(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記慣性センサは、10Hz以下の動作を検出対象とし、データレートの2のべき乗の倍数のサンプリング周波数で動作する処理系統を2個以上備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の慣性センサ用のノイズ除去装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、被計測者の荷重値を出力するセンサを有し、被計測者の心身状態を判断する心身状態判定システムであって、センサは、ピエゾ素子、感圧抵抗体素子、ポテンションメーター等の圧力センサ、又は慣性センサのいずれかであり、被計測者の荷重値又は重心位置の時系列信号に含まれる不要な周波数成分を除去するノイズ除去手段を有する心身状態判定システムが知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1には、具体的なノイズ除去手段として、アナログやデジタルのローパスフィルタ(LPF)やハイパスフィルタ(HPF)等を用いて不要な周波数成分を除去する旨が記載されている。また、カオス理論解析においてありえない周波数帯域や、被計測者がくしゃみ等をして生じたノイズ成分や電源に重畳したノイズ成分等を除去することにより、データ処理や心身状態の予測又は判断の精度を向上させることが出来るとされている。
【0003】
また、慣性センサを用いたフィードバック系において、発振しないロボットが知られている(例えば、特許文献2)。この特許文献2に記載のものは、アームと、アームを回動させるモータとトルク伝達機構とを含むアーム連結部と、アームの端部のアーム連結部に連結された基体と、モータの回動角度を検出しモータの回動角度情報を出力する角度センサと、アームに作用する慣性力の情報を出力する慣性センサと、アームの回動動作を制御する制御部と、角度センサの出力と慣性センサの出力とから慣性センサのノイズ周波数を検出するノイズ検出部と、ノイズ検出部の情報からフィルタの特性を決めるフィルタ定数決定部と、フィルタ定数決定部に基づき慣性センサのノイズを除去するフィルタとを備える。
【0004】
また、携帯電話等に搭載され、例えば、被計測者の歩行動作を検出して歩数を累計表示するために用いる慣性センサの出力信号に含まれる不要な周波数成分を除去するフィルタ装置も知られている(例えば、特許文献3)。この特許文献3に記載のフィルタ装置は、上述した特許文献1に類似する目的に加えて、消費電力を抑制する目的も含め、ノイズを除去するためのアナログフィルタを設け、少ない電力でフィルタリング処理を行うことができるというものである。具体的には、電気的接続状態が間欠的になるように各スイッチを切り換え制御することによって、フィルタリング処理で消費する電力を抑えることができる。より詳しくは、慣性センサの発振ノイズを除去するために慣性センサ及び増幅器などのアナログ回路を間欠動作して1/16の時間だけ、抵抗Rを介してキャパシタCにチャージするLPFが形成されている。これにより消費電流は1/8、RCは1/16となる効用が得られている。
【0005】
図1(a),(b)は、従来例のフィルタ装置の概略回路図である。
図1(a)は、節電対策されていないフィルタ装置を示し、
図1(b)は、節電対策されているフィルタ装置を示している。
図2(a)乃至(j)は、
図1(a),(b)で示したフィルタ装置の動作を説明するためのタイムチャートを示す図である。
図1(a)に示すフィルタ装置4は、アナログ回路3と、抵抗R(以下、単にRという)と、キャパシタC(以下、単にCという)とにより構成されている。アナログ回路3は、不図示の慣性センサ及び増幅器等の出力A_OUTを、RCにより構成された第1LPF1により、高域周波数成分が除去された低域周波数成分のみをLPF1_OUTとして出力する。第1LPF1の入出力波形は、
図2(i),(j)にそれぞれ示すとおりである。
図2(i)に示す矩形波の出力A_OUTから、それに含まれる高調波成分が除去されると、
図2(j)に示すように、基本波である正弦波に近い波形になる。
【0006】
図1(b)に示すフィルタ装置7は、アナログ回路6と、スイッチ5と、R/4と、C/4とにより構成されている。アナログ回路6は、昇圧回路や音声信号処理回路等のアナログ素子で構成される回路である。アナログ回路6の内部には、不図示の制御部から出力されるクロック制御信号CLKに合わせて、電力を供給・停止するための電力供給スイッチを有する。そして、アナログ回路6は、不図示の慣性センサ及び増幅器等に加えて
図2(b)に示すスイッチングパルス1/8ONに基づく1/8間欠動作機能も有している。この1/8間欠動作機能は、慣性センサ及び増幅器等を、1/8の時間だけ断続的に稼動して、
図2(d)に示すように出力1/8A_OUTを次段へ伝達する。
【0007】
スイッチ5は、例えば、MOSトランジスタ等のスイッチング素子であり、不図示の制御部から出力されるクロックCLKによってオン状態とオフ状態とのいずれか一方に切り換えられ、第2LPF2に信号を入力するものである。このスイッチ5は、
図2(c)に示すスイッチングパルス1/16ONに基づく1/16間欠動作スイッチ機能を有する。また、1/8の時間だけ断続的に出力可能となっている1/8A_OUTを、スイッチ5により、さらに半分に区切って1/16の時間だけ第2LPF2へ伝達する。
【0008】
