で表される伝達関数を有する制御モデルの下で、加速度フィードバックゲインK
aを調節することによって、所望の制御減衰係数ζ
cを実現することができる。その結果、
図8に示す主制御器9Aを備える平面研削盤100は、X軸テーブル2の加速又は減速の際に生じるX軸テーブル2の振動を早期に減衰させることができる。
【0080】
次に、
図9を参照しながら、主制御器9Aの別の構成例について説明する。
【0081】
図9の構成例では、主制御器9Aは、テーブル位置信号の代わりに、第1シリンダ圧センサ31F及び第2シリンダ圧センサ31Bから第1シリンダ圧信号及び第2シリンダ圧信号を取得する点で、
図8の場合と相違する。すなわち、圧力室間の差圧から導き出されるテーブル加速度信号をフィードバックする点で、テーブル位置信号を二階微分して得られるテーブル加速度信号をフィードバックする
図8の制御と相違する。
【0082】
また、主制御器9Aは、テーブル位置指令に基づいて第1制御値V1を導き出すことなく、速度フィードフォワード値VFFに基づいてモータ回転数指令又はトルク指令を導き出す点で
図8の制御と相違する。
【0083】
具体的には、主制御器9Aは、先ず、制御装置9からのテーブル速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
vffを乗算した速度フィードフォワード値VFFから加速度フィードバック値AFBを減算して、モータ回転数指令又はトルク指令を導き出す。
【0084】
なお、
図9に示す制御では、主制御器9Aは、第1シリンダ圧信号と第2シリンダ圧信号とに基づいて加速度フィードバック値AFBを導き出す。
【0085】
具体的には、主制御器9Aは、第1シリンダ圧信号と第2シリンダ圧信号との差を導き出し、導き出した値にローパスフィルタ及びハイパスフィルタを適用する。ローパスフィルタは、その差に含まれるノイズを除去するための機能要素であり、ハイパスフィルタは、その差に含まれる摩擦力の影響を除去するための機能要素である。なお、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを適用した後の信号は、例えば、X軸テーブル2の固有振動数の3分の1〜5倍程度の周波数を有する。
【0086】
その後、主制御器9Aは、差圧信号にA
cyl/Mを乗算してテーブル加速度信号を得る。すなわち、主制御器9Aは、運動方程式に基づいて、差圧信号が表す値にピストン22の受圧面積A
cylを乗算して双方向油圧ポンプ24による駆動力を導き出し、その駆動力をX軸テーブル2の質量Mで除算してX軸テーブル2の加速度を導き出す。なお、式(9)による速度フィードバックゲインの決定、式(10)による加速度フィードバックゲインの決定、並びに、差圧信号からのX軸テーブル2の加速度の導出の際に用いる質量Mは、ワークWの質量に応じて変化する場合がある。この場合、実際の質量ではなく、ノミナルの質量を質量Mの値として用いてもよい。ノミナルの質量には、X軸テーブル2に搭載可能なワークWの最大質量を用いることが望ましい。
【0087】
さらにその後、主制御器9Aは、テーブル加速度信号が表す値に加速度フィードバックゲインK
aを乗算して加速度フィードバック値AFBを導き出す。
【0088】
なお、
図9に示す制御においても、主制御器9Aは、制御装置9からのテーブル加速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
affを乗算した加速度フィードフォワード値AFF(図示せず。)と速度フィードフォワード値VFFとを加算した上で加速度フィードバック値AFBを減算してモータ回転数指令又はトルク指令を導き出してもよい。
【0089】
また、
図9に示す主制御器9Aは、第1シリンダ圧センサ31F及び第2シリンダ圧センサ31Bのそれぞれからシリンダ圧信号を取得する代わりに、第1圧力室21SFと第2圧力室21SBとの間の差圧を検出する差圧センサ(図示せず。)から差圧信号を取得してもよい。
【0090】
このように、
図9に示す主制御器9Aは、
図8に示す場合と同様、式(6)で表される伝達関数を有する制御モデルの下で、加速度フィードバックゲインK
aを調節することによって、所望の制御減衰係数ζ
cを実現することができる。その結果、
