(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆止用弁体は定格最大流量よりも少ない小流量時に前記ストッパ部に当接し、前記過流防止用弁体は定格最大流量よりも過剰に多い過流時にガスの前記順方向の流れを阻止するように、前記逆止用弁体の受圧面積、前記過流防止用弁体の受圧面積、及び前記付勢部材のばね定数が設定される請求項1又は2に記載の過流防止逆止弁。
【背景技術】
【0002】
従来の上記過流防止逆止弁の一例として
図6に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。この
図6に示す過流防止逆止弁1は、容量の異なる複数の高圧ガスタンク(図示せず)から燃料電池に燃料ガスを供給する高圧ガス供給システムにおいて、低容量の高圧ガスタンクに接続される燃料供給路7に設けられたものである。そして、この燃料供給路7は、ハウジング5に形成されている。
【0003】
この過流防止逆止弁1は、逆止弁2の逆止用弁体部2aと、過流防止弁3の過流防止用弁体部3aとを一体的に形成して、この一体的に形成した弁体6を1つの圧縮ばね4により開閉方向に摺動させるものである。
【0004】
図6(a)は、過流防止逆止弁1の弁体6が、ハウジング5内に形成された収容空間に収容された状態を示している。この収容空間の右側には、ガスの入口ポート5aが形成され、この入口ポート5aは、低容量の高圧ガスタンクに接続されている。そして、収容空間の左側には、ガスの出口ポート5bが形成され、この出口ポート5bは、外部接続ポートに接続している。
【0005】
図6(a)は、過流防止弁3が作動しない適切な流量の高圧ガスが入口ポート5aから流入して出口ポート5bから流出する順方向に流れている通常時の弁の開閉状態を示している。この通常状態では、逆止用弁体部2aが入口ポート5aに対して開位置にあり、かつ、過流防止用弁体部3aが出口ポート5bに対して開位置にある。
【0006】
図6(b)は、過流防止弁3が作動する過大流量の高圧ガスが入口ポート5aから流入してきたために、過流防止弁3が作動している過流時の弁の開閉状態を示している。この過流状態では、逆止用弁体部2aが入口ポート5aに対して開位置にあり、かつ、過流防止用弁体部3aが出口ポート5bに対して閉位置にあり、過流防止弁3は高圧ガスが出口ポート5bから流出することを阻止している。
【0007】
図6(c)は、高圧ガスが出口ポート5bから流入してきたために、逆止弁2が作動している逆流時の弁の開閉状態を示している。この逆流状態では、逆止用弁体部2aが入口ポート5aに対して閉位置にあり、かつ、過流防止用弁体部3aが出口ポート5bに対して開位置にあり、逆止弁2が逆流してくる高圧ガスが入口ポート5aからタンク内に流入することを阻止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、
図6に示す従来の過流防止逆止弁1では、
図6(a)に示す通常状態において、弁体6は、ハウジング5のどこにも係止されておらず、弁体6が開閉方向に移動自在な状態(フロート状態)となっているために、例えば順方向に流れる高圧ガスの流量変動が原因して、弁体6が激しく往復移動するなど不安定な挙動を起こすことがある。このように、弁体6が不安定な挙動を起こすと、弁体6が、入口ポート5a又は出口ポート5bに形成されている弁シートに接触して接触音を発生したり、弁体6とハウジング5の内面との間で摩擦熱が発生するという問題が起こる。更に、弁体6とハウジング5の内面との間の摺動部の摩耗を促進し、この過流防止逆止弁1の耐久性が劣ることになる。
【0010】
そして、弁体6が不安定な挙動を起こすと、弁体6の近傍で圧力変動が発生し、逆止用弁体部2a及び過流防止用弁体部3aが誤動作することがあり、この誤動作が原因して、高圧ガスの順方向の流量が変動したり、高圧ガスの流れが停止することもある。
【0011】
なお、
