特許第5803180号(P5803180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803180
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】ペダル傾斜角度の決定方法
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20151015BHJP
   B60K 26/02 20060101ALI20151015BHJP
   B60T 7/04 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   G05G1/30 E
   B60K26/02
   B60T7/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-60731(P2011-60731)
(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公開番号】特開2012-198611(P2012-198611A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】大坪 智範
(72)【発明者】
【氏名】上村 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】八代 洋二
(72)【発明者】
【氏名】岩本 麻美
(72)【発明者】
【氏名】國廣 真吾
(72)【発明者】
【氏名】堀上 正義
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−76534(JP,A)
【文献】 特開平8−142818(JP,A)
【文献】 特開平4−129885(JP,A)
【文献】 特開2010−73144(JP,A)
【文献】 特開2011−204193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
B60K 26/02
B60T 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操作足により踏み込み操作されるブレーキ側踏み込み面を有するブレーキペダルと、運転者の操作足により踏み込み操作されるアクセル側踏み込み面を有し当該アクセル側踏み込み面が前記ブレーキ側踏み込み面よりも前方に位置するよう配設されたアクセルペダルと、これらペダルを操作する運転者の操作足の踵部が載置されるフロア部とをそれぞれ有するとともに、前記フロア部から運転席シートの着座部分までの高さ距離がそれぞれ異なる複数種類の車両において、側面視での前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度と、側面視での前記ブレーキ側仮想接線の水平面に対する傾斜角度とを決定する方法であって、
前記ブレーキペダルは、その上記ブレーキ側踏み込み面が前上がりに傾斜する形状とされるとともに、上端枢支部を支点として揺動可能に支持された吊り式ペダルであり、
前記アクセルペダルは、その上記アクセル側踏み込み面が前上がりに傾斜する平面状とされるとともに、上記フロア部に設けられた下端ヒンジ部を支点として揺動可能に支持されたオルガン式ペダルであり、
側面視で、前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度を、前記フロア部のうち前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルの左右方向中間の部分に位置する特定の踵載置部を通り前記ブレーキ側踏み込み面と接するブレーキ側仮想接線の水平面に対する傾斜角度よりも大きくし、
側面視で、前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度を、前記アクセル側踏み込み面上の特定の部分であって前記特定の踵載置部からの距離が前記ブレーキ側踏み込み面と前記ブレーキ側仮想接線との接点と同じになる部分と、前記特定の踵載置部とを通る仮想基準線よりも、10度以上16度以下の範囲で設定された所定角度だけ急峻にし、
前記アクセル側踏み込み面上の特定の点と、前記ブレーキ側踏み込み面と前記ブレーキ側仮想接線との接点との前後方向の距離を、35〜55mmに設定するとともに、
前記フロア部から運転席シートの着座部分までの高さ距離がいほど、側面視での前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度と、側面視での前記ブレーキ側仮想接線の水平面に対する傾斜角度とを、それぞれ小さくすることを特徴とするペダル傾斜角度の決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のペダル傾斜角度の決定方法において、
