特許第5802956号(P5802956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5802956
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】音声合成装置、音声合成方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20151015BHJP
   H03G 3/32 20060101ALI20151015BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   H04R3/00 310
   H03G3/32
   A63F7/02 326Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-52351(P2015-52351)
(22)【出願日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398034168
【氏名又は名称】株式会社アクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】小島 悠貴
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−341538(JP,A)
【文献】 特開2013−115640(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/026754(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
G10L 13/00−13/10
G10L 19/00−19/26
G10L 21/00−21/18
G10L 25/00−25/93
G10L 99/00
H03F 1/00− 1/28
H03F 1/30− 1/40
H03F 1/42− 1/56
H03F 3/00− 3/195
H03F 3/20− 3/32
H03F 3/34− 3/36
H03F 3/38− 3/40
H03F 3/42− 3/44
H03F 3/45
H03F 3/50− 3/52
H03F 3/62− 3/64
H03F 3/68− 3/72
H03G 1/00− 3/34
H04R 3/00− 3/14
H04R 25/00−25/04
H04R 27/00−27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイダイナミックレンジオーディオシステムにおいて用いられる、複数の音声波形を合成して合成音声を生成する音声合成装置において、
複数の音声波形を合成して一つの前記合成音声を生成する音声合成手段と、
該音声合成手段から出力された前記合成音声を増幅する一つの増幅手段と、
音圧に関する情報を取得し、該取得した音圧に関する情報に基づいて前記増幅手段を制御して、該増幅手段における前記合成音声の増幅量を制御する増幅制御手段とを備え、
前記増幅手段において増幅された前記合成音声を出力することを特徴とする音声合成装置。
【請求項2】
前記音声合成手段に供給されるそれぞれの前記音声波形は、それぞれ別の波形生成手段において生成され、及び/又は、それぞれ別の入力系統を経て、前記音声合成手段に入力されることを特徴とする請求項1に記載の音声合成装置。
【請求項3】
前記一の増幅手段の前段に、前記音声合成手段において生成された前記合成音声を一時的に記録し、一時的に記録された前記合成音声を前記一の増幅手段に供給する一のバッファを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の音声合成装置。
【請求項4】
前記増幅手段の後段に、前記増幅された前記合成音声の音響効果を調整する音響調整手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の音声合成装置。
【請求項5】
前記合成音声は、遊技機の遊技時にスピーカから出力されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の音声合成装置。
【請求項6】
ハイダイナミックレンジオーディオシステムにおいて用いられる、複数の音声波形を合成して合成音声を生成する音声合成方法において、
複数の音声波形を合成して一つの前記合成音声を生成する音声合成手順と、
該音声合成手順において出力された前記合成音声を増幅する一つの増幅手段において増幅する増幅手順と、
音圧に関する情報を取得し、該取得した音圧に関する情報に基づいて前記増幅手順を制御して、該増幅手順における前記合成音声の増幅量を制御する増幅制御手順とを備え、
