(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1の記載において、前記回転ホルダが回転中立位置から最も離れた第1回転位置に設定されたときに前記回転スイッチ機構が第1の信号を出力し、かつ、前記回転ホルダが回転中立位置から一方向へ離れて前記第1回転位置に至る途中の第2回転位置に設定されたとき、前記操作軸を傾倒することによって前記スライドスイッチ機構が該操作軸の傾倒方向に対応する第2の信号を出力すると共に、前記回転ホルダが回転中立位置から他方向へ離れて前記第1回転位置に至る途中の第3回転位置に設定されたとき、前記操作軸を傾倒することによって前記スライドスイッチ機構が該操作軸の傾倒方向に対応する第3の信号を出力するようにしたことを特徴とする多方向スイッチ装置。
請求項2の記載において、前記回転ホルダが前記ハウジング内で前記回路基板の一面側の収納空間に配置されており、前記操作軸が前記回転ホルダとの当接箇所を揺動支点として傾倒すると共に、前記ハウジング内で前記回路基板の他面側の収納空間に前記操作軸の他端部が配置されていることを特徴とする多方向スイッチ装置。
請求項2または3の記載において、前記回転ホルダと前記ハウジングのいずれか一方に、前記回転ホルダの回転方向に沿って延在して複数箇所に谷部を有するカム面が設けられていると共に、いずれか他方に前記カム面に弾接して前記谷部に係脱可能な係合部材が保持されており、かつ、前記カム面が前記回転ホルダを前記回転中立位置と前記第1乃至第3回転位置とにそれぞれ位置決めするための少なくとも4つの前記谷部を有することを特徴とする多方向スイッチ装置。
請求項2〜4のいずれか1項の記載において、前記ハウジングの内壁面に円環状に延びる環状溝部と所定間隔をなして外方に延びる直線状溝部とを連続させてなるガイド溝が設けられていると共に、前記回転スライダに前記ガイド溝に位置規制される複数の摺動ピンが突設されており、前記回転スライダの回転時に前記摺動ピンが前記環状溝部に沿って移動し、前記回転スライダのスライド時に前記摺動ピンが前記直線状溝部に沿って移動するようにしたことを特徴とする多方向スイッチ装置。
請求項2〜5のいずれか1項の記載において、前記操作軸の他端部にばね部材によって軸線方向外側へ付勢されたアクチュエータが保持されていると共に、前記ハウジングの内底部に前記アクチュエータを介して前記操作軸を支持する凹状受け面が形成されており、この凹状受け面に弾接する前記アクチュエータが前記操作軸の傾倒に伴って該凹状受け面を摺動するようにしたことを特徴とする多方向スイッチ装置。
請求項7の記載において、前記回路基板の一面で前記透孔を包囲する領域に、該回路基板よりも耐熱性に富むウェハが載置されており、このウェハに前記第1固定接点が設けられていることを特徴とする多方向スイッチ装置。
請求項8の記載において、前記第1固定接点から導出されたリード端子が前記ウェハの外周部の複数箇所に配設されており、これら各リード端子を前記回路基板の対応する接続ランドに半田付けすることによって、前記ウェハが前記回路基板に電気的かつ機械的に接続されていることを特徴とする多方向スイッチ装置。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、車体の左右に付設されたサイドミラーの倒伏・起立動作や視角調整動作などを電動で行うパワーミラー装置が多く搭載されている。通常、この種のパワーミラー装置の入力操作手段は、左右いずれかのサイドミラーを選択するためのスイッチ機構と、選択したサイドミラーの鏡面を傾動させて視角を調整するためのスイッチ機構と、左右のサイドミラーを同時に倒伏状態または起立状態に切り替えるためのスイッチ機構とを備えている。
【0003】
ところで、パワーミラー装置の入力操作手段として用いられるスイッチ装置が、上記した3種のスイッチ機構をそれぞれ異なる操作ノブによって操作するという構成になっている場合、スイッチ装置全体が大型化してスペースファクタが悪くなるだけでなく、連続的な操作を実行する際に異なる操作ノブに手指を移動させる必要が生じて操作性が悪くなる。そのため、これら3種のスイッチ機構のうち、2種のスイッチ機構については操作ノブを共通化し、計2つの操作ノブで3種のスイッチ機構を選択的に操作できるように構成したものもある。しかし、使い勝手を考慮すると、1つの操作ノブで3種のスイッチ機構を選択的に操作できた方が便利であり、スイッチ装置全体のスペースファクタも向上させ易い。ただし、3種のスイッチ機構の操作ノブを1つに共通化した場合、それぞれのスイッチ機構の操作方法が明確に区別できるようになっていないと誤操作し易くなる。
【0004】
そこで従来より、操作ノブを取着した操作軸に対して押し込み操作と回転操作と傾倒操作を選択的に行えるように構成しておき、押し込み操作によってサイドミラーの倒伏・起立動作を可能にすると共に、回転操作によって左右のサイドミラーの選択を可能とし、かつ、傾倒操作によってサイドミラーの視角調整を可能にした多方向スイッチ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