図6(a)に示す通常状態において、弁体6がハウジング5のどこにも係止されておらず、弁体6が順方向及び逆方向に移動するフロート状態となっているのは、弁体6が、入口ポート5aと出口ポート5bの圧力差に基づく同図の左方向(順方向)の力と、圧縮ばね4のばね力に基づく同図の右方向(逆方向)の力が釣り合う不安定な位置に保持される構成となっているからである。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、逆止用弁体及び過流防止用弁体の耐久性を向上し、且つ不安定な挙動の発生を防止すると共に、簡素化及び省スペース化を図ることができる過流防止逆止弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る過流防止逆止弁は、入口と出口を有するハウジングを備える過流防止逆止弁において、前記入口から前記出口に向かう順方向のガスの流れを許容する開位置と、前記出口から前記入口に向かう逆方向のガスの流れを阻止する閉位置との間で移動自在に設けられている逆止用弁体と、前記逆止用弁体の前記順方向の移動を前記開位置で制限するために前記ハウジングに設けられたストッパ部と、前記入口の圧力と前記出口の圧力との差圧が予め定めた設定差圧以上となったときに、ガスの前記順方向の流れを阻止する過流防止用弁体と、前記過流防止用弁体を前記逆方向に付勢すると共に、前記逆止用弁体を閉位置に向かわせるよう前記逆方向に付勢する付勢部材とを備え、前記逆止用弁体と前記過流防止用弁体とは別体であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る過流防止逆止弁によると、逆止用弁体及び過流防止用弁体の両方が開位置にあり、ガスが入口から流入して出口から流出する順方向に流れている通常時では、ガスの流れによって順方向に移動する逆止用弁体がハウジングのストッパ部に当接することによって、逆止用弁体が開位置で停止することができる。そして、過流防止用弁体は、この通常時において、付勢部材によって付勢されて逆止用弁体に押し付けられる。このように、通常時において、逆止用弁体及び過流防止用弁体が順方向及び逆方向に移動するフロート状態になっていないことによって、例えばガスの流量変動が原因して、逆止用弁体及び過流防止用弁体が激しく往復移動するなどの不安定な挙動の発生を防止できる。
【0015】
この発明に係る過流防止逆止弁において、前記過流防止用弁体は、前記付勢部材を配置するためのフランジ部を有し、前記付勢部材は単一の部材から成り、前記過流防止用弁体を前記逆方向に付勢すると共に、前記過流防止用弁体を介して前記逆止用弁体を閉位置に向かわせるよう前記逆方向に付勢するようにするとよい。
【0016】
このようにすると、単一の付勢部材によって、逆止用弁体と過流防止用弁体という独立した2つの弁体を夫々付勢することができる。したがって、過流防止逆止弁の構成をコンパクトにすることができる。
【0017】
この発明に係る過流防止逆止弁において、前記逆止用弁体の受圧面積が前記過流防止用弁体の受圧面積より大きくするとよい。
【0018】
このようにすると、過流防止用弁体が閉動作を開始する変位開始流量を、過流防止逆止弁の定格最大流量よりも大きくすることが容易となる。その結果、過流防止用弁体の誤動作を防止することができる。
【0019】
この発明に係る過流防止逆止弁において、前記逆止用弁体は定格最大流量よりも少ない小流量時に前記ストッパ部に当接し、前記過流防止用弁体は定格最大流量よりも過剰に多い過流時にガスの前記順方向の流れを阻止するように、前記逆止用弁体の受圧面積、前記過流防止用弁体の受圧面積、及び前記付勢部材のばね定数が設定されるとよい。
【0020】
このようにすると、逆止用弁体が小流量時にストッパ部に当接する結果、過流防止逆止弁の通常作動時に逆止用弁体がフロート状態になることを防止でき、摺動部の耐久性向上を図ることができ、且つ不安定な挙動による音、熱の発生を防止できる。また、過流防止用弁体が閉動作を開始する変位開始流量と過流防止用弁体が全閉する作動流量を近づけることができる。その結果、過流防止用弁体がフロート状態となるガスの流量範囲を狭くすることができ、過流防止弁としての作動流量精度、及び応答性が向上し、さらに過流防止用弁体の不安定な挙動を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る過流防止逆止弁によると、逆止用弁体及び過流防止用弁体が激しく往復運動するなどの不安定な挙動を防止することができる。これにより、各弁体とハウジングとの接触音の発生や、各弁体とハウジングとの摩擦熱の発生を防止又は抑制することができる。更に、各弁体とハウジングとの摩耗を低減し、この過流防止逆止弁の耐久性の向上を図ることができる。
