特許第5803105号(P5803105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5803105接着剤用樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着シート及びこれを接着層として含むプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803105
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】接着剤用樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着シート及びこれを接着層として含むプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20151015BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20151015BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20151015BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20151015BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20151015BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20151015BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20151015BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20151015BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C09J175/04
   C09J179/08 B
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J7/00
   B32B15/095
   B32B15/092
   H05K1/03 650
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2010-507738(P2010-507738)
(86)(22)【出願日】2009年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2009071415
(87)【国際公開番号】WO2010074135
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2008-332430(P2008-332430)
(32)【優先日】2008年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-155126(P2009-155126)
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 武
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】粟田 達也
(72)【発明者】
【氏名】家根 武久
(72)【発明者】
【氏名】麻田 裕子
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−302663(JP,A)
【文献】 特開2007−070481(JP,A)
【文献】 特開2003−113320(JP,A)
【文献】 特開2003−277711(JP,A)
【文献】 特開2008−074928(JP,A)
【文献】 特開2007−204715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C09J 175/04
C09J 179/08
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)、エポキシ樹脂(D)を含有する接着剤用樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂(A)の酸価(単位:当量/10g)が100以上1000以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)が、ポリウレタン系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂からなる群より選択された1種以上の樹脂であり、
該エポキシ樹脂(D)がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂であり、
該熱可塑性樹脂(A)と該無機充填材(B)を該接着剤用樹脂組成物における含有比率で合計25質量部含み、メチルエチルケトン52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤(但し、該熱可塑性樹脂(A)が前記濃度で前記混合溶剤に25℃において溶解しない場合は、前記混合溶剤に変えてジメチルアセトアミド52質量部とトルエン23質量
部からなる混合溶剤を用いる)を分散媒とする分散液(α)の揺変度(TI値)を測定したとき、液温25℃における揺変度(TI値)が3以上6以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)の酸価AV(β)(単位:当量/10g)と配合量AW(β)(単位:質量部)、エポキシ樹脂(D)のエポキシ価EV(γ)(単位:当量/10g)と配合量EW(γ)(単位:質量部)が以下に示す式(1)、
0.7≦{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}≦4.0 (1)
を満たす接着剤用樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物(β)が熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)を必須成分として含有し、
該熱可塑性樹脂(A)の酸価(単位:当量/10g)が100以上1000以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)が、ポリウレタン系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂からなる群より選択された1種以上の樹脂であり、
該熱可塑性樹脂(A)と該無機充填材(B)を該接着剤用樹脂組成物における含有比率で合計25質量部含み、メチルエチルケトン52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤(但し、該熱可塑性樹脂(A)が前記濃度で前記混合溶剤に25℃において溶解しない場合は、前記混合溶剤に変えてジメチルアセトアミド52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤を用いる)を分散媒とする分散液(α)の揺変度(TI値)を測定したとき、液温25℃における揺変度(TI値)が3以上6以下であり、
樹脂組成物(γ)がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(D)を必須成分
として含有し、
該樹脂組成物(β)に含まれる該熱可塑性樹脂(A)の酸価AV(β)(単位:当量/
10g)と配合量AW(β)(単位:質量部)、該樹脂組成物(γ)に含まれるエポキ
シ樹脂のエポキシ価EV(γ)(単位:当量/10g)と配合量EW(γ)(単位:質
量部)が以下に示す式(1)、
0.7≦{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}≦4.0 (1)
を満たす配合比で樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合する、
複数剤混合型接着剤用樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(D)が、接着剤用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の60質量%以上99.9質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填材(B)の配合量が熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項5】
前記溶剤(C)の配合量が接着剤用樹脂組成物を100質量部としたとき、60質量部以上85質量部以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項6】
窒素原子を含有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項7】
前記窒素原子を含有するエポキシ樹脂がグリシジルジアミン構造を有することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物を含有する接着剤。
【請求項9】
請求項1〜7いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂(A)、前記無機充填材(B)、前記エポキシ樹脂(D)およびこれらに由来する反応生成物を含有する接着シート。
【請求項10】
請求項8に記載の接着剤または請求項9に記載の接着剤シートを用いてなる接着層を含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シートライフ等に優れた樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着シートおよびこれを接着層として含むプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で接着剤は使用されているが使用目的の多様化により、従来使用されてきた接着剤よりも各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属への接着性、ガラスエポキシへの接着性、耐熱性、耐湿性、シートライフ等、更なる高性能化が求められている。例えば、フレキシブルプリント配線板(以下FPCと略すことがある)をはじめとする回路基板用の接着剤としては、エポキシ/アクリルブタジエン系接着剤や、エポキシ/ポリビニルブチラール系接着剤等が使用されている。これらの回路基板用接着剤には、ハンダ耐熱性、接着性、加工性、電気特性、保存性が求められる。
【0003】
特に最近の鉛フリーハンダへの対応、FPCの使用環境から、より高度な耐熱性を有する接着剤が求められている。また、配線の高密度化、FPC配線板の多層化、作業性から、高湿度下での耐ハンダ性、高温高湿度下での接着性が強く求められている。従来のエポキシ/アクリルブタジエン系接着剤や、エポキシ/ポリビニルブチラール系接着剤では、特に、高温高湿度下での接着性、加工性が不良で、また、金属やプラスチックフィルムの接着性も十分ではなかった。また常温でも流通できるような安定したシートライフの確保はできていなかった(特許文献1、2、3、4参照)。
【0004】
特許文献5においては、特定のポリエステル・ポリウレタンとエポキシ樹脂を主成分とする接着剤用樹脂組成物が開示されている。ここに示されている組成物によって、シートライフ、高温下及び高湿度下での接着性が向上可能であるが、高温且つ高湿度下での接着性を十分に満足するものでは無かった。
【0005】
