特許第5802135号(P5802135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5802135
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】超音波ガイド穿刺針及び留置針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20151008BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   A61M5/158 500D
   A61B8/00
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-547387(P2011-547387)
(86)(22)【出願日】2010年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2010069401
(87)【国際公開番号】WO2011077837
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-289598(P2009-289598)
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】松澤 真樹
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3171525(JP,B2)
【文献】 特開平03−228748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を反射させる凹凸部(22、27)を有する超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)であって、
前記凹凸部(22、27)は、
刃面(11)を有する先端部の近傍の外周面に設けられた溝部(24、28)と、
前記溝部(24、28)の両側に設けられた隆起部(26、29)とを備える、
ことを特徴とする超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)。
【請求項2】
請求項1記載の超音波ガイド穿刺針(10、10a)において、
前記凹凸部(22)は、前記外周面に環状に形成され、且つ、前記超音波ガイド穿刺針(10、10a)の軸線方向に複数設けられる、
ことを特徴とする超音波ガイド穿刺針(10、10a)。
【請求項3】
請求項2記載の超音波ガイド穿刺針(10、10a)において、
前記複数の凹凸部(22)は、隣接する前記凹凸部(22)の前記隆起部(26)同士が連続して形成されている、
ことを特徴とする超音波ガイド穿刺針(10、10a)。
【請求項4】
請求項1記載の超音波ガイド穿刺針(10b)において、
前記凹凸部(27)は、前記外周面を少なくとも複数回周回する螺旋状に形成される、
ことを特徴とする超音波ガイド穿刺針(10b)。
【請求項5】
請求項1記載の超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)において、
前記溝部(24、28)は、断面円弧状に形成されている、
ことを特徴とする超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)。
【請求項6】
請求項1記載の超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)において、
前記隆起部(26、29)は、断面円弧状に形成されている、
ことを特徴とする超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)。
【請求項7】
請求項1記載の超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)において、
前記溝部(24、28)は、断面円弧状に形成されており、
前記隆起部(26、29)は、断面円弧状に形成されており、
前記溝部(24、28)の半径方向の深さは、5〜20μmに設定されており、
前記隆起部(26、29)の半径方向の高さは、1〜15μmに設定されている、
ことを特徴とする超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)。
【請求項8】
内針と、前記内針が挿入される外針とを有する留置針(12)であって、
前記内針は、超音波を反射させる凹凸部(22、27)を有する超音波ガイド穿刺針(10、10a、10b)として構成され、