【0022】
そして、逆止用弁体及び過流防止用弁体の不安定な挙動を防止できるので、逆止用弁体及び過流防止用弁体が誤動作することが無く、この誤動作が原因して起こるガスの順方向の流量が変動したり、ガスの流れが停止することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1及び第2実施形態に係る過流防止逆止弁、及びそれを備える高圧ガス充填出力システム(以下、単に「システム」と言うこともある。)11について説明する。なお、以下に説明する過流防止逆止弁15、58、及びそれを備えるシステム11は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0025】
図1に示す第1実施形態に係る過流防止逆止弁15を備えるシステム11は、例えば圧縮天然ガス自動車、水素ガス自動車、及び燃料電池車等の車両が備えている。圧縮天然ガス自動車及び水素ガス自動車は、ガスエンジンを有しており、このガスエンジンにて燃料ガス(圧縮天然ガス(CNG)や水素ガス等)を燃焼することによって駆動力を得るようになっている。また、燃料電池自動車は、燃料電池スタックを有しており、この燃料電池スタックでは、燃料ガスを消費して発電し、発電した電力をモータに与えて駆動力を発生させるようになっている。ガスエンジンや燃料電池スタック等のように燃料ガスを消費して駆動力を発生させる燃料ガス消費器(図示せず)は、システム11を介して高圧タンク2に接続されている。高圧タンク2は、例えば35〜70MPa、又はそれ以上の高圧の燃料ガスを貯蔵することができるようになっており、システム11は、高圧タンク2に高圧ガスを充填し、また、高圧タンク2に貯蔵されている燃料ガスを燃料ガス消費器に出力(供給)するようになっている。
【0026】
システム11は、
図1に示すように、バルブブロック16を備えており、このバルブブロック16には、充填側逆止弁12と、出力側フィルタ13と、電磁弁14と、過流防止逆止弁(過流防止機能付き逆止弁)15とが設けられている。バルブブロック16は、高圧タンク2の開口部に螺合されており、当該バルブブロック16には、外部接続ポート17が設けられている。この外部接続ポート17は、高圧ガスを充填するための充填口として使用することができ、かつ、燃料ガス消費器に接続する出力口として使用することができるものである。また、バルブブロック16の内部には、この外部接続ポート17と高圧タンク2内とを接続する出力ライン18が設けられ、更に、この出力ライン18とは別に充填ライン19が設けられている。充填ライン19の下流側の一端は、高圧タンク2内と接続され、また、その他端が出力ライン18に合流している。この充填ライン19が出力ライン18に合流している部分が合流部20である。これにより、充填ライン19は、合流部20と外部接続ポート17とを互いに接続する出力ポート側ライン18a(出力ライン18の一部)を介して外部接続ポート17に接続されている。
【0027】
この充填ライン19には、充填側逆止弁12が設けられている。充填側逆止弁12は、充填ライン19と出力ライン18との合流部20から充填ライン19を通って高圧タンク2に流れる高圧ガスの流れを許容し、その逆方向、つまり高圧タンク2から充填ライン19を通って合流部20に流れる高圧ガスの流れを阻止するようになっている。また、出力ライン18には、合流部20よりも高圧タンク2側に過流防止逆止弁15及び出力側フィルタ13が順に設けられている。
【0028】
出力側フィルタ13は、スポンジ状又は網目状に構成されたフィルタエレメントを有しており、高圧ガスに含まれるコンタミを捕捉するようになっている。なお、この出力側フィルタ13と同等の充填側フィルタ(図示せず)を、充填ライン19における合流部20と充填側逆止弁12との間に設けてもよい。この充填側フィルタは、合流部20から充填ライン19を通って高圧タンク2に流れる高圧ガスに含まれるコンタミを捕捉するためのものである。また、出力ライン18において、出力側フィルタ13と合流部20との間には、過流防止逆止弁15が設けられている。
