特許第5801722号(P5801722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5801722
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】免疫分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20151008BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   G01N35/02 Z
   G01N35/04 G
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-550887(P2011-550887)
(86)(22)【出願日】2011年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2011050470
(87)【国際公開番号】WO2011089966
(87)【国際公開日】20110728
【審査請求日】2013年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-10836(P2010-10836)
(32)【優先日】2010年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】元津 和典
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−271411(JP,A)
【文献】 特開2008−261735(JP,A)
【文献】 特開平11−264828(JP,A)
【文献】 特開平03−262945(JP,A)
【文献】 特表2002−513936(JP,A)
【文献】 特表2008−532048(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0215357(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/152204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理を容器内の検体に対して実行することにより検体に含まれる抗原または抗体からなる測定対象成分の測定を行うとともに、複数の階層を有する免疫分析装置であって、
最上層である第1階層に配置され、前記複数の処理の一部として、前記容器内で、磁性粒子と、測定対象成分と、測定対象成分に結合可能な標識としての酵素とを含む複合体を形成する処理、および、前記容器内に前記酵素と反応する基質を分注する処理を実行する第1検体処理部と、
前記第1階層の下方に位置する第2階層に配置され、前記複数の処理のうち、他の少なくとも一部の処理として、前記酵素と前記基質との反応により生じた光を検出する処理を実施する第2検体処理部と、
前記基質が分注された前記容器を、前記第1階層から前記第2階層に移送する容器移送部とを備え
前記第1階層に配置された前記第1検体処理部は、前記複合体の形成に用いられる複数の試薬および前記基質を含む試薬がユーザにより設置される試薬設置ユニットと、前記試薬設置ユニットに設置された試薬を前記容器に分注する工程を実行する試薬分注ユニットと、検体を前記容器に分注する検体分注ユニットと、を含み、
前記第1階層の下方に位置する前記第2階層に配置された前記第2検体処理部は、前記容器内の前記酵素と前記基質との反応により生じた光を検出する光学検出ユニットを含む免疫分析装置。
【請求項2】
第1の基台と、
前記第1の基台の下方に配置された第2の基台と、をさらに備え、
前記第1検体処理部は、前記第1の基台の上に配置され、
前記第2検体処理部は、前記第2の基台の上に配置されている、請求項1に記載の免疫分析装置。
【請求項3】
前記第1階層および前記第2階層は、平面的に見て実質的に全てが重なるように配置されている、請求項1または2に記載の免疫分析装置。
【請求項4】
記第1検体処理部は、検体を収容した検体容器がユーザにより設置される検体設置ユニットを備えており、
前記検体設置ユニットは、検体を収容した試験管が複数載置されたラックを設置するためのラックセット部と、前記ラックに載置された前記試験管が前記検体分注ユニットによる検体分注位置に位置付けられるように前記ラックを搬送するラック移送部と、分注済みの試験管を載置したラックを貯留するラック貯留部と、を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項5】
前記検体分注ユニットは、先端にピペットチップを装着可能な検体分注アームを備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項6】
記第1検体処理部は、ユーザにより前記容器が投入される容器投入部と、容器投入部から容器を所定位置に搬送する搬送レーンと、を備えた容器セットユニットを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項7】
記第2検体処理部は、前記容器に検体を分注する検体分注ユニットおよび前記容器に試薬を分注する試薬分注ユニットを含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項8】
記第1検体処理部は、記容器内で前記複合体を形成するための反応を行うための第1反応ユニットと、前記容器内の前記複合体形成の反応後の反応試料から、前記複合体を分離する処理を実行する分離処理ユニットとを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項9】
記試薬分注ユニットは、前記容器移送部により保持された前記容器に前記基質を含む試薬を分注するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項10】
前記第1階層は、外部から内部へ光が透過されるよう構成され、
前記第2階層は、外部から内部への光が遮光されるように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項11】
記第2階層の下方に配置された下方設置階層をさらに備え、
前記下方設置階層は、少なくとも前記分離処理ユニットで使用される洗浄液を収容した液体容器を設置するための設置領域を含む、請求項に記載の免疫分析装置。
【請求項12】
前記第2階層の下方に配置された下方設置階層をさらに備え、
前記下方設置階層は、前記ピペットチップを廃棄するための廃棄ボックスが設置される、請求項に記載の免疫分析装置。
【請求項13】
前記容器移送部は、前記容器を保持するための容器保持部と、前記容器保持部を垂直方向に昇降させることにより前記第1階層から前記第2階層に前記容器を移送する昇降機構と、を備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項14】
前記第2検体処理部は、前記容器移送部によって移送された前記基質が分注された前記容器を、前記容器移送部から取り出して前記光学検出ユニットに移送するためのキャッチャを備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫分析装置に関し、特に、複数の処理工程を実行することにより検体の分析を行う免疫分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の処理工程を実行することにより検体の分析を行う検体分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、検体および試薬を収容するためのカートリッジを収容するカートリッジ収納部と、カートリッジを所定の反応温度に保ちながら種々の操作位置に順次移送する反応ラインと、反応ライン上のカートリッジに検体を注入する検体注入装置と、磁性粒子、酵素標識試薬および希釈液などの各種試薬を反応ライン上のカートリッジ内の検体と混合するための混合機構と、反応ライン上に設けられるとともに検体および試薬が混合された試料から未反応の標識試薬および検体を分離(除去)するBF(Bound Free)分離を行う洗浄器と、カートリッジ内の測定試料の測定を行う測定部と、反応ラインから測定部にカートリッジを移送するカートリッジ輸送機構とを備えた自動免疫測定装置が開示されている。この特許文献1による自動免疫測定装置では、反応ライン上に設置されたカートリッジが反応ラインの終点に向けて移送される過程で、反応ラインの各位置において検体の注入、試薬と検体との混合およびBF分離などの各種処理工程が、それぞれのユニット(検体注入装置、混合機構および洗浄器など)により行われるように構成されている。その後、反応ラインの終点でカートリッジがカートリッジ輸送機構により測定部まで移送されるとともに、測定部によってカートリッジ内の測定試料の測定が行われるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−62433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の自動免疫測定装置のように、多くの処理工程を実行する装置においては、処理を円滑に行うために、各処理工程を行う複数のユニットを装置内に配置する必要があるので、水平方向に装置が大型化して装置の設置面積が増大してしまうという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、多くの処理を実行する免疫分析装置において、試薬設置ユニットや試薬分注ユニットへのアクセスに関するユーザの利便性を損なうことなく、小型化して設置面積を小さくすることが可能な免疫分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による免疫分析装置は、複数の処理を容器内の検体に対して実行することにより検体に含まれる抗原または抗体からなる測定対象成分の測定を行うとともに、複数の階層を有する免疫分析装置であって、最上層である第1階層に配置され、複数の処理の一部として、容器内で、磁性粒子と、測定対象成分と、測定対象成分に結合可能な標識としての酵素とを含む複合体を形成する処理、および、容器内に酵素と反応する基質を分注する処理を実行する第1検体処理部と、第1階層の下方に位置する第2階層に配置され、複数の処理のうち、他の少なくとも一部の処理として、酵素と基質との反応により生じた光を検出する処理を実施する第2検体処理部と、基質が分注された容器を、第1階層から第2階層に移送する容器移送部とを備え、第1階層に配置された第1検体処理部は、複合体の形成に用いられる複数の試薬および基質を含む試薬がユーザにより設置される試薬設置ユニットと、試薬設置ユニットに設置された試薬を容器に分注する工程を実行する試薬分注ユニットと、検体を容器に分注する検体分注ユニットと、を含み、第1階層の下方に位置する第2階層に配置された第2検体処理部は、容器内の酵素と基質との反応により生じた光を検出する光学検出ユニットを含む