前記凹凸部(22、27)は、
刃面(11)を有する先端部の近傍の外周面に設けられた溝部(24、28)と、
前記溝部(24、28)の両側に設けられた隆起部(26、29)とを有する、
ことを特徴とする留置針(12)。
【請求項9】
請求項8記載の留置針(12)において、
前記外針は、カテーテル(14)と、該カテーテル(14)の基端部に結合された外針ハブ(16)とを有し、
前記内針は、該内針の基端部に内針ハブ(18)を有し、
前記カテーテル(14)は、先端部近傍の内周面に、外周側に凸となるように窪んだ内周溝部(20)が形成されている、
ことを特徴とする留置針(12)。
【請求項10】
請求項9記載の留置針(12)において、
前記内周溝部(20)は、断面略半円状であり、周方向に略一定の深さで環状に形成されており、軸線方向に所定間隔をおいて所定範囲にわたって複数形成されている、
ことを特徴とする留置針(12)。
【請求項11】
請求項9記載の留置針(12)において、
前記内針ハブ(18)は、前記外針ハブ(16)の内部に嵌合するように構成されており、
前記内針ハブ(18)が前記外針ハブ(16)の内部に嵌合した状態で、前記内周溝部(20)の軸線方向の位相と、前記凹凸部(22、27)の軸線方向の位相とが、互いにずれるように形成されている、
ことを特徴とする留置針(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の反射を利用して位置を検出しながら穿刺するための超音波ガイド穿刺針及び留置針に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者に高濃度の栄養剤を輸液する際には、カテーテル(外針)及び穿刺針(内針)を含む留置針を患者に穿刺して、穿刺針を抜去し、カテーテルを穿刺した状態のまま残し、カテーテルを介してガイドワイヤーを挿入し、心臓に近い血管(静脈)まで到達させた後、カテーテルを抜去して、中心動脈カテーテルをガイドワイヤーに沿って血管内に挿入し、ガイドワイヤーを取り除いて、中心動脈カテーテルだけを穿刺したまま留置し、中心動脈カテーテルに栄養剤、薬液等の供給される輸液ラインを接続して輸液する。
【0003】
このような留置針を穿刺する場合には、例えば、超音波撮像装置から超音波を発信し、穿刺する血管の位置を確認すると共に、穿刺した穿刺針に前記超音波を照射し、その反射波に基づいて得られた画像によって前記穿刺針の位置を確認しながら施術が行われている。
【0004】
従来、このような留置針において、穿刺針(内針)の外周面に凹状の螺旋溝やV溝が形成されたものが知られている(例えば、特許第3171525号公報、特開平3−228748号公報を参照)。この種の留置針の使用に際しては、穿刺針を患者の患部に穿刺し、その穿刺部位に対して超音波撮像装置から超音波を照射することにより、螺旋溝内のエア層又はV溝に前記超音波を反射させ、その反射波を超音波撮像装置で受信することによって穿刺針の撮像画像(エコー画像)を得ている。
【発明の概要】
【0005】
ところで、前述した穿刺針の位置を正確に把握するためには、鮮明なエコー画像を取得することが重要であり、鮮明なエコー画像を得るためには穿刺針から超音波撮像装置のプローブへ十分な強度の反射波が帰ってくる必要がある。従って、より強い反射波が得られ、より鮮明なエコー画像を取得することが可能な超音波ガイド穿刺針の開発が望まれる。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、超音波をより効果的に反射させることができ、これにより、体内における位置を確実且つ高精度に確認することができる超音波ガイド穿刺針及び留置針を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、超音波を反射させる凹凸部を有する超音波ガイド穿刺針であって、前記凹凸部は、刃面を有する先端部の近傍の外周面に設けられた溝部と、前記溝部の両側に設けられた隆起部とを備える、ことを特徴とする。
【0008】
このように、凹凸部が、溝部とその両側に設けられた隆起部とからなるので、超音波は溝部だけでなく隆起部においても反射する。従って、超音波を確実且つ好適に反射させて超音波撮像装置で検出することができる。その結果、患者に穿刺された超音波ガイド穿刺針を超音波撮像装置によって確実且つ高精度に確認することができ、超音波ガイド穿刺針の位置を確認しながら安全且つ確実な手技を行うことが可能となる。
【0009】
