特許第5802240号(P5802240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5802240
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】コモンモードノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   H01F17/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-136982(P2013-136982)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-12167(P2015-12167A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2014年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119378
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】野木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 大造
(72)【発明者】
【氏名】福島 彰
(72)【発明者】
【氏名】深津 美貴
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−090064(JP,A)
【文献】 特開2005−340611(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039297(WO,A1)
【文献】 特開2011−114627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上面に設けられた第1の導体と、
前記第1の導体の上面に設けられた第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の上面に設けられかつ前記第1の導体に接続されてこの第1の導体とともに第1のコイルを構成する渦巻状の第2の導体と、
前記第2の導体の上面に設けられた第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層の上面に設けられた渦巻状の第3の導体と、
前記第3の導体の上面に設けられた第4の絶縁層と、
前記第4の絶縁層の上面に設けられかつ前記第3の導体に接続されてこの第3の導体とともに第2のコイルを構成する第4の導体と、
前記第4の導体の上面に設けられた第5の絶縁層と、
前記第5の絶縁層の上面に設けられた第6の絶縁層と、
前記第1〜第4の導体の各々の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の端子とを備え、
前記第1の導体は渦巻状の第2の導体の巻方向に対して、少なくとも一部は逆方向に向かうように接続されていて、
前記第4の導体は渦巻状の第3の導体の巻方向に対して、少なくとも一部は順方向に向かうように接続されていて、
前記第1及び第6の絶縁層は磁性体からなり、前記第2〜第5の絶縁層は非磁性体からなり、
前記第1〜第6の絶縁層は樹脂を含有せず、
下記(A)及び(B)の少なくとも1つの条件を満たし、
前記(A)の条件は、前記第1の導体が前記第2の導体と接続する部分へ向かう方向と、前記接続する部分から第2の導体が延びる方向と、のなす角度が120°以上であり180°より小さいことであり、
前記(B)の条件は、前記第4の導体が前記第3の導体と接続する部分へ向かう方向と、前記接続する部分から第3の導体が延びる方向と、のなす角度が0°より大きく60°以下であることである
コモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
前記(A)及び(B)の両方の条件を満たす請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
前記第1及び第6の絶縁層がNi−Zn−Cuフェライトからなり、前記第3〜第5の絶縁層がZn−Cuフェライトからなる請求項1又は2記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
