(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の発明における薬剤散布作業車両では、旋回外側の散布ブームが畦などに接触することを防ぐために、当該散布ブームを監視しながら手動で昇降させていたので、作業者の行うべき他の操作がおろそかになりがちであった。
そこで本発明の課題は、旋回時などに散布ブームを障害物に接触させないように、自動的に昇降制御が可能な薬剤散布作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題を解決するために次のような解決手段を採用する。
すなわち、請求項1記載の発明は、
前輪(12)と後輪(13)を備えた車体(1)と、車体(1)上に設けられ、薬液を貯留する薬液タンク(18)と、該薬液タンク(18)からの薬液を圃場に散布するセンタブーム(43)と左右のサイドブーム(44)と、左右のサイドブーム(44)の上下動をそれぞれ行うための上下シリンダ(29)と、
前輪(12)と後輪(13)の操舵装置と、前輪(12)と後輪(13)の切れ角を
各々検出するタイヤ切れ角センサ(46)と、
前輪(12)又は後輪(13)の回転数を検出する車速センサ(6)と、
左右のサイドブーム(44)を各々手動操作するための左右の手動レバー(74)と、旋回時に旋回外側のサイドブーム(44)を自動的に上下動させる自動スイッチ(64)と、前記操舵装置を4輪操舵にするための操作用の4WSスイッチ(7b)と、自動スイッチ(64)及び4WSスイッチ(7b)がオンの時に、前輪(12)及び後輪(13)の各タイヤ切れ角センサ(46)の検出値から旋回状態であることを判定すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の上下動を行
うと共に、該サイドブーム(44)の上げ速度
と下げ速度を車速センサ(6)の検出値に基づき決める
自動上下動機能と、前記各タイヤ切れ角センサ(46)の検出値から旋回状態であると判定されなくても前記自動スイッチ(64)及び4WSスイッチ(7b)がオンである場合は、旋回外側の手動レバー(74)がワンタッチ操作されると旋回外側のサイドブーム(44)を規定量上昇させると共に、該上昇したサイドブーム(44)を旋回終了時に自動で下降させるレバー上下動機能を有する制御装置(100)を備えたことを特徴とする薬液散布作業車両である。
【0006】
請求項2記載の発明は、
前記左右のサイドブーム(44)は、左右のサイドブーム(44)の長手方向が車体(1)の前後方向に沿う収納状態と左右のサイドブーム(44)の長手方向が車体(1)の左右方向に沿う作業状態とに切り替える切替機構(30)を備え、左右のサイドブーム(44)の収納状態をそれぞれ検出する左右のブーム格納センサ(67)を設け、前記制御装置(100)は、
前記左右のブーム格納センサ(67)により左右のサイドブーム(44)の何れかの収納状態が検出されると前記自動上下動機能を無効とする自動上下動無効機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の薬液散布作業車両である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、車両の旋回時に自動で外輪側サイドブーム
(44
)を自動上下させることで、操作の容易化を図ることができ、かつ、車速に連動して外輪側サイドブーム
(44
)の上げ速度を変化させることで、(a)速い旋回時は外輪側サイドブーム
(44
)の上げ速度を速くして、外輪側サイドブーム
(44
)が畦畔に衝突する確率が低減し、(b)遅い旋回では、外輪側サイドブーム
(44
)の上げ速度もそれなりに遅くするので、作物に対する薬液付着率が良くなり、(c)走行時の薬液飛散防止、作物に対する過剰な薬液散布低減効果がある。
【0011】
また、車速センサ
(6
)の出力が大きければ大きいほどサイドブーム
(44
)の下げ速度が速まり、また、遅い速度での旋回時にはサイドブーム
(44
)の下げ速度も遅くなるので、下降中のサイドブーム
(44
)が作物や地面をたたく危険性が低減できる。また、速い速度での旋回では、サイドブーム
(44
)の下げ速度も速くなり、すばやく規定のノズル
(45b
)の噴霧高さに到達するので、作物への薬液付着率が向上、車両走行時のドリフト低減につながる。
【0012】