かかる従来の多方向スイッチ装置では、操作軸を軸線方向へ押し込み操作すると第1スライダが一体的に押し下げられ、この第1スライダに保持された可動接点が側方のウェハに設けられた固定接点に接触するため、左右のサイドミラーに倒伏動作または起立動作を行わせる指令信号が出力されるようになっている。また、サイドミラーが起立状態のときに操作軸を回転操作すると回転部材が一体的に回転し、この回転部材に保持された可動接点が回路基板の片面に設けられた固定接点に接触するため、操作軸の回転操作方向に応じて左右いずれかのサイドミラーを選択するというミラー選択信号が出力されるようになっている。また、サイドミラーが選択されているときに操作軸を傾倒操作すると、操作軸に駆動された第2スライダが回路基板に沿って直線状にスライドし、この第2スライダに保持された可動接点が回路基板の他面に設けられた固定接点に接触するため、選択されているサイドミラーの鏡面を操作軸の傾倒方向へ傾動させるという視角調整信号が出力されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された多方向スイッチ装置では、操作軸に対する3種類の操作(押し込み操作と回転操作および傾倒操作)に個別に連動する3つの部材(第1スライダと回転部材および第2スライダ)を必要とするだけでなく、回路基板の他にウェハが必要となり、しかも押し込み操作時に操作軸をロックしたり自動復帰させるために係合ピンや復帰ばねを用いたカム機構が必要なため、部品点数が増大して低コスト化を図りにくいという問題があった。また、操作軸が軸線方向へ押し込み操作できるように奥行き寸法(高さ寸法)を確保せねばならず、かつ、第1スライダの側方にウェハ等を組み込むスペースを確保しなければならないため、スイッチ装置全体の小型化も容易でないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、操作性に優れ低コスト化や小型化も容易な多方向スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の多方向スイッチ装置は、回転操作かつ傾倒操作が可能で一端部に操作ノブを有する操作軸と、この操作軸を回動可能かつ揺動可能に支持するハウジングとを備え、前記ハウジング内に、前記操作軸を貫通させる透孔を有する回路基板と、この回路基板に一体化された第1固定接点および第2固定接点と、前記操作軸の揺動を許容する遊嵌状態で外挿されると共に、前記操作軸と一体的に回転する回転ホルダと、前記操作軸に外挿されて一体的に回転すると共に、傾倒した前記操作軸に駆動されて前記回路基板に沿って直線状にスライドする回転スライダと、前記回転ホルダに保持されて前記第1固定接点に接離可能な第1可動接点と、前記回転スライダに保持されて前記第2固定接点に接離可能な第2可動接点とを設け、これら各部のうち、前記回転ホルダと前記第1可動接点および前記第1固定接点を含む回転スイッチ機構が前記回路基板の一面側に配設されると共に、前記回転スライダと前記第2可動接点および前記第2固定接点を含むスライドスイッチ機構が前記回路基板の他面側に配設されており、かつ、前記回転スイッチ機構が前記回転ホルダの少なくとも1つの回転位置に応じた信号を出力可能であると共に、前記回転ホルダが所定の回転位置に設定されているときに、前記スライドスイッチ機構が前記操作軸の傾倒方向に対応する信号を出力可能であるという構成にした。
【0010】
このように構成された多方向スイッチ装置は、操作軸を回転操作することによって回転スイッチ機構から特定の信号を出力させることができるのみならず、回転ホルダが所定の回転位置に設定されるように操作軸を回転操作したうえで、該操作軸を傾倒操作することによって、回転操作位置と傾倒操作方向に応じた信号をスライドスイッチ機構から出力させることができる。つまり、後者の信号は、操作軸の傾倒操作方向に対応しているだけでなく回転操作位置にも対応している信号なので、例えば相異なる2つの回転操作位置でそれぞれ操作軸を同じ向きに傾倒操作すれば相異なる信号が出力されることになる。したがって、この多方向スイッチ装置は、パワーミラー装置の入力操作手段などで必要とされる各種のスイッチ機能を、回路基板の一面側に配設した回転スイッチ機構と他面側に配設したスライドスイッチ機構とによって実現することができる。また、この多方向スイッチ装置は、1つの操作ノブで回転操作と傾倒操作とを選択的に行えるため使い勝手が良好であり、かつ、押し込み操作が不要なため奥行き寸法(高さ寸法)ならびに部品点数を抑制し易い。
【0011】
上記の構成において、回転ホルダが回転中立位置から最も離れた第1回転位置に設定されたときに回転スイッチ機構が第1の信号を出力し、かつ、回転ホルダが回転中立位置から一方向へ離れて第1回転位置に至る途中の第2回転位置に設定されたとき、操作軸を傾倒することによってスライドスイッチ機構が操作軸の傾倒方向に対応する第2の信号を出力すると共に、回転ホルダが回転中立位置から他方向へ離れて第1回転位置に至る途中の第3回転位置に設定されたとき、操作軸を傾倒することによってスライドスイッチ機構が操作軸の傾倒方向に対応する第3の信号を出力出力するようにしてあると、回転中立位置と第1回転位置が点対称な位置関係になり、かつ第2回転位置と第3回転位置が線対称な位置関係になり、しかも第1回転位置と第2および第3回転位置とを明確に区別できるため、誤操作が防止し易くなる。