第2LPF2は、R/4と、C/4とにより構成されており、特定の低域周波数の信号のみを通過させるためのフィルタ回路である。R/4は、抵抗2の1/4の値であるので、抵抗R/4と示している。また、C/4は、キャパシタ3の1/4であるので、キャパシタC/4と示している。
図2(a)は、不図示の制御部により生成されるクロック制御信号CLKの波形図である。このクロック制御信号CLKに基づいて、アナログ回路6に電力を供給又は停止の制御するスイッチングパルス1/8と、第2LPF2を1/16間欠動作させるスイッチングパルス1/16ONも生成する。
図2(b)は、アナログ回路6を、1/8間欠動作させるためのスイッチングパルス1/8ONの波形図である。
図2(c)は、スイッチ5を1/16間欠動作させるためのオンするタイミングを示すスイッチングパルス1/16ONの波形図である。
図2(d)は、アナログ回路6を1/8の時間だけ断続的に稼動しての出力1/8A_OUTの波形図である。
図2(e)は、
図2(d)に示す出力1/8A_OUTを第2LPF2によりノイズ成分を除去した低域周波数成分の出力LPF2_OUTである。
【0009】
図2(f),(g),(h)は、
図2(d),(e),(c)で示した信号の時間軸を縮めて、より長時間に亘って示した波形図である。この縮めた時間軸と同一の時間軸で、別の信号を
図2(i),(j)に示している。すなわち、
図2(f)は、アナログ回路6の出力1/8A_OUTの波形図である。
図2(g)は、低域周波数成分の出力LPF2_OUTである。
図2(h)は、スイッチングパルス1/16ONの波形図である。
図2(i)は、
図1(a)に示すフィルタ装置4において、アナログ回路3からの出力A_OUTの波形図であり、第1LPF1へ入力する矩形波の連続信号である。
図2(j)は、
図2(i)に示す出力A_OUTを第1LPF1により高域周波数成分が除去された低域周波数成分の出力LPF1_OUTである。
【0010】
また、
図2(i),(j)に示した信号を、間欠処理した信号が、
図2(f),(g)に示されている。つまり、
図1(a)に示すフィルタ装置4によるフィルタリング処理の結果と、
図1(b)に示すフィルタ装置7によるフィルタリング処理とは、ほぼ同等の結果を得られていることを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
背景技術において、上述した特許文献1には、ノイズ成分として、ありえない周波数帯域、被計測者のくしゃみ等により生じたノイズ成分、あるいは電源に重畳したノイズ成分等を例示し、それらを除去するノイズ除去手段として、アナログやデジタルのLPFやハイパスフィルタ等を用いて不要な周波数成分を除去する旨が記載されている。しかしながら、ノイズ除去手段であるデジタルフィルタにおいて、消費電力を抑制するための具体的な対策は開示されていない。
【0013】
また、上述した特許文献2には、ノイズ検出部が、角度センサの出力と慣性センサの出力とから慣性センサのノイズ周波数を検出し、そのノイズ検出部の情報に基づいてフィルタ定数決定部が、フィルタの特性を決め、そのフィルタ定数決定部により決定されたフィルタの特性により慣性センサのノイズを除去するフィルタが開示されている。しかしながら、この特許文献2には、フィルタリング機能に要する駆動電力を節約するための低消費電力化及びフィルタリング機能の構成を小面積化する技術については開示されていない。
【0014】
また、上述した特許文献3には、慣性センサ(加速度センサ)のノイズ除去装置(回路)とそのノイズ除去(制御)方法が開示されているが、アナログフィルタでは不十分であった。物理的な動作を検出する慣性センサには、共振周波数が存在し、共振発振による誤検出が発生することがある。また、機械的振動などの外乱によっても、誤検出が発生することがある。特に慣性センサにおいては、バイブレータや音楽鳴動などをトリガとした共振発振や、バイブレータの振動そのものを、誤検出して、慣性センサ本来の目的とする人間の動作検出ができなくなるという欠点があった。
【0015】
例えば、加速度検出により人間の動作判定を行う場合、人間が動作する速度は最速で10Hz程度であり、正確な測定をするには、その数倍のサンプリングレートが必要である。また、慣性センサの共振周波数は1k〜10kHz程度であり、約1.5kHzが多い。この信号を除去するためには、その数倍のサンプリングレートが必要である。一方、慣性センサは、比較的信号レベルが高く、ある程度の時間でセンサ信号を積分すればS/N比は確保できる。この点に着目し、加速度センサ及び増幅器などのアナログ部を間欠動作して1/16の区間、抵抗Rを介してキャパシタCにチャージすることによりLPFを形成し、加速度センサの発振ノイズを除去する、というものであった。これにより消費電流は1/8、RCは1/16となる効用が得られている。
【0016】
また、フィルタの減衰特性をよくするためには、フィルタの次数を上げるか、カットオフ周波数fcを下げるかが必要である。しかしながら、形成できるLPFは1次のみであるため、高い減衰特性を得ることは困難であった。さらに、カットオフ周波数fcを下げるためには、RCも大きくなるので面積が大きくなるという欠点もある。そのため、小型化を優先する使途においては、ノイズ除去の効果は不十分であった。
【0017】
そして、ノイズを除去するためには、そのノイズの周波数に対する数倍のサンプリングレートが必要である。また間欠動作により、低消費電力化が可能となっている。ところが、共振発振を回避するためには、高い周波数によるサンプリングレートが必要となるため間欠動作の実施が困難となる。その結果、共振発振による誤検出防止と、低消費電力化との両立は困難であるという問題があった。
