(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を採用する画像形成装置としては、以下のようなものが知られている。
画像形成装置は、像担持体としての感光体ドラムを有し、感光体ドラムの表面にはOPC(Organic Photoconductor:有機光導電体)やa−Si(アモルファスシリコン)等からなる感光層が形成されている。
【0003】
感光体ドラムの表面は、帯電手段によって一様に帯電させられてから、画像情報に応じてレーザーあるいはLED等で部分的に露光され、これにより静電潜像が形成される。次に、該静電潜像は現像手段によりトナー像に現像され、このトナー像は転写手段によって、転写材に転写される。この後、転写材は分離手段により感光体ドラムから分離され、定着装置により転写材上のトナー像が転写材に定着させられる。
【0004】
転写手段は、転写バイアス電源ユニットを含み、転写バイアス電源ユニットは、感光体ドラムと転写ローラとの間の転写ニップ部を転写材が通過するときに、転写ローラに転写バイアスを印加する。転写バイアス電源ユニットによってトナー像とは逆極性の転写バイアスが印加されると、感光体ドラム上のトナー像は転写電界により転写材に転写される。
【0005】
分離手段は、たとえば鋸刃状の放電部材と、除電バイアス電源ユニットとからなり、放電部材は、転写ニップ部下流側に設置される。放電部材には、転写バイアスとは逆極性の除電バイアスが除電バイアス電源ユニットによって印加される。
【0006】
この種の画像形成装置として、特許文献1が開示する画像形成装置においては、除電バイアスの供給が、転写バイアス供給開始と同期して或いはそれより前に開始される。この画像形成装置によれば、転写バイアスの供給開始時のオーバーシュートが防止され、像担持体のメモリ発生が防止又は軽減されるものと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1が開示する画像形成装置では、転写ローラに印加される転写バイアスの出力が、転写材の先端が転写ニップ部に到達する前に立ち上がっている(特許文献1の
図2参照)。この場合、たとえ転写バイアスのオーバーシュートが抑制されたとしても、転写ローラの振動等により転写材の先端近傍で転写ニップ部にエアギャップが発生したときに、エアギャップ部で放電電圧が上昇し、感光体ドラムに対して異常放電してしまう。
【0009】
感光層がa−Siからなる感光体ドラム(a−Siドラム)の場合、エアギャップ部での放電電圧の上昇による異常放電により、感光層の一部が破壊されることがある。そして、感光層が破壊された部分では電荷を充分に保持できないため、転写材に黒点(リーク黒点)が発生してしまうことがある。
【0010】
また、感光層が正帯電OPCからなる感光体ドラム(OPCドラム)の場合、エアギャップ部での放電電圧の上昇による異常放電により、感光層の一部が帯電手段による帯電と逆極性に帯電させられてしまい、帯電手段によって感光層の一部を充分な電位まで帯電させられなくなることがある。そして、帯電が不足した感光層の部分には、正帯電トナーが過剰に現像され、転写材上に黒点(転写メモリ黒点)や、白紙部にトナーが乗るカブリが発生してしまうことがある。
【0011】
かかるリーク黒点や転写メモリ黒点等の発生を防止することだけを考慮すれば、転写材が転写ニップ部に到達してから転写バイアスの印加を開始するのが望ましい。しかしながら、従来の転写バイアス電源ユニットには、転写バイアスの立ち上がり時間のばらつきが大きいという問題がある。
この問題のため、転写材が転写ニップ部に到達してから転写バイアスの印加を開始しようとすると、特に高速の画像形成装置においては、決められた画像域に対し転写バイアスの立ち上がりが間に合わないことがある。このような場合、転写材の先端側に転写バイアスが充分に印加されず、転写不良が発生してしまう。
【0012】
従って、より高価な電源を用いれば別として、従来の安価な転写バイアス電源ユニットを用いる構成では、リーク黒点若しくは転写メモリの発生を防止しながら、転写材の先端側の転写抜けを防止することは困難であった。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされ、その目的とするところは、リーク黒点若しくは転写メモリ黒点の発生が防止されながら、転写材先端側の転写不良も防止された画像形成装置を安価にて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様によれば、トナー像が形成される感光層を有する像担持体と、搬送過程の転写材が通過する転写ニップ部を像担持体とともに形成する転写ローラと、転写材が転写ニップ部を通過するときにトナー像が転写材に転写されるよう、転写ローラに対して転写バイアスを印加する転写バイアス電源ユニットと、転写材の搬送方向でみて転写ニップ部の下流に配置された放電器と、転写バイアスとは逆極性の除電バイアスを放電器に印加する除電バイアス電源ユニットと、転写バイアス電源ユニット及び除電バイアス電源ユニットを制御し、転写バイアスの印加の開始よりも前に除電バイアス電源ユニットに除電バイアスの印加を開始させ、且つ、転写バイアスの出力が安定した直後に除電バイアスの印加を終了させる制御ユニットとを備えた画像形成装置が提供される。
