特許第5802123号(P5802123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5802123
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】乗用田植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   A01C11/02 350F
   A01C11/02 350Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-279885(P2011-279885)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-128445(P2013-128445A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】新谷 佳弘
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−043297(JP,A)
【文献】 特開2006−061074(JP,A)
【文献】 特開2004−229608(JP,A)
【文献】 特開2001−086825(JP,A)
【文献】 特開2009−022184(JP,A)
【文献】 特開2009−207391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、該走行機体の後方に昇降自在に支持され、往復移動する苗載せ台及び該苗載せ台に載置された苗を植付ける植付部を有する植付装置と、前記苗載せ台に沿って移動しつつ前記苗に薬剤を散布する薬剤散布装置と、前記走行機体と前記植付装置とに介在し、前記植付装置を左右傾動させるアクチュエータと、を備える乗用田植機において、
前記苗載せ台の左右移動終端を検出する終端検出センサと、
前記植付装置の左右方向における傾斜を検出する傾斜センサと、
前記傾斜センサからの検出信号に基づいて前記アクチュエータを作動させる水平制御信号を出力すると共に、前記終端検出センサ前記苗載せ台の前記左右移動終端検出した場合には、前記薬剤散布装置の作動を開始させる信号と、前記アクチュエータを停止させる信号と、を出力可能な制御部と、を備え
前記制御部は、前記薬剤散布装置の作動を開始させた場合には、前記薬剤散布装置の移動に伴う前記苗載せ台の左右方向における重量バランスの変化を吸収するように前記水平制御信号を補正してなる、
ことを特徴とする乗用田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後方に植付装置を左右傾動自在で配置した乗用田植機に係り、詳しくは、センサによる苗載せ台の移動終端の検出に伴う植付装置の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用田植機の走行機体の後方には、苗を圃場に植付ける植付装置が設けられており、植付装置は、植付ける苗を載置するための苗載せ台を有している。この苗載せ台は、走行機体の進行方向に対して直交する左右方向に往復移動するように制御(横送り制御)されており、植付作業は、往復移動する苗載せ台に載置されたマット状苗を植付部が掻き取りながら行われる。
【0003】
また、植付作業においては、耕盤の凹凸などによって走行機体が傾斜する場合があり、該走行機体と共に植付装置が傾斜すると苗を正しく植付けることが難しくなることから、植付装置に傾斜センサを設け、該傾斜センサで植付装置の左右傾斜を検出して植付装置が水平になるように制御(植付装置水平制御)している。
【0004】
ところで近年、病害防止などの観点から植付け前の苗に施薬するようになってきており、横送り制御によって苗載せ台が左右の移動終端まで移動すると、苗載せ台に設けられたレールに沿って散布装置が移動し、苗載せ台に載置された苗に薬剤を散布する乗用田植機が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また従来から、マット状苗の補充や苗載せ台の往復移動速度の変速などを行うため、横送り制御によって苗載せ台が左右の移動終端まで移動した際、その移動を停止させると同時に、作業クラッチを切って植付部の作動も停止させるように制御(端寄せ制御)する乗用田植機が案出されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3907354号公報
