特許第5803154号(P5803154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803154
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20151015BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20151015BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20151015BHJP
   C23G 3/00 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   B08B3/12 Z
   B08B3/02 A
   B08B3/02 D
   H01L21/304 643D
   C23G3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-47507(P2011-47507)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2012-183465(P2012-183465A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古谷 ひとみ
【審査官】 平田 慎二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−066401(JP,A)
【文献】 特開2008−021672(JP,A)
【文献】 特開2010−062455(JP,A)
【文献】 特開2004−041851(JP,A)
【文献】 特開2002−079177(JP,A)
【文献】 特開2007−275788(JP,A)
【文献】 特開昭62−122132(JP,A)
【文献】 特開2008−060508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/12
B08B 3/02
C23G 3/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、超音波を超音波振動子から洗浄液に伝える振動部材と洗浄液の噴出口と吸引口と、を備えており、
前記振動部材は平板状の剛体であり、平板状の超音波振動子に接合されており、
前記洗浄液の噴出口と吸引口は、前振動部材の表面または前記振動部材が、被洗浄物が載置された平面に形成する垂直投影の内側に配置されている超音波洗浄装置において、
接合された超音波振動子と振動部材に形成された貫通孔によって形成された噴出口または吸引口であって、前記振動部材の幾何学的な中心点から見て、前記噴出口が前記吸引口より前記中心点に近い位置に配置されており、
振動部材に形成された噴出口および吸引口の総面積が、前記噴出口および吸引口が形成されているのと同一面の前記振動部材の表面積の20%〜80%であり、
周波数950KHz〜5MHz、出力0.1W〜30W、時間10秒〜10分、振動部材の表面(超音波の発信面)と被洗浄物との間隔を0.1mm〜5mm、なる条件下で洗浄を行なうことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
振動部材の材質が、石英またはダイヤモンドまたはアルミナまたはチタンまたは窒化珪素またはステンレス鋼、のいずれかであることを特徴とする請求項記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
振動部材と被洗浄物の距離を一定に保持する機構と前記振動部材を被洗浄物と並行に移動させる機構を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種フォトマスク、半導体ウェハ、ガラス基板、金属板等の板状の素材に付着した異物を、超音波を用いて除去する超音波洗浄装置に関するものである。特にフォトマスクの洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスク、半導体ウェハ、液晶ディスプレイ用基板等の基板を洗浄する方法として、例えば洗浄液を収容した槽(洗浄槽)に基板を浸漬し、槽の底部に設けた超音波振動子から超音波を発射して超音波洗浄を行う方法がある。超音波振動子に電圧を印加すると、固有の周波数の超音波が発生する。この超音波が洗浄槽内の洗浄液に伝えられることにより、洗浄液中の基板を物理的に洗浄することができる。
【0003】
また、ノズルに超音波振動子を装着し、ノズル内に噴出した洗浄液に超音波を与えた状態でその洗浄液を基板(被洗浄物)に向けて噴射することにより洗浄する方法が特許文献1に開示されている。また、棒状の振動部材を斜めに切断して超音波の発信面とし、切断面とは逆の端に超音波振動子を取り付けて、超音波の発信面を被洗浄物に対向して近接させ、微小間隔を保って超音波を与えながら、その側部から洗浄液を流入させて被洗浄物を洗浄する超音波装置が特許文献2に開示されている。
【0004】