【0018】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、慣性センサを用いたときに生じる共振発振を防止するとともに、非常に高い減衰特性のフィルタ特性により、ノイズの影響を低減することができて、しかも、低消費電力化、小面積化し、より正確に加速度を測定できるようにした慣性センサ用のノイズ除去装置及びそのノイズ除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、慣性センサ(40)の出力に含まれるノイズを除去する慣性センサ用のノイズ除去装置において、前記慣性センサ(40)と増幅器(44)を含んで構成されるアナログ部(31)と、前記アナログ部(31)の出力を積分する積分器(32)と、前記積分器(32)で積分した信号をAD変換するAD変換器(33)と、前記ノイズを除去する制御の制御条件に基づいて機能構成を可変するとともに前記AD変換器(33)の出力に含まれるノイズを除去するデジタルフィルタ(34)と、前記デジタルフィルタ(34)
を、前記AD変換器(33)によるAD変換後のデータに含まれる前記慣性センサ(40)が検出対象とする信号
の周波数成分と、前記AD変換器(33)によるAD変換後のデータ
に含まれるノイズの周波数成分とに基づいて、
駆動電力が少なくなるようなサンプリング周波数で動作させ
る測定制御部(35)とを備えたことを特徴とする(
図3)。
【0020】
また、請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記デジタルフィルタ(34)には、櫛形フィルタ(36)を備えたことを特徴とする。(
図5)
また、請求項
3に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記デジタルフィルタ(34)には、前記AD変換後のデータをデシメートによりデータ間引きする積分器(70)を備えたことを特徴とする。(
図7)
【0021】
また、請求項
4に記載の発明は、請求項1乃至
3のいずれか
一項に記載の発明において、前記慣性センサ(40)は、10Hz以下の動作を検出対象とし、データレートの2のべき乗の倍数のサンプリング周波数(Fs1〜Fs3)で動作する処理系統を2個以上(DET1〜DET3)備えたことを特徴とする。(
図5)
また、請求項
5に記載の発明は、請求項1乃至
3のいずれか
一項に記載の発明において、前記慣性センサ(40)は、10Hz以下の動作を検出対象とし、共振周波数(Fx)が1kHz≦Fx≦2kHzである場合に、サンプリング周波数Fs1がデータレートと同じ周波数の処理系統(DET1)と、サンプリング周波数Fs2がサンプリング周波数Fs1の8倍の処理系統(DET2)と、サンプリング周波数Fs3がサンプリング周波数Fs2の8倍の処理系統(DET3)とを備えたことを特徴とする。(
図5)
【0022】
また、請求項
6に記載の発明は、請求項1乃至
3のいずれか
一項に記載の発明において、前記慣性センサ(40)は、10Hz以下の動作を検出対象とし、共振周波数(Fx)が2kHz≦Fx≦4kHzである場合に、サンプリング周波数Fs1がデータレートと同じ周波数の処理系統(DET1)と、サンプリング周波数Fs2がサンプリング周波数Fs1の8倍の処理系統(DET2)と、サンプリング周波数Fs3がサンプリング周波数Fs2の16倍の処理系統(DET3)とを備えたことを特徴とする。(
図5)
また、請求項
7に記載の発明は、慣性センサ(40)の出力に含まれるノイズをデジタルフィルタ(34)により除去する慣性センサ用のノイズ除去方法であって、前記慣性センサの出力を積分器(32)により積分し(ステップS1)、前記積分器(32)で積分した信号をAD変換器(33)でAD変換し(ステップS2)、
前記AD変換器によるAD変換後のデータに含まれる前記慣性センサ(40)が検出対象とする信号
の周波数成分と、前記AD変換器(33)によるAD変換後のデータ
に含まれるノイズの周波数成分とに基づいて、
駆動電力が少なくなるようなサンプリング周波数を制御条件として決定
し(ステップS3)、
決定された前記サンプリング周波数で、前記AD変換器(33)の出力に含まれる前記ノイズを前記デジタルフィルタ(34)で除去する(ステップS4)ことを特徴とする。(
図8)
【0023】
また、請求項
8に記載の発明は、請求項
7に記載の発明において、前記慣性センサ(40)は、10Hz以下の動作を検出対象とし、共振周波数(Fx)が1kHz≦Fx≦2kHzである場合に、サンプリング周波数Fs1が100Hz≦Fs1≦200Hzの制御条件(STATE1)と、サンプリング周波数Fs2が800Hz≦Fs2≦1.6kHzの制御条件(STATE2)と、サンプリング周波数Fs3を6.4kHz≦Fs3≦12.8kHzの制御条件(STATE3)とを含むことを特徴とする。(
図9)
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、慣性センサを用いたときに生じる共振発振を防止するとともに、非常に高い減衰特性のフィルタ特性により、ノイズの影響を低減することができ、しかも、低消費電力化、小面積化し、より正確に加速度を測定できるようにした慣性センサ用のノイズ除去装置及びそのノイズ除去方法を実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、慣性センサとして加速度センサや角速度センサが知られており、本実施例では、以下に示す加速度センサ40を用いている。その加速度センサ40を慣性センサ40と称して説明している。