好ましくは、制御ユニットは、転写材が厚紙の厚さである場合には転写バイアスの出力が安定した直後に除電バイアスの印加を終了させることを特徴とする。
【0014】
また、この態様において好ましくは、転写バイアス電源ユニットは、転写バイアスを出力する転写バイアスモード、転写バイアスとは逆極性の逆バイアスを出力する逆バイアスモード、及び、出力が零のオフモードのうち1つのモードにて動作可能であり、制御ユニットは、転写ニップ部に転写材の先端が到達する前に、転写バイアス電源ユニットの動作を逆バイアスモードからオフモードに変更させ、転写ニップ部に転写材の先端が到達してから、転写バイアスの出力が立ち上がるように転写バイアス電源ユニットの動作をオフモードから転写モードに変更させることを特徴とする。
そして、この態様においては、像担持体の感光層はアモルファスシリコン、又は有機光導電体からなることが好ましい。
【0015】
上述した目的は、本発明の他の態様によっても達成することが可能である。例えば、トナー像が形成される感光層を有する像担持体と、搬送過程の転写材が通過する転写ニップ部を前記像担持体とともに形成する転写ローラと、前記転写材が前記転写ニップ部を通過するときに前記トナー像が前記転写材に転写されるよう、前記転写ローラに対して転写バイアスを印加する転写バイアス電源ユニットと、前記転写材の搬送方向でみて前記転写ニップ部の下流に配置された放電器と、前記転写バイアスとは逆極性の除電バイアスを前記放電器に印加する除電バイアス電源ユニットと、前記転写バイアス電源ユニット及び除電バイアス電源ユニットを制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記転写バイアスの印加の開始よりも前に、前記除電バイアス電源ユニットに前記除電バイアスの印加を開始させ、且つ、前記転写ニップ部に前記転写材の先端が到達してから前記転写バイアスの出力が立ち上がるように、前記転写バイアス電源ユニットに前記転写バイアスの印加を開始させることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0016】
この画像形成装置では、転写バイアスの印加を開始するよりも前に、除電バイアスが印加されることで、転写バイアスの立ち上がり時間が短縮され、且つ、立ち上がり時間のばらつきが抑制される。このため、たとえ転写材の搬送速度が速くても、先端から例えば3〜4mmの転写材の非画像域が転写ニップ部を通過している間に、転写バイアスが所定レベルまで確実に立ち上がる。
【0017】
このように立ち上がり時間が短縮され且つばらつきが抑制されるのは、転写ローラ近傍に放電される転写バイアスとは逆極性の除電バイアスの影響で、転写バイアスの印加時に出力負荷が大きくなり、転写バイアスの出力電圧が上昇するためである。
【0018】
このため、転写材が転写ニップ部に到達する前に転写バイアス出力を立ち上げることなく、且つ、転写材の画像を形成すべき領域(画像域)が転写ニップ部を通過しているときには、充分な転写バイアスが印加されるように制御することができる。
これらの結果、この画像形成装置によれば、リーク黒点若しくは転写メモリ黒点の発生が防止されるとともに、転写材の先端側での転写不良が防止される。また、この画像形成装置は、従来の転写バイアス電源ユニットを使用することができるため、コストの上昇を招くことなく安価にて提供される。
【0019】
好ましくは、前記転写バイアス電源ユニットは、前記転写バイアスを出力する転写バイアスモード、前記転写バイアスとは逆極性の逆バイアスを出力する逆バイアスモード、及び、出力が零のオフモードのうち1つのモードにて動作可能であり、前記制御ユニットは、前記転写ニップ部に前記転写材の先端が到達する前に、前記転写バイアス電源ユニットの動作を前記逆バイアスモードから前記オフモードに変更させ、前記転写ニップ部に前記転写材の先端が到達してから前記転写バイアス出力が立ち上がるように、前記転写バイアス電源ユニットの動作を前記オフモードから前記転写モードに変更させる。