特許文献6においても、特定のポリエステル・ポリウレタンとエポキシ樹脂を主成分とする接着剤用樹脂組成物が開示されている。ここに示されている組成物によって、高温下及び高湿度下での接着性、プラスチックフィルムを補強板に用いた際の耐加湿半田性は向上可能であるが、高温且つ高湿度下での接着性、金属を補強板に用いた際の耐加湿半田性を十分に満足するものではなかった。また、常温や40℃保管後の耐加湿半田性、高温且つ高湿度下での接着性が著しく低下するものであり、安定したシートライフが確保できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−291964号公報
【特許文献2】特開2003−313526号公報
【特許文献3】特開2005−139387号公報
【特許文献4】特開2005―139391号公報
【特許文献5】特開平11―116930号公報
【特許文献6】特開2008−205370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題はこれら従来の接着剤が抱えている各問題点を改良することであり、各種プラスチックフィルムや、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属、ガラスエポキシへの接着性を維持しつつ、高湿度下での鉛フリーハンダにも対応できる高度の耐湿熱性、高温高湿度下での接着性に優れた接着剤を提供すること、さらには前記接着剤から得たBステージの接着シートがたとえ高温高湿下で流通された後に使用されても良好な接着特性の維持が可能なシートライフが良好な接着剤シートを提供すること、にある。また、前記接着剤または接着シートから得られた接着層を含むプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する為に、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成からなる。
(1) 熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)、エポキシ樹脂(D)を含有する接着剤用樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂(A)の酸価(単位:当量/10g)が100以上1000以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、
該エポキシ樹脂(D)がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂であり、
該熱可塑性樹脂(A)と該無機充填材(B)を該接着剤用樹脂組成物における含有比率で合計25質量部含み、メチルエチルケトン52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤(但し、該熱可塑性樹脂(A)が前記濃度で前記混合溶剤に25℃において溶解しない場合は、前記混合溶剤に変えてジメチルアセトアミド52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤を用いる)を分散媒とする分散液(α)の液温25℃における揺変度(TI値)が3以上6以下である、
接着剤用樹脂組成物。
(2) 樹脂組成物(β)が熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)を必須成分として含有し、
該熱可塑性樹脂(A)の酸価(単位:当量/10g)が100以上1000以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)と該無機充填材(B)を該接着剤用樹脂組成物における含有比率で合計25質量部含み、メチルエチルケトン52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤(但し、該熱可塑性樹脂(A)が前記濃度で前記混合溶剤に25℃において溶解しない場合は、前記混合溶剤に変えてジメチルアセトアミド52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤を用いる)を分散媒とする分散液(α)の液温25℃における揺変度(TI値)が3以上6以下であり、
樹脂組成物(γ)がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(D)を必須成分として含有し、
該樹脂組成物(β)に含まれる該熱可塑性樹脂(A)の酸価AV(β)(単位:当量/10g)と配合量AW(β)(単位:質量部)、該樹脂組成物(γ)に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ価EV(γ)(単位:当量/10g)と配合量EW(γ)(単位:質量部)が以下に示す式(1)、
0.7≦{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}≦4.0 (1)
を満たす配合比で樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合する、
二液型接着剤用樹脂組成物。
(3) 前記エポキシ樹脂(D)が、接着剤用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の60質量%以上99.9質量%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の接着剤用樹脂組成物。
(4) 前記無機充填材(B)の配合量が熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下であることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
(5) 前記溶剤(C)の配合量が接着剤用樹脂組成物を100質量部としたとき、60質量部以上85質量部以下であることを特徴とする請求(1)〜(4)いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
(6) 窒素原子を含有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
(7) 前記窒素原子を含有するエポキシ樹脂がグリシジルジアミン構造を有することを特徴とする(1)〜(6)いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
(8) (1)〜(7)いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物を含有する接着剤。
(9) (1)〜(7)いずれかに記載の接着剤用樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂(A)、前記無機充填材(B)、前記エポキシ樹脂(D)およびこれらに由来する反応生成物を含有する接着シート。
(10) (8)に記載の接着剤または(9)に記載の接着剤シートを用いてなる接着層を含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、PETフィルム等の各種プラスチックフィルムおよび銅、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属に対する高い接着性、高湿度下での鉛フリーハンダにも対応できる高度の耐湿熱性、高温高湿度下での接着性に優れた接着剤を得ることができ、かつBステージのシートがたとえ高温高湿下で流通された後に使用されても良好な接着特性の維持が可能なシートライフが良好な樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着シートおよびこれを接着層として含むプリント配線板を提供することができる。また、本発明の好ましい実施態様においては、各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属への接着性、ガラスエポキシへの接着性にも優れる樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着シートおよびこれを接着層として含むプリント配線板を提供することができる。さらに、本発明の好ましい実施態様においては特にアルミ、ステンレス鋼などの金属への接着性、耐湿熱性に優れ、接着物を高温高湿環境下に長期間放置後も高い剥離強度を維持しているという点でさらに優れた特性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0011】
<分散液(α)>
本発明において、分散液(α)の揺変度(TI値)は、本発明の接着剤用樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)と無機充填材(B)の組み合わせおよび配合比が適切であるかを判定する指針となる。分散液(α)の揺変度(TI値)は3以上6以下であり、より好ましくは3.5以上5以下である。分散液(α)に含有される無機充填材(B)粒子間や熱可塑性樹脂(A)と無機充填剤(B)の相互作用が高いと分散液(α)の揺変度が高くなる傾向にある。揺変度が3未満であると無機充填材(B)粒子間や無機充填材(B)と熱可塑性樹脂(A)との相互作用が低下し耐熱性が低下する傾向にあり、また無機充填材が沈降しやすく安定したポットライフが得られない傾向にある。揺変度が6を超えるとハンドリング性が低下し均一に塗工することが困難になる傾向にある。
【0012】
分散液(α)は、本発明の接着剤用樹脂組成物における含有比率で熱可塑樹脂(A)と無機充填材(B)を合計25質量部、メチルエチルケトンを52質量部、トルエンを23質量部の配合比で混合し、さらに直径0.5〜2mmのガラスビーズを分散液(α)の体積の約1/3程度加え、ペイントシェイカーを用いて室温20〜25℃の室内において4時間分散させた後、ガラスビーズを取り除くことにより調製する。但し、該熱可塑性樹脂(A)が前記濃度で前記溶剤に25℃において溶解しない場合は、前記溶剤に変えてジメチルアセトアミド52質量部、トルエン23質量部からなる混合溶媒を用いて調製したものを分散液(α)とする。
【0013】
分散液(α)の揺変度(TI値)は以下の方法により求める。分散液(α)を容量225mLのガラス製広口瓶(通称:マヨネーズ瓶)にとり、測定温度25±1℃でBL型粘度計(東機産業(株)製)を用いて回転数6rpmと60rpmにおける粘度(以下それぞれBL(6)、BL(60)と略記する場合がある。単位:dPa・s。)を測定し、BL(6)が100以下の場合は下記式(2)、
揺変度(TI値)=BL(6)/BL(60) (2)
により揺変度(TI値)を求める。また、BL(6)が100を超える場合には、BH型粘度計(東機産業(株)製)を用いて2rpmと20rpmで粘度(以下それぞれBH(2)、BH(20)と略記する場合がある。単位:dPa・s。)を測定し、下記式(3)、
揺変度(TI値)=BH(2)/BH(20) (3)
により揺変度(TI値)を求める。なお、BL型粘度計およびBH型粘度計による粘度測定の際に使用するローターは、各粘度計の取扱説明書の記載に従い、No.2〜4のいすれかを選択する。
【0014】
<樹脂組成物(β)>
本発明に用いる樹脂組成物(β)は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)、さらに必要に応じてその他の成分を前述した割合で配合し、ロールミル、ミキサー、ペイントシェイカー等で均一に混合することにより得られ、十分な分散が得られる方法であれば分散方法に特に制限はない。さらに、樹脂組成物(β)の固形分濃度は15質量%以上40質量%以下が好ましい。固形分濃度が15質量%未満であると、接着剤の厚みが薄くなり、耐熱性、接着強度が低下し、40質量%より大きくなると、溶液の粘度が高くなりすぎるために、均一に塗工することが困難になる傾向にある。
【0015】
<樹脂組成物(γ)>