【0008】
この一の局面による免疫分析装置では、上記のように、第1階層に第1検体処理部を配置するとともに、第1階層の下方に位置する第2階層に第2検体処理部を配置し、かつ、第1階層から第2階層に移送する容器移送部を設けることによって、複数の処理工程をそれぞれ実行するための複数のユニットを、上下に配置された第1階層の第1検体処理部と第2階層の第2検体処理部とに分けて設置することができるとともに、第1階層と第2階層との間の容器の移送を容器移送部により行うことができる。これにより、装置が水平方向に大きくなるのを抑制することができる。その結果、装置の設置面積を小さくすることができる。
【0009】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第1の基台と、第1の基台の下方に配置された第2の基台と、をさらに備え、第1検体処理部は、第1の基台の上に配置され、第2検体処理部は、第2の基台の上に配置されている。このように構成すれば、容易に、第1階層に第1検体処理部を配置するとともに第1階層の下方に位置する第2階層に第2検体処理部を配置する構成を得ることができる。
【0010】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第1階層および第2階層は、平面的に見て実質的に全てが重なるように配置されている。このように構成すれば、装置の水平方向の寸法を小さくすることができるので、装置を容易に小型化することができる。
【0011】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第1検体処理部は、検体を収容した検体容器がユーザにより設置される検体設置ユニットを備えており、検体設置ユニットは、検体を収容した試験管が複数載置されたラックを設置するためのラックセット部と、ラックに載置された試験管が検体分注ユニットによる検体分注位置に位置付けられるようにラックを搬送するラック移送部と、分注済みの試験管を載置したラックを貯留するラック貯留部と、を含む
【0012】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、検体分注ユニットは、先端にピペットチップを装着可能な検体分注アームを備えている
【0013】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第1検体処理部は、ユーザにより容器が投入される容器投入部と、容器投入部から容器を所定位置に搬送する搬送レーンと、を備えた容器セットユニットを含む。このように構成すれば、第1検体処理部へのユーザのアクセスが容易になるので、ユーザは、容易に容器を容器セットユニットにセットすることができる。
【0014】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第2検体処理部は、容器に検体を分注する検体分注ユニットおよび容器に試薬を分注する試薬分注ユニットを含まない。ここで、検体や試薬を分注するための分注ユニットには、それぞれ容器の上部に設けられた開口部から検体や試薬を吸引して容器に注入するための機構が設けられる場合が多く、ユニットの高さが大きくなりやすい。そのため、第1階層のみに検体分注ユニットおよび試薬分注ユニットを配置し、第2階層には検体または試薬を分注する分注ユニットを配置しないことによって、第2階層の高さを小さくすることができ、免疫分析装置全体の高さを小さくすることが可能となる。
【0015】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第1検体処理部は、容器内で複合体を形成するための反応を行うための第1反応ユニットと、容器内の複合体形成の反応後の反応試料から、複合体を分離する処理を実行する分離処理ユニットとを含むように構成してもよい。
【0016】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、試薬分注ユニットは、容器移送部により保持された容器に基質を含む試薬を分注するように構成されている。このように構成すれば、試薬分注ユニットによる試薬の分注完了後に、即座に第1階層から第2階層に容器を移送することができる。
【0017】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第1階層は、外部から内部へ光が透過されるよう構成され、第2階層は、外部から内部への光が遮光されるように構成されている。このように構成すれば、第2階層内への外光を遮光することができるので、光学検出ユニットに外光が届くのをさらに抑制することができる。これにより、測定試料から発せられる光の光学検出ユニットによる検出を、さらに精度良く行うことができる。
【0018】
上記第1検体処理部が第1反応ユニットと分離処理ユニットとを含む構成において、好ましくは、第2階層の下方に配置された下方設置階層をさらに備え、下方設置階層は、少なくとも分離処理ユニットで使用される洗浄液を収容した液体容器を設置するための設置領域を含む。このように構成すれば、洗浄液や希釈液などの液体を収容した液体容器を第1階層および第2階層よりも下方に配置された下方設置階層に設置することができるので、ユーザは重量のある液体容器を上方の階層(第1階層および第2階層)の位置まで持ち上げる必要がない。また、液体容器の交換時などに液体容器から液体がこぼれた場合であっても、第1階層(第1検体処理部)および第2階層(第2検体処理部)のユニットに液体が降りかかることを防止することができる。
【0019】
上記検体分注ユニットが検体分注アームを備える構成において、好ましくは、第2階層の下方に配置された下方設置階層をさらに備え、下方設置階層は、ピペットチップを廃棄するための廃棄ボックスが設置される。
【0020】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、容器移送部は、容器を保持するための容器保持部と、容器保持部を垂直方向に昇降させることにより第1階層から第2階層に容器を移送する昇降機構とを備える。このように構成すれば、容器保持部を垂直方向に昇降させることにより第1階層から第2階層に容器を移送することができるので、たとえば容器保持部を斜め方向に昇降させる場合と比較して容器移送部の水平方向の寸法を小さくすることができる。この結果、容器移送部の設置スペースを小さくすることができるので、装置を容易に小型化することができる。
【0021】
上記一の局面による免疫分析装置において、好ましくは、第2検体処理部は、容器移送部によって移送された基質が分注された容器を、容器移送部から取り出して光学検出ユニットに移送するためのキャッチャを備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による免疫分析装置の全体構成を示した前面側斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による免疫分析装置の全体構成を示した背面側斜視図である。
図3図2に示した一実施形態による免疫分析装置の背面側の側面図である。
図4図1に示した一実施形態による免疫分析装置の上層Uを示した平面図である。
図5図1に示した一実施形態による免疫分析装置の中層Mを示した平面図である。
図6図1に示した一実施形態による免疫分析装置の下層Lを示した平面図である。
図7図1に示した一実施形態による免疫分析装置の構成を説明するためのブロック図である。
図8図1に示した一実施形態による免疫分析装置の構成を説明するためのブロック図である。
図9図1に示した一実施形態による免疫分析装置の測定フローを示した図である。
図10図9に示した一実施形態による免疫分析装置の測定フローを説明するための模式図である。
図11図1に示した一実施形態による免疫分析装置で測定される検体の抗原と各種試薬との反応を示した模式図である。
図12図1に示した一実施形態による免疫分析装置の3階層構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
まず、図1図8図10および図12を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の全体構成について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態による免疫分析装置1は、血液などの検体を用いて感染症(B型肝炎、C型肝炎など)に関連するタンパク質、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための装置である。