【特許文献2】特開2006−61074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、植付装置の水平制御と、上記特許文献1及び2に例示される苗載せ台の横送り制御とを共に行う構成の場合、横送り制御により苗載せ台が左右の移動終端まで移動すると、移動方向の切換えに伴い振動などが生じ、これら振動が植付装置の水平制御の精度を下げるなどの影響を与えていた。
【0009】
更には、上記特許文献2に記載の乗用田植機のように、苗載せ台に対して移動可能な散布装置を設けた場合、散布装置が移動することにより、苗載せ台の左右の重力バランスが崩れることでも植付装置の水平制御の精度を下げるなどの影響を及ぼしていた。
【0010】
そこで本発明は、苗載せ台の移動終端を検知する終端検出センサを設け、この終端検出センサ機能により各制御を行う共に、終端検出により植付装置水平制御部の制御を変更することで、もって上記課題を解決した乗用田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、走行機体(5)と、該走行機体の後方に昇降自在に支持され、往復移動する苗載せ台(13)及び該苗載せ台(13)に載置された苗を植付ける植付部(15)を有する植付装置(12)と、前記苗載せ台(13)に沿って移動しつつ前記苗に薬剤を散布する薬剤散布装置(36)と、前記走行機体(5)と前記植付装置(12)とに介在し、前記植付装置(12)を左右傾動させるアクチュエータ(59)と、を備える乗用田植機(1)において、
前記苗載せ台(13)の左右移動終端を検出する終端検出センサ(29)と、
前記植付装置(12)の左右方向における傾斜を検出する傾斜センサ(56)と、
前記傾斜センサ(56)からの検出信号に基づいて前記アクチュエータ(59)を作動させる水平制御信号を出力すると共に、前記終端検出センサ(29)前記苗載せ台(13)の前記左右移動終端検出した場合には、前記薬剤散布装置(36)の作動を開始させる信号と、前記アクチュエータ(59)を停止させる信号と、を出力可能な制御部(50)と、を備え
前記制御部(50)は、前記薬剤散布装置(36)の作動を開始させた場合には、前記薬剤散布装置(36)の移動に伴う前記苗載せ台(13)の左右方向における重量バランスの変化を吸収するように前記水平制御信号を補正してなることを特徴とする。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、制御部は、終端検出センサが苗載せ台の移動終端を検出した場合に、アクチュエータを停止させるので、苗載せ台の移動終端における移動方向の切換えに伴う振動などの影響を抑えて、精度の高い植付装置水平制御を行うことができる。
【0016】
また、制御部は、薬剤散布装置の作動開始させた場合に、薬剤散布装置の移動に伴う重量バランスの変化を吸収するようにアクチュエータへ出力する水平制御信号を補正するので、薬剤散布装置の移動による苗載せ台の左右重力バランスの変動に対応した精度の高い植付装置水平制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る乗用田植機の側面図。
図2】乗用田植機に装着される植付作業機の側面図。
図3】その正面図。
図4】横送り端検出センサの斜視図。
図5】水平制御装置の正面図。
図6】その側面図。
図7】制御部のブロック図。
図8】植付作業機の水平制御を示すフローチャート。
図9】散布装置の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る乗用田植機1について図に沿って説明する。図1に示すように、乗用田植機1は、前輪2と後輪3とに支持された走行機体5を有しており、該走行機体5の前方には、ボンネット6に覆われてエンジン(不図示)が配置されている。該エンジンの後方には、ステアリングハンドル7や運転席9などを有して構成される運転操作部10が設けられおり、該運転操作部10の後方には、昇降リンク11を介して植付装置(以下、植付作業機という)12が昇降自在に設けられている。
【0019】
図2に示すように、植付作業機12は、進行方向と直交する左右方向に配置された横フレーム16と該横フレーム16から上方に向かって延設された左右の縦フレーム17に支持されており、植付作業機12は、主に縦フレーム17に支持される苗載せ台13と横フレーム16支持される植付部15とから構成されている。また、横フレーム16は、ローリング軸50を介して左右傾動自在に昇降リンクホルダ49に連結されている(図5参照)。
【0020】