図9に示す主制御器9Aを備える平面研削盤100は、X軸テーブル2の加速又は減速の際に生じるX軸テーブル2の振動を早期に減衰させることができる。
【0091】
次に、
図10を参照しながら、主制御器9Aのさらに別の構成例について説明する。
【0092】
図10の構成例では、主制御器9Aは、テーブル位置信号の代わりに、タコジェネレータ等のテーブル速度センサ(図示せず。)からテーブル速度信号を取得する点で、
図8の場合と相違する。すなわち、テーブル速度信号を一階微分して得られるテーブル加速度信号をフィードバックする点で、テーブル位置信号を二階微分して得られるテーブル加速度信号をフィードバックする
図8の制御と相違する。
【0093】
また、主制御器9Aは、テーブル位置指令に基づいて第1制御値V1を導き出すことなく、速度フィードフォワード値VFFに基づいてモータ回転数指令又はトルク指令を導き出す点で
図8の制御と相違する。
【0094】
具体的には、主制御器9Aは、先ず、制御装置9からのテーブル速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
vffを乗算した速度フィードフォワード値VFFを導き出す。
【0095】
その後、主制御器9Aは、速度フィードフォワード値VFFから、テーブル速度信号が表す値に速度フィードバックゲインK
vを乗算した速度フィードバック値VFBを減算して、第2制御値V2を導き出す。
【0096】
さらにその後、主制御器9Aは、第2制御値V2から、テーブル速度信号を一階疑似微分して得られるテーブル加速度信号が表す値に加速度フィードバックゲインK
aを乗算した加速度フィードバック値AFBを減算して、モータ回転数指令又はトルク指令を導き出す。
【0097】
なお、
図10に示す制御においても、主制御器9Aは、制御装置9からのテーブル加速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
affを乗算した値AFF(図示せず。)と第2制御値V2とを加算した上で加速度フィードバック値AFBを減算してモータ回転数指令又はトルク指令を導き出してもよい。また、主制御器9Aは、速度フィードバック値VFBの算出、及び、速度フィードフォワード値VFFからの速度フィードバック値VFBの減算を省略してもよい。
【0098】
このように、
図10に示す主制御器9Aは、
図8に示す場合と同様、式(6)で表される伝達関数を有する制御モデルの下で、加速度フィードバックゲインK
aを調節することによって、所望の制御減衰係数ζ
cを実現することができる。その結果、
図10に示す主制御器9Aを備える平面研削盤100は、X軸テーブル2の加速又は減速の際に生じるX軸テーブル2の振動を早期に減衰させることができる。
【0099】
次に、
図11を参照しながら、主制御器9Aのさらに別の構成例について説明する。
【0100】
図11の構成例では、主制御器9Aは、テーブル位置信号の代わりに、テーブル加速度センサ(図示せず。)からテーブル加速度信号を取得する点で、
図8の場合と相違する。すなわち、テーブル加速度センサから直接的に得られるテーブル加速度信号をフィードバックする点で、テーブル位置信号を二階微分して得られるテーブル加速度信号をフィードバックする
図8の制御と相違する。
【0101】
また、主制御器9Aは、テーブル位置指令に基づいて第1制御値V1を導き出すことなく、速度フィードフォワード値VFFに基づいてモータ回転数指令又はトルク指令を導き出す点で
図8の制御と相違する。
【0102】
具体的には、主制御器9Aは、先ず、制御装置9からのテーブル速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
vffを乗算した速度フィードフォワード値VFFを導き出す。
【0103】
その後、主制御器9Aは、速度フィードフォワード値VFFから加速度フィードバック値AFBを減算して、モータ回転数指令又はトルク指令を導き出す。
【0104】
なお、
図11に示す制御においても、主制御器9Aは、制御装置9からのテーブル加速度指令が表す値に速度フィードフォーワードゲインK
