(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の前方に開口する開断面を有しかつフロントウインドの下辺部に沿って車幅方向に延びる開断面フレームと、開断面フレームの上面部と下面部とを連結するように当該開断面フレームの内部に設けられた支持部材とを備えたフロントウインドの支持構造であって、
上記開断面フレームは、その上面部の一部に、上記フロントウインドの下辺部を支持するウインド支持部を有し、
上記支持部材は、上記開断面フレームの上面部に取付けられる後側支持部と、後側支持部よりも車両の前方に離間した位置で上記開断面フレームの上面部に取付けられる前側支持部とを有し、
上記開断面フレームのウインド支持部は、車両の前後方向において上記前側および後側支持部の間に位置しており、
上記開断面フレームの上面部は、上記支持部材の後側支持部が取付けられる第1壁部と、第1壁部の前端部から前方に延びるとともに、上記支持部材の前側支持部が取付けられる第2壁部と、上記第1壁部の後端部から下方に延びる第3壁部とを有し、
上記第3壁部は、上記支持部材の後辺部よりもさらに後方に離間した位置に形成されている
ことを特徴とするフロントウインドの支持構造。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントウインド(例えばガラス製のフロントウインドガラス)を支持する構造として、下記特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された構造が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された構造では、
図14に示すように、カウルアウタパネル61とカウルインナパネル62とでカウル部63を構成し、カウルアウタパネル61に接着剤64を介してフロントウインドガラス65を支持させている。そして、カウルインナパネル62の下部前面からカウルアウタパネル61の前部背面に向けてブレース66を設け、このブレース66とカウルインナパネル62とカウルアウタパネル61との間に閉断面67を形成することにより、フロントウインドガラス65の支持剛性を高めて、NV(nois、vibration)性能、つまり、ノイズおよび振動を低減する性能を確保している。また、上述のブレース66の上下方向中間部に折れ部66aを設け、上方からの衝撃荷重入力時に、折れ部66aを起点としてブレース66の変形を促進することで、車両が歩行者に対し前向きに衝突(前突)したときの歩行者の保護を図っている。なお、
図14において、矢印Fは車両の前方を示す。このことは、後述する
図15、
図16でも同様である。
【0004】
図14に示す従来構造においては、NV性能と歩行者保護性能との両立を図ることができる利点がある反面、ブレース66を用いてカウル部63の内部に閉断面67を形成する必要があるため、カウル部63周りのレイアウトに制約を受ける問題点があった。
【0005】
特許文献2に開示された構造では、
図15に示すように、カウルアウタパネル71とカウルインナパネル72とで開断面構造のカウル部73を構成し、カウルアウタパネル71に接着剤74を介してフロントウインドガラス75を支持させている。そして、カウルインナパネル72の下部前方にパネル材76を設けるとともに、このパネル材76の後部上面と、上述のカウルアウタパネル71の前部背面との間に上下方向に延びるレインフォースメント77を設けることにより、カウル部73の上下方向の剛性を確保して、NV性能の向上を図ったものである。
【0006】
このように、
図15に示す従来構造においては、カウル部がもつ高い剛性によりNV性能を確保することが可能であるが、その反面、前突時の歩行者保護については別途対策が必要になる。すなわち、
図15の従来構造では、歩行者保護性能を確保するために、同図に示すエアバッグ装置78を設ける等、上方からの衝撃荷重の入力時にレインフォースメント77を座屈または変形させる手段を別途設けることが不可欠となり、構造が複雑化する問題点があった。
【0007】
特許文献3に開示された構造では、
図16に示すように、カウルアウタパネル81とカウルインナパネル82とでカウル部83を構成し、カウルアウタパネル81に接着剤84を介してフロントウインドガラス85を支持させている。そして、カウルインナパネル82の下部前面とカウルアウタパネル81の前部下面との間に設けられるブレース86の上下方向中間位置に折れ部86aを設け、上方からの衝撃荷重入力時に、折れ部86aを起点としてブレース86の変形を促進することで、歩行者保護を図っている。
【0008】
このように、
図16に示す従来構造においては、歩行者保護性能を確保することができる利点がある反面、NV性能の点では劣るという問題があった。すなわち、
図16の従来構造では、カウルアウタパネル81の下面を支持する支持部が、ブレース86の上端に形成された前後幅の小さい折曲げ部86bの一箇所のみであるため、車両の走行時にフロントウインドガラス85に作用する力(走行風等による力)に起因して、該フロントウインドガラス85全体が太鼓膜のように振動し、その膜振動によるこもり音が車室内騒音として感知されてしまうという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、NV性能の確保と歩行者保護性能の確保との両立を図ることができるフロントウインドの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのものとして、
本願の第1の発明は、車両の前方に開口する開断面を有しかつフロントウインドの下辺部に沿って車幅方向に延びる開断面フレームと、開断面フレームの上面部と下面部とを連結するように当該開断面フレームの内部に設けられた支持部材とを備えたフロントウインドの支持構造であって、上記開断面フレームは、その上面部の一部に、上記フロントウインドの下辺部を支持するウインド支持部を有し、上記支持部材は、上記開断面フレームの上面部に取付けられる後側支持部と、後側支持部よりも車両の前方に離間した位置で上記開断面フレームの上面部に取付けられる前側支持部とを有し、上記開断面フレームのウインド支持部は、車両の前後方向において上記前側および後側支持部の間に位置して
