特許第5801850号(P5801850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5801850
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】核医学画像データの定量化
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   G01T1/161 D
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-134468(P2013-134468)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-10855(P2015-10855A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2014年12月10日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】大▲さき▼ 洋充
(72)【発明者】
【氏名】立石 宇貴秀
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−300826(JP,A)
【文献】 特開2011−047819(JP,A)
【文献】 特開2008−061766(JP,A)
【文献】 特開2007−333471(JP,A)
【文献】 特開平11−153669(JP,A)
【文献】 特表平11−505450(JP,A)
【文献】 H Ito, A Ohshima, N Ohto, M Ogasawara, M Tsuzuki, K Takao, C Hijii, H Tanaka and K Nishioka,Relation between body composition and age in healthy Japanese subjects,European Journal of Clinical Nutrition,2001年 6月,Vol. 55, No. 6,462-470
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161− 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理手段と、プログラムを格納する記憶手段とを備えるシステムであって、前記プログラムは、前記処理手段に実行されることにより、前記システムに、
(a)核医学画像データを読み込むステップと;
(b)前記核医学画像データの被験者の年齢情報を読み込むステップと;
(c)放射能取り込み量を反映する指標を計算するステップと;
を少なくとも実行させるように構成され、ここで前記指標は、次の式(1)で表すことのできる値であり、

放射能取り込み量を反映する指標={減衰補正された関心領域内放射能量÷関心領域体積}/{放射能投与量÷除脂肪体重}・・・(1)

式(1)中、「除脂肪体重」は、次の式(2)で表すことのできる値であり、

除脂肪体重 = 係数1×身長 + 係数2×体重 + 係数3×年齢 + 係数4・・・(2)

式(2)中の年齢は、前記ステップ(b)において読み込まれた年齢情報に基づいて得られる値であり、式(2)中の各係数は、被験者の性別に基づいて選択される値である、システム。
【請求項2】
システムの処理手段に実行されることにより、前記システムに、
(a)核医学画像データを読み込むステップと;
(b)前記核医学画像データの被験者の年齢情報を読み込むステップと;
(c)放射能取り込み量を反映する指標を計算するステップと;
を少なくとも実行させるように構成される命令を備えるコンピュータプログラムであって、
前記指標は、次の式(1)で表すことのできる値であり、

放射能取り込み量を反映する指標={減衰補正された関心領域内放射能量÷関心領域体積}/{放射能投与量÷除脂肪体重}・・・(1)

式(1)中、「除脂肪体重」は、次の式(2)で表すことのできる値であり、

除脂肪体重 = 係数1×身長 + 係数2×体重 + 係数3×年齢 + 係数4・・・(2)

式(2)中の年齢は、前記ステップ(b)において読み込まれた年齢情報に基づいて得られる値であり、式(2)中の各係数は、被験者の性別に基づいて選択される値である、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核医学画像データの処理に関し、より詳細には、核医学検査の結果を客観的に評価することを目的とした新たな手法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
PETやSPECT、シンチグラフィーなどの核医学の技法に基づく画像化技術の原理は、放射線物質でマーキングした薬剤(放射性医薬品)を体内に投与し、体内から放出される放射線を検出して画像化するというものである。組織に異常が存在すると、正常組織に比べて放射性医薬品の代謝の様子が変化する。そこで、所望の代謝特性を有する放射性医薬品を選択して用いることにより、組織の機能異常を画像化することができる。
【0003】