植付部15は、横フレーム16から後方に向かって延設された複数のプランタケース19・・・を有しており、該プランタケース19の先端には、回転駆動軸(不図示)に支持されてロータリケース20・・・が左右一対で設けられている。該ロータリケース20の両端側それぞれには、植付爪21・・・を有したプランタアーム22・・・が回動自在に設けられており、該プランタケース19の下方には、田面を滑走しつつ苗の植付深さを調節するフロート23が上下方向に揺動自在に設けられている。
【0021】
図3に示すように、植付部15の上方には、正面視で矩形形状に形成された苗載せ台13が配置されており、該苗載せ台13には苗送りベルト25・・・が複数設けられている。また、苗載せ台13の下端部は、プランタケース19に設けられたエプロン18に嵌合して摺動自在に支持されている(図2参照)。
【0022】
図4に示すように、縦フレーム17の上端部には、支持ステー26が進行方向と直交する左右方向に向かって設けられている。該支持ステー26の一端部側には、スライドピース27が上方に向って延設されており、支持ステー26の略中央には、苗載せ台13の移動方向の左右移動終端(以下、横送り端という)を検出する終端検出センサ(以下、横送り端検出センサという)29がブラケット30を介して配置されている。
【0023】
上記横送り端検出センサ29は、上方側が開放されて側面視でU字形状に形成されている。また、横送り端検出センサ29の開放側両端の内の一端部は、光を発光する発光部31を構成しており、他端部は、発光部31からの光を受光する受光部32を構成している。そして、該受光部32が発光部31からの光を受光できなくなる(遮断される)と横送り端検出センサ29はON状態になるように構成されている。
【0024】
上記スライドピース27の上端部は、苗載せ台13の背面に取付けられるスライドレール33に挿入されており、該スライドレール33は、スライドピース27を支点として往復移動するように設けられている。苗載せ台13は、このスライドレール33及び上記エプロン18に支持されて左右方向に往復移動するように構成されている。また、スライドレール33には、側面視でL字形状に形成された左終端検出板35L及び右終端検出板35Rの一端部がそれぞれ取付けられており、該左終端検出板35L及び右終端検出板35Rの他端部は、スライドレール33の移動に伴い発光部31と受光部32との間を移動するように構成されている。
【0025】
植付部15の上方であって、苗載せ台13に近接するように薬剤散布装置36が配置されている(図2参照)。薬剤散布装置36は、薬剤を投入して貯蔵するタンク37を有しており、該タンク37の上方は、タンク37内を開閉する蓋39に覆われている。また、タンク37の下端側は走行駆動装置40に支持されており、該走行駆動装置40は、散布装置移動モータ43、薬剤を散布する散布モータ75、及び上下に配置された走行輪41,42などを有している。該走行輪41,42の内、上方側に配置された走行輪41は、駆動モータ42の駆動力によって回転駆動するように設けられている。また、上下走行輪41,42は、進行方向と直交する苗載せ台13の幅方向に沿うようにして配置されたレール45を挟持しており、薬剤散布装置36は、走行輪の駆動によりレール45に沿って移動するように設けられている。また、レール45の左右両端側には、薬剤散布装置36の位置を検出するための散布装置位置検出スイッチ71,72が設けられている。
【0026】
図5及び図6に示すように、植付作業機12には水平制御装置47が設けられている。該水平制御装置47は、昇降リンクホルダ49に沿うようにして設けられたマスト部材51を有しており、該マスト部材51の上端部側には、横フレーム16と平行にラック52が設けられている。該ラック52の左右両端には、スプリング53及びプレート55の一端部が取付けられており、該スプリング53及びプレート55の他端部は横フレーム16に取付けられている。また、ローリング軸50の上方には、左右に傾動した横フレーム16の傾斜(角速度)を検出するための水平制御センサ(傾斜センサ)56が設けられており、該傾斜センサ56は角速度センサから構成されている。また、走行機体5と植付作業機12とに介在するように、アクチュエータ(以下、水平制御モータという)59がラック52に近接するように配置されており、ラック52は、水平制御モータ59の出力によって傾動するように構成されている。
【0027】
乗用田植機1の制御部60は、マイクロコンピュータ(以下、単にマイコンという)からなり、植付作業機12の水平に保持する植付装置水平制御部76及び苗乗せ台の端寄せ制御や薬剤散布装置による散布装置制御などを行う移動端制御部77を有して構成されている。