本発明に用いる樹脂組成物(γ)はエポキシ樹脂(D)のみから構成されてもいいが、さらに溶剤(C)を含有することが好ましい。樹脂組成物(γ)に含有される溶剤(C)は、樹脂組成物(γ)に含有する成分を溶解できるものであれば良く、特に制限されない。また、樹脂組成物(γ)の固形分濃度は15質量%以上80質量%以下が好ましく、25質量%以上75質量%以下がより好ましく、35質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。固形分濃度が15質量%未満であると、溶剤揮散後の接着剤の厚みが薄くなり、耐熱性、接着強度が低下する傾向にある。固形分濃度が80質量%より大きくなると、接着剤用樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるために、均一に塗工することが困難になる傾向にある。
【0016】
<接着剤用樹脂組成物>
本発明の接着剤用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)、エポキシ樹脂(D)を含有する一液型接着剤用樹脂組成物であっても、複数の剤に分け使用に先立ち混合する複数剤混合型接着剤用樹脂組成物であっても良い。複数剤混合型とすることにより、長期間の保存が可能になるとの利点ある。一方、複数剤混合型の場合、接着剤として用いる際に複数剤を正確な配合比でかつ均一に混合する必要があり、剤数が増すほどにその工程の困難度も大きくなる。従って、複数剤混合型の中でも、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)を含有する樹脂組成物(β)とエポキシ樹脂(D)を含有する樹脂組成物(γ)からなる二剤混合型が好ましく、均一混合の容易さから二液混合型が更に好ましい。
【0017】
樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)から接着剤用樹脂組成物を得る場合、該樹脂組成物(β)に含まれる該熱可塑性樹脂(A)の酸価AV(β)(単位:当量/10g)と配合量AW(β)(単位:質量部)、該樹脂組成物(γ)に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ価EV(γ)(単位:当量/10g)と配合量EW(γ)(単位:質量部)が以下に示す式(1)、
0.7≦{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}≦4.0 (1)
を満たす配合比で樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合する。{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}はより好ましくは0.8以上3.5以下であり、さらに好ましくは0.9以上3.0以下である。0.7未満であると、熱可塑性樹脂(A)とエポキシ樹脂との架橋が不十分になり耐熱性が低下する傾向にあり、4.0より大きくなると、未反応のエポキシ樹脂が多量に残存し、耐熱性や耐湿性が低下する傾向にある。
【0018】
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂等が挙げられ、好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で用いても、二種以上を併用してもかまわない。
【0019】
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量は、5×10以上1×10以下である。数平均分子量が5×10未満だと塗布直後の密着性が不充分で作業性が悪くなり、数平均分子量が1×10を超えると、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られないことがある。好ましくは下限分子量8×10、さらに望ましくは下限分子量1×10、好ましくは上限分子量5×10、さらに望ましくは上限分子量3×10である。
【0020】
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)の酸価(単位:当量/10g)は100以上1000以下である。酸価が100当量/10g未満だと、硬化後の金属系基材への密着性が不充分になり、また架橋度が低く耐熱性が低下する傾向にある。酸価が1000当量/10gを超えると溶剤に溶解した際のワニスの保存安定性が低下し、また架橋反応が常温下で進行し易く、安定したシートライフが得られないといった傾向にある。また、エステル結合やウレタン結合等の耐久性に悪影響を与えることも予想される。好ましくは酸価の下限は250当量/10g、より好ましくは酸価の下限は300当量/10g、さらに好ましくは酸価の下限は350当量/10gである。好ましい上限は900当量/10g、より好ましい上限は800当量/10g、さらに好ましい上限は700当量/10gである。
【0021】
(ポリエステル系樹脂)
本発明の熱可塑性樹脂(A)として用いるポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、−10℃以上60℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が−10℃未満だと、高温での接着性が不十分になる傾向がある。ガラス転移温度が60℃を超えると、基材との貼り合せが不十分になり、また常温での弾性率が高くなり、常温での接着性が不十分になる傾向がある。好ましくはガラス転移温度の下限は−5℃、より好ましくはガラス転移温度の下限は0℃、さらに好ましくはガラス転移温度の下限は5℃である。好ましい上限は55℃、より好ましい上限は50℃、さらに好ましい上限は45℃である。
【0022】
該ポリエステル系樹脂は、組成における全酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族カルボン酸が60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。芳香族カルボン酸が100モル%を占めても良い。芳香族カルボン酸が60モル%未満の場合、塗膜の凝集力が弱く、各種基材への接着強度の低下が見られる。
【0023】
芳香族カルボン酸の例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できる。また、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸、などのスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸、それらの金属塩、アンモニウム塩などのスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4−ビス(p−ヒドロキシフェニル)バレリック酸などの芳香族オキシカルボン酸等を挙げることができる。これらのうちでもテレフタル酸、イソフタル酸、およびその混合物が塗膜の凝集力を上げる点で特に好ましい。
【0024】
なおその他の酸成分としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0025】
一方、グリコール成分は脂肪族グリコール、脂環族グリコール、芳香族含有グリコール、エ−テル結合含有グリコ−ルなどよりなることが好ましく、脂肪族グリコ−ルの例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3,−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等を挙げることができ、脂環族グリコールの例としては、1,4−シクロヘキサンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメチロール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、等を挙げることができる。エ−テル結合含有グリコ−ルの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド付加物、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加物も必要により使用しうる。芳香族含有グリコールの例としてはパラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコ−ルのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等の、ビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類等を例示できる。
【0026】
また、分子構造の中に、水酸基とカルボキシル基を有する、オキシカルボン酸化合物もポリエステル原料として使用することができ、5−ヒドロキシイソフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニチルアルコール、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4−ビス(p−ヒドロキシフェニル)バレリック酸等を例示できる。
【0027】
本発明で使用されるポリエステル系樹脂中には、必要により分岐骨格を導入する目的で、0.1モル%以上5モル%以下の3官能以上のポリカルボン酸類および/又はポリオール類を共重合しても構わない。特に硬化剤と反応させて硬化塗膜を得る場合、分岐骨格を導入することにより、樹脂の末端基濃度(反応点)が増え、架橋密度が高い、強度な塗膜を得ることができる。その場合の3官能以上のポリカルボン酸の例としてはトリメリット酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などの化合物等、が使用でき、一方3官能以上のポリオ−ルの例としてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用できる。3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを使用する場合は、全酸成分あるいは全グリコ−ル成分に対し0.1モル%以上5モル%以下、好ましくは0.1モル%以3モル%以下の範囲で共重合するのが好ましく、5モル%を越えると塗膜の破断点伸度などの力学物性の低下が生じることがあり、また重合中にゲル化を起こす可能性がある。
【0028】
本発明で使用されるポリエステル系樹脂に酸価を導入する方法としては、重合後に酸付加によってカルボン酸を樹脂に導入する方法が挙げられる。酸付加にモノカルボン酸、ジカルボン酸、多官能カルボン酸化合物を用いると、エステル交換により分子量の低下が起こる可能性があり、カルボン酸無水物を少なくとも一つもった化合物を用いることが好ましい。酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、オルソフタル酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などの化合物等が使用できる。本発明で使用されるポリエステル系樹脂を構成する全酸成分を100モル%としたとき、10モル%以上の酸付加を行うと、ゲル化を起こすことがあり、またポリエステルの解重合を起こし樹脂分子量を下げてしまうことがある。酸付加はポリエステル重縮合後、バルク状態で直接行う方法と、ポリエステルを溶液化し付加する方法がある。バルク状態での反応は、速度が速いが、多量に付加するとゲル化が起こることがあり、かつ高温での反応になるので、酸素ガスを遮断し酸化を防ぐなどのケアが必要である。一方、溶液状態での付加は、反応は遅いが、多量のカルボキシル基を安定に導入することができる。
【0029】
(ポリウレタン系樹脂)
本発明に用いるポリウレタン系樹脂のガラス転移温度は、−10℃以上60℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が−10℃未満だと、高温での接着性が不十分になる傾向がある。ガラス転移温度が60℃を超えると、基材との貼り合せが不十分になり、また常温での弾性率が高くなり、常温での接着性が不十分になる傾向がある。好ましくはガラス転移温度の下限は−5℃、より好ましくはガラス転移温度の下限は0℃、さらに好ましくはガラス転移温度の下限は5℃である。好ましい上限は55℃、より好ましい上限は50℃、さらに好ましい上限は45℃である。