PETやSPECT等で得られる一次的な画像は、放射線のカウント値を画像化したものである。このような画像においては、放射性医薬品の集積度が高い部位が明るく表示される。すなわち、当該部位に対応する画素は高い画素値を有する。しかし、放射能カウント値は様々な因子に影響を受けるため、特定の画素や関心領域の画素値が高いからといって、対応する組織に異常があるかどうかは必ずしも明らかではない。そこで、各画素値をある規則に従って規格化することにより、画素値を客観的に評価できるようにしようという試みがなされてきた。そのような規格化値として最も有名であるのがSUV(Standardized Uptake Value)である。SUVは次のような値である。
【0004】
[式1]
SUV={減衰補正された関心領域内放射能量(kBq)÷関心領域体積(ml)}/{放射能投与量(MBq)÷被験者の体重(kg)}
【0005】
すなわちSUVとは、関心領域の放射能濃度を体重あたりの放射能投与量で規格化した値であり、放射能または放射性医薬品の取り込み量を反映する指標となりうる値である。
【0006】
SUVは、同じように働いている組織については、被験者に依存せず同じような値となることが期待されていた。すなわち、例えば異常のない肝臓組織であれば被験者によらず同じような値となり、例えば異常のある肺組織であれば被験者によらず同じような値をとる、というような性質を有することが期待されていた。もしそうであれば、異なる被験者による複数の測定結果や、被験者は同一であるが時期の異なる複数の測定結果を互いに比較することが可能になる。(なお、測定値を比較可能な値に変換することを、本願の技術分野では「定量化する」という。)
【0007】
しかしSUVは、実際には、同じように働いている組織であっても、被験者の体重に応じてかなり変化することが分かっている。
【0008】
図1は、下掲非特許文献1のFig.1aを引用したものである。この図は、異常を認めない特定の組織のSUVを様々な被験者に対して測定し、それを横軸を体重にとってグラフ化したものである。(図中SUVbwと表記されているが、ここでbwとは、被験者の全体重を用いているという意味である。非特許文献1参照。)一見して明らかなように、体重が増加するほどSUVも大きくなる傾向があることが分かる。従って、SUVは組織異常を表す客観的指標としては常に適当というわけではないことが理解できる。
【0009】
そこで現在では、特に臨床応用においては、単なる体重ではなく、脂肪を除いた体重(除脂肪体重という)を使って上記のSUVを修正した値を用いることが多い。この考え方に基づいて修正された規格化量は、SUVlbmまたはSULと呼ばれており、次のように定義される。
【0010】
[式2]
SUL={減衰補正された関心領域内放射能量(kBq)÷関心領域体積(ml)}/{放射能投与量(MBq)÷被験者の除脂肪体重(kg)}
【0011】
ただし式2において、被験者の除脂肪体重はJamesの定義式というものを使って求める。Jamesの定義式は次の通りである。
女性 : 1.07×(体重) - 148×(体重/身長)2
男性 : 1.1 (体重) - 120 (体重/身長)2
【0012】
図2は、下掲非特許文献1のFig.1cを引用したものである。図1と同じデータを用いてSUL(SUVlbm)を計算し、グラフにプロットしたものである。この図に示されている実験結果によれば、SULは体重に依らず同じような値を呈している。
【0013】
このようにSULは、病変の有無に応じて患者に依らず同じような値を呈すると考えられており、その有用性が広く認められ、特に米国においては、PETによる治療効果判定手法として標準化されているPERCIST(PET Response Criteria in Solid Tumors)にも取り入れられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Yoshifumi Sugawara, Kenneth R. Zasadny et al, "Reevaluation of the Standardized Uptake Value for FDG: Variations with Body Weight and Methods for Correction", November 1999 Radiology, 213, 521-525.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、本願発明者がある病院における数百のFDG−PET適用例を用いて特定部位のSULの被験者間比較を行ったところ、図2に示す結果とは異なり、SULにも明らかな体重依存性が発見された(図3−5参照)。本願発明者の実験結果によれば、これまでの学問的知見とは異なり、SULには体重依存性があるということになる。そうすると、SULであっても治療効果の判定に用いるには必ずしも適当ではないことになる。
【0016】
例えば、抗癌剤の治療を受けた患者は、副作用のために体重が大幅に減少してしまう場合がある。そのような場合において、SULに体重依存性が存在するのであれば、抗癌剤治療の前後でSULを比較しても意味がないことになり、SULを用いて治療効果の判定を行うことはできなくなってしまう。
【0017】
このため、核医学データを定量化するための新たな手法を確立することが急務となった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明者は、SULに体重依存性が見られた原因が何かを検討し、二つの仮説に辿り着いた。その一つは、SULの計算式に含まれる除脂肪体重の推定法が、欧米人には適切であるが、その他の人種、例えば日本人には適切でないのではないかという仮説である。実は、図2に紹介した例をはじめとして、SULの体重依存性のなさを示す既存のデータは、全て欧米人を被験者として得られていて、他の人種、例えば日本人を被験者とした場合はどうなるかについては調べられていなかった。これは、除脂肪体重の推定に人種が影響を及ぼすとは考えられていなかったためである。