affを乗算した加速度フィードフォワード値AFF(図示せず。)と速度フィードフォワード値VFFとを加算した上で加速度フィードバック値AFBを減算してモータ回転数指令又はトルク指令を導き出してもよい。
【0105】
このように、
図11に示す主制御器9Aは、
図8に示す場合と同様、式(6)で表される伝達関数を有する制御モデルの下で、加速度フィードバックゲインK
aを調節することによって、所望の制御減衰係数ζ
cを実現することができる。その結果、
図11の主制御器9Aを備える平面研削盤100は、X軸テーブル2の加速又は減速の際に生じるX軸テーブル2の振動を早期に減衰させることができる。
【0106】
なお、
図8において、主制御器9Aは、テーブル位置指令及びテーブル速度指令の何れか一方の取得を省略してもよい。また、主制御器9Aは、テーブル位置、テーブル速度、及びテーブル加速度の一部又は全部に基づくフィードバック制御を省略してもよく、テーブル位置、テーブル速度、及びテーブル加速度の一部又は全部に基づくフィードフォワード制御を省略してもよい。
【0107】
また、
図9〜
図11に示す主制御器9Aは、実際のテーブル位置の値とテーブル位置指令が表す値との差を打ち消すように、或いは、実際のテーブル速度の値とテーブル速度指令が表す値との差を打ち消すように、モータ回転数指令又はトルク指令を導出してもよい。例えば、
図9〜
図11に示す主制御器9Aは、
図8の場合と同様に、テーブル位置指令が表す値とテーブル位置信号が表す値PLとに基づいて算出する第1制御信号V1を速度フィードフォワード値VFFに加算するようにしてもよい。
【0108】
次に、
図12を参照しながら、主制御器9Aによって制御されるX軸テーブル2の振動減衰特性について説明する。なお、
図12は、X軸テーブル2のテーブル位置、テーブル速度、及びテーブル加速度の時間推移を示す図であり、
図12(A)が加速度フィードバック値AFBを用いない場合の推移を示し、
図12(B)が加速度フィードバック値AFBを用いた場合の推移を示す。また、テーブル位置の時間推移は、
図12(A)及び
図12(B)で共通する。
【0109】
また、
図12中のハッチング領域は、テーブル加速度の値が所定値未満となりテーブル速度が整定してから再びテーブル加速度の値が所定値以上となりテーブル速度が変動するまでの時間を表す。反対に、
図12中の非ハッチング領域(白領域)は、テーブル加速度の値が所定値以上となりテーブル速度の変動が開始してからテーブル加速度の値が所定値未満となりテーブル速度が整定するまでの時間を表す。以下では、ハッチング領域をテーブル速度安定期と称し、非ハッチング領域(白領域)をテーブル速度変動期と称する。
【0110】
図12に示すように、加速度フィードバック値AFBを用いた場合のテーブル速度変動期(
図12(B)の白領域)は、加速度フィードバック値AFBを用いない場合のテーブル速度変動期(
図12(A)の白領域)に比べて短い。また、加速度フィードバック値AFBを用いた場合のテーブル速度安定期(
図12(B)のハッチング領域)は、加速度フィードバック値AFBを用いない場合のテーブル速度安定期(
図12(A)のハッチング領域)に比べて長い。これは、X軸テーブル2の1回のストロークのうち、ワークWの研削に利用できる部分が長くなることを意味する。また、X軸テーブル2に載せられるワークWのX軸方向の許容最大長さをより大きくできることを意味する。すなわち、研削効率、エネルギ効率、及び適用性の何れもが改善されることを意味する。
【0111】
以上の構成により、主制御器9Aを備えた平面研削盤100は、X軸テーブル2の加減速に伴って引き起こされるX軸テーブル2の振動を早期に減衰させ、研削効率、エネルギ効率、及び適用性を向上させることができる。
【0112】
また、主制御器9Aを備えた平面研削盤100の操作者は、加速度フィードバックゲインK
aを適切に調節することによって、X軸テーブル2のテーブル速度の整定時間を短縮することができる。
【0113】
また、操作者は、制御減衰係数ζ
cの値を1に近づけるように加速度フィードバックゲインK
aを調節することによって、X軸テーブル2のテーブル速度が速度指令の値をオーバーシュートするのを低減或いは防止することができる。
【0114】
次に、
図13を参照しながら、推力補償器9Bの構成例について説明する。
【0115】