【0029】
過流防止逆止弁15は、
図2及び
図3に示す過流防止機能付き逆止弁であり、過流防止弁21が出力側逆止弁22に組み込まれたものである。そして、この過流防止弁21は、過流防止用弁体23を有し、出力側逆止弁22は、逆止用弁体24を有している。
【0030】
このように、過流防止逆止弁15は、過流防止機能と、逆止弁機能とを備えているので、過流防止弁21及び出力側逆止弁22を別々に設けた場合と比較して、高圧ガス充填出力システム11全体の小形化を図ることができる。
【0031】
過流防止逆止弁15の出力側逆止弁22としての機能は、出力ライン18において、高圧タンク2から流出する高圧ガスの順方向の流れを許容し、その逆方向、つまり高圧タンク2内に流入する高圧ガスの逆方向の流れを阻止する機能である。
【0032】
過流防止逆止弁15の過流防止弁21としての機能は、高圧タンク2側の入口ポート26の圧力P1と、外部接続ポート17側の出口ポート27の圧力P2との差圧PS(=P1−P2)が、予め定めた設定差圧PT以上になったときに、出力ライン18を開放する開状態から出力ライン18を閉塞する閉状態に切換えるように作動する機能である。
【0033】
図1に示す電磁弁(開閉弁)14は、例えばノーマルクローズ形であり、制御器(図示せず)により電流をON、OFFすることによって開閉動作するものである。電磁弁14は、閉状態では、出力ライン18の外部接続ポート17と合流部20との間に形成されている出力ポート側ライン18aにおいて、外部接続ポート17から流入する高圧ガスの流れを許容し、その逆方向、つまり高圧タンク2側から流出する高圧ガスの流れを阻止する状態となり、逆止弁の機能を果たす。そして、電磁弁14が開状態では、出力ポート側ライン18aが解放される。
【0034】
次に、上記のように構成されたシステム11の作用を説明する。このシステム11を使用して、高圧タンク2内の高圧ガスを出力するときは、例えばオペレータが制御器を操作して、この制御器により電磁弁14に電流を印加させる。これによって、電磁弁14が開状態となり出力ライン18が開く。出力ライン18が開くことで高圧タンク2に貯蔵された高圧ガスは、出力側フィルタ13、過流防止逆止弁15、及び電磁弁14を通って外部接続ポート17に導かれ、更に、この外部接続ポート17を介して燃料消費器へと出力される。そして、この出力された高圧ガスは、燃料消費器で消費される。このように、高圧ガスを出力側フィルタ13に通すことで高圧ガスに含まれるコンタミを出力側フィルタ13によって捕捉し、コンタミが燃料消費器まで達することを防ぐことができる。なお、充填ライン19には充填側逆止弁12が設けられているので、充填ライン19から高圧ガスが出力されないようになっている。
【0035】
次に、高圧ガスを高圧タンク2内に充填するときは、電磁弁14を閉状態にしておき、高圧ガスを外部接続ポート17に供給する。この外部接続ポート17に供給される高圧ガスは、出力ライン18及び充填ライン19に導かれる。充填ライン19に導かれた高圧ガスは、充填側逆止弁12を開弁させて充填ライン19を開き、高圧タンク2内に流入する。これにより、高圧タンク2に高圧ガスが充填される。
【0036】
また、出力ライン18に導かれる高圧ガスは、過流防止逆止弁15の出口ポート27に導かれ、逆止用弁体部24を逆止弁シート29(
図3(c)参照)上に押し付けるので、過流防止逆止弁15は、出力ライン18を閉じることができる。よって、出力ライン18では、高圧タンク2内に逆流しようとする高圧ガスの流れが過流防止逆止弁15により止められているので、高圧ガスが出力ライン18を逆流して出力側フィルタ13を通過することを防ぐことができる。これにより、高圧ガスの出力時にフィルタに捕捉されたコンタミが、高圧ガスを充填するときに高圧タンク2側に戻ることを防止することができる。
【0037】