【0019】
もう一つは、Jamesの定義式には年齢の要素が加味されておらず、それが除脂肪体重の推定に悪影響を与えているのではないかという仮説である。
【0020】
本願発明者が考えるに、脂肪のつき方は食文化や生活習慣によって異なり、また年齢によっても変わってくるであろう。してみると、これらの人種や年齢の因子を考慮しなくては、除脂肪体重を正確に推定することはできないかもしれず、これらの因子を考慮に入れずにSUVを修正しても、例えば日本人にとっては適切な修正にはなっていない可能性があるだろう。
【0021】
そこで本願発明者は、日本人に対して適切な除脂肪体重の推定方法が存在しないかどうかを調査した。その結果、日本人の体組成をDXA法にて調査した、サンプルサイズの大きい(2411例)論文が見つかった。(H Ito, et.al. European Journal of Clinical Nutrition (2001) 55, 462-470.,以下Ito論文と称する)
【0022】
Ito論文によれば、日本人の除脂肪体重は、身長,体重,年齢を変数とした次の一次式で近似することができる。
【0023】
[式3]
日本人除脂肪体重(kg)= 係数1×身長 (m)+ 係数2×体重(kg) + 係数3×年齢 + 係数4
【0024】
Ito論文によれば、式3中の係数1〜4は次表の通りである。表中、括弧内は標準誤差を表す。
【表1】
【0025】
本願発明者は、SULと同様の量を、式(1)から得られる日本人除脂肪体重を用いて計算した。すなわち、この新たな量をSULjと表記すると、SULjは次のように表される。
【0026】
[式4]
SULj={減衰補正された関心領域内放射能量(kBq)÷関心領域体積(ml)}/{放射能投与量(MBq)÷日本人除脂肪体重(kg)}
【0027】
本願発明者は、多数の日本人被験者の正常組織のFDG−PETデータを用いて、様々な組織に対してSUV,SUL,SULjを計算し、横軸を体重にとってグラフ上にプロットしてみた。結果の一部を図3〜5に紹介する。
【0028】
図3は、肺組織からSUV,SUL,SULjを計算し、横軸に体重をとって結果をグラフ化したものである。すなわち例えば、この図におけるSULjは、関心領域内放射能量および関心領域体積としてそれぞれ肺組織の放射能量および体積を採用し、これらを式4に代入して計算した値である。
図3に示した結果について、各規格化量を一次式で近似してみると、図中に示されるように、SUVについてはy = 0.0061x + 0.0971,SULについてはy = 0.0043x + 0.1015,SULjについてはy = 0.0019x + 0.1657という結果となった。SUV,SUL,SULjについても値に体重依存性はみられるものの、その程度は他の2つに比べてSULjが明らかに小さくなった。これは図3から得られる印象とも合致している。このように、日本人については、SULjを使用することによって規格化量の体重依存性を小さくすることができることが示された。
【0029】
図4は、肝臓組織からSUV,SUL,SULjを計算し、図3と同様に横軸に体重をとって結果をグラフ化したものである。すなわち例えば、この図におけるSULjは、関心領域内放射能量および関心領域体積としてそれぞれ肝臓組織の放射能量および体積を採用し、それらを式4に代入して計算した値である。
図4を見ると、SULjには体重依存性がないか、殆ど見られない。これに対して、SUVやSULについては明らかな体重依存性が見られる。肺の場合と同様に、各規格化量を一次式で近似してみると、図中に示されるように、SUVの近似式の傾きが0.0168、SULの近似式の傾きが0.0112であるのに対して、SULjの近似式の傾きは0.0008と、殆ど傾きがないという結果となった。肝臓についての調査結果からも、日本人については、SULjを使用することによって規格化量の体重依存性を小さくすることができることが示された。
【0030】
図5は、脾臓組織からSUV,SUL,SULjを計算し、図3と同様に横軸に体重をとって結果をグラフ化したものである。すなわち例えば、この図におけるSULjは、関心領域内放射能量および関心領域体積としてそれぞれ脾臓組織の放射能量および体積を採用し、それらを式4に代入して計算した値である。
図5を見ると分かるように、脾臓組織においてもSULjには体重依存性は見られない。これに対して、SUVやSULについては明らかな体重依存性が見られる。肺や肝臓の場合と同様に、各規格化量を一次式で近似してみると、図中に示されるように、SULjの近似式の傾きは-0.0001と、殆ど傾きがないという結果となった。従って、脾臓についての調査結果からも、少なくとも日本人については、SULjを使用することによって規格化量の体重依存性を小さくすることができることが示された。
【0031】
図3図5に紹介した実験結果から明らかなように、式4で表されるSULjは、体重依存性がSUVやSULに比べて著しく小さく(または体重依存性が存在せず)、測定時期や被験者の異なる核医学検査の結果を比較する上で極めて好都合な指標であることが理解できる。
【0032】
これらの実験結果から、身長,体重,年齢を変数とする一次式を利用して除脂肪体重を推定し、推定した除脂肪体重を用いて関心領域の放射能濃度の規格化を行うことにより、被験者や測定時期が異なる複数の核医学データの間で比較可能な値を得ることができることが判明した。
