特許第5802502号(P5802502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5802502
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】故障検出装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20151008BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   G01R31/00
   H02M3/155 C
   H02M3/155 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-210743(P2011-210743)
(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公開番号】特開2013-72689(P2013-72689A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 和也
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−179922(JP,A)
【文献】 特開2005−204427(JP,A)
【文献】 特開平5−137267(JP,A)
【文献】 特開平5−175044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と負荷との間に接続されたスイッチの故障を検出する故障検出装置であって、
前記スイッチと並列接続された電圧降下素子と、
前記スイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態および閉状態に制御した場合に前記電圧降下素子の端子間の相対電圧を検出する電圧検出部と、
前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とに基づき前記スイッチの故障を判定する故障判定部と、
を備え
前記故障判定部は、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧である場合、前記スイッチがオープンモードで故障していると判定し、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧ではない場合、前記スイッチがショートモードで故障していると判定し、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧が、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧よりも小さい場合、前記スイッチの故障がオープンモードの故障でもなく、ショートモードの故障でもない異常な故障であると判定することを特徴とする故障検出装置。
【請求項2】
前記電圧降下素子は、前記電源から前記負荷に向かう電流方向を順方向としたダイオードであり、
前記故障判定部は、前記電圧検出部で検出された相対電圧が、前記ダイオードの順方向降下電圧(Vf)によって与えられる電圧である場合、前記スイッチがオープンモードで故障していると判定することを特徴とする請求項1に記載の故障検出装置。
【請求項3】
前記スイッチは、昇圧チョッパ型のDC−DCコンバータの入力端子と出力端子との間に接続された直結スイッチであることを特徴とする請求項1または2に記載の故障検出装置。
【請求項4】
前記電圧降下素子は、前記直結スイッチの保護用ダイオードであることを特徴とする請求項3に記載の故障検出装置。
【請求項5】
電源と負荷との間に接続されたスイッチの故障を検出する故障検出方法であって、
スイッチ制御部が、前記スイッチの開閉を制御する第1段階と、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態および閉状態に制御した場合に、電圧検出部が前記スイッチと並列接続された電圧降下素子の端子間の相対電圧を検出する第2段階と、
故障判定部が、前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とに基づき前記スイッチの故障を判定する第3段階と、
を含み、
前記第3段階では、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧である場合、前記スイッチがオープンモードで故障していると判定し、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧ではない場合、前記スイッチがショートモードで故障していると判定し、
前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧が、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧よりも小さい場合、前記スイッチの故障がオープンモードの故障ではなく、ショートモードの故障でもない異常な故障であると判定することを特徴とすることを特徴とする故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータ等の電源装置が備えるスイッチの故障を検出するための故障検出装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に、従来の昇圧チョッパー型のDC−DCコンバータの構成を示す。