【0020】
この画像形成装置によれば、転写バイアス電源ユニットの動作が、逆バイアスモードからオフモードを経て転写イアスモードに切り換えられたとしても、転写バイアスの立ち上がり時間が短く且つそのばらつきが小さい。
これは、転写ローラに充電している逆バイアスの電荷が、除電バイアスの影響で転写バイアスのオフ時に抜け難いため、転写ローラは転写バイアスと逆極性に帯電しており、かつ、転写ローラ近傍に放電される転写バイアスとは逆極性の除電バイアスの影響で、転写バイアスの印加時にさらに出力負荷が大きくなり、転写バイアスの出力電圧が上昇するためである。
一方、この画像形成装置によれば、逆バイアスモードにより転写ローラに逆バイアスが印加されることによって、転写ローラに付着している不所望のトナー等が像担持体に移動させられる。
従って、この画像形成装置によれば、黒点の発生及び転写抜けが防止されことに加えて、転写材の裏汚れが防止される。
【0021】
好ましくは、前記転写材の厚さに応じて、前記除電バイアスの印加を終了させるタイミングが異なる。
この画像形成装置によれば、例えば、転写材が厚紙である場合、転写バイアスが立ち上がって安定した時点で、除電バイアスの印加が停止される。厚紙のコシが強いため、像担持体から厚紙を分離するためには除電バイアスの印加は必要でなく、除電バイアスの印加を停止することによって、除電バイスによって転写材が除電されることによるトナー粒子の吸着力の低下が防止される。この結果として、トナー粒子の定着性が低下することが防止され、厚紙に良好な画像が形成される。
【0022】
一方、この画像形成装置によれば、例えば、転写材が普通紙である場合、感光体ドラムからの分離が十分行われるところまで、除電バイアスが印加され続ける。普通紙のコシは弱いため、除電バイアスによって普通紙の裏面を除電することによって、像担持体からの普通紙の分離が促進される。
従って、この画像形成装置によれば、黒点の発生及び転写抜けが防止されことに加えて、厚紙の定着性低下又は普通紙の分離不良が防止される。
【0023】
好ましくは、前記像担持体の感光層はアモルファスシリコンからなる。
この画像形成装置は、像担持体の感光層がアモルファスシリコンからなり、高硬度であるため、耐久性に優れている。
【0024】
或は、前記像担持体の感光層は有機光導電体からなる。
この画像形成装置は、感光層が有機光導電体からなる像担持体の汎用性が高いため、安価である。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、リーク黒点、転写メモリ黒点若しくはカブリの発生が防止されながら、転写材先端側の転写不良も防止された画像形成装置が安価にて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複写機の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の複写機の画像形成機構を拡大して示す図である。
【
図3】
図1の複写機の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の複写機の転写バイアス電源ユニットの概略構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1の複写機が普通紙に印字するときの動作を説明するためのタイミングチャートであり、
図5の上段は、転写ニップ部を転写材が通過するタイミングを示し、
図5の中段は、除電バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示し、
図5の下段は、転写バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示す。
【
図6】
図1の複写機が厚紙に印字するときの動作を説明するためのタイミングチャートであり、
図6の上段は、転写ニップ部を転写材が通過するタイミングを示し、
図6の中段は、除電バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示し、
図6の下段は、転写バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示す。
【
図7】従来の複写機が厚紙に印字するときの動作を説明するためのタイミングチャートであり、
図7の上段は、転写ニップ部を転写材が通過するタイミングを示し、
図7の中段は、除電バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示し、