【0033】
従って本発明の実施形態は、身長,体重,年齢を変数とする一次式を利用して除脂肪体重を計算する処理と、推定した除脂肪体重を用いて関心領域の放射能濃度の規格化を行う処理とを含む。これらの特徴により、核医学の手法により得られるデータから比較可能な情報を得ることができる。すなわち核医学データの定量化が実現される。
【0034】
本発明の好適な実施形態の例には、次のようなシステムが含まれる。このシステムは、処理手段と、プログラムを格納する記憶手段とを備えるシステムであって、前記プログラムは、前記処理手段に実行されることにより、前記システムに、
(a)核医学画像データを読み込むステップと;
(b)前記核医学画像データの被験者の年齢情報を読み込むステップと;
(c)放射能取り込み量を反映する指標を計算するステップと;
を少なくとも実行させるように構成さる。ここで前記指標は、次の式4'で表すことのできる値である。
【0035】
[式4']
放射能取り込み量を反映する指標={減衰補正された関心領域内放射能量÷関心領域体積}/{放射能投与量÷除脂肪体重}
【0036】
ただし式4'中、「除脂肪体重」は、次の式3'で表すことのできる値である。
【0037】
[式3']
除脂肪体重 = 係数1×身長 + 係数2×体重 + 係数3×年齢 + 係数4
【0038】
また、式3'中の年齢は、前記ステップ(b)において読み込まれた年齢情報に基づいて得られる値である。
【0039】
本発明の好適な実施形態の例には、次のようなコンピュータプログラムが含まれる。このコンピュータプログラムは、システムの処理手段に実行されることにより、前記システムに、
(a)核医学画像データを読み込むステップと;
(b)前記核医学画像データの被験者の年齢情報を読み込むステップと;
(c)放射能取り込み量を反映する指標を計算するステップと;
を少なくとも実行させるように構成される命令を備える。ここで前記指標は、次の式4'で表すことのできる値である。
【0040】
[式4']
放射能取り込み量を反映する指標={減衰補正された関心領域内放射能量÷関心領域体積}/{放射能投与量÷除脂肪体重}
【0041】
ただし式4'中、「除脂肪体重」は、次の式3'で表すことのできる値である。
【0042】
[式3']
除脂肪体重 = 係数1×身長 + 係数2×体重 + 係数3×年齢 + 係数4
【0043】
また、式3'中の年齢は、前記ステップ(b)において読み込まれた年齢情報に基づいて得られる値である。
【0044】
本発明の好適な実施形態の例には、次のような方法が含まれる。このコンピュータプログラムは、システムの処理手段に実行されることにより、前記システムが遂行する方法であって、
(a)核医学画像データを読み込むステップと;
(b)前記核医学画像データの被験者の年齢情報を読み込むステップと;
(c)放射能取り込み量を反映する指標を計算するステップと;
を少なくとも含む。ここで前記指標は、次の式4'で表すことのできる値である。
【0045】
[式4']
放射能取り込み量を反映する指標={減衰補正された関心領域内放射能量÷関心領域体積}/{放射能投与量÷除脂肪体重}
【0046】
ただし式4'中、「除脂肪体重」は、次の式3'で表すことのできる値である。
【0047】
[式3']
除脂肪体重 = 係数1×身長 + 係数2×体重 + 係数3×年齢 + 係数4
【0048】
また、式3'中の年齢は、前記ステップ(b)において読み込まれた年齢情報に基づいて得られる値である。
【0049】
表1の係数1〜4は、前述のように、日本人2400人のデータ用いて除脂肪体重を身長・体重・年齢を変数とする一次式で近似した研究から得られた係数であるが、欧米人に適合したSULが日本人には適合しなかったことに鑑みると、近似式に現れる係数は、人種によって異なるものである可能性がある。これらの係数を求める方法は前掲の非特許文献1に記載されているので、本発明の実施者によっては、新たなデータセットを用意し、独自に係数1〜4を求めて使用することを好む者もいるだろう。本願特許請求の範囲に特定される発明は、そのような実施形態も当然にその範囲に含んでいるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】非特許文献1のfig.1aを引用した図であり、従来から用いられているSUVに体重依存性が存在することを示した実験結果である。
図2】非特許文献1のfig.1cを引用した図であり、SULに体重依存性がないとの実験結果を示す図である。
図3】本願発明者の実験による、SUV,SUL,SULjの体重依存性の検討結果を示す図である。関心領域として肺領域が選択されている。
図4】本願発明者の実験による、SUV,SUL,SULjの体重依存性の検討結果を示す図である。関心領域として肝臓領域が選択されている。
図5】本願発明者の実験による、SUV,SUL,SULjの体重依存性の検討結果を示す図である。関心領域として脾臓領域が選択されている。
図6】本願発明による処理を実装しうる例示的システム100の主な構成を説明するための図である。
図7】本願発明の実施例たるSULj解析プログラム120がCPU102に実行されることにより、本願発明の実施例たるシステム100が遂行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8】ある実施例におけるROI設定の様子の一例を紹介する図である。