おり、上記開断面フレームの上面部は、上記支持部材の後側支持部が取付けられる第1壁部と、第1壁部の前端部から前方に延びるとともに、上記支持部材の前側支持部が取付けられる第2壁部と、上記第1壁部の後端部から下方に延びる第3壁部とを有し、上記第3壁部は、上記支持部材の後辺部よりもさらに後方に離間した位置に形成されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0012】
この第1の発明によれば、前方に開口した開断面を有する開断面フレームの上面部に、フロントウインドを支持するウインド支持部を設けたので、車両の前突時(フロントウインドに歩行者が乗り上げたとき)に開断面フレームの上面部が比較的容易に変形し、歩行者保護性能を良好に確保することができる。
【0013】
しかも、支持部材は、開断面フレームの上面部を支持する部分として、前後方向に離間した前側および後側支持部を有しているので、これら各支持部の間に空間が形成されることにより、開断面フレームの上面部の下方への変形がより促進される。
特に、開断面フレームの第3壁部と支持部材の後辺部との間に空間が形成されるので、車両の前突時に開断面フレームおよび支持部材の変形を促進することができる。また、上記空間の存在により、空調用の空気の通路を適正に確保することができる。
【0014】
さらに、上記のように前後方向に離間した複数箇所(前側および後側支持部)で開断面フレームの上面部を支持することにより、フロントウインドへの衝撃荷重の入力がない非衝突時(通常時)において、フロントウインドおよびカウルパネルの振動、およびそれに伴う車室内のこもり音を効果的に防止することができる。
【0015】
このように、
本願の第1の発明によれば、NV性能の確保と歩行者保護性能の確保との両立を図ることができる。
【0016】
上記第1の発明において、好ましくは、上記支持部材は、正面視で上下方向に直線状に延びるように形成されている(請求項2)。
【0017】
この構成によれば、支持部材が上下方向の振動に対して強い構造となり、非衝突時(前突時)におけるフロントウインドの振動抑制をより効果的に図ることができる。
【0018】
上記第1の発明において、好ましくは
、上記第1壁部と第2壁部とのつながり部に、所定の交差角度をもった折曲部が形成されており、上記折曲部は、車両の前後方向において上記前側および後側支持部の間に位置している(請求項3)。
【0019】
この構成によれば、車両の前突時に、開断面フレームの第2壁部が折曲部を起点として下方に容易に変形するため、歩行者保護性能をより高めることができる。
【0020】
上記構成において、より好ましくは、上記ウインド支持部が上記第2壁部の後方側の一部によって構成され、上記第2壁部のうちウインド支持部よりも前方に位置する部分に上記前側支持部が取付けられ、上記前側支持部が取付けられる第2壁部の前方部は、上記ウインド支持部よりもフロントウインドから下方に離間した位置に形成されている(請求項4)。
【0021】
この構成によれば、車両の前突時に、ウインド支持部の下方への変形が第2壁部の前方部によって阻害されることがなく、ウインド支持部を含む開断面フレームの上面部の変形がより効果的に促進される。
【0022】
上記第1の発明において、好ましくは、上記支持部材は、上記開断面フレームの上面部から下面部までの間を車両の後方かつ下方に向かって傾斜するように延びるフレーム部を有し、上記フレーム部の延設方向は、上記フロントウインドの膜振動による荷重の入力方向と一致する(請求項5)。
【0023】
この構成によれば、車両の非衝突時(通常時)に、フロントウインドから入力される振動荷重を、その荷重の入力方向と平行なフレーム部によって効率よく吸収することができ、より一層効果的に振動の低減を図ることができる。
【0026】
また、本願の第2の発明は、車両の前方に開口する開断面を有しかつフロントウインドの下辺部に沿って車幅方向に延びる開断面フレームと、開断面フレームの上面部と下面部とを連結するように当該開断面フレームの内部に設けられた支持部材とを備えたフロントウインドの支持構造であって、上記開断面フレームは、その上面部の一部に、上記フロントウインドの下辺部を支持するウインド支持部を有し、上記支持部材は、上記開断面フレームの上面部に取付けられる後側支持部と、後側支持部よりも車両の前方に離間した位置で上記開断面フレームの上面部に取付けられる前側支持部とを有し、上記開断面フレームのウインド支持部は、車両の前後方向において上記前側および後側支持部の間に位置しており、上記開断面フレームの上面部は、上記支持部材の後側支持部が取付けられる第1壁部と、第1壁部の前端部から前方に延びるとともに、上記支持部材の前側支持部が取付けられる第2壁部と、上記第1壁部の後端部から下方に延びる第3壁部とを有し、上記第1壁部と第3壁部とのつながり部に、鋭角の交差角度をもった折曲部が形成されている
ことを特徴とするものである(
請求項6)。
【0027】
この第2の発明によれば、鋭角の交差角度をもった折曲部を起点として開断面フレームがより容易に変形するため、歩行者保護性能をさらに高めることができる。
【0028】
上記
第2の発明において
、好ましくは、上記支持部材は、上記後側支持部から下方に延びる後側フレーム部と、上記前側支持部から下方に延びる前側フレーム部とを有し、上記後側フレーム部は、上記上面部の第3壁部と後側フレーム部の間に上下方向に亘って一定値以上の隙間が確保されるように、上記後側支持部から前方かつ下方へと向かって傾斜して延びている(
請求項7)。
【0029】
この構成によれば、後側フレーム部と第3壁部との間に十分広い空間が確保されるため、車両の前突時に開断面フレームおよび支持部材の変形がより効果的に促進される。
【0030】
