【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、独立請求項に記載の磁気ベアリング、回転段、反射型電子ビームリソグラフィ装置、磁気アクチュエータ及び円筒状ローターを提供する。本発明の実施形態は、従属項に与えられる。
【0006】
本発明の実施形態は、渦電流を減らす強磁性材料をローターに用いることにより、上述した問題を処理する。ある実施形態では、軟磁複合鉄が、円筒状ローターにおいて用いられる。別の実施形態では、シリコン鋼といった強磁性積層体が、渦電流を制限するために用いられる。
【0007】
円筒状ローターを構築するために積層を用いる不利な点は、高速時に、いわゆる積層ノイズが生み出される可能性がある点にある。積層ノイズは、積層が大きな磁場に急に露出されることに起因する。積層ノイズは、階段状の磁場変化に露出されるとき、強磁性積層により放出されるノイズとして本書では規定される。積層ノイズのよく知られている例は、いくつかの変圧器により生み出される雑音である。雑音は、ワイヤの振動によるものである。しかし、これは変圧器を構築するのに使用される強磁性プレートの振動によってももたらされる。リソグラフィ又は計測学に関する回転段における積層ノイズは、望ましくない。このノイズは、この段における小さな音響振動を引き起こす可能性があり、この振動は、リソグラフィ処理又は計測学と干渉する可能性がある。
【0008】
本発明の実施形態は、ベアリングが回転するとき、磁場が各積層にわたり一様に増加しないよう、積層の方向及び/又は磁気アクチュエータの方向を調整することにより、積層ノイズの問題を処理する。本発明の一実施形態において、アクチュエータを有し、円筒状ローターに隣接する強磁性物質の角及びエッジが、丸くされる。これは、磁場の急速な増加を防ぎ、積層ノイズも減らす。
【0009】
本発明の実施形態は、重力に対抗して円筒状ローターを支持する又は部分的に支持するための永久磁石を用いることにより、磁気ベアリングを作動するのに必要な電気エネルギーの量を減らす。
【0010】
本発明の実施形態は、回転軸を持つ磁気ベアリングを提供する。磁気ベアリングは、強磁性材料を備える円筒状ローターを有する。円筒状ローターは、対称軸を持ち、円筒状ローターは、内側半径を持つ。円筒状ローターは、上部を持つ。磁気ベアリングが回転軸を持つので、この磁気ベアリングは重力場において機能する点を理解されたい。磁気ベアリングは更に、静的なハブを有する。静的なハブは、この静的なハブから突出し、上部に隣接して配置されるオーバーハングを持つ。円筒状ローターの上部は、重力場により規定される上面にある。磁気ベアリングは更に、第1の表面とオーバーハングとの間の距離を制御するリフト磁気アクチュエータ装置を有する。リフト磁気アクチュエータは、永久磁石、電磁石又は電気及び永久磁石の組合せを有することができる。磁気ベアリングは更に、内側半径と回転軸との間の距離を制御する半径方向の磁気アクチュエータ装置を有する。半径方向の磁気アクチュエータ装置も、永久磁石、電磁石又は電磁石及び永久磁石の組合せを有することができる。
【0011】
この構成は有利である。なぜなら、磁気ベアリングは、静的なハブに吊り下げることが可能である円筒状ローターを持つからである。円筒状ローターは、強磁性材料を有し、任意の磁石を含まない。いくつかの実施形態では、リフト磁気アクチュエータは、重力に対抗して円筒状ローターを支持することが可能であり、このリフトは、それが揺れるのを防止することにより円筒状ローターの回転を安定させる。
【0012】
リフト磁気アクチュエータは、第1の表面とオーバーハングとの間の距離を制御し、回転軸と対称軸とを同じ方向に揃える。半径方向の磁気アクチュエータ装置は、それらが同軸にあるよう対称軸及び回転軸を揃える。この実施形態によれば、回転軸及び対称軸は、わずかにそれることができる。回転軸が水平である場合、円筒状ローターを持ち上げるために、半径方向の磁気アクチュエータが使用されることができる。
【0013】
円筒状ローターは、ジャイロスコープのように振る舞う。円筒状ローターと、ローターに接続され、ローターと共に回転する任意の構造との質量は、回転慣性のモーメントを持つ。小さな振動又は摂動がある場合、回転慣性は、円筒状ローターにおける運動量を減らす傾向を持つ。これは、ベアリングが、電子ビームリソグラフィ又は電子ビーム計測学といった用途において、安定した段を提供するのに非常に有益であることを意味する。