【0030】
本発明に用いるポリウレタン系樹脂は、その原料としてポリエステルポリオール、ポリイソシアネート、及び鎖延長剤を使用することが好ましい。酸価を導入する方法としては、ポリウレタン系樹脂を構成するポリエステルポリオールに予め酸価を付与する方法や、鎖延長剤にカルボン酸を含有するジオールを使用する方法等がある
【0031】
本発明に用いるポリウレタン系樹脂の原料として用いる前記ポリエステルポリオールは、数平均分子量を除き、上述したポリエステル系樹脂と同様であることが好ましい。本発明に用いるポリエステルポリオールの数平均分子量は、5×10以上5×10以下である。数平均分子量が5×10未満だとウレタン基濃度が高くなり高温高湿下での接着性が低下する傾向にあり、数平均分子量が5×10を超えると、ポリウレタンの重合性が低下し、重合不良を起こすことがある。好ましくは下限分子量8×10、さらに望ましくは下限分子量1×10、好ましくは上限分子量3.5×10、さらに望ましくは上限分子量2×10である。
【0032】
本発明に用いるポリウレタン系樹脂の製造に使用するポリイソシアネートは、ジイソシアネート、その二量体(ウレトジオン)、その三量体(イソシアヌレート、トリオール付加物、ビューレット)等の一種、またはそれら二種以上の混合物であってもよい。例えば、ジイソシアネート成分としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−キシリレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネ−トメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられるが、黄変性の問題から、脂肪族・脂環族のジイソシアネートが好ましい。さらに入手の容易さと経済的な理由で、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0033】
本発明に用いるポリウレタン系樹脂を製造する上で、必要により鎖延長剤を使用しても良い。鎖延長剤としては、ポリエステルポリオールの構成成分として既に記載した低分子量ジオールや、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等の一つのカルボン酸と二つの水酸基を有する化合物等が挙げられる。その中で、酸価導入の容易さと、汎用溶剤への溶解性からジメチロールブタン酸が好ましい。また、分岐を導入する方法として、トリメチロールプロパンの使用も好ましい。
【0034】
本発明に用いるポリウレタン系樹脂の製造方法としては、前記ポリエステルポリオール及び前記ポリイソシアネート、必要により鎖延長剤を一括して反応容器に仕込んでも良いし、分割して仕込んでも良い。いずれにしても、系内のポリエステルポリオール、鎖延長剤の水酸基価の合計と、ポリイソシアネートのイソシアネート基の合計について、イソシアネート基/水酸基の官能基の比率が1以下で反応させる。またこの反応は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒の存在下または非存在下に反応させることにより行なうことができる。その溶媒としては、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチルなど)、エーテル系溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、ケトン系溶媒(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)およびこれらの混合溶媒が挙げられるが、環境負荷の低減の観点から、酢酸エチルやメチルエチルケトンが好ましい。反応装置としては、撹拌装置の具備した反応缶に限らず、ニーダー、二軸押出機のような混合混練装置も使用できる。
【0035】
ウレタン反応を促進させる為、通常のウレタン反応において用いられる触媒、たとえば錫系触媒(トリメチルチンラウレート、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジヒドロキサイド、スタナスオクトエートなど)、鉛系触媒(レッドオレート、レッド−2−エチルヘキソエートなど)、アミン系触媒(トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセンなど)等を使用することができるが、有害性の観点からアミン系触媒が好ましい。
【0036】
(ポリアミドイミド系樹脂)
本発明に用いるポリアミドイミド系樹脂のガラス転移温度は、30℃以上160℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃未満だと、耐熱性が不足する傾向がある。ガラス転移温度が160℃を超えると、樹脂が硬く脆い為、接着強度が不十分になる傾向がある。好ましくはガラス転移温度の下限は40℃、より好ましくはガラス転移温度の下限は50℃であり、好ましい上限は150℃、より好ましい上限は140℃である。
【0037】
本発明に用いるポリアミドイミド系樹脂は、その原料として酸成分とジイソシアネートもしくはジアミンとを反応させて得られるポリアミドイミド系樹脂であり、酸成分は芳香環を有するポリカルボン酸の酸無水物、カルボキシル基を両末端に有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムを使用することが好ましい。
【0038】
本発明に用いるポリアミドイミド系樹脂を製造する際、芳香環を有するポリカルボン酸の酸無水物はイミド環形成の役割をはたす。芳香環を有するポリカルボン酸の酸無水物としては、例えば、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、1,4−ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のアルキレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,
5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物等が挙げられ、これらは単独で用いても、二種以上併用してもかまわない。
【0039】
該カルボキシル基を両末端に有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムは、ポリアミドイミド樹脂に可とう性や接着性を付与するために使用し、全酸成分を100モル%としたとき、3モル%以上15モル%以下が好ましく、より好ましくは3モル%以上10モル%以下である。共重合量が3モル%未満であると可とう性や接着性が発現できず、15モル%を超えると溶剤溶解性が低下する傾向がある。
【0040】
本発明に用いるポリアミドイミド系樹脂の製造に用いられる酸成分としては本発明の効果を損なわない程度にその他の酸成分として、脂肪族あるいは脂環族の酸無水物やジカルボン酸を用いることができる。例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロピロメリット酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,
6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物等の酸無水物やポリエステル系樹脂で記載したものと同様のジカルボン酸等挙げられ、これらは単独で用いても、二種以上併用してもかまわない。
【0041】
本発明に用いるポリアミドイミド系樹脂を製造する際に使用するジイソシアネートもしくはジアミンとしては、ポリウレタン系樹脂で記載したものと同様のジイソシアネートやこれらのジイソシアネートに対応するジアミンが挙げられ、これらは単独で用いても、二種以上併用して用いてもかまわない。
【0042】
本発明に用いるポリアミドイミド系樹脂には、耐熱性向上を目的として官能基を3個以上有する化合物を共重合することが可能である。例えばトリメシン酸等の多官能カルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等の水酸基を有するジカルボン酸、5−アミノイソフタル酸等のアミノ基を有するジカルボン酸、グリセリン、ポリグリセリン等の水酸基を3個以上有するもの、トリス(2−アミノエチル)アミン等のアミノ基を3個以上有するものが挙げられ、これらの中で反応性、溶解性の観点から5−ヒドロキシイソフタル酸等の水酸基を有するジカルボン酸、トリス(2−アミノエチル)アミン等のアミノ基を3個以上有するものが好ましい。
【0043】
本発明に用いるポリアミドイミド系樹脂には、本発明の効果を損なわない程度に、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ダイマー酸、ポリシロキサンなどを共重合することができる。その場合、耐熱性や溶解性、接着性といった本発明の効果を損なわないよう共重合量を適宜選択する必要がある。
【0044】
本発明のポリアミドイミド樹脂の重合に用いることのできる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、この中では、沸点の低さと重合の効率の良さから、ジメチルアセトアミドが好ましい。また重合後は重合に用いた溶剤もしくは他の低沸点溶剤で希釈して不揮発分濃度や溶液粘度を調整することができる。
【0045】
低沸点溶剤としては、トルエン、キシレン、などの芳香族系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤などが挙げられる。
【0046】
<無機充填材(B)>
本発明に用いる無機充填材(B)としては、分散液(α)にチキソトロピー性を付与できるものであれば良く、特に制限はない。このような無機充填材としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化タンタル、ジルコニア、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛、酸化ガリウム、スピネル、ムライト、コーディエライト、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタン酸アルミニウム、イットリア含有ジルコニア、ケイ酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、チタン酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、硫酸バリウム、有機ベントナイト、カーボンなどを使用することができ、これらは単独で用いても、二種以上併用してもかまわない。接着剤用樹脂組成物の透明性、機械特性、耐熱性、チキソトロピー性付与の観点からシリカが好ましく、特に3次元網目構造をとる煙霧状シリカが好ましい。また、疎水性を付与する上でモノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン、シリコーンオイル等で処理を行った疎水性シリカの方が好ましい。無機充填材(B)として煙霧状シリカを用いる場合、一次粒子の平均径は30nm以下が好ましく、より好ましくは25nm以下である。一次粒子の平均径が30nmを超えると、粒子間や樹脂との相互作用が低下し耐熱性が低下する傾向にある。なおここで言う一次粒子の平均径とは走査型電子顕微鏡を用いて得た一次粒子像から無作為抽出した粒子100個の円相当直径の平均値である。
【0047】