また、本願の第3の発明は、車両の前方に開口する開断面を有しかつフロントウインドの下辺部に沿って車幅方向に延びる開断面フレームと、開断面フレームの上面部と下面部とを連結するように当該開断面フレームの内部に設けられた支持部材とを備えたフロントウインドの支持構造であって、上記開断面フレームは、その上面部の一部に、上記フロントウインドの下辺部を支持するウインド支持部を有し、上記支持部材は、上記開断面フレームの上面部に取付けられる後側支持部と、後側支持部よりも車両の前方に離間した位置で上記開断面フレームの上面部に取付けられる前側支持部とを有し、上記開断面フレームのウインド支持部は、車両の前後方向において上記前側および後側支持部の間に位置しており、上記開断面フレームの上面部および下面部は、それぞれ、カウルパネルおよびダッシュアッパパネルであり、上記カウルパネルおよびダッシュアッパパネルとの接合箇所よりも上方に位置するカウルパネルの前後2箇所に、上記支持部材の前側および後側支持部が取付けられるとともに、上記接合箇所よりも下方に位置するダッシュアッパパネルの所定部位に、上記支持部材の下端部が取付けられる
ことを特徴とするものである(
請求項8)。
【0031】
この第3の発明によれば、開断面フレーム(カウルパネルおよびダッシュアッパパネル)の上下方向の剛性が十分に確保されるため、車両の非衝突時(通常時)にフロントウインド等の振動をより効果的に低減することができる。
【0032】
上記
第3の発明において
、好ましくは、上記支持部材は、上記開断面フレームの車幅方向の中間位置に配設され、上記支持部材よりも車幅方向の外側に位置する開断面フレームの左右両側方部に、一対の補助部材が設けられ、各補助部材は、上記カウルパネルとダッシュアッパパネルとの接合箇所に取付けられる下端部と、当該接合箇所よりも上方に位置する上記カウルパネルの所定部位に取付けられる上端部とを有する(
請求項9)。
【0033】
このように、フロントウインドの振動が大きい車幅方向の中間位置の振動荷重を支持部材で支持し、フロントウインドの振動が相対的に小さい車幅方向の側方位置の振動荷重を補助部材で支持するようにした場合には、車両の非衝突時(通常時)に、フロントウインドの振動を全体的に効率よく低減することができる。
【0034】
上記構成において、より好ましくは、上記支持部材は、板厚方向が車幅方向に一致する姿勢で配置された板材からなり、上記補助部材は、板厚方向が車幅方向と直交する姿勢で配置された板材からなる(
請求項10)。
【0035】
このように、車幅方向の複数箇所に、向きの異なる複数の板材を支持部材および補助部材として配置した場合には、フロントウインドの振動をより効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、NV性能の確保と歩行者保護性能の確保との両立を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は本発明の第1実施例にかかるフロントウインドの支持構造を備えた車両前部の斜視図、
図2は
図1の部分斜視図、
図3はフロントウインドの支持構造を示す概略斜視図、
図4は
図3のA−A線矢視断面図、
図5は
図3のB−B線矢視断面図である。なお、図中、矢印Fは車両の前方を示す。
【0039】
図1、
図2に示すように、車両の前部には、エンジンルーム1の上方を開閉可能に覆うボンネット2が設けられ、このボンネット2の下面には、ボンネットレインフォースメント(図示せず)が一体的に接合されている。
【0040】
また、
図1に示すように、エンジンルーム1の前方部には、フロントバンパの外表面を構成するバンパフェイス3が設けられると共に、エンジンルーム1の側方部には、バンパフェイス3の左右両端部から車両後方に延びる一対のフロンフェンダパネル4が設けられている。各フロントフェンダパネル4は、ボンネット2の側部に沿って前後方向に延びており、その後端部は、図示しないフロントピラーの下部とヒンジピラーの前部との間を覆うように上下方向に延びている。バンパフェイス3は、車幅方向に延びる樹脂製のパネル材からなり、その中央部分には、走行風の取入れ部5,6が形成されている。
【0041】
ボンネット2の後方には、例えばガラス製または強化プラスチック製の透明なパネル材からなるフロントウインド11が設けられている。フロントウインド11は、左右のフロントピラー(図示せず)の間を覆うように車幅方向に延びるとともに、ボンネット2の後端近傍から上方かつ後方に(後上がりの傾斜状に)立上がるように設けられている。
【0042】
さらに、
図4、
図5に示すように、エンジンルーム1と車室7との間には、両者を車両の前後方向に仕切るダッシュロアパネル10が設けられているとともに、このダッシュロアパネル10の上側には、ダッシュアッパパネル9が設けられている。
【0043】
これらダッシュアッパパネル9およびダッシュロアパネル10は、
図3に示すように、何れも車幅方向の略全域に亘って延びるパネル材からなる。ダッシュロアパネル10は、上下方向に延びる本体部10aと、この本体部10aの上端部から車両前方に延びるフランジ状の取付け片10bとを備えている。
【0044】
ダッシュアッパパネル9は、
図4、
図5に示すように、ダッシュロアパネル10の取付け片10bに溶接により接合される略平坦な取付け片9aと、この取付け片9aの後端から後方かつ上方に(後上がりの傾斜状に)立上がる本体部9bと、この本体部9bの後端から後方に延びるフランジ状の取付け片9cとを一体に有している。
【0045】
なお、ダッシュアッパパネル9における本体部9bの車幅方向一端部(本実施例では車両右端の端部)には、
図3に示すように、空調風の取入れ口19が形成されている。
【0046】
ダッシュアッパパネル9の上側には、フロントウインド11を車室内側から支持するカウルパネル12が取付けられている。
【0047】