図3は、本発明に係る慣性センサ用のノイズ除去装置の基本構成を説明するためのブロック図である。
図3に示す慣性センサ用のノイズ除去装置30は、アナログ部(以下、アナログ回路ともいう)31と、積分器32と、AD変換器33と、デジタルフィルタ34と、測定制御部35とにより構成されている。アナログ部31は、
図4に沿って後述する慣性センサ(加速度センサ)40と差動増幅器(以下、増幅器という)44などで構成されている。
【0027】
慣性センサ用のノイズ除去装置30は、慣性センサ40の出力に含まれるノイズを除去するものである。アナログ部31は、慣性センサ40と増幅器44を含んで構成されている。積分器32は、アナログ部31の出力を積分する。AD変換器33は、積分器32で積分した信号をAD変換する。デジタルフィルタ34は、ノイズを除去する制御の制御条件に基づいて機能構成を可変するとともにAD変換器33の出力に含まれるノイズを除去する。測定制御部35は、デジタルフィルタ34に対するノイズを除去する制御の制御条件(STATE)を、慣性センサ40が検出対象とする信号と、AD変換器33によるAD変換後のデータとに基づいて、必要最小限の駆動電力で動作させるように決定する。
【0028】
積分器32は、増幅されたセンサ信号、すなわちアナログ回路31の出力を積分してS/N比を向上させる。例えば、積分を256回実行すれば、信号成分Sは256倍となるが、ノイズ成分Nは√256=16倍となりS/N比は24dB向上する。AD変換器33は、積分器32で積分した信号をAD変換してデジタルフィルタ34にデータを供給する。
【0029】
なお、AD変換器33は、一例として逐次比較タイプのものを使用するが、特に逐次比較タイプに限定せず、それとは異なるタイプのものであっても構わない。測定制御部35は、AD変換のデータで、デジタルフィルタによって除去したい信号に応じて制御条件(以下、単にSTATEという)を選択し、そのSTATEに基づいて回路群の動作制御を行う。デジタルフィルタ34は、測定制御部35が選択したSTATEに基づいて構成及び機能を適応することが可能である。
【0030】
図4は、
図3に示したアナログ回路の内部構成であり、3軸慣性センサ及びその検出回路を説明するためのブロック図である。
図4に示す3軸型の慣性(加速度)センサ40及びその検出回路(以下、差動増幅器ともいう)44は、
図3に示したアナログ部31に該当する。また、慣性センサ40は、3軸方向の加速度のうち1軸を選択して測定することが通例である。したがって、アナログ部31は、3軸分の慣性センサ40に加えて、3軸のうち1軸のみを選択するセレクタ41,42と、ドライブ回路43と、センサ出力PIN,NINの差分を増幅する差動増幅器44などで構成されている。
【0031】
慣性センサ40に用いるノイズ除去装置及びその動作について説明する。
図5は、
図3に示したデジタルフィルタの内部構成を説明するためのブロック図である。
図5に示すように、デジタルフィルタ34には櫛形フィルタ(Comb Filter)36と、第1デシメーション(Decimation)部21と、インターポレーション(Interpolation)部37と、選択器SEL(以下、単にSELという)38と、4次IIR型LPF(4th IIR LPF;以下、単にIIRという)39と、第2デシメーション部22と、インターフェース(I/F)部23と、を備えて構成されている。
【0032】
このデジタルフィルタ34は、AD変換器33の出力を、処理系統DET(以下、単にDETという)1〜DET3の3系統に分けて異なる処理をした信号を、SEL38で、3者択一してIIR39へ入力するように構成されている。SEL38は、測定制御部35からの指令であるSTATE1〜STATE3に基づいて、DET1〜DET3の3系統に分けた信号を3者択一してIIR39へ入力する。
【0033】
第1デシメーション部21は、櫛形フィルタ36の出力する8kHzのデータを1kHzにデシメーションする。また、第2デシメーション部22は、4次IIR型LPF39からの1kHzのデータを125Hzにデシメーションする。なお、不図示の携帯端末制御部が100〜128kHzのデータレートで動作するので、インターフェース部23からの出力は、おおよそ100Hzが、求められている。したがって、1kHzのデータを125Hzにデシメーションする。このデシメーション処理により1kHz以下のデータレートに対応可能となる。
【0034】
測定制御部35からの指令であるSTATE1〜STATE3は、測定制御部35が、検出対象とする信号の周波数成分と、AD変換後のデータに含まれるノイズの周波数成分とに応じて、デジタルフィルタ34を、必要最小限のサンプリング周波数(以下、サンプリングレート、又は単にレートもしくはFsともいう)Fsで動作させるように、DET1〜DET3の3系統に分けた信号を3者択一する。このことは、
図10に沿って後述する。なお、検出対象とする信号は、以下(1)乃至(3)に例示するとおりである。
(1)歩数計等で検出する人間の動作 ±2G 10Hz
(2)携帯電話の着信バイブレータの振動 ±2G 100Hz
(3)慣性センサの共振発振 ±6G 1.5kHz
【0035】
ここで、本実施例における好ましい数値設定をしておく。慣性センサ40は、10Hz以下の人間の動作を検出対象とし、共振周波数Fxが1kHz≦Fx≦2kHzである場合、例えば、以下の数値設定が好ましい。
(1)制御条件STATE1では、処理系統DET1のサンプリング周波数Fs1は、例えば100Hz≦Fs1≦200Hzとする。