このように、高圧ガスの出力時にフィルタに捕捉されたコンタミが、高圧ガスを充填するときに、フィルタから離脱することを防止できるので、このコンタミの離脱によるフィルタエレメントの損傷を防止でき、しかも、フィルタエレメントの損傷による新たなコンタミの発生を防止することができる。
【0038】
次に、本発明に係る過流防止逆止弁15について詳細に説明する。この過流防止逆止弁15は、
図3(a)に示すように、ハウジング28と、過流防止用弁体23と、過流防止弁シート25と、逆止用弁体24と、逆止弁シート29と、ばね部材(付勢部材)30とを備えている。
【0039】
図3(a)に示す過流防止逆止弁15のハウジング28は、バルブブロック16の一部であり、入口ポート26と出口ポート27とが形成されている。入口ポート26は、高圧タンク2内に接続し、また、出口ポート27は、合流部20及び電磁弁14を介して外部接続ポート17に接続している。また、ハウジング28には、所定の軸線に沿って延びる弁体孔31が形成されており、この弁体孔31の両端に入口ポート26及び出口ポート27が夫々形成されている。
【0040】
弁体孔31は、大略断面円形状に形成されており、この弁体孔31は、入口ポート26側の大径孔31aと、出口ポート27側の小径孔31bとを有している。そして、この大径孔31aと小径孔31bとの間に中径孔31cが形成されている。この大径孔31aと入口ポート26との間のハウジング28の内面に逆止弁シート29が形成され、大径孔31a内に逆止用弁体24が装着されている。そして、逆止用弁体24が逆止弁シート29から離隔することによって形成される隙間は、出力流量に応じた絞りとして機能し、この部分は、逆止弁用絞り部53として形成されている。
【0041】
そして、中径孔31c及び小径孔31b内に過流防止用弁体23が装着されている。更に、小径孔31bと出口ポート27との間のハウジング28の内面に過流防止弁シート25が形成され、この小径孔31b内に過流防止用弁体23の端部が配置されている。そして、過流防止用弁体23の外径と小径孔31bの間に形成される隙間は、出力流量に応じた絞りとして機能し、この部分は、過流防止弁用絞り部54として形成されている。
【0042】
逆止用弁体24は、
図3の各図に示すように、大径孔31aの軸方向に沿って進退移動自在にこの大径孔31aに装着されている。また、この逆止用弁体24は、
図3(a)に示すように、断面形状が円形であり、上流側の先端部が円錐状に形成され、中間部が円柱状に形成され、そして下流側部が中間部よりも大径のつば部24aとして形成されている。このつば部24aは、
図3(a)に示すように、逆止用弁体24の順方向の移動を所定の開位置で制限するためのものである。
【0043】
このように、逆止用弁体24の順方向の移動が所定の開位置で制限されるのは、大径孔31aと中径孔31cとの間のハウジング28の内面に形成されたストッパ部(段部)55に、つば部24aが当接するからである。そして、順方向とは、入口ポート26から出口ポート27に向かう方向である。
【0044】
そして、逆止用弁体24には、第1連通孔56が形成され、この第1連通孔56は、例えば1又は2以上の径方向孔56aと、この径方向孔56aと連通する軸方向孔56bとを有している。
【0045】
径方向孔56aは、逆止用弁体24の径方向に延びるように形成され、当該逆止用弁体24の側面で開口している。軸方向孔56bは、逆止用弁体24の軸方向に延びるように形成され、当該逆止用弁体24の下流側の端面で開口している。
【0046】
過流防止用弁体23は、
図3の各図に示すように、中径孔31c及び小径孔31bの軸方向に沿って進退移動自在にこの中径孔31c及び小径孔31bに装着されている。また、
図3(a)に示すこの過流防止用弁体23は、断面形状が円形であり、上流側の先端部が大径部として形成され、中間部が円柱状の小径部として形成され、そして下流側部が円錐状に形成されている。
【0047】
そして、過流防止用弁体23には、第2連通孔32が形成され、この第2連通孔32は、例えば1又は2以上の径方向孔32aと、この径方向孔32aと連通する軸方向孔32bとを有している。
【0048】
径方向孔32aは、過流防止用弁体23の径方向に延びるように形成され、当該過流防止用弁体23小径部の側面で開口している。軸方向孔32bは、過流防止用弁体23の軸方向に延びるように形成され、当該過流防止用弁体23の上流側の端面で開口している。そして、