カウルパネル12は、フロントウインド11の下辺部に沿って車幅方向に延びるパネル材であって、ダッシュアッパパネル9の取付け片9cに溶接により接合される略平坦な取付け片13と、この取付け片13の前端部から上方かつ前方へと傾斜して延びる立上り部14と、この立上り部14の上端部から前方に延びる水平部15と、この水平部15の前端部から下方かつ前方へと傾斜して延びる延出部16とを有している。水平部15と延出部16とは所定の交差角度θ1(本実施例では鈍角)でつながっており、そのつながり部には丸みのない折曲部W1が形成されている。
【0048】
上記のように取付け片9c,13どうしの接合箇所を介して互いに接合されるカウルパネル12とダッシュアッパパネル9とにより、車両の前方に開口する開断面18を有する開断面フレームOFが形成されている。すなわち、開断面フレームOFは、カウルパネル12からなる上面部と、ダッシュアッパパネル9からなる下面部とを有しており、これら上面部および下面部が後側の1箇所のみで接合される(前側は接合されない)ことにより、前方に開口しかつ車幅方向に延びる開断面フレームOFが形成されている。このように、本実施例の車両は、フロントウインド11を支持する部分の構造材を、閉断面ではなく開断面を有するフレーム材(開断面フレームOF)によって構成した、いわゆるオープンカウル構造の車両とされている。
【0049】
カウルパネル12(開断面フレームOFの上面部)の延出部16は、その後方側の一部に、フロントウインド11の下辺部を支持するウインド支持部16aを有している。具体的に、ウインド支持部16aの上面には接着剤17が塗布されており、この接着剤17を介してフロントウインド11の下辺部がウインド支持部16aに接合されている。
【0050】
延出部16のうちウインド支持部16aよりも前方に位置する部分は、フロントウインド11から離間する方向(下方)に折り曲げられており、当該部とフロントウインド11との間には所定の隙間が形成されている。
【0051】
開断面フレームOFの内部(開断面18)には、
図3、
図4に示すように、開断面フレームOFの上面部と下面部(カウルパネル12とダッシュアッパパネル9)とを連結するように上下方向に延びる支持部材20が設けられている。
【0052】
この支持部材20は、カウルパネル12の前端部(延出部16)とそこから後方に離間した部分(水平部15)との2箇所を支持することで、カウルパネル12に入力される振動を抑制するものである。
【0053】
また、上記支持部材20による2箇所の支持部の間には、車両の前突時にフロントウインド11が上方からの衝撃荷重を受けた時に、カウルパネル12の下方への変形を許容するための空間X(変形許容領域)が形成されている。
【0054】
図6は、開断面フレームOFを車両前方から見た状態で示す正面図である。上記支持部材20は、カウルパネル12とダッシュアッパパネル9とからなる開断面フレームOFの車幅方向の中間位置(本実施例では中央位置)に配設されており、開断面フレームOFの左右の両側方部には、一対の補助部材30が設けられている。
【0055】
図6の正面図に示すように、支持部材20は、正面視で上下方向に直線状に延びるように形成されている。支持部材20がこのような形状を有することで、フロントウインド11から入力される上下方向の振動が支持部材20によって効率よく吸収される。
【0056】
図7の(a)は支持部材20の斜視図を示している。この
図7(a)および先の
図3、
図4、
図6に示すように、支持部材20は、上下方向に延びる後側フレーム部21と、後側フレーム部21よりも前方位置において上下方向に延びる前側フレーム部22と、これら各フレーム部21,22の上部どうしを前後方向に連結する連結部23と、後側フレーム部21の上端部に一体に折曲げ形成されたフランジ状の後側支持部24と、前側フレーム部22の上端部に一体に折曲げ形成されたフランジ状の前側支持部25と、を備えている。このような支持部材20は、その板厚方向(より詳しくは、前側および後側支持部25,24と後述するフランジ部27とを除いた主要部分の板厚方向)が車幅方向に一致する姿勢で、開断面フレームOFの内部に取り付けられている。
【0057】
また、後側フレーム部21と前側フレーム部22とは側面視でV字状に形成されており、これら両フレーム部21,22の下部は一体化された共通部26(
図4、
図7参照)とされている。共通部26の下端部には、フランジ部27が一体に折曲げ形成されている。なお、本実施例では、上述の前側および後側支持部25,24と、フランジ部27との折曲げ方向は全て同一方向に設定されている。
【0058】
前側および後側フレーム部22,21の間には、後側フレーム部21、前側フレーム部22、連結部23、共通部26により囲まれたほぼ三角形の空間Yが形成されている。この空間Yは、前側および後側支持部25,24の間に形成される上記空間Xに対し、連結部23を隔てた下方に位置している。
【0059】
図4に示すように、支持部材20の後側フレーム部21は、後側支持部24を介してカウルパネル12の水平部15に取り付けられている。すなわち、カウルパネル12の水平部15の下面に後側支持部24がスポット溶接等の手段により接合されるとともに、その接合部(後側支持部24)からダッシュアッパパネル9に向けて下方に延びるように後側フレーム部21が形成されている。後側支持部24は、フロントウインド11が支持されるウインド支持部16a(接着剤17による接着箇所)よりも後方側で、かつ折曲部W1よりも後方側に位置している。
【0060】
また、同図に示すように、支持部材20の前側フレーム部22は、前側支持部25を介してカウルパネル12の延出部16に取り付けられている。すなわち、カウルパネル12の延出部16の下面に前側支持部25がスポット溶接等の手段により接合されるとともに、その接合部(前側支持部25)からダッシュアッパパネル9に向けて下方に延びるように前側フレーム部22が形成されている。前側支持部25は、フロントウインド11が支持されるウインド支持部16a(接着剤17による接着箇所)よりも前方側で、かつ折曲部W1よりも前方側に位置している。
【0061】