図13の構成例では、推力補償器9Bは、制御装置9から補償指令を取得し、モータドライバ8Aに対してモータ回転数指令又はトルク指令を出力する。
【0116】
具体的には、推力補償器9Bは、制御装置9からの補償指令が表す値F
0に、W
P/A
cylを乗算してトルク指令の値を得る。なお、W
Pは、双方向油圧ポンプ24の単位回転当たりの押し退け容積であり、A
cylは、ピストン22の受圧面積である。そのため、F
0/A
cylは、シリンダ21の圧力室間の差圧DP
0を表し、DP
0×W
Pは双方向油圧ポンプ24によるトルクを表す。
【0117】
このように、推力補償器9Bは、予荷重力を発生させるために必要な差圧DP
0を決定した上で、その差圧DP
0を発生させるために必要なトルクの値を導き出し、導き出した値をトルク指令の値としてモータドライバ8Aに出力する。
【0118】
次に、
図14を参照しながら、推力補償器9Bの別の構成例について説明する。
【0119】
図14の構成例では、推力補償器9Bは、制御装置9からテーブル加速度指令を取得し、且つ、第1シリンダ圧センサ31F及び第2シリンダ圧センサ31Bから第1シリンダ圧信号及び第2シリンダ圧信号を取得する点で、
図13の場合と相違する。
【0120】
具体的には、推力補償器9Bは、テーブル加速度指令の値にX軸テーブル2の質量Mを乗算してX軸テーブル2の慣性力を導き出す。
【0121】
また、推力補償器9Bは、第1シリンダ圧信号と第2シリンダ圧信号との差にピストン22の受圧面積A
cylを乗算して双方向油圧ポンプ24による推力を導き出す。
【0122】
その後、推力補償器9Bは、補償指令の値が表す予荷重力とX軸テーブル2の慣性力とを加算する。なお、予荷重力は、X軸テーブル2を加速させる場合には、X軸テーブル2の慣性力と同じ符号を有するものとして加算される。すなわち、慣性力が正値の場合に予荷重力が正値となり、慣性力が負値の場合に予荷重力が負値となるようにして加算される。一方、予荷重力は、X軸テーブル2を減速させる場合には、X軸テーブル2の慣性力とは逆の符号を有するものとして加算される。すなわち、慣性力が負値の場合に予荷重力が正値となり、慣性力が正値の場合に予荷重力が負値となるようにして加算される。このようにして算出される値は、X軸テーブル2の移動を妨げる力を意味する。予荷重力は、X軸テーブル2の移動を妨げる力からX軸テーブル2の慣性力を除いた力である移動抗力と同じ大きさの逆向きの力だからである。このようにして、推力補償器9Bは、移動抗力の影響を排除することができ、主制御器9Aは、X軸テーブル2が各種指令値にしたがって加減速するよう、双方向油圧ポンプ24を制御することができる。
【0123】
その後、推力補償器9Bは、上述のようにして算出したX軸テーブル2の移動を妨げる力から、双方向油圧ポンプ24による推力を減算して、制御値V3を導き出す。
【0124】
その後、推力補償器9Bは、制御値V3に所定の補償ゲインK
compを乗算し、移動抗力によって相殺される推力を補償するためのモータ回転数指令又トルク指令を導き出す。
【0125】
例えば、操作者がX軸テーブル2の移動指令を未だ入力しておらず、テーブル加速度指令の値がゼロの場合、推力補償器9Bは、次にX軸テーブル2を移動させようとする方向を予荷重力の正方向とし、この予荷重力から双方向油圧ポンプ24による推力を減算して、制御値V3を導き出す。なお、次にX軸テーブル2を移動させようとする方向が未定の場合には、前回X軸テーブル2を移動させた方向を予荷重力の正方向としてもよい。X軸に垂直な面を研削加工する際には、所望の研削深さを実現すべく、1回当たりの所定の研削深さによる研削加工を複数回繰り返すために、X軸テーブル2が所定の研削深さに応じて一方向に断続的に移動させられる場合があるためである。
【0126】
その上で、推力補償器9Bは、制御値V3に所定の補償ゲインK
compを乗算し、移動抗力によって相殺される推力を補償するためのモータ回転数指令又トルク指令を導き出す。すなわち、双方向油圧ポンプ24による推力が予荷重力となるようにする。
【0127】
