【実施例】
【0037】
以下、より具体的な実施例を説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[測定法]
(1)X線回折:島津製作所(株)製 粉末X線回折装置 XRD−7000で測定して解析した。測定は、CuKα線源を用い、加速電圧40kV、30mAで行った。
(2)比表面積・細孔径分布:日本ベル(株)製 高精度比表面積・細孔分布測定装置 BELSORP−miniを使用し、液体窒素温度で測定した窒素吸着等温線からBET法により比表面積を求め、細孔径分布及び細孔容積はBJH法により解析した。
【0039】
[実施例1]
Al
2O
3換算で2wt%の硫酸アルミニウム水溶液300gを40℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液144gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(SO
42-)×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.5であった。次に得られたスラリーを60℃で7時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
【0040】
図2に、得られたアルミナの特性を示した。
図2(a)は窒素吸着等温線、
図2(b)は細孔径分布、
図2(c)は低角域XRDパターン、
図2(d)は広角域XRDパターンを示すグラフである。なお、以下、
図3から
図12においても同様である。
【0041】
[実施例2]
Al
2O
3換算で2wt%の硝酸アルミニウム水溶液300gを40℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液144gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(NO
3-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.5であった。次に得られたスラリーを60℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図3に得られたアルミナの特性を示した。
【0042】
[実施例3]
Al
2O
3換算で2wt%の塩化アルミニウム水溶液300gを40℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液144gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(Cl
-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.5であった。次に得られたスラリーを60℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図4に得られたアルミナの特性を示した。
【0043】
[実施例4]
Al
2O
3換算で2wt%のPAC 250A(多木化学株式会社製、組成:Al
2O
3 10.1%、Cl 9.1%、SO
4 2.82% )300gを40℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液76gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(Cl
-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.6であった。次に得られたスラリーを60℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図5に得られたアルミナの特性を示した。
【0044】
[実施例5]
Al
2O
3換算で3wt%の硝酸アルミニウム水溶液200gを40℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液144gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(NO
3-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.5であった。次に得られたスラリーを90℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図6に得られたアルミナの特性を示した。
【0045】
[実施例6]
Al
2O
3換算で2wt%の硝酸アルミニウム水溶液300gを30℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液360gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(NO
3-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は3.0であった。また、スラリーのpHは9.2であった。次に得られたスラリーを30℃で3時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図7に得られたアルミナの特性を示した。
【0046】
[実施例7]
NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液360gを30℃に加熱し、撹拌下、Al
2O
3換算で2wt%の硝酸アルミニウム水溶液300gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(NO
3-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は3.0であった。また、スラリーのpHは9.3であった。次に得られたスラリーを60℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図8に得られたアルミナの特性を示した。
【0047】
[実施例8]
Al
2O
3換算で3wt%の硫酸アルミニウム水溶液200gと、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液144gとを、撹拌下、水100gに対し約10分にわたって同時に添加してスラリーを得た。なお、両水溶液とも室温のものを用い、添加時も加熱せずに室温下で行った。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(SO