図7の下段は、転写バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示す。
【
図8】
図6のタイミングで動作したときの、転写バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示すチャートである。
【
図9】
図7のタイミングで動作したときの、転写バイアス電源ユニットの出力の時間変化を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置として、複写機10について図面を参照して説明する。
複写機10のメインハウジング12の上部には、画像読取機構14が設けられている。画像読取機構14の上には、カバー16が開閉可能に配置されている。画像読取機構14は、図示しないけれどもコンタクトガラス板を有し、コンタクトガラス板に接する原稿の画像を光学的に読み取る。
【0028】
メインハウジング12の下部には、正面から給紙カセット18,20が着脱自在に挿入される。給紙カセット18,20には、画像読取機構14で読み取られた画像が印字される用紙(転写材)が収納される。
また、メインハウジング12の側部には、可動式の手差しトレイ22が取り付けられ、手差しトレイ22に置かれた用紙に印字することも可能である。
【0029】
メインハウジング12の中央部には、画像形成機構24が設けられ、画像形成機構24によって用紙に画像が印字される。
そして、メインハウジング12には、画像読取機構14と画像形成機構24との間に位置して、排紙トレイ26,28が一体に設けられ、印字された用紙は、排紙トレイ26,28に排出される。また、複写機10のメインハウジング12の側部には、可動式の排紙トレイ30が取り付けられ、印字された用紙を排紙トレイ30に排出することも可能である。
【0030】
メインハウジング12の内部には、給紙カセット18,20及び手差しトレイ22から、画像形成機構24を経て、排紙トレイ26,28,30まで延びる用紙の搬送経路32が設けられている。
搬送経路32は、具体的には、給紙カセット18,20及び手差しトレイ22から画像形成機構24まで延びる給紙経路34、画像形成機構24から排紙トレイ26,28,30まで延びる排紙経路36、及び、両面印刷のために排紙経路36と給紙経路34とを繋ぐ再搬送経路38からなる。
【0031】
搬送経路32には、複数のローラ対が配置されるとともに、図示しない経路切換部材が配置され、これらローラ対と経路切換部材とが協働することにより、搬送経路32内を用紙が搬送される。
【0032】
図2は、画像形成機構24の概略構成を拡大して示している。
画像形成機構24は、像担持体としての感光体ドラム40を有する。感光体ドラム40は、ドラム本体41と、ドラム本体41の表面に形成されたa−Si(アモルファスシリコン)からなる感光層42とを含む。このため以下では、感光体ドラム40のことをa−Siドラム40ともいう。感光体ドラム40は、図示しないモータによって、
図2でみて時計回りに回転駆動される。
【0033】
そして、画像形成機構24は、感光層42を一様に正極性に帯電させるための手段(帯電装置)として帯電ローラ44を有し、帯電ローラ44は感光体ドラム40の近傍に配置されている。
【0034】
また、画像形成機構24は、画像読取機構14にて読み取った画像に対応して感光体ドラム40に露光し、感光層42に静電潜像を形成するための手段(露光装置)として、レーザ走査ユニット46を有する。レーザ走査ユニット46は、感光体ドラム40の回転方向でみて、帯電ローラ44よりも下流の位置にて、感光体ドラム40の感光層42にレーザ光を照射する。
【0035】
更に、画像形成機構24は、静電潜像を現像してトナー像を形成するための手段(現像装置)として、現像ユニット48を有する。現像ユニット48を構成する現像ローラ50は、レーザ光の照射位置よりも下流に位置して、感光体ドラム40の近傍に配置されている。現像ローラ50は、感光層42の表面に、静電潜像に対応して正極性に帯電したトナー粒子を供給し、これにより感光層42上にトナーが反転現像される。
なお、現像ユニット48には、トナータンク52からトナー粒子を含む現像剤が供給される。
【0036】
また更に、画像形成機構24は、感光層42上のトナー像を用紙(転写材)に転写するための手段(転写装置)として、転写ローラ54を有する。転写ローラは、金属製の軸部55と、軸部55に一体且つ同軸に設けられたローラ部56とからなる。
ローラ部56は例えば電子導電タイプの発泡スポンジローラであって、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)からなるベースポリマーと、ベースポリマー中に分散され、ローラ部56に導電性を付与するカーボン粒子とからなる。