上記支持部材20の下側のフランジ部27は、ダッシュアッパパネル9の本体部9bの上面にスポット溶接等により接合されており、このフランジ部27を介して、上記前側および後側フレーム部22,21の下端部(共通部26)がダッシュアッパパネル9に取付けられている。
【0062】
ここで、上記カウルパネル12(開断面フレームOFの上面部)のうち、上記支持部材20の後側支持部24が取付けられる水平部15は、本発明にかかる第1壁部に相当し、上記前側支持部25が取付けられる延出部16は、本発明にかかる第2壁部に相当する。また、上記水平部15(第1壁部)の後端部から下方に延びる立上り部14は、本発明にかかる第3壁部に相当する。
【0063】
図4における矢印αは、車両の走行時にフロントウインド11に作用する力(走行風等による力)に起因してフロントウインド11に膜振動が生じたときの振動の方向を表している。
図4に示すように、前側フレーム部22は、上記フロントウインド11の膜振動に伴いカウルパネル12に入力される荷重の入力方向(矢印α)と平行に延びるように配置されている。すなわち、前側フレーム部22は、カウルパネル12からダッシュアッパパネル9までの間を後方かつ下方に向かって傾斜するように(後下がりの傾斜状に)延びており、この前側フレーム部22の延設方向は、上記膜振動による荷重の入力方向と一致するように設定されている。
【0064】
後側フレーム部21は、その後方に位置するカウルパネル12の立上り部14とほぼ平行に延びる方向、つまり、上述した前側フレーム部22よりも垂直に近い方向に延びるように配置されている。後側フレーム部21は、上記カウルパネル12の立上り部14よりも車両前方に離間して設けられており、これら後側フレーム部21および立上り部14の間には空間Zが形成されている。空間Zの前後幅、つまり後側フレーム部21と立上り部14との隙間は、上下方向に亘ってほぼ一定値に設定されている。
【0065】
図7(b)は補助部材30の斜視図を示し、この補助部材30は本体部31と、この本体部31の下端に一体に折曲げ形成された下端フランジ部32と、本体部31の上端に一体に折曲げ形成された上端フランジ部33と、を備えている。
【0066】
補助部材30は、特に
図5に示すように、下端フランジ部32がカウルパネル12とダッシュアッパパネル9との接合箇所(取付け片9c,13の間)に取付けられるとともに、上端フランジ部33がカウルパネル12の延出部16に取付けられることにより、上記カウルパネル12とダッシュアッパパネル9との間に固定されている。具体的に、補助部材30の上端フランジ部33は、カウルパネルの取付け片13とダッシュアッパパネル9の取付け片9cとの間に挟まれた状態で、スポット溶接等の手段により各取付け片9c,13と接合されている。また、補助部材30の下端フランジ部32は、カウルパネル12の延出部16におけるウインド支持部16a(フロントウインド11が接着剤17により接着される箇所)よりも前方に位置する部分に、スポット溶接等の手段により接合されている。
【0067】
図3、
図6に示すように、一対の補助部材30のうち、車両右側(
図3、
図6上では左側)の補助部材30は、空調風の取入れ口19と車幅方向において重複する位置に取付けられている。しかしながら、補助部材30が上述したような構造で取付けられているため、上記右側の補助部材30により空調風の取入れ口19が閉塞されることはない。
【0068】
次に、以上の
図1〜
図7を用いて説明した実施例に基づく作用について説明する。
【0069】
まず、フロントウインド11に対する上方からの衝撃荷重の入力がない非衝突時(通常時)の作用について説明する。
図4に示すように、上記実施例では、側面視略V字状の支持部材20に備わる前後方向に離間した2箇所の支持部(前側および後側支持部25,24)によってカウルパネル12(開断面フレームOFの上面部)が支持されているので、フロントウインド11からカウルパネル12に入力される振動荷重(車両の走行時に生じるフロントウインド11の膜振動による振動荷重)を支持部材20によって効率よく吸収することができる。これにより、フロントウインド11およびカウルパネル12の振動が十分に抑制されるため、フロントウインド11の振動に伴うこもり音(フロントウインド11が走行時に膜振動を起こすことで車室7内に発生するこもり音)を効果的に防止することができる。
【0070】
また、
図6に正面図で示すように、支持部材20は、正面視で上下方向に直線状に延びるように形成されているので、この支持部材20が上下方向の振動に対して強い構造となり、カウルパネル12およびフロントウインド11の振動抑制をより効果的に図ることができる。
【0071】
さらに、
図4に示すように、支持部材20の後側フレーム部21と前側フレーム部22との上部どうしを連結部23により前後方向に連結しているので、支持部材20によりフロントウインド11等の振動をより一層効果的に低減することができる。
【0072】
また、
図4に示すように、支持部材20の前側フレーム部22は、フロントウインド11からカウルパネル12に入力される振動荷重の入力方向(矢印α)と平行に延びるように設けられているので、上記振動荷重を前側フレーム部22によって効率よく吸収でき、フロントウインド11等の振動をより一層効果的に低減することができる。
【0073】
加えて、
図3、
図6等に示すように、カウルパネル12およびダッシュアッパパネル9からなる開断面フレームOFの車幅方向の中間位置に支持部材20が配設されるとともに、この支持部材20よりも車幅方向の外側に位置する開断面フレームOFの左右両側方部に一対の補助部材30が配設されているため、フロントウインド11の振動が大きい車幅方向の中間位置の振動荷重を支持部材20で支持し、フロントウインド11の振動が相対的に小さい車幅方向の側方位置の振動荷重を補助部材30で支持することにより、フロントウインド11の振動を全体的に効率よく低減することができる。
【0074】