また、上記の超音波ガイド穿刺針において、前記凹凸部は、前記外周面に環状に形成され、且つ、前記超音波ガイド穿刺針の軸線方向に複数設けられる、ことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、凹凸部が、外周面に環状に形成されることで、全周が反射面となり、穿刺時における超音波ガイド穿刺針の軸線回りの位置によらず、超音波を効果的に反射させることが可能となる。また、凹凸部が、超音波ガイド穿刺針の軸線方向に複数設けられることで、その分、超音波を好適に反射する箇所が多く設けられることになる。従って、超音波を効果的に反射させ、より十分な反射波を得ることが可能となる。この結果、超音波撮像装置による超音波ガイド穿刺針の位置の確認をより高精度に行うことが可能となる。
【0011】
また、上記の超音波ガイド穿刺針において、前記複数の凹凸部は、隣接する前記凹凸部の前記隆起部同士が連続して形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
このように、超音波ガイド穿刺針の軸線方向にわたって凹凸部が連続的に形成されることで、超音波をより効果的に反射させ、より十分な反射波を得ることが可能となる。この結果、超音波撮像装置による超音波ガイド穿刺針の位置の確認をより高精度に行うことが可能となる。
【0013】
また、上記の超音波ガイド穿刺針において、前記凹凸部は、前記外周面を少なくとも複数回周回する螺旋状に形成される、ことを特徴とする。
【0014】
上記のように凹凸部が形成されることにより、全周が反射面となり、穿刺時における超音波ガイド穿刺針の軸線回りの位置によらず、超音波を効果的に反射させることが可能となり、また、超音波を好適に反射する箇所が多く設けられることになることから、より十分な反射波を得ることが可能となる。この結果、超音波撮像装置による超音波ガイド穿刺針の位置の確認をより高精度に行うことが可能となる。
【0015】
また、上記の超音波ガイド穿刺針において、前記溝部は、断面円弧状に形成されている、ことを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、溝部の内壁面が円弧状の反射面を構成するため、穿刺角度を変えても、溝部に入射した超音波を入射方向と略同じ方向に反射させることができる。従って、超音波を好適に反射させることが可能となり、結果として、超音波撮像装置による超音波ガイド穿刺針の位置の確認をより高精度に行うことが可能となる。
【0017】
また、上記の超音波ガイド穿刺針において、前記隆起部は、断面円弧状に形成されている、ことを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、隆起部の外壁面が円弧状の反射面を構成するため、穿刺角度を変えても、隆起部に入射した超音波を入射方向と略同じ方向に反射させることができる。従って、超音波を好適に反射させることが可能となり、結果として、超音波撮像装置による超音波ガイド穿刺針の位置の確認をより高精度に行うことが可能となる。
【0019】
また、本発明は、内針と、前記内針が挿入される外針とを有する留置針であって、前記内針は、超音波を反射させる凹凸部を有する超音波ガイド穿刺針として構成され、前記凹凸部は、刃面を有する先端部の近傍の外周面に設けられた溝部と、前記溝部の両側に設けられた隆起部とを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針を備えた留置針を示す全体構成図である。
図2図2Aは、図1に示したカテーテル及び外針ハブを示す平面構成図であり、図2Bは、図2Aに示すカテーテルの先端部及びその近傍箇所の軸線方向に沿った一部省略拡大断面図である。
図3図3Aは、本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針及び内針ハブを示す平面構成図であり、図3Bは、本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針の一部断面拡大側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針を備えた留置針の先端部近傍を示す一部省略拡大断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針を備えた留置針を患者に穿刺し、超音波撮像装置によって前記超音波ガイド穿刺針を検出する様子を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針を備えた留置針に対して照射された超音波が反射した状態を示す拡大模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針を患者に直接穿刺する使用形態を説明する模式図である。
