特許第5801503号(P5801503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5801503
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】メーキャップ化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20151008BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20151008BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20151008BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20151008BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20151008BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20151008BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61K8/36
   A61K8/365
   A61K8/92
   A61Q1/04
   A61Q1/08
   A61Q1/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-9871(P2015-9871)
(22)【出願日】2015年1月21日
【審査請求日】2015年3月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 しほ花
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 有喜子
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−200612(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/108108(WO,A1)
【文献】 特開平10−330639(JP,A)
【文献】 特開2008−120687(JP,A)
【文献】 特開平06−287109(JP,A)
【文献】 米国特許第03086914(US,A)
【文献】 特開2004−175773(JP,A)
【文献】 特開平01−294611(JP,A)
【文献】 特開平03−236307(JP,A)
【文献】 特開平01−287011(JP,A)
【文献】 特開平03−086808(JP,A)
【文献】 特開平03−090013(JP,A)
【文献】 特開平07−082116(JP,A)
【文献】 特開2008−247844(JP,A)
【文献】 特開2000−169340(JP,A)
【文献】 関根茂他編,新化粧品ハンドブック,日光ケミカルズ株式会社他,2006年10月30日,176〜177頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/04− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)赤色218号、赤色223号及び橙色201号からなる群から選択される油溶性染料の1種又は2種以上、
(B)高級脂肪酸金属塩、及び
(C)油分を含み、
顔料の配合量が0.5質量%以下であり、
前記油溶性染料が前記油分中に溶解又は分散していることを特徴とするメーキャップ化粧料。
【請求項2】
前記(B)高級脂肪酸金属塩が、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、及びリシノール酸バリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の金属石鹸である、請求項1に記載のメーキャップ化粧料。
【請求項3】
前記(A)油溶性染料の配合量が化粧料全体に対して0.0001〜5質量%であり、前記(B)高級脂肪酸金属塩の配合量が化粧料全体に対して0.001〜30質量%である、請求項1又は2に記載のメーキャップ化粧料。
【請求項4】
口唇化粧料である、請求項1から3のいずれか一項に記載のメーキャップ化粧料。
【請求項5】
(A)赤色218号、赤色223号及び橙色201号からなる群から選択される油溶性染料の1種又は2種以上を0.0002〜10質量%、
(B)高級脂肪酸金属塩を0.002〜60質量%、及び
(C)油分を30〜99.9978質量%含み、
前記油溶性染料が前記油分中に溶解又は分散していることを特徴とする、メーキャップ化粧料用色材。
【請求項6】
請求項5に記載の色材を含むメーキャップ化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮やかな蛍光発色をするとともに透明感(クリア感)のあるメーキャップ化粧料に関する。さらに詳しくは、所定材料と油溶性染料と油分とを組み合わせた化粧用色材及びそれを含有するメーキャップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
唇を彩る口紅やグロス等の口唇化粧料、チーク(頬紅)あるいはアイシャドーといったメーキャップ化粧料は、その使用者の外観の印象を一変させる程の重要な化粧効果を発揮する化粧料であり、その色は製品を選択する上で鍵となる要素の一つである。近年、彩りが鮮やかで透明な(クリアな)印象のメーキャップ化粧料が求められており、例えば輝度の高い蛍光発色を呈する口紅等が注目されている。