(2)制御条件STATE2では、処理系統DET2のサンプリング周波数Fs2は、サンプリング周波数Fs1の8倍であり、例えば、800Hz≦Fs2≦1.6kHzとする。
(3)制御条件STATE3では、処理系統DET3のサンプリング周波数Fs3は、サンプリング周波数Fs2の8倍であり、例えば、6.4kHz≦Fs3≦12.8kHzとする。
【0036】
また、共振周波数がさらに高域で、共振周波数Fxが2kHz≦Fx≦4kHzである場合には、
(3)制御条件STATE3では、処理系統DET3のサンプリング周波数Fs3は、サンプリング周波数Fs2の16倍であり、例えば、12.8kHz≦Fs3≦25.6kHzとする。このとき、デジタルフィルタ34に含まれるFIR36を16Tapに変更して対応する。
【0037】
本実施例における好ましい数値設定を、一般的な表現で言い換えてみる。慣性センサ40は、10Hz以下の人間の動作を検出対象とし、携帯端末制御部が100〜128kHzのデータレートで動作するとするならば、共振周波数Fxが1kHz≦Fx≦2kHzである場合、以下の数値設定が好ましいといえる。
(1)制御条件STATE1では、処理系統DET1のサンプリング周波数Fs1は、データレートの周波数とする。
(2)制御条件STATE2では、処理系統DET2のサンプリング周波数Fs2は、サンプリング周波数Fs1の8倍の周波数とする。
(3)制御条件STATE3では、処理系統DET3のサンプリング周波数Fs3は、サンプリング周波数Fs2の8倍の周波数とする。
【0038】
また、共振周波数がさらに高域で、共振周波数Fxが2kHz≦Fx≦4kHzある場合には、
(3)制御条件STATE3では、処理系統DET3のサンプリング周波数Fs3は、サンプリング周波数Fs2の16倍の周波数とする。このとき、デジタルフィルタ34に含まれるFIR36を16Tapに変更して対応する。
【0039】
また、共振周波数がより高域で、共振周波数Fxが4kHz≦Fx≦8kHzある場合には、
(3)制御条件STATE3では、処理系統DET3のサンプリング周波数Fs3は、サンプリング周波数Fs2の32倍の周波数とする。このとき、デジタルフィルタ34に含まれるFIR36を32Tapに変更して対応する。
ここで、サンプリング周波数Fs1、Fs2、Fs3は2の倍数であることが好ましい。これにより、フィルタのデシメーション、インターポレーション、AD変換のGain配分などがbitシフト処理のみで行うことができ、掛け算器、割り算器がいらないという利点がある。
【0040】
上記のように2のべき乗でサンプリング周波数を配置し、2個以上の制御条件STATEを配置する。本実施形態では、データレートを125Hzとし、サンプリング周波数Fs1=125Hz、サンプリング周波数Fs2=1kHz、サンプリング周波数Fs3=8kHzとして説明する。 また、デジタルフィルタ34は、Fs2で動作するIIR39と、Fs3で動作するFIR36とを含んで構成されている。なお、IIR(Infinite impulse response;無限インパルス応答)39と、FIR(Finite impulse response;有限インパルス応答)36とは、それぞれデジタルフィルタの特性が異なる。IIR39は、用途別に通過帯域を可変とし、その係数fcを可変とすることは容易である。このIIR39の出力は12bitである。本実施形態では一例として、fc=50Hzの4次のLPFを用いて良好な結果を得ている。一方、FIR36は、
図6に沿って後述する8Tapの櫛形フィルタで構成されているので、FIR36のことを、櫛形フィルタ36という。
【0041】
図5に示したDTE1乃至DTE3の機能をまとめると以下のとおりである。
(1)DET1では、検出値をインターポレーション部37により、125Hz→1kHzにインターポレーションしてIIR39で帯域制限する。
(2)DET2では、検出値を直接IIR39に入力して帯域制限する。
(3)DET3では、検出値を櫛形フィルタ36で高域の折り返し領域を帯域制限した後、8kHz→1kHzにデシメートしたデータをIIR39に入力して帯域制限する。
【0042】
以下、デジタルフィルタの動作について説明する。
DET1の動作は、S/N比と応用分野によって決まるが、本実施例では下記のように設定する。サンプリングレートFs1=125kHz、積分器32の積分回数Nint1=256回、フルスケールは±8GでADの解像度AD_bit1=12bit、3.9mG/LSB、AD変換器33の判定回数Nad1=12回とする。積分器32とAD変換器33の動作CLK=1.25MHzとする。よって、検出してAD変換するのに要する回数は、N1=256+12=268回である。一方、125Hz動作のCLK回数は10000回である。したがって、AD変換した場合の動作効率は、しない場合に比べ、268/10000=2.68%である。つまり、低消費電力動作が可能である。
【0043】
図6は、
図5に示した櫛形フィルタ(Com Filter)を説明するためのブロック図である。
図6に示すように、櫛形フィルタ36は、8bitのF/Fで構成されたシフトレジスタ7段と7個の加算器とで構成されており、1kHz,2kHz…7kHzといった高域の折り返し領域のノイズを削除できる。一方、0.5kHz,1.5kHz…7.5kHzの比較的低域のノイズは、IIR39で除去できる。櫛形フィルタ36のFs=8kHzの出力は、第1デシメーション部21によりデシメートされてFs=1kHzでIIR39に出力する。なお、デシメートとは、データの間引きのことであり、オーバーサンプリングなどにより、必要以上にデータが存在する場合、8個毎に1個とか、16個毎に1個のように、間引いて信号を取り出す。