図8】第1変形例に係る超音波ガイド穿刺針の溝部を示す拡大側面図である。
図9】第2変形例に係る超音波ガイド穿刺針の溝部を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る超音波ガイド穿刺針及び留置針について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波ガイド穿刺針10(以下、単に「穿刺針」という。)を備えた留置針12の一構成例を示す全体構成図である。なお、説明の都合上、各添付図面(一部の図面を除く)において、留置針12の軸線方向、及びこの留置針12を構成する各部材の軸線方向を矢印X方向で示す。また、留置針12及びその各部材の先端部側の方向をX1で示し、各部材の基端部側の方向をX2で示す。
【0023】
図1に示すように、一構成例に係る留置針12は、カテーテル14と、カテーテル14の基端部に結合された外針ハブ16と、カテーテル14の内部に挿通される穿刺針10と、穿刺針10の基端部に結合された内針ハブ18とを有する。
【0024】
内針ハブ18は、外針ハブ16の内部に嵌合するように構成されている。図1では、穿刺針10及び内針ハブ18の結合体が、カテーテル14及び外針ハブ16の結合体に嵌挿された状態が示されており、この状態において、穿刺針10の先端部に形成された刃面11が、カテーテル14の先端より露出(突出)している。内針ハブ18の基端部には、シリンジ30(図5参照)を接続することができる。
【0025】
図2Aは、図1に示した留置針12のカテーテル14及び外針ハブ16を示す平面構成図である。一構成例に係る留置針12において、カテーテル14は外針を構成するものであり、例えば、透明な樹脂製材料からなり、適度な弾性を有し、穿刺針10を囲繞するように管状に形成されている。このカテーテル14は、穿刺針10の先端近傍まで達しており、穿刺針10の先端が血管内に挿入されると、カテーテル14も同一の血管内に挿入されることとなる。
【0026】
カテーテル14の構成材料としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリウレタン、ポリエーテルナイロン樹脂等の各種軟性樹脂が挙げられる。外針ハブ16の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。
【0027】
図2Bは、カテーテル14の先端部及びその近傍箇所の軸線方向に沿った一部省略拡大断面図である。図2Bに示すように、カテーテル14の先端部近傍の内周面には、外周側に凸となるように窪んだ内周溝部20が形成されている。図示例の内周溝部20は、断面略半円状であり、周方向に略一定深さで環状に形成されており、軸線方向に所定間隔をおいて所定範囲(図2A中のAで示す範囲)にわたって形成されている。
【0028】
カテーテル14の最先端部から、最も先端部側の内周溝部20までの距離L1は、例えば、0〜3mm、好ましくは1〜2mmに設定される。カテーテル14の最先端部から、最も基端部側の内周溝部20までの軸線方向(X方向)の距離L2は、例えば、2〜10mm、好ましくは6〜8mmに設定される。内周溝部20の半径方向の深さは、例えば、10〜25μmに設定される。複数の内周溝部20の溝ピッチ(軸線方向の間隔)は、例えば、0.2〜0.5mmに設定される。
【0029】
なお、内周溝部20は、環状の溝を軸線方向に間隔を置いて形成したものに限られず、軸線方向に螺旋状に延在する溝に形成したものであってもよい。また、内周溝部20は、省略されてもよい。
【0030】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る穿刺針10と内針ハブ18を示す平面構成図である。一構成例に係る留置針12において、穿刺針10は内針を構成するものである。穿刺針10は、中空の管体であって、その先端部には、軸線に対して傾斜した刃面11が形成されている。
【0031】
穿刺針10の構成材料としては、十分な穿刺力(貫通力)が得られる程度に刃先を鋭利に形成でき、且つ、穿刺に必要な強度を持つ材料が使用され、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金等が挙げられる。
【0032】