このように、推力補償器9Bは、シリンダ21の圧力室間の差圧が所望の予荷重力を発生させるために必要な差圧となるようにモータ回転数指令又はトルク指令の値を決定し、決定した値をモータドライバ8Aに対して出力する。すなわち、推力補償器9Bは、シリンダ21の圧力室間の差圧のフィードバック制御に基づいて決定したモータ回転数指令又はトルク指令の値をモータドライバ8Aに対して出力する。
【0128】
なお、推力補償器9Bは、制御装置9からテーブル加速度指令を取得する代わりに、変位センサ30が出力するテーブル位置信号を二階微分してテーブル加速度信号を取得してもよい。また、タコジェネレータ等のテーブル速度センサ(図示せず。)が出力するテーブル速度信号を一階微分してテーブル加速度信号を取得してもよく、加速度センサ(図示せず。)からテーブル加速度信号を直接取得してもよい。
【0129】
また、推力補償器9Bは、補償ゲインK
compを乗算する乗算器の代わりに、PI制御器を用いてもよい。
【0130】
また、上述の実施例では、モータドライバ8Aは、主制御器9Aと推力補償器9Bとがそれぞれ別々に出力するモータ回転数指令又トルク指令を受ける。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、モータドライバ8Aは、
図15に示すように、主制御器9Aが出力するモータ回転数指令の値と推力補償器9Bが出力するモータ回転数指令の値との合計値を受けるようにしてもよい。或いは、モータドライバ8Aは、
図15に示すように、主制御器9Aが出力するトルク指令の値と推力補償器9Bが出力するトルク指令の値との合計値を受けるようにしてもよい。
【0131】
次に、
図16を参照しながら、推力補償器9Bによる効果について説明する。なお、
図16は、双方向油圧ポンプ24による推力の時間推移、及び、X軸テーブル2のテーブル速度の時間推移を示す図である。具体的には、
図16(A1)は、推力補償器9Bを用いない場合の推力の時間推移を示し、
図16(B1)は、推力補償器9Bを用いない場合のテーブル速度の時間推移を示す。また、
図16(A2)は、推力補償器9Bを用いた場合の推力の時間推移を示し、
図16(B2)は、推力補償器9Bを用いた場合のテーブル速度の時間推移を示す。
【0132】
推力補償器9Bを用いない場合、
図16(A1)に示すように、双方向油圧ポンプ24による推力は、時刻t1において上昇を開始する。これは、例えば、操作者がX軸テーブル2の移動指令を制御装置9に対して入力し、主制御器9Aによるテーブル駆動用モータ8の制御が開始されたことによる。なお、X軸テーブル2のテーブル速度はゼロのまま推移する。推力が最大静止摩擦力以下のためである。
【0133】
その後、時刻t2において、推力が最大静止摩擦力を上回ると、X軸テーブル2は移動を開始する。X軸テーブル2のテーブル速度は上昇し、テーブル速度指令の値を超えてオーバーシュートする。時刻t1と時刻t2との間の時間が比較的長く、主制御器9Aによるモータ回転数指令又はトルク指令の値の増加率が過度に大きくなったためである。すなわち、主制御器9Aがモータ回転数指令又はトルク指令の値を増大させているにもかかわらずテーブル速度がゼロのままとなる時間が比較的長かったためである。なお、この傾向は、時刻t1と時刻t2との間の時間が長いほど顕著になる。
【0134】
その後、推力は急激に減少し、さらには逆方向に増大する。オーバーシュートを打ち消すために、主制御器9Aがモータ回転数指令又はトルク指令の値を急激に減少させるためである。その結果、テーブル速度は、テーブル速度指令の値を下回ってアンダーシュートする。
【0135】
その後、推力は急激に増大する。アンダーシュートを打ち消すために、主制御器9Aがモータ回転数指令又はトルク指令を急激に増大させるためである。
【0136】
テーブル速度は、このようなオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返しながら、時刻t3において、テーブル速度指令の値に収束する。なお、
図16(B1)は、図の明瞭化のため、オーバーシュートとアンダーシュートがそれぞれ1回ずつ発生した状態を示す。
【0137】
一方、推力補償器9Bを用いた場合、