前記第1及び第6の絶縁層がNi−Zn−Cuフェライトからなり、前記第3〜第5の絶縁層が誘電体材料からなる請求項1又は2記載のコモンモードノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば差動伝送回路に用いられる積層型のコモンモードノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型電子機器や薄型の電子機器のニーズの拡大に伴い、これらの電子機器の差動伝送回路等に用いるコモンモードノイズフィルタも小型及び薄型が求められている。小型及び薄型のコモンモードノイズフィルタとして特許文献1には、コモンモードノイズフィルタを形成する2つのコイルを非磁性体層の中に配置し、その引出電極を前記非磁性体層と磁性体層との間に配置した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−340611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構造においては、コモンモードインピーダンスを大きくするため、2つの引出電極を磁性体層に接して、磁性体層とコイル電極の距離が近づく構造となっている。しかし、それぞれの引出電極のうち、1つはコイル電極の巻き方向に対して順方向に接続され、他方は逆方向に接続されている。そのため順方向に接続されたコイルのインダクタンス値は逆方向に接続されたコイルのインダクタンス値より大きくなってしまい、2つのコイルの伝送特性に違いが生じる。伝送特性の違いが大きくなるとスキューずれ等のトラブルにつながる可能性もでてくる。本発明は2つのコイルのインダクタンス値の違いが小さく、コモンモードインピーダンスの大きなコモンモードノイズフィルタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の特徴を有する本発明を完成した。
(1)第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の上面に設けられた第1の導体と、前記第1の導体の上面に設けられた第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層の上面に設けられかつ前記第1の導体に接続されてこの第1の導体とともに第1のコイルを構成する渦巻状の第2の導体と、前記第2の導体の上面に設けられた第3の絶縁層と、前記第3の絶縁層の上面に設けられた渦巻状の第3の導体と、前記第3の導体の上面に設けられた第4の絶縁層と、前記第4の絶縁層の上面に設けられかつ前記第3の導体に接続されてこの第3の導体とともに第2のコイルを構成する第4の導体と、前記第4の導体の上面に設けられた第5の絶縁層と、前記第5の絶縁層の上面に設けられた第6の絶縁層と、前記第1〜第4の導体の各々の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の端子とを備え、前記第1の導体は渦巻状の第2の導体の巻方向に対して、少なくとも一部は逆方向に向かうように接続されていて、前記第4の導体は渦巻状の第3の導体の巻方向に対して、少なくとも一部は順方向に向かうように接続されていて、前記第1及び第6の絶縁層は磁性体からなり、前記第2〜第5の絶縁層は非磁性体からなり、前記第1〜第6の絶縁層は樹脂を含有しない、コモンモードノイズフィルタ。
(2)前記第1の導体が前記第2の導体と接続する部分へ向かう方向と、前記接続する部分から第2の導体が延びる方向と、のなす角度が120°以上であり180°より小さい(1)のコモンモードノイズフィルタ。
(3)前記第4の導体が前記第3の導体と接続する部分へ向かう方向と、前記接続する部分から第3の導体が延びる方向と、のなす角度が0°より大きく60°以下である(1)又は(2)のコモンモードノイズフィルタ。
(4)前記第1及び第6の絶縁層がNi−Zn−Cuフェライトからなり、前記第3〜第5の絶縁層がZn−Cuフェライトからなる(1)〜(3)のいずれか1項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
(5)前記第1及び第6の絶縁層がNi−Zn−Cuフェライトからなり、前記第3〜第5の絶縁層が誘電体材料からなる(1)〜(3)のいずれか1項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、引出電極と磁性体層が接した構造のコモンモードノイズフィルタにおいて、コイル電極の巻き方向に対してそれぞれが順方向及び逆方向に接続される引出電極のうち、順方向に接続される引出電極とそれに接している磁性体層との間に非磁性体層を挿入することになる。よって、引出し電極が順方向に接続されているコイルのインダクタンス値が下がり、引出電極が逆方向に接続されたコイルのインダクタンス値に近づき、2つのコイルのインダクタンス値の差異を小さくすることができる。また、引出電極とコイル電極との距離が拡がるのは、2つのコイルのうち片方だけなので、コモンモードインピーダンスもあまり下がらないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の構成要素図である。