更に、旋回時に自動的にサイドブーム(44)が上下動すると思わぬ不具合が生じる場合があるが、自動スイッチ(64)のオン時にしか上下動しない構成であることから、作業者が任意に手動/自動を切り替えることで、局面に合った操作を実現でき、自動スイッチ(64)を押さない手動時に安全性が確保できる。
また、たとえ自動スイッチ(64)がオンであっても、4WSスイッチ(7b)がオンでない時はサイドブーム(44)の旋回時の自動上昇が作動できない構成にすることで、圃場外(路上など)で多用するFWSモードの設定時に、自動スイッチ(64)を切り忘れて旋回しても自動的にサイドブーム(44)が上下動しないので、思わぬ衝突を回避できる。
【0013】
また、前輪(12)のタイヤ切れ角センサ(46)の検出値と後輪(13)のタイヤ切れ角センサ(46)の検出値を自動上昇の作動条件に用いることで、4WSの旋回状態であることを認識できる。
一方、畦畔近辺での旋回では、各タイヤ切れ角センサ(46)により旋回状態を検知してからサイドブーム(44)を自動上昇させるのでは、サイドブーム(44)の上昇が遅すぎてブーム(44)が障害物に衝突するおそれがある。
そこで、各タイヤ切れ角センサ(46)により旋回状態が検知されない場合でも、自動スイッチ(64)及び4WSスイッチ(7b)がオンである場合は、手動レバー(74)のワンタッチ操作により旋回外側のサイドブーム(44)の上昇を可能とすることで、スムーズに作業ができる。ワンタッチ操作とすることで、ハンドルと手動レバー(74)の同時操作を防止でき、旋回の運転操作に専念できる。
また、旋回終了時にはサイドブーム(44)が自動で下降することで、旋回中の操作を容易に行うことができる。
【0014】
また、左右のサイドブーム(44)の何れかが収納状態である場合は、サイドブーム(44)を自動で上昇させる必要はなく、作動させるとサイドブーム(44)の移動力でブーム格納センサ(67)や収納部材等に必要以上の荷重を与え、むしろ思わぬ不具合を招くおそれがある。
そこで、請求項
2記載の発明によれば、請求項
1記載の発明の効果に加えて、
左右のブーム格納センサ(67)により左右のサイドブーム(44)の何れかの収納状態が検出されるとサイドブーム(44)を自動上昇させないようにすることで、安全である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1に薬液散布装置を前部に取り付けた薬液散布作業車の側面図を示し、
図2には薬液散布作業装置部分の平面図を示す。なお、本明細書では薬液散布作業車の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0017】
薬液散布作業車の車体1は、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持する。また、ハンドルポスト59により支持されたステアリングハンドル14の回転操作により前輪12を操向すると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された薬液タンク18を車体に対し着脱自在に搭載し、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する防除ポンプ20が車体1の操縦席17の下方に設けられている。
【0018】
操縦席17の左側下方でフロア54の上方に位置する薬液タンク18の左側部には、オペレータ一人が乗り降りできる程度の凹部Sが設けられ、該凹部Sの底面にタンク側ステップ50が設けられている。タンク側ステップ50の外側下方には、本機側ステップ53が設けられている。この本機側ステップ53は、上面53Aがフロア54と薬液タンク18の底面とほぼ同一高さとなる位置にある。
【0019】
本機側ステップ53の下方には、フロア54から吊り下げ式に設置された梯子部材55が設けられている。梯子部材55は任意の段数、例えば2段のステップを有している。これらの梯子部材55、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50は所定の間隔で配置されている。このような構成によりオペレータは、梯子部材55のステップ、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50を順に登ることにより、安全かつ容易に操縦席17に到達して乗車できる。
【0020】