前記フロア部から運転席シートの着座部分までの高さ距離が予め設定された基準範囲内の場合は、側面視でのアクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度を前記高さ距離によらず同一の角度とすることを特徴とするペダル傾斜角度の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転席シートに着座した運転者の操作足により踏み込み操作されるブレーキペダルおよびアクセルペダルと、前記操作足の踵部が載置されるフロア部とを備えた車両におけるペダル傾斜角度の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブレーキペダルあるいはアクセルペダルの操作性を高めるべくこれらペダル構造等の開発が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ブレーキペダルのうち運転者の操作足により踏み込み操作される踏み込み面を、リンク機構を介して支持し、運転者が踏み込み面を踏んで前方に移動させた際に、踏み込み面が前方に平行移動するように構成したペダル構造が開示されている。この構造によれば、操作足の足首の角度を一定に維持することができ、足首への負担を軽減することができるとともに踏み込み力を効率よく加えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−97335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、前記アクセルペダルとブレーキペダルについては、これらペダル個々の操作性の向上とともに、これらペダルの踏み替え操作が容易に短時間で行えることが望まれている。すなわち、この踏み替え操作の時間が長くなると、適切にアクセルペダルとブレーキペダルとを操作することができず操作性が悪化するとともに車両状態が適切な状態とされないおそれがあるため、この踏み替え操作時間の短縮化が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構成でアクセルペダルとブレーキペダルの踏み替え操作時間をより短くすることのできるペダル傾斜角度の決定方法を提供することを目的とする。
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、運転者の操作足により踏み込み操作されるブレーキ側踏み込み面を有するブレーキペダルと、運転者の操作足により踏み込み操作されるアクセル側踏み込み面を有し当該アクセル側踏み込み面が前記ブレーキ側踏み込み面よりも前方に位置するよう配設されたアクセルペダルと、これらペダルを操作する運転者の操作足の踵部が載置されるフロア部とをそれぞれ有するとともに、前記フロア部から運転席シートの着座部分までの高さ距離がそれぞれ異なる複数種類の車両において、側面視での前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度と、側面視での前記ブレーキ側仮想接線の水平面に対する傾斜角度とを決定する方法であって、前記ブレーキペダルは、その上記ブレーキ側踏み込み面が前上がりに傾斜する形状とされるとともに、上端枢支部を支点として揺動可能に支持された吊り式ペダルであり、前記アクセルペダルは、その上記アクセル側踏み込み面が前上がりに傾斜する平面状とされるとともに、上記フロア部に設けられた下端ヒンジ部を支点として揺動可能に支持されたオルガン式ペダルであり、側面視で、前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度を、前記フロア部のうち前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルの左右方向中間の部分に位置する特定の踵載置部を通り前記ブレーキ側踏み込み面と接するブレーキ側仮想接線の水平面に対する傾斜角度よりも大きくし、側面視で、前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度を、前記アクセル側踏み込み面上の特定の部分であって前記特定の踵載置部からの距離が前記ブレーキ側踏み込み面と前記ブレーキ側仮想接線との接点と同じになる部分と、前記特定の踵載置部とを通る仮想基準線よりも、10度以上16度以下の範囲で設定された所定角度だけ急峻にし、前記アクセル側踏み込み面上の特定の点と、前記ブレーキ側踏み込み面と前記ブレーキ側仮想接線との接点との前後方向の距離を、35〜55mmに設定するとともに、前記フロア部から運転席シートの着座部分までの高さ距離が長いほど、側面視での前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度と、側面視での前記ブレーキ側仮想接線の水平面に対する傾斜角度とを、それぞれ小さくすることを特徴とするペダル傾斜角度の決定方法を提供する。