【0012】
この場合において、回転ホルダがハウジング内で回路基板の一面側の収納空間に配置されており、操作軸が回転ホルダとの当接箇所を揺動支点として傾倒すると共に、ハウジング内で回路基板の他面側の収納空間に操作軸の他端部が配置されていると、傾倒操作に必要な操作軸の傾倒角度や回転スライダのスライド移動量が所望の値に設定し易くなり、回転ホルダや回転スライダの支持構造も簡素化し易くなって好ましい。
【0013】
また、上記の構成において、回転ホルダとハウジングのいずれか一方に、回転ホルダの回転方向に沿って延在して複数箇所に谷部を有するカム面が設けられていると共に、いずれか他方にカム面に弾接して谷部に係脱可能な係合部材が保持されており、かつ、カム面が回転ホルダを回転中立位置と第1乃至第3回転位置とにそれぞれ位置決めするための少なくとも4つの谷部を有していると、操作軸の回転操作時に係合部材をカム面の谷部へ入り込ませることによって回転ホルダの位置決めが行え、この位置決め時に生起されるクリック感をユーザの手指に感得させることができるため、回転ホルダを所望の回転位置に設定する操作が容易かつ確実に行えるようになる。
【0014】
また、上記の構成において、ハウジングの内壁面に円環状に延びる環状溝部と所定角度をなして外方に延びる直線状溝部とを連続させてなるガイド溝が設けられていると共に、回転スライダにガイド溝に位置規制される複数の摺動ピンが突設されており、回転スライダの回転時に摺動ピンが環状溝部に沿って移動し、回転スライダのスライド時に摺動ピンが直線状溝部に沿って移動するようにしてあると、摺動ピンが直線状溝部から外れて環状溝部に位置規制されているときに、操作軸の傾倒動作を回転スライダによって阻止することができると共に、摺動ピンが環状溝部から外れて直線状溝部に位置規制されているときに、操作軸の回転動作を回転スライダによって阻止することができるため、誤操作しにくくなって操作性が一層良好となる。
【0015】
また、上記の構成において、操作軸の他端部(操作ノブが設けられていない端部)にばね部材によって軸線方向外側へ付勢されたアクチュエータが保持されていると共に、ハウジングの内底部にアクチュエータを介して操作軸を支持する凹状受け面が形成されており、この凹状受け面に弾接するアクチュエータが操作軸の傾倒に伴って該凹状受け面を摺動するようにしてあると、操作軸の姿勢が安定させ易くなり、回転操作や傾倒操作も円滑に行い易くなるため好ましい。
【0016】
また、上記の構成において、前記第1の信号が車体の左右に付設された
両方のサイドミラーを倒伏または起立させるための信号であり、かつ、前記第2の信号が左右いずれか一方のサイドミラーの鏡面を傾動させて視角を調整するための信号であると共に、前記第3の信号が左右いずれか他方のサイドミラーの鏡面を傾動させて視角を調整するための信号であると、パワーミラー装置用として操作性が良好で低コスト化と小型化を図り易い多方向スイッチ装置が得られる。
【0017】
この場合において、回路基板の一面で透孔を包囲する領域に、該回路基板よりも耐熱性に富むウェハが載置されており、このウェハに第1固定接点が設けられていると、第1の信号の生成時に第1固定接点に比較的大きな電流が流れて発熱しても、ウェハやその近傍が損傷する虞がなくなるため、多方向スイッチ装置の信頼性が高まって長寿命化が図れる。なお、このウェハを回路基板に設置する手法は特に限定されないが、第1固定接点から導出されたリード端子がウェハの外周部の複数箇所に配設されており、これら各リード端子を回路基板の対応する接続ランドに半田付けすることによって、ウェハが回路基板に電気的かつ機械的に接続されていると、安価な手法で接続の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の多方向スイッチ装置は、操作軸を回転操作することによって回転スイッチ機構から特定の信号を出力させることができるのみならず、回転ホルダが所定の回転位置に設定されるように操作軸を回転操作したうえで、該操作軸を傾倒操作することによって、回転操作位置と傾倒操作方向に応じた信号をスライドスイッチ機構から出力させることができる。したがって、パワーミラー装置の入力操作手段などで必要とされる各種のスイッチ機能を、回路基板の一面側に配設した回転スイッチ機構と他面側に配設したスライドスイッチ機構とによって実現することができる。また、この多方向スイッチ装置は、1つの操作ノブで回転操作と傾倒操作とを選択的に行えるため使い勝手が良好であり、かつ、押し込み操作が不要なため奥行き寸法(高さ寸法)ならびに部品点数が抑制し易い。すなわち、本発明によれば、操作性に優れて低コスト化と小型化も容易な多方向スイッチ装置が得られ、これをパワーミラー装置の入力操作手段として用いれば顕著な実用的効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態例に係る多方向スイッチ装置1は、自動車に装備されるパワーミラー装置の入力操作手段として使用されるものであり、