本機のフロア54に薬液タンク18を搭載する自走型薬液散布作業車において、薬液タンク18は本機ダッシュパネル56付近まで前方に突出している。一方、薬液タンク18は上面視でオペレータの足元まで完全に覆い囲った略コの字状の構造を有している。このような構造により薬液タンク18の高さを増加させずにタンク容量を増大させるとともに後進時の見通しを確保できる。また、薬液タンク18を前方に長くすることにより、薬液タンク内液量の変位による機体の重心移動を小さく抑え、薬液散布作業時の機体バランスを安定させ、走行性能を高めることができ、機体が後傾して沈没するという事態を回避できる。
なお、
図2では薬液タンク18の上面が略コの字形状の略直方体形状のものを図示しているが、これに限定されず、タンクステップを有する形状であれば任意の形状にすることができる。
【0021】
薬液タンク18の先端部形状は、フロア54のフロントに上方へ浮き上がるように湾曲させた傾斜部51と密着するように形成されている。従って、薬液タンク18を後方から前方へ移動させて傾斜部51で合致させて止めることができる。このような構造により前輪12の横揺れ等によるタイヤと薬液タンク18の干渉を防止でき、薬液タンク18の本機のフロア54上での接地性を高め、タンク18の安定性を高めることができる。
【0022】
前記車体1の前部には、ボンネット15の左右両側部に支持されたリフトリンク3が取り付けられている。リフトリンク3は、アッパリンク24とロワリンク25を平行状に配置して、この前端部間をヒッチブラケット4で連結し、後端部間を直立した支柱23に軸支して平行リンク形態に構成され、この平行リンクが昇降シリンダ27,27により先端部が昇降移動することで散布ブーム19の薬液散布高さを調節することができる。
【0023】
ヒッチブラケット4の下端部には機体左右方向に伸びるセンターブーム43を取り付けている。またその左右端部に上方に突出したシリンダ取付支柱26が設けられ、シリンダ取付支柱26の上端には電気的に作動制御される油圧タンク付ソレノイドバルブ28を介して伸縮するローリングシリンダである上下シリンダ(ローリングシリンダ)29の上端が取り付けられ、上下シリンダ29の下端にはサイドブーム44が回動自在に取り付けられている。従って、上下シリンダ29の伸縮によりサイドブーム44が昇降される。なお、サイドブーム44は機体の両サイドに収納されるときはサイドブーム受け40で機体に支持される。
【0024】
前記散布ブーム19は、センターブーム43と、このセンターブーム43の外側に折畳可能に連結されるサイドブーム44から構成され、各々薬液噴霧用の噴霧ノズル45(45a,45b)が一定間隔で配置されている。
サイドブーム44はシリンダ取付支柱26を介してセンターブーム43に取り付けられているが、サイドブーム44はセンターブーム43に設けられた開閉シリンダ30により開閉される。
【0025】
指標ロッド52(
図1)は、センターブーム43の中央付近領域から上方に向けて垂直に突出して設けられたロッドである。該指標ロッド52の上端にはLED等からなるランプが付設されており、後述する自動水平制御動作の開始と同時にランプが点灯する。なお、指標ロッド52の下端において、作動機構等と連動して自動水平制御中に回転等するようにしても良い。このような構成によりオペレータにブーム43,44の制御状態を認知させることができ、ブーム43,44の誤操作を回避でき、散布作業時に自動水平スイッチをONにすることを忘れ、ロングブーム(サイドブーム44)の先端のノズル45bが作物と接触し、破損するという不具合を回避できる。
【0026】
ここで自動水平制御には水平制御と平行制御があり、水平制御と平行制御は共に自動水平センサ(傾斜センサ)63からの傾斜信号により該ブーム44の昇降制御を行って行われる。そして水平制御は、自動スイッチ64をオンとして左右のサイドブーム44が地球上の水平儀による水平と一致する状態を維持するようにすることである。センターブーム43は短く、また機体に固定するので機体と一緒に傾斜するので制御の必要はない。しかし、左右のサイドブーム44は自動スイッチ64がオンであれば、自動水平センサ(傾斜センサ)63からの傾斜信号により該ブーム44の昇降制御を行って前記水平制御する。また平行制御は、傾斜地などの走行中に行うものであり、そのために自動スイッチ64がオンとして、さらに平行スイッチ72をオンとして、十字レバー74を操作してサイドブーム44を任意の角度に傾斜させてサイドブーム44を傾斜地に対して平行になるようにして、地面に衝突させないようにすることである。