穿刺針10の基端部は、内針ハブ18の先端部に結合され保持されている。内針ハブ18の構成材料としては、上述した外針ハブ16と同様の構成材料が挙げられる。図3Aに示すように、穿刺針10の先端部の近傍(刃面11より基端部側の所定範囲)の外周面には、超音波を反射させる凹凸部22が、軸線方向の所定範囲にわたって設けられている。
【0033】
図3Bは、図3Aに示した穿刺針10の凹凸部22を示す一部断面拡大側面図である。穿刺針10の外径Dは、例えば、0.7〜0.8mmに設定される。本実施の形態において、凹凸部22は、穿刺針10の外周面に環状に形成され、且つ、穿刺針10の軸線方向(X方向)に間隔を置いて複数設けられる。図示例のように、各凹凸部22の軸線方向の間隔L3は同一に設定してもよく、この場合、間隔L3は、例えば、200〜500μmに設定される。
【0034】
穿刺針10の最先端部から最も先端部側の凹凸部22までの軸線方向の距離L4(図3A参照)は、例えば、0.3〜5mmに設定される。穿刺針10の最先端部から最も基端部側の凹凸部22までの軸線方向の距離L5(図3A参照)は、例えば、5〜50mmに設定される。
【0035】
なお、図示例の穿刺針10では、各凹凸部22の軸線方向の間隔L3は、同一に設定されているが、複数の凹凸部22の各間隔の一部又は全部を異ならせて設定してもよい。例えば、穿刺針10の先端部側ほど凹凸部22の間隔を小さくする(穿刺針10の基端部側ほど凹凸部22の間隔を大きくする)ようにしてもよい。
【0036】
図3Bに示すように、凹凸部22は、内周側に凸形状となる環状の溝部24と、溝部24の両側(軸線方向の両側)に設けられ、半径方向外側に凸形状となる環状の隆起部26とを有する。
【0037】
本実施の形態において、溝部24は、断面円弧状であり、周方向にわたって略一定深さで形成されている。溝部24の軸線方向の幅W1は、例えば、30〜100μmに設定される。溝部24の半径方向の深さH1は、例えば、5〜20μmに設定される。
【0038】
本実施の形態において、隆起部26は、断面円弧状であり、周方向にわたって略一定高さで形成されている。隆起部26の軸線方向の幅W2は、例えば、5〜20μmに設定される。隆起部26の半径方向の高さH2は、例えば、1〜15μmに設定される。
【0039】
なお、上記のように構成される凹凸部22は、管状素材(ワーク)に対して、塑性加工、切削加工、放電加工等の機械加工を施すことで、比較的簡単に形成することができる。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態に係る穿刺針10をカテーテル14に嵌挿し、穿刺針10の刃面11を含む先端部がカテーテル14の先端部から露出(突出)した状態を示す一部省略拡大断面図である。カテーテル14の内径は、隆起部26が設けられた穿刺針10を挿入できるように、隆起部26の外径と略同じか、それより僅かに大きく設定されている。
【0041】
また、図4に示すように、本実施の形態では、カテーテル14及び穿刺針10において、内周溝部20と凹凸部22は、穿刺針10の先端部がカテーテル14の先端部から所定長さ露出(突出)した状態で、複数の内周溝部20の軸線方向の位相と、複数の凹凸部22が軸線方向の位相とが、互いにずれるように形成されている。
【0042】
本実施の形態に係る穿刺針10を含む留置針12は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその使用方法並びに作用効果について説明する。
【0043】
留置針12の穿刺に先立ち、図5に示すように、内針ハブ18の基端部にはシリンジ30が接続される。シリンジ30は、円筒状のシリンジ本体32と、シリンジ本体32の内部に挿入されるプランジャ34とを含む。シリンジ本体32の先端部には接続ポート36が設けられ、この接続ポート36が内針ハブ18の基端部に接続されている。これにより、シリンジ30は、接続ポート36を介して、内針ハブ18の内部と連通している。
【0044】
留置針12を穿刺するには、先ず、図5に示すように、医師等の医療従事者が穿刺針10を含む留置針12を把持して患者50の血管(静脈)に向かって穿刺し、穿刺針10を所望部位に向けて徐々に挿入していくことにより、その先端部が体内組織52を切り開きながら進む。この際、図6に示されるように、穿刺針10は、カテーテル14の内部に挿通されており、この状態では、穿刺針10の凹凸部22はカテーテル14の内部に位置している。このため、穿刺針10の凹凸部22は、体内組織52に接することなく、留置針12が穿刺される。
【0045】
