特許第5802174号(P5802174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バブ日立工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5802174-傾斜式バックストップ構造 図000003
  • 特許5802174-傾斜式バックストップ構造 図000004
  • 特許5802174-傾斜式バックストップ構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5802174
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】傾斜式バックストップ構造
(51)【国際特許分類】
   F41J 13/00 20090101AFI20151008BHJP
【FI】
   F41J13/00
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-148694(P2012-148694)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-9926(P2014-9926A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2012年7月2日
【審判番号】不服2014-13230(P2014-13230/J1)
【審判請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391018639
【氏名又は名称】バブ日立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】丸井 猛
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 正則
(72)【発明者】
【氏名】板倉 義人
(72)【発明者】
【氏名】神垣 翔
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 和田 雄二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6715761(US,B1)
【文献】 特開2002−062095(JP,A)
【文献】 米国特許第6173956(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜な角度の傾斜面を形成した基台を設け、該基台上に、適宜な粒径を有するゴムチップを積層し、適宜な厚みのゴムチップ層を形成し、該ゴムチップ層の表面を、ゴムシート材で覆い、
かつ、基台の傾斜面に、複数の斜面保持構造部材を設け、該部材を所定間隔おきに水平方向に形成する傾斜式バックストップにおいて、
基台の後方に位置する二重背面保護壁の前面に、手前に向かって上方に向け傾斜する保護枠と、
該保護枠の下部であって、傾斜面の上端部付近であって、ゴムチップ層内に立設したゴムブロックとを、
設けたことを特徴とする傾斜式バックストップ構造。
【請求項2】
複数の斜面保持構造部材が基台と一体に形成し、あるいは別部材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の傾斜式バックストップ構造。
【請求項3】
複数の斜面保持構造部材が、デッキプレートで形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の傾斜式バックストップ構造。
【請求項4】
傾斜面の角度が、35°前後であることを特徴とする請求項1記載の傾斜式バックストップ構造。
【請求項5】
ゴムチップの粒径が、10〜50mmであることを特徴とする請求項1記載の傾斜式バックストップ構造。
【請求項6】
ゴムシートの厚みが、3mm前後であることを特徴とする請求項1記載の傾斜式バックストップ構造。
【請求項7】
ゴムチップが、難燃性の素材であることを特徴とする請求項1記載の傾斜式バックストップ構造。
【請求項8】
ゴムブロック(7)をゴムチップ層の傾斜面の上端付近に設置したことを特徴とする請求項1記載の傾斜式バックストップ構造。
【請求項9】
ゴムチップ層の傾斜面の下方先端に、ゴムチップをせき止めるバーを設けることを特徴とする請求項1または8記載の傾斜式バックストップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、傾斜式バックストップ構造に関するものであり、特に、射撃場において、小銃あるいは拳銃等の射撃訓練に使用される際の弾丸を停弾・捕捉するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射撃場では小銃あるいは拳銃等から発射された弾丸は、標的の背後にバックストップを設けており、該バックストップにより発射された弾丸を停弾させるものであるが、諸外国では、鉛粉の発生を防ぎ、射撃場で働く人員の健康面の保護並びに射撃場外の鉛汚染による環境破壊に対して厳しく管理されており、我が国も、鉛廃弾の回収率の向上を図っている。