【0027】
この免疫分析装置1は、測定対象である血液などの検体(血液試料)に含まれる抗原や抗体などを定量測定または定性測定する装置である。検体に含まれる抗原を定量測定する場合には、この免疫分析装置1は、検体に含まれる抗原に結合した捕捉抗体(R1試薬)に磁性粒子(R2試薬)を結合させた後に、結合(Bound)した抗原、捕捉抗体および磁性粒子の複合体を1次BF(Bound Free)分離部20の磁石202(図10参照)に引き寄せることにより、未反応(Free)の捕捉抗体を含むR1試薬を除去するように構成されている。そして、免疫分析装置1は、磁性粒子が結合した抗原と標識抗体(R3試薬)とを結合させた後に、結合(Bound)した磁性粒子、抗原および標識抗体の複合体を2次BF分離部21の磁石212(図10参照)に引き寄せることにより、未反応(Free)の標識抗体を含むR3試薬を除去する。さらに、分散液(R4試薬)、および、標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような複数の処理工程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる抗原を定量的に測定している。
【0028】
ここで、本実施形態では、免疫分析装置1のフレーム2には、図1図3に示すように、最上部に第1基台3が配置され、第1基台3の下方(矢印Z2方向)に第2基台4が配置され、第1基台3および第2基台4の下方に第3基台5が配置されている。これにより、免疫分析装置1は、図12に示すように、第1基台3の上方に位置付けられる上層U(第1階層)と、第1基台3と第2基台4との間に位置付けられる中層M(第2階層)と、第2基台4と第3基台5との間に位置付けられる下層L(下方設置階層)とからなる3階層構造を有している。また、図1図3に示すように、第1基台3(図4参照)と、第2基台4(図5参照)と、第3基台5(図6参照)とは、平面的に見て略正方形状の同一形状を有し、平面的に見て完全に重なるように鉛直方向(Z方向)に互いに所定の間隔を隔てて並んで配置されている。また、第1基台3上には、第1検体処理部10が設けられており、第2基台4上には、第2検体処理部40が設けられている。また、最も下方(矢印Z2方向)に設けられた第3基台5には、後述する洗浄液を設置する洗浄液設置部51および52(図6参照)などの設置領域が設けられている。
【0029】
また、本実施形態では、免疫分析装置1には、キュベット(容器)6を上層Uから中層Mに移送するための容器移送部30が設けられている。なお、キュベット6は、透明な容器であり、検体や試薬等の液体を収容したり、検体と試薬とを反応させたり、収容した液体中の所定の成分を検出するために用いられる。容器移送部30は、第1検体処理部10においてキュベット6内の検体への試薬の分注処理や、キュベット6内の液体に対する所定の反応処理等の各種処理工程が行われた後に、キュベット6を上層Uから中層Mに移送するように構成されている。
【0030】
また、免疫分析装置1は、検体である血液の測定を行う機能を有する第1検体処理部10および第2検体処理部40と、第2検体処理部40の後述する検出部42から出力された測定結果を分析して分析結果を得るデータ処理ユニット(PC)150(図8参照)とにより、検体の測定および分析処理を行うように構成されている。
【0031】
第1基台3上の第1検体処理部10は、免疫分析装置1がキュベット6内の検体に対して実行する複数の処理工程の一部を実行するように構成されており、図4に示すように、検体ラックセット部11と、チップラックセット部12と、検体分注アーム13と、第1キュベット搬送部14および第2キュベット搬送部15と、第1試薬設置ユニット16と、第1試薬分注アーム17と、第2試薬分注アーム18と、抗原抗体反応テーブル19と、1次BF分離部20および2次BF分離部21と、第2試薬設置ユニット22と、第3試薬分注アーム23と、キュベット供給部24とから主に構成されている。
【0032】
第1検体処理部10の検体ラックセット部11は、図4に示すように、検体を収容した複数(5本)の試験管7が載置されたラック7aをユーザによりセットすることが可能なように構成されている。この検体ラックセット部11は、未処理の検体を収容した試験管7が載置されたラック7aをセットするためのラックセット部111と、分注処理済みの検体を収容した試験管7が載置されたラック7aを貯留するためのラック貯留部112と、ラックセット部111にセットされたラック7aを矢印X1方向に横送りしてラック貯留部112に移送するための横送り部113とを有している。横送り部113は、Y方向の位置が検体分注アーム13の位置と一致するように設けられている。なお、検体分注アーム13は後述するようにX方向およびZ方向(上下方向)に移動可能に構成されている。未処理の検体を収容した試験管7を横送り部113上の所定位置まで搬送することにより、検体分注アーム13により試験管7内の血液などの検体の吸引が行われて、その試験管7を載置したラック7aがラック貯留部112に貯留される。
【0033】
チップラックセット部12は、検体の吸引および吐出に用いられるピペットチップ8(図1参照)をマトリクス状(行列状)に多数保持したチップラック121を保持するために設けられている。チップラックセット部12は、チップラック121をY方向に移動させることが可能なように構成されている。これにより、チップラック121をY方向に移動させるとともに検体分注アーム13をX方向およびZ方向(上下方向)に移動させることにより、チップラック121上の任意の位置に保持されたピペットチップ8を検体分注アーム13が装着するように構成されている。
【0034】
検体分注アーム13は、検体ラックセット部11の横送り部113上に搬送された試験管7内の検体を、第1キュベット搬送部14の後述するキュベット挿入穴141に保持されるキュベット6内に分注する機能を有している。この検体分注アーム13は、第1基台3上において、検体ラックセット部11(横送り部113)、チップラックセット部12および第1キュベット搬送部14の上方(矢印Z1方向、図1参照)をX方向に移動可能に構成されている。また、検体分注アーム13は、下方(矢印Z2方向)に延びるピペット部131(図1参照)を有しているとともに、このピペット部131を上下方向(Z方向)に昇降させることが可能なように構成されている。ピペット部131の先端には、チップラックセット部12のチップラック121に保持されるピペットチップ8(図1参照)が装着される。検体分注アーム13は、チップラックセット部12の上方でピペット部131にピペットチップ8を装着させ、検体ラックセット部11の横送り部113上の吸引位置まで矢印X2方向に移動してピペット部131内に試験管7内の検体を吸引する。その後、検体分注アーム13は、図4に示すように、横送り部113上の吸引位置から矢印X1方向に移動して、検体分注位置P2に搬送されたキュベット6内に吸引した検体を分注するように構成されている。
【0035】
第1キュベット搬送部14は、キュベット6を保持するための3つのキュベット挿入穴141、142および143を有し、保持するキュベット6を所定の位置に搬送する機能を有する。具体的には、第1キュベット搬送部14は、Y方向に移動可能に構成され、保持するキュベット6をR1試薬分注位置P1、検体分注位置P2および、第1BF受渡位置P3などに搬送可能なように構成されている。また、第1キュベット搬送部14のキュベット挿入穴142の側部には磁石144(図4の破線参照)が設けられ、キュベット挿入穴142に保持されたキュベット6内の磁性粒子を集磁する機能を有している。
【0036】
第2キュベット搬送部15は、第1キュベット搬送部14と同様に、キュベット6を保持するための3つのキュベット挿入穴151、152および153と、キュベット挿入穴152の側部に設けられた磁石154(図4の破線参照)とを有し、保持するキュベット6を所定の位置に搬送する機能を有する。具体的には、第2キュベット搬送部15は、Y方向に移動可能に構成され、保持するキュベット6をR2試薬分注位置P11、R3試薬分注位置P12、および第2BF受渡位置P13などに搬送可能なように構成されている。
【0037】
第1試薬設置ユニット16は、捕捉抗体を含むR1試薬が収容される試薬容器9aおよび標識抗体を含むR3試薬が収容される試薬容器9cを設置するためのR1/R3設置部161と、磁性粒子を含むR2試薬が収容される試薬容器9bを設置するためのR2設置部162とを含み、これらの試薬容器9a、9bおよび9cがユーザにより設置および交換可能なように構成されている。R1/R3設置部161には、複数の試薬容器9aおよび試薬容器9cがそれぞれX方向に延びるように設置されている。R1/R3設置部161は、Y方向に移動可能に構成され、試薬容器9aの列(X方向の列)と、試薬容器9cの列とを、それぞれ第1試薬分注アーム17とY方向の位置が一致する吸引位置P21に配置することが可能なように構成されている。なお、図4ではR3試薬を収容する試薬容器9cの列が吸引位置P21に配置されている。R2設置部162は、第2試薬分注アーム18とY方向の位置が一致する吸引位置P22に配置されるとともに、試薬容器9bがX方向に延びるように複数設置されている。また、R2設置部162は、Y方向に揺動可能に構成され、試薬容器9b内のR2試薬に含まれる磁性粒子を均一に攪拌しておくことが可能なように構成されている。また、図1に示すように、第1試薬設置ユニット16は、第1試薬分注アーム17によるR1試薬およびR3試薬の吸引位置P21に対応する位置に形成された複数の孔部163aと、第2試薬分注アーム18によるR2試薬の吸引位置P21に対応する位置に形成された複数の孔部163bとを有する蓋部163を含み、これらの孔部163aおよび163bを介して試薬が吸引されるように構成されている。
