(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5801757
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】潜熱回収型給湯機の二次熱交換装置
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20060101AFI20151008BHJP
F24H 1/14 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
F24H9/00 B
F24H1/14 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-131719(P2012-131719)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-257053(P2013-257053A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】古舘 聡
(72)【発明者】
【氏名】布川 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】永井 裕明
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝明
【審査官】
吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0077307(KR,A)
【文献】
特表2011−506908(JP,A)
【文献】
特開2009−243725(JP,A)
【文献】
特開2012−017905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00 − 9/20
F24H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形のケーシングの底部一側寄りにはドレン排出口を形成し、このドレン排出口の反対側底部には燃焼ガスの流入口が形成され、ケーシングの上部中央には燃焼ガスの排気口を備え、更にケーシング内には立設された往きヘッダーと戻りヘッダーとの間に、複数本の吸熱パイプを密集して掛け渡した二次熱交換器を収納したものに於いて、前記ケーシング内高さ方向ほぼ中央を吸熱パイプも含めて仕切ると共に、流入口とは反対側には連通口を形成した仕切板を備え、更にこの仕切板より上方で排気口下方には、連通口から直接排気口に向かう燃焼ガスと、排気口下方を通過してから排気口に向かう燃焼ガスとに分割する補助仕切板を備えた事を特徴とする潜熱回収型給湯機の二次熱交換装置。
【請求項2】
前記ケーシング全体を、ドレン排出口側が最下方となるように傾斜させて取り付けた事を特徴とする請求項1記載の潜熱回収型給湯機の二次熱交換装置。
【請求項3】
前記流入口から仕切板までの間は、吸熱パイプをなくした事を特徴とする請求項1記載の潜熱回収型給湯機の二次熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱効率を確保しながら排気抵抗(燃焼室内圧)を低減し、更にドレンの排気口外への飛び跳ねを防止した潜熱回収型給湯機の二次熱交換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の潜熱回収型の給湯装置では、一次熱交換器を備えた燃焼室に連通してパイプ状の二次熱交換器を設けており、仕切板も傾斜させるなどして、ドレンの収集も良好に行うようにしたものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−281495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、二次熱交換器の熱効率を良くするために、熱交換パイプを密集して設けたり、燃焼室と二次熱交換部との連通部分や、二次熱交換部からの排出部分を狭くして、燃焼ガスとの熱交換時間を長くしたことで、排気抵抗が高くなり、燃焼室内圧も上昇して、燃焼空気圧を高めないと良好な燃焼が得られないと言う課題を有するものであり、又これを防止するために、排気口に連通する排出部を大きく開口すると、今度は熱交換パイプに生成される強酸性のドレンが、燃焼ガスの送