【0003】
メーキャップ化粧料には一般に油性基材及び色材(着色剤)が配合されるが、口唇や肌に適用した際の発色を担うのは色材である。化粧料に配合される色材には、有機合成色素(タール色素とも呼ばれる)と無機顔料とが含まれ、有機合成色素は、染料と有機顔料とに分類され、有機顔料は更に顔料色素そのものと水溶性又は難溶性の染料を水不溶化したレーキに分類される(非特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、蛍光染料又は蛍光顔料で染色した少なくとも1層以上の樹脂層を有する薄片状粉末からなる蛍光ラメ剤をメーキャップ化粧料に配合することにより、蛍光染料又は蛍光顔料を化粧料に直接配合した場合に比較して、蛍光色の均一性や安定性が改善されることが開示されている。
しかし、外観色を決定するのは顔料であると考えられており(非特許文献1)、通常は1質量%以上の顔料が配合され、隠蔽力外観色を定めると共に隠蔽力が発揮されている。特許文献1に開示される化粧料も、顔料によって定められた外観色に蛍光発色する染料又は顔料を含む蛍光ラメ剤を配合することにより外観をアレンジした化粧料であると解され、本来蛍光発色する性質を有する染料又は顔料がラメ剤の原料として用いられている。
【0005】
特許文献2は、口紅化粧料の発色における油溶性染料に着目しているが、従来から用いられている油溶性染料の染着による唇の荒れや外観色の変色を生ずるという問題を解決するために、油溶性染料とともにパーフルオロポリエーテルを配合する技術が開示されているに過ぎず、油溶性染料による蛍光発色については何ら言及されていない。
【0006】
特許文献3には、単独で油分に溶解又は分散した場合には蛍光発色しない油溶性染料を所定分子量と所定粒径を持つポリアミド粉末と組み合わせて配合することにより蛍光発色を生じさせたメーキャップ化粧料(口紅を含む)が記載されている。しかし、油溶性染料とポリアミド粉末とを配合した化粧料は隠蔽力が強く透明感に欠けるものであった。
即ち、鮮やかな蛍光発色が可能で、なおかつ透明感(クリア感)を与えることのできるメーキャップ化粧料は今日まで得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−346025号公報
【特許文献2】特許第3409191号公報
【特許文献3】特許第5312738号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「新化粧品学(第2版)」、光井武夫編、南山堂、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、鮮やかな蛍光発色が可能で、なおかつ透明感(クリア感)を与えることのできる新規なメーキャップ化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、石鹸系の特定材料と特定の油溶性染料とを組み合わせて配合することにより、鮮やかな蛍光色を呈し、なおかつ透明感(クリア感)に優れたメーキャップ化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(A)赤色218号、赤色223号及び橙色201号からなる群から選択される油溶性染料の1種又は2種以上、(B)高級脂肪酸金属塩、及び(C)油分を含有し、顔料の配合量が0.5質量%以下であるメーキャップ化粧料を提供する。
さらに本発明は、前記メーキャップ化粧料に配合される化粧用色材も提供する。本発明の化粧用色材は、前記成分(A)、(B)及び(C)を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るメーキャップ化粧料は、特定の油溶性染料及び石鹸系の特定材料を組み合わせて配合することにより、本来は蛍光発色しない蛍光染料に基づいて鮮やかな蛍光発色を可能にしたものである。また、本発明に係るメーキャップ化粧料は、顔料の配合量を所定値以下に抑制することによって、鮮やかに蛍光発色するとともに優れた透明感(クリア感)を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
(1)メーキャップ化粧料
本発明のメーキャップ化粧料は、(A)油溶性染料、(B)高級脂肪酸金属塩、及び(C)油分を必須成分として含有する。
【0014】
(A)油溶性染料
本発明のメーキャップ化粧料に配合される油溶性染料(成分A)は、化粧料の分野において有機合成色素と呼ばれる色材の中で油溶性の染料から選択され、特に、フルオレセイン誘導体からなる油溶性染料、中でも、赤色218号(テトラクロロテトラブロモフルオレセイン)、赤色223号(テトラブロモフルオレセイン)、及び橙色201号(ジブロモフルオレセイン)から選択される1種又は2種以上である。
【0015】
メーキャップ化粧料における油溶性染料(成分A)の配合量は、好ましくは化粧料全体に対して0.0001〜5.0質量%、より好ましくは0.001%〜3.0質量%である。
【0016】
(B)高級脂肪酸金属塩
本発明のメーキャップ化粧料に配合される高級脂肪酸金属塩(成分B)は、炭素数6以上の高級脂肪酸の金属塩である。化粧料の分野で一般的に、高級脂肪酸とナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩を石鹸と呼び、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム等の2価又は3価の金属(非アルカリ金属)との塩を金属石鹸と呼んでいるが、本発明における高級脂肪酸金属塩は石鹸及び金属石鹸を包含するものを意味する。