図4に示すように、支持部材20およびその周囲に、空間X,Y,Zが形成されているので、これら空間X,Y,Zにより空調用の空気の通路を確保することができる。したがって、支持部材20を配設しても、図示しないカウルグリルの開口から開断面フレームOFの内部(開断面18)に空気が流入したときに、その空気が空調風の取入れ口19に向けて流動することが阻害されない。
【0075】
次に、フロントウインド11に歩行者が乗り上げる前突事故が起き、フロントウインド11に上方からの衝撃荷重が入力された場合の作用について説明する。
図4に示すように、上記実施例では、フロントウインド11の前辺部を支持する部材である開断面フレームOF(カウルパネル12およびダッシュアッパパネル9)が、車両の前方に開口した開断面18を有する形状とされているので、上記荷重入力時に開断面フレームOF(特にカウルパネル12の前端部)が容易に変形し、歩行者保護性能を良好に確保することができる。
【0076】
しかも、
図4に示すように、支持部材20およびその周囲に形成される空間として、カウルパネル12を支持する前側および後側支持部25,24の間の空間X、前側および後側フレーム部22,21の間の空間Y、後側フレーム部21とカウルパネル12の立上り部14との間の空間Zが存在している。このため、開断面フレームOFの内部を流れる空調用の空気の通路を適正に確保しつつ、車両の前突時に支持部材20および開断面フレームOFの変形を促進することができる。
【0077】
具体的には、空間Xの存在により、カウルパネル12の下方への変形が容易になり、また、空間Yの存在により、支持部材20それ自体の変形が容易になる。さらには、空間Zの存在により、カウルパネル12および支持部材20の両者の変形が容易になる。これにより、空調用の空気通路を確保しつつ、フロントウインド11から下向きの衝撃荷重が入力された際の支持部材20およびカウルパネル12の変形を促進することができ、歩行者保護性能を高めることができる。
【0078】
図8はカウルパネル12および支持部材20の変形状態を示す正面図である。車両の前突時に下向きの衝撃荷重が入力されると、カウルパネル12および支持部材20は、
図6に示す変形前の状態から、
図8に示すような変形後の状態に変位する。すなわち、フロントウインド11から下向きの衝撃荷重が入力されると、前端が自由端であるカウルパネル12の延出部16が下方に変形するとともに、これに伴って支持部材20の前側および後側フレーム部22,21が車幅方向の一方側に屈曲変形する(支持部材20の上下寸法が短縮される)。
【0079】
カウルパネル12と前側および後側支持部25,24との接合部、並びに、ダッシュアッパパネル9とフランジ部27との接合部は、他の部位に対して剛性が強いので、衝撃荷重の入力時、カウルパネル12は
図8のように屈曲変形することになる。
【0080】
また、上記カウルパネル12の延出部16の下方への変形は、折曲部W1の存在によってさらに促進される。すなわち、カウルパネル12の水平部15と延出部16とが所定の交差角度θ1をもった(丸みのない)折曲部W1を介してつながっているので、この折曲部W1を起点に、カウルパネル12の延出部16が容易に変形する。
【0081】
さらに、上記延出部16のうち、フロントウインド11を直接支持しているウインド支持部16aが、それよりも前方の部分(延出部16の前方部)と比べて上方に隆起しており、延出部16の前方部とフロントウインド11とが互いに離間しているので、車両の前突時にフロントウインド11からウインド支持部16aに衝撃荷重が入力されたときに、まずウインド支持部16aのみが下方に凹むようにして容易に変形する。これにより、ウインド支持部16aの下方への変形、ひいてはカウルパネル12の下方への変形がより効果的に促進される。
【0082】
図9はカウルパネル12および補助部材30の変形状態を示す正面図、
図10はその側面図である。これらの図に示すように、フロントウインド11から下向きの衝撃荷重の入力時、カウルパネル12および補助部材30は、
図5、
図6に示す変形前の状態から、
図9、
図10に示すような変形後の状態に変位する。すなわち、カウルパネル12の延出部16が下方に変形するとともに、これに伴って補助部材30がその本体部31を折り曲げるようにして変形する。
【0083】
次に、
図1〜
図10を用いて説明した第1実施例の特徴的な構成およびそれに基づく作用効果についてまとめて説明する。
【0084】
上記実施例のフロントウインドの支持構造は、車両の前方に開口する開断面18を有しかつフロントウインド11の下辺部に沿って車幅方向に延びる開断面フレームOFと、開断面フレームOFの上面部と下面部(カウルパネル12とダッシュアッパパネル9)とを連結するように開断面フレームOFの内部に設けられた支持部材20とを備える。開断面フレームOFは、その上面部(カウルパネル12)の一部に、フロントウインド11の下辺部を支持するウインド支持部16aを有し、上記支持部材20は、カウルパネル12(開断面フレームの上面部)に取付けられる後側支持部24と、後側支持部24よりも車両の前方に離間した位置でカウルパネル12に取付けられる前側支持部25とを有している。さらに、ウインド支持部16aは、車両の前後方向において前側および後側支持部25,24の間に位置している。
【0085】
この構成によれば、前方に開口した開断面18を有する開断面フレームOFの上面部(カウルパネル12)に、フロントウインド11を支持するウインド支持部16aを設けたので、車両の前突時(フロントウインド11に歩行者が乗り上げたとき)にカウルパネル12が比較的容易に変形し、歩行者保護性能を良好に確保することができる。
【0086】
しかも、支持部材20は、カウルパネル12を支持する部分として、前後方向に離間した前側および後側支持部25,24を有しているので、これら各支持部25,24の間に空間Xが形成されることにより、カウルパネル12の下方への変形がより促進される。
【0087】
さらに、上記のように前後方向に離間した複数箇所(前側および後側支持部25,24)でカウルパネル12を支持することにより、フロントウインド11への衝撃荷重の入力がない非衝突時(通常時)において、フロントウインド11およびカウルパネル12の振動、およびそれに伴う車室内のこもり音を効果的に防止することができる。