無機充填材(B)の配合量は熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して10質量部以上50質量部以下が好ましく、より好ましくは13質量部以上45質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以上40質量部以下である。10質量部未満であると耐熱性を向上させる効果が発揮しない場合があり、一方50質量部を越えるとシリカの分散不良が生じたり溶液粘度が高くなりすぎて作業性に不具合が生じたり或いは接着性が低下するおそれがある。
【0048】
<溶剤(C)>
本発明に用いる溶剤(C)は、単一成分からなるものであっても2種以上の複数成分からなる混合溶剤であっても良い。溶剤(C)は熱可塑性樹脂(A)およびエポキシ樹脂(D)を溶解できるものであれば、特に制限されない。このような溶剤としては、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、等が挙げられ、作業性の観点から好ましくは、ジメチルアセトアミド、エタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルが挙げられ、乾燥容易性の観点からさらに好ましくは、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用しても構わない。
【0049】
<エポキシ樹脂(D)>
本発明の接着剤樹脂組成物には、必須成分としてジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(D)を含む。剛直なジシクロペンタジエン骨格を持つエポキシ樹脂からなる硬化塗膜は、極めて吸湿率が小さく、また、硬化塗膜の架橋密度を下げて、剥離時の応力を緩和させることができる為、耐加湿半田性が向上する。エポキシ樹脂(D)の具体例として、DIC製HP7200シリーズが挙げられる。
【0050】
ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(D)の配合量は接着剤用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の60質量%以上が好ましく、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(D)を60質量%以上含むことで、より優れた耐加湿半田性を発現することができる。
【0051】
本発明の接着剤用樹脂組成物には、エポキシ樹脂として、さらに窒素原子を含有するエポキシ樹脂を含有させると、比較的低い温度の加熱で接着剤組成物の塗膜をBステージ化することができ、かつBステージフィルムの流動性を抑えて接着操作における作業性を向上させることができる傾向にあり、またBステージフィルムの発泡を抑える効果が期待でき、好ましい。窒素原子を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等のグリシジルアミン系などが挙げられる。これら窒素原子を含有するエポキシ樹脂の配合量はエポキシ樹脂全体の20質量%以下であることが好ましい。配合量が20質量%より多くなると、過度に剛直性が高くなり、接着性が低下する傾向にあり、また、接着シート保存中に架橋反応が進み易く、シートライフが低下する傾向にある。より好ましい配合量の上限は10質量%、さらに好ましくは5質量%である。
【0052】
本発明に用いるエポキシ樹脂として、その他のエポキシ樹脂も併用することが出来る。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルタイプ、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ、トリグリシジルイソシアヌレート、あるいは3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイド等が挙げられ、一種単独で用いても二種以上を併用しても構わない。
【0053】
本発明に用いるエポキシ樹脂の硬化反応に、硬化触媒を使用することができる。例えば2−メチルイミダゾールや1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールや2−フェニル−4−メチルイミダゾールや1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物やトリエチルアミンやトリエチレンジアミンやN’−メチル−N−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジンや1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7や1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5や6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7等の三級アミン類及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸や四級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物、トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートやジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート等のカチオン触媒、トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。これらのうちが1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7や1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5や6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7等の三級アミン類及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸等や四級化テトラフェニルボレート塩でアミン塩にした化合物が熱硬化性及び耐熱性、金属への接着性、配合後の保存安定性の点で好ましい。その際の配合量は熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜1.0重量部の配合量であることが好ましい。この範囲であれば熱可塑性樹脂(A)とエポキシ樹脂の反応に対する触媒効果が一段と増し、強固な接着性能を得ることができる。
【0054】
<その他の添加剤>
本発明の接着剤用樹脂組成物は、そのままで、あるいは更に各種硬化性樹脂、添加剤を配合して接着剤組成物とすることができる。硬化性樹脂としてはシリコーン樹脂、アミノ樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0055】
フェノール系樹脂としてはたとえばアルキル化フェノール類、クレゾール類のホルムアルデヒド縮合物を挙げることが出来る。具体的にはアルキル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
【0056】
アミノ樹脂としては、例えば尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどのホルムアルデヒド付加物、さらにこれらの炭素原子数が1〜6のアルコールによるアルキルエーテル化合物を挙げることができる。具体的にはメトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N-エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンであり、それぞれ単独または併用して使用することができる。
【0057】
イソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0058】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t-ブタノール、t-ペンタノールなどの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0059】
本発明の接着剤用樹脂組成物には必要に応じてシランカップリング剤を配合しても良い。シランカップリング剤を配合することにより金属への接着性や耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されないが、不飽和基を有するもの、グリシジル基を有するもの、アミノ基を有するものなどが挙げられる。不飽和基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等を挙げることができる。グリシジル基を有するシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち耐熱性の観点からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有したシランカップリング剤がさらに好ましい。シランカップリング剤の配合量は熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.5〜20重量部の配合量であることが好ましい。シランカップリング剤の配合量が0.5重量部未満であると得られる接着剤の耐熱性不良となる場合があり、20重量部を越えると耐熱性不良や接着性不良となる場合がある。
【0060】
本発明の接着剤用樹脂組成物には必要に応じ、臭素系、リン系、窒素系、水酸化金属化合物等の難燃剤、レベリング剤、顔料、染料等の添加剤を適宜配合することができる。
【0061】
<接着シート>
本発明において、接着シートとは、本発明の接着剤用樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂(A)、前記無機充填材(B)、前記エポキシ樹脂(D)およびこれらに由来する反応生成物を含有するものである。本発明における接着シートは、本発明の接着剤用樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂(A)、前記無機充填材(B)、前記エポキシ樹脂(D)およびこれらに由来する反応生成物を含有する層単独からなるシートであってもよく、あるいは、基材と本発明の接着剤用樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂(A)、前記無機充填材(B)、前記エポキシ樹脂(D)およびこれらに由来する反応生成物を含有する層からなるシートであってもよく、あるいは、基材と本発明の接着剤用樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂(A)、前記無機充填材(B)、前記エポキシ樹脂(D)およびこれらに由来する反応生成物を含有する層と離型基材からなるシートであってもよい。本発明の接着剤用樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂(A)、前記無機充填材(B)、前記エポキシ樹脂(D)およびこれらに由来する反応生成物を含有する層は、基材の片面に形成されていても両面に形成されていてもよい。また、接着シートには、微量または少量の溶剤(C)が含有されていても良い。接着性シートは接着剤組成物によって基材を被接着材に接着させる機能を有する。接着性シートの基材は、接着後、被接着材の保護層として機能する。また接着性シートの基材として離型性基材を使用すると、離型性基材を離型して、さらに別の被接着材に接着剤層を転写することができる。
【0062】
本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種基材に塗布し、溶剤の少なくとも一部を除去して乾燥させることにより、本発明の接着シートを得ることができる。また溶剤の少なくとも一部を除去して乾燥せしめた後、接着剤層に離型基材を貼付けると、基材への裏移りを起こすことなく巻き取りが可能になり操業性に優れるとともに、接着剤層が保護されることから保存性に優れ、使用も容易である。また離型基材に塗布、乾燥せしめた後、必要に応じて別の離型基材を貼付すれば、接着剤層そのものを他の基材に転写することも可能になる。