一方、留置針12を患者に穿刺すると同時に、超音波撮像装置40のプローブ42を患者50の穿刺部位近傍に対して押し当てエコービーム(超音波)Eを照射する。なお、このプローブ42は、エコービームEを発信し、エコービームEの反射波(反射エコー)を受信可能に構成されている。
【0046】
エコービームEは、患者50の皮膚表面から内部に向かって発信され、留置針12の先端部に照射される。そして、エコービームEは、図6に示されるように、カテーテル14の内周面に形成された内周溝部20の内壁面によってプローブ42側に反射されるとともに、内周溝部20の内部に密封されている空気によっても同様に反射される。ここで、内周溝部20によって反射された超音波(反射波)を、反射エコーE1として示す。この場合、内周溝部20の内壁面で反射された反射エコーE1は、内周溝部20内の空気によって減衰されることがなく、照射されたエコービームEの強さと略同等の強度をもつ。反射エコーE1は、プローブ42によって受信される。
【0047】
また、エコービームEは、カテーテル14を透過し、凹凸部22においてプローブ42側に反射される。ここで、凹凸部22によって反射された超音波を、反射エコーE2として示す。凹凸部22によって反射された反射エコーE2には、溝部24による反射成分と、隆起部26による反射成分とがある。凹凸部22によって反射された反射エコーE2は、プローブ42によって受信される。
【0048】
上述したように、本実施の形態において、溝部24は、断面円弧状に形成され、その内壁面が円弧状の反射面を構成し、隆起部26は、断面円弧状に形成され、その外壁面が円弧状の反射面を構成する。このため、留置針12の穿刺角度θ(図5参照)を変化させた場合でも、溝部24の内壁面及び隆起部26の外壁面によってプローブ42から発信されたエコービームEを、プローブ42側に向かって反射させることが可能となる。
【0049】
エコービームEの反射波(反射エコーE1、E2)がプローブ42によって受信されると、この受信したデータがプローブ42からリード線44を通じて超音波撮像装置40の制御部(図示せず)へと出力されて処理され、その後に、ディスプレイ46に画像として表示される。具体的には、ディスプレイ46に表示されるカテーテル14及び穿刺針10の画像は、超音波撮像装置40によって検出される凹凸部22の軸線方向に沿った長さ分だけ線状に表示され、その先端部が患者50の血管(静脈)に到達しているか否かをディスプレイ46から確認することができる。
【0050】
その結果、穿刺針10の先端部近傍が、超音波撮像装置40のディスプレイ46に画像として鮮明に表示され、留置針12を構成する穿刺針10の位置が高精度に確認される。
【0051】
そして、医師等は、ディスプレイ46を確認しながら穿刺針10及びプローブ42を移動させ、穿刺針10を患者50の血管へと導く。このとき、シリンジ30のプランジャ34を適度に引きながら留置針12を進めていく。この穿刺針10が血管に正しく穿刺されると、血液がシリンジ30の接続ポート36を通じてシリンジ本体32へと導入されてフラッシュバックが発生する。
【0052】
このように、穿刺針10が血管に穿刺されたことが確認された後、カテーテル14を残して、穿刺針10及びシリンジ30を取り除き、カテーテル14を介して血管内に図示しないガイドワイヤーを挿入した後に、カテーテル14を除去する。次いで、前記ガイドワイヤーに沿って、図示しない中心静脈カテーテルを血管内に留置する。次いで、図示しない輸液ラインを中心動脈カテーテルに接続して血管内に栄養剤、薬液等を供給する。
【0053】
カテーテル14を残して穿刺針10を抜去する際には、穿刺針10は、カテーテル14の内部(内腔)を通って患者の体外に抜去されるため、穿刺時と同様に、穿刺針10の凹凸部22が体内組織52に接することがない。
【0054】
以上のように、本実施の形態に係る穿刺針10によれば、凹凸部22が、溝部24とその両側に設けられた隆起部26とからなるので、超音波は溝部24だけでなく隆起部26においても反射する。従って、超音波を確実且つ好適に反射させて超音波撮像装置40で検出することができる。その結果、患者に穿刺された穿刺針10を超音波撮像装置40によって確実且つ高精度に確認することができ、穿刺針10の位置を確認しながら安全且つ確実な手技を行うことが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態では、凹凸部22が、環状に形成されているので、全周が反射面となり、穿刺時における穿刺針10の軸線回りの位置によらず、超音波を効果的に反射させることが可能となる。また、凹凸部22が、穿刺針10の軸線方向に複数設けられることで、その分、超音波を好適に反射する箇所が多く設けられることになる。従って、超音波を効果的に反射させ、より十分な反射波を得ることが可能となる。この結果、超音波撮像装置40による穿刺針10の位置の確認をより高精度に行うことが可能となる。