図2】第1の導体と第2の渦状導体及び、第3の渦状導体と第4の導体の接続図である。
図3】本発明の実施形態の外観図である。
図4】比較例の構成要素図である
図5】比較例の構成要素図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を適宜参照しながら本発明を詳述する。但し、本発明は図示された態様に限定されるわけでなく、また、図面においては発明の特徴的な部分を強調して表現することがあるので、図面各部において縮尺の正確性は必ずしも担保されていない。
【0009】
図1は本発明の実施形態の構成要素図である。本発明によれば、積層コモンモードノイズフィルタの内部の積層構造は以下のとおりである。まず、導体が形成される最下層の絶縁層を第1の絶縁層11であると定義する。本発明において「上下」の概念は積層構造の説明の便宜のためのものであって、製造時における工程の順序を限定するものではなく、使用時における方向性や配置を限定するものでもない。第1の絶縁層11の上面に第1の導体21が設けられる。第1の導体21の上面に第2の絶縁層12が設けられる。第2の絶縁層12の上面に第2の導体22設けられる。第2の導体22は渦巻状を呈し、かつ、第1の導体21に接続されている。第1および第2の導体21、22が第1のコイルを構成し、ここでは、第1の導体21が引出電極の役割を担っている。第2の導体22の上面に第3の絶縁層13が設けられる。第3の絶縁層13の上面に第3の導体23設けられる。第3の導体23の上面に第4の絶縁層14が設けられる。第4の絶縁層14の上面に第4の導体24が設けられる。第3の導体23は渦巻状を呈し、かつ、第4の導体24に接続されている。第3および第4の導体23、24が第2のコイルを構成し、ここでは、第4の導体24が引出電極の役割を担っている。第1のコイルと第2のコイルとは電気的に別個独立のものである。第4の導体24の上面に第5の絶縁層15が設けられる。第5の絶縁層15の上面に第6の絶縁層16が設けられる。第1〜第4の導体21〜24の各々の一端部にそれぞれ第1〜第4の端子31〜34が接続される。
【0010】
図2は第1の導体21と第2の渦状導体22の接続図(図2(A1))、及び、第3の渦状導体23と第4の導体24の接続図(図2(B1))である。図2(A1)に示されるように、第1の導体21は第2の渦巻状の導体22の巻方向に対して、一部が逆方向に向かうように接続されている。より具体的には以下のとおりである。第2の導体22が呈する渦巻の回転が符号R2で示される矢印によって示される。第1の導体21と第2の導体22が接続する部分から第2の導体22が延びる方向は符号D2で示される矢印で表現される。前記接続する部分に第1の導体21が向かってくる方向は符号D1で示される矢印で表現される。ここで、第1の導体21が一直線の形状であるか否かにかかわらず、第2の導体22が形作る渦巻の外から上記の接続する部分へと向かう方向を直線近似してその方向を符号D1の矢印で表現するものとする。
【0011】
図2(A2)は符号D1とD2で示される矢印を抽出したものである。図2(A2)に示されるように、符号D1とD2で示される矢印のなす角度φ1は90〜180°であり、このことから、「第1の導体は渦巻状の第2の導体の巻方向に対して、少なくとも一部は逆方向に向かうように接続されている」と評価することができる。インダクタンス特性の調整幅を大きくできるという観点からは、上述の符号D1とD2で示される矢印のなす角度φ1は180°に近い方がよく、好ましくは90°より大きく、180°より小さく、より好ましくは120°以上であり、180°より小さい。
【0012】
図2(B1)に示されるように、第4の導体24は第3の渦巻状の導体23の巻方向に対して、一部が順方向に向かうように接続されている。より具体的には以下のとおりである。第3の導体23が呈する渦巻の回転が符号R3で示される矢印によって示される。第4の導体24と第3の導体23が接続する部分から第3の導体23が延びる方向は符号D3で示される矢印で表現される。前記接続する部分に第4の導体24が向かってくる方向は符号D4で示される矢印で表現される。ここで、第4の導体24が一直線の形状であるか否かにかかわらず、第3の導体23が形作る渦巻の外から上記の接続する部分へと向かう方向を直線近似してその方向を符号D4の矢印で表現するものとする。
【0013】