【0008】
方法によれば、アクセル側踏み込み面がブレーキ側踏み込み面よりも前方に配置されるため、各ペダルが同時に踏み込まれるのを回避することができるとともに、操作頻度の高いアクセルペダルを、足首を伸ばしたより安楽な姿勢で操作することができる。
【0009】
しかも、この方法では、側面視で、前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度と、前記ブレーキ側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度とが互いに異なるようにされる。そのため、各踏み込み面の前後方向の位置が異なるよう設定されつつ前記各傾斜角度が同一に設定される場合、つまり、各踏み込み面が前後方向に平行に配置される場合に比べて、踵部の移動量を小さく抑えつつ各踏み込み面に対してより適切に踏み込み操作を行うことができる。具体的には、各踏み込み面が前後方向に平行に配置されている場合では、足首の折曲角度を適切な範囲に維持しつつ各踏み込み面を操作するためには、操作足を前後方向に移動させねばならない。これに対して、各踏み込み面の傾斜角度が異なっていれば、踵部を前後方向に移動させることなく足首の折曲角度を適切な範囲に維持しつつ各踏み込み面を操作することができる。
【0010】
また、この方法では、側面視で、前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度を、前記フロア部のうち前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルの左右方向中間の部分に位置する特定の踵載置部を通り前記ブレーキ側踏み込み面と接するブレーキ側仮想接線の水平面に対する傾斜角度よりも、大きくされる。そのため、吊り式のブレーキペダルを、拇指球によって仮想接線と直交する方向すなわち各踏み込み面の面直方向から踏み込み操作することができるとともに、オルガン式のアクセルペダルを、拇指球および拇指球から足先部分の領域によって操作することができ、各ペダルを効率よく操作することができる。
【0011】
また、この方法では、側面視で、前記アクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度が、前記アクセル側踏み込み面上の特定の点であって前記特定の踵載置部からの距離が前記ブレーキ側踏み込み面と前記ブレーキ側仮想接線との接点と同じになる点と、前記特定の踵載置部とを通る仮想基準線よりも、10度以上16度以下の範囲に設定された所定角度だけ急峻にされる。そのため、足裏のうち踵部と拇指球とを結ぶ線に対する拇指球から足先までの領域の角度である足指角度、10度以上16度以下の好ましい角度にすることができ、運転者は、足指角度を適正な角度としつつ、前記特定の踵載置部に踵部を固定した状態で各踏み込み面を踏み込み操作することができ、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み替え操作を容易に、かつ、短時間で行うことができる。
【0012】
また、この方法によれば、足首の角度を適切な角度としつつ、ヒップポイントの異なる車種間においてアクセルペダルを共通化することができ、コスト面で有利となる。
【0013】
さらに、前記フロア部から運転席シートの着座部分までの高さ距離すなわち運転者のヒップポイントが高くると、足首の折曲角度が一定の場合には、足首の水平面に対する角度が小さくなる。そのため、この方法を用いて、前記ヒップポイントが高い車種ほど前記アクセルペダルおよびブレーキペダルの水平面に対する傾斜角度を小さくすれば、足首の角度を各車種において一様に適切な角度とすることができる。
【0014】
の方法におい、前記フロア部から運転席シートの着座部分までの高さ距離が予め設定された基準範囲内の場合は、側面視でのアクセル側踏み込み面の水平面に対する傾斜角度を前記高さ距離によらず同一の角度とするのが好ましい(請求項)。
【0015】
このようにすれば、足首の角度を適切な角度としつつ、ヒップポイントの異なる車種間においてアクセルペダルを共通化することができ、コスト面で有利となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、アクセルペダルとブレーキペダルとの踏み替え操作を短時間で行うことができ、操作性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の参考例に係る運転席の下部構造を示した概略側面図である。