風と共に排気口より飛び跳ねて、排気口や排気筒を腐食させてしまう新たな問題点を発生させるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するために、特に請求項1ではその構成を、箱形のケーシングの底部一側寄りにはドレン排出口を形成し、このドレン排出口の反対側底部には燃焼ガスの流入口が形成され、ケーシングの上部中央には燃焼ガスの排気口を備え、更にケーシング内には立設された往きヘッダーと戻りヘッダーとの間に、複数本の吸熱パイプを密集して掛け渡した二次熱交換器を収納したものに於いて、前記ケーシング内高さ方向ほぼ中央を吸熱パイプも含めて仕切ると共に、流入口とは反対側には連通口を形成した仕切板を備え、更にこの仕切板より上方で排気口下方には、連通口から直接排気口に向かう燃焼ガスと、排気口下方を通過してから排気口に向かう燃焼ガスとに分割する補助仕切板を備えたものである。
【0006】
又請求項2では、前記ケーシング全体を、ドレン排出口側が最下方となるように傾斜させて取り付けたものである。
【0007】
又請求項3では、前記流入口から仕切板までの間は、吸熱パイプをなくしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、ケーシング内のほぼ中央を吸熱パイプも含めて仕切板で上下に仕切ったことで、燃焼ガスの折り返しは連通口での1回のみで済み、燃焼ガスは上下の大きな流れで、良好に熱交換し熱交換効率が高められると共に、流通抵抗も少なく排気抵抗(燃焼室内圧)を低減出来るものであり、更に排気口下方の補助仕切板で上方の燃焼ガスの流を、排気口に直接向かう流と、一旦補助仕切板下方を流れてから排気口に向かう迂回した流れに、2分割出来るので、燃焼ガスの排気口に向かう大きな流れを阻止出来、ドレンの飛び跳ねが防止されて、排気口や排気筒の腐食も確実に防止されるものである。
【0009】
又請求項2では、前記ケーシング全体を、ドレン排出口側が最下方となるように傾斜させて取り付けたので、ドレンの捕集が確実に行われるものであり、しかも構成簡単で組み付けも容易に行えるものである。
【0010】
又請求項3によれば、前記流入口から仕切板までの間は、吸熱パイプをなくしたので、吸熱パイプが邪魔にならず燃焼ガスのケーシングへの流入がスムーズに行われるものであり、又ドレンの燃焼室内への滴下を確実に防止出来るので、燃焼室の腐食や破損が阻止され、極めて安心、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の一実施形態の二次熱交換装置を有する給湯装置を示す概略構成図。
【
図2】同一実施形態の二次熱交換装置の横断面概略図。
【
図3】同一実施形態の二次熱交換装置の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次にこの発明の一実施形態の給湯装置を
図1〜
図3に基づき説明する。
1は本実施形態の潜熱回収型の気化式石油給湯装置、2は石油等の燃油を気化する気化器、3は気化器2に備えられ燃油を気化可能な温度まで加熱する気化器ヒータ、4は気化器2の温度を検出する気化温度センサ、5は気化器2と連通し該気化器2で気化された気化ガスと一次空気とを予混合する混合室、6は混合室5底部に設けられ該混合室5を加熱する混合室ヒータ、7は混合室5の温度を検出する混合室温度センサ、8は混合室5と連通し該混合室5で予混合された予混合ガスを燃焼させる燃焼部としてのバーナ部、9は気化器2の背面でバーナ部8上に突出された複数個の吸熱フィンで、燃焼熱を気化器2にフィードバックして、気化器ヒータ3の通電量を極力抑えるものである。
【0013】
10は気化器2に燃油を噴霧するノズル、11はノズル10に送油管12を介して燃油を圧送する電磁ポンプ、13は燃焼ファンであり、送風路14を介して気化器2の入口およびバーナ部8とカバー枠15との間の空気室16とに連通し、吸込口17より吸引した燃焼空気を気化器2には予混合用の一次空気として供給し、空気室16には気化器2側方を通り混合室5の下方からバーナ部8で燃焼される二次空気として供給するものである。
【0014】