図2(B2)は符号D3とD4で示される矢印を抽出したものである。図2(B2)に示されるように、符号D3とD4で示される矢印のなす角度φ2は0〜90°であり、このことから、「第4の導体は渦巻状の第3の導体の巻方向に対して、少なくとも一部は順方向に向かうように接続されている」と評価することができる。インダクタンス特性の調整幅を大きくできるという観点からは、上述の符号D3とD4で示される矢印のなす角度φ2は0°に近い方がよく、好ましくは0°より大きく、90°より小さく、より好ましくは0°より大きく、60°以下である。
【0014】
第1〜第4の導体21〜24の材質・製法等は従来技術を適宜援用することができ、例えば、その材質としてAgなどが例示される。導体21〜24の製法としてはペーストを用いた印刷などが非限定的に例示され、第1及び第2の導体21、22の接続、ならびに、第3及び第4の導体23、24の接続についてはスルーホール技術などを適宜援用することができる。スルーホールの作成については、例えば、金型による打ち抜きやレーザー加工による穿孔などの手法が非限定的に挙げられる。
【0015】
絶縁層については、以下のとおりである。
第1の絶縁層11及び第6の絶縁層16は磁性体からなり、第2〜第5の絶縁層12〜15は非磁性体からなる。ここで、磁性体とは強磁性体のことであり、非磁性体は強磁性体以外のものである。第1〜第6の絶縁層11〜16はいずれも樹脂を含有しない。図1において、磁性体からなる絶縁層は白抜きにて描写され、非磁性体からなる絶縁層は黒色で描写されている。
【0016】
磁性体としては、例えば、Ni−Zn−Cuフェライト、などが非限定的に例示される。非磁性体としては、例えば、Znフェライトなどが非限定的に例示さる。また、低温焼結の非磁性体としてはZn−Cuフェライトが好適である。また、非磁性体はホウケイ酸ガラス又はホウケイ酸ガラスと結晶質シリカとの混合物などの誘電体材料からなるものでもよい。
【0017】
第1の絶縁層11および第6の絶縁層16で挟まれる領域における構成は上述のとおりであるが、積層コモンモードノイズフィルタにおけるその他の構成は特に限定はない。例えば、第1の絶縁層11の下面にダミーの絶縁層17A〜17Cを設けたり、第6の絶縁層16の上面にダミーの絶縁層18A〜18Bを設けたりしてもよく、その場合に、これらダミーの絶縁層は磁性体であってもよいし非磁性体であってもよい。
【0018】
図3は本発明の実施形態の外観図である。本発明によれば、積層コモンモードノイズフィルタ1の外形は特に限定は無く、図示されたような直方体状のものが例示される。上述した積層構造からなる積層体チップ10と該積層体チップ10の側面に形成された外部電極30とを有していてもよい。外部電極30はめっき処理が施されていてもよい。上述した端子31〜34が外部電極30と適宜接続される。
【0019】
積層コモンモードノイズフィルタの製法については特に限定無く、従来技術を適宜援用することができる。典型例として、各絶縁層の前駆体となる磁性体シートおよび非磁性体シートを得て、当該シートに導体ペースト等を印刷し、適宜スルーホールを設けてコイルが形成されるようにして、これらを圧着して、樹脂を除去して(脱バインダー)、焼成する方法が挙げられる。こういった製法の具体例は以下の実施例において詳述する。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に記載された態様に限定されるわけではない。
【0021】
(実施例1)
まず、磁性体シートを得るために、FeO、CuO、ZnO、NiOを主材料とする仮焼粉砕後のNi−Zn−Cu系フェライト微粉末にブチラール樹脂と溶剤を加えてスラリーを作成した。このスラリーを一定の厚みになるようにドクターブレードで塗布し、乾燥し、所定サイズに切断して磁性体シートをつくった。次に、非磁性体シートを得るためにFeO、CuO、ZnOを主材料とする仮焼粉砕後のZn−Cu系フェライト微粉末にブチラール樹脂と溶剤を加えてスラリーを作成した。このスラリーを一定の厚みになるようにドクターブレードで塗布し、乾燥し、所定サイズに切断して非磁性体シートをつくった。この非磁性体シートには所定の位置にスルーホールを形成した。次に、非磁性体シートにスクリーン版を用いてAgペーストを印刷し、乾燥して、コイル導体パターンを得た。次に、磁性体シートと非磁性体シート、およびコイル導体が印刷された非磁性体シートを、図1に示すように、印刷されたコイル導体がスルーホールで導通してつながるように積層し、プレス圧着をおこなった。このとき、ダミーの絶縁層17A〜17C、18A〜18Bの前駆体として磁性体シートを用いた。これを所定のサイズに切断したあと500℃、1hrで脱バインダー処理に供し、大気炉中890℃、2hrで焼成して積層体チップを形成した。得られた積層体チップの側面に積層体内部の2つのコイルのそれぞれの両端部と接続するようにAgペーストを印刷法によって塗布し、約600℃で1時間の大気焼成をして端子電極を形成した。この端子電極にニッケル電解バレルめっきを施したあと、ハンダ電解バレルめっきをおこなって外部電極を形成した。このようにして実施例1の積層コモンモードノイズフィルタを得た。