図3に示すように、第1連通孔56と第2連通孔32は、互いに連通する位置に形成されている。
【0049】
そして、
図3(a)に示すように、過流防止用弁体23の下流側の小径部には、ばね部材30がその外側に装着されている。このばね部材30は、例えば圧縮コイルばねであり、過流防止用弁体23を入口ポート26に向かう方向にばね力で付勢している。このばね部材30の一端が過流防止用弁体23の大径部に当接し、その他端がハウジング28の出口ポート27側に形成されている段部34に当接している。
【0050】
次に、
図3(a)、(b)、(c)を参照して、過流防止逆止弁15の作用を説明する。
図3(a)は、電磁弁14が開いており、高圧タンク2内の高圧ガスが外部接続ポート17から出力されている状態を示している。この出力状態では、逆止用弁体24は、逆止弁シート29から離れている開弁状態となっている。そして、過流防止用弁体23は、過流防止弁シート25から離れている開弁状態となっている。
【0051】
なお、
図3(a)に示す通常状態(出力状態)では、ばね部材30のばね力F2と、入口ポート圧P1と出力ポートP2との差圧に基づくW1方向の力F1との力関係によって、逆止用弁体24が逆止弁シート29から引き離されている。
【0052】
また、この通常状態では、入口ポート26から流入した高圧ガスは、矢印35で示すように、第1連通孔56、第2連通孔32、出口ポート27、及び電磁弁14を通って外部接続ポート17から出力される状態となっている。
【0053】
そして、逆止用弁体24が逆止弁シート29から離隔することによって形成される隙間(逆止弁用絞り部53)は、出力流量に応じた絞りとして機能する。従って、この逆止弁用絞り部53で圧力損失ΔP1が生じ、この圧力損失により、逆止用弁体24は、W1方向への駆動力を受ける。
【0054】
また、
図3(a)に示すように、高圧ガスが入口ポート26から流入して出口ポート27から流出する順方向W1に流れている通常時では、逆止用弁体24は、高圧ガスの流れによって順方向に移動するが、つば部24aがハウジング28のストッパ部55に当接することによって、逆止用弁体24を開位置で停止させることができる。そして、過流防止用弁体23は、この通常時において、ばね部材30によって付勢されて逆止用弁体24の下流側の端面に押し付けられている。このように、通常時において、逆止用弁体24がハウジング28と当接した状態となっており、各弁体24、23が順方向及び逆方向に移動できるフロート状態になっていないことによって、例えば高圧ガスの流量変動に起因する逆止用弁体24及び過流防止用弁体23の不安定な挙動を防止することができる。
【0055】
よって、この過流防止逆止弁15によると、逆止用弁体24及び過流防止用弁体23の不安定な挙動を防止することができるので、各弁体24、23が、逆止弁シート29及び過流防止弁シート25に接触するときの接触音の発生や、各弁体24、23とハウジング28の内面との間の摩擦熱の発生を防止、又は抑制することができる。更に、逆止用弁体24及び過流防止用弁体23と、ハウジング28の内面との間の摺動部の摩耗を低減し、この過流防止逆止弁15の耐久性の向上を図ることができる。
【0056】
そして、逆止用弁体24及び過流防止用弁体23の不安定な挙動を防止できるので、逆止用弁体24及び過流防止用弁体23が誤動作することが無く、この誤動作が原因して起こる高圧ガスの順方向W1の流量が変動したり、高圧ガスの流れが停止することを防止できる。
【0057】
また、
図3(a)に示すように、ばね部材30は、過流防止用弁体23を付勢して逆止用弁体24に押し付けると共に、逆止用弁体24を閉位置に向かわせる構成としたことによって、ばね部材30を過流防止用弁体23及び逆止用弁体24に使用される共用部品とすることができる。これによって、過流防止逆止弁15の部品点数及びコストの削減を図ることができ、この過流防止逆止弁15の簡素化及び省スペース化を図ることができる。
【0058】