【0056】
さらに、本実施の形態では、溝部24は、断面円弧状に形成され、その内壁面が円弧状の反射面を構成し、隆起部26は、断面円弧状に形成され、その外壁面が円弧状の反射面を構成する。このため、留置針12の穿刺角度θ(図5参照)を変化させた場合でも、溝部24の内壁面及び隆起部26の外壁面によってプローブ42から発信された超音波を、プローブ42側に向かって反射させることが可能となる。換言すれば、留置針12の穿刺角度θに関わらず、超音波をプローブ42側に向かって反射させ、留置針12の位置を確認することができる。
【0057】
さらにまた、カテーテル14の内周面には内周溝部20が形成され、内周溝部20においても超音波を反射させるので、プローブ42で受信する反射波の強度を高めることができ、より鮮明なエコー画像が得られ、この結果、留置針12の先端部の位置を高精度に確認することが可能となる。
【0058】
なお、上記本実施の形態に係る穿刺針10について、外針と内針とを有する留置針12の内針として構成された場合の使用形態を説明したが、本発明の穿刺針10は、図7に示すように、カテーテル14を用いずに、穿刺針10を直接、患者に穿刺して血管確保を行う場合にも使用可能である。この場合、内針ハブ18の基端部に、例えば、Yハブ(図示せず)を接続し、このYハブ、内針ハブ18及び穿刺針10にガイドワイヤー及び中心動脈カテーテルを通して、上記と同様の手技を行うことが可能である。このような使用形態においても、超音波(エコービームE)を凹凸部22によって確実且つ好適に反射させ、患者に穿刺された穿刺針10を超音波撮像装置40によって確実且つ高精度に確認することができ、穿刺針10の位置を確認しながら安全且つ確実な手技を行うことが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態に係る穿刺針10について、セルジンガー法によって中心動脈カテーテルを留置する際に使用するガイドワイヤー導入針として用いる場合の形態を説明したが、本発明の穿刺針10は、抹消血管に留置して輸液する際に使用する留置針、生体組織や細胞の一部を採取する際に使用する生検針などとしても用いることができる。
【0060】
図8は、第1変形例に係る超音波ガイド穿刺針10a(以下、単に「穿刺針10a」という。)の先端部及びその近傍箇所を示す側面構成図である。第1変形例に係る穿刺針10aのように、隣接する凹凸部22の隆起部26同士が連続(連結)するように複数の凹凸部22が形成されてもよい。このように、穿刺針10の凹凸部22が連続的に形成されることで、上述した基本形に係る穿刺針10と比較して、プローブ42側に向かう反射波の量を多くすることが可能となる。この結果、超音波撮像装置40による穿刺針10aの位置の確認を一層高精度に行うことが可能となる。
【0061】
図9は、第2変形例に係る超音波ガイド穿刺針10b(以下、単に「穿刺針10b」という。)の先端部及びその近傍箇所を示す側面構成図である。第2変形例に係る穿刺針10bのように、溝部28と、この溝部28の両側に設けられた隆起部29とを有する凹凸部27が、穿刺針10bの外周面を少なくとも複数回周回して軸線方向に延在する螺旋状に形成されてもよい。このように構成された凹凸部27によっても、前述した凹凸部22と同様に、超音波を効果的に反射させ、より十分な反射波を得ることが可能となる。この結果、超音波撮像装置40による穿刺針10bの位置の確認をより高精度に行うことが可能となる。
【0062】
また、穿刺針10bの凹凸部27が螺旋状に形成されていることにより、カテーテル14に挿入したときに、複数の内周溝部20の軸線方向の位相と、凹凸部27の軸線方向の位相とを互いにずらすことが容易となる。
【0063】
また、カテーテル14の内周溝部20を凹凸部27とは異なる角度の螺旋状に形成したり、凹凸部27とは異なる方向の螺旋状に形成したりすることによっても、内周溝部20の軸線方向の位相と、凹凸部27の軸線方向の位相とを互いにずらすことが容易となる。
【0064】
内周溝部20の軸線方向の位相と、凹凸部27の軸線方向の位相とが互いにずれていると、超音波の反射強度が減衰することを抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9