【0014】
別の実施形態では、リフト磁気アクチュエータ装置は、重力に対抗して円筒状ローターを支持することができる少なくとも1つの永久磁石を有する。この実施形態は有利である。なぜなら、少なくとも1つの永久磁石が、円筒状ローターを支持するので、その結果、ローターを支持するために電磁石に必要な出力がより少ないからである。これは、磁気ベアリングを作動するのに必要な電気出力を減らす。
【0015】
別の実施形態では、回転軸は、垂直回転軸である。垂直回転軸は、重力と揃えられる。
【0016】
別の実施形態では、回転軸は、水平回転軸である。
【0017】
別の実施形態では、半径方向の磁気アクチュエータ装置及び/又はリフト磁気アクチュエータ装置は、少なくとも1つのハイブリッド磁石を有する。ハイブリッド磁石は、強磁性コアを有する。強磁性コアは、コア内部で断面がE形状であるようカットされる2つのスロットを持つ。2つのスロットの間には中間セクションが存在し、この中間セクションは、法線が強磁性コアから離れた方を指す外側表面を持つ。ハイブリッド磁石は更に、電流がワイヤを通過するとき、磁場を生成するよう構成されるワイヤのコイルを有する。このコイルは、2つのスロット内に、かつ中間セクションの周りに配置される。ハイブリッド磁石は更に、外側表面に配置される永久磁石を有する。永久磁石の磁化は、外側表面の法線に揃えられる。この実施形態は有利である。なぜなら、永久磁石は、円筒状ローターを浮揚させるのに必要な磁場の一部を提供することができるからである。すると、電磁石は、永久磁石の磁気場を強化する又は弱めることが可能である。
【0018】
別の実施形態では、強磁性材料は、円筒状ローターの回転の間、渦電流を減らすために、軟磁複合物を有する。渦電流が、ベアリングの回転と対向する損失及び減衰力を作成するので、軟磁複合物の使用は有益である。
【0019】
別の実施形態では、強磁性材料は、渦電流ストリーム回転を減らすため、Somaloyを有する。Somaloyは、軟磁複合物の一種である。軟磁複合物を用いる利益は、既に述べた通りである。
【0020】
別の実施形態では、強磁性材料は、磁気ベアリングの回転の間の渦電流を減らすため、強磁性積層を有する。積層は、円筒状ボリュームを構築するよう、対称軸の周りの円形通路に積み重ねられる。積層の使用は、渦電流が減らされるという利益を持つ。
【0021】
別の実施形態では、対称軸が積層の各々に対して横たわる平面が存在する。積層の各々は、第1の横断軸を持つ。0から60度の間、好ましくは0.1から15度の間の第1の角度により、その第1の横断軸の周りで平面から回転されるよう、各々の積層は構成される。角度の測定は、絶対項で与えられる。第1の角度は、負又は正でありえる。この実施形態は有利である。なぜなら、半径方向の磁気アクチュエータ装置の磁場のリーディングエッジに対するわずかな角度での積層を持つことは、積層ノイズが減らされることを可能にするからである。多くの実施形態において、円筒状ローターが半径方向の平面に配置されので、半径方向の磁気アクチュエータを傾けることは容易でない。第1の角度により積層を回転させることにより、半径方向の磁気アクチュエータは、回転される必要はない。
【0022】
別の実施形態では、対称軸が横たわる平面が存在する。積層の各々は、長手方向第1の軸を持つ。ここで、0から60度の間、好ましくは0.1から15度の間の第2の角度によりその第1の長手軸の周りで平面から回転されるよう、積層の各々は構成される。角度の測定は、絶対項で与えられる。第2の角度は、負又は正でありえる。長手軸の周りでこれらの積層を回転させることは有益である。なぜなら、積層は、リフト磁気アクチュエータ装置の磁場に対するわずかな角度を持つことができるからである。積層が第1の角度により回転するとき、これは上述されたのと同じ利益を持つ。
【0023】
別の実施形態では、積層は、第1の角度及び第2の角度で回転される。この実施形態において、積層は、リフト磁気アクチュエータ装置と半径方向の磁気アクチュエータ装置との両方に対して制御された角度を持つ。
【0024】