図2図1のアクセルペダル周辺を拡大して示す概略側面図である。
図3図2に対応する概略上面図である。
図4】運転者の安楽姿勢を説明するための図である。
図5】ヒップポイントの高さと足首角度との関係について示した図である。
図6】ヒップポイントの高さとアクセルペダルの適正角度との関係について示した図である。
図7】傾斜フロア部が設けられた車両の下部構造のうちアクセルペダル周辺を拡大した概略上面図である。
図8図7に対応する概略側面図である。
図9】本発明の実施形態に係る運転席の下部構造においてアクセルペダル周辺を拡大して示す概略側面図である。
図10図9に対応する概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る自動車に設けられる運転席の下部構造の参考例について図1図4を参照しながら説明する。
【0019】
図1及び図4、運転席周辺の構造を示した概略側面図である。図2は、図1の一部を拡大して示した概略側面図である。図3は、図2に対応する概略上面図である。以下では、車両前後方向を前後方向といい、車幅方向を左右方向という。
【0020】
図1に示すように、前記自動車の車体には、エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネル6と、ダッシュパネル6の下端部から後下がりの傾斜状態で後方に延びるキックアップ部7と、キックアップ部7の後端部に連続して後方に延びる略平坦なフロア部8とが設けられている。前記運転席のシート1は、前記ダッシュパネル6の後方であってフロア部8上に設けられている。運転席シート1は、運転者が着座する着座部分を構成するシートクッション1aと、運転者の背もたれを構成するシートバック1bとを有している。
【0021】
車室の前部であって前記ダッシュパネル6と前記運転席シート1との間には、運転席シート1に着座した運転者の操作足により踏み込み操作されるブレーキペダル10およびアクセルペダル20からなる操作ペダルが左右に並設されている。
【0022】
前記ブレーキペダル10およびアクセルペダル20は、それぞれ、各上端枢支部を支点として揺動可能に支持された吊り式ペダルである。各ペダル10,20は、それぞれ、上端枢支点から下方に延びる支持部12,22と、これら支持部12,22の下端に設けられて運転者の操作足による踏み込み操作を受ける被操作部14,24とを有している。各被操作部14,24は、それぞれ運転者の足裏面と対向する踏み込み面14a,24aを有している。各踏み込み面14a,24aは、それぞれ運転者がより適切に操作足の拇指球部Bmで踏み込み操作を行えるように、後斜め上方に向かって膨出するように湾曲している。すなわち、吊り式ペダルでは、操作足のうち拇指球部Bmでペダルを踏み込み操作するのが最も操作性がよいことが分かっており、本実施形態では、拇指球部Bmを適切に各踏み込み面14a,24aに当接させることができるよう、これら踏み込み面14a,24aを操作足に向かって膨出する形状としている。
【0023】
ブレーキ側踏み込み面14aと、アクセル側踏み込み面24aとは、これら踏み込み面14a,24aを運転者が同時に踏み込むという事態をより確実に回避するべく、その前後方向の位置が互いに異なるように配設されている。ここで、ブレーキペダル10よりもアクセルペダル20の操作回数の方が多いことが分かっている。そのため、本構造では、足首の角度が比較的小さくなりより安楽な姿勢で運転者がアクセルペダル20を操作できるよう、アクセル側踏み込み面24aを、ブレーキ側踏み込み面14aよりも前方に配置している。
【0024】
また、ブレーキ側踏み込み面14aと、アクセル側踏み込み面24aとは、図2および図3に示すように、フロア部8のうちブレーキペダル10とアクセルペダル20の左右方向中間の部分に位置する特定の踵載置部P2から、各踏み込み面14a,24aと接する線(ブレーキ側仮想接線x10,アクセル側仮想接線x20)を引いた場合に、各踏み込み面14a,24aと各仮想接線x10,x20との接点P10,P20から前記特定の踵載置部P2までの距離L10,L20が互いに同一となるように配設されている。なお、図2は側面図であり、図3は上面図であり、これら図におけるL10,L20は、各接点P10,P20から特定の踵載置部P2までの距離L10,L20を投影した長さである。
【0025】