図9】ある実施例におけるROI設定の様子の一例を紹介する図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の好適な実施形態のより具体的な例を、添付図面を参照しつつ説明する。
【0052】
図6は、本明細書で開示される様々な処理を実行するためのシステム100の主な構成を説明するための図である。図6に描かれるように、システム100は、ハードウェア的には一般的なコンピュータと同様であり、CPU102,主記憶装置104,補助記憶装置106,ディスプレイ・インターフェース107,周辺機器インタフェース108,ネットワーク・インターフェース109などを備えることができる。一般的なコンピュータと同様に、主記憶装置104としては高速なRAM(ランダムアクセスメモリ)を使用することができ、補助記憶装置106としては、安価で大容量のハードディスクやSSDなどを用いることができる。システム100には、情報表示のためのディスプレイを接続することができ、これはディスプレイ・インターフェース107を介して接続される。またシステム100には、キーボードやマウス、タッチパネルのようなユーザインターフェースを接続することができ、これは周辺機器インタフェース108を介して接続される。ネットワーク・インターフェース109は、ネットワークを介して他のコンピュータやインターネットに接続するために用いられることができる。システム100の最も基本的な機能は、補助記憶装置106に格納されるオペレーティングシステム(OS)110がCPU102に実行されることにより提供される。また、システム100の特徴的な機能は、解析プログラム120がCPU102に実行されることにより提供される。解析プログラム120はCPU102に実行されることにより、特に、前述のSULjを計算する機能をシステム100に実装するように構成される。
【0053】
補助記憶装置106は、OS110やプログラム120のほかに、各種のデータファイルを格納することができてもよい。図示されているオリジナル画像データファイル132は、核医学画像が含まれるデータファイルであり、SULj解析プログラム120による解析処理の対象となるデータを含むファイルである。ここで説明される実施例において、データファイル132に含まれる核医学画像は、FDG−PET測定により得られた画像であり、各画素が放射線カウント数に応じた値を有する3次元画像である。しかし本発明は、このようなPET画像に限らず、SPECTやシンチグラフィーなど、各種の核医学画像に適用可能であることは注意されたい。
【0054】
測定条件データファイル134は、オリジナル画像データファイル132に含まれるPET画像が作成される基となったPET測定に関わる各種の条件を格納している。この条件には、実施例によって、放射性医薬品の投与時刻、種類、PET装置による放射線測定開始及び終了時刻、被験者の身長、体重、年齢、性別、人種、国籍、出身地のいずれか一つ以上が生まれてもよい。実施例によっては、測定条件データファイル134の内容は、オリジナル画像データファイル132の一部としてオリジナル画像データファイル132に一体化されている場合もあり、例えばそのヘッダの中に含まれている場合もある。また実施例によっては、データファイル134に含まれている少なくともいずれかの条件は、周辺機器インタフェース108に接続されるキーボード等を利用してユーザが入力したものである場合もある。補正データファイル136は、PET画像の解析に用いられる各種の補正情報を格納したデータファイルである。このような補正情報には、例えば、放射線が体内で吸収・散乱する効果を補正する情報や、放射性核種の崩壊に起因する放射能の減衰を補正する情報が含まれてもよい。実施例によっては、補正データファイル136の内容は、オリジナル画像データファイル132の中に含まれていたり、SULj解析プログラム120中に含まれていたりもよい。係数データファイル138は、SULj解析プログラム120が前述のSULjの計算に現れる除脂肪体重を計算するときに使用する係数を格納したデータファイルである。例えば前述の式3'の計算に必要な、表1に示す係数1〜4を格納したデータファイルである。実施によっては、係数データファイル138の内容は、SULj解析プログラム120の一部としてこのプログラムの中に一体化されていてもよい。処理結果データファイル140は、SULj解析プログラム120による解析結果を格納するデータファイルである。
【0055】
なお、システム100の製造販売時や起動時には、データファイル132〜140は、補助記憶装置106の中に記憶されていない場合が多いことに注意されたい。つまり、例えば、オリジナル画像データファイル132は、システム100が起動した後に、例えばネットワーク・インターフェース109を介してシステム100に転送されてきたデータである場合が多い。また前述のように、実施例によっては、データファイル134,136,138は、独立のデータファイルとしては存在せず、それらの内容は、SULj解析プログラム120やオリジナル画像データファイル132の中に一体化されている場合もある。処理結果データファイル140は、SULj解析プログラム120による解析が行われる前は存在しない。したがって、図示されるデータファイル132〜140は、本発明の実施形態の必須構成要件ではないことに注意されたい。また、データファイル132〜140は、それぞれ1つだけではなく複数格納される場合もあることに注意されたい。例えば、SULj解析プログラム120による解析の対象となるオリジナル画像データファイル132が複数個補助記憶装置106に格納されている場合もある。これらのデータファイル132のそれぞれは、例えば、同じ被験者について時期を変えて測定して得られたPET画像に対応するものであったり、異なる被験者について測定して得られたPET画像に対応するものであったりするであろう。データファイル132が複数個存在することに対応して、処理結果のデータファイル140も複数個存在してもよいだろう。実施形態によっては、SULj解析プログラム120は、複数のデータファイル140の内容を、比較可能に表示することができるように構成されてもよい。