【0022】
実施例1で得た積層コモンモードノイズフィルタは以下のとおりである。
・外形寸法:長さ1.25mm×幅1.0mm×高さ0.5mm
・磁性体層:Ni−Zn−Cu系フェライト
・非磁性体層:Zn−Cu系フェライト
・導体パターン:幅20μmのAgパターン
・第1及び第6の絶縁層、ダミーの絶縁層:磁性体層(層厚365μm)
・第2〜第5の絶縁層:非磁性体層(層厚105μm)
・焼成温度:890℃
・第1及び第2の導体のなす角(図2におけるφ1):120°
・第3及び第4の導体のなす角(図2におけるφ2):60°
【0023】
(比較例1)
第5の絶縁層を非磁性体ではなく磁性体で構成したことのほかは実施例1と同様にして積層コモンモードノイズフィルタを得た。図4は比較例1の積層コモンモードノイズフィルタの積層構造を示す。
【0024】
比較例1で得た積層コモンモードノイズフィルタは以下のとおりである。
・外形寸法:長さ1.25mm×幅1.0mm×高さ0.5mm
・磁性体層:Ni−Zn−Cu系フェライト
・非磁性体層:Zn−Cu系フェライト
・導体パターン:幅20μmのAgパターン
・第1、第5及び第6の絶縁層、ダミーの絶縁層:磁性体層(層厚370μm)
・第2〜第4の絶縁層:非磁性体層(層厚100μm)
・焼成温度:890℃
・第1及び第2の導体のなす角(図2におけるφ1):120°
・第3及び第4の導体のなす角(図2におけるφ2):60°
【0025】
(比較例2)
第1の絶縁層を磁性体ではなく非磁性体で構成したことのほかは実施例1と同様にして積層コモンモードノイズフィルタを得た。図5は比較例2の積層コモンモードノイズフィルタの積層構造を示す。
【0026】
比較例2で得た積層コモンモードノイズフィルタは以下のとおりである。
・外形寸法:長さ1.25mm×幅1.0mm×高さ0.5mm
・磁性体層:Ni−Zn−Cu系フェライト
・非磁性体層:Zn−Cu系フェライト
・導体パターン:幅20μmのAgパターン
・第6の絶縁層、ダミーの絶縁層:磁性体層(層厚360μm)
・第1〜第5の絶縁層:非磁性体層(層厚110μm)
・焼成温度:890℃
・第1及び第2の導体のなす角(図2におけるφ1):120°
・第3及び第4の導体のなす角(図2におけるφ2):60°
【0027】
(実施例2)
実施例1と同様に積層コモンモードノイズフィルタの作成を行った。非磁性体として、誘電体材料を用いた。誘電体シートを得るために誘電体として、ホウケイ酸ガラスの微粉末と結晶質シリカの粉末を添加し、ブチラール樹脂と溶剤を加えてスラリーを作成した。このスラリーを一定の厚みになるようにドクターブレードで塗布し、乾燥し、所定サイズに切断して非磁性体シートをつくった。これ以外については、実施例1と同様に行い、焼成についても大気炉中890℃、2hrと同じように焼成して積層体チップを形成し、また外部電極についても実施例1と同様に形成することで、実施例2の積層コモンモードノイズフィルタを得た。実施例1と同様、図1が実施例2の積層コモンモードノイズフィルタの積層構造を示す。
【0028】
実施例2で得た積層コモンモードノイズフィルタは以下のとおりである。
・外形寸法:長さ1.25mm×幅1.0mm×高さ0.5mm
・磁性体層:Ni−Zn−Cu系フェライト
・非磁性体層:ホウケイ酸ガラスと結晶質シリカとの混合物
・導体パターン:幅20μmのAgパターン
・第1及び第6の絶縁層、ダミーの絶縁層:磁性体層(層厚365μm)
・第2〜第5の絶縁層:非磁性体層(層厚105μm)
・焼成温度:890℃
・第1及び第2の導体のなす角(図2におけるφ1):120°
・第3及び第4の導体のなす角(図2におけるφ2):60°
【0029】
(比較例3)
第5の絶縁層を非磁性体ではなく磁性体で構成したことのほかは実施例2と同様にして積層コモンモードノイズフィルタを得た。比較例1と同様、図4が比較例3の積層コモンモードノイズフィルタの積層構造を示す。
【0030】
比較例3で得た積層コモンモードノイズフィルタは以下のとおりである。
・外形寸法:長さ1.25mm×幅1.0mm×高さ0.5mm
・磁性体層:Ni−Zn−Cu系フェライト
・非磁性体層:ホウケイ酸ガラスと結晶質シリカとの混合物
・導体パターン:幅20μmのAgパターン