同図に示すDC−DCコンバータは、入力端子Tin、グランド端子GND、昇圧コイルL、トランジスタQ1、ダイオードD1、出力端子Tout、直結スイッチQ2を備えて構成される。ここで、入力端子Tinとグランド端子GNDとの間には直流入力電源Vinが接続され、出力端子Toutとグランド端子GNDとの間には負荷Fが接続され、入力端子Tinと出力端子Toutとの間には直結スイッチQ2が接続されている。
【0003】
この従来のDC−DCコンバータによれば、通常の動作時では直結スイッチQ2をオフ状態に制御し、トランジスタQ1で昇圧コイルLをスイッチング駆動することにより直流入力電源Vinの電圧を昇圧コイルLで昇圧する。そして、昇圧コイルLで昇圧された電力をダイオードD1で整流することにより所望電圧の直流電力を生成して外部の負荷Fに供給する。
【0004】
また、直流入力電源Vinをそのまま負荷Fに供給する場合、トランジスタQ1による昇圧コイルLのスイッチング駆動を停止させ、直結スイッチQ2をオン状態に制御する。これにより、直流入力電源Vinが直結スイッチQ2を介して負荷Fに直接供給される。
従って、直結スイッチQ2を備えたDC−DCコンバータによれば、昇圧された所望の直流電力のみならず、必要に応じて直流入力電源Vinを負荷Fに直接供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の昇圧チョッパー型のDC−DCコンバータの構成において、直結スイッチQ2がオープンモードで故障した場合、その故障を検出することが困難であった。
即ち、例えば直結スイッチQ2がショートモードで故障した場合であれば、入力端子Tinに印加された直流入力Vinが直結スイッチQ2を介して出力端子Toutに現れ、出力端子Toutの電圧が直流入力Vinの電圧に固定される。従って、出力端子Toutの電圧を観測することで、直結スイッチQ2のショートモードでの故障を知ることができる。
【0007】
これに対し、直結スイッチQ2がオープンモードで故障した場合、出力端子Toutに現れる電圧は特定の電圧に固定されないので、この出力端子Toutに現れる電圧から直結スイッチQ2のオープンモードでの故障を知ることはできない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スイッチの故障を的確に検出することを可能とする故障検出装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る故障検出装置は、電源と負荷との間に接続されたスイッチの故障を検出する故障検出装置であって、前記スイッチと並列接続された電圧降下素子と、前記スイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態および閉状態に制御した場合に前記電圧降下素子の端子間の相対電圧を検出する電圧検出部と、前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とに基づき前記スイッチの故障を判定する故障判定部と、を備え、前記故障判定部は、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧である場合、前記スイッチがオープンモードで故障していると判定し、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧ではない場合、前記スイッチがショートモードで故障していると判定し、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧が、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧よりも小さい場合、前記スイッチの故障がオープンモードの故障でもなく、ショートモードの故障でもない異常な故障であると判定することを特徴とする故障検出装置の構成を有する。
【0010】
また、本発明に係る故障検出方法は、電源と負荷との間に接続されたスイッチの故障を検出する故障検出方法であって、スイッチ制御部が、前記スイッチの開閉を制御する段階と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態および閉状態に制御した場合に、電圧検出部が前記スイッチと並列接続された電圧降下素子の端子間の相対電圧を検出する段階と、故障判定部が、前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とに基づき前記スイッチの故障を判定する段階と、を含み、前記第3段階では、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧である場合、前記スイッチがオープンモードで故障していると判定し、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧と、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧とが同じであり、且つ前記電圧降下素子の電気的特性が反映された電圧ではない場合、前記スイッチがショートモードで故障していると判定し、前記スイッチ制御部が前記スイッチを開状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧が、前記スイッチ制御部が前記スイッチを閉状態に制御した場合に前記電圧検出部で検出された相対電圧よりも小さい場合、前記スイッチの故障がオープンモードの故障ではなく、ショートモードの故障でもない異常な故障であると判定することを特徴とすることを特徴とすることを特徴とする故障検出方法の構成を有する。
【0011】