【0044】
このように、デジタルフィルタ34には、AD変換後のデータをデシメートによりデータ間引きする櫛形フィルタ、すなわち櫛形フィルタ36を備えている。8Tap 櫛形フィルタ36は、一例として、8回に1回データを出力するので、櫛形フィルタ36の代わりに、
図7に示す積分器70に置き換えても構わない。
【0045】
図7(a)乃至(c)は、
図5、
図6に示した櫛形フィルタの代用で用いることが可能な積分器を示す図である。
図7(a)に示すように、積分器70は、SEL71とレジスタ72とを含んで構成されている。
図7(b)は、
図7(a)に示したSEL71がデシメート動作するタイミングを示す図である。
図7(c)は、
図7(a)に示したSEL71が、8個毎に1個のデータを出力端OUT(DCMT)から出力する動作を示す図である。この積分器70の出力値は11bitとなるが、最下位ビット、LSB(least significant bit)2bitを切り捨ててMSB(Most significant bit)9bitを使用する。なお、LSBの2bitを切り捨ててMSB9bitを使用する点は、櫛形フィルタ36も同様である。このように、デジタルフィルタ34には、櫛形フィルタ36の代わりに、AD変換後のデータを、デシメートにより11bitから9bitにデータ間引きする積分器70を用いても良い。
【0046】
図8は、本発明に係る慣性センサ用のノイズ除去方法の実施例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図8に示すように、慣性センサ用のノイズ除去方法は、慣性センサ40の出力に含まれるノイズをデジタルフィルタ34により除去する方法である。
図8のステップS1に示すように、慣性センサ40の出力を積分器32により積分する。次にステップS2において、積分器32で積分した信号をAD変換器33でAD変換する。そして、ステップS3において、ノイズを除去するデジタルフィルタ34に対する制御条件STATEを、慣性センサ40が検出対象とする信号と、AD変換器33によるAD変換後のデータとに基づいて、必要最小限の駆動電力で動作させるように測定制御部35が決定する。それから、ステップS4において、測定制御部35が決定したデジタルフィルタ34に対する制御条件STATEに基づいて、AD変換器33の出力に含まれるノイズを、デジタルフィルタ34で除去する。また、測定制御部35は、検出対象とする信号の周波数成分と、AD変換後のデータに含まれるノイズの周波数成分とに応じて、デジタルフィルタ34を、必要最小限のサンプリング周波数で動作させる。
【0047】
図9は、本発明に係る慣性センサ用のノイズ除去方法の実施例に用いるデジタルフィルタにおいて、制御条件の遷移を説明するためのフローチャートを示す図である。なお、
図9におけるステップS番号は、一部に欠番を設けている。
図9のステップS100に示すように、制御条件(STATE)は、STATE=1に初期設定されている。そこで、ステップS110において、STATE=1,2,3のいずれかに三者択一する。その三者択一の結果、デジタルフィルタ34を、必要最小限のサンプリング周波数Fsで動作させる。すなわち、以下のFsで動作させる。ステップS111に示すSTATE=1であれば、Fs=125Hz。また、ステップS112に示すSTATE=2であれば、Fs=1kHz。あるいは、ステップS113に示すSTATE=3であれば、Fs=8kHz。ステップS121〜S123に示すように三者択一されたSTATEにより、それぞれAD変換される。
【0048】
ステップS124〜S127において、雑音有無判定を行う。すなわち、ステップS124において、(Z
−1−1)の絶対値、つまり、1個前のデータとの差分が閾値VTより小さいか否か、すなわち、信号の変化量が閾値との大小を判断する。信号の変化量が閾値より小さいと判断された回数が連続してN回以上ならば、STATE=STATE−1とする。(ステップS125)信号の変化量が閾値VTより大きいと判断された回数が連続してN回以上ならば、STATE=STATE+1とする(ステップS126)。準備されているSTATEは1≦STATE≦3の3種類で、その内の1つを選択しステップ110に戻る(ステップS127)。
【0049】
STATE=1であれば、Fs1=125Hzにより(ステップS111)、アナログ回路31の出力をAD変換する(ステップS121)。このステップS121を経た信号は、インターポレーションされる(ステップS131)。このステップS131を経た信号は、ステップS135に示すIIR39により高域周波数のノイズ成分を除去される。
STATE=2であれば、Fs2=1kHzにより(ステップS112)、アナログ回路31の出力をAD変換する(ステップS122)。このステップS122を経た信号は、ステップS135に示すIIR39により高域周波数のノイズ成分を除去される。
【0050】
STATE=3であれば、Fs3=8kHzにより(ステップS113)、アナログ回路31の出力をAD変換する(ステップS123)。このステップS123を経た信号は、ステップS133に示す櫛形フィルタ36により規定された帯域の周波数のノイズ成分を除去される。このステップS133を経た信号は、ステップS134において、デシメートされた後、ステップS135に示すIIR39により高域周波数のノイズ成分を除去される。
【0051】