・第1、第5及び第6の絶縁層、ダミーの絶縁層:磁性体層(層厚370μm)
・第2〜第4の絶縁層:非磁性体層(層厚100μm)
・焼成温度:890℃
・第1及び第2の導体のなす角(図2におけるφ1):120°
・第3及び第4の導体のなす角(図2におけるφ2):60°
【0031】
(比較例4)
第1の絶縁層を磁性体ではなく非磁性体で構成したことのほかは実施例2と同様にして積層コモンモードノイズフィルタを得た。比較例2と同様、図5が比較例4の積層コモンモードノイズフィルタの積層構造を示す。
【0032】
比較例4で得た積層コモンモードノイズフィルタは以下のとおりである。
・外形寸法:長さ1.25mm×幅1.0mm×高さ0.5mm
・磁性体層:Ni−Zn−Cu系フェライト
・非磁性体層:ホウケイ酸ガラスと結晶質シリカとの混合物
・導体パターン:幅20μmのAgパターン
・第6の絶縁層、ダミーの絶縁層:磁性体層(層厚360μm)
・第1〜第5の絶縁層:非磁性体層(層厚110μm)
・焼成温度:890℃
・第1及び第2の導体のなす角(図2におけるφ1):120°
・第3及び第4の導体のなす角(図2におけるφ2):60°
【0033】
(評価)
上記で得られた実施例1、比較例1、2の積層コモンモードノイズフィルタについて、アジレント社製の4291Aを用いて、各フィルタが有する2つのコイルの1MHzのインダクタンス値と100MHzのコモンモードインピーダンス値を測定した。
【0034】
各フィルタが有する2つのコイルの1MHzにおけるインダクタンス値の測定結果は以下のとおりである。
実施例1 順方向コイル(146nH)、逆方向コイル(142nH)、差(3nH)
比較例1 順方向コイル(152nH)、逆方向コイル(143nH)、差(9nH)
比較例2 順方向コイル(144nH)、逆方向コイル(135nH)、差(8nH)
実施例2 順方向コイル(89nH)、逆方向コイル(87nH)、差(2nH)
比較例3 順方向コイル(94nH)、逆方向コイル(89nH)、差(5nH)
比較例4 順方向コイル(87nH)、逆方向コイル(82nH)、差(5nH)
【0035】
ここで、「順方向コイル」は第3及び第4の導体により構成される第2のコイルであり、「逆方向コイル」は第1及び第2の導体により構成される第1のコイルである。
【0036】
各コモンモードノイズフィルタの100MHzにおけるコモンモードインピーダンス値測定結果は以下のとおりである。
実施例1 82Ω
比較例1 85Ω
比較例2 78Ω
実施例2 51Ω
比較例3 53Ω
比較例4 48Ω
【0037】
比較例1、3では第1の導体121、第4の導体124が両方とも磁性体層に接しているため、コモンモードコイルを形成する渦巻状の第2の導体122及び第3の導体123の巻方向に対して、順方向に接続される第4の導体124と第3の導体123で形成される順方向コイルのインダクタンス値のほうが、逆方向コイルのインダクタンス値よりも大きくなった。また、比較例2、4では第1の導体221、第4の導体224が両方とも非磁性体層の中にあるため、コモンモードコイルを形成する渦巻状の第2の導体222及び第3の導体223の巻方向に対して、順方向に接続される第4の導体224と第3の導体223で形成される順方向コイルのインダクタンス値のほうが、逆方向コイルのインダクタンス値よりも大きくなった。さらに、渦巻状の第2の導体222及び第3の導体223が双方とも磁性体層から離れた結果、コモンモードインピーダンス値も大きく下がった。これに対して、実施例1、2では、コモンモードコイルを形成する渦巻状の第2の導体22及び第3の導体23の巻方向に対して、順方向に接続される第4の導体24が非磁性体層に、逆方向に接続される第1の導体21が磁性体層にそれぞれ接しているため、第4の導体24と第3の導体23で形成される順方向コイルのインダクタンス値と、第1の導体21と第2の導体22で形成される逆方向コイルのインダクタンス値との差が小さくなった。また、コモンモードコイルを形成する渦巻状の第2及び第3の導体22、23と磁性体層までの距離は、比較例2、4の場合のように大きく離れないため、コモンモードインピーダンス値の減少も小さくなった。結果的に、実施例1、2では比較例と比較して、コモンモードコイルを形成するそれぞれのコイルのインダクタンス値の差が小さくなり、またコモンモードインピーダンスの減少も少ない良好なコモンモードノイズフィルタが得られた。
【符号の説明】
【0038】
1:コモンモードノイズフィルタ
11〜16、111〜116、211〜216:絶縁層
21〜24、121〜124、221〜224:導体
31〜34、131〜134、231〜234:端子
図3
図1
図2
図4
図5