前述のように、前記アクセル踏み込み面24aは、ブレーキ踏み込み面14aよりも前方に位置している。そのため、このようにブレーキ側仮想接線x10とブレーキ側踏み込み面14aとの接点P10から特定の踵載置部P2までの距離L10と、アクセル側仮想接線x20とアクセル側踏み込み面24aとの接点P20から特定の踵載置部P2までの距離L20とが同一の寸法であるのに伴って、側面視でのアクセル踏み込み面24aの水平面に対する傾斜角度、つまり、側面視でのアクセル側仮想接線x20の水平面に対する傾斜角度α20は、側面視でのブレーキ踏み込み面14aの水平面に対する傾斜角度、つまり、側面視でのブレーキ側仮想接線x10の水平面に対する傾斜角度α10よりも小さくなる。
【0026】
本実施形態では、前記特定の踵載置部P2は、平均身長者が安楽姿勢で運転席1に着座した状態で、この運転者の踵が載置される部分に設定されている。前記平均身長者は、米国人男性の平均身長である173cmを有する運転者である。
【0027】
なお、前記安楽姿勢とは、長期間に亘りその着座状態を維持できるとともに、ハンドル操作およびペダル操作等に適した着座姿勢である。具体的には、図4に示すように、操作足の足首の折曲角度、つまり、足首角度θ1が85°〜95°程度、膝角度θ2が115°〜135°程度、腰骨部から肩部までの上半身と大腿部との折曲角度θ3が約95°となる姿勢である。
【0028】
そして、ブレーキ側仮想接線x10とブレーキ側踏み込み面14aとの接点P10から特定の踵載置部P2までの距離L10と、アクセル側仮想接線x20とアクセル側踏み込み面24aとの接点P20から特定の踵載置部P2までの距離L20は、平均身長者の踵部Kmから拇指球部Bmまでの長さ(18cm)に設定されている。また、前記接点P10と接点P20の前後方向の距離、すなわち、アクセルペダル20とブレーキペダル10とにおいて拇指球部Bmが位置する点の前後方向の距離は、35〜55mmに設定されている。そして、これに伴って、側面視でのアクセル側仮想接線x20の水平面に対する傾斜角度α20と側面視でのブレーキ側仮想接線x10の水平面に対する傾斜角度α10との差は10°よりも小さく設定されている。
【0029】
以上のように構成された車両運転席の下部構造では、アクセル側踏み込み面24aがブレーキ側踏み込み面14aよりも前方に配置されている。そのため、これら踏み込み面14a,24aが同時に踏み込み操作されるのを回避することができる。そして、このようにアクセル側踏み込み面24aをブレーキ側踏み込み面14aよりも前方に配置しつつ、ブレーキ側仮想接線x10とブレーキ側踏み込み面14aとの接点P10から特定の踵載置部P2までの距離L10と、アクセル側仮想接線x20とアクセル側踏み込み面24aとの接点P20から特定の踵載置部P2までの距離L20とを、いずれも平均身長者の踵部Kmから拇指球部Bmまでの長さとして、側面視でのアクセル側仮想接線x20の水平面に対する傾斜角度α20を、側面視でのブレーキ側仮想接線x10の水平面に対する傾斜角度α10よりも小さく設定している。そのため、運転者、特に、平均身長者は、踵部Kmを前記特定の踵載置部P2に載置した状態で、各踏み込み面14a,24aをその拇指球部Bmで適切に踏み込み操作することができる。すなわち、運転者は、各ペダル10,20の踏み替え時に踵部Kmを移動させる必要がなく、踵部Kmを移動させる場合に比べて踏み替え操作の時間が短くなる。このように踏み替え操作の時間が短くなれば、各ペダル10,20を適切なタイミングで適切に操作することができ、操作性が向上するとともに運転安全性が向上する。さらに、運転者は、その拇指球部Bmを、各踏み込み面14a,24aに対して、前記アクセル側仮想接線x20およびブレーキ側仮想接線x10と直交する方向すなわち各踏み込み面14a,24aに対して面直方向から当接させることができ、各ペダル10,20に操作力を効率よく伝達してこれらペダル10,20を効率よく操作することができる。
【0030】
ここで、足首角度θ1を一定とした場合、図5に示すように、運転席1のシートクッション1aのフロア部8からの高さすなわち運転者のヒップポイントHmを高くすると、足裏面の水平面に角度θ11は小さくなる。そのため、この足首角度θ1を安楽姿勢である85°〜95°程度の値に維持するためには、各ペダル10,20の水平面に対する傾斜角度は、ヒップポイントHmの高さに応じて変更されるのが好ましい。すなわち、ヒップポイントHmの高さが異なる複数種類の車両では、車種毎に各ペダル10,20の傾斜角度を変更するのが好ましい。具体的には、ヒップポイントHmが高い車種ほど、各ペダル10,20の傾斜角度を小さくすればよい。このようにすれば、各車種において運転者の姿勢を安楽姿勢とすることができる。
【0031】
また、前記ヒップポイントHmは、同一車両においても、運転者がその身長に応じて前記シートクッション1aの上下位置を変更するのに伴い変更される場合がある。そのため、これに対応するべく、各ペダル10,20を、前記シートクッション1aの上下位置に対応して、その傾斜角度が変更されるように構成してもよい。
【0032】