【0063】
ここで、本発明の組成物を塗布する基材としては、特に限定されるものではないが、フィルム状樹脂、金属板、金属箔、紙類等を挙げることができる。フィルム状樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、オレフィン系樹脂等を例示することができる。金属板および金属箔の素材としては、SUS、銅、アルミ、鉄、亜鉛等の各種金属、及びそれぞれの合金、めっき品等を例示することができる、紙類として上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙等を例示することができる。また複合素材として、ガラスエポキシ等を例示することができる。接着剤組成物との接着力、耐久性から、本発明の組成物を塗布する基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、SUS鋼板、銅箔、アルミ箔、ガラスエポキシが好ましい。
【0064】
また本発明の組成物を塗布する離型基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたもの、及び、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、及びポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものが挙げられるが、塗布された接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、ポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0065】
なお、本発明において接着剤組成物を基材上にコーティングする方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤フィルム層を設けることもできる。乾燥後の接着剤フィルム厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5〜200μmの範囲である。接着フィルム厚が5μm未満では、接着強度が不十分である。200μm以上では乾燥が不十分で、残留溶剤が多くなり、プリント配線板製造のプレス時にフクレを生じるという問題点が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は4質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。4質量%より大きくなると、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡して、フクレを生じるという問題が生じる場合がある。
【0066】
<プリント配線板>
本発明におけるプリント配線板は、導体回路を形成する金属箔と樹脂層とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。
【0067】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層から構成されるプリント配線板とすることができる。また例えば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるプリント配線板とすることができる。プリント配線板は必要に応じて補強材で補強することがあり、その場合、補強材、接着剤層が基材フィルム層の下に設けられる。
【0068】
さらに、必要に応じて、上記のプリント配線板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。
【0069】
本発明の樹脂組成物はプリント配線板の各接着剤層に好適に使用することが可能である。特に本発明の樹脂組成物を接着剤として使用すると、プリント配線板を構成する基材に対して高い接着性を有し、かつ鉛フリーハンダにも対応できる高度の耐熱性を有し、さらに高温高湿度下においても高い接着性を維持することが可能である。特に耐ハンダ性を評価する高温領域において、樹脂と樹脂との化学架橋と共に樹脂と無機充填材との物理架橋をバランスよく付与することで、加湿状態での耐ハンダ性試験における水分の蒸発による衝撃で膨れや変形すること無しに、応力を緩和することが可能であり、金属箔層とカバーフィルム層間の接着剤、および基材フィルム層と補強材層間の接着に適している。特に、SUS板やアルミ板のような金属補強材を使用した場合、加湿状態でのハンダづけの際、補強材側から水分は蒸発できない為、基材フィルム層と補強材層間の接着剤層に及ぶ衝撃は特に強大であり、そのような場合の接着に用いる樹脂組成物として好適である。
【0070】
本発明のプリント配線板において、基材フィルムとしては、従来からプリント配線板の基材として使用されている任意の樹脂フィルムが使用可能である。基材フィルムの樹脂としては、ハロゲンを含む樹脂を用いてもよく、ハロゲンを含まない樹脂を用いてもよい。環境問題の観点から、好ましくは、ハロゲンを含まない樹脂であるが、難燃性の観点からは、ハロゲンを含む樹脂を用いることもできる。基材フィルムは、ポリイミドフィルムまたはポリアミドイミドフィルムであることが好ましい。
【0071】
本発明に用いる金属箔としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。材質としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、スチール箔、及びニッケル箔などを使用することができ、これらを複合した複合金属箔や亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属箔についても用いることができる。好ましくは、銅箔である。
【0072】
金属箔の厚みについては特に限定はないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。
【0073】
金属箔は、通常、ロール状の形態で提供されている。本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されない。ロール状の形態の金属箔を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250〜1000mm程度であるのが好ましい。
【0074】
カバーフィルムとしては、プリント配線板用の絶縁フィルムとして従来公知の任意の絶縁フィルムが使用可能である。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの各種ポリマーから製造されるフィルムが使用可能である。より好ましくは、ポリイミドフィルムまたはポリアミドイミドフィルムであり、さらに好ましくは、ポリイミドフィルムである。
【0075】
ポリイミドフィルムは、その樹脂成分としてポリイミド樹脂を主成分とする。樹脂成分のうち、90重量%以上がポリイミドであることが好ましく、95重量%以上がポリイミドであることがより好ましく、98重量%以上がポリイミドであることがさらに好ましく、99重量%以上がポリイミドであることが特に好ましい。ポリイミド樹脂としては、従来公知の任意の樹脂を使用することができる。
【0076】
カバーフィルムの素材樹脂としては、ハロゲンを含む樹脂を用いてもよく、ハロゲンを含まない樹脂を用いてもよい。環境問題の観点から、好ましくは、ハロゲンを含まない樹脂であるが、難燃性の観点からは、ハロゲンを含む樹脂を用いることもできる。
【0077】
補強材としては、SUS板、アルミニウム板等の金属板、ポリイミドフィルム、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化した板(ガラスエポキシ板)等が使用される。特に本発明の樹脂組成物は、SUS板やアルミ板とポリイミドフィルムの接着に対して絶大な性能を発揮し、その接着性、耐熱性は極めて優れた性能を示す。
【0078】
本発明のプリント配線板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知の任意のプロセスを用いて製造することができる。
【0079】
好ましい実施態様では、カバーフィルム層に接着剤層を積層した半製品(以下、「カバーフィルム側半製品」という)を製造する。他方、基材フィルム層に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側2層半製品」という)または基材フィルム層に接着剤層を積層し、その上に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側3層半製品」という)を製造する(以下、基材フィルム側2層半製品と基材フィルム側3層半製品とを合わせて「基材フィルム側半製品」という)。このようにして得られたカバーフィルム側半製品と、基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、4層または5層のプリント配線板を得ることができる。さらに補強材層に接着剤層を積層した半製品(以下、「補強材側半製品」という)を製造し、必要に応じて、プリント配線板の基材フィルム層に貼り合わせ補強することができる。また、補強材と基材フィルム間に用いる接着剤を離型基材に塗布し、プリント配線板の基材フィルム裏面に転写し、補強材と貼りあわせることもできる。
【0080】
基材フィルム側半製品は、例えば、
(A)前記金属箔に基材フィルムとなる樹脂の溶液を塗布し、塗膜を初期乾燥する工程
(B)(A)で得られた金属箔と初期乾燥塗膜との積層物を熱処理・乾燥する工程(以下、「熱処理・脱溶剤工程」という)
を含む製造法により得られる。
【0081】
金属箔層における回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アクティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
【0082】
得られた基材フィルム側半製品は、そのままカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後にカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0083】
カバーフィルム側半製品は、例えば、カバーフィルムに接着剤を塗布して製造される。必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0084】
得られたカバーフィルム側半製品は、そのまま基材側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0085】
基材フィルム側半製品とカバーフィルム側半製品とは、それぞれ、例えば、ロールの形態で保管された後、貼り合わされて、プリント配線板が製造される。貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能であり、例えば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロ−ル装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼り合わせることもできる。
【0086】
補強材側半製品は、例えば、ポリイミドフィルムのように柔らかく巻き取り可能な補強材の場合、補強材に接着剤を塗布して製造されることが好適である。また、例えばSUS、アルミ等の金属板、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化させた板等のように硬く巻き取りできない補強板の場合、予め離型基材に塗布した接着剤を転写塗布することによって製造されることが好適である。また、必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0087】