【0038】
第1試薬分注アーム17は、第1試薬設置ユニット16のR1/R3設置部161に設置される試薬容器9aおよび試薬容器9c内の試薬(R1試薬およびR3試薬)をキュベット6内に分注するための機能を有している。この第1試薬分注アーム17は、第1試薬設置ユニット16(孔部163a)の上方をX方向に移動可能に構成されるとともに、上下方向(Z方向)に移動可能なピペット171(図1参照)を有している。第1試薬分注アーム17は、R1/R3設置部161により分注対象の試薬列(試薬容器9aまたは試薬容器9cの列)が吸引位置P21に配置された状態で、第1試薬分注アーム17がX方向に移動してピペット171により分注対象の試薬容器(試薬容器9aまたは試薬容器9c)から試薬を吸引する。そして、第1試薬分注アーム17は、吸引したR1試薬をR1試薬分注位置P1に搬送されたキュベット6に分注し、吸引したR3試薬をR3試薬分注位置P12に搬送されたキュベット6に分注することが可能なように構成されている。
【0039】
第2試薬分注アーム18は、第1試薬設置ユニット16のR2設置部162に設置される試薬容器9b内の試薬(R2試薬)をキュベット6内に分注するための機能を有している。この第2試薬分注アーム18は、第1試薬設置ユニット16(孔部163b)の上方をX方向に移動可能に構成されるとともに、上下方向(Z方向)に移動可能なピペット181(図2参照)を有している。第2試薬分注アーム18は、X方向に移動してピペット181により分注対象の試薬容器9bから試薬を吸引するとともに、吸引されたR2試薬をR2試薬分注位置P11に搬送されたキュベット6に分注することが可能なように構成されている。
【0040】
抗原抗体反応テーブル19は、それぞれキュベット6を保持してインキュベーションを行うための複数の収納孔191がY方向に延びる列状に設けられた第1反応部192と、第2反応部193とを有している。第1反応部192は、R1試薬(捕捉抗体)と検体中の抗原との反応(反応1)と、反応1終了後の試料(抗原が結合した捕捉抗体)とR2試薬(磁性粒子)とを結合させる反応(反応2)とを行うために設けられている。また、第2反応部193は、反応1、反応2および1次BF分離が行われた後の試料(R1試薬、検体およびR2試薬)とR3試薬(標識抗体)とを結合させる反応(反応3)を行うために設けられている。第1反応部192と、第2反応部193とは、それぞれY方向に揺動可能に構成され、インキュベーション中にもR2試薬(磁性粒子)の攪拌を行うことが可能である。
【0041】
1次BF分離部20は、抗原抗体反応テーブル19による反応1および反応2が行われた後の試料から、未反応のR1試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離(1次BF分離)するために設けられている。1次BF分離部20は、検体、R1試薬およびR2試薬を含むキュベット6を設置するための2つの設置孔201と、磁性粒子を集磁する磁石202(図10参照)と、洗浄液の供給および不要成分の除去(吸引)を行うノズル(図示せず)を有する洗浄機構(図示せず)と、キュベット6内の洗浄液、不要成分および磁性粒子を攪拌する攪拌機構(図示せず)とを主として有している。1次BF分離部20は、上記各機構によって4回の洗浄工程を経てキュベット6内の未反応のR1試薬(不要成分)を除去するとともに、未反応のR1試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離するように構成されている。
【0042】
2次BF分離部21は、1次BF分離部20と同様の構成を有しており、抗原抗体反応テーブル19(第2反応部193)による反応3が行われた後の試料から、検体の抗原と結合しない未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離(2次BF分離)するために設けられている。2次BF分離部21は、設置孔211に設置されたキュベット6内の検体、R1試薬、R2試薬およびR3試薬を含む試料から未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを、磁石212(図10参照)、洗浄機構(図示せず)および攪拌機構(図示せず)により分離するように構成されている。
【0043】
第2試薬設置ユニット22は、図1に示すように、分散液(R4試薬)が収容される試薬容器9dと、標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)が収容される試薬容器9eとを各2本ずつ(図4参照)保持するように設けられ、これらの試薬容器9dおよび9eがユーザにより設置および交換可能なように構成されている。第2試薬設置ユニット22は、試薬容器9dおよび試薬容器9eをそれぞれX方向に並べて保持しており、試薬容器9dおよび試薬容器9eに対応して第2試薬設置ユニット22の上面に設けられた2つの開口部221および222を介して、それぞれR4試薬およびR5試薬を第3試薬分注アーム23によって吸引することが可能なように構成されている。なお、図1では、説明のため試薬容器9dおよび9eを第2試薬設置ユニット22から引き出した状態を図示している。
【0044】
第3試薬分注アーム23は、図2および図4に示すように、第2試薬設置ユニット22の試薬容器9dおよび試薬容器9e内の試薬(R4試薬およびR5試薬)をキュベット6内に分注するための機能を有している。この第3試薬分注アーム23は、第2試薬設置ユニット22(開口部221および222)と、キュベット保持部232(R4試薬分注位置)と、容器移送部30の後述する保持孔31(R5試薬分注位置)との上方をX方向に移動可能に構成されるとともに、上下方向(Z方向)に移動可能なピペット231(図3参照)を有している。第3試薬分注アーム23は、第2試薬設置ユニット22の開口部221(図2参照)を介してピペット231により試薬容器9dからR4試薬を吸引するとともに、キュベット保持部232に設置されたキュベット6にR4試薬を分注するように構成されている。また、第3試薬分注アーム23は、開口部222(図2参照)を介してピペット231により試薬容器9eからR5試薬を吸引するとともに、容器移送部30の保持孔31に設置されたキュベット6にR5試薬を分注するように構成されている。
【0045】
また、図4に示すように、キュベット供給部24は、ユーザによりキュベット6が投入されるキュベット投入部241を有し、キュベット6を所定位置まで搬送する搬送レーン242の端部位置までキュベット6を順次供給する機能を有する。
【0046】
また、キュベット供給部24により供給されるキュベット6は、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能なキャッチャ25a(図4参照)によって第1キュベット搬送部14、第2キュベット搬送部15および抗原抗体反応テーブル19に移送されるように構成されている。また、1次BF分離部20、2次BF分離部21、キュベット保持部232および容器移送部30へのキュベット6の移送は、X方向およびZ方向に移動可能なキャッチャ25b(図4参照)により行われるように構成されている。
【0047】
ここで、本実施形態では、図2および図3に示すように、容器移送部30は、保持孔31を有する設置部32と、設置部32を上下方向(Z方向)に昇降させるための昇降機構33とを含んでいる。設置部32は、2つの保持孔31を有し、キュベット6を保持孔31に挿入して保持することが可能なように構成されている。本実施形態では、設置部32の保持孔31が第2試薬設置ユニット22の開口部221および第3試薬分注アーム23とX方向に並ぶように配置されており、キュベット6を保持孔31に設置した状態で、第3試薬分注アーム23により保持孔31のキュベット6にR5試薬の分注を行うことが可能なように構成されている。昇降機構33は、第2基台4に設置されたモータ331と、第1基台3上の容器移送部30の上端部から第2基台4のモータ331とに亘って設けられた駆動ベルト332とによって、設置部32を上層Uから中層Mまで搬送(昇降)するように構成されている。これにより、検体と、R1〜R5試薬までの全ての試薬とが分注されたキュベット6を、第1基台3上の第1検体処理部10から第2基台4上の第2検体処理部40に下方(Z2方向)に移送することが可能である。なお、図2に示すように、第1基台3には、設置部32を通過させるための通過穴3aが設けられている。
【0048】
また、第2基台4上の第2検体処理部40は、免疫分析装置1がキュベット6内の検体に対して実行する複数の処理工程のうち、第1検体処理部10が実行した処理工程以外の他の処理工程を実行するように構成されており、図5に示すように、酵素反応部41と、検出部42とを含んでいる。なお、第2基台4には、第2検体処理部40の他に、洗浄液などの各種流体の供給および廃棄経路を制御するための電磁弁や、検体や試薬などの吸引および吐出を行うためのポンプなどを含む流体部43が配置されている。なお、図1図3では、この流体部43の図示を省略している。
【0049】
酵素反応部41は、抗原抗体反応(反応1〜反応3)後の反応試料中の(酵素)標識抗体(R3試薬)と、発光基質(R5試薬)との酵素反応(反応4)を行うために設けられている。酵素反応部41には、キュベット6を保持してインキュベーションを行うための複数の収納孔411が、X方向に列状に設けられている。
【0050】