図1と
図4および
図9〜
図11等に示すスイッチユニット50の前端部に多方向スイッチ装置1が設けられている。
【0021】
なお、スイッチユニット50には、多方向スイッチ装置1の他に、4つの揺動操作型スイッチ装置51と1つのプッシュ操作型スイッチ装置52とが配設されている。各揺動操作型スイッチ装置51はパワーウィンドウを開閉するためのスイッチ装置であり、プッシュ操作型スイッチ装置52はパワーウィンドウの開閉をロック/解除するためのスイッチ装置であるが、これらのスイッチ装置51,52は本発明と直接関係するものでないため、その説明は省略することとする。
【0022】
図1〜
図8に示すように、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1は、上端部に操作ノブ2が取着されて回転操作可能かつ傾倒操作可能な操作軸3と、この操作軸3を回動可能かつ揺動可能に支持するハウジング10と、ハウジング10内に組み込まれた回路基板4やウェハ5、回転ホルダ6、回転スライダ7等によって主に構成されている。
【0023】
ハウジング10は、ケース11と、このケース11の下部開口を蓋閉する下カバー12と、ケース11の前端部に搭載された上カバー13とを一体化したものであり、これら三者11,12,13はいずれも樹脂成形品である。ケース11の前端部には膨出形状部11bが上向きに突設されており、この膨出形状部11bの中央に規制筒部11aが垂設されている。膨出形状部11bは防水ラバー8で覆われており、これら膨出形状部11bと防水ラバー8が上カバー13にて覆われている。
図3と
図5に示すように、規制筒部11aには操作軸3が遊挿されており、防水ラバー8の円筒部8aは操作軸3の円柱部3aに被着されている。また、膨出形状部11bには規制筒部11aを包囲するように環状壁部11cが垂設されており、この環状壁部11cの底面は回転ホルダ6の回転方向に沿って延在するカム面となっている。カム面は円周方向の4箇所に谷部を有しており、後述するように、回転ホルダ6の回転に伴って鋼球24がカム面を摺動しながら谷部と係脱するようになっている。
【0024】
上カバー13の相対向する両側壁には係止孔13aが穿設されており、これら係止孔13aにケース11の対応する係合突起11dを嵌入させることにより、上カバー13はケース11にスナップ止めされている。上カバー13の天面中央には軸孔13bが穿設されており、この軸孔13bを包囲する円環状領域には絵文字13cや始点マーク13dが描画されている(
図7参照)。また、下カバー12の相対向する両側壁には係合突起12aが穿設されており、これら係合突起12aをケース11の対応する係止孔11eに嵌入させることにより、下カバー12はケース11にスナップ止めされている。
図12に示すように、下カバー12の前端部の内底面には凹状受け面14とガイド溝15が形成されている。このガイド溝15は、凹状受け面14の周囲で円環状に延びる環状溝部15aと、環状溝部15aの等間隔に離間した4箇所の位置のそれぞれから例えば90度をなすよう外方に延びる直線状溝部15bとを連続させてなる溝である。下カバー12の内底面は操作軸3や回転スライダ7を支持する搭載面となっており、凹状受け面14が後述するアクチュエータ9を介して操作軸3を支持していると共に、ガイド溝15に回転スライダ7の後述する摺動ピン7bが摺動可能に挿入されている。
【0025】
操作ノブ2はキャップ状をなす樹脂成形品であり、この操作ノブ2は上カバー13の上方へ突出している操作軸3の上端部に冠着されている。
図3と
図5に示すように、操作ノブ2の内部には操作軸3の上端部に外嵌させるための内周壁部2aが設けられているため、操作ノブ2を冠着させることによって操作軸3は外部から目視不能となる。また、上カバー13の軸孔13bや防水ラバー8の円筒部8aも操作ノブ2に覆われるため、外部からはほとんど目視できない。
図7に示すように、操作ノブ2の天面には回転位置を明示するための位置表示マーク2bが描画されている。
【0026】
操作軸3は柱状の樹脂成形品であり、その上端近傍はやや小径な円柱部3aとなっている。そして、この円柱部3aを上カバー13の軸孔13b内で前記円筒部8aに挿入することにより、操作軸3に防水ラバー8が取り付けられている。
図3に示すように、操作軸3の下端部には空所3bが設けられており、この空所3b内にアクチュエータ9とコイルばね26が組み込まれている。コイルばね26はアクチュエータ9を操作軸3の軸線方向外側へ突出させる向きに弾性付勢しており、この付勢力によってアクチュエータ9の下端部が凹状受け面14に弾接している。そして、操作軸3を傾倒操作するとアクチュエータ9が凹状受け面14を摺動しながらせり上がっていき(
図14参照)、操作軸3を所定角度傾倒させると、凹状受け面14に予め形成されている図示せぬ微小段部をアクチュエータ9が乗り越えてクリック感が生起されるようになっている。また、操作軸3の下端部の外周面には一対の突条3cが設けられており、これら突条3cは回転スライダ7の係合孔7aの切れ込み部分に挿入されている。これにより操作軸3と回転スライダ7が一体的に回転するようになっている。さらに、操作軸3の外周面にはホルダ駆動部3dが設けられており、このホルダ駆動部3dは円柱部3aと突条3cのほぼ中間位置で径方向外側へ八角形状にせり出している。