【0017】
高級脂肪酸金属塩を形成する高級脂肪酸は、好ましくは炭素数6〜24程度の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の高級脂肪酸であり、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リシノール酸等を例示することができる。
当該高級脂肪酸と塩を形成する金属としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、2価又は3価の非アルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛等を挙げることができる。本発明においては、高級脂肪酸と非アルカリ金属との塩(金属石鹸)を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明で使用される石鹸の例には、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム等が含まれ、金属石鹸の具体例には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム等が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明における高級脂肪酸金属塩としては、前記高級脂肪酸金属塩からなるものを用いてもよく、あるいは、タルク、マイカ、セリサイト等の体質顔料の表面を高級脂肪酸金属塩で被覆した粉末を用いてもよい。
なお、高級脂肪酸金属塩が粉末の場合、その形状及び粒径は特に限定されるものではなく、化粧料に通常配合されているものを採用することができる。
【0020】
本発明のメーキャップ化粧料における高級脂肪酸金属塩(成分B)の配合量は、好ましくは化粧料全体に対して0.001〜30質量%、より好ましくは0.01〜10質量%とする。
【0021】
本発明のメーキャップ化粧料に配合される油分(成分C)は、メーキャップ化粧料に通常配合される油性成分から選択することができ。配合可能な油分として以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
固形油分としては、固体油脂、ロウ類、炭化水素、高級アルコールが挙げられる。例えば、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油等の固体油脂;カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ジョジョバロウ等のロウ類:ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素系ワックス類;ベヘニルアルコール、セタノール、バチルアルコール等の高級アルコール;シリコンワックス等が挙げられる。
【0023】
液状油分としては、オリーブ油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、胚芽油等の液体油脂類;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油;イソステアリン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2ヘプチルウンデシルパルミテート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2−ヘキシルデシル、イソプロピルミリステート、2−オクチルドデシルオレエート、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、グリセリルジイソステアレート、グリセリルトリイソステアレート、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等のエステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン油;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーン油;トリグリセリン、フッ素変性油等が挙げられる。
【0024】
本発明のメーキャップ化粧料には、上記必須成分(A)〜(C)に加えて、メーキャップ化粧料に通常配合される他の成分(以下「任意成分」ともいう)を、発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
任意成分には、メーキャップ化粧料の色材、油性基材を構成する成分及びその他の任意成分が含まれる。
【0025】
色材を構成する成分として、有機染料(ただし、成分Aの油溶性染料は除く)及び有機顔料(顔料色素及びレーキを含む)から選択される有機合成色素(タール色素)、天然色素、無機顔料(ベンガラ、黄酸化鉄、群青等の着色顔料、二酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料)が挙げられる。
ただし、本発明のメーキャップ化粧料において優れた透明感(クリア感)を演出するために、顔料(有機顔料及び無機顔料)の配合量は化粧料全体に対して0.5質量%以下とするのが好ましく、0.4質量%以下とするのが更に好ましい。
【0026】
油性基材を構成する成分として、油分増粘剤又はゲル化剤を挙げることができる。