前記増幅手順において増幅された前記合成音声を出力することを特徴とする音声合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声合成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自然界の音声のような幅広いダイナミックレンジの音声を合成する手法として、ハイダイナミックレンジ(以下「HDR」と記載する)オーディオシステムが知られている。これは、幅広いダイナミックレンジを形成する複数の音声波形を、ディジタル機器で再生可能なダイナミックレンジ(例えば16ビットの場合は96dB)に逐次マッピングする形で合成音声を形成することで、ディジタル機器で再生可能なダイナミックレンジよりも幅広いダイナミックレンジと同等の音声出力を行う技術である。
【0003】
具体的には、例えば、複数の音源(例えば火山の噴火の音声(最高約180dB)、航空機エンジン直近の音声(最高約120dB)、博物館の館内の音声(最高約60dB)をそれぞれ波形生成して出力する、それぞれ別系統に形成された音源)から逐次波形生成された音声を合成した合成音声を出力する場合、最大レベルの音声を基準に、そこから下方にディジタル機器で再生可能なダイナミックレンジ分(例えば96dB分)のレンジにある音声を再生する。
【0004】
上述の例においては、航空機エンジンの音声が最大音量(120dB)で出力されている時間は、この最大音量をピーク値とした120dB〜24dBのレンジにある音声を再生し、火山の噴火の音声が最大音量(180dB)で出力されている時間は、この最大音量をピーク値とした180dB〜84dBのレンジにある音声を出力し、仮に上記のレンジよりも下のレンジ(前者の場合は24dB未満の音声、後者の場合は84dB未満の音声)の音声が同時に生成されていたとしても、それは合成の対象とせず、再生しない。
【0005】
従来、このようなHDRオーディオを実現するための技術としては、例えば、それぞれ独立した波形を出力する別個の波形生成手段(単安定マルチバイブレータ、乗算器、バンドパスフィルタ)から出力された音声波形をそれぞれ別個の増幅器で増幅したものを波形合成手段で合成して合成音声を生成する構成(たとえば特許文献1参照)や、複数の包絡線ピーク値を比較器で比較し、比較結果の値と特定のしきい値との比較結果に基づいて制御信号を出力し、この制御信号と他の制御信号との受信状態により音声信号の増幅状態を調整する構成(たとえば特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4668415号公報(段落[0078]〜[0081],[図11]等)
【特許文献2】特開2004−260590号公報(段落[0011],[0014]〜[0017],[図1]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2の構成でHDRオーディオを実現する場合、ダイナミックレンジのマッピングを行う前に、それぞれの波形生成手段が生成した音声波形を別個に増幅する必要があるため、音声波形の数だけ増幅器を設ける必要がある。また、上記特許文献1や特許文献2に記載の発明においては、音声合成手段は、マッピングを行う前にそれぞれの波形生成手段が生成した波形の増幅量の情報を取得していなければならない。そのため、波形合成手段とそれぞれの増幅器との間にバッファを個別に設けて波形生成手段が増幅量の設定等の演算処理を完了させるまでの間それぞれの波形のデータを一時的に記憶させなければならない。つまり、増幅器と同じ数のバッファが必要になる。そのため、特許文献1や特許文献2に記載の発明においては、音声波形の数が多くなればなるほど増幅器とバッファを多数設けなければならず、回路規模が大きくなり、処理も複雑化するという問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な回路構成と簡素な処理により、合成音声を適正な状態で生成し出力できるHDRオーディオシステムを実現できる音声合成装置、音声合成方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハイダイナミックレンジオーディオシステムにおいて用いられる、複数の音声波形を合成して合成音声を生成する音声合成装置において、複数の音声波形を合成して一つの前記合成音声を生成する音声合成手段と、該音声合成手段から出力された前記合成音声を増幅する一つの増幅手段と、音圧に関する情報を取得し、該取得した音圧に関する情報に基づいて前記増幅手段を制御して、該増幅手段における前記合成音声の増幅量を制御する増幅制御手段とを備え、前記増幅手段において増幅された前記合成音声を出力することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記音声合成手段に供給されるそれぞれの前記音声波形は、それぞれ別の波形生成手段において生成され、