【0027】
回路基板4は下カバー12上に搭載されてケース11に覆われており、この回路基板4は複数の固定ねじ16を用いてケース11と下カバー12に締結固定されている。回路基板4は全体的に下カバー12とほぼ同じ長尺形状となっており、その前端部が多方向スイッチ装置1に用いられ、回路基板4の残余の部分は揺動操作型スイッチ装置51やプッシュ操作型スイッチ装置52に用いられている。回路基板4の前端部には操作軸3を貫通させる透孔4aが穿設されており、
図15と
図16に示すように、回路基板4の下面には透孔4aを包囲する等間隔な4箇所に略同形状の固定接点群17が配設されている。これら4つの固定接点群17は、回路基板4の長手方向に延びる複数の固定接点と、回路基板4の幅方向に延びる複数の固定接点とによって構成されている。後述するように、回転スライダ7に保持された一対の第2可動接点18がこれら固定接点群17に対して接離可能となっているが、その際、透孔4aを挟んで回路基板4の幅方向に並設されている2つの固定接点群17どうしは対をなしており、透孔4aを挟んで回路基板4の長手方向に並設されている残り2つの固定接点群17どうしも対をなしている。そして、操作軸3の傾倒操作時に回転スライダ7が回路基板4に沿ってスライドすると、この回転スライダ7のスライドに伴って対をなす固定接点群17に対する第2可動接点18の接触位置が変化し、回転スライダ7のスライド方向に応じた信号が出力されるようになっている。なお、
図15と
図16では回路基板4を下面側から見ているため、上方から見た場合とは左右が逆転している。
【0028】
ウェハ5はインサート成形技術によって成形された円板状体であり、その樹脂材料として回路基板4よりも耐熱性に富む合成樹脂が用いられている。ウェハ5の下面2箇所には位置決めピン5a(
図3参照)が突設されており、
図13に示すように、ウェハ5の上面には複数の固定接点パターン21が設けられている。これらの固定接点パターン21は回転ホルダ6の回転方向に沿って延在しており、ウェハ5には各固定接点パターン21から導出されたリード端子20が配設されている。ウェハ5は回路基板4の上面で透孔4aを包囲する領域に載置・固定されており、ウェハ5の中央部には透孔4aと対向する開口が形成されている。その際、位置決めピン5aを回路基板4の位置決め孔4aに挿入して位置決めした状態で、各リード端子20が回路基板4の対応する接続ランド4b(
図2参照)に半田付けされている。
【0029】
回転ホルダ6は大径部6cの内側に円筒部6dを突設した形状の樹脂成形品であり、円筒部6dの内壁面に円環状の規制鍔部6bが形成されていると共に、規制鍔部6bの下方に八角柱状の空洞6aが形成されている。この回転ホルダ6はケース11の規制筒部11aとウェハ5との間に回転可能に挟持されており、操作軸3が回転ホルダ6の円筒部6dに挿通されている。その際、操作軸3のホルダ駆動部3dが空洞6aに挿入されて規制鍔部6bに当接しているため、アクチュエータ9を下カバー12の凹状受け面14に常時弾接させた状態で、ハウジング10内における操作軸3の高さ位置が規制されている。また、ホルダ駆動部3dと空洞6aの外形は平面視で略合致しているため、操作軸3と回転ホルダ6は一体的に回転するようになっている。ただし、操作軸3は自身の揺動が許容される遊嵌状態で円筒部6dの内壁部と係合している。
【0030】
回転ホルダ6の大径部6cの底面には、周方向に90度離れた2箇所にそれぞれ第1可動接点22とコイルばね23が組み付けられている。
図5と
図6に示すように、各第1可動接点22は上方からコイルばね23に付勢されてウェハ5の上面に弾接しており、これら第1可動接点22はウェハ5に設けられた固定接点パターン21に対して接離可能となっている。
【0031】
回転ホルダ6の円筒部6dの一側部には鋼球24とコイルばね25が組み付けられており、この鋼球24はコイルばね25に付勢されてケース11の環状壁部11cの底面(カム面)に弾接している(
図3参照)。このカム面は前述したように4つの谷部を有しており、操作軸3に連動する回転ホルダ6の回転に伴って鋼球24がカム面を摺動する。そして、鋼球24が任意の谷部に入り込んでいるとき、操作軸3はその回転位置に保持され、鋼球24が1つの谷部から山部を乗り越えて次の谷部へ入り込む際にクリック感が生起される。なお、環状壁部11cの底面に形成されている4つの谷部の位置は、
図7に示すように操作ノブ2の位置表示マーク2bが上カバー13の始点マーク13dを指し示しているときに、鋼球24が対向する位置(基準位置)と、この基準位置から±約45度離れている2つの位置(傾倒可能位置)と、操作ノブ2の回転軸を中心に基準位置に対して点対称で約180度離れている位置(格納位置)のそれぞれに対向している。また、操作ノブ2の位置表示マーク2bが絵文字13c「R」または「L」を指し示しているときに、鋼球24はいずれか一方の傾倒可能位置と対向している。