【0037】
転写ローラ54は、付勢手段によって付勢された状態で、感光体ドラム40に当接しており、感光体ドラム40と協働して、搬送過程の用紙が通過する転写ニップ部を形成している。転写ニップ部は、感光体ドラム40の回転方向でみて、現像ローラ50よりも下流に位置している。転写ローラ54には、転写バイアス電源ユニット57が接続されている。
なお、転写ニップ部を通過するときの用紙の速度(搬送速度)は、例えば、40mm/sec以上500mm/sec以下の範囲にあり、好ましくは、80mm/sec以上460mm/sec以下の範囲にある。
【0038】
また、画像形成機構24は、トナー像の転写後に感光体ドラム40の感光層42をクリーニングする手段(クリーニング装置)として、クリーニングユニット58を有する。
【0039】
クリーニングユニット58は、感光体ドラム40の近傍に配置されたクリーニングローラ60及びクリーニングブレード62を含む。クリーニングローラ60及びクリーニングブレード62は、感光体ドラム40の回転方向でみて、転写ニップ部と帯電ローラ44との間に位置している。クリーニングローラ60は、回転しながら摺接して感光層42の表面を研磨し、クリーニングブレード62は、感光層42の表面からトナー粒子等を掻き落とす。
【0040】
転写ニップ部は、搬送経路32の一部を構成しており、搬送経路32の転写ニップ部よりも上流には、同じく搬送経路32の一部を構成するレジストローラ対64が設けられている。レジストローラ対64には、図示しないけれどもレジストローラ対64を回転駆動させるためのモータが機械的に接続され、レジストローラ対64によって、転写ニップ部に所定のタイミングで、正しい姿勢にて用紙が送り込まれる。
【0041】
一方、搬送経路32の転写ニップ部よりも下流には、同じく搬送経路32の一部を構成する定着ローラ対66が設けられている。定着ローラ対66は、トナー像が転写された用紙を加熱し、トナー像を用紙に定着させるための手段である。
【0042】
そして、転写ニップ部と定着ローラ対66との間に位置して、コロナ放電器68が配置されている。コロナ放電器68は、用紙の裏面の帯電を中和するための除電手段(分離手段)を構成している。
なお、コロナ放電器68には、除電バイアス電源ユニット70が接続されている。
【0043】
図3は、複写機10の電気的な構成を示すブロック図である。
複写機10は、複写機10全体の制御を実行する制御ユニット72を有する。制御ユニット72は、例えば、MPU(マイクロプロセッサ)、メモリ及び記憶装置等によって構成される。
【0044】
制御ユニット72には、ユーザ等が、主電源を入れたり切ったりするためのメインスイッチ74、及び、複写機10に対して命令を入力するための操作パネル76が接続されている。
そして、制御ユニット72には、画像読取機構14及び画像形成機構24も接続されており、制御ユニット72は、ユーザ等によって入力された命令に基づいて、画像読取機構14及び画像形成機構24を動作させる。すなわち、制御ユニット72によって、帯電ローラ44、レーザ走査ユニット46、現像ユニット48、転写バイアス電源ユニット57及び除電バイアス電源ユニット70の動作が制御される。
【0045】
図4は、制御ユニット72及び転写ローラ54とともに、転写バイアス電源ユニット57のより詳細な構成を示すブロック図である。
転写バイアス電源ユニット57は、制御部78を有し、制御部78は、制御ユニット72からの命令に基づいて電源部80を動作させて、転写ローラ54に所定の電圧を所定のタイミングで印加する。本実施形態では、制御部78は、転写バイアスモード、逆バイアスモード、及び、オフモードの3つのモードを適宜切り替えて電源部80を動作させる。
【0046】
転写バイアスモードでは、トナー像(トナー粒子)の極性とは逆極性の電圧(転写バイアス)が転写ローラ54に印加される。
ここで、転写バイアス電源ユニット57は、定電流制御される。
【0047】
一方、逆バイアスモードでは、トナー像と同極性の電圧が転写ローラ54に印加される。そして、オフモードでは、電源部80の出力は零にされ、転写ローラ54に供給される電流が零に設定される。
【0048】
その上で、本実施形態では、所定のタイミングにて、除電バイアス電源ユニット70からコロナ放電器68に除電バイアス(分離バイアス)が印加される。除電バイアスは、転写バイアスとは逆極性であり、従って、トナー像とは同極性である。本実施形態では、コロナ放電器68には転写バイアスとは逆極性の正極性の除電バイアスが印加される。
【0049】