【0056】
システム100は、図6に描かれた要素の他にも、電源や冷却装置など通常のコンピュータシステムが備える装置と同様の構成を備えることができる。コンピュータシステムの実装形態には、記憶装置の分散・冗長化やCPUの仮想化を利用したものなど、様々な形態のものが知られているが、本明細書に開示される事項は、どのような形態のコンピュータシステム上に搭載されてもよい。本明細書に開示される事項は、一般的に、(1)処理手段に実行されることにより、当該処理手段を備える装置またはシステムに、本明細書で説明される各種の処理を遂行させるように構成される命令を備えるプログラム、(2)当該処理手段が当該プログラムを実行することにより実現される装置またはシステムの動作方法、(3)当該プログラム及び当該プログラムを実行するように構成される処理手段を備える装置またはシステムなどとして具現化されることができる。
【0057】
次に図7を参照して、SULj解析プログラム120がCPU102に実行されることによりシステム100が遂行する処理の流れを説明する。
【0058】
ステップ200は処理の開始を示す。ステップ202では、SULj解析プログラム120による解析処理を行う準備として、オリジナル画像データファイル132の少なくとも一部が、主記憶装置104へコピーされる。ステップ204では、オリジナル画像データファイル132に含まれる画像データに関わるPET測定条件の情報の取得が行われる。このステップは、実施例によっては、前述の測定条件データファイル134をロードすることによって行われる。また別の実施例では、オリジナル画像データファイル132の中に格納されている各種条件情報を読み取ることによって行われる。またさらに別の実施例では、周辺機器インタフェース108を介して接続されるキーボード等から各種条件の入力を受けてもよい。このときSULj解析プログラム120の命令に従うCPU102は、ディスプレイ・インターフェース107を介して、これに接続されるディスプレイ上に、測定条件を入力すべき旨のメッセージを表示してもよい。
【0059】
ステップ206では、オリジナル画像データファイル132に含まれる画像データ(カウント数)を補正するための各種情報の取得が行われる。このような補正情報には、例えば、放射線が体内で吸収・散乱する効果を補正する情報や、放射性核種の崩壊に起因する放射能の減衰を補正する情報が含まれてもよい。実施例によっては、この情報は、補正データファイル136を読み込むことにより行われてもよい。別の実施例では、SULj解析プログラム120の中にそのような補正情報を計算する機能が組み込まれていてもよく、ステップ204で得られた測定条件情報の一部(例えば放射線医薬品の投与開始時刻や種類、被験者の頭囲や胸囲、胴囲など)に基づいて、SULj解析プログラム120の命令に従うCPU102がこれらの補正情報を計算してもよい。さらに別の実施例では、オリジナル画像データファイル132に含まれる画像データが既に、必要な補正を施されたデータである場合もあり、その場合はステップ206は不要となる。
【0060】
ステップ208では、前述のSULjの計算に必要な除脂肪体重を計算するとき(後述のステップ212)に使用する係数情報の取得が行われる。実施例によっては、係数情報を取得することは、係数データファイル138を読み込むことを含んでもよい。係数情報の例は、例えば表1に示す係数1〜4である。表1に明らかなように、係数1〜4の値は性別に依存する。したがってステップ208は、ステップ204で取得した被験者の性別情報に合致した係数を、係数データファイル138や図示しない別のデータベースの中から検索することを含んでもよい。表1の係数1〜4は、前述のように、日本人2400人のデータ用いて除脂肪体重を身長・体重・年齢を変数とする一次式で近似した研究から得られた係数であるが、欧米人には適合したSULが日本人には適合しなかったことに鑑みると、表1の係数1〜4は、人種によって異なるものである可能性がある。したがってステップ208は、ステップ204で取得した被験者の国籍や人種などの情報に基づいて、これらに適合する係数を、係数データファイル138や図示しない別のデータベースの中から検索することを含んでもよい。また実施形態によっては、これらの係数は、SULj解析プログラム120の一部として当該プログラムの中に含まれている場合もある。その場合、ステップ208において係数データファイル138を読み込んだり、これらの係数を格納している図示しない外部のデータベースにアクセスしたりする必要は無い。また、実施形態によっては、後述の除脂肪体重計算ステップ(ステップ212)において使用される計算式のソースコードに、予め表1の係数1〜4が記載される場合もある。この場合は、係数情報の取得ステップ208は不要となり、ただ被験者の性別に興じて適合する計算式を選択すればよいことになる。