上記構成によれば、スイッチの制御状態とは無関係に、スイッチの故障モードに応じて、電圧降下素子の端子間の相対電圧が定まる。例えば、スイッチがオープンモードで故障している場合、電圧降下素子の端子間の相対電圧は、この電圧降下素子の電気的特性に依存した電圧(例えばVf)となり、このときの相対電圧からオープンモードでのスイッチの故障を知ることができる。一方、スイッチがショートモードで故障している場合、電圧降下素子の端子間の相対電圧は、電圧降下素子の電気的特性に依存しない電圧(例えば0V)となり、このときの相対電圧からショートモードでのスイッチの故障を知ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オープンモードでの故障を含み、スイッチの故障を的確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の原理を説明するための説明図である。
図2】本発明の実施形態による故障検出装置10の構成と、その適用例を示す図である。
図3】本発明の実施形態による故障検出装置10の動作を説明するためのフロー図である。
図4】従来の昇圧チョッパー型のDC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、図1を参照して、本発明による故障検出の原理を説明する。
図1に示すように、故障検出対象のスイッチSWと並列に電圧降下素子EDが接続され、スイッチSWの一端には直流電源Vdcが接続され、その他端には負荷Rが接続される。本発明の原理によれば、以下に説明するように、故障検出対象のスイッチSWを開状態に制御したときに電圧降下素子EDの端子間に現れる相対電圧(端子間の電位差)VEと、スイッチSWを閉状態に制御したときに電圧降下素子EDの端子間に現れる相対電圧(端子間の電位差)VEとの両方から、スイッチSWの故障を判定する。
【0015】
図1(a)は、スイッチSWが正常に機能する場合を示す。この場合、スイッチSWの開閉状態に応じて電圧降下素子EDの端子間に現れる相対電圧VEが変化する。即ち、スイッチSWが開状態に制御されれば、直流電源Vdcとグランドとの間に電圧降下素子EDと負荷Rが直列接続され、電圧降下素子EDに電流が流れる。このとき、電圧降下素子EDの端子間には、この電圧降下素子EDの電気的特性によって与えられる相対電圧VEが現れる。
【0016】
例えば、電圧降下素子EDがダイオードであり、そのアノードが電源Vdcに接続され、そのカソードが負荷Rに接続されていれば、この電圧降下素子EDの端子間には、ダイオード固有の順方向降下電圧(Vf)によって与えられる電圧が相対電圧VEとして現れる。仮に、外乱要因や測定誤差が存在しなければ、電圧降下素子EDの端子間には、ダイオード固有の順方向降下電圧(Vf)そのものが現れる。
【0017】
また、スイッチSWが閉状態に制御されれば、電圧降下素子EDの端子間はスイッチSWによって短絡される。従ってこの場合、電圧降下素子EDの電気的特性とは無関係に、電圧降下素子EDの端子間に現れる相対電圧VEは0Vになる。
このように、スイッチSWが正常に機能する場合、相対電圧VEとして、スイッチSWの開閉状態に応じて異なる電圧が検出され、このような検出結果からスイッチSWが正常に機能することを知ることができる。
【0018】
これに対し、図1(b)および図1(c)は、スイッチSWが故障した場合を示す。
このうち、図1(b)は、スイッチSWがショートモードで故障した場合を示す。この場合、スイッチSWの制御状態とは無関係に、電圧降下素子EDの端子間はスイッチSWにより短絡され、相対電圧VEは0Vに固定される。従って、スイッチSWを開状態に制御したときに検出される相対電圧VEが0Vであり、且つ、閉状態に制御したときに検出される相対電圧VEも同じく0Vであれば、スイッチSWがショートモードで故障していると考えることができる。
【0019】
なお、スイッチSWのショートモードでの故障の程度によっては、スイッチSWの端子間の電気的抵抗値が0Ωにならず、そのため、相対電圧VEが0Vにならないこともあり得るが、このこの場合の相対電圧VEは、電圧降下素子EDの電気的特性によって与えられる電圧とは異なる電圧になる。従って、ショートモードの故障で相対電圧VEが0Vにならない場合であっても、電圧降下素子EDの電気的特性によって与えられる電圧と異なる電圧であれば、スイッチSWがショートモードで故障していると考えることができる。
【0020】
図1(c)は、スイッチSWがオープンモードで故障した場合を示す。
この場合、スイッチSWの制御状態とは無関係に、直流電源Vdcとグランドとの間に電圧降下素子EDと負荷Rとが電気的に直列接続され、電圧降下素子EDの端子間には、電圧降下素子EDの電気的特性によって与えられる電圧が相対電圧VEとして固定的に現れる。従って、例えば電圧降下素子EDをダイオードとした場合、スイッチSWを開状態に制御したときに検出される相対電圧VEが上記ダイオード固有の順方向降下電圧(Vf)であり、且つ、閉状態に制御したときに検出される相対電圧VEも同じく上記ダイオード固有の順方向効果電圧(Vf)であれば、スイッチSWがオープンモードで故障していると考えることができる。
このように、本発明の原理によれば、スイッチSWを開状態に制御したときの相対電圧VEと、スイッチSWを開状態に制御したときの相対電圧VEとの両方の相対電圧から故障を判定する。
【0021】