18は燃焼室19内に収容された一次熱交換器で、この一次熱交換器18は、バーナ部8の燃焼により発生した燃焼ガスから顕熱を回収し一次受熱管20を流通する水を加熱するフィンチューブ式で構成されており、21は一次熱交換器18を通過した後の燃焼ガスから潜熱を回収し細い吸熱パイプ22を流通する水を加熱する二次熱交換器であり、バーナ部8の上方に一次熱交換器18が配置され、一次熱交換器18の上方に二次熱交換器21が配置されているものであり、一次熱交換器18、二次熱交換器21の順に通過した燃焼ガスは排気口23より給湯装置1外に排気されるものである。
【0015】
前記二次熱交換器21は、燃焼室19上に設けられた箱形のケーシング24内に備えられ二次熱交換装置25を構成するものであり、ケーシング24の底部26左端の一側寄りにはドレン排出口27が形成され、このドレン排出口27の反対側の底部26には燃焼ガスの流入口28が形成され、ケーシング24の上部29の中央には上記した燃焼ガスの排気口23が備えられており、更にケーシング24内の二次熱交換器21は、底部26の左端の前後に立設された往きヘッダー30と戻りヘッダー31との間に、9本の細管からなり複数の蛇行部を形成した吸熱パイプ22を、密集して掛け渡して構成されたものであり、ケーシング24の高さ方向ほぼ中央で吸熱パイプ22の下から4本目と5本目の間には、このケーシング24内を上下に仕切る仕切板32が備えられ、更にこの仕切板32の流入口28とは反対側端部には、複数の長穴から構成された連通口33が形成され、仕切板32で仕切られたケーシング24内の上下を連通させるものであり、又仕切板32より上方で排気口23下方で、吸熱パイプ22の下から7本目と8本目の間には、連通口33から直接排気口23へ向かう燃焼ガスと、排気口23下方を迂回してから排気口23へ向かう燃焼ガスとに分割する該排気口23より大きな補助仕切板34を備えたものであり、燃焼ガスの流れをケーシング24内の下から上への大きな流れとしたので、邪魔ものがなく熱交換効率が良く、排気抵抗が減少して燃焼室19内圧も低く強力な送風をすることなく、良好な燃焼が容易に得ることが出来るものであり、又連通口33を出た燃焼ガスの流れを、2分割出来るので、燃焼ガスの排気口23に向かう大きな流れを阻止出来、ドレンの飛び跳ねが防止されて、排気口23や排気筒の腐食も確実に防止されるものである。
【0016】
35は燃焼室19上に二次熱交換装置25を載置するための取り付け基板で、ケーシング24との間にはファインシートからなるパッキン36を備え、燃焼室19との間には固定金具37を備えており、取り付け基板35自身は、正面視左側が薄く右側ほど徐々に厚なるように形成され、ケーシング24を燃焼室19上に載置することで、ケーシング24はドレン排出口27がある左側に向かって下り傾斜するように取り付けられるものである。
【0017】
更にケーシング24内の流入口28から仕切板32までの間は、吸熱パイプ22を短くしてUターンさせることで、吸熱パイプ22を位置させないことにより、燃焼ガスの流入の邪魔をせずにスムーズな流入を促すと共に、ドレンの燃焼室19内への侵入を確実に防止して、腐食や破損を阻止するものである。
【0018】
38はケーシング24の底部26で受けて回収されたドレンを中和装置39に導くドレン配管である。
40は給水源から供給される水を二次熱交換器21に流通させる給水管、41は一次熱交換器18で加熱された湯を流通させ、所定箇所に設けられた給湯栓(図示せず)に湯を供給する給湯管、42は給水管40から分岐した給水バイパス管であり、一次熱交換器18と二次熱交換器21と給水管40と給湯管41と給水バイパス管42とで水が流通する給湯回路を構成するものである。
【0019】
43は給湯管41と給水バイパス管42との接続部に設けられ、給湯管41からの湯と給水バイパス管42からの水とを混合し、その混合比を可変できる混合弁、44は給水管40に設けられ給水温度を検出する給水温度センサ、45は給水管40に設けられ流量を検出する流量センサ、46は給湯管41に設けられ一次熱交換器18及び二次熱交換器21で加熱された湯の温度を検出する熱交出口温度センサ、47は給湯管41に設けられ、混合弁43で混合された湯の温度を検出する給湯温度センサである。
【0020】
48はマイクロコンピュータを主体として、この潜熱回収型気化式石油給湯装置1の各センサの信号を受け、気化器ヒータ3や混合室ヒータ6や燃焼ファン13等の各アクチュエータの駆動を制御する制御手段である。
【0021】