及び/又は、それぞれ別の入力系統を経て、前記音声合成手段に入力されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記一の増幅手段の前段に、前記音声合成手段において生成された前記合成音声を一時的に記録し、一時的に記録された前記合成音声を前記一の増幅手段に供給する一のバッファを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記増幅手段の後段に、前記増幅された前記合成音声の音響効果を調整する音響調整手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記合成音声は、遊技機の遊技時にスピーカから出力されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、ハイダイナミックレンジオーディオシステムにおいて用いられる、複数の音声波形を合成して合成音声を生成する音声合成方法において、複数の音声波形を合成して一つの前記合成音声を生成する音声合成手順と、該音声合成手順において出力された前記合成音声を一つの増幅手段において増幅する増幅手順と、音圧に関する情報を取得し、該取得した音圧に関する情報に基づいて前記増幅手順を制御して、該増幅手順における前記合成音声の増幅量を制御する増幅制御手順とを備え、前記増幅手順において増幅された前記合成音声を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、及び請求項6に記載の発明によれば、増幅手段は音声合成手段の後段に一つ設けられ、一つの増幅手順が音声合成手順の後段において実行されることにより、合成音声の出力チャンネルの数だけ増幅手段を設けて増幅を行えばよく、合成音声を生成する音声波形の数が多くなっても、簡素な回路構成や処理手順で合成音声の生成と出力を実現できる。また、増幅制御手段によって増幅手段を制御して、合成された合成音声の増幅量を制御することにより、合成音声を構成する音声波形の個々の音圧や音声波形相互間の音圧の比率を変えずに増幅することができる。即ち、音声波形の個々の音圧や音声波形相互間の音圧の比率を維持した状態で増幅し、合成音声を適正に出力することが可能となる。これにより、簡易な回路構成と簡素な処理により、合成音声を適正な状態で出力可能なHDRオーディオシステムを実現できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、それぞれ別の波形生成手段において生成され、及び/又は、それぞれ別の入力系統を経た音声波形が音声合成手段に入力されることにより、個々の音声波形の波形や音圧が異なる音声波形によって、HDRオーディオシステムにおいて音声波形の個々の音圧や音声波形相互間の音圧の比率を維持した状態で合成音声を生成することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、合成音声を増幅する一の増幅手段の前段に一のバッファを設けたことにより、増幅制御手段が合成音声の増幅量の演算を行い、演算結果を増幅手段に供給するまでの間、合成音声を一時的にバッファに記録しておくことができる。そして、合成音声を生成する音声波形の数が多くなっても、合成音声の出力チャンネルの数だけバッファを設ければ処理を実現できるので、回路構成や処理を簡素化できる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、増幅手段において増幅された合成音声を波形調整手段によって調整することにより、増幅された合成音声の波形を聴感上良好な状態に調整して出力することができるので、聴感の良好な合成音声を出力できるHDRオーディオシステムを形成できる。特に、合成音声の音圧のピークを抑制するための調整を行うことで、過大な信号が入力されることによる音質の劣化や機器の破損を防止することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、遊技機の音声出力に用いられるHDRオーディオシステムにおいて、簡易な回路構成と簡素な処理により、合成音声を適正な状態で出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態に係る音声合成システム及び音声合成装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図2】この発明の実施の形態に係る音声合成システム及び音声合成装置における合成音声の生成と増幅の原理を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[基本構成]
図1及び図2にこの発明の実施の形態を示す。
【0022】