【0027】
ここで自動水平制御には水平制御と平行制御があり、水平制御と平行制御は共に自動水平センサ(傾斜センサ)63からの傾斜信号により該ブーム44の昇降制御が行われる。そして水平制御は、自動スイッチ64をオンとして左右のサイドブーム44が地球上の水平儀による水平と一致する状態を維持するようにすることである。センターブーム43は短く、また機体に固定するので機体と一緒に傾斜するので制御の必要はない。しかし、左右のサイドブーム44は自動スイッチ64がオンであれば、自動水平センサ(傾斜センサ)63からの傾斜信号により該ブーム44の昇降制御を行って前記水平制御する。また平行制御は、傾斜地などの走行中に行うものであり、そのために自動スイッチ64をオフとして、平行スイッチ72をオン(自動水平スイッチ64、平行制御スイッチ72及び手動スイッチ73は、いずれか1個のスイッチしか機能しない。)として、十字レバー74を操作してサイドブーム44を任意の角度に傾斜させる。特に頻繁に使用する例として、サイドブーム44を傾斜地に対して平行になるようにして、作物に衝突させないようにすることである。傾斜地の傾斜度合いが、例えば右傾斜3度であれば、左右にサイドブーム44も右傾斜3度となるように十字レバー74で操作する。その後は、機体が左右傾斜しても、傾斜センサ63からの検出値を基にして、左右のサイドブーム44の右傾斜3度を維持するように制御する。
【0028】
また水平関係スイッチとしてその他に手動スイッチ73があり、手動スイッチ73がオンのときには自動水平制御動作、平行制御は行えず、十字レバー74を操作して任意の傾斜角度にサイドブーム44を操作し、傾斜地などで作物にサイドブーム44が衝突しないようにする。
【0029】
また水平関係スイッチとしてその他に手動スイッチ73があり、手動スイッチ73がオンのときには自動水平制御動作は行えず、十字レバー74を操作して任意の傾斜角度にサイドブーム44を操作して手動で傾斜地などで地面に対して水平にする操作が可能になる。
【0030】
次に上記構成の薬液散布作業車両の制御部について説明する。
図3の制御ブロック図に示すように、本機コントローラ100にはFWS7a、4WS7b、RWS7c、FWS,4WS,RWSを自動選択する自動選択スイッチ7d(
図8(b)参照)のいずれかを選択する操舵切替スイッチ群7と水平関係スイッチ(前記自動スイッチ64と平行スイッチ72と手動スイッチ73)があり、車速センサ6、タイヤ切れ角センサ46、GPSアンテナ(受信機)81からの信号を受信する入力回路などが接続し、操舵装置(ハンドル14や車輪操舵用の油圧シリンダと該シリンダ作動用のソレノイド等からなる)のソレノイド(本実施例の薬液散布作業車はFWS、4WS、RWSを装備しており、4輪全て油圧シリンダで動く構成である。)、昇降ソレノイド(シリンダ29用)、水平ソレノイド(シリンダ30用)、ブザー、表示部への出力回路等が接続している。
【0031】
上記ブーム44の上下移動は上下シリンダ29,29の伸縮速度を制御可能な構成としている。該伸縮速度の制御は詳細な説明と図示は省略するが、シリンダ作動用の油圧回路にある比例ソレノイドや分流弁による油圧制御により、シリンダ伸縮速度を調整することで行う。ただし上下シリンダ29,29の作動を可変モータで行う場合は前記可変モータの駆動制御で行う。
【0032】
図4の畦畔で旋回走行中の作業車両の平面図と
図5の畦畔での走行中の作業車両の正面図に示すように、図示例で左旋回する際の旋回外側の右の前輪12のタイヤ切れ角センサ46の検知により、旋回外輪側の右サイドブーム44を上下シリンダ29により自動的に上昇させる構成とする。この場合の制御フローチャートを
図6に示す。またその際の右サイドブーム44の上げ速度は、例えば予め決められた車速とサイドブーム44の上げ速度の関係から予め決めた車速の複数の規定範囲内でサイドブーム44の上げ速度も車速に相関させて段階的に変化させる。例えば車速が速いほどサイドブーム44の上げ速度を速める。
【0033】
一般に防除作業において、畦畔近傍で旋回作業へのサイドブーム44が畦畔に衝突することを回避する操作(上げ下げ操作)を手動操作以外の方法で行うのは困難である。そこで、上記構成により、自動で外輪側サイドブーム44を自動上下させることで、操作の容易化を図ることができ、かつ、車速に連動して外輪側サイドブーム44の上げ速度を変化させることで、(a)速い旋回時は外輪側サイドブーム44の上げ速度を速くして、外輪側サイドブーム44が畦畔に衝突する確率を低減し、(b)遅い旋回では、外輪側サイドブーム44の上げ速度もそれなりに遅くするので、作物に対する薬液付着率が良くなり(あまり、上がり過ぎていると作物とノズルの距離が空きすぎる)、(c)走行時の薬液飛散防止、作物に対する過剰な薬液散布低減効果がある。