更に、逆止用弁体24に第1連通孔56を設け、過流防止用弁体23に第2連通孔32を設けることによって、ガスの流路を弁体の外側に設けたものと比較して、過流防止逆止弁15の小型化を図ることができる。
【0059】
そして、
図3(a)に示す過流防止逆止弁15によると、過流防止弁21が出力側逆止弁22に組み込まれたものであり、過流防止弁21が有する過流防止用弁体23と、出力側逆止弁22が有する逆止用弁体24とが互いに背接するように配置されているので、一体的な空間に収容でき、この過流防止逆止弁15及び高圧ガス充填出力システム11全体の小形化を図ることができる。また、過流防止用弁体23と逆止用弁体24との間の通路の役割を大径孔31aで果たすことができるので、その通路の長さを短くすることができる。これにより、出力ライン18の圧力損失を低減することができる。
【0060】
また、過流防止用弁体23と逆止用弁体24とが互いに背接する状態で配置されているので、流出流量に対する過流防止用弁体23の応答性を向上させることができる。これにより、過流防止弁21が閉じるまでの間の高圧ガスの流出量の低減を図ることができる。
【0061】
図3(b)は、例えば出力ライン18の過流防止逆止弁15よりも下流側の部分が機械的に破損して、この破損部分から高圧タンク2内の高圧ガスが外部に流出する状態となった場合であって、この過流防止逆止弁15における入口ポート26から流入する高圧ガスの流量が予め定める設定流量以上になった過流時の状態を示している。この過流時の状態では、差圧PSが予め定める設定差圧PT以上になり、差圧PSに基づくW1方向(過流防止用弁体23が過流防止弁シート25に向かう閉弁方向)の力F1が、ばね部材30等によるW2方向(過流防止用弁体23が過流防止弁シート25から離れる開弁方向)の力F2に打ち勝つこととなる。
【0062】
つまり、この過流防止用弁体23の外径と小径孔31bとの間に形成される隙間(過流防止弁用絞り部54)は、流量に応じた圧力損失を発生させる絞りとして機能する。従って、過流防止弁用絞り部54で圧力損失ΔP2が生じる。この圧力損失ΔP2によって、過流防止用弁体23は、W1方向への駆動力を受ける。
【0063】
これによって、過流防止用弁体23は、W1方向へ変位して過流防止弁シート25に着座することによって、出口ポート27を閉じることができる。その結果、高圧タンク2内の高圧ガスが出力ライン18を通って外部に流出することを短時間で確実に止めることができ、外部へのガス流出量を少なくすることができる。よって、高圧タンク2内の高圧ガスの流出による損失を低減することができ、その高圧ガスの流出が周囲環境に影響を及ぼすものである場合は、周囲環境に対する影響を防ぐことができる。
【0064】
図3(c)は、電磁弁14が閉じており、外部接続ポート17から高圧ガスが充填されている逆流時の状態(充填状態)を示している。この逆流時の状態では、逆止用弁体24は、逆止弁シート29に当接する閉弁状態となっている。そして、過流防止用弁体23は、過流防止弁シート25から離隔して出口ポート27が開口する開弁状態となっている。つまり、この逆流時の状態では、出口ポート圧P2が入口ポート圧P1よりも大きく、この差圧PS(=P2−P1)に基づく力とばね部材30のばね力との合計の力F2によって、過流防止用弁体23及び逆止用弁体24が逆止弁シート29側(W2方向)に付勢されて、この逆止用弁体24が逆止弁シート29に押し付けられている。これによって、出口ポート27側に流入する充填ガスが入口ポート26側に流れないように阻止している状態となっている。
【0065】
また、
図3(b)に示すように、過流防止用弁体23は、過流防止弁シート25に着座することによって、過流防止弁シート25に形成された出口ポート27(第1弁孔)を閉じることができる。そして、
図3(c)に示すように、逆止用弁体24は、逆止弁シート29に着座することによって、逆止弁シート29に形成された入口ポート26(第2弁孔)を閉じることができる。これによって、過流防止弁シート25に形成された出口ポート27、及び逆止弁シート29に形成された出口ポート27を高い気密性で閉じることができる。
【0066】