【0088】
このように、上記実施例の構成によれば、NV性能の確保と歩行者保護性能の確保との両立を図ることができる。
【0089】
また、上記実施例では、
図6等に示したように、支持部材20が正面視で上下方向に直線状に延びるように形成されている。
【0090】
この構成によれば、支持部材20が上下方向の振動に対して強い構造となり、非衝突時(前突時)におけるフロントウインド11の振動抑制をより効果的に図ることができる。
【0091】
また、上記実施例では、カウルパネル12(開断面フレームの上面部)が、支持部材20の後側支持部24が取付けられる水平部15(第1壁部)と、水平部15の前端部から前方に延びるとともに、支持部材20の前側支持部25が取付けられる延出部16(第2壁部)とを有しており、これら水平部15と延出部16とのつながり部に、所定の交差角度θ1をもった折曲部W1が形成されている。この折曲部W1は、車両の前後方向において上記前側および後側支持部25,24の間に位置している。
【0092】
この構成によれば、車両の前突時に、カウルパネル12の延出部16が折曲部W1を起点として下方に容易に変形するため、歩行者保護性能をより高めることができる。
【0093】
また、上記実施例では、ウインド支持部16aが延出部16(第2壁部)の後方側の一部によって構成されるとともに、延出部16のうちウインド支持部16aよりも前方に位置する部分に上記前側支持部25が取付けられている。この前側支持部25が取付けられる延出部16の前方部は、上記ウインド支持部16aよりもフロントウインド11から下方に離間した位置に形成されている。
【0094】
この構成によれば、車両の前突時に、ウインド支持部16aの下方への変形が延出部16の前方部によって阻害されることがなく、ウインド支持部16aを含むカウルパネル12の変形がより効果的に促進される。
【0095】
また、上記実施例では、支持部材20が、カウルパネル12からダッシュアッパパネル9まで(開断面フレームの上面部から下面部まで)の間を車両の後方かつ下方に向かって傾斜するように延びる前側フレーム部22を有しており、この前側フレーム部22の延設方向は、フロントウインド11の膜振動による荷重の入力方向(矢印α)と一致するように設定されている(
図4参照)。
【0096】
この構成によれば、車両の非衝突時(通常時)に、フロントウインド11から入力される振動荷重を、その荷重の入力方向と平行な前側フレーム部22によって効率よく吸収することができ、より一層効果的に振動の低減を図ることができる。
【0097】
また、上記実施例では、カウルパネル12が、上記水平部15および延出部16(第1壁部および第2壁部)以外に、水平部15の後端部から下方に延びる立上り部14(第3壁部)を有しており、この立上り部14は、支持部材20の後側フレーム部21(支持部材の後辺部)よりもさらに後方に離間した位置に形成されている。
【0098】
この構成によれば、カウルパネル12の立上り部14と支持部材20の後側フレーム部21との間に空間Zが形成されるので、車両の前突時にカウルパネル12および支持部材20の変形を促進することができる。また、上記空間Zの存在により、空調用の空気の通路を適正に確保することができる。
【0099】
また、上記実施例では、カウルパネル12およびダッシュアッパパネル9との接合箇所(取付け片9c,13の接合部)よりも上方に位置するカウルパネル12の前後2箇所に、上記支持部材20の前側および後側支持部25,24が取付けられるとともに、上記接合箇所よりも下方に位置するダッシュアッパパネル9の所定部位に、支持部材20の下端部(フランジ部27)が取付けられている。
【0100】
この構成によれば、開断面フレームOFの上下方向の剛性が十分に確保されるため、車両の非衝突時(通常時)に、フロントウインド11等の振動をより効果的に低減することができる。
【0101】
また、上記実施例では、カウルパネル12およびダッシュアッパパネル9からなる開断面フレームOFの車幅方向の中間位置(望ましくは、中央位置)に支持部材20が配設されるとともに、この支持部材20よりも車幅方向の外側に位置する開断面フレームOFの左右両側方部に、一対の補助部材30が設けられている。各補助部材30は、上記カウルパネル12とダッシュアッパパネル9との接合箇所に取付けられる下端部(下端フランジ部32)と、当該接合箇所よりも上方に位置するカウルパネル12の所定部位に取付けられる上端部(上端フランジ部33)とを有している。(
図5、
図6参照)。
【0102】
このように、フロントウインド11の振動が大きい車幅方向の中間位置の振動荷重を支持部材20で支持し、フロントウインド11の振動が相対的に小さい車幅方向の側方位置の振動荷重を補助部材30で支持するようにした場合には、車両の非衝突時(通常時)に、フロントウインド11の振動を全体的に効率よく低減することができる。
【0103】
さらに、上記実施例では、板厚方向が車幅方向に一致する姿勢で支持部材20が配置されるとともに、板厚方向が車幅方向と直交する姿勢で補助部材30が配置されている。
【0104】
このように、車幅方向の複数場所に、向きの異なる複数の板材を支持部材20および補助部材30として配置した場合には、フロントウインド11の振動をより効果的に低減することができる。
【0105】
図11は、フロントウインド支持構造の第2実施例を示している。上述した第1実施例(
図6)においては、開断面フレームOFの車幅方向の中間位置に設けられる支持部材20が、正面視で上下方向に延びる直線状に形成されていたが、
図11に示される第2実施例の支持部材20’では、その上下方向中間位置、つまり、カウルパネル12に対する取付け部(前側および後側支持部25,24)とダッシュアッパパネル9に対する取付け部(フランジ部27)との間に、折曲部28が設けられている。
【0106】