ここで、仮に、相対電圧VEの測定誤差や外乱の影響がなく、しかも、オープンモードの故障ではスイッチSWの端子間の抵抗値が無限大になり、ショートモードの故障ではスイッチSWの端子間の抵抗値が完全にゼロになるのでれば、単純に、スイッチSWを開状態または閉状態のいずれかに一方に制御したときの相対電圧VEから故障を判定することは可能である。例えば、スイッチSWを開状態に制御したときに相対電圧VEが0Vであれば、ショートモードでの故障と判定することができ、スイッチSWを閉状態に制御したときに相対電圧VEがダイオード固有の順方向降下電圧(Vf)であれば、オープンモードでの故障と判定することができる。しかしながら、現実的には、測定誤差や外乱を完全に排除することは困難であり、また故障の程度によってスイッチSWの端子間の抵抗値が変動し、相対電圧VEが変動する場合がある。従って、このような単純な判定手法では的確に故障を判定することが現実には困難である。
【0022】
これに対し、本発明では、前述したように、スイッチSWを開状態に制御したときの相対電圧VEと、スイッチSWを閉状態に制御したときの相対電圧VEとの両方から故障を判定する。即ち、スイッチSWを開状態に制御したときの相対電圧VEと、スイッチSWを閉状態に制御したときの相対電圧VEとが等しければ、少なくとも、オープンモードまたはショートモードの何れの故障モードで故障が発生していると考えることができる。なぜならば、ショートモードの故障では、電圧降下素子EDの端子間はスイッチSWで短絡される結果、スイッチSWの制御状態とは無関係に、相対電圧VEは0Vに固定されるからであり、オープンモードの故障では、相対電圧VEは、スイッチSWの制御状態とは無関係に、電圧降下素子EDの電気的特性に依存した値に固定されるからである。
【0023】
また、本発明の原理によれば、相対電圧VEの値から故障モードの種類を判定することができる。即ち、スイッチSWを開状態または閉状態に制御したときの相対電圧VEの値に電圧降下素子EDの電気的特性が反映されていれば、故障モードがオープンモードであると考えることができ、逆に、相対電圧VEの値に電圧降下素子EDの電気的特性が反映されていなければ、故障モードがショートモードであると考えることができる。
【0024】
このような本発明の原理によれば、例えば、相対電圧VEの検出値に測定誤差が含まれていても、この測定誤差自体は一定であるから、スイッチSWを開状態に制御したときの相対電圧VEと、スイッチSWを閉状態に制御したときの相対電圧VEとが等しかどうかの判定に影響を与えることはない。また、相対電圧VEに電圧降下素子EDの電気的特性が反映されているかどうかの判定についても、電圧降下素子EDの電気的特性によって与えられる相対電圧VEの電圧成分が測定誤差による電圧成分と有意に異なれば、その影響を受けることはない。スイッチSWの故障の程度による影響についても同様である。従って、本発明の原理によれば、現実の環境下においてスイッチの故障を有効に検出することが可能になる。
【0025】
以下、図面を参照して、上述の原理に基づく本発明の実施形態を説明する。
(構成の説明)
図2に、昇圧チョッパー型のDC−DCコンバータ20に適用された本発明の実施形態による故障検出装置10の構成を示す。
故障検出装置10は、直流入力電源Vinと負荷Fとの間に接続された直結スイッチQ2の故障を検出する故障検出装置であって、電圧降下素子D2、電圧検出部11、故障判定部12、スイッチ制御部13から構成される。
【0026】
ここで、電圧降下素子D2は、DC−DCコンバータ20内の直結スイッチQ2と並列接続される。この電圧降下素子D2は、前述の図1に示す電圧降下素子EDに対応する要素であって、電流を流したときに、その電気的特性によって与えられる相対電圧VEが端子間に現れる。この電圧降下素子D2は、電流を流したときに電圧降下を発生させるものであれば、どのようなものであってもよく、例えばダイオードや抵抗素子である。
【0027】
本実施形態では、電圧降下素子D2はダイオードであるものとし、そのアノードは入力端子Tinに接続され、そのカソードは出力端子Toutに接続されている。以下では、適宜、電圧降下素子D2を「ダイオードD2」と称す。なお、本実施形態では、ダイオードD2として、DC−DCコンバータ20を構成する直結スイッチQ2の保護用ダイオードを流用するものとする。
【0028】
スイッチ制御部13は、直結スイッチQ2の開閉を制御するものである。特に図示しないが、直結スイッチQ2の開閉を制御する制御手段がDC−DCコンバータ20内に備えられている。本実施形態では、故障検出装置10のスイッチ制御部13を機能させる場合には、直結スイッチQ2の開閉を制御するDC−DCコンバータ20側の制御手段を無効化する。
【0029】
電圧検出部11は、スイッチ制御部13が直結スイッチQ2を開状態および閉状態に制御した場合に電圧降下素子D2の端子間の相対電圧VEを検出するものである。
故障判定部12は、後述のように、直結スイッチQ2を開状態に制御した場合に電圧検出部11で検出された相対電圧VEと、直結スイッチSWを閉状態に制御した場合に電圧検出部11で検出された相対電圧とに基づきスイッチSWの故障を判定するものである。
【0030】
昇圧チョッパー型のDC−DCコンバータ20は、前述の図4に示した従来装置と同様に構成され、入力端子Tin、グランド端子GND、昇圧コイルL、トランジスタQ1、ダイオードD1、出力端子Tout、直結スイッチQ2を備える。
【0031】
ここで、入力端子Tinとグランド端子GNDとの間には、直流入力電源Vinが接続され、入力端子Tinには昇圧コイルLの一端が接続される。この昇圧コイルLの他端とグランド端子GNDとの間には、昇圧コイルLをスイッチング駆動するためのトランジスタQ1が接続される。図2では、トランジスタQ1を駆動するための駆動回路は省略されているが、このような駆動回路は公知である。