【0003】
そのため、発射された弾丸を粉砕することなく、そのままの形で捕捉することが望ましく、そのため、傾斜した地面に直接打ち込むような極めて簡易なバックストップにかわり、砂山、土嚢等を積み上げたものや、複数枚のゴムシートを適宜な間隔をあけ、上方より吊り下げ、最終の位置には硬鋼板を傾斜して設けたものや、中空のゴムブロックを、そのまま積層したり、あるいはゴム筐体内に、前記中空のゴムブロックを積層・充填した構造のバックストップが種々開発され、使用されている。
【0004】
さらには、傾斜面を形成し、該傾斜面には、粘弾素材で捕捉層を形成し、その傾斜面の角度が、弾丸の進行方向に対して15度以下〔特許請求の範囲:請求項7〕、あるいは、15度以上30度以下〔特許請求の範囲:請求項26〕とした停弾装置(バックストップ)の発明が開示されている。例えば、特許文献1のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−343086号公報
【0006】
この技術文献に示されている傾斜面の角度に対して、請求項7で数値限定されることによる効果の記載は見当たらず、また、請求項27に対する「発明の効果」の記載には、弾丸は15度以上30度以下の角度で着弾するので、鋼板及び反射板の損傷を効率的に小さく抑えることが可能であると記載されているにすぎない。
【0007】
しかし、開示された傾斜角では、バックストップの奥行きを長く取る必要があり、設備コスト、メンテナンス作業等の面でも問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明の課題は、上記の欠点を除去し、弾丸を粉砕せずにそのまま回収でき、ゴムチップを表面のゴムシート材で覆い、着弾時のゴムチップの飛散を防止し、集中被弾する部分の埋め戻し頻度が少なくなりメンテナンス作業の容易な傾斜式バックストップ構造を開発・提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この発明は、傾斜式バックストップであって、最適な傾斜角の傾斜面を有する基台を開発し、傾斜面上に、ゴムチップの層を形成し、この上にゴムシート材で覆ったバックストップ構造を開発・提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、射撃手に正対する表面をすべてゴム素材で構成するため、粘弾性を有するため、至近距離からの射撃でも跳弾が生じないし、弾丸を粉砕せずにそのままの形で回収できる等の極めて優れた効果を奏する。
【0011】
さらに、基台の傾斜面には、複数の斜面保持構造部材を、所定間隔おきに水平方向に形成することによって、よりゴムチップ層を構成するゴムチップが崩れ難くする等の効果を奏する。
【0012】
また、複数の斜面保持構造部材を、建築部材において、床材に使用されているデッキプレートで形成されていることにより、その構造は堅牢であり、かつ簡単に施工できる等の優れた効果を有する。
【0013】
そして、基台の傾斜面の角度が、35°前後であり、ゴムチップの安息角となるため、傾斜面からゴムチップが滑り落ちることがない等の効果を奏する。
【0014】
また、ゴムチップの粒径が大きい場合において、弾丸が通過する時の抵抗が大きいため、弾丸が停止する距離が短くなるという効果を生じ、弾丸の停止する距離が短くなれば、使用するゴムチップの量を少なくすることが出来、経済的であり、弾丸をゴムチップの中から分別回収する時にゴムチップの量が少ない方が回収作業が容易である。尚、弾丸停止距離試験結果は、下記の表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
さらに、ゴムシートの厚みを、3mm前後のシートとしたことにより、同じゴム製であれば厚い表面材を使用するよりも製品コストを低減でき、また、消耗品の費用と廃棄物の発生量も低減することができ、さらに、ゴムチップ層のメンテナンス作業等を行う際に、該ゴムシートが捲りやすく、作業が煩雑でなく、簡易・迅速にできる等の効果を奏する。
【0017】
そして、ゴムチップを難燃性にすることにより、弾丸の種類で夜間の弾道が見えるように火薬を燃焼させながら飛翔する曳光弾という弾丸の場合、その燃焼によゴムチップが燃えるのを防止できるという効果を奏する。
【0018】
傾斜式バックストップ構造において、ゴムシート(10)により、袋状に構成されたゴムチップ保持部(11)を設けたことにより、粘弾性が増し、弾丸を粉砕せずにそのままの形状で回収でき、しかも、弾丸は至近距離から発砲しても跳弾を生じないという効果を奏する。
【0019】