図1は、この実施の形態に係る音声合成システム及び音声合成装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0023】
同図に示すこの音声合成システム1A及び音声合成装置1は、HDRオーディオシステムを実現するためのものである。そして、この音声合成システム1A及び音声合成装置1は、パチンコ機等の遊技機に設けられて、この遊技機の遊技時にスピーカ2から出力される音声としての合成音声を生成し、出力するために用いられる。ただし、この音声合成システム1A及び音声合成装置1は、遊技機以外のどのような用途に用いられるものであってもよく、例えば、遊技機以外の各種ゲーム機や、民生用オーディオシステム等に用いられるものであってもよい。
【0024】
図1に示す、この実施の形態の音声合成システム1Aは、この実施の形態の音声合成装置1と、スピーカ2とを備え、音声合成装置1とスピーカ2とは出力シールド3で接続されている。この実施の形態における音声合成装置1とスピーカ2は、遊技機(図示せず)に配設されて合成音声を音声出力する。出力シールド3は、音声合成装置1から出力された音声信号をスピーカ2に伝導させるための信号線である。なお出力シールド3は音声合成装置1とスピーカ2を物理的に接続する金属製シールド等でもよいし、ワイアレスシステムでもよい。
【0025】
図1に示す、この実施の形態の音声合成装置1は、例えば音声合成システム1Aの備えるCPU(図示せず)等の制御装置の各種制御によって機能する。
【0026】
図1に示すように、この実施の形態の音声合成装置1は、複数例えばn個(n>1)のオーディオトラック4,4,・・・4と、「音声合成手段」としての音声合成部5と、「増幅制御手段」としての増幅制御部6と、バッファ7と、「増幅手段」としてのアンプ8と、「音響調整手段」としてのエフェクタ9とを備えている。なお、この実施の形態において、バッファ7は音声合成部5に設けられている。また、図1に示すように、オーディオトラック4,4,・・・4は、それぞれ別の「波形生成手段」としての波形生成部11,11,・・・11と、それぞれ別の音圧情報生成部12,12,・・・12とを備えている。それぞれの波形生成部11,11,・・・11と音声合成部5とは、それぞれ別の「入力系統」としての波形供給経路13,13,・・・13で接続され、それぞれの音圧情報生成部12,12,・・・12と増幅制御部6とは、それぞれ別の音圧情報供給経路14,14,・・・14で接続されている。
【0027】
音声合成部5とアンプ8とは合成音声供給経路15で接続されている。増幅制御部6とアンプ8とは増幅情報供給経路16で接続されている。アンプ8とエフェクタ9とは増幅音声供給経路17で接続されている。エフェクタ9とスピーカ2は出力シールド3で接続されている。
【0028】
音声合成装置1を構成するオーディオトラック4,4,・・・4、音声合成部5、増幅制御部6、バッファ7、アンプ8、エフェクタ9、及び、オーディオトラック4,4,・・・4を構成する波形生成部11,11,・・・11、音圧情報生成部12,12,・・・12は、それぞれ、各種電子回路によって構成されていてもよいし、ハードウェアロジックによって構成されていてもよいし、CPU(図示せず)におけるプログラムの実行によって実現される機能手段として構成されていてもよい。なお、以下は説明の簡単のため、特に区別の必要がある場合を除き、本明細書においてはオーディオトラック4,4,・・・4をオーディオトラック4と、波形生成部11,11,・・・11を波形生成部11と、音圧情報生成部12,12,・・・12を音圧情報生成部12と、波形供給経路13,13,・・・13を波形供給経路13と、音圧情報供給経路14,14,・・・14を音圧情報供給経路14とそれぞれ記載する。
【0029】
オーディオトラック4は、それぞれ、CPU(図示せず)におけるプログラム(例えば、遊技機においては「大当たり」等の各種イベントの発生時に実行されるプログラム等)の実行結果に基づく音声出力命令を受けて、ディジタル信号の音声波形を独自に生成し出力する。具体的には、例えば、オーディオトラック4は火山の噴火音、オーディオトラック4は航空機のエンジン音、オーディオトラック4は博物館の室内音、のように、別々の音声を再生するための信号を、ディジタル信号の音声波形として生成して出力する。オーディオトラック4は、それぞれ、特定の同期周期(例えばCPU(図示せず)のクロック等を用いた同期周期)に用いて同時に音声波形を生成して出力することが、合成音声の生成上望ましい。
【0030】
波形生成部11は、それぞれ、上記の音声出力命令に基づいて、オーディオトラック4が出力する音声波形を独自に生成し、この音声波形をディジタル信号として出力する(以下、本明細書において、この、波形生成部11から出力される音声波形のディジタル信号も便宜的に「音声波形」と称する。)。波形生成部11が生成する音声波形は、例えば、発振回路(図示せず)等において出力された人工音声に基づくものでもよいし、自然音をサンプリングしたものに基づいて出力されるものでもよい。