【0032】
この回転ホルダ6は操作軸3に外挿されて一体的に回転するが、操作軸3が傾倒操作されても回転ホルダ6は移動しない。すなわち、操作軸3は組立て時に回転ホルダ6の大径部6c側から円筒部6dを貫通するように挿通され、八角柱状の空洞6a内に八角形状のホルダ駆動部3dを挿入して係合させるため、操作軸3が回転操作されると回転ホルダ6は一体的に回転する。ただし、ホルダ駆動部3dは操作軸3の揺動が許容される遊嵌状態で空洞6aの内壁面と係合しているため、高さ方向に挟持されている回転ホルダ6は、操作軸3が傾倒操作されても連動することはない。また、操作軸3のホルダ駆動部3dが回転ホルダ6の規制鍔部6bに当接して位置規制されているため、
図14に示すように、操作軸3の傾倒操作時には、傾倒方向の反対側で規制鍔部6bとホルダ駆動部3dとの当接箇所が揺動支点となる。
【0033】
上記した回転ホルダ6と第1可動接点22および固定接点パターン21は、多方向スイッチ装置1の回転スイッチ機構を構成している。この回転スイッチ機構はハウジング10内で回路基板4の上面側に配設されており、多方向スイッチ装置1の非操作時には、鋼球24が前記基準位置と対向して回転ホルダ6を回転中立位置に保持している。そして、操作軸3が半周分回転操作されて回転ホルダ6が回転中立位置から180度回転すると、鋼球24が前記格納位置と対向して回転ホルダ6を第1回転位置に保持し、回転スイッチ機構から第1の信号が出力されるようになっている。
【0034】
回転スライダ7は円板状の樹脂成形品であり、前述したように、この回転スライダ7の中央に設けられた係合孔7aに操作軸3の下端部が挿通されている。また、回転スライダ7の底面4箇所に摺動ピン7bが突設されており、これら摺動ピン7bが下カバー12のガイド溝15に摺動可能に挿入されて環状溝部15aや直線状溝部15bに位置規制されている。この回転スライダ7は操作軸3の回転操作に伴って一体的に回転し、操作軸3が傾倒操作されると回転スライダ7は回路基板4に沿って特定方向(回路基板4の長手方向と幅方向)へ直線状にスライドする。そして、回転スライダ7の回転時に摺動ピン7bは環状溝部15aに沿って移動し、回転スライダ7のスライド時に摺動ピン7bは直線状溝部15bに沿って移動する。
【0035】
回転スライダ7の上面には、周方向に180度離れた2箇所にそれぞれ第2可動接点18とコイルばね19が組み付けられている。
図14に示すように、各第2可動接点18は下方からコイルばね19に付勢されて回路基板4の下面に弾接しており、これら第2可動接点18は回路基板4の下面に設けられた固定接点群17に対して接離可能となっている。
【0036】
上記した回転スライダ7と第2可動接点18および固定接点群17は、多方向スイッチ装置1のスライドスイッチ機構を構成している。このスライドスイッチ機構はハウジング10内で回路基板4の下面側に配設されており、操作軸3が回転中立位置から±約45度回転操作されると、鋼球24が前記傾倒可能 位置と対向して回転ホルダ6を第2回転位置または第3回転位置に保持し、この状態で操作軸3が傾倒操作されると、スライドスイッチ機構から第2の信号または第3の信号が出力されるようになっている。
【0037】
次に、このように構成された多方向スイッチ装置1の動作について説明する。
【0038】
多方向スイッチ装置1の非操作時には、
図7に示すように、操作ノブ2の位置表示マーク2bが始点マーク13dを指し示しており、回転ホルダ6は回転中立位置に保持されている。このとき、第1可動接点22は
図13(a)に示す位置で固定接点パターン21に接触しており、回転スイッチ機構の接点はオフ状態となっている。この状態は、左右のサイドミラーを起立させている状態に相当する。
【0039】
この状態でユーザが操作ノブ2を半周分回転操作すると、回転ホルダ6が回転中立位置から約180度回転して前記第1回転位置に保持されるため、第1可動接点22が
図13(b)に示す位置で固定接点パターン21に接触し、回転スイッチ機構から前記第1の信号が出力される。この第1の信号は、左右のサイドミラーを倒伏させる指令信号であるため、両サイドミラーはモータに駆動されて格納される。なお、ユーザが操作ノブ2を元の回転位置に戻すと、該モータが逆回転して両サイドミラーは起立する。また、回転ホルダ6が回転中立位置や第1回転位置に保持されているときには、回転スライダ7の摺動ピン7bが環状溝部15aに位置規制されて直線状溝部15bに沿うスライド動作は行えないため、操作軸3は回転操作のみ可能で傾倒操作は行えない状態になっている。
【0040】
左右のサイドミラーが起立しているとき、つまり回転ホルダ6が回転中立位置に保持されているときに、位置表示マーク2bが絵文字13c「R」を指し示すように、ユーザが操作ノブ2を
図7の反時計回りに約45度回転操作すると、回転ホルダ6が前記第2回転位置に保持されて、回転スライダ7の摺動ピン7bは、直線状溝部15bが90度で交わる位置の中心付近に位置する。これにより操作軸3は傾倒可能となり、ユーザが操作ノブ2を介して操作軸3を前後左右のいずれかへ傾倒させることにより、操作軸3の傾倒方向に対応する方向へ回転スライダ7をスライドさせて、スライドスイッチ機構から前記第2の信号を出力させることができる。