油分増粘剤(ゲル化剤)としては、デキストリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機変性粘土鉱物等が例示できる。デキストリン脂肪酸エステルには、例えば、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン等が含まれる。グリセリン脂肪酸エステルには、例えば、ベヘン酸グリセリル、オクタステアリン酸グリセリル、エイコ酸グリセリル等が含まれる。
【0027】
他の任意成分には、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、多価アルコール、低級アルコール、無機粉末(シリカ粉末、体質顔料、真珠光沢顔料、フォトクロミック顔料等の機能性顔料を含む)、有機粉末、及び各種活性成分等が含まれる。
なお、本発明においては、成分Bの高級脂肪酸金属塩で表面被覆された体質顔料は成分Bに属し、体質顔料から除外されるものとする。
これらの任意成分の配合量は、メーキャップ化粧料の形態や機能等に応じて適宜調整される。
【0028】
本発明のメーキャップ化粧料は、高輝度の鮮やかな蛍光発色をしながら透明感(クリア感)に優れるという従来にない特異な効果を発揮する。よって、本発明のメーキャップ化粧料は、口紅、グロス等の口唇化粧料、チーク、アイシャドー等のポイントメーキャップ化粧料、特に油性メーキャップ化粧料とするのに特に適している。なお、発色を主目的としていないリップクリームや化粧下地、ファンデーションは本発明のメーキャップ化粧料には含まれない。
【0029】
本発明のメーキャップ化粧料は、従来のメーキャップ化粧料に汎用されている方法に従って製造することができる。即ち、前記必須成分(A)〜(C)及び任意成分を混合し、加熱しながらホモミキサー等を用いて攪拌混合し、型に流し込んで冷却することにより製造できる。好ましくは、必須成分である成分(A)〜(C)を予め加熱しながら攪拌混合して化粧用色材とし、それを他の成分とともに前記汎用方法に従ってメーキャップ化粧料を製造する。
【0030】
(2)化粧用色材
本発明は、上記のメーキャップ化粧料に配合するのに特に適した化粧用色材も提供する。本発明の化粧用色材は、油溶性染料(前記「成分A」)、高級脂肪酸金属塩(前記「成分B」)及び油分(前記「成分C」)を含む。
【0031】
本発明の化粧用色材における油溶性染料(成分A)の配合量は、色材全体に対して0.0002〜10質量%、とするのが好ましく、より好ましくは0.0005〜8質量%である。
【0032】
本発明の化粧用色材における高級脂肪酸金属塩(成分B)の配合量は、色材全体に対して0.002〜60質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.005〜50質量%である。
【0033】
本発明の化粧用色材を構成する油分は、本発明のメーキャップ化粧料に配合される油分(成分C)の一部又は全部であってよく、好ましくは、前記油溶性染料(成分A)を溶解又は分散できる油分から選択される。
【0034】
本発明の色材に好適な油分の具体例を挙げれば、パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、ジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタイン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(水素添加ロジン・イソステアリン酸)グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエリルヘキサン酸ペンタリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の化粧用色材における油分の配合量は、色材全体に対して30〜99.9978質量%とするのが好ましく、より好ましくは42〜99.9945質量%である。
また、必要に応じて、前記油分増粘剤(ゲル化剤)などを含有していてもよい。
本発明の化粧用色材は、それを配合して蛍光発色するメーキャップ化粧料において10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%を占めるようにするのが好ましい。
【0036】
本発明の色材は、例えば、油分(成分C)に油溶性染料(成分A)を溶解又は分散し、高級脂肪酸金属塩(成分B)を添加して、加熱しながら攪拌混合することにより製造することができる。加熱温度は、好ましくは80℃〜140℃、より好ましくは90℃〜130℃、さらに好ましくは100℃〜120℃の範囲とする。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0038】
(実施例及び比較例)
下記の表1及び表2に掲げた組成で口紅化粧料を調製した。
各例の口紅化粧料は以下の2通りの製法で調製した。
(製法1)表に掲げた配合成分を80〜140℃に加熱し、攪拌、混合、脱泡した後、口紅容器に充填し、5℃まで冷却した。
(製法2)表に掲げた成分のうち、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、メチルフェニルシリコーン、染料(赤色218号)及び高級脂肪酸金属塩(又は他の粉末)の各全量を用い、油分に染料を溶解し、高級脂肪酸金属塩又は他の粉末を添加して100〜120℃に加熱しながら攪拌混合して化粧用色材を調製した。その後、得られた化粧用色材と残り成分を80〜140℃に加熱しながら攪拌、混合、脱泡し、5℃まで冷却した。
【0039】
各例の口紅化粧料及び色材について10名の専門パネルに以下の基準に従って評価してもらった。
(1)蛍光発色
顕著な蛍光発色が見られる:4
蛍光発色が見られる:3