【0031】
音圧情報生成部12は、それぞれ、上記の音声出力命令に基づいて、それぞれの波形生成部11が音声波形を出力する際の、音声波形の音圧に関する情報(即ちそれぞれの音声波形の増幅量)の情報(以下「音圧情報」と称する。)を生成する。なお、ここでの音圧情報とは、音声波形の音圧レベルを設定するための情報、例えば、音声波形を生成する電気信号の大きさなどを決定するための情報をいう。
【0032】
音声合成部5は、それぞれの波形生成部11から、それぞれの波形供給経路13を経て供給された複数の音声波形を合成して、一つの合成音声を生成する。具体的には、例えば、オーディオトラック4で生成された火山の噴火音、オーディオトラック4で生成された航空機のエンジン音、オーディオトラック4で生成された博物館の室内音、を音声合成部5において混合させた(つまり、それらの音声波形が複数同時に生成されている場合はそれらの波形を混合させた)合成音声を生成する。
【0033】
増幅制御部6は、それぞれの音圧情報生成部12で生成された、それぞれの音声波形の音圧情報を取得する。そして、増幅制御部6は、取得した音圧情報に基づいてアンプ8を制御して、アンプ8における合成音声の増幅量を制御するための各種演算を行う。具体的には、例えば、増幅制御部6は、取得した音圧情報に基づいて、合成音声の増幅率を設定するための増幅制御信号を生成してアンプ8に送信する。
【0034】
バッファ7は、音声合成部5から出力された合成音声を、増幅制御部6において音声波形の増幅量が決定され、決定された増幅量の情報がアンプ8に供給されるまでの間、一時的に記憶しておく機能を有する。
【0035】
アンプ8は、音声合成部5から出力され、バッファ7に一時的に記憶された合成音声の信号の供給を受け、この合成音声の信号を、増幅制御部6から出力された音声波形の増幅量の情報に基づいて増幅する。具体的には、アンプ8は、合成音声の信号を、構成するそれぞれの音声波形の相対的な増幅の比率を変えずに増幅率を上げる制御や、ピーク値の音声波形の持続状態を検出して増幅率の調整を行う制御等を行う。
【0036】
エフェクタ9は、アンプ8の後段に設けられ、増幅された合成音声に所定の音響効果を付与する。具体的には、エフェクタ9は、例えばリミッタやコンプレッサ等としての、音声信号のピーク値が所定の値以上になることを抑止するための機能や、イコライザ等としての、特定周波数帯の音声信号を減衰させる(又は強調させる)ための機能を有する。エフェクタ9は、これ以外に、歪みやノイズの除去、残響音の付加や削除等を行うための機能を有していてもよい。
【0037】
[合成音声の生成と増幅の原理]
図2に、この実施の形態の音声合成システム及び音声合成装置における合成音声の生成と増幅の原理を模式的に示す。この実施の形態においては、この原理に基づき、音声合成部5が合成音声を生成し、増幅制御部6の制御により、アンプ8が合成音声の増幅を行う。
【0038】
増幅制御部6は、単位時間ごとの、それぞれの音声波形の音圧情報を取得し、すべての音圧情報のピーク値のデータを取得する。
【0039】
例えば、図2に示すように、ある特定時間(ここでは時間t1)の合成音声を構築する音声波形が、オーディオトラック4で生成された火山の噴火音(180dB)音声波形21、オーディオトラック4で生成された航空機のエンジン音(120dB)の音声波形21、オーディオトラック4で生成された博物館の室内音(60dB)の音声波形21からなる合成音声23であった場合、波形生成部11,11,11と音圧情報生成部12,12,12は、これらの音圧関係を維持した状態で合成音声を増幅できるように音声波形と増幅制御情報を生成する。
【0040】
具体的には、それぞれのオーディオトラック4,
,4の波形生成部11,11,11において、それぞれが微少な時間帯(たとえば0.02秒)分の音声信号である、音声波形21,21,21が生成される。なお、図2に示す通り、生成された音声波形21,21,21の大きさは、合成後と同じ比率(つまり、音声波形21:音声波形21:音声波形21=180:120:60)となっている。
【0041】
一方、音圧情報生成部12,12,12は音声波形21の音圧情報22(180dB)、音声波形21の音圧情報22(120dB)、音声波形21の音圧情報22(60dB)のデータを生成する。
【0042】
この音声波形21,21,21は音声合成部5に供給され、各信号の大きさと比率を維持した状態で合成され、合成音声23の信号が生成される。この合成音声23の信号はバッファ7に一時的に記録される。一方、音圧情報22,22,22は増幅制御部6に供給され、増幅制御部6はこの音圧情報22,22,22に基づいて合成音声23全体を増幅するための増幅率を算出し、算出結果を増幅制御信号24としてアンプ8に送信する。具体的には、例えば、図2に示すように、音圧情報22,22,22を比較し、最も大きい音圧(音圧情報22の180dB)を基準に、合成音声23の増幅率(増幅量)を算出することが考えられる。