次に制御条件による測定方法の設定と消費電力について説明する。
本発明では前記DET1,DET2,DET3の検出系統を配置し、サンプリングレートを8倍毎の3段階に可変とする。
Fs1=125Hz,Fs2=1kHz,Fs3=8kHz
S/N比を維持するには125Hzでの積分回数Nint1〜3は同等とする。
【0052】
Nint1=256回、Nint2=32回、Nint3=4回
AD変換器33の解像度AD_bit1〜3も同様に
AD_bit1=12bit 3.9mG/LSB
AD_bit2=9bit 31.25mG/LSB
AD_bit3=6bit 250mG/LSB
後述するように、測定制御部35における制御条件の遷移で、ある程度の解像度が必要となるので、ここでAD_bit3は変更する。
【0053】
AD_bit3=8bit 62.5mG/LSB
ADは逐次比較を使用した場合、判定回数Nad1〜3は
Nad1=12回、Nad2=9回、Nad3=8回
よって、検出してAD変換するのに要する回数N1〜N3はそれぞれ125Hzあたり
N1=256+12=268回
N2=(32+9)×8=328回
N3=(4+8)×64=738回
よって、パワーシーケンスを的確に行えば、消費電力は1kHで1.3倍、8kHzで2.9倍程度の増加に抑えることができる。
【0054】
以上より、フィルタの動作は下記の通りとなる。
(1)DET1ではインターポレーションを行なってサンプリング周波数を上げてからIIR39で帯域制限する。
(2)DET2では検出値を直接IIR39に入力して帯域制限する。
(3)DET3では櫛形フィルタ36で高域の折り返し領域を帯域制限した後、デシメートしたデータをIIR39に入力して帯域制限する。
【0055】
次に、測定制御部:測定制御部35における制御条件の遷移について説明する。なお、制御条件の遷移に伴って、加速度の検出方法が推移するので、それについても説明する。また、静的加速度のことを加速度のDC成分という。すなわち周波数0Hzの成分である。これに対して、動的加速度のことをAC成分という。このAC成分に関する特性として加速度のAC特性は、検出対象により異なる。この検出対象については、(1)乃至(3)の3種類を上述して例示したとおりである。これら検出対象の動作は正弦波に近似されるので、加速度変化を検出すれば、どの領域にあるかを判断できる。すなわち、各レートの加速度変化を閾値として、検出レートを遷移する。
【0056】
次に、検出速度を上げる遷移方法について説明する。
まず、ノイズ除去の目的にかなうように、検出速度を上げる制御方向には迅速に制御する必要がある。したがって、本実施例では、閾値を超える加速度変化が1回検出されたならば遷移する。このことは、
図10に沿って後述するように、慣性センサ用のノイズ除去装置30において、±6Gで1.5kHz前後の共振発振や、±2Gで100Hz前後のバイブレータの振動があれば、すぐに検出速度の速いSTATE3やSTATE2により、ノイズ除去するように制御しているとおりである。
【0057】
ここで、AD変換器33出力の変化量を判定値に用い、その閾値=0.5Gに設定する。
・DET1,Fs1=125Hzで0.5Gの変化は、人間ではなくバイブレータによるものだと判断する。よってDET2に遷移して、Fs=1kHzでサンプリングし、IIR39でバイブレータによるノイズを除去する。
・DET2,Fs2=1kHzで0.5Gの変化は共振によるものだと判断する。よってDET3に遷移して、Fs=8kHzでサンプリングし、Com Filter36とIIR39で共振によるノイズを除去する。なお、この発振の原因がバイブレータであり、バイブレータが動いていても、そのノイズも含めて除去される。
【0058】
次に、検出速度を下げる遷移方法について説明する。
速度を下げる制御方向には、上げる場合よりも慎重に制御する必要がある。このことは、
図10に沿って後述するように、慣性センサ用のノイズ除去装置30において、共振発振や、バイブレータの振動がなくなってから、相当の判定回数を経てから速度を下げるように制御を遷移している。すなわち、検出速度を、高速のSTATE3から、それよりも低速のSTATE2やSTATE1へと、ノイズ除去機能を弱める方向へと制御を遷移しているとおりである。例えば、着信メロディーが、鳴動を停止したとしても、メロディーの内容によっては、少し間をおいた後に鳴動を再開するような場合の誤検出を避けたいからである。したがって、消費電流に多少の無駄が生じても、ノイズ除去の目的に沿って、速度を下げる制御方向には、上げる場合よりも慎重に制御し、相当の判定回数を経てから遷移する。
図10に沿って後述するとおりである。
・DET3において、例えば、閾値は0.125Gとし、連続判定64回以上に設定する。
発振がほぼ停止して8mS後にDET2に遷移する。
・DET2において、例えば、閾値は0.125Gとし、連続判定8回以上に設定する。
発振がほぼ停止して8mS後にDET1に遷移する。
【0059】
この方法により、静止または人間の動作時は低消費電力で、12bit相当の出力が得られる。また、バイブレータ振動時や発振時はノイズを除去しIIR39の補間特性により12bit出力が得られる。
図10(a)乃至(c)は、本発明に係る慣性センサ用のノイズ除去装置における、制御条件別のノイズ除去効果をシミュレーションした結果を示す波形図である。なお、各図ともに横軸に時間Time(S)を示している。
図10(a)は、制御条件STATE1〜STATE3の遷移を縦軸に示す図である。
図10(b)は、AD変換器33への入力波形Input(G)であり、ノイズ除去前のG値を縦軸に示す波形図である。