検出部42は、検体の抗原に結合する標識抗体(R3試薬)と発光基質(R5試薬)との反応過程で生じる光を光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)により検出することによって、その検体に含まれる抗原の量を測定する機能を有する光学検出ユニットである。この検出部42には、開閉蓋421と、Y方向に移動して検出部42の内部および外部に入出可能な設置部422とを含んでいる。酵素反応部41による酵素反応(反応4)工程後のキュベット6が設置部422に設置され、検出部42の内部にキュベット6が取り込まれることにより、検出部42の内部で抗原の量の測定が行われるように構成されている。なお、設置部422には、キュベット6内の磁性粒子を集磁するための磁石423(図10参照)が設けられている。
【0051】
また、第2基台4上の第2検体処理部40におけるキュベット6の移送は、キャッチャ44により行われる。キャッチャ44はX方向に並ぶように配置された容器移送部30の保持孔31と、酵素反応部41の収納孔411と、検出部42の設置部422との間で、キュベット6を移送可能なように構成されている。
【0052】
また、図6に示すように、最下部の第3基台5には、各種の洗浄液が収容された洗浄液容器をそれぞれ設置可能な洗浄液設置部51および52と、各部に電源供給を行う電源ユニットを設置可能な電源設置部53と、後述する測定制御部60aを設置可能なコンピュータ設置部54と、検体、試薬および洗浄液などの吸引および吐出を行う際に陽圧または陰圧を供給する空圧源を設置可能な空圧源設置部55と、その他の機器設置部56との各種設置領域が設けられている。また、洗浄液設置部51および電源設置部53の上方には、ピペットチップ8を廃棄するための廃棄ボックスを設置可能な廃棄ボックス設置部57などが設けられている。なお、図1図3では、これらの設置部に設置される電源や空圧源などの一部または全部を省略している。
【0053】
なお、図12に示すように、免疫分析装置1には、上層Uの内部を覆う本体カバー27、中層Mの内部を覆う外側カバー28および下層Lの内部を覆う外側カバー29が設けられている。本体カバー27および外側カバー28、29はそれぞれ遮光性を有する材料により形成されているため、本体カバー27が上層Uの内部を覆っている状態においては、上層U、中層Mおよび下層Lの内部が遮蔽された状態となる。そのため、第1基台3および第1基台3上の各ユニットによって第1基台3の上方から中層Mの内部に外光が届きにくいだけでなく、本体カバー27および外側カバー28、29によって中層Mの内部が遮蔽(遮光)されるため、中層Mの内部を暗い状態にすることができる。そのため、検出部42による光の検出をより精度良く行うことが可能となる。
【0054】
本体カバー27は、回転軸27a(一点鎖線参照)を中心として回動可能に構成されており、これにより、上層U内が開閉可能となっている。また、ユーザの作業性を向上させるために、免疫分析装置1は、本体カバー27が開けられた際に第1検体処理部10の各ユニットへユーザがアクセスすることが可能に構成されている。具体的には、図1に示すように、本体カバー27が開けられた際に、検体ラックセット部11の上方からユーザがラック7aを検体ラックセット部11にセットすることが可能な空間が存在し、チップラックセット部12の上方からユーザがチップラック121をチップラックセット部12に設置することが可能な空間が存在し、第1試薬設置ユニット16および第2試薬設置ユニット22のそれぞれの上方からユーザが試薬容器を第1試薬設置ユニット16および第2試薬設置ユニット22のそれぞれに設置可能な空間が存在し、キュベット投入部241の上方からユーザがキュベット6(図2参照)をキュベット投入部241に投入することが可能な空間が存在するように免疫分析装置1が構成されている。なお、図12に示すように、中層Mに配置されたユニットのメンテナンスや下層Lへの洗浄液容器の設置などが容易に行えるように、外側カバー28および29は容易に取り外しができるように設けられている。
【0055】
また、第1検体処理部10、容器移送部30および第2検体処理部40における各機構(各種分注アーム、1次BF分離部20、2次BF分離部21および昇降機構33など)は、図7に示すように、測定制御部60aにより制御される。
【0056】
図8に示すように、測定制御部60aは、CPU60bと、ROM60cと、RAM60dと、入出力インタフェース60eと、通信インタフェース60fとから主として構成されている。CPU60b、ROM60c、RAM60d、入出力インタフェース60eおよび通信インタフェース60fは、それぞれ、バス60gにより接続されている。
【0057】
CPU60bは、ROM60cに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM60dに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM60cは、CPU60bに実行させるためのコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータなどを記憶している。RAM60dは、ROM60cに記憶しているコンピュータプログラムの読み出しに用いられるとともに、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU60bの作業領域として利用される。
【0058】
入出力インタフェース60eは、たとえば、パラレルインタフェースおよびアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース60eには、バーコードリーダ61が接続されている。検体を収容する試験管7や、複数の試験管7が載置されるラック7aには、試験管7内の検体やラック7aを特定するための情報を記録したバーコードが付されており、バーコードリーダ61は、これら試験管7やラック7aに付されたバーコードを読み取る機能を有する。
【0059】
通信インタフェース60fは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース60fは、所定の通信プロトコルを使用して、測定制御部60aとデータ処理ユニット150との間でデータを送受信することが可能なように構成されている。
【0060】
また、データ処理ユニット150は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部150a(PC本体)と、表示部150bと、キーボード150cとを含んでいる。また、表示部150bは、測定制御部60aから送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。
【0061】
制御部150aには、オペレーティングシステムおよび免疫分析用のアプリケーションプログラムなどの種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。制御部150aは、この免疫分析用のアプリケーションプログラムを実行することにより、検出部42から送信された測定用試料の発光量(デジタル信号のデータ)に基づいて、測定用試料の抗原または抗体の量を測定する。
【0062】
次に、図1図5および図9図11を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の処理工程について説明する。なお、上記のように、第1検体処理部10、容器移送部30および第2検体処理部40の各機構(各種分注アーム、1次BF分離部20、2次BF分離部21および昇降機構33など)の動作制御は、測定制御部60aにより行われる。なお、免疫分析装置1によりキュベット6内の検体に対して実行される複数の処理工程(以下に述べる「インキュベーション工程(反応1)」、「R2試薬分注工程」、「インキュベーション工程(反応2)」、「1次BF分離部20における第1洗浄工程」、「1次BF分離部20における撹拌工程」、「1次BF分離部20における第2洗浄工程」、「R3試薬分注工程」、「インキュベーション工程(反応3)」、「2次BF分離部21における第1洗浄工程、撹拌工程、第2洗浄工程」、「R4試薬分注工程」、「R5試薬分注工程」、「インキュベーション工程(反応4)」、「測定工程」)のうち、「インキュベーション工程(反応1)から「R5試薬分注工程」までの処理工程は第1検体処理部10で実行され、「インキュベーション工程(反応4)」および「測定工程」は第2検体処理部40で実行される。
【0063】
(キュベット供給工程)
まず、図9のステップS1において、図4に示すように、キュベット6は、キュベット供給部24の搬送レーン242の端部位置まで供給されるとともに、キャッチャ25aにより第1キュベット搬送部14に搬送される。キュベット6は、第1キュベット搬送部14のキュベット挿入穴141に設置される。
【0064】
(R1試薬分注工程)
そして、ステップS2において、第1キュベット搬送部14のキュベット挿入穴141に設置されたキュベット6に対して所定量のR1試薬が分注される。すなわち、R1試薬分注位置P1に第1キュベット搬送部14のキュベット挿入穴141に保持されたキュベット6が移動されるとともに、第1試薬設置ユニット16のR1/R3設置部161がY1方向に移動してR1試薬を収容した試薬容器9aが吸引位置P21に配置される。また、第1試薬分注アーム17が第1試薬設置ユニット16の上方まで移動して、試薬容器9aに収容されたR1試薬が孔部163a(図1参照)を介してピペット171により吸引される。そして、第1試薬分注アーム17が矢印X1方向にR1試薬分注位置P1まで移動して、キュベット挿入穴141に設置されたキュベット6にピペット171からR1試薬が分注(吐出)される。なお、図10および図11に示すように、R1試薬には、検体に含まれる抗原に結合する捕捉抗体が含まれている。