【0043】
アンプ8は、同じ時間(時間t1)の合成音声23の信号と増幅制御信号24を取得し、増幅制御信号24に基づいて合成音声23の信号を増幅する。これにより、火山の噴火音を180dB、航空機のエンジン音を120dB、博物館の室内音が60dBを同時に出力する、増幅された合成音声25の信号が生成されて、この増幅された合成音声25の信号がエフェクタ9を介してスピーカ2に供給される。
【0044】
そして、他の時間(例えば図2に示す時間t2、時間t3・・・)の合成音声(図示せず)も同様に生成、増幅されたのち増幅された合成音声(図示せず)がスピーカ2に供給され、スピーカ2から音声として出力される。
【0045】
なお、このような制御を行うためには、音圧制御の対象となる合成音声と、増幅制御情報を対応付けるためのデータ(例えば両者を整合させるためのID情報)を付与するための構成を音声合成部5や増幅制御部6が有していることや、アンプ8において合成音声と対応する増幅制御情報とを整合させるための構成(例えばID情報を照合するための構成や、処理する合成音声と増幅制御情報の数をカウントするための構成など)を備えていることが望ましい。また、アンプ8において増幅された音声信号は、アンプ8よりも後段側の構成が大きなビット数を扱える場合には、ダイナミックレンジの広い音声を出力するのに適した信号量(例えば16ビット(96dB)よりも大きなビット数)で構成されてもよい。
【0046】
[処理手順]
次に、この実施の形態の手順について説明する。
【0047】
まず、オーディオトラック4は、プログラムの音声出力命令等を受けて、それぞれの音声波形を生成して出力する(波形生成手順)。具体的には、それぞれのオーディオトラック4は、波形生成部11が音声波形を生成し、音圧情報生成部12がその音声波形の音圧情報を生成し、両者が関連付けられた状態で出力される。
【0048】
次に、音声合成部5は、それぞれの波形生成部11から出力され、波形供給経路13を経て入力された音声波形を合成して、一つの合成音声を生成する(音声合成手順)。生成された合成音声は、バッファ7に一時的に記憶される。
【0049】
次に、増幅制御部6は、それぞれの音圧情報生成部12が生成し、音圧情報供給経路14を経て供給された音圧情報に基づいて演算を行い、合成音声の増幅量を決定する(増幅制御手順)。そして、増幅制御部6は、この増幅量の情報をアンプ8に送信して合成音声の増幅を制御する(増幅制御手順)。
【0050】
次に、アンプ8は、バッファ7から合成音声を取得すると共に増幅制御部6から増幅量の情報を取得し、合成音声の増幅を行う(増幅手順)。ここで、アンプ8は合成音声を構成するそれぞれの音声波形の相対的な増幅の比率を保った状態で、合成音声を、出力する増幅量に増幅する。
【0051】
次に、アンプ8から出力された、増幅手順において増幅された合成音声の信号はエフェクタ9に供給される。エフェクタ9は、合成音声の信号の所定の値以上の信号値を所定の値未満に抑制する機能や、特定周波数帯の増幅信号の信号値を抑制又は強調する機能等により、合成音声の音響効果を調整する(音響調整手順)。
【0052】
上述の手順により、エフェクタ9から出力された合成音声の信号は、出力シールド3を経てスピーカ2に供給され、スピーカから音声として出力される。
【0053】
以上、この実施の形態においては、アンプ8は音声合成部5の後段に一つ設けられ、一つの増幅手順が音声合成手順の後段において実行されることにより、従来よりも簡素化された構成や手順によってHDRオーディオシステムを実現できる。
【0054】
即ち、この実施の形態においては、アンプ8は音声の出力チャンネルの数だけ設ければよく、従来技術のように、合成音声を生成するための音声波形の発生源であるオーディオトラック4の数だけ設ける必要がない。そのため、合成音声の発生源が出力チャンネルより多くてもアンプ8を多数設ける必要がないため、従来のHDRオーディオシステムに比べて回路規模が小さくて済む。
【0055】
また、この実施の形態においては、増幅制御部6によってアンプ8を制御して、合成された合成音声の増幅量を制御することにより、合成音声を構成する音声波形の個々の音圧や音声波形相互間の音圧の比率(即ち、合成波形を構成する個々の音声波形の大きさや音声波形相互間の比率)を変えずに増幅できる。即ち、従来のHDRオーディオシステムよりも回路規模の小さい構成において、音声波形の個々の音圧や音声波形相互間の音圧の比率を崩すことなく、合成音声を適正に出力することが可能となる。
【0056】