得られた補強材側半製品は、そのままプリント配線板裏面との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0088】
基材フィルム側半製品、カバーフィルム側半製品、補強剤側半製品はいずれも、本発明におけるプリント配線板用積層体である。
【実施例】
【0089】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例中に単に部とあるのは質量部を示す。また、特記なくエポキシ樹脂配合率と記した場合には、{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}の値を指すこととする。また、表中において、例えば「>40」とあれば40を超えることを、「<230」とあれば230未満であることを示す。
【0090】
(物性評価方法)
(1)熱可塑性樹脂の組成
熱可塑性樹脂を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR分析により、各成分のモル比を求めた。但し、該熱可塑性樹脂が重クロロホルムに溶解しない場合には、重ジメチルスルホキシドに溶解して1H−NMR分析を行った。
【0091】
(2)数平均分子量Mn
試料を、樹脂濃度が0.5%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィーにより分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。但し、試料がテトラヒドロフランに溶解しない場合は、テトラヒドロフランに変えてN,N−ジメチルホルムアミドを用いた。
【0092】
(3)ガラス転移温度
ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂の場合は、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。
ポリアミドイミド樹脂の場合は、幅10mm、厚さ30μmの短冊状試料について、アイテイ計測制御社製動的粘弾性測定装置DVA−220を用いて、周波数110Hzで動的粘弾性の測定を行い、その貯蔵弾性率の変曲点をガラス転移点とした。なお、短冊状試料は、ポリアミドイミドの重合溶液をポリプロピレン製フィルムに塗布し、1〜10mmHgの減圧状態で、120℃で10時間乾燥することにより溶剤を除いたフィルムから得た。
【0093】
(4)酸価
試料0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを用い、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液、ポリアミドイミド系樹脂の場合のみナトリウムメトキシドメタノール溶液で滴定し、樹脂10gあたりの当量(eq/10g)を算出した。
【0094】
(5)エポキシ価
JIS K 7236に準拠し、過塩素酸滴定法を用いて得られたエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量)から樹脂10gあたりの当量(eq/10g)を算出した。
【0095】
(特性評価方法)
(1)耐ハンダ性、剥離強度
(1)−1 評価用サンプル1作成方法
後述する接着剤組成物を厚さ25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を30μmの圧延銅箔と貼り合わせる際、圧延銅箔の光沢面が接着剤と接する様にして、160℃で35kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、耐ハンダ性及び剥離強度評価用サンプル1を得た(初期評価用)。
また、接着性フィルム(Bステージ品)を、40℃、80%加湿下にて14日間放置後、上記条件にて圧延銅箔とプレス、熱処理して硬化させ、経時評価用のサンプル1を得た。
【0096】
(1)−2 評価用サンプル2作成方法
後述する接着剤組成物を厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製、パイレン)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥し接着性フィルム(Bステージ品)を得た。評価用基板は、片面銅張積層版(25μmポリイミドフィルム、18μm圧延銅箔)を通常の回路作製工程(穴あけ、めっき、ドライフィルムレジスト(以下DFRと略すことがある)ラミネート、露光・現像・エッチング、DFR剥離)にて作製し、硬化することで評価用基板を得た。この様にして得られた評価用基板上に、前記接着性フィルム(Bステージ品)を仮圧着した後、ポリプロピレンフィルムを剥離し、補強板として500μmのSUS304板を160℃で35kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、耐ハンダ性および剥離強度評価用サンプル2を得た(初期評価用)。
また、接着性フィルム(Bステージ品)を、40℃、80%加湿下にて14日間放置後、上記条件にて圧延銅箔とプレス、熱処理して硬化させ、経時評価用のサンプル2を得た。
【0097】
各特性の評価は以下の方法で行った;
耐ハンダ性(加湿):サンプルを40℃、80%加湿下にて2日間放置後、加熱したハンダ浴に1分間浮かべて、膨れが発生しない上限の温度を10℃ピッチで測定した。この試験において、測定値の高い方が良好な耐熱性を持つことを示すが、各基材、接着剤層に含まれた水蒸気の蒸発による衝撃をも抑制する必要があり、乾燥状態よりも、さらに厳しい耐熱性が要求される。実用的性能から考慮すると250℃以上が好ましく、より好ましくは260℃以上である。
剥離強度:25℃において、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。実用的性能から考慮すると10N/cm以上が好ましく、より好ましくは15N/cm以上である。
【0098】
(2)クリープ特性
前述した評価サンプル2を用いて、60℃×90%雰囲気下、200gの錘をぶら下げ、30分間で剥がれた距離を測定した。なお錘のぶら下げ方は、剥離形態が180°剥離となるように行った。この試験は、高温高湿下での接着強度を示すもので、剥離のないものが好ましく、剥離距離が大きくなるほど、接着強度が低い。実用的性能から考慮すると10mm以下が好ましく、より好ましくは4mm以下である。
【0099】
(3)高温高湿環境試験
前述した耐ハンダ性および剥離強度評価用サンプル2(初期評価用)を85℃、85%加湿環境下に放置し、500時間経過後及び1000時間経過後の剥離強度を測定した。この試験は、実使用時の信頼性を確認する目的で高温且つ高湿環境下での耐久性を評価したものであり、実使用時の信頼性から5N/cm以上が好ましく、より好ましくは10N/cm以上である。
【0100】
ポリエステル樹脂Aの重合例
撹拌器、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸243部、イソフタル酸237部、アジピン酸107部、無水トリメリット酸7部、2−メチル−1,3−プロパンジオール455部、1,4−ブタンジオール205部、テトラブチルチタネート0.3部を仕込み、4時間かけて250℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で1時間後期重合を行った。その後、窒素にて常圧に戻し、無水トリメリット酸28部を投入し、220℃で30分間反応させることによってポリエステル樹脂Aを得た。この様にして得られたポリエステル樹脂Aの組成、特性値を表1に示した。各測定評価項目は前述の方法に従った。
【0101】
ポリエステル樹脂Bの重合例
撹拌器、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸99.6部、イソフタル酸229.1部、無水トリメリット酸3.8部、2−メチル−1,3−プロパンジオール54.0部、1,6−ヘキサンジオール401.2部、テトラブチルチタネート0.2部を仕込み、4時間かけて250℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で1時間後期重合を行った。得られた樹脂を撹拌器、温度計、還流式冷却管及び蒸留管を具備した反応容器に100部仕込み、トルエン182部を加えて溶解後、トルエン70部を蒸留させ、トルエン/水の共沸により反応系を脱水した。60℃まで冷却後、メチルエチルケトン112部、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を7部加え70℃で3時間反応させることによってポリエステル樹脂Bの溶液を得た。この様にして得られたポリエステル樹脂Bの組成、特性値を表1に示した。
【0102】
ポリウレタン樹脂に使用したポリエステルポリオールC〜Iの重合例
ポリエステル樹脂Aの重合例と同様にして、表1に示す原料を用いて、ポリウレタン樹脂に使用したポリエステルポリオールC〜Iを得た。この樹脂の組成、特性値を表1に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
ポリウレタン樹脂aの重合例
温度計、攪拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器に表1に記載したポリエステルポリオールC100部、トルエン70部を仕込み溶解後、トルエン20部を蒸留させ、トルエン/水の共沸により反応系を脱水した。60℃まで冷却後、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)を9部、メチルエチルケトン50部を加えた。DMBAが溶解後、ヘキサメチレンジイソシアネートを8.5部、さらに反応触媒としてジブチルチンジラウレートを0.4部加え、80℃で4時間反応させてから、メチルエチルケトン130.2部、トルエン43.4部を投入して固形分濃度を30重量%に調整し、ポリウレタン樹脂a溶液を得た。ポリウレタン樹脂aの溶液を120℃で1時間乾燥することにより溶剤を除いたフィルムを用いて、前述した各測定評価項目に従い測定した。ポリウレタン樹脂の特性を表2に示した。
【0105】
ポリウレタン樹脂b〜iの重合例
ポリウレタン樹脂aの重合例と同様にして、表2に示す原料を用いて、ポリウレタン樹脂b〜iを得た。特性値を表2に示した。各測定評価項目は前述の方法に従った。
【0106】
【表2】
【0107】
ポリアミドイミド樹脂Iの重合例
撹拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた4ツ口のセパラブルフラスコに、無水トリメリット酸105.67g(0.55mol)、セバシン酸80.09g(0.40mol)、両末端がカルボキシル基のアクリロニトリルブタジエンゴム(宇部興産(株)製CTBN1300×13)175g(0.05mol)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート252.75g(1.0mol)、ジメチルアセトアミド526gを仕込み、窒素気流下100℃まで昇温し、2時間反応させた。次いでジメチルアセトアミド117gを加えて、さらに150℃で5時間反応させた後、トルエン439gとジメチルアセトアミド146gを加えて希釈し、室温まで冷却することで、褐色であるが全く濁りがないポリアミドイミド樹脂溶液1を得た。このようにして得られたポリアミドイミド樹脂Iの組成、特性値を表3に示した。ポリアミドイミド樹脂Iの溶液は10mmHg以下の減圧状態で、120℃で10時間以上乾燥することにより溶剤を除いたフィルムを用いて、前述した各測定評価項目に従い測定した。
【0108】
ポリアミドイミド樹脂II〜IVの重合例