例えば、従来の超音波洗浄装置として、図3(a)に示すように、振動部材11の一端は斜めに切断されて、超音波の発信面7が形成され、振動部材11の他端に膨大部11aが構成されて、この膨大部11aに超音波振動子12が装着され、この超音波振動子12を覆うように振動子ケース13が振動部材11の膨大部11aにパッキン14を介して図示していないネジで固定され、振動子ケース13の端部をケーブル15が貫通し、ケーブル15のコード15aが超音波振動子12に接続され、図3(b)に示すように、洗浄液噴出ノズル4の内部に洗浄液を噴出し、回転する被洗浄物9の上に洗浄液を噴出するとともに、この洗浄液に超音波振動子12からの超音波を与えて被洗浄物9を洗浄するようにしたものが提案されている。
【0005】
このような従来の超音波洗浄装置では、被洗浄物の回転中心から外周方向に向かって超音波振動子を揺動させ、同時に被洗浄物を高速回転させて、スパイラル状に回転中心部から外周方向へ向かう洗浄方法が採られて来たが、そのために、除去された異物が洗浄液と共に外周方向へ流され、再び被洗浄物に付着するという問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−62350号公報
【特許文献2】特開2006−326486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、被洗浄物に超音波を照射することにより除去された異物が被洗浄物へ再付着することを防止することができる超音波洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、本発明の請求項1による超音波洗浄装置は、
少なくとも、超音波を超音波振動子から洗浄液に伝える振動部材と洗浄液の噴出口と吸引口と、を備えており、
前記振動部材は平板状の剛体であり、平板状の超音波振動子に接合されており、
前記洗浄液の噴出口と吸引口は、前振動部材の表面または前記振動部材が、被洗浄物が載置された平面に形成する垂直投影の内側に配置されている超音波洗浄装置において、
接合された超音波振動子と振動部材に形成された貫通孔によって形成された噴出口または吸引口であって、前記振動部材の幾何学的な中心点から見て、前記噴出口が前記吸引口より前記中心点に近い位置に配置されており、
振動部材に形成された噴出口および吸引口の総面積が、前記噴出口および吸引口が形成されているのと同一面の前記振動部材の表面積の20%〜80%であり、
周波数950KHz〜5MHz、出力0.1W〜30W、時間10秒〜10分、振動部材の表面(超音波の発信面)と被洗浄物との間隔を0.1mm〜5mm、なる条件下で洗浄を行なうことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2による超音波洗浄装置は、
振動部材の材質が、石英またはダイヤモンドまたはアルミナまたはチタンまたは窒化珪素またはステンレス鋼、のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の超音波洗浄装置である。
【0010】
本発明の請求項3による超音波洗浄装置は、
振動部材と被洗浄物の距離を一定に保持する機構と前記振動部材を被洗浄物と並行に移動させる機構を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波洗浄装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の超音波洗浄装置によれば、被洗浄物から超音波の作用により異物が脱離し、且つ洗浄液と共に吸引、排出されるため、再付着することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の超音波洗浄装置の例を示す俯瞰図である。
図2】本発明の超音波波洗浄装置の例を示す断面図である。
図3】従来の超音波洗浄装置の例。(a)は超音波の発生部の例を示す概略図、(b)は構成の例を示す概略図である。
図4】評価用フォトマスクの例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の超音波洗浄装置の具体的構成についてその一例を詳細に説明する。なお
、後述する実施形態は、本発明の具体的な構成を示す一例であり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1は本発明の超音波洗浄装置の例を示す俯瞰図である。
図に示されているとおり、超音波振動子2と振動部材1は平面状をしており、接合されている。そして、超音波振動子2と振動部材1の双方を貫通するように設けた複数の孔3(以下、洗浄液噴出口3とも言う)に、複数の洗浄液噴出用のノズル4(以下、洗浄液噴出ノズル4とも言う)を備え、さらに前記洗浄液噴出口3の外周に前記超音波振動子2と振動部材1の双方を貫通するように設けた複数の孔5(以下、洗浄液吸引口5とも言う)に、洗浄液吸引用のノズル6(以下、洗浄液吸引ノズル6とも言う)とが備えられている。
洗浄を行う際には、振動部材1のうち、超音波振動子2と接していない面と微小間隙を設けて対向するように被洗浄物9を支持する機構を備えている。また、振動部材1を被洗浄物9と並行して移動させる機構を備えることもできる。