【0034】
また同様に、車速センサ6の出力が大きければ大きいほどサイドブーム44の下げ速度が速まり、速い速度での旋回では、下げ速度も速くなり、すばやく規定のノズル45bの噴霧高さに到達するので、作物への薬液付着率が向上、車両走行時のドリフト低減につながる。一方、遅い速度での旋回時にはサイドブーム44の下げ速度も遅いので、下降中のサイドブーム44が作物や地面をたたく危険性は低減できる。
【0035】
また、
図7に示すように、旋回時の外輪側のサイドブーム44の上下動に連動して内輪側のサイドブーム44も上下動させるように制御を行うと、次のように作用効果がある。 すなわち、旋回時の遠心力により、前記自動水平制御動作用の自動水平センサ(傾斜センサ)63が傾きを感知して前記外輪側サイドブーム44が傾斜してしまう現象(外輪側から内輪側にかけて車体の横方向が下向きに下がる勾配が生じる現象)に対して、旋回時に内輪側のサイドブーム44を自動的に上下させることで作物や地面を叩く危険を回避できる。
すなわち、
図7に示す旋回始めに外輪側のサイドブーム44だけでなく、内輪側のサイドブーム44も上昇させ(矢印A)、その後折り返しターン時に左右のサイドブーム44を共に下降させる(矢印B)。このような制御をすることで前述のようにサイドブーム44が作物や地面を叩く不具合を回避できる。
【0036】
上記した旋回時のサイドブーム44の自動上下動制御において、外輪側のサイドブーム44の上げ量を内輪側のサイドブーム44の上げ量より大きくして差別することが望ましい。こうして、外輪側のサイドブーム44は大きく上げて畦畔を回避することを目的とするのに対して、内輪側サイドブーム44は水平制御の誤感知の補正分を補うために上昇させることを目的とし、必要以上に散布対象から内輪側のサイドブーム44のノズル45bが離れないので、効果的に圃場面に衝突することなく、薬液を作物に付着させることができる。
【0037】
図8には防除コントローラ表示部62、自動スイッチ64および防除ポンプスイッチ66などを配置している防除操作部61の斜視図を示すが、自動的にサイドブーム44の上下制御を行うことができる自動スイッチ64を設け、該自動スイッチ64を押す場合は自動、押さない場合は手動とすることができる。前記自動スイッチ64を押さない手動時には左右のサイドブーム十字レバー74を作業者が操作することでサイドブーム44を手動上昇作動させたり、手動上昇させなかったりする。これは、旋回時にいつもサイドブーム44が上下動すると思わぬ不具合が生じるので、作業者が任意に手動/自動を切り替えることで、局面に合った操作を実現でき、自動スイッチ64がない場合に比べて安全性も向上する。
【0038】
また、自動スイッチ64と防除ポンプスイッチ66がともに「オン」状態の時にサイドブーム44の自動上下制御機構が作動する構成にしておくと、自動スイッチ64を切り忘れた場合、圃場外でサイドブーム44を拡げて旋回した時などに、勝手にサイドブーム44が上下動することで障害物と衝突する不具合を回避できる。
【0039】
サイドブーム44の自動上下制御機構が必要なときは、基本的に防除ポンプ20が「オン」になっているので、自動スイッチ64のオンをすれば防除ポンプ20は作動し、また、しかも上記圃場外でサイドブーム44がうっかり作動することを回避できる。
このことを表1に示す。
【表1】
【0040】
本実施例の走行車両は、ステアリング制御に4WS以外のモード(FWS、RWS)を備えているが、自動スイッチ64がオンであれば、4WSスイッチ7bが「オン」状態のときにのみ、自動ブーム上下制御機構が作動し、4WSスイッチ7bが「オフ」であれば、たとえ自動スイッチ64がオンであっても自動ブーム上下制御機構が作動できない構成にすると、圃場外(路上など)で多用するFWSモードの設定時に、自動スイッチ64を切り忘れて旋回しても自動的にサイドブーム44が上下動しないので、思わぬ衝突を回避できる。
このことを表2に示す
【表2】
このように圃場内での旋回には4WSモードのみを使用するので、自動ブーム上下制御機構は4WSモードのみで作動する構成にしておくと、なんら支障がなくサイドブーム44を操作でき、安全である。