【0061】
ステップ210は、SULjを導出する関心領域(ROI)を設定するステップである。関心領域は、例えば体全体である場合もあれば、脳、肺、心臓、肝臓、脾臓、骨など、特定の臓器である場合もある。さらにこれらの臓器の中の特定の領域である場合もある。実施形態によっては、各画素1つずつを関心領域とみなす場合もあれば、小数の画素(例えばxyz方向に3画素×3画素×3画素で囲まれた領域)を関心領域と設定する場合もあるだろう。関心領域の設定は自動で行ってもよいし、手動または半自動で行ってもよい。PETやSPECTなど核医学画像中に、データ解析の対象となる関心領域を設定する方法は既に多くの例が存在し、PET装置やSPECT装置等の付属ソフトウェアにも、そのような機能が搭載されている場合が多い。臓器領域の自動抽出は、解析の対象となる核医学画像を標準人体形状に変形し(または標準人体形状を解析対象画像と同じような形状に変形し)、標準人体形状において各臓器に対応する領域を、解析対象核医学画像においてもそれぞれの臓器領域であるとみなすことが多い。関心領域を手動で設定する場合は、解析対象画像の所望の断面をディスプレイに表示し、マウス等で所望の範囲を囲むなどのやり方を通じて設定するように構成することができる。また、システムが関心領域の候補をいくつか掲示し、その候補の形状をマウスなどを用いて手動で調節するようにしてもよい。SULj解析プログラム120は、CPU102に実行されることにより、これらの関心領域設定機能をシステム100に実装する命令のセットを備えていることが好ましい。しかしながら、関心領域は常に画像全体や特定の領域、または画素一つ一つであるとして、ROI設定のための特別な処理を行わず、デフォルトの領域を関心領域とするような実施形態も存在しうる。
【0062】
図8および図9に、ROI設定の具体例を載せた。図8は、肺領域にROIを設定した例である。本例は、ディスプレイ・インターフェース107に接続されたディスプレイに表示されている断層像800の所望の場所を、周辺機器インタフェース108に接続されているマウスで選択することにより、ROIを設定することができるように構成されている。たとえば、断層像800上にマウスカーソルを位置させ、所望の場所でマウスボタンを押してそのままマウスを移動し、所望の場所でマウスボタンを離すと、これらのボタン操作および移動操作に応じて画面上に円802が描かれ、ROIは、断面がこの円となる球内と設定されるように構成されることができる。本例は、当該ROIの統計データ804が自動的に計算・表示されるように構成されており、ROIとなる球の体積が37.60cm,SULjの最大値、最小値、標準偏差がそれぞれ1.78,1.43,0.11であると計算・表示されたことが示されている。図9には、axial,coronal,sagittal各断面図上でROIを設定した様子が描かれている。図9には、円または楕円902a〜902gが描かれているが、これらはいずれも上述のようなマウス操作で描かれる円または楕円である。ROIは、断面がこれらの円または楕円となる球または楕円体として設定される。SULj解析プログラム120は、CPU102に実行されることにより、上述のようなマウスによるROI設定機能をシステム100に実装するように構成されていることが好ましい。
【0063】
ステップ212では、画像データ132に写っている被験者の除脂肪体重の計算が行われる。この計算は、前述の式3または式3'に従って行われる。式3'を再掲すると次の通りである。
【0064】
[式3']
除脂肪体重 = 係数1×身長 + 係数2×体重 + 係数3×年齢 + 係数4
【0065】
好適な実施形態においては、除脂肪体重および体重の単位はkgであり、身長の単位はメートルである。すなわち式3と同じとなる。しかしながら、実施形態によっては、kgの代わりにgを用いてもよいだろうし、メートルの代わりにcmを用いてもよいだろう。単位が変わると係数1〜4も変わる。従って、係数1〜4の値は、身長や体重の単位に応じて実施形態によって異なる可能性がある。
【0066】
除脂肪体重の計算が式3'に従って行われるとはいえ、SULj解析プログラム120のソースコードに式3'が直接記載されていなければならないという訳ではない。ソースコードによっては、始めの2項だけを先に計算し、後ろの2項は後で計算するような書き方がされている場合もあるだろう。ソースコードによっては、身長や体重が、例えば(100cm+70cm)や、(50kg+20kg)のように記載され、それに応じて例えば係数1を乗ずる項が2つ以上存在する場合もあるだろう。しかし、このような形態も全て本願請求項に係る発明の範囲に入るものであって、除脂肪体重の計算が、式3または式3'に従って行われたものとして理解可能である形態であれば、全て本願請求項に係る発明の範囲に入るものである。
【0067】
ステップ214では、SULjの計算が行われる。この計算は、前述の式4または式4'に従って行われる。式4'を再掲すると次の通りである。
【0068】
[式4']
SULj={減衰補正された関心領域内放射能量÷関心領域体積}/{放射能投与量÷除脂肪体重}
【0069】
式4'中に現れる関心領域とは、ステップ210で設定された関心領域(またはデフォルトで定められる領域)である。実施形態によっては、関心領域内放射能量は、関心領域内の画素値の累積値とすることができる。「減衰補正された関心領域内放射能量」とは、ステップ206で得られた補正情報に基づいて、体組織による吸収・散乱の影響や、放射性核種の崩壊の影響等の補正を入れた放射能量である。実施形態によっては、解析の対象となるデータ132の画素値に既にこれらの補正が入っている場合があるので、その場合は、ステップ214において新たに減衰補正を行なう必要ない。