【0028】
その入力側には、図7に示すように、作業機準備スイッチ61、植付作業機操作具62、作業機操作カムポテンショ63、リフト角ポテンショ65、水平制御センサ(角速度センサ)56、横送り端検出センサ29、端寄せ制御開始操作具69、散布スイッチ70、散布装置位置検出スイッチ(右)71、及び散布装置位置検出スイッチ(左)72などが接続されており、出力側には、作業機操作カムモータ73、水平制御モータ59、散布モータ75、及び散布装置移動モータ43の各種モータに接続されている。そして制御部60は、各種センサ及びスイッチ類から入力される信号に基づき、各種モータを作動又は停止させる信号を出力する構成となっている。
【0029】
次いで、上述のように構成された乗用田植機1の動作について説明する。植付作業は、苗載せ台13に載置されたマット状苗を植付部15の植付爪21で掻き取りながら行われ、この間苗載せ台13は、横送り制御によって進行方向と直交する左右方向に往復移動する(以下、単に左右方向に移動するという)。そして、苗載せ台13の端部が移動方向の終端位置まで移動すると制御部60(移動端制御部77)は散布装置制御を行い、薬剤散布装置36によって、苗載せ台13に載置された苗に薬剤が散布される。
【0030】
ここで散布装置制御について図8に基づいて説明する。作業者が散布スイッチ70をONにした状態にすると移動端制御部77は、散布装置制御を行いながらで植付作業を行う(STEP1、以下、単にS○○という)。
【0031】
植付作業の開始と共に苗載せ台13は左右方向に移動し、左終端検出板35L及び右終端検出板35Rの一端部は、苗載せ台13の移動に伴い発光部31と受光部32との間を通過する。受光部32は、左終端検出板35L及び右終端検出板35Rの通過により発光部31からの光が遮断され、横送り端検出センサ29がON状態になると同時に横送り端が検出される。そして、任意に設定された回数Nだけ横送り端が検出されると散布フラグが移動になる。この時、薬剤散布装置が右端に位置する場合には、散布フラグが散布左移動になり、移動端制御部77から散布モータ75及び散布装置移動モータ43に信号が出力されて、薬剤散布装置36は、苗載せ台13に載置されたマット状苗に薬剤を散布しながらレール45に沿って左方向に移動する(S2のYES,S3のYES,S4のYES,S5)。この薬剤散布装置の移動の開始と同時に横送り端の検出回数はリセットされる(S5)。
【0032】
また、薬剤散布装置36が苗載せ台の右側に位置する場合も同様に、横送り端検出センサ29によって、横送り端が設定された回数Nだけ検出されると散布フラグが散布右移動になり、薬剤散布装置36は、薬剤を散布しながらレール45に沿って右方向に移動する(S6のYES,S7のYES,S8のYES,S9)。また、この時も薬剤散布装置36の移動の開始と同時に横送り端の検出回数はリセットされる(S9)。
【0033】
移動の開始後、薬剤散布装置36が反対側端部まで移動すると、散布装置位置検出スイッチ(右)(左)71,72によって薬剤散布装置36の位置が検出されと共に、散布フラグが停止に変わり、薬剤散布装置36はその反対側端部で停止する(S10)。そして薬剤散布装置36は、横送り端検出センサ29によって設定回数だけ横送り制御による横送り端が検出されると再び上述の工程を繰り返す。
【0034】
植付作業は、上述のように薬剤散布制御によって、苗載せ台13に載置された苗に薬剤を散布しながら行うが、制御部60は散布装置制御を行うと共に、植付作業機12が水平になるように水平制御を行いながら植付作業を行う。
【0035】
ここで、植付作業機(植付装置)水平制御について図9に基づいて説明する。植付作業は、植付作業機12を植付作業高さである所定高さまで下降させた後、植付作業機12を作動させて行う。この際、植付装置水平制御部76は、リフト角ポテンショ65のから入力される信号によって、植付作業機12が所定高さにあるかどうかを判断し、所定高さにあると判断すると水平制御を開始する(S11)。
【0036】
植付装置水平制御部76は、水平作業の開始に伴い傾斜センサ56によって検出された傾斜データ(角速度)を読み込み、作業者が横送り端検出センサ57をOFF状態にした場合であって、制御フラグが比較処理である場合には、制御部60内に設定された出力待ちタイマ残り時間がどのくらいかを判断する(S12,S13,S14,S15)。
【0037】