49は前記制御手段48と通信可能に接続され、潜熱回収型気化式石油給湯装置1の遠隔操作を行うリモコンで、リモコン49は潜熱回収型気化式石油給湯装置1の運転のオンオフを指示する運転スイッチ50や、給湯温度を設定するための給湯温度設定スイッチなどからなる操作部51を備えているものである。
【0022】
次にこの一実施形態の潜熱回収型気化式石油給湯装置1の動作について説明する。
前記リモコン49の運転スイッチ50がオンされると、前記制御手段48は、気化温度センサ4の検出する温度に基づき気化器ヒータ3を制御すると共に、混合室温度センサ7の検出する温度に基づき混合室ヒータ6を制御し、気化器2および混合室5の予熱を行い、気化器2が燃油を気化可能な温度、例えば気化器2の温度が220℃〜225℃に維持され、混合室5の温度が125℃〜130℃に維持されるスタンバイ状態となる。このスタンバイ状態では、燃焼要求が発生した場合には素早くバーナ部8を着火でき、必要最低限の温度を維持することでスタンバイ時の消費電力を低減することができるものである。
【0023】
前記スタンバイ状態に於いて、給湯栓が開栓され、流量センサ45が最低作動流量以上の流量を検出して燃焼要求が発生したと前記制御手段48が判断すると、気化器ヒータ3および混合室ヒータ6を強制的にオンして着火性を良くし、電磁ポンプ11および燃焼ファン13を駆動させて、気化器2で気化された気化ガスと一次空気とを混合室5で予混合し、予混合ガスをバーナ部8より噴出して燃焼を開始させるものである。
【0024】
前記バーナ部8の燃焼により発生した燃焼ガスは、一次熱交換器18を流通し、一次熱交換器18を通過した後、二次熱交換器21を流通し、二次熱交換器21を通過した後、排気口23から潜熱回収型気化式石油給湯装置1外に排出されるものである。また、給水源から供給された水は、給水管40から吸熱パイプ22に導かれ、吸熱パイプ22から一次受熱管20へ順に流通して、ここで燃焼ガスとの熱交換により加熱され、そして、一次受熱管20から給湯管41に導かれ、混合弁43の開度調整によって給湯設定温度に温調された湯が最終的に給湯栓から給湯されるものである。
【0025】
この時、二次熱交換装置25では、ケーシング24の流入口28に吸熱パイプ22がなく、燃焼室19からの燃焼ガスは流入し易く、又吸熱パイプ22に付着したドレンが燃焼室19に滴下する心配が全くなく安心であり、流入した燃焼ガスは、仕切板32に案内されて流入口28とは逆の連通口33に向かって流れながら下の4本の吸熱パイプ22を加熱し、そして連通口33を通過して方向を変えて排気口23に向かって流通することで、上の5本の吸熱パイプ22を加熱して、排気口23から排気されるものであり、燃焼ガスの流通経路は、ケーシング24内の高さ方向の中央を仕切板32で仕切り、上下で流通方向を変えた2つの流通路としたので、無駄なく効率良く熱交換が出来、熱効率の向上を図ることが出来ると共に、流通抵抗も少なく排気抵抗(燃焼室内圧)を低減出来るものであり、容易に良好な燃焼得ることが出来るものである。
【0026】
又連通口33から排気口23に向かって流通する燃焼ガスは、排気口23の下方に補助仕切板34が備えられていることにより、直接排気口23に向かう流れと、排気口23下方の補助仕切板34の下を通過後に排気口23に向かう流れの2つの流れに分割されるので、大量の燃焼ガスが勢い良く排気口23から放出されることで発生していた、吸熱パイプ22に付着しているドレンが飛び跳ねて排気口23や排気筒を腐食する危険を確実に防止することが出来るもので、安心して使用出来るものである。
【0027】
更にケーシング24のドレン排出口27に向かう傾斜は、取り付け基板35によるケーシング24全体を傾斜して取り付けることで形成されるので、ドレンの捕集が確実に行われるものであり、しかも二次熱交換装置25自体は通常通りに作製出来、構成簡単で組み付けも容易に行えるものである。
【0028】
更にケーシング24内の流入口28から仕切板32までの間は、吸熱パイプ22を短くしてUターンさせることで、吸熱パイプ22を位置させないことにより、燃焼ガスの流入の邪魔をせずにスムーズな流入を促すと共に、ドレンの燃焼室19内への侵入を確実に防止して、腐食や破損を阻止するものである。
【符号の説明】
【0029】
21 二次熱交換器
22 吸熱パイプ
23 排気口
24 ケーシング
25 二次熱交換装置
26 底部
27 ドレン排出口
28 流入口
30 往きヘッダー
31 戻りヘッダー
32 仕切板
33 連通口
34 補助仕切板