以下、転写材として普通紙を用いた場合における、転写バイアス電源ユニット57及び除電バイアス電源ユニット70の動作タイミングについて
図5に基づいて説明する。
図5の上段は、転写ニップ部における転写材の有無、即ち転写ニップ部を転写材が通過するタイミングを示し、
図5の中段は、除電バイアス電源ユニット70の出力の時間変化を示し、
図5の下段は、転写バイアス電源ユニット57の出力の時間変化を示している。
【0050】
図5に示したように、転写ニップ部に転写材が到達するよりも充分前の時点では、転写バイアス電源ユニット57は逆バイアスモードにて動作させられている。そして、転写バイアス電源ユニット57の動作は、転写ニップ部に転写材が到達する直前に逆バイアスモードからオフモードに切り換えられ、転写材が転写ニップ部に到達した直後に転写バイアス出力が立ち上がるように、オフモードから転写バイアスモードに切り換えられる。
【0051】
一方、除電バイアス電源ユニット70は、転写バイアス電源ユニット57の動作が逆バイアスモードからオフモードに切り換えられるよりも前に、除電バイアスの出力を開始し、転写材が感光体ドラムより十分に分離される位置まで通過すると、除電バイアスの出力を停止する。
【0052】
次に、転写材として厚紙を用いた場合における、転写バイアス電源ユニット57及び除電バイアス電源ユニット70の動作タイミングについて
図6に基づいて説明する。
図6の上段、中段及び下段は、
図5の場合と同様に、転写ニップ部を転写材が通過するタイミング、除電バイアス電源ユニット70の出力の時間変化、及び、転写バイアス電源ユニット57の出力の時間変化をそれぞれ示している。
図6から明らかなように、厚紙の場合は、転写バイアスが安定した直後に除電バイアスの印加が停止される点において、普通紙の場合と異なっている。
【0053】
更に、従来の画像形成装置において、転写材として厚紙を用いた場合における、転写バイアス電源ユニット57及び除電バイアス電源ユニット70の動作タイミングについて、
図7に基づいて説明する。
図7の上段、中段及び下段は、
図5及び
図6の場合と同様に、転写ニップ部を転写材が通過するタイミング、除電バイアス電源ユニット70の出力の時間変化、及び、転写バイアス電源ユニット57の出力の時間変化をそれぞれ示している。
図7から明らかなように、従来の画像形成装置によって厚紙に印字する場合、除電バイアスは印加されない。
【0054】
ここで、
図8に示すチャートは、複写機10を用いて厚紙に印字する際に、
図6に示したパターンにて転写バイアス電源ユニット57及び除電バイアス電源ユニット70を動作させたときの、転写バイアス電源ユニット57の出力電圧の時間変化を示している。
【0055】
なお、厚紙の搬送速度は300mm/secであり、オフモードの期間は10msecである。従って、オフモードの間に、厚紙は約3mm搬送される。そして、転写バイアス電源ユニット57の動作をオフモードから転写バイアスモードに切り換えてから約8.3msec後に、除電バイアスの印加が停止された。従って、転写バイアス電源ユニット57の動作をオフモードから転写バイアスモードに切り換えてから除電バイアスの印加が停止されるまでの間に、厚紙は約2.5mm搬送された。
【0056】
一方、
図9に示すチャートは、
図7に示したパターンにて、転写バイアス電源ユニット57及び除電バイアス電源ユニット70を動作させたときの、転写バイアス電源ユニット57の出力電圧の時間変化を示している。
【0057】
図8及び
図9に示されるように、上述した一実施形態の複写機10によれば、転写バイアスの印加を開始するよりも前に、除電バイアスが印加されることで、転写バイアスの立ち上がり時間が短縮され、且つ、立ち上がり時間のばらつきが抑制される。具体的には、除電バイアスを印加せずに転写バイアスの印加を開始した場合、転写バイアスの立ち上がり時間は32.8msecであったのが、除電バイアスを印加してから転写バイアスの印加を開始した場合、転写バイアスの立ち上がり時間は24.8msecになった。
【0058】
このため、たとえ転写材の搬送速度が速くても、先端から3〜4mmの転写材の非画像域が転写ニップ部を通過しているときに、転写バイアスが所定レベルまで確実に立ち上がる。
【0059】
このように立ち上がり時間が短縮さればらつきが抑制されるのは、転写ローラ近傍に放電される転写バイアスとは逆極性の除電バイアスの影響で、転写バイアスの印加時に出力負荷が大きくなり、転写バイアスの出力電圧が上昇するためである。また、転写ローラに逆バイアスがかかっている場合には、転写ローラに充電している逆バイアスの電荷が、除電バイアスの影響で転写バイアスのオフ時に抜け難いため、転写ローラは転写バイアスと逆極性に帯電しており、かつ、転写ローラ近傍に放電される転写バイアスとは逆極性の除電バイアスの影響で、転写バイアスの印加時にさらに出力負荷が大きくなり、転写バイアスの出力電圧が上昇するためである。