図4に示すように、逆止用弁体24の駆動力は、逆止弁用絞り部53での圧力損失ΔP1と逆止用弁体24の受圧面積A1との積となり、過流防止用弁体23の駆動力は、過流防止弁用絞り部54での圧力損失ΔP2と、過流防止用弁体23の受圧面積A2との積である。したがって、逆止用弁体24の受圧面積が過流防止用弁体23の受圧面積より大きくすると、過流防止用弁体23が閉動作を開始する変位開始流量を、過流防止逆止弁58の定格最大流量よりも大きくすることが容易となる。その結果、過流防止用弁体23の誤動作を防止することができる。
【0067】
また、逆止用弁体24は過流防止逆止弁58の定格最大流量Qmaxよりも少ない小流量時にストッパ部55に当接し、過流防止用弁体23は過流防止逆止弁58の定格最大流量Qmaxよりも過剰に多い過流時にガスの順方向の流れを阻止するように、逆止用弁体24の受圧面積、逆止弁用絞り部53の流路面積、過流防止用弁体23の受圧面積、過流防止弁用絞り部54の流路面積、及びばね部材30のばね定数、付勢力を設定することにより、以下の効果が得られる。
【0068】
つまり、逆止用弁体24が小流量時にストッパ部55に当接する結果、過流防止逆止弁23の通常作動時に逆止用弁体24がフロート状態になることを防止でき、耐久性の向上を図れ、且つ不安定な挙動による音、熱の発生を防止できる。更に、過流防止用弁体23が閉動作を開始する変位開始流量Qexf1と過流防止用弁体23が全閉する作動流量Qexf2を近づけることができる。その結果、過流防止用弁体23がフロート状態となるガスの流量範囲を狭くすることができ、過流防止弁としての作動流量精度、及び応答性が向上し、さらに過流防止用弁体23の不安定な挙動を防止できる。
【0069】
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る過流防止逆止弁58を説明する。この
図5に示す第2実施形態に係る過流防止逆止弁58と、
図3に示す第1実施形態の過流防止逆止弁15とが相違するところは、
図3に示す第1実施形態では、小径孔31bと出口ポート27との間のハウジング28の内面に過流防止弁シート25を形成したのに対して、
図5に示す第2実施形態では、小径孔31bを省略して、中径孔31cと出口ポート27との間のハウジング28の内面に過流防止弁シート25を形成したところである。
【0070】
このようにしても、過流防止用弁体23が過流防止弁シート25から離隔することによって形成される隙間を過流防止弁用絞り部54とすることで、第一実施形態と同じ機能を果たす。また、過流防止用弁体23の第2連通孔32を過流防止弁用絞り部54としてもよい。
【0071】
これ以外は、第1実施形態と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0072】
ただし、上記各実施形態では、例えば
図3に示すように、過流防止用弁体23が過流防止弁シート25に対して着脱することによって、出口ポート27を開閉する構成としたが、これに代えて、過流防止用弁体が、
図3(b)に示すようにW1方向に変位したときに、第2連通孔32の径方向孔32aの開口が例えばハウジング28の内面によって塞がれた閉状態になり、過流防止用弁体が、
図3(a)、(c)に示すようにW2方向に変位したときに、第2連通孔32の径方向孔32aの開口が例えばハウジング28の内面から離隔して開状態に切換わり、このようにして出口ポート27を開閉する構成としてもよい。
【0073】
そして、上記と同様に、上記各実施形態では、例えば
図3に示すように、逆止用弁体24が逆止弁シート29に対して着脱することによって、入口ポート26を開閉する構成としたが、これに代えて、逆止用弁体が、
図3(c)に示すようにW2方向に変位したときに、第1連通孔56の径方向孔56aの開口が例えばハウジング28の内面によって塞がれた閉状態になり、逆止用弁体が、
図3(a)、(b)に示すようにW1方向に変位したときに、第1連通孔56の径方向孔56aの開口が例えばハウジング28の内面から離隔して開状態に切換わり、このようにして、入口ポート26を開閉する構成としてもよい。
【0074】
また、上記各実施形態では、過流防止逆止弁を、
図1に示す高圧ガス充填出力システム11に設けたものを例に挙げたが、これ以外の装置に設けて使用することができる。