【0065】
(検体分注工程)
次に、ステップS3では、図4に示すように、第1キュベット搬送部14のキュベット挿入穴141に設置されたキュベット6が検体分注位置P2に移動されるとともに、このキュベット6に対して所定量の検体が分注される。この際、チップラック121に保持されるピペットチップ8(図1参照)が検体分注アーム13のピペット部131に装着されるとともに、検体分注アーム13が矢印X2方向に移動して、検体ラックセット部11の横送り部113上のラック7aに保持された試験管7から血液などの検体がピペット部131により吸引される。その後、検体分注アーム13が検体分注位置P2に移動して、キュベット挿入穴141のキュベット6(R1試薬が分注されたキュベット6)にピペット部131から検体が分注(吐出)される。
【0066】
(インキュベーション工程(図10および図11に示した反応1))
そして、ステップS4において、第1キュベット搬送部14が抗原抗体反応テーブル19の側方まで矢印Y1方向に移動され、キュベット挿入穴141のキュベット6がキャッチャ25aにより第1反応部192の収納孔191に移送される。キャッチャ25aは、R1試薬および検体が分注されたキュベット6をキュベット挿入穴141から取り出すと、キュベット6内の試料を攪拌した後、第1反応部192の収納孔191に設置する。攪拌されたR1試薬および検体は、抗原抗体反応テーブル19の第1反応部192の収納孔191に保持されたキュベット6内で、所定時間インキュベーションされる。これにより、捕捉抗体(R1試薬)と検体の抗原とが結合する(反応1)。
【0067】
(R2試薬分注工程)
そして、ステップS5において、図4に示すように、キャッチャ25aにより反応(反応1)後のキュベット6が第2キュベット搬送部15のキュベット挿入穴151に設置された後、第2キュベット搬送部15のキュベット挿入穴151に保持されたキュベット6がR2試薬分注位置P11まで移動されて、このキュベット6に第2試薬分注アーム18により所定量のR2試薬が分注される。すなわち、第2試薬分注アーム18が第1試薬設置ユニット16の上方まで移動して試薬容器9bに収容されたR2試薬が孔部163bを介してピペット181により吸引されるとともに、第2試薬分注アーム18がR2試薬分注位置P11まで移動して、キュベット挿入穴151に設置されたキュベット6にピペット181からR2試薬が分注(吐出)される。なお、図10および図11に示すように、R2試薬には、検体中の抗原が結合した捕捉抗体に結合する磁性粒子が含まれている。
【0068】
(インキュベーション工程(図10および図11に示した反応2))
そして、ステップS6において、図4に示すように、第2キュベット搬送部15のキュベット挿入穴151に設置されたキュベット6がキャッチャ25aにより取り出され、攪拌された後に、再び抗原抗体反応テーブル19の第1反応部192の収納孔191に設置される。攪拌されたR1試薬、検体およびR2試薬は、第1反応部192の収納孔191に保持されたキュベット6内で、所定時間インキュベーションされる。これにより、キュベット6内の磁性粒子(R2試薬)と検体の抗原が結合した捕捉抗体(R1試薬)とが結合する(反応2)。
【0069】
(抗原抗体反応テーブル19から1次BF分離部20への移送工程)
その後、ステップS7では、インキュベーションされたR1試薬、検体およびR2試薬を収容したキュベット6が、1次BF分離部20の設置孔201に移送される。まず、反応(反応2)後の試料を収容したキュベット6が、キャッチャ25aにより第1反応部192の収納孔191から第1キュベット搬送部14のキュベット挿入穴142に移送されるとともに、第1キュベット搬送部14により第1BF受渡位置P3まで搬送される。そして、第1BF受渡位置P3でキュベット挿入穴142のキュベット6がキャッチャ25bにより取り出され、矢印X2方向に移動されて1次BF分離部20の設置孔201に設置される。
【0070】
次に、ステップS8において、1次BF分離部20により、設置孔201に設置されたキュベット6内の試料(反応1および反応2が行われた後の試料)から、未反応のR1試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離する1次BF分離工程が行われる。このBF分離工程は、以下に説明する第1洗浄工程と、各4回の攪拌工程および第2洗浄工程とからなる。
【0071】
(1次BF分離部20における第1洗浄工程)
まず、図10に示すように、設置部201に保持されたキュベット6内の磁性粒子は、キュベット6の側方に配置される磁石202により集磁される。そして、洗浄機構(図示せず)のノズル(図示せず)によってキュベット6内の試料を吸引することにより、磁性粒子および磁性粒子に捕捉抗体を介して結合する抗原を除く不要成分(液体)を除去する(第1洗浄工程)。その後、不要成分を十分に除去するために、以下に説明する攪拌工程および第2洗浄工程が行われる。
【0072】
(1次BF分離部20における攪拌工程)
第1洗浄工程が行われたキュベット6内に洗浄機構(図示せず)によって洗浄液が供給された後、攪拌機構(図示せず)によりキュベット6が把持され旋回振動が加えられることにより攪拌が行われる。これにより、キュベット6内の洗浄液、不要成分および磁性粒子が攪拌され、磁性粒子とともにキュベット6の内壁に留まっていた不要成分(第1洗浄工程で除去しきれない不要成分)を分散させることが可能となる。また、この攪拌工程の間に洗浄機構(図示せず)のノズル(図示せず)が再度の吸引のために洗浄される。
【0073】
(1次BF分離部20における第2洗浄工程)
次に、1次BF分離部20の攪拌機構(図示せず)によって攪拌されたキュベット6内の磁性粒子がキュベット6の側方に配置される磁石202側に集磁された後、洗浄機構(図示せず)の洗浄済みのノズルにより洗浄液および不要成分が排出される。このようにキュベット6内の洗浄液を攪拌した後に吸引することにより、磁性粒子に巻き込まれて残余していた不要成分を除去することが可能となる。その後、上記の攪拌工程および第2洗浄工程が所定回数(3回)繰り返されることによって、残余の不要成分が除去される。このように、1次BF分離工程では、第1洗浄工程と、各4回の攪拌工程および第2洗浄工程とによる不要成分の除去が行われる。
【0074】
(R3試薬分注工程)
その後、ステップS9において、1次BF分離部20により不要成分と磁性粒子との分離が行われたキュベット6に所定量のR3試薬が分注される。まず、図4に示すように、1次BF分離部20の設置孔201からキュベット6がキャッチャ25bにより取り出され、第2BF受渡位置P13で第2キュベット搬送部15のキュベット挿入孔153に設置される。そして、第2キュベット搬送部15のキュベット挿入孔153に保持されたキュベット6がR3試薬分注位置P12に移動されるとともに、R1/R3設置部161が移動してR3試薬を収容した試薬容器9cが吸引位置P21に配置される。また、第1試薬分注アーム17が第1試薬設置ユニット16の上方まで移動して、試薬容器9cに収容されたR3試薬が孔部163aを介してピペット171により吸引される。そして、第1試薬分注アーム17が矢印X1方向にR3試薬分注位置P12まで移動して、キュベット挿入穴153に設置されたキュベット6にピペット171からR3試薬が分注(吐出)される。なお、図10および図11に示すように、R3試薬には、検体中の抗原に結合する(酵素)標識抗体が含まれている。
【0075】
(インキュベーション工程(図10および図11に示した反応3))
そして、ステップS10において、図4に示すように、第2キュベット搬送部15が抗原抗体反応テーブル19の側方まで矢印Y1方向に移動され、キュベット挿入穴153のキュベット6がキャッチャ25aにより第2反応部193の収納孔191に移送される。キャッチャ25aは、検体、R1試薬、R2試薬およびR3試薬が分注されたキュベット6をキュベット挿入穴153から取り出すと、キュベット6内の試料を攪拌した後、第2反応部193の収納孔191に設置する。攪拌された捕捉抗体(R1試薬)、抗原(検体)、磁性粒子(R2試薬)および標識抗体を含むR3試薬は、抗原抗体反応テーブル19の第2反応部193の収納孔191に保持されたキュベット6内で、所定時間インキュベーションされる。これにより、捕捉抗体(R1試薬)を介して磁性粒子(R2試薬)と結合した抗原と、標識抗体(R3試薬)とが結合する(反応3)。
【0076】
(抗原抗体反応テーブル19から2次BF分離部21への移送工程)
そして、ステップS11において、インキュベーションされた捕捉抗体(R1試薬)、抗原(検体)、磁性粒子(R2試薬)および標識抗体を含むR3試薬を収容したキュベット6は、2次BF分離部21の設置孔211に移送される。まず、図4に示すように、反応(反応3)後の試料を収容したキュベット6が、キャッチャ25aにより第2反応部193の収納孔191から第2キュベット搬送部15のキュベット挿入穴152に移送され、第2キュベット搬送部15により第2BF受渡位置P13まで搬送される。そして、第2BF受渡位置P13でキュベット挿入穴152のキュベット6がキャッチャ25bにより取り出され、矢印X2方向に移動されて2次BF分離部21の設置孔211に設置される。
【0077】
(2次BF分離部21における第1洗浄工程、攪拌工程、第2洗浄工程)
次に、ステップS12では、図10に示すように、上記した1次BF分離部20における1次BF分離工程(ステップS8参照)と同様に、2次BF分離部21において第1洗浄工程と各4回の攪拌工程および第2洗浄工程とからなる2次BF分離工程が行われる。これにより、検体の抗原と結合しない標識抗体を含むR3試薬(不要成分)の十分な除去を行うことが可能となる。なお、2次BF分離工程の内容は、上記した1次BF分離工程と同様である。