別の実施形態では、リフトアクチュエータ装置は、少なくとも1つの第1のハイブリッド磁石を有する。第1のハイブリッド磁石は、第2の長手軸及び第2の横断軸を持ち、長手軸及び第2の横断軸の両方と交差する半径が存在する。第2の横断軸は、半径との0から60度の間、好ましくは0.1から15度の間の第3の角度を囲む。角度の測定は、絶対項で与えられる。第3の角度は、負又は正でありえる。この実施形態は有利である。なぜなら、リフト磁気アクチュエータ装置に対する強磁性積層の方向が、積層ノイズを減らすために調整されることができるからである。
【0025】
別の実施形態では、半径方向のリフト装置は、少なくとも1つの第2のハイブリッド磁石(132、542、1399)を有する。長手軸及び回転軸に対して直交する平面は、半径との0から60度の間、好ましくは0.1から15度の間の第4の角度を囲む。この実施形態は有利である。なぜなら、半径方向の磁気アクチュエータ装置に対する強磁性積層の方向が、積層ノイズを減らすために調整されることができるからである。
【0026】
別の実施形態では、リフト磁気アクチュエータ装置及び/又は半径方向の磁気アクチュエータ装置は、少なくとも1つの強磁性コアを有する。強磁性コアは、法線が回転軸の周りで円形通路のタンジェントとの鋭角を形成する2つ又はこれ以上の第2の表面を持ち、ここで、少なくとも1つの第2の表面の少なくとも1つのエッジは、積層ノイズを減らすために丸くされる。この実施形態は有利である。なぜなら、これは円筒状ローターに隣接する角を除去するからである。強磁性コアの鋭いエッジを持つことは、磁場をより滑らかにし、こうして積層ノイズを減らす。
【0027】
別の実施形態では、磁気ベアリングは更に、回転軸に対する内側半径の距離を測定する半径方向のセンサシステムを有する。磁気ベアリングは更に、第1の表面とオーバーハングとの間の距離を測定するリフトセンサを有する。磁気ベアリングは更に、リフトセンサからの信号を受信し、第1の表面とオーバーハングとの間の第1の所定の距離が維持されるよう、リフト磁気アクチュエータ装置を制御するよう構成される制御システムを有する。制御システムは更に、軸方向のセンサシステムからの信号を受信し、内側半径と回転軸との間の第2の所定の距離が維持されるよう、軸方向の磁気アクチュエータ装置を制御するよう構成される。
【0028】
別の側面において、本発明は、回転段を提供する。回転段は、本発明のある実施形態による磁気ベアリングを有する。回転段は更に、磁気ベアリングを回転させるよう構成される駆動システムを有する。回転段は、少なくとも1つのワークピースを保持するよう構成されるプラッタを有する。プラッタは、円筒状モータにより駆動される。回転段は更に、磁気ベアリングの方向の角度を決定するエンコーダを有する。この実施形態は有利である。なぜなら、斯かる回転段は、電子ビームリソグラフィに使用され、更に電子ビーム計測学装置にも用いられることができるからである。斯かる回転段は、エネルギーストレージのためのフライホイールといった安定した回転運動が必要とされる他の用途に用いられることができる。
【0029】
別の実施形態では、リフト磁気アクチュエータ装置は、重力に対して円筒状ローター及びプラッタを支持することができる少なくとも1つの永久磁石を有する。この実施形態は、磁気ベアリング単独での実施形態に関して前述されたのと同じ利益を持つ。
【0030】
別の側面において、本発明は、本発明のある実施形態による回転段を有する反射型電子ビームリソグラフィ装置を提供する。反射型電子ビームリソグラフィ装置の設計及び使用は、Petricに説明される。
【0031】
別の側面において、本発明は、磁気ベアリングにおける円筒状ローターと静的なハブとの間の距離を制御する磁気アクチュエータを提供する。磁気アクチュエータは、強磁性コアを有し、強磁性コアは、リーディング表面と、積層ノイズを減らすための1つ又は複数の丸いエッジを持つトレーリング表面とを持つ。この実施形態の利益は、以前に述べられた通りである。
【0032】
別の側面において、本発明は、強磁性体物質を有する円筒状ローターを提供する。円筒状ローターは、対称軸を持ち、強磁性材料は、円筒状ローターの回転の間の渦電流を減らす強磁性積層を有する。積層は、円筒状ボリュームを構築するよう、対称軸の周りの円形通路において積み重ねられる。対称軸が積層の各々に関して横たわる平面が存在し、積層の各々は、第1の横断軸(1182)を持つ。0から60度の間、好ましくは0.1から15度の間の第1の角度(1184)により、その第1の横断軸の周りで平面から回転するよう、積層の各々は構成される。