図10(c)は、IIR39の出力波形OutPut(G)であり、ノイズ除去後の加速度G値を縦軸に示す波形図である。
【0060】
本実施例では、対象となる現象が3つであるので3種類の制御条件STATE1〜STATE3となるが、対象となる現象に合わせて、STATEの数を変えてもよい。本実施例における主な検出対象は、携帯電話に組み込まれた歩数計である。この検出対象については、(1)乃至(3)の3種類を上述して例示したとおりであり、下記を意味している。
(1)歩数計で検出する歩数は毎秒0〜数歩、すなわち10Hz以下である。
(2)携帯電話で周知の着信バイブレータの振動として約100Hz前後のノイズがある。
(3)同様に携帯電話で周知の着信メロディー等がきっかけとなって、慣性センサ40に固有の共振周波数で共振発振する1.5kHz前後のノイズもある。
【0061】
図10(b)に示す、ノイズ除去前の入力波形Input(G)に関し、時間Time(S)が、0〜0.125において、人間の動作が±2Gで検出された10Hzの基本波に、±6Gの共振発振が1.5kHzで重畳している。この時、測定制御部35が、デジタルフィルタ34にSTATE3を指示し、Fs=8kHzの動作をすることより、
図10(c)に示すように、ノイズ除去後の10Hzの基本波のみが、IIR39の出力波形OutPut(G)として得られる。すなわち、人間の動作のみが出力されていることが検証された。
【0062】
次に、
図10(b)に示す、ノイズ除去前の入力波形Input(G)に関し、時間Time(S)が、0.125〜0.25において、人間の動作が±2Gで検出された10Hzの基本波に、±2Gのバイブレータの振動が100Hzで重畳している。この時、測定制御部35が、デジタルフィルタ34にSTATE3とSTATE2を交互に指示し、Fs=8kHzと1kHzとの動作を交互に行うことより、
図10(c)に示すように、ノイズ除去後の10Hzの基本波のみが、IIR39の出力波形OutPut(G)として得られる。すなわち、人間の動作のみが出力されていることが検証された。
【0063】
最後に、
図10(b)に示す、ノイズ除去前の入力波形Input(G)に関し、時間Time(S)が、0.25〜0.4において、10Hzの人間の動作±2Gのみが検出されている。この時、測定制御部35が、デジタルフィルタ34にSTATE3とSTATE2を細かく交互に指示し、Fs=8kHzとFs=1kHzとの動作を細かく交互に0.01秒行う。その後、測定制御部35が、デジタルフィルタ34にSTATE2とSTATE1を0.01秒おきに交互に2回ずつ指示し、Fs=1kHzとFs=125kHzとの動作を交互に行う。そして、2度目にSTATE1の指示がされたら、Fs=125kHzの動作を継続して行う。このようにして、
図10(c)に示すように、ノイズ除去後の10Hzの基本波のみが、IIR39の出力波形OutPut(G)として得られる。すなわち、人間の動作のみが出力されていることが検証された。
【0064】
また、STATE3,Fs=8kHzの動作で最も駆動電力を多く消費するが、STATE2,Fs=1kHzの動作では駆動電力の消費が削減され、STATE1,Fs=125Hzの動作では駆動電力の消費が最小となる。このように、STATE3での動作時間を必要最小限に減少させるように制御することで、上述したように消費電力が節減されていることも検証された。
【0065】
つまり、必要最小限のサンプリングレートFsに制御することにより、人間の動作を正確に検出し、かつ低消費電力を実現する。そのために、サンプリングレートFsを、8倍毎の変化で3段階の制御を自在にしている。その効果は以下のとおりである。
(1)DET1:Fs1=125Hz :人間の動作検出
(2)DET2:Fs2=1kHz :人間の動作検出とバイブレータの振動の削除
(3)DET3:Fs3=8kHz :人間の動作検出とバイブレータの振動と共振発振の削除
なお、本実施例において、慣性センサ40の共振周波数は、1k〜10kHz程度に設定されていることが前提条件であり、一例として1.5kHzが好ましい。その理由は、加速度検出により人間の動作判定を行う場合、人間が動作する速度は最速で10Hz程度であり、正確な測定をするには、その数倍のサンプリングレートFs1=125Hzが必要である。その人間の動作検出に加えて、バイブレータの振動と共振発振の削除を行うため、Fs3=8kHzの設定と、その数分の1である1.5kHzに慣性センサ40の共振周波数を設定することが好ましい。
【0066】
本実施例において、除去したい信号の数倍の測定レートが必要となる。つまり、1.5kHzの共振信号を除去する時には、8kHz程度の測定レートが適用されて非常に高い減衰特性のフィルタ特性を発揮できる。また、共振信号やバイブレータ等のノイズがない時には、125Hz程度の測定レートが適用されるため、数十uAという極めて少ない電流による動作も実現可能となる。
【0067】
また、本実施例によれば、慣性センサを用いたときに生じる共振発振を防止するとともに、非常に高い減衰特性のフィルタ特性により、ノイズの影響を低減することができ、しかも、低消費電力化、小面積化し、より正確に加速度を測定できるようにした慣性センサ用のノイズ除去装置及びそのノイズ除去方法を実現することが可能となる。すなわち、本実施例では、慣性センサのS/N比を向上させるためにAD変換器のノイズ除去機能を強化して、なお駆動電力の消費を低減することのできる慣性センサ用のノイズ除去装置及びそのノイズ除去方法を実現することができる。