42-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.5であった。次に得られたスラリーを60℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図9に得られたアルミナの特性を示した。
【0048】
[実施例9]
硝酸アルミニウムと塩化アルミニウムとをAl
2O
3換算の質量比で1:1の割合含有した、Al
2O
3換算で2wt%の水溶性アルミニウム塩水溶液300gを40℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液144gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(NO
3-)のモル数×当該陰イオンの価数)+アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(Cl
-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.5であった。次に得られたスラリーを60℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図10に得られたアルミナの特性を示した。
【0049】
[比較例1]
Al
2O
3換算で2wt%の硝酸アルミニウム水溶液300gを40℃に加熱し、撹拌下、NH
3換算で2wt%の炭酸水素アンモニウム水溶液360gを約10分にわたって添加してスラリーを得た。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(NO
3-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.2であった。また、スラリーのpHは8.6であった。次に得られたスラリーを60℃で5時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図11に得られたアルミナの特性を示した。
【0050】
[比較例2]
Al
2O
3換算で3wt%の硝酸アルミニウム水溶液200gと、NH
3換算で5wt%の炭酸アンモニウム水溶液120gとを、撹拌下、水100gに対し約10分にわたって同時に添加してスラリーを得た。なお、両水溶液とも室温のものを用い、添加時も加熱せずに室温下で行った。この場合、アンモニウムイオン(NH
4+)のモル数/(水溶性アルミニウム塩の陰イオン(NO
3-)のモル数×当該陰イオンの価数)の比率は1.0であった。また、スラリーのpHは6.5であった。次に得られたスラリーを室温で1時間熟成した。熟成後、濾過および洗浄を行い、105℃で12時間乾燥した。得られた乾燥粉を500℃で焼成し、アルミナを得た。
図12に得られたアルミナの特性を示した。
【0051】
実施例1〜9について、
図2(a)〜
図10(a)に示した吸着等温線はIUPAC分類のIV型に属し、相対圧P/P0が0.3〜0.96の範囲において、窒素吸着量の急激な増加が見られる。これは、ほぼ均一な孔径を有するメソ細孔に起因した毛細管凝縮に伴うものと考えられる。また、ヒステリシスカーブを有することが分かる。また、
図2(b)〜
図10(b)に示した細孔径分布より、2nm以上30nm以下にピークが存在していることが分かる。
【0052】
図2(c)〜
図6(c)及び
図9(c)〜
図10(c)に示した低角域XRDパターンにおいて回折角2θが5°以下にピークが現れることより、細孔径が比較的均一であることが分かる。なお、
図7(c)及び
図8(c)にはピークが図示されていないが、検出限界以下である0.7°付近にピークが存在するものと推定される。また、
図2(d)〜
図10(d)に示した広角域XRDパターンより、結晶構造がγ−アルミナであることが分かる。
【0053】
以上の特性より、実施例1〜9において得られたアルミナは、ほぼ均一なメソ細孔を有し、結晶構造がγ−アルミナであるメソポーラスアルミナであることが分かる。
【0054】
比較例1および2について、
図11(a)及び
図12(a)に示した窒素吸着等温線はIUPAC分類のII型に属している。また、
図11(b)及び
図12(b)に示した細孔径分布より、ピークが存在しないことが分かる。
【0055】
図11(c)及び
図12(c)に示した低角域XRDパターンより、回折角2θが5°以下にピークが現れていないことが分かる。また、
図11(d)及び
図12(d)に示した広角域XRDパターンより、結晶構造がγ−アルミナであることが分かる。
【0056】
以上の特性より、比較例1及び2において得られたアルミナは、γ−アルミナの結晶構造を有するが、均一なメソ細孔を有さないアルミナであることが分かる。
【0057】
表1に、上記各実施例及び比較例における細孔径、比表面積、メソ細孔容積を示した。なお、細孔径は、
図2(b)〜
図11(b)におけるピークの頂点の値である。
【0058】
【表1】
【0059】
参考として、焼成前の乾燥粉のXRDパターンを
図13に示した。
図13(a)は実施例1における乾燥粉のXRDパターンを示すグラフであり、
図13(b)は比較例2における乾燥粉のXRDパターンを示すグラフである。
図13(a)はアンモニウムドーソナイトのパターンを示しているが、
図13(b)は少なくともアンモニウムドーソナイトのパターンを示していないことが分かる。
【0060】
さらに参考として、
図14に、実施例1の500℃焼成によって得られたγ−アルミナをさらに600℃〜1300℃で再焼成したときのXRDパターンを示した。600℃の再焼成においてもγ−アルミナのXRDパターンを示した。800℃の再焼成では、θ−アルミナのパターンを一部含むγ−アルミナのパターンを示した。900℃の再焼成ではθ−アルミナとγ−アルミナの混合相を示した。さらに、1000℃〜1200℃の再焼成では、θ−アルミナとα−アルミナの混合相を示した。1300℃の再焼成では、α−アルミナの単一相を示した。なお、ここでは、再焼成時の温度におけるXRDパターンを示したが、上記600℃〜1300℃の各温度での1回焼成時においても同様の結果が得られると考えられる。