【0041】
すなわち、回転ホルダ6が第2回転位置に保持されている状態で操作軸3を前方(
図7の上方)へ傾倒操作すると、
図15(a)に示すように、対をなす左右の固定接点群17は、下側の固定接点が第2可動接点18を介して短絡されたことによる信号を出力する。この信号は、右のサイドミラーの鏡面を上向きに傾動させる指令信号であるため、右のサイドミラーの視角が上向きに調整される。回転ホルダ6が第2回転位置に設定されている状態で操作軸3を後方(
図7の下方)へ傾倒操作した場合は、
図15(b)に示すように、左右一対の固定接点群17は、上側の固定接点が第2可動接点18を介して短絡されたことによる信号を出力し、右のサイドミラーの視角が下向きに調整される。同様に、操作軸3を
図7の左方へ傾倒操作した場合は、
図15(c)に示すように、左右一対の固定接点群17は、図示左側(上方から見て右側)の固定接点が第2可動接点18を介して短絡されたことによる信号を出力し、右のサイドミラーの視角が左向きに調整される。また、操作軸3を
図7の右方へ傾倒操作した場合は、
図15(d)に示すように、左右一対の固定接点群17は、図示右側(上方から見て左側)の固定接点が第2可動接点18を介して短絡されたことによる信号を出力し、右のサイドミラーの視角が右向きに調整される。
【0042】
一方、回転ホルダ6が回転中立位置に保持されているときに、位置表示マーク2bが絵文字13c「L」を指し示すように、ユーザが操作ノブ2を
図7の時計回りに約45度回転操作すると、回転ホルダ6が前記第3回転位置に保持されて、回転スライダ7の摺動ピン7bは、直線状溝部15bが90度をなして交わる位置の中心付近に位置する。これにより操作軸3は傾倒可能となり、ユーザが操作ノブ2を介して操作軸3を前後左右のいずれかへ傾倒させることにより、操作軸3の傾倒方向に対応する方向へ回転スライダ7をスライドさせて、スライドスイッチ機構から前記第3の信号を出力させることができる。
【0043】
すなわち、回転ホルダ6が第3回転位置に保持されている状態で操作軸3を前方へ傾倒操作すると、
図16(a)に示すように、対をなす上下の固定接点群17は、下側の固定接点が第2可動接点18を介して短絡されたことによる信号を出力する。この信号は、左のサイドミラーの鏡面を上向きに傾動させる指令信号であるため、左のサイドミラーの視角が上向きに調整される。また、回転ホルダ6が第3回転位置に保持されている状態で操作軸3を後方、左方、右方へ傾倒操作した場合は、上下一対の固定接点群17に対する第2可動接点18の接触位置がそれぞれ
図16(b)、(c)、(d)に示すように変化する。そのため、左のサイドミラーの視角がそれぞれ、下向き、左向き、右向きに調整される。
【0044】
なお、操作軸3が傾倒操作されているときには、回転スライダ7の摺動ピン7bが直線状溝部15bに位置規制されて環状溝部15aに沿う回転動作は行えないため、操作軸3は傾倒操作のみ可能で回転操作は行えない状態になっている。
【0045】
以上説明したように、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1は、操作軸3を回転操作することによって回転スイッチ機構から第1の信号を出力させることができ、かつ、回転ホルダ6が第2回転位置または第3回転位置に設定されるように操作軸3を回転操作したうえで、この操作軸3を傾倒操作することによって、回転操作位置と傾倒操作方向に応じた第2の信号や第3の信号をスライドスイッチ機構から出力させることができる。それゆえ、この多方向スイッチ装置1は、パワーミラー装置の入力操作手段に必要とされる各種のスイッチ機能を、回路基板4の上面側に配設した回転スイッチ機構と下面側に配設したスライドスイッチ機構とによって実現することができる。また、この多方向スイッチ装置1は、1つの操作ノブ2で回転操作と傾倒操作を選択的に行えるため使い勝手が良好であり、しかも押し込み操作が不要なため奥行き寸法(高さ寸法)と部品点数を抑制し易い。その結果、多方向へ操作可能で操作性に優れ、かつ低コスト化と小型化が容易な実用的価値の高いスイッチ装置となっている。
【0046】
また、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1では、回転ホルダ6が回転中立位置から約180度離れた第1回転位置に設定されると第1の信号を出力し、かつ、回転ホルダが回転中立位置から±約45度離れた第2回転位置または第3回転位置に設定された状態で操作軸3を傾倒すると、操作軸3の傾倒方向に応じた第2の信号または第3の信号をそれぞれ出力するようにしてある。すなわち、回転中立位置と第1回転位置が操作ノブ2の回転軸を中心として点対称な位置関係にあり、かつ第2回転位置と第3回転位置が、回転中立位置と第1回転位置とを結ぶ直線を対称軸として線対称な位置関係にあり、しかも第1回転位置と第2および第3回転位置とが明確に区別できるように配慮されているため、この多方向スイッチ装置1は誤操作が防止し易い。
【0047】