【0032】
昇圧コイルLの他端には、整流用のダイオードD1のアノードが接続され、そのカソードは出力端子Toutに接続される。本実施形態では、故障検出装置10を構成するダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)は、DC−DCコンバータ20を構成するダイオードD1の順方向降下電圧よりも有意に小さいものとする。これは、ダイオードD1の順方向降下電圧が、ダイオードD2の端子間に現れる相対電圧VEに与える影響を排除するためである。入力端子Tinと出力端子Toutとの間には、直結スイッチQ2が接続され、出力端子Toutとグランド端子GNDとの間には負荷Fが接続される。
【0033】
なお、直流入力電源Vin、直結スイッチQ2、負荷Fは、前述の図1に示す直流電源Vdc、スイッチSW、負荷Rにそれぞれ対応する。
【0034】
(動作の説明)
次に、図2に示すDC−DCコンバータ20を構成する直結スイッチQ2の故障を検出する場合について、図3のフローに沿って本実施形態による故障検出装置10の動作を説明する。
故障検出装置10の動作の前提として、DC−DCコンバータ20のスイッチング動作は停止されているものとする。
【0035】
(オープン故障の検出)
まず、スイッチSWがオープンモードで故障している場合について説明する。
スイッチ制御部13は、直結スイッチQ2を開状態に制御する(ステップS1)。この制御状態で、電圧検出部11は、スイッチSWと並列接続されたダイオードD2の端子間の相対電圧VEを検出して故障判定部12に供給する(ステップS2)。ここで、スイッチ制御部11が直結スイッチQ2を開状態に制御した場合に電圧検出部11で検出される相対電圧VEを「相対電圧VEopen」と称す。
【0036】
この場合、直結スイッチQ2はオープンモードで故障しているため、スイッチ制御部13による制御とは無関係にスイッチQ2は開状態にあり、且つ、故障検出装置10内のダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)は、DC−DCコンバータ20内のダイオードD1の順方向効果電圧(Vf)よりも有意に小さいので、ダイオードD2の端子間の相対電圧VEは、直結スイッチQ2およびダイオードD1の影響を受けず、ダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)のみによって定まる。従って、電圧検出部11は、相対電圧VEopenとしてダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)を検出する。
【0037】
続いて、スイッチ制御部13は、直結スイッチQ2を閉状態に制御する(ステップS3)。この制御状態で、電圧検出部13は、スイッチSWと並列接続されたダイオードD2の端子間の相対電圧VEを検出して故障判定部12に供給する(ステップS4)。ここで、スイッチ制御部11が直結スイッチQ2を閉状態に制御した場合に電圧検出部11で検出される相対電圧VEを「相対電圧VEclose」と称す。
【0038】
この場合も、直結スイッチQ2はオープンモードで故障しているため、上述と同様に、スイッチ制御部13による制御とは無関係に直結スイッチQ2は開状態にある。従って、電圧検出部11は、相対電圧VEcloseとして、同じくダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)を検出する。
【0039】
続いて、故障判定部12は、電圧検出部11から供給された相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseとを比較することにより、これらの相対電圧がオープンモードの故障を判定するための条件を満足するかどうかを判定する。具体的には、故障判定部12は、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseとが等しく、且つ、これら相対電圧がダイオードD2の電気的特性によって与えられる電圧、即ちダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)に等しいかどうか判定する(ステップS5)。
【0040】
いま、相対電圧VEopenと相対電圧closeは共にダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)に等しいことから、これらの相対電圧はオープンモードの故障を判定するための上記条件を満足する(ステップS5;Y)。従って、故障判定部12は、直結スイッチQ2がオープンモードで故障していると判定し(ステップS6)、この判定をもって故障を検出するための動作が終了する。
【0041】
(ショート故障の検出)
次に、直結スイッチQ2がショートモードで故障している場合について説明する。
上述のオープンモードでの故障の検出と同様に、スイッチ制御部13が直結スイッチQ2の開閉を制御し、電圧検出部11が相対電圧VEopenおよび相対電圧VEcloseを検出して故障判定部12に供給する(ステップS1〜S4)。
【0042】
この場合、直結スイッチQ2はショートモードで故障しているため、スイッチ制御部13による制御とは無関係にスイッチQ2は閉状態にあり、ダイオードD2の端子間は直結スイッチQ2によって短絡された状態にある。従って、電圧検出部11は、相対電圧VEopenおよび相対電圧VEcloseとして0Vを検出する。
【0043】