ここで、車種毎に各ペダル10,20の傾斜角度を変更するのはコストがかかるという問題がある。これに対して、本発明者らは、ヒップポイントHmの高さを変更し、各高さ位置での適正なペダル角度について調べた。その結果、図6に示すように、ヒップポイントHmの高さの差が所定範囲内であれば、アクセルペダル20の適正角度は同一にすることができることを発見した。この図6の横軸は、ヒップポイントHmの高さであり、縦軸は、アクセルペダル20の適正角度である。このアクセルペダル20の適正角度とは、アクセル側仮想接線x20の水平面に対する傾斜角度であって、アクセル側踏み込み面24aを適正な踏み込み力で踏み込むことができる角度である。この図6に示すように、ヒップポイントHmの高さの差が基準高さh1,h2,h3を中心として基準範囲h0内にある場合は、アクセルペダル20の適正角度は同一となる。この基準範囲h0は、例えば、約30mmであり、基準高さh1,h2,h3の変化に伴う適正角度の変化量は例えば約4度である。なお、この図6では、基準範囲h0が基準高さh1,h2,h3によらず同一となっているが、基準範囲h0を基準高さh1,h2,h3毎に設定してもよい。
【0033】
そのため、コスト面からは、ヒップポイントHmの高さが異なる複数種類の車両においても、そのヒップポイントHmの高さの差が基準範囲h1内の場合は、車種毎に各ペダル10,20の傾斜角度を変更することなく、この傾斜角度を同一として適正な踏み込み力を確保しつつペダルの共通化を行うのが好ましい。
【0034】
なお、前記のように、ヒップポイントHmの高さが変化しても、各ペダル10,20の傾斜角度を変更することなく適正な踏み込み力が確保されるのは、この高さ変化が膝の角度変化で吸収されるためと考えられる。すなわち、膝角度は足首角度θ1よりもその許容範囲(運転者が安楽姿勢となる範囲)が広いため、足首角度θ1を適正角度に維持して適正な踏み込み力を確保した状態で膝角度θ2をヒップポイントHmの高さに合わせて変更しても、膝角度θ2を許容範囲内に維持することができると考えられる。
【0035】
また、前記特定の踵載置部P2は平均身長者以外の運転者が安楽姿勢にある状態で踵を載置する部分であってもよい。また、特定の踵載置部P2を平均身長者に合わせて設定しつつ、その他の身長者の操作性が高く確保されるよう前記フロア部8に図7および図8に示すような傾斜フロア部50を設けてもよい。具体的には、前記傾斜フロア部50は、ブレーキペダル10およびアクセルペダル20の後方において前上がりに傾斜する傾斜面55を有している。
【0036】
このような傾斜フロア部50が設けられていれば、平均身長よりも低い身長を有する運転者は、傾斜フロア部50のうち前記特定の踵載置部P2よりも前方、かつ、上方となる部分に踵部Kmを載置することで、踵から各ペダル10,20までの距離を短くしてこれらペダル10,20を適切に踏み込み操作することができる。また、平均身長者よりも高い身長を有する運転者は、傾斜フロア部50のうち前記特定の踵載置部よりも後方、かつ、下方となる部分に踵部Kmを載置することで、踵から各ペダル10,20までの距離を長くしてこれらペダル10,20を適切に踏み込み操作することができる。ここで、運転者の身長は主に150cm未満〜190cm程度であり、平均身長173cmはこの身長幅の中心値よりも高い。そのため、この幅の身長に対応するためには、前記傾斜フロア部50のうち前後中央よりも後側の部分に前記平均身長者の踵載置部である特定の踵載置部P2が位置するように構成するのが好ましい。また、各ペダル10,20に対して踵部を前後方向に移動させることが可能な量は、前側ほど少なく、身長が高く操作足の足裏の長さが長い運転者は、その踵部を後退させることで、踵部を各ペダルから適宜離間させることができるが、身長が低く足裏の長さが短い運転者であって、踵部を十分に前進させることができない場合には、運転者は踵部をフロア部8から浮かした状態でペダルを操作せねばならない。そのため、このように踵部をフロア部8から浮かした状態でのペダル10,20の操作をより確実に回避するためにも、前記傾斜フロア部50のうち前後中央よりも後側の部分に前記平均身長者の踵載置部である特定の踵載置部P2が位置するように構成するのが好ましい。
【0037】
次に、本発明に係る車両運転席の下部構造の実施形態について図9および図10を参照しながら説明する。
【0038】
図9、図2に対応する図であってアクセルペダル120およびブレーキペダル10の周辺を拡大して示した概略側面図である。図10は、図9に対応する概略上面図である。
【0039】
この実施形態は、前記参考例に対してアクセルペダルを吊り式ペダルからその下端ヒンジ部122を支点として揺動可能に支持されたオルガン式ペダルに変更したものである。
【0040】