【0070】
式4'中の「関心領域体積」は、好適な実施形態において、関心領域内の画素数に応じた値であることができる。式4'中の「放射能投与量」は、ステップ204において得られる情報であることができる。式4'中の「除脂肪体重」は、ステップ212で得られた値である。
【0071】
好適な実施形態において、「減衰補正された関心領域内放射能量」の単位はkBqであり、「関心領域体積」の単位はmlであり、「放射能投与量」の単位はMBqであり、除脂肪体重の単位はkgである。すなわち式4と同一となる。しかしながら、本発明の実施形態がこれらの単位の使用に限定されるものではないことはもちろんである。
【0072】
除脂肪体重の計算が式4'に従って行われるとはいえ、SULj解析プログラム120のソースコードに式4'が直接記載されていなければならないという訳ではない。ソースコードによっては、分母を先に計算し、分子は後で計算するような書き方がされている場合もあるだろう。分子の計算に関し、ソースコードによっては、関心領域内放射能量を計算してそれを減衰補正した後に関心領域体積で割る書き方をする場合もあれば、{関心領域内放射能量÷関心領域体積}を先に計算して、それに減衰補正のための補正項を乗ずるという書き方をする場合もあるだろう。ステップ212においても同様であるが、SULjを計算するためのソースコードの書き方には様々なバリエーションが存在しうる。しかしながら、そのようなバリエーションも全て、SULjが式4または式4'に従って行われたものとして理解可能である限り、例外なく本願請求項に係る発明の範囲に入るものである。
【0073】
関心領域が複数設定される場合は、それぞれの関心領域についてステップ214が繰り返されてもよい。
【0074】
ステップ216は、SULjの計算結果を主記憶装置104又は/及び補助記憶装置106に格納する処理を表している。計算結果を格納するデータファイルは、図6において処理結果データ140として例示されている。実施形態によっては、被験者や測定時期の異なる複数のデータ132を解析した結果として、それぞれに対応する複数の処理結果データ140が格納されていてもよい。
【0075】
ステップ218は、計算したSULjの表示を行なう処理を表している。この表示は様々なものであることができる。例えば、各画素または小数の画素による区画を関心領域とみなすような実施形態では、各画素または区画毎にSULjが計算されるので、これをあたかも3D画像または断層画像のように表示することができる。すなわち、放射線カウント値に基づく濃淡で表された通常の核医学画像ではなく、SULjの値に基づく濃淡で表された核医学画像を提供することができる。放射線カウント値に基づく濃淡で表された核医学画像は、被験者や測定時期が異なる他の核医学画像とは比較が困難な画像であるが、SULjの値に基づく濃淡で表された核医学画像であれば、上述のように、比較が可能である。実施形態によっては、同じ被験者の測定時期が異なる複数の核医学画像の特定の関心領域(例えば特定の臓器)における、SULjの変化を、横軸の時間に取ったグラフで表示してもよい。前述のように、SULjは放射能取り込み量を反映する指標であり、すなわち組織の代謝機能を反映する指標であるので、そのようなグラフは、時間と共に組織異常がどのように変化していくか、また、治療が施された場合にその治療の効果がみられるかどうかをみるために、有用な情報となりうる。
【0076】
ステップ220は処理の終了を表す。
【0077】
本発明の実施形態を好適な例を用いて説明してきたが、これらの例は本発明の範囲を限定するために紹介されたわけではなく、特許法の要件を満たし、本発明の理解に資するために紹介されたものである。本発明は様々な形態で具現化されることができ、本発明の実施形態には、ここに例示した以外にも多くのバリエーションが存在する。説明された各種の実施例に含まれている個々の特徴は、その特徴が含まれることが直接記載されている実施例と共にしか使用できないものではなく、ここで説明された他の実施例や説明されていない各種の具現化例においても、組み合わせて使用可能である。特にフローチャートで紹介された処理の順番は、必ず紹介された順番で実行しなければならないわけではなく、実施するものの好みに応じて、順序を入れ替えたり並列的に同時実行したり、さらに複数のブロックを一体不可分に実装したり、適当なループとして実行したりするように実装してもよい。また実施形態によっては、フローチャートのブロックのいくつかは実装されない場合がある。例えばステップ206や208、210が不要である実施形態があり得ることは前述の通りである。これらのバリエーションは全て本発明の範囲に含まれるものである。請求項に特定される処理の記載順も、処理の必須の順番を特定しているわけではなく、例えば処理の順番が異なる実施形態や、ループを含んで処理が実行されるような実施形態なども、請求項に係る発明の範囲に含まれるものである。現在の特許請求の範囲で特許請求がなされているか否かに関わらず、出願人は、本発明の思想を逸脱しない全ての形態について、特許を受ける権利を有することを主張するものであることを記しておく。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9