電圧検出部11が相対電圧VEopenおよび相対電圧VEcloseを検出すると、故障判定部12は、まず、上述の相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseとを比較することにより、これらの相対電圧が上述のオープンモードの故障を判定するための条件を満足するかどうかを判定する(ステップS5)。この場合、相対電圧VEopenおよび相対電圧VEcloseは共に0Vであるから、上述のオープンモードの故障を判定するための条件を満足しない(ステップS5;N)。
【0044】
続いて、故障判定部12は、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseとがショートモードの故障を判定するための条件を満足するかどうかを判定する。具体的には、故障判定部12は、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseが等しく、且つ、これら相対電圧が0Vに等しいかどうか判定する(ステップS7)。いま、相対電圧VEopenおよび相対電圧VEcloseは共に0Vであるから、上述のショートモードの故障を判定するための条件を満足する(ステップS7;Y)。従って、故障判定部12は、スイッチQ2がショートモードで故障していると判定し(ステップS8)、この判定をもって故障を検出するための動作が終了する。
【0045】
以上で、オープンモードおよびショートモードでの故障の検出動作を説明したが、以下では、上述のオープンモードおよびショートモードでの故障を判定するための何れの条件も満足しない場合について説明する。
【0046】
上述のステップS7において、ショートモードの故障を判定するための条件が満足されない場合(ステップS7;N)、故障検出部12は、スイッチSWの機能が正常であることを判定するための条件として、相対電圧VEopenが相対電圧VEcloseよりも大きいかどうかを判定する(ステップS9)。仮に、直結スイッチQ2が正常に機能する状態にあれば、相対電圧VEopenがダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)に等しく、且つ、相対電圧VEcloseが0Vになるので、スイッチSWの機能が正常であることを判定するための上記条件は満足され、故障判定部12は、直結スイッチQ2が正常に機能すると判定する(ステップS10)。
【0047】
また、ステップS9において、スイッチSWの機能が正常であることを判定するための条件が満足されない場合、故障検出部12は、スイッチSWの機能が異常(オープンモードの故障でもなくショートモードでの故障でもない故障)であることを判定するための条件として、相対電圧VEopenが相対電圧VEcloseよりも小さいかどうかを判定する(ステップS11)。通常、このような条件が満足されることはないが、仮にこのような条件が満足された場合、故障検出部12は異常と判定する。
以上で、本実施形態の動作を説明した。
【0048】
上述の実施形態では、ステップS5において、オープンモードの故障を判定するための条件として、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseが等しく、且つ、これらがダイオードD2の電気的特性によって与えられる電圧、即ちダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)に等しいことを設定したが、これに限定されず、ダイオードD2の電気的特性によって与えられる何らかの電圧に等しければよい。従って、例えば測定誤差などにより、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseが、ダイオードD2の順方向降下電圧(Vf)±αであってもよい。即ち、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseが相互に等しく、かつ、それらの電圧がダイオードD2の電気的特性に依存した何らかの電圧であればよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、ステップS7において、ショートモードの故障を判定するための条件として、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseが等しく、且つ、これらが0Vに等しいことを設定したが、これに限定されず、ダイオードD2の電気的特性によって与えられる電圧以外の有意な何らかの電圧に等しければよい。従って、例えば測定誤差などにより、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseが0V±αであってもよい。即ち、相対電圧VEopenと相対電圧VEcloseが相互に等しく、かつ、それらの電圧がダイオードD2の電気的特性に依存しない何らかの電圧であればよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
例えば、上述の実施形態では、オープンモードおよびショートモードの故障を検出するもととしたが、オープンモードのみを検出するものとしてもよく、ショートモードのみを検出するものとしてもよい。
また、上述の実施形態では、スイッチSWを開状態に制御した後に閉状態に制御するものとしたが、これらの制御の順番は任意である。
【符号の説明】
【0051】
10…故障検出装置、11…電圧検出部、12…故障判定部、13…スイッチ制御部、Vin…直流入力電源、Tin…入力端子、GND…グランド端子、L…昇圧コイル、Q1,Q2…トランジスタ、D1…ダイオード、D2…電圧降下素子(ダイオード)、Tout…出力端子、F…負荷。
図1
図2
図3
図4