【0041】
本実施例の走行車両(防除機)は、
図9(a)の斜視図と
図9(b)の縦断面図に示すようにブーム格納を検知するブーム格納センサ67を左右のブーム受け40に設けている。ブーム受け40の底部に板バネ68とアクチュエータ69(リミットスイッチを作動させるピン)及びリミットスイッチ71を配置し、サイドブーム44の格納時に板バネ68にサイドブーム44の底面が当たると、板バネ68が変形してアクチェータ69を作動させ、該アクチェータ69の変形でリミットスイッチ71が作動する構成である。
このことを表3に示す。
【表3】
従って、左右のブーム格納センサ67のいずれかでも、検知していれば自動ブーム上下制御機構は作動しないようにしている。
【0042】
サイドブーム44が格納状態では一切、サイドブーム44を自動的に上下させる必要はなく、むしろ、自動上下制御機構を作動させると思わぬ不具合があり、ブーム受け40にサイドブーム44の移動の力が作用する理由で必要以上の荷重を与え、ブーム格納センサ67等が破損する恐れがある。しかし、上記左右のブーム格納センサ67のいずれかでも、検知していれば自動ブーム上下制御機構は作動しない構成にしておくと安全である。
【0043】
畦畔近辺での旋回では、タイヤ切れ角センサ46で旋回状態を検知してから自動ブーム上下制御機構を作動させてサイドブーム44を上昇させるのでは、サイドブーム44の上昇が遅すぎてブーム44が障害物に衝突するおそれがある。このような事態を回避するために、予め作業者がワンタッチ操作でサイドブーム44を規定量上昇させることが望ましい。
【0044】
そこで、サイドブーム44の手動操作用のサイドブーム十字レバー74(
図8)の操作でサイドブーム44を規定量上昇させることができれば、サイドブーム十字レバー74の本来の操作と混同することなくスムーズに作業できる。また、サイドブーム44の下げは旋回終了後、又は次工程の散布のための旋回を再び開始してハンドル14が所定角度以上に操舵されると自動的に下降するので、旋回中の操作を容易に行うことができる。
【0045】
例えば、
図4の直進部(ロ)地点(旋回手前)において、自動スイッチ64がオンであれば作業者がサイドブーム十字レバー74を上げ操作を一度するだけでサイドブーム44は継続して規定高さまで上昇する(規定時間上昇)。そして
図4の(イ)地点を超えて、畦に沿って一旦直線走行(これは直近距離を長くすることによりサイドブーム44による畦畔での散布漏れをなくして十分に薬液散布を可能とするためである。)した後、2回目の旋回をタイヤ切れ角センサ46が確認すると、自動的にサイドブームを下げる。この制御のフローチャートを
図10に示す。
なお、
図4の直進部(ロ)地点(旋回手前)において、自動スイッチ64がオフであれば作業者がサイドブーム十字レバー74を上げ操作する操作時間の間だけサイドブーム44は継続して上昇する。
【0046】
図11に示すように前後輪12,13にタイヤ切れ角センサ46を有するので、前後輪12,13の切れ角の出力を監視して4WS旋回状態を認識することができる。
ステアリング操作で自動モード(前進4WS、後進RWS)が選択できる場合に、本構成では前後輪12,13の切れ角を検知することで確実に4WSを認識可能にして自動ブーム上下制御機構によりサイドブーム44を上下動させるので、後進時のRWSモードで誤ってサイドブーム44が上下動することはない。
【0047】
図12のグラフの縦軸にタイヤ切れ角センサ46の出力(電圧値V)の大きさを示し、
図12のグラフの横軸に左旋回、直進及び右旋回時のタイヤ切れ角の大きさを示すが、
左旋回の判定はVF<VF1、VR>VR1、
右旋回の判定はVF>VF2、VR<VR2
であり、この左右の旋回判定の範囲内で
、4WSモードで走行中であることが分かる。
【0048】
なお、VFは前輪切れ角センサの出力値、VRは後輪切れ角センサの出力値であり、VF1、VR1はそれぞれタイヤ切れ角の所定値を表す。
これ以外の領域はFWS、RWS、4WSでも微調整領域と判定してブーム自動制御機構は作動させない。
【0049】
本実施例の薬液散布作業車両では、該作業車両に搭載して車速に連動して薬液を散布する防除機において、薬液濃度と車速等により薬液散布量を決めて防除ポンプの薬液吐出量を決める。なお、前記GPS受信機81はGPSからの車両速度情報と位置情報を得ることができる。