また、この実施の形態においては、従来技術において必要とされた、合成音声生成時のダイナミックレンジのマッピングの手順が不要になる。そのため、マッピングに際して必要となる、音声波形のうちマッピングされない部分(即ち、相対的に音圧が小さく再生対象から除外される部分)の音声信号を除去する手順が不要となり、従来技術よりも簡素な処理手順で合成音声の生成と出力を行うことができる。
【0057】
これらにより、この実施の形態においては、簡易な回路構成と簡素な処理により、合成音声を適正な状態で出力可能なHDRオーディオシステムを実現できる。
【0058】
この実施の形態においては、それぞれ別の波形生成部11において生成され、及び/又は、それぞれ別の波形供給経路13を経た音声波形が音声合成部5に入力されることにより、個々の音声波形の波形や音圧が異なる音声波形によって、HDRオーディオシステムにおいて音声波形の個々の音圧や音声波形相互間の音圧の比率を維持した状態で合成音声を生成することができる。
【0059】
この実施の形態においては、合成音声を増幅する一のアンプ8の前段に一のバッファ7を設けたことにより、従来技術のように、合成音声を生成するための音声波形の発生源であるオーディオトラック4の数だけバッファを設ける必要がない。即ち、この実施の形態においては、合成音声をアンプ8で増幅する構成であるため、アンプ8と同様、出力チャンネルの数だけバッファ7を設け、増幅制御部6がアンプ8における音声合成の増幅量の演算を行い、演算結果をアンプ8に供給するまでの間、合成音声を一時的に記録しておけば、合成音声を適正に増幅できる。これにより、従来のHDRオーディオシステムより簡素な回路構成で、合成音声を適正に出力することができる。
【0060】
この実施の形態においては、アンプ8において増幅された合成音声をエフェクタ9によって調整することにより、増幅された合成音声の波形を聴感上良好な状態に調整して出力することができるので、聴感の良好な合成音声を出力できるHDRオーディオシステムを形成できる。
【0061】
ここで、一般にHDRオーディオシステムの基本動作では、それぞれのオーディオトラック4の波形生成部11が生成する音声波形は、最大値がディジタル信号が表現できる最大音圧値となるように信号値が設定される場合が多い。そのために、それぞれの音声波形を適正な音圧に合成するために設定される圧縮率が、無限大以外の値に設定されている場合、アンプ8等の設定によっては、音声信号の信号値が適正なレベルを超えてしまい、レベルオーバが生ずることがある。それゆえ、この実施の形態においては、アンプ8の後段にエフェクタ9を設けることで、このレベルオーバの発生を抑止することができる。特に、エフェクタ9として、リミッタ、コンプレッサ、イコライザ等、音声信号全体や特定周波数帯の音声信号のピークを抑制する構成を用いることで、増幅された合成音声がレベルオーバを起こすことに起因して発生する、音質の劣化や過大入力によるスピーカ2の破損等を確実に防止できる。
【0062】
この実施の形態においては、遊技機の音声出力に用いられるHDRオーディオシステムにおいて、簡易な回路構成と簡素な処理により、合成音声を適正な状態で出力することができる。
【0063】
この実施の形態においては、音声合成システム1A及び音声合成装置1をHDRオーディオシステムに用いる構成としたが、HDRオーディオシステム以外のオーディオシステムに用いる構成であってもよい。
【0064】
この実施の形態においては、合成音声を生成するそれぞれの音声信号は、それぞれのオーディオトラック4の波形生成部11によって生成された信号としたが、これに限らず、それぞれ別のトラックに録音された音声や、それぞれ別のマイクロフォンでリアルタイムに集音した自然音など、どのようなものであってもよい。
【0065】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1・・・音声合成装置
5・・・音声合成部(音声合成手段)
6・・・増幅制御部(増幅制御手段)
7・・・バッファ
8・・・アンプ(増幅手段)
9・・・エフェクタ(音響調整手段)
11,11,・・・11・・・波形生成部(波形生成手段)
13,13,・・・13・・・波形供給経路(入力系統)
21,21,21・・・音声波形
23,25・・・合成音声
【要約】
【課題】簡易な回路構成と簡素な処理により、合成音声を適正な状態で生成し出力できるHDRオーディオシステムを実現できる音声合成装置、音声合成方法を提供する。
【解決手段】HDRオーディオシステムにおいて用いられる、複数の音声波形を合成して合成音声を生成する音声合成装置1において、複数の音声波形を合成して一つの合成音声を生成する音声合成部5と、音声合成部5から出力された合成音声を増幅する一つのアンプ8と、音圧に関する情報を取得し、取得した音圧に関する情報に基づいてアンプ8を制御して、アンプ8における合成音声の増幅量を制御する増幅制御部6とを備え、アンプ8において増幅された合成音声を出力する。
【選択図】図1
図1
図2