出力待ちタイマの残り時間が0であった場合には、上記傾斜センサ56から入力された傾斜データに基づき、植付作業機12を水平にするのに必要な水平制御モータ59の出力方向及びその出力時間を算出する(S16)。この時、上述の散布装置制御による散布フラグが停止である場合、制御フラグは出力処理になり、植付装置水平制御部76は、前記算出した出力方向及び出力時間の信号を水平制御モータ59に出力する(S17,S18)。
【0038】
水平制御モータ59は入力された信号に基づき作動し、水平制御モータ59の出力はラック52へと伝達される。ラック52は、水平制御モータ59の出力方向に向かって傾動し、植付作業機12は水平になる。
【0039】
また、作業者が横送り端検出センサ29をON状態にして植付作業を行っていた場合において、横送り端検出センサ57によって苗載せ台13の横送り端が検出されると移動端制御部77は、上記出力待ちタイマによって所定時間の待ち時間をセットする。このセットされた待ち時間の間は、植付装置水平制御部67による水平制御が停止する(S14,S25)。
【0040】
また、水平制御モータ59の出力方向及びその出力時間が算出された際に(S16)、散布フラグが散布装置制御によって散布右移動になっていた場合、移動端制御部77は、既に算出された水平制御モータ59の出力方向及び出力時間から右方向の出力ON時間を減ずるようにして、薬剤散布装置36の移動による角速度の変化を吸収(相殺)する補正を行い、補正後の出力方向及び出力時間で出力処理を行う(S17,S18,S19,S20)。
【0041】
同様に、水平制御モータ59の出力方向及びその出力時間が算出された際に(S16)、散布フラグが散布装置制御によって散布左移動になっていた場合、移動端制御部77は、既に算出された水平制御モータの出力方向及び出力時間から左方向の出力ON時間を減ずるようにして、薬剤散布装置36の移動による角速度の変化を吸収する補正を行い、補正後の出力方向及び出力時間で出力処理を行う(S17,S18,S19,S21)。そして、S17〜S21が移動端制御部77を構成する。
【0042】
作業者が植付作業機12を上昇させて、植付作業機12が所定の高さ以上になると植付装置水平制御部60は、植付作業機水平制御停止処理を行い(S22)、傾斜データを読み込み後(S12)、制御フラグが出力処理である場合には、既に算出した出力方向及び出力時間に基づき水平制御モータへの出力処理を行う(S23,S24)。
【0043】
上述のように、植付作業機12に横送り端検出センサ29を設け、この横送り端検出センサ29による苗載せ台13の横送り端の基づき、苗載せ台の横送り制御、端寄せ制御、及び薬剤散布装置制などの各制御を行うようにしたので、単一のセンサで複数の制御を行うことができる。これにより、複数のセンサを設ける場合と比べて製造コストを抑えることができると同時に、配線など装置の構造を簡単な構成にするができ、各制御の連動を容易にすることができる。
【0044】
また、横送り端検出センサ29が苗載せ台13の横送り端を検出した場合に、移動端制御部77によって植付装置水平制御部67による水平制御が停止するように変更されるので、苗載せ台の移動終端における移動方向の切換えに伴う振動などの影響を抑え、植付作業時における植付作業機の水平を保持する植付作業機水平制御を高い精度で行うことができる。
【0045】
また、植付作業機水平制御は、薬剤散布装置制御による薬剤散布装置36の作動開始に伴う苗載せ台13の角速度の変化に基づき、移動端制御部77がその変化を吸収するように水平制御モータ59出力時間を減ずる補正を行うので、薬剤散布装置36の移動に伴う苗載せ台13の左右重力バランスの変動に対応した精度の高い植付作業機水平制御を行うことができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、植付装置水平制御部76による植付作業機水平制御を停止させるように移動端制御部77を構成したが、これに限らず、例えば、水平制御モータ59を出力させて苗載せ台13の横送り端における振動を相殺するように、移動端制御部77が植付装置水平制御部76の制御を変更する構成でもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 乗用田植機
5 走行機体
12 植付装置(植付作業機)
13 苗載せ台
15 植付部
29 終端検出センサ(横送り端検出センサ)
36 薬剤散布装置
56 角速度センサ(水平制御センサ)
59 アクチュエータ(水平制御モータ)
76 植付装置水平制御部
77 移動端制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9