図16(A2)に示すように、双方向油圧ポンプ24による推力は、時刻t0において、すなわち、操作者によるX軸テーブル2の移動指令が制御装置9に入力される前に、上昇を開始する。そして、双方向油圧ポンプ24による推力は補償指令の値まで上昇する。推力補償器9Bによる予荷重力を発生させるためのテーブル駆動用モータ8の制御が開始されたことによる。なお、補償指令の値は最大静止摩擦力以下となるように決定される。最大静止摩擦力よりも大きいと、操作者による移動指令が制御装置9に入力される前にX軸テーブル2が移動してしまうためである。そのため、X軸テーブル2のテーブル速度はゼロのまま推移するが、X軸テーブル2は、僅かな推力を加えることによって移動可能な状態となる。
【0138】
なお、推力補償器9Bは、X軸テーブル2の現在位置や、研削に関する各種情報等に基づいてその後のX軸テーブル2の移動方向を推定する。これにより、推力補償器9Bは、操作者がX軸テーブル2の移動指令を制御装置9に対して入力する前に、推定した方向を向く予荷重力を発生させることができる。
【0139】
その後、双方向油圧ポンプ24による推力は、
図16(A1)の場合と同様、時刻t1において、上昇を開始する。操作者がX軸テーブル2の移動指令を制御装置9に入力したためである。
【0140】
その後、双方向油圧ポンプ24による推力は、時刻t2aにおいて最大静止摩擦力を上回り、X軸テーブル2は移動を開始する。X軸テーブル2のテーブル速度は、
図16(A1)の場合に比べて比較的緩やかに上昇し、オーバーシュート及びアンダーシュートを発生させることなく、時刻t3aにおいて、テーブル速度指令の値に収束する。
【0141】
図16(A1)における時刻t1と時刻t2との間の時間に比べ、時刻t1と時刻t2aとの間の時間が時間D1だけ短く、主制御器9Aによるモータ回転数指令又はトルク指令の値の増加率が過度に大きくならないためである。すなわち、主制御器9Aがモータ回転数指令又はトルク指令の値を増大させているにもかかわらずテーブル速度がゼロのままとなる時間が短いためである。
【0142】
その結果、推力補償器9Bを用いた場合、テーブル速度が整定するまでの時間は、推力補償器9Bを用いない場合に比べ、時間D2だけ短縮される。
【0143】
このように、推力補償器9Bは、テーブル速度の絶対値が所定速度V
TH未満であれば、移動抗力によって相殺される力を補償する。その結果、推力補償器9Bを備える平面研削盤100は、X軸テーブル2の移動を早期に且つ滑らかに開始させることができる。また、X軸テーブル2の移動を開始させた直後に生じるテーブル速度のオーバーシュート及びアンダーシュートを抑制或いは防止することができる。
【0144】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0145】
例えば、上述の実施例において、平面研削盤100は、横軸砥石ヘッド4を採用するが、立軸砥石ヘッドを採用してもよい。また、砥石ヘッドは、傾斜可能な軸を備えていてもよい。
【0146】
また、上述の実施例において、主制御器9A及び推力補償器9Bは、平面研削盤100のテーブル移動機構を構成する双方向油圧ポンプを駆動するテーブル駆動用モータ8を制御する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、主制御器9A及び推力補償器9Bは、建設機械、射出成形機、工作機械等に搭載される、重量物を移動させる閉回路油圧システムを構成する双方向油圧ポンプを駆動するモータを制御するものであってもよい。この場合、推力補償器9Bは、モータが発生させる力のうち、建設機械における掘削反力、工作機械における切削反力等によって相殺される力を補償する。
【0147】
また、上述の実施例では、閉回路油圧システムは、作動油の圧力(油圧)を用いる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。閉回路油圧システムは、例えば、油圧の代わりに水等の圧縮性の低い液体の圧力(液圧)を用いてもよい。
【0148】
また、上述の実施例では、主制御器9Aは、モータドライバ8A及びテーブル駆動用モータ8を介して双方向油圧ポンプ24の回転数を制御する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。主制御器9Aは、例えば、テーブル駆動用モータ8によって双方向油圧ポンプ24の回転数を制御する代わりに、内燃機関によって双方向油圧ポンプ24の回転数を制御してもよい。