発色は見られるが蛍光発色ではない:2
発色が見られない:1
(2)透明感(クリア感)
顕著な透明感(クリア感)がある:4
透明感(クリア感)がある:3
透明感(クリア感)が僅かに感じられる:2
透明感(クリア感)が無い(隠蔽感が強い):1
【0040】
上記の基準に従う評価結果を次のようにランク付けし、各例の結果を表1及び表2に併せて示す。
A:評価点合計が35〜40
(蛍光発色については、合計点35〜37をA;合計点38〜40をAに分類した。)
B:評価点合計が25〜34
C:評価点合計が15〜24
D:評価点合計が10〜14
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
製法2に従って調製した化粧用色材について、高級脂肪酸金属塩を配合した実施例1〜6では鮮やかな蛍光発色するクリアな色材が得られたが(蛍光発色の評価:A)、特許文献3に記載されたナイロン粉末(ナイロンSP−500;東レ社製、分子量1万〜10万、粒径10μm以下、球状粉末)を配合した比較例1の色材はピンク色の蛍光発色はするものの発色が劣り、なおかつ隠蔽感が強く透明感(クリア感)が得られなかった(蛍光発色の評価:B)。また、高級脂肪酸金属塩に代えて常温で固体の高級脂肪酸又は高級アルコールを配合した比較例2〜4の色材では発色すら生じなかった(蛍光発色の評価:C)。
【0044】
メーキャップ化粧料については、表1に示した結果から明らかなように、特定の油溶性染料(成分A)と高級脂肪酸金属塩(成分B)を含む実施例1〜6は、製法によらず鮮明な蛍光発色が見られ、なおかつ透明感(クリア感)にも優れたものであった。ただし、製法2に従って製造した場合の方が蛍光発色は更に鮮やかになった。
一方、高級脂肪酸塩に代えてナイロン粉末等の他の粉末を配合した比較例1〜4は、製法1あるいは製法2のいずれを用いても、蛍光発色が劣るか又は蛍光発色を生じず、透明感(クリア感)が得られなかった。また、有機顔料(赤色202号)を0.5質量%を超えて配合した比較例5は、透明感(クリア感)が得られないのみならず蛍光発色も妨げられた。
【0045】
以下に、本発明のメーキャップ化粧料(口紅)の他の処方(実施例7〜11)を挙げる。いずれの実施例でも、高輝度の鮮やかな蛍光発色と透明感(クリア感)が達成された。表中の評価結果は上記した基準に基づいて評価した結果である。
なお、蛍光発色については、前記製法1(常法)で製造した場合は「A」、前記製法2に準じて調製した場合は「A」となった。
【0046】
【表3】
【0047】
以下に、本発明によるメーキャップ化粧料の他の処方例を挙げる。いずれのメーキャップ化粧料においても鮮やかな蛍光発色及び透明感が得られた。
処方例1:リップグロス
配合成分 配合量(質量%)
1.流動パラフィン 10.0
2.ポリイソブテン 10.0
3.リンゴ酸ジイソステアリル 10.0
4.パルミチン酸デキストリン 10.0
5.ステアリン酸カルシウム 0.5
6.橙色201号 0.2
7.酸化鉄 0.1
8.赤色202号 0.1
9.雲母チタン 2.0
10.トコフェロール 適量
11.香料 適量
12.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 残余
【0048】
(製造方法)
配合成分1〜5及び8の各全量を、100〜120℃に加熱しながら攪拌混合して化粧用色材を調製した。その後、得られた化粧用色材と残り成分(6、7及び9〜12)を80〜140℃に加熱しながら攪拌、混合、脱泡し、冷却した。
【0049】
処方例2:アイシャドー
配合成分 配合量(質量%)
1.タルク 残余
2.マイカ 20.0
3.窒化ホウ素 10.0
4.合成マイカ 10.0
5.酸化チタン被覆雲母 5.0
6.酸化鉄 2.0
7.スクワラン 2.0
8.ジエチルポリシロキサン 2.0
9.モノオレイン酸ソルビタン 0.5
10.赤色218号 0.01
11.ステアリン酸アルミニウム 0.2
12.防腐剤 適量
13.香料 適量
【0050】
(製法)
配合成分1〜6、12及び13を粉砕混合したところへ、7〜11を100〜120℃で加熱混合して化粧用色材としたものを加え、中皿に成型してアイシャドーを得た。
【0051】
処方例3:チーク
配合成分 配合量(質量%)
1.タルク 残余
2.ポリメタクリル酸メチル 1.0
3.シリカ 2.0
4.窒化ホウ素 3.0
5.マイカ 10.0
6.イソパラフィン 3.0
7.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
8.モノオレイン酸ソルビタン 1.0
9.酸化鉄 3.0
10.赤色223号 0.1
11.赤色218号 0.02
12.ステアリン酸マグネシウム 1
13.防腐剤 適量
14.香料 適量
【0052】
(製法)
配合成分1〜5、9、13及び14を粉砕混合したところへ、6〜8及び10〜12を100〜120℃で加熱混合して化粧用色材としたものを加え、中皿に成型してチークを得た。
【要約】
【課題】 鮮やかな蛍光発色が可能であり、なおかつ透明感(クリア感)に優れたメーキャップ化粧料及びその化粧料に適した新規な化粧用色材を提供する。
【解決手段】 本発明は、(A)赤色218号、赤色223号及び橙色201号からなる群から選択される油溶性染料の1種又は2種以上、(B)高級脂肪酸金属塩、及び(C)油分を含み、顔料の配合量が0.5質量%以下であるメーキャップ化粧料を提供する。本発明のメーキャップ化粧料は、高輝度の蛍光発色が得られると同時に透明感にも優れ、口唇化粧料、チーク又はアイシャドーとして有用である。
【選択図】なし