【0078】
(R4試薬分注工程)
この後、ステップS13において、不要成分が除去された標識抗体が結合した抗原を含む試料を収容したキュベット6にR4試薬(分散液)が分注される。まず、図4に示すように、2次BF分離工程の終了後のキュベット6は、キャッチャ25bにより2次BF分離部21の設置孔211から取り出され、矢印X2方向に移動されてキュベット保持部232に設置される。また、第3試薬分注アーム23が第2試薬設置ユニット22の上方に移動して、試薬容器9dに収容されたR4試薬が開口部221(図2参照)を介してピペット231により吸引されるとともに、第3試薬分注アーム23がキュベット保持部232の上方(R4試薬分注位置)まで移動して、キュベット保持部232に設置されたキュベット6にピペット231からR4試薬が分注(吐出)される。
【0079】
(キュベット保持部232から容器移送部30への移送工程)
R4試薬の分注後、ステップS14において、R4試薬が分注されたキュベット6が容器移送部30の設置部32に設けられた保持孔31に設置される。すなわち、R4試薬が分注されたキュベット6は、キャッチャ25bによりキュベット保持部232から取り出され、矢印X1方向に移動されて隣接する容器移送部30の保持孔31に移送される。
【0080】
(R5試薬分注工程)
そして、ステップS15において、容器移送部30の設置部32(保持孔31)に保持されたキュベット6に、発光基質を含むR5試薬が分注される。すなわち、第3試薬分注アーム23が第2試薬設置ユニット22の上方に移動して、試薬容器9eに収容されたR5試薬が開口部222(図2参照)を介してピペット231により吸引されるとともに、第3試薬分注アーム23が容器移送部30の保持孔31の上方(R5試薬分注位置)まで移動して、容器移送部30に設置されたキュベット6にピペット231からR5試薬が分注(吐出)される。なお、図10および図11に示すように、R5試薬には、R3試薬の標識抗体と反応して発光する発光基質が含まれている。
【0081】
(上層Uから中層Mへの下方移送工程)
容器移送部30の設置部32においてキュベット6にR5試薬が分注されると、ステップS16において、容器移送部30の設置部32に保持されたキュベット6が上層Uから中層Mに移送される。本実施形態では、図3に示すように、設置部32においてキュベット6にR5試薬が分注されると、昇降機構33が駆動されることによりキュベット6を保持したまま設置部32が下方(矢印Z2方向)に下降され、中層Mにおける所定位置まで移送される。
【0082】
(インキュベーション工程(図10および図11に示した反応4))
そして、ステップS17において、図5に示すように、容器移送部30のキュベット6が、キャッチャ44により容器移送部30の設置部32(保持孔31)から取り出されて、キュベット6内の試料が攪拌された後、酵素反応部41の収納孔411に設置される。攪拌された捕捉抗体(R1試薬)、抗原(検体)、磁性粒子(R2試薬)、標識抗体および発光基質を含むR5試薬は、酵素反応部41の収納孔411に設置されたキュベット6内で、所定時間インキュベーションされる。これにより、標識抗体(R3試薬)と発光基質(R5試薬)との反応(反応4)が進行する。
【0083】
(測定工程)
その後、ステップS18において、インキュベーションされた捕捉抗体(R1試薬)、抗原(検体)、磁性粒子(R2試薬)、標識抗体(R3試薬)および発光基質を含むR5試薬を収容したキュベット6は、キャッチャ44により酵素反応部41の収納孔411から取り出され、検出部42の設置部422に移送される。キュベット6が設置部422に設置されると、設置部422が矢印Y2方向に移動して検出部42の内部にキュベット6が取り込まれるとともに、開閉蓋421が閉じられる。そして、図11に示すように、検出部42においてR3試薬の標識抗体とR5試薬の発光基質との反応過程で生じる発光量を光電子増倍管(図示せず)により取得することによって、検体の分析が行われる。この際、図10に示すように、設置部422に設置されたキュベット6内の磁性粒子は、磁石423側に引き寄せられている。これにより、R3試薬の標識抗体とR5試薬の発光基質との反応過程で生じる発行量を測定する際に、磁性粒子が発光量の測定を妨げるのを抑制する。上記のようにして一実施形態による免疫分析装置1の分析動作が行われる。
【0084】
本実施形態では、上記のように、第1基台3に第1検体処理部10を設置するとともに、第1基台3の下方に配置された第2基台4に第2検体処理部40を設置し、かつ、上層Uから中層Mにキュベット6を移送する容器移送部30を設けることによって、複数の処理工程をそれぞれ実行するための複数のユニットを、上下(Z方向)に配置された第1基台3の第1検体処理部10と第2基台4の第2検体処理部40とに分けて設置することができるとともに、上層Uと中層Mとの間のキュベット6の移送を容器移送部30により行うことができる。これにより、多くのユニットを免疫分析装置1内に設置する必要がある場合にも、免疫分析装置1が水平方向(XY方向)に大きくなるのを抑制することができるとともに、複数のユニットを上下に分けて配置した場合にも、円滑に処理を行うことができる。その結果、処理を円滑に行いながら免疫分析装置1の設置面積を小さくすることができる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、第1基台3および第2基台4を、平面的に見て完全に重なるように上下に配置することによって、免疫分析装置1の水平方向(XY方向)の寸法を小さくすることができるので、免疫分析装置1を容易に小型化することができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、最上層である上層Uに第1検体処理部10を配置するとともに、第1検体処理部10に、第1試薬設置ユニット16および第2試薬設置ユニット22と、第1試薬分注アーム17、第2試薬分注アーム18および第3試薬分注アーム23とを設けている。これにより、第1検体処理部10へのユーザのアクセスが容易になるので、ユーザは、容易にR1試薬〜R5試薬を収容した試薬容器9a〜9eをそれぞれ第1試薬設置ユニット16および第2試薬設置ユニット22に設置することができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、最上層である上層Uに第1検体処理部10を配置するとともに、第1検体処理部10に、検体ラックセット部11と、検体分注アーム13とを設けている。これにより、第1検体処理部10へのユーザのアクセスが容易になるので、ユーザは、容易に試験管7を検体ラックセット部11に設置することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、最上層である上層Uに第1検体処理部10を配置するとともに、第1検体処理部10に、キュベット供給部24と、検体分注アーム13、第1試薬分注アーム17、第2試薬分注アーム18および第3試薬分注アーム23とを設けている。これにより、第1検体処理部10へのユーザのアクセスが容易になるので、ユーザは、容易にキュベット6をキュベット供給部24に投入することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、第1基台3の第1検体処理部10に、検体分注アーム13と、第1試薬分注アーム17、第2試薬分注アーム18および第3試薬分注アーム23と、キュベット6内の検体とR1試薬、R2試薬およびR3試薬とを反応させる工程(反応1〜反応3)を実行するための抗原抗体反応テーブル19とを設けるとともに、第2基台4の第2検体処理部40に、キュベット6内の試料とR5試薬とを反応させる工程(反応4)を実行するための酵素反応部41と、検出部42とを設け、第1検体処理部10の第1試薬分注アーム17、第2試薬分注アーム18および第3試薬分注アーム23によりR1試薬〜R3試薬とR4試薬およびR5試薬とが分注されたキュベット6を、容器移送部30により中層Mに移送するように構成した。このように構成することによって、キュベット6にR1試薬〜R3試薬を分注する各分注工程と、検体とR1試薬〜R3試薬との各反応工程(反応1〜反応3)と、キュベット6にR4試薬およびR5試薬を分注する各分注工程とを第1検体処理部10で行い、以降の処理工程で試料に試薬を添加する必要がなくなったキュベット6を容器移送部30によって中層Mに移送することができる。これにより、第2基台4(第2検体処理部40)に試薬分注アームを設置する必要がなくなる。また、第1基台3(第1検体処理部10)でR1試薬〜R5試薬の分注を行った後で、試料とR5試薬とを反応させる工程(反応4)を第2検体処理部40で行うことができるので、第2基台4に酵素反応部41と、検出部42とを設けた分だけ第1基台3(第1検体処理部10)に設置するユニットの数を減らすことができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、容器移送部30に保持されたキュベット6に第3試薬分注アーム23がR5試薬を分注するように構成することによって、第3試薬分注アーム23によるR5試薬の分注完了後に、即座に上層Uから中層Mにキュベット6を移送することができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、第1基台3の下方(矢印Z2方向)に設けられた第2基台4の第2検体処理部40に、光学検出ユニットからなる検出部42を設けることによって、第1基台3および第1基台3上の各ユニットによって外光が届きにくい下方の第2基台4に検出部42(光学検出ユニット)を配置することができるので、検出部42(光学検出ユニット)をより暗い位置に配置することができる。これにより、測定試料から発せられる光の検出部42(光学検出ユニット)による検出を、より精度良く行うことができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、第1基台3および第2基台4の下方に第3基台5を設け、第3基台5に、第1検体処理部10および第2検体処理部40により使用される洗浄液などの液体を収容した液体容器を設置するための洗浄液設置部51および52を設けることによって、洗浄液を収容した液体容器を第1基台3および第2基台4よりも下方に配置された第3基台5上に設置することができるので、ユーザは重量のある液体容器を上方の階層(上層Uおよび中層M)の位置まで持ち上げる必要がない。また、液体容器の交換時などに液体容器から液体がこぼれた場合であっても、第1基台3(第1検体処理部10)および第2基台4(第2検体処理部40)の各ユニットに液体が降りかかることを防止することができる。