この実施形態に係るアクセルペダル120は、その下端ヒンジ部122から上方に延びて運転者の操作足による踏み込み操作を受ける被操作部124を有している。具体的には、この被操作部124は、平板状であって前斜め上方に延びている。この被操作部124は、運転者の足裏面と対向する平面状の踏み込み面124aを有している。
【0041】
このように構成されたオルガン式のアクセルペダル120では、吊り式のアクセルペダルと異なり、運転者は、拇指球部Bmのみの操作ではなく、足裏のうち拇指球部Bm付近から足指までの足先部分Am全体でペダルを踏み込み操作することが分かっている。
【0042】
そして、発明者らは、標準的な靴を履いた状態でこの靴の足先部分Amによりペダル操作を行う場合には、足先部分Amとそれよりも後側部分、すなわち、踵部Kmと拇指球部Bmとを通る面に対する足先部分Amの傾斜角度θ110(図10参照)が10度以上16度以下の角度であるのが好ましいことを発見した。具体的には、靴を履いていない状態における踵部Kmと拇指球部Bmとを通る面に対する足先部分の傾斜角度である足指角度は15度以上21度以下が好ましく、標準的な靴では、その足先部分Amが着用者の足裏の足先部分に対して約5度傾斜しており、これより、踵部Kmと拇指球部Bmとを通る面に対する足先部分Amの傾斜角度θ110が10度以上16度以下の角度であるのが好ましいことが分かった。
【0043】
そこで、本実施形態では、図10に示すように、アクセル側踏み込み面124aのうち、特定の踵載置部P2からの距離がこの特定の踵載置部P2とブレーキ側踏み込み面14aのうちの拇指球部Bmが載置される部分との距離と同じになる部分P20(請求項の特定の部分に相当)と、特定の踵載置部P2と、を通る仮想線X120よりも、足先部分Amの傾斜角度θ110分、アクセル側踏み込み面124a急峻に傾斜させた。そして、これにより、足首角度を適正な角度とし、アクセルペダル120を足先部分Amで適正に操作可能としつつ、特定の踵載置部P2に踵を載置した状態でブレーキペダル10とアクセルペダル120との操作を可能とした。例えば、足先部分Amの傾斜角度θ110は15度に設定されている。
【0044】
本実施形態では、前記参考例と同様に、アクセルペダル20とブレーキペダル10とにおいて拇指球部Bmが位置する点の前後方向の距離が、35〜55mmに設定されている。すなわち、この実施形態と参考例とでは、同じ位置に各ペダル10,20の拇指球部Bmが位置している。
【0045】
ここで、このように本実施形態と前記参考例とにおいて各ペダル10,20における拇指球部Bmの位置が一致していることから、前記踵載置部P2を通りアクセルペダル20の拇指球部Bmを通る仮想線X120は、参考例に係るアクセル側仮想接線x20と一致する。なお、ブレーキペダル10の構成は、この実施形態と参考例とにおいて同様であるため、参考例に係るブレーキ側仮想接線x10と実施形態に係るブレーキ側仮想接線x10とは一致する。
【0046】
そして、前述のように、アクセルペダル20とブレーキペダル10とにおいて拇指球部Bmが位置する点の前後方向の距離が35〜55mmに設定された場合、側面視での参考例に係るアクセル側仮想接線x20の水平面に対する傾斜角度α20と側面視でのブレーキ側仮想接線x10の水平面に対する傾斜角度α10との差は10°よりも小さくなる。
【0047】
一方、前述のように、本実施形態において、アクセル側踏み込み面124aと仮想線X120との角度差(α120とα10との差)は、足先部分Amの傾斜角度θ110であって、10度以上16度以下となる。そのため、本実施形態では、アクセル側踏み込み面124aの水平面に対する傾斜角度α120は、ブレーキ側仮想接線x10の水平面に対する傾斜角度α10よりも大きくなっている。
【0048】
以上のように、実施形態においても、足首角度を適正な角度とし、アクセルペダル120を足先部分Amで適正に操作可能としつつ、特定の踵載置部P2に踵を載置した状態でブレーキペダル10とアクセルペダル120とを操作することができ、操作性および運転安全性を高めることができる。
【0049】
ここで、この実施形態においても、前記フロア部8に傾斜フロア50を設けてもよい。また、この実施形態においても、ヒップポイントHmの高さに応じてアクセルペダル120の傾斜角度を変更してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 運転席
8 フロア部
1a シートクッション(着座部分)
10 ブレーキペダル
12 ブレーキ側踏み込み面
20 アクセルペダル
22 アクセル側踏み込み面
P2 踵載置部
Hm ヒップポイント
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10