さらに、ゴムブロック(7)をゴムチップ積層の傾斜面の上端付近に接地したことにより、上方に射撃された弾丸も、より確実に回収できるとの効果を奏する。
【0020】
また、ゴムチップ層(2a)を積層する傾斜面(1a)の下方先端に、ゴム製のバー(5,5′)を設けることにより、ゴムチップ(2)をせき止める効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の一実施例を示す一部欠截断面図である。
図2】この発明の一実施例を示し、図1中のa部分の拡大図である。
図3】この発明の一実施例を示し、図1中のb部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の好適な実施の形態として詳細に説明する。尚、この発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【実施例】
【0023】
次に、この発明の一実施例を図面に基づいて詳述すると、傾斜式バックストップにおいて、べた基礎(A)の上に、適宜な傾斜面(1a)を形成した基台(1)を設け、該基台(1)上に、難燃性であって、且つ、適宜な粒径を有するゴムチップ(2)を積層して、ゴムチップ層(2a)を形成し、該ゴムチップ層(2a)表面に、ゴムシート(3)で覆うことを特徴とするバックストップ構造から構成されるものである。
【0024】
尚、基台(1)の傾斜面(1a)の裏側には、基台(1)を支える複数本の支柱(X)と、傾斜面(1a)のほぼ中央部と、該支柱(X)下端部との間には、筋違い状の複数本の補強部材(Y)で傾斜面を補強している。
【0025】
また、基台(1)の背面部には、基台上端よりも高い背面保護壁(Z)を、ゴム製圧縮成形材を素材として構成しており、また、基台(1)上端よりも高い部分には、同じく、前記ゴム製圧縮成形材を素材とした二重背面保護壁(Z′)を設けている。
【0026】
さらに、前記二重背面保護壁(Z′)の上部には、反射撃方向に向かう上部保護壁(Z)を形成しており、該上部保護壁(Z)の前面から、ゴムシート(3)の上端部を固定し、下方に伸びている。
【0027】
そして、前方に向けて伸びたゴムシート(3)は、ゴムチップ層(2a)の表面を被覆し、該シートの下端部は、ゴム製のバー(5)(5′)で押さえると共に、一定間隔でメタルヒットアンカー(6)により基礎部分に固定されている。
【0028】
また、基台(1)の傾斜面(1a)には、複数の斜面保持構造部材(4)を、所定間隔おきに水平方向に形成するよう構成されている。
【0029】
複数の斜面保持構造部材(4)は、等脚台形を所定間隔おきに連設した市販のデッキプレートを貼設してもよい。
【0030】
尚、基台(1)の傾斜面(1a)の角度は、35°前後に形成しており、この角度がチップ安息角を構成していることにより、ゴムチップ層(2a)が傾斜面から崩れ落ちることなく、安定して傾斜面(1a)に留まっている。
【0031】
また、ゴムチップ(2)の粒径が、10〜50mmであり、この範囲内で大きさの異なるゴムチップを混ぜ合わせて設けることにより、粘弾性が増し、弾丸は至近距離から発砲しても跳弾を生じない。尚、ゴムチップの粒径は、10〜50mmとし、最大50mmのものや、通常は10mm以下の粒径が5%以下、15〜25mmが65%以上である。
【0032】
さらに、ゴムシート(3)の厚みを、3mm前後にしているため、メンテナンス作業等で捲る場合も、簡単に作業でき、また、該ゴムシートの幅は、バックストッパーの傾斜面の全面を覆うものであってもよく、あるいは、複数の例えば、3〜5レーンを覆う程度のものであってもよい。
【0033】
また、基台(1)の傾斜面(1a)の上端部付近には、ゴムチップ層(2a)内であって傾斜面(1a)付近から立設されたゴム製圧縮成形材からなるゴムブロック(7)と、ゴムチップ層(2a)の上面に位置し、反射撃方向に、上方に向けて傾斜する上方傾斜部材(8)の下面にも、同じくゴム製圧縮成形材からなる保護枠(9)を形成し、上方に発砲された弾丸を停弾させるものである。
【0034】
尚、ゴムチップ層(2a)を積層した傾斜面(1a)の下方先端にはゴムチップ(2)をせき止めるためのゴム製のバー(5)を設けている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明によると、傾斜式バックストップ構造の技術を確立し、これに基づいて大量に製造・販売することにより産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0036】
1 基台
1a 傾斜面
2 ゴムチップ
2a ゴムチップ層
3 ゴムシート
4 斜面保持構造部材
5 ゴム製のバー
6 メタルヒットアンカー
7 ゴムブロック
8 上方傾斜部材
9 保護枠
10 ゴムシート
11 ゴムチップ保持部
A べた基礎
X 支柱
Y 補強部材
Z 背面保護壁
Z′二重背面保護壁
図1
図2
図3