ただし、第2回転位置や第3回転位置と回転中立位置との間の角度は約45度に限定されるわけではなく、回転中立位置から180度よりも小さい所定角度離れた位置を第2および第3回転位置となしておけば良い。
【0048】
また、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1では、ハウジング10内に配置された回路基板4の上面側の収納空間から操作軸3の上端部が外方へ突出しており、この収納空間に配置された回転ホルダ6の規制鍔部6bとホルダ駆動部3dとの当接箇所を揺動支点として操作軸3が傾倒すると共に、回路基板4の下面側の収納空間に操作軸3の下端部が配置されている。そのため、この多方向スイッチ装置1は、傾倒操作に必要な操作軸3の傾倒角度や回転スライダ7のスライド移動量が所望の値に設定し易く、回転ホルダ6や回転スライダ7の支持構造も比較的簡素になっている。
【0049】
また、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1では、ハウジング10のケース11内に垂設された環状壁部11cの底面が、回転ホルダ6の回転方向に沿って延在するカム面として形成されており、該カム面に回転ホルダ6に保持された鋼球24を弾接させている。そして、このカム面には、回転ホルダ6を回転中立位置と第1乃至第3回転位置とにそれぞれ位置決めするための4つの谷部が設けられており、回転ホルダ6の回転に伴って鋼球24がこれら谷部と係脱するようになっている。すなわち、回転操作時に鋼球24をカム面の谷部へ入り込ませることによって回転ホルダ6の位置決めが行え、この位置決め時に生起されるクリック感をユーザの手指に感得させることもできる。それゆえ、この多方向スイッチ装置1は、回転ホルダ6を所望の回転位置に設定する操作が簡単かつ確実に行える。なお、本実施形態例とは逆に、カム面を回転ホルダ6側に設けて鋼球等の係合部材をハウジング10側に設ける構成にしても良い。
【0050】
また、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1では、ハウジング10の下カバー12の内底部で回転スライダ7を摺動可能に支持している領域に、円環状に延びる環状溝部15aと、環状溝部15aの等間隔に離間した4箇所の位置から例えば90度をなすよう外方に延びる直線状溝部15bとを連続させてなるガイド溝15が設けられており、このガイド溝15によって回転スライダ7の摺動ピン7bが位置規制されるようにしてある。つまり、回転スライダ7は回転時に環状溝部15aに沿って移動し、スライド時に直線状溝部15bに沿って移動するようになっている。したがって、摺動ピン7bが直線状溝部15bから外れて環状溝部15aに位置規制されているときには、操作軸3の傾倒動作を回転スライダ7によって阻止することができ、摺動ピン7bが環状溝部15aから外れて直線状溝部15bに位置規制されているときには、操作軸3の回転動作を回転スライダ7によって阻止することができる。この点からも、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1は誤操作しにくく操作性が良好である。
【0051】
また、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1では、操作軸3の下端部にコイルばね26で弾性付勢されたアクチュエータ9が組み付けてあると共に、ハウジング10の下カバー12の内底部にアクチュエータ9を介して操作軸3を支持する凹状受け面14が形成してあり、操作軸3を傾倒操作するとアクチュエータ9が凹状受け面14を摺動しながらせり上がるように構成されている。このような構成により、回転操作時や傾倒操作時に操作軸3を介して作用する軸線方向の操作力を凹状受け面14で確実に受け止めることができると共に、アクチュエータ9を円滑に摺動させることができるため、この多方向スイッチ装置1は、操作軸3の姿勢が安定させ易く回転操作や傾倒操作も円滑に行い易いものとなっている。
【0052】
なお、上記した多方向スイッチ装置1をパワーミラー装置用でないスイッチ装置に適用することも可能であるが、本実施形態例のようにパワーミラー装置用として自動車の運転席付近に設置することが特に好適である。この場合、サイドミラーに倒伏・起立動作を行わせる信号の生成時に比較的大きな電流が流れるため、発熱対策を講じておくと信頼性を高めることができる。
【0053】
そこで、本実施形態例においては、回路基板4の上面で透孔4aを包囲する領域に、回路基板4よりも耐熱性に富むウェハ5を載置し、このウェハ5に設けた固定接点パターン21に第1可動接点22を接離させている。こうすることによって、前記第1の信号の生成時に固定接点パターン21に比較的大きな電流が流れて発熱しても、ウェハ5やその近傍が熱損傷する虞がなくなるため、多方向スイッチ装置1の長寿命化が図れる。また、このウェハ5は、外周部に配設したリード端子20を対応する接続ランド4bに半田付けすることによって、回路基板4に電気的かつ機械的に接続されているため、回路基板4に対するウェハ5の接続の信頼性が高められている。