この時、洗浄液噴出ノズル4から洗浄液を吐出しながら、超音波振動子2を発振させて、振動部材1を振動させ、被洗浄物9を洗浄し、洗浄液吸引ノズル6から,被洗浄物9から除去された異物と共に洗浄液を吸引し排出する。
【0019】
このように構成された本発明の超音波洗浄装置8によれば、洗浄液噴出口3の外周部に設けた洗浄液吸引口5から洗浄液を吸引、排出することで、除去された異物が被洗浄物9へ再付着することを防ぐことができる。
より効果的な洗浄を行うためには,洗浄液噴出口3および洗浄液吸引口5の面積の和が、振動部材1の洗浄液噴出口3および洗浄液吸引口5と同一面の面積に対して、20%〜80%の範囲にある事が好ましい。その様にすると超音波振動が伝わり易く、洗浄を効果的に実施することができる。
【0020】
ここで、本発明の振動部材1としては、石英、ダイヤモンド、アルミナ、チタン、窒化珪素、ステンレス等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、超音波振動子2には各種の市販されているものを用いることができる。
超音波振動の出力や振動数は、フォトマスクの大きさや異物の種類によって、洗浄が効果的に行われるように設定されなければならない。例えば、周波数950KHz〜5MHz、出力0.1W〜30W、時間10秒〜10分、なる条件下で超音波洗浄を行うことが好ましい。この範囲外では、洗浄効果が不十分であるか、逆に洗浄効果が強過ぎるため、微細パターンを倒壊させる恐れがある。具体的な良好な洗浄条件を見出す為には、超音波の周波数、超音波出力、洗浄時間、被洗浄物との間隔、などを実験的に追及する必要があるのは言うまでも無い。振動部材1の表面(超音波の発信面7)と被洗浄物9との間隔(間隙)は、薬液で満たされていれば良いが、この間隔を0.1mm〜5mmとすることが好ましい。
【0021】
また、本発明の洗浄方法及び装置に用いることができる洗浄液として、純水、アンモニア水と過酸化水素水の混合液、硫酸と過酸化水素水の混合液、塩酸と過酸化水素水の混合液、硫酸、アンモニア水、過酸化水素水、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液、オゾンガス溶解水、水素ガス溶解水、窒素ガス溶解水、炭酸ガス溶解水、ヘリウムガス溶解水、アルゴンガス溶解水、界面活性剤を用いることができる。本願発明は洗浄の他にリンス工程でも使用可能である。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施例を具体的に説明するが、これはあくまで一例であり、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
まず、図1に示すような本発明の超音波洗浄装置を用い、本発明に係る超音波洗浄装置を用いた超音波洗浄方法で洗浄を行い、洗浄後の基板の洗浄不良について評価した。
この際、振動部材及び超音波振動子の双方の面に洗浄液噴出口を円状に5箇所形成し、さらにその外周に洗浄液吸引口を円状に5箇所形成し、その総面積は振動部材の面積(78.5cm)に対して30%とし、基板と超音波発信面の隙間は1mmとした。超音波の発振周波数は2MHz、発振出力は4Wとした。また、洗浄液噴出ノズルから22℃の洗浄液(アンモニア過酸化水素水;NHOH:H:HO=1:1:100)を毎分1.0Lで噴出し、洗浄液吸引ノズルから洗浄液(アンモニア過酸化水素水)を吸引し、基板全面の洗浄を2分間行った後、基板を回転させながら脱イオン水を3分間噴出し、乾燥窒素中で乾燥した。
【0023】
評価に用いた被洗浄物は、図4に示すフォトマスク基板上にMoSi(モリブデンシリ
コン)パターンが形成され、大きさが約300nmのSi(窒化ケイ素)粒子を使用して強制的に汚染を行った評価用フォトマスクを用いた。
その結果、評価用フォトマスクの表面に残ったSi粒子は強制的に汚染させたSi
粒子の個数のうち0.4%となり、計測誤差範囲内であり、再付着なく洗浄できた。
【0024】
<比較例>
また、図3(b)に示す従来の超音波洗浄装置を用い、実施例1と同じ評価用フォトマスクを用い、同じ条件の洗浄を行ったところ、強制的に汚染させたSi粒子の個数のうち、27.2%が洗浄後の評価用フォトマスクの表面に残り、洗浄不十分と判定した。
【0025】
なお、本発明は、上記で説明した実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は
例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0026】
1・・・振動部材
2・・・超音波振動子
3・・・洗浄液噴出口
4・・・洗浄液噴出ノズル
5・・・洗浄液吸引口
6・・・洗浄液吸引ノズル
7・・・超音波の発信面
8・・・本発明の超音波洗浄装置
9・・・被洗浄物
11・・・従来の振動部材
11a・・・膨大部
12・・・従来の超音波振動子
13・・・振動子ケース
14・・・パッキン
15・・・ケーブル
15a・・・コードa
16・・・従来の超音波洗浄装置
20・・・フォトマスク基板
21・・・MoSiパターン
22・・・評価用フォトマスク
23・・・Si(窒化ケイ素)粒子
図1
図2
図3
図4