このため、転写材が転写ニップ部に到達する前に転写バイアス出力が立ち上がるように転写バイアスが転写ローラに印加されることがなく、且つ、転写材の画像を形成すべき領域(画像域)が転写ニップ部を通過しているときには、充分な転写バイアスが印加される。
【0060】
これらの結果、この複写機10によれば、a−Siからなる感光層42を有する感光体ドラム40を用いていても、リーク黒点の発生が防止されるとともに、転写材の先端側での転写抜けが防止される。また、この複写機10は、従来の転写バイアス電源ユニットを使用することができるため、コストの上昇を招くことなく安価にて提供される。
【0061】
そして、上述した一実施形態の複写機10によれば、転写バイアス電源ユニット57の動作が、逆バイアスモードからオフモードを経て転写イアスモードに切り換えられたとしても、転写バイアスの立ち上がり時間が短く且つそのばらつきが小さい。
【0062】
一方、この複写機10によれば、逆バイアスモードにより転写ローラ54に逆バイアスが印加されることによって、転写ローラ54に付着している不所望のトナー粒子等が感光体ドラム40に移動させられる。
従って、この複写機10によれば、リーク黒点の発生及び転写抜けが防止されことに加えて、転写材の裏汚れが防止される。
【0063】
また、上述した一実施形態の複写機10によれば、例えば、転写材が厚紙である場合、転写バイアスが立ち上がって安定した時点で、除電バイアスの印加が停止される。厚紙のコシが強いため、感光体ドラム40から厚紙を分離するためには除電バイアスの印加は必要でなく、除電バイアスの印加を停止することによって、除電バイアスによって転写材が除電されることによる厚紙に対するトナー粒子の吸着力の低下が防止される。この結果として、トナーの定着性が低下することが防止され、厚紙に良好な画像が形成される。
【0064】
一方、この複写機10によれば、例えば、転写材が普通紙である場合、感光体ドラムからの分離が十分に行われるところまで、除電バイアスが印加され続ける。普通紙のコシは弱いため、除電バイアスによって普通紙の裏面を除電することによって、感光体ドラム40からの普通紙の分離が促進される。
従って、この複写機10によれば、黒点の発生及び転写抜けが防止されことに加えて、厚紙の定着性低下又は普通紙の分離不良が防止される。
【0065】
なお、厚紙とは、紙の厚さによって定義することができるが、例えば、単位面積当たりの質量(目付量)が120g/mm2以上の紙であると定義することができる。あるいは、厚紙とは、除電バイアスを印加せずとも像担持体としての感光体ドラム40から分離可能なコシの強さを有する紙であると定義することもできる。
【0066】
更に、上述した一実施形態の複写機10は、感光体ドラム40の感光層42がアモルファスシリコンからなり、高硬度であるため、耐久性に優れている。
【0067】
本発明は上述した一実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、複写機10を用いて普通紙に印字する場合でも、感光体ドラム40から普通紙が分離可能であれば、転写バイアスが安定した直後に除電バイアスの印加を停止してもよい。即ち、除電バイアスは、少なくとも転写バイアスが安定するまで印加されていればよい。
【0068】
上述した一実施形態においては、感光層42がa−Siから形成されていたが、有機光導電体(OPC)から形成されていてもよい。感光層42がOPCからなる感光体ドラム40は汎用性が高く、安価である。
なお、OPCからなる感光層42を有する感光体ドラム40を用いた複写機10でも、先端から3〜4mmの転写材の非画像域が転写ニップ部を通過しているときに、転写バイアスが所定レベルまで確実に立ち上がる。このため、転写メモリ黒点の発生が防止されるとともに、転写材の先端側での転写抜けが防止される。
【0069】
上述した一実施形態では、画像形成装置として複写機10について説明したが、画像形成装置は、プリンタやファクシミリであってもよい。
以上、具体的な形態を挙げて本発明について説明したが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではなく、異なる実施形態として記載した構成を適宜組み合わせて得られる構成も本発明の技術的範囲に含まれると共に、このようにして得られた構成に従来公知の技術を適宜組み合わせて得られる構成も、本発明の技術的範囲に含まれる。