合成例1と同様にして、ポリアミドイミド樹脂の合成例II〜IVの作成を行った。このようにして得られたポリアミドイミド樹脂の組成、特性値を表3に示した。
【0109】
【表3】
【0110】
<実施例1>
熱可塑性樹脂(A)としてポリエステル樹脂A100部(固形分のみの質量、以下同様)、無機充填材(B)としてR972[日本アエロジル(株)製 疎水性煙霧状シリカ]20部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン248部、トルエン112部を配合し固形分濃度25%である樹脂組成物(β)を調整した。次に、エポキシ樹脂(D)としてエポキシ樹脂ア[大日本インキ化学工業(株)製 HP7200−H(ジシクロペンタンジエン型エポキシ樹脂)、エポキシ価=3540当量/10g]11.9部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン5.1部を配合し固形分濃度70%である樹脂組成物(γ)を調整した。得られた樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合することで目的とする接着剤用樹脂組成物を得た。エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステル樹脂の酸価の総量の1.05倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。接着評価試料を上述の方法で作製し、評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0111】
実施例2
実施例1と同様に、表3に示される成分、配合量で樹脂組成物を作成し特性を評価した。また、全ての実施例において、樹脂組成物(β)は固形分濃度25%、樹脂組成物(γ)は固形分濃度70%で調製した。
【0112】
実施例3
熱可塑性樹脂(A)としてポリウレタン樹脂溶液aを333.3部、無機充填材(B)としてR972を20部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン94.7部、トルエン32部を配合し固形分濃度25%である樹脂組成物(β)を調整した。次に、エポキシ樹脂(D)としてエポキシ樹脂アを19.3部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン8.3部を配合し固形分濃度70%である樹脂組成物(γ)を調整した。得られた樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合することで目的とする接着剤用樹脂組成物を得た。エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステル樹脂の酸価の総量の1.05倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。接着評価試料を上述の方法で作製し、評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0113】
実施例4〜11
実施例3と同様に、表3に示される成分、配合量で接着剤用樹脂組成物を作成し特性を評価した。また、全ての実施例において、組成物(β)は固形分濃度25%、組成物(γ)は固形分濃度70%で調製した。
【0114】
実施例12
熱可塑性樹脂(A)としてポリアミドイミド樹脂溶液Iを333.3部、無機充填材(B)としてR972を20部、溶剤(C)としてジメチルアセトアミド98.5部、トルエン28.2部を配合し固形分濃度25%である樹脂組成物(β)を調整した。次に、エポキシ樹脂(D)としてエポキシ樹脂アを13.3部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン5.7部を配合し固形分濃度70%である樹脂組成物(γ)を調整した。得られた樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合することで目的とする接着剤用樹脂組成物を得た。エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステル樹脂の酸価の総量の1.05倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。接着評価試料を上述の方法で作製し、評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0115】
実施例13、14
実施例3と同様に、表3に示される成分、配合量で接着剤用樹脂組成物を作成し特性を評価した。また、全ての実施例において、組成物(β)は固形分濃度25%、組成物(γ)は固形分濃度70%で調製した。
【0116】
以下に各成分の詳細を記す。
アエロジル R8200:日本アエロジル(株)製 疎水性煙霧状シリカ
レオロシール DM−10:(株)トクヤマ製 疎水性煙霧状シリカ
レオロシール HM−20L:(株)トクヤマ製 疎水性煙霧状シリカ
SYLOPHOBIC 200:富士シリシア化学(株)製 疎水性シリカ
ハイジライト H−42M:昭和電工(株)製 水酸化アルミニウム
エポキシ樹脂イ:三菱瓦斯化学(株)製 TETRAD−X(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)、エポキシ価=10000当量/10g。
エポキシ樹脂ウ:東都化成社製 YDCN703(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポキシ価=4550当量/10g。
【0117】
エポキシ樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂(A)の酸価の総量の0.8〜1.3倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0118】
【表4】
【0119】
実施例15〜19
実施例3と同様に、但し、エポキシ樹脂の配合量を更に高くした接着剤組成物についての評価結果を表5に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示し、さらに剥離強度、耐加湿半田性に優れていることがわかる。また、高温高湿環境試験についての評価結果を表6に示す。エポキシ樹脂配合量を1.3〜4とした場合、さらに高温高湿環境試験後も剥離強度の低下が抑制されている点で優れることがわかる。
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
比較例1〜15
実施例1〜19と同様にして、表7、8に示される、成分、配合量で接着剤用樹脂組成物を作製し、特性を評価した。
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
比較例1は、熱可塑性樹脂(A)にあたるポリエステル樹脂Hの酸価が低く、また数平均分子量が低く、本発明の範囲外である。室温での剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良であり、耐加湿半田性も低い。硬化物の架橋が不十分となり、凝集力が小さくなるためと考えられる。
【0126】
比較例2は、熱可塑性樹脂(A)にあたるポリエステル樹脂Iの酸価が低く、本発明の範囲外である。室温での剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良であり、耐加湿半田性も低い。硬化物の架橋が不十分となり、凝集力が小さくなるためと考えられる。
【0127】
比較例3は、熱可塑性樹脂(A)にあたるポリウレタン樹脂gの酸価が低く、本発明の範囲外である。室温での剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良であり、耐加湿半田性も低い。硬化物の架橋が不十分となり、凝集力が小さくなるためと考えられる。
【0128】
比較例4は、熱可塑性樹脂(A)にあたるポリウレタン樹脂hの酸価が高く、本発明の範囲外である。硬化物の剛直性が過度に高くなる為、室温での剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良となるものと考えられる。
【0129】
比較例5は、熱可塑性樹脂(A)にあたるポリウレタン樹脂iの数平均分子量が低く、本発明の範囲外である。凝集力が小さくなる為、室温の剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良となるものと考えられる。
【0130】
比較例6は、分散液(α)の揺変度(TI値)が低く、本発明の範囲外である。樹脂と無機充填材との相互作用が低くなり、耐加湿半田性が低下するものと考えられる。
【0131】
比較例7は、分散液(α)の揺変度(TI値)が高く、本発明の範囲外である。基材との貼り合せが不十分となり、剥離強度が低下するものと考えられる。
【0132】
比較例8は、分散液(α)の揺変度(TI値)が低く、本発明の範囲外である。樹脂と無機充填材との相互作用が低くなり、耐加湿半田性が低下し、シートライフが悪くなり経時での特性が低下するものと考えられる。
【0133】
比較例9は、分散液(α)の揺変度(TI値)が低く、本発明の範囲外である。樹脂と無機充填材との相互作用が低くなり、耐加湿半田性が低下し、シートライフが悪くなり経時での特性が低下するものと考えられる。
【0134】
比較例10は、分散液(α)の揺変度(TI値)が低く、本発明の範囲外である。樹脂と無機充填材との相互作用が低くなり、耐加湿半田性が低下するものと考えられる。
【0135】
比較例11は、エポキシ樹脂(D)にあたるジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が配合されておらず、本発明の範囲外である。剛直性、低吸湿性が低下し高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性が低下するものと考えられる。
【0136】
比較例12は、熱可塑性樹脂(A)にあたるポリアミドイミド樹脂の分子量が小さく本発明の範囲外である。室温の剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良である。これは、硬化物の凝集力が小さくなるためと考えられる。
【0137】
比較例13は、エポキシ樹脂(D)にあたるジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の配合量が多く、本発明の範囲外である。硬化が不十分となり、耐加湿半田性が低下するものと考えられる。
【0138】
比較例14は、エポキシ樹脂(D)にあたるジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の配合量が多く、本発明の範囲外である。硬化が不十分となり、耐加湿半田性が低下するものと考えられる。
【0139】
比較例15は、エポキシ樹脂(D)にあたるジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の配合量が多く、本発明の範囲外である。硬化が不十分となり、耐加湿半田性が低下するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明により、PETフィルム等の各種プラスチックフィルムおよび銅、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属に対する高い接着性、高湿度下での鉛フリーハンダにも対応できる高度の耐湿熱性、高温高湿度下での接着性に優れた接着剤を得ることができ、かつBステージのシートがたとえ高温高湿下で流通された後に使用されても良好な接着特性の維持が可能なシートライフが良好な樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着シートおよびこれを接着層として含むプリント配線板を提供することができる。