【0093】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0095】
たとえば、上記一実施形態では、第1基台3上の第1検体処理部10による処理工程の終了後に、容器移送部30によって第1検体処理部10から第2基台4上の第2検体処理部40にキュベット6を移送する例を示しているが、本発明はこれに限られない。第2基台4の下方に第3基台を配置して第3基台上に第3検体処理部を設置し、第2検体処理部40による処理工程の終了後に、容器移送部30によってキュベット6を第3基台上の第3検体処理部に移送してもよい。なお、容器移送部30とは異なる他の容器移送部によってキュベット6を第2検体処理部40から第3検体処理部に移送してもよい。また、第1検体処理部10による処理工程の終了後に、容器移送部30によってキュベット6を第3検体処理部に移送し、第3検体処理部による処理工程の終了後に、容器移送部30によってキュベット6を第2検体処理部40に移送してもよい。

【0096】
また、本発明では、免疫分析装置1が実行する処理工程以外の他の処理工程をキュベット6内の検体に対して実行する処理ユニットが第1基台3または第2基台4上にさらに配置された構成としてもよいし、免疫分析装置1が備える所定の処理ユニットが第1基台3または第2基台4上から省略された構成としてもよい。
【0097】
また、上記一実施形態では、酵素反応部41および検出部42を第2基台4に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、酵素反応部および検出部以外のユニットが第2基台に配置されてもよく、たとえば、第3試薬分注アーム23および第2試薬設置ユニット22を第2基台4に設置してもよい。
【0098】
また、上記一実施形態では、測定試料を収容したキュベット6を検出部42の内部に取り込むことにより、測定試料中の成分を検出しているが、本発明はこれに限られない。たとえば、キュベット6に収容された測定試料をピペットやチューブなどにより検出部の内部に移送して、測定試料中の成分の検出を行ってもよい。
【0099】
また、上記一実施形態では、免疫分析装置1を、上層Uと、中層Mと、下層Lとからなる3階層構造とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、他の階層をさらに設けて4階層以上の構造としてもよいし、上層および下層からなる2階層構造としてもよい。
【0100】
また、上記一実施形態では、第1基台3と、第2基台4と、第3基台5とを同一形状に構成し、平面的に見て完全に重なるように上下方向に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、各基台が部分的に重なるように互いにずらして上下に配置してもよい。また、いずれかの基台を他の基台よりも大きくなるように構成してもよい。
【0101】
また、上記一実施形態では、容器移送部30の保持孔31によりキュベット6が保持された状態でキュベット6を中層Mに移送するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、容器移送部にチャック部材などを設けて、チャック部材によりキュベットを把持した状態でキュベットを中層Mに移送するように構成してもよい。
【0102】
また、上記一実施形態では、第1基台3上の第1検体処理部10における各種工程が終了した後に、容器移送部30によりキュベット6を中層Mに移送するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、容器移送部によりキュベットを一度中層Mに移送した後、再び上層Uに戻して処理工程を継続するように構成してもよい。また、中層Mから処理工程を開始して、上層Uにキュベットを移送するように構成してもよい。
【0103】
また、上記一実施形態では、第1基台3上の第1検体処理部10においてキュベット供給工程からR5試薬分注工程までの処理工程を実行し、第2基台4上の第2検体処理部40においてインキュベーション工程(酵素反応)および測定工程を実行しているが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2基台4上の第2検体処理部においてキュベット供給工程からR5試薬分注工程までの処理工程を実行し、容器移送部によりキュベットを上層Uに移送した後、第1基台3上の第1検体処理部においてインキュベーション工程(酵素反応)および測定工程を実行してもよい。
【0104】
また、上記一実施形態では、凹部や貫通孔がなく全体が板状に形成された第1基台3(設置部32の昇降領域を除く)、第2基台4および第3基台5によって上層U、中層Mおよび下層Lを形成しているが、本発明はこれに限られない。本発明では、各階層を形成する基台における各ユニットの載置領域のみを板状に形成し、載置領域以外の部分には貫通孔や凹部を形成してもよい。
【0105】
また、上記一実施形態では、第1基台3、第2基台4および第3基台5の各上面に所定のユニットが載置されているが、本発明はこれに限られない。本発明では、上層U,中層Mおよび下層Lに所定のユニットが設置されていればよい。たとえば、基台の下面に所定のユニットが取り付けられていてもよいし、基台の下面から所定のユニットが吊り下げられていてもよい。
【0106】
また、上記一実施形態では、容器移送部30が、キュベット6を上下方向(Z方向)に移送するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、容器移送部がキュベットを斜め上下方向に昇降(移送)するように構成してもよいし、上下方向および斜め上下方向以外の他の方向にキュベットを移送するように構成してもよい。
【0107】
また、上記一実施形態では、容器移送部30の昇降機構33をモータ331と、駆動ベルト332とによって構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、昇降機構をボールねじおよびボールナットにより構成してもよいし、ラックおよびピニオン機構によって構成してもよいし、また、これ以外の他の機構を採用してもよい。
【0108】
また、キュベット6内の試料液の温度を一定に保つために、容器移送部30の内壁に断熱処理を施してもよいし、容器移送部30に加温部を設けてもよい。
【0109】
また、上記一実施形態では、第3基台5に洗浄液設置部51および52と、電源設置部53と、コンピュータ設置部54と空圧源設置部55と、その他の設置部56との各種の設置領域を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。上記の各種設置部以外の設置領域を設けてもよいし、設置領域を設けなくてもよい。また、各設置部は任意の位置に配置してよい。
【0110】
また、上記一実施形態では、検体の分析に使用される液体を収容した液体容器の一つとして、洗浄液を収容した洗浄液容器を設置するための洗浄液設置部51および52を第3基台5に設けているが、本発明はこれに限られない。検体の分析に使用される液体を収容する液体容器として、検体に混合される試薬や希釈液などの液体を収容した液体容器を設置するための設置領域を第3基台5に設けてもよい。
【0111】
また、上記一実施形態では、検体および試薬を収容するための容器としてキュベットを用いているが、本発明はこれに限られない。液体を収容可能な容器であればよく、たとえば、検体の分注に用いられたピペットチップの先端をヒートシールにより熱融着し、先端が結合されたピペットチップに試薬を分注して上層Uから中層Mに移送するようにしてもよい。
【0112】
また、上記一実施形態では、中層Mの内部を覆う外側カバー28および下層Lの内部を覆う外側カバー29に加えて上層Uの内部を覆う本体カバー27を遮光性のある材料で形成することにより、上層Uの内部、中層Mの内部および下層Lの内部を遮光状態にしているが、本発明はこれに限られない。上層Uを覆う本体カバー27を透光性のある材料で形成したり、本体カバー27を設けないことにより、上層Uの内部に外部からの光が透過するように構成してもよい。この場合であっても、第1基台3、第1基台3上の各ユニットおよび外側カバー28、29によって中層Mの内部に外光が届くことを抑制できるため、中層Mの内部を遮光状態にすることができる。そのため、この場合には、ユーザが第1基台3上の各ユニットの動作を目視により容易に確認することができるとともに、中層Mの内部に設置された検出部42による検出を精度良く行うことができる。なお、第1基台3を遮光性のある材料で形成することにより、中層Mの内部をより暗い状態に保つことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11
図12