このように、支持部材20’の上下方向中間位置に折曲部28を設けて、支持部材20’の正面視での形状を略くの字状とした場合には、上方からの荷重入力がある車両の前突時に、支持部材20’が折曲部28を起点に車幅方向に容易に変形するので、カウルパネル12の変形がさらに促進されて、歩行者保護性能をさらに高めることができる。
【0107】
図11の第2実施例において、その他の構成、作用、効果については、先の第1実施例(
図1〜
図10)と同様である。
図11では、第1実施例と同一の構成要素には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。なお、上記支持部材20’の正面視形状は、折曲部28が車両左側(
図11上では右側)に突出する逆くの字状であってもよい。
【0108】
図12は、フロントウインドの支持構造の第3実施例を示すものである。この第3実施例におけるカウルパネル120(開断面フレームOFの上面部)は、支持部材20の後側支持部24が取付けられる傾斜部150(第1壁部)と、傾斜部150の前端部から前方に延びるとともに、支持部材20の前側支持部25が取付けられる延出部160(第2壁部)と、傾斜部150の後端部から下方に延びる立上り部140(第3壁部)と、立上り部140との下端部から後方に延びる取付け片130とを有している。
【0109】
カウルパネル120の延出部160における後方側の一部は、フロントウインド11が接着剤17を介して接着されるウインド支持部160aとされている。また、このウインド支持部160aよりも前方側に位置する延出部160の前方部は、ウインド支持部160aよりも下方に折り曲げられており、当該部とフロントウインド11との間には所定の隙間が形成されている。
【0110】
上記傾斜部150と延出部160とのつながり部、傾斜部150と立上り部140とのつながり部、立上り部140と取付け片130とのつながり部には、それぞれ、丸みのない折曲部W2,V,Uが形成されている。傾斜部150および立上り部140の断面視での長さ、つまり、折曲部W2から折曲部Vまでの距離と、折曲部Vから折曲部Uまでの距離とは、ほぼ等しい値に設定されている。
【0111】
上記カウルパネル120の各所に形成された折曲部U,V,W2のうち、傾斜部150と立上り部140とのつながり部に形成された折曲部Vは、唯一、鋭角の交差角度θ2をもっている。また、各折曲部U,V,W2の位置関係は、折曲部Vが最も上方に位置し、折曲部Uが最も下方に位置し、折曲部W2が最も前方に位置している。
【0112】
上記のような形状にカウルパネル120が形成されていることで、車両の前突時にフロントウインド11に下向きの衝撃荷重が入力された場合に、カウルパネル120を最も効率的に変形させることができる。すなわち、折曲部W2,V間の距離(傾斜部150の長さ)と、折曲部V,U間の距離(立上り部140の長さ)とが等しく設定されていると、折曲部Vを中心としてカウルパネル120が前後方向に潰れるように変形するときに、変形量の片寄りやそれに基づく歪みが最小限に抑えられて、カウルパネル120を効率よく変形させることができる。
【0113】
より具体的に説明すると、カウルパネル120は、車両デザインの関係上、車幅方向の中央部が最も前方に突出する(車幅方向の両端側ほど後方に引っ込む)三次元的な形状を有しているので、仮に、折曲部W2,V間の距離と折曲部V,U間の距離とが大きく相違するような場合には、カウルパネル120の変形時に、変形量の片寄りやそれに基づく歪みが発生し易くなる。これに対し、
図12で示したように、折曲部W2,V間の距離と折曲部V,U間の距離とをほぼ等しく設定した場合には、上記のような片寄り、歪みを最小限に抑えることができ、カウルパネル120を効率よく変形させることができる。
【0114】
しかも、車両の前突時に変形の中心となる折曲部V、つまり傾斜部150(第1壁部)と立上り部140(第3壁部)とのつながり部に形成される折曲部Vが、鋭角の交差角度θ2をもっているので、カウルパネル120がより変形し易くなり、歩行者保護性能をより高めることができる。
【0115】
図12に示される第3実施例では、上記のような形状のカウルパネル120に合わせて、支持部材20の設置方向が第1実施例(
図4)のときと若干異なっている。すなわち、
図12の第3実施例では、支持部材20の後側フレーム部21とカウルパネル120の立上り部140(第3壁部)との間に上下方向に亘って一定値以上の隙間が確保されるように、後側フレーム部21がやや後傾した姿勢で配置されている。より具体的に、後側フレーム部21は、カウルパネル120への取付け部(後側支持部24)から前方かつ下方へと向かうような方向にやや傾斜して延びている。これにより、例えば
図12のようにカウルパネル120の立上り部140がほとんど垂直に立上がるように形成されていても、後側フレーム部21と立上がり部140との間に十分広い空間Zが確保されるため、車両の前突時にカウルパネル120および支持部材20の変形が効果的に促進される。
【0116】
図13は、フロントウインドの支持構造の第4実施例を示している。この
図13に示すように、カウルパネル12およびダッシュアッパパネル9(開断面フレームOF)を先の第1実施例と同様の形状に形成しながら、支持部材20を、図示のような姿勢で配置することも可能である。すなわち、この第4実施例では、前側フレーム部22がほぼ垂直方向に延び、かつ後側フレーム部21が前側フレーム部22よりも後側に傾くような姿勢で、支持部材20が配置されている。このような構成によれば、後側フレーム部21とカウルパネル12の立上がり部14との間の空間Zが、
図4に示した第1実施例のときよりも広くなるので、車両の前突時にカウルパネル12および支持部材20がより変形し易くなる。
【0117】
なお、上記各実施例では、ダッシュアッパパネル9とダッシュロアパネル10とを別体のパネル材によって構成したが、両者を一体に形成することで、車室7とエンジンルーム1とを一枚のダッシュパネルによって仕切るようにしてもよい。この場合は、ダッシュパネルの上側